説明

汚染土壌の原位置浄化方法及び汚染土壌の原位置浄化システム

【課題】熱効率に優れており、広範囲の汚染土壌からVOCを十分に除去することが可能な汚染土壌の原位置浄化方法及び汚染土壌の原位置浄化システムを提供する。
【解決手段】汚染土壌の原位置浄化システム100は、汚染土壌中に、加熱体10がエア噴射口に設けられたエア噴射管1が配設されるとともに、汚染土壌中の地表側にガス回収管2及び水平加熱帯3が配設されており、エア噴射管1によって汚染土壌に加熱されたエアが噴射されると、汚染土壌からVOCが分離し、分離したVOCがガス回収管2によって回収されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染土壌の原位置浄化方法及び汚染土壌の原位置浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、揮発性有機化合物(volatile organic compounds;以下「VOC」という。)で汚染された汚染土壌を浄化する技術として、当該汚染土壌を原位置で浄化する技術が知られている(特許文献1,2参照)。
【0003】
例えば、特許文献1には、配管を用いて、VOCで汚染された汚染土壌に高圧蒸気を供給し、この高圧蒸気によって当該汚染土壌からVOCを除去することにより、汚染土壌を原位置で浄化するという発明が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、VOCで汚染された汚染土壌中に発熱体を設置するとともに、発熱体の上方の土壌中に汚染物質捕捉体を設置し、その発熱体を発熱させて周囲の土壌を加熱し、土壌からVOCを分離させて、土壌中を移動してきたVOCを汚染物質捕捉体に捕捉させることにより、汚染土壌を原位置で浄化するという発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平4−501231号公報
【特許文献2】特開2002−119953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術にあっては、熱効率が良くないという問題がある。また、浄化対象となる汚染土壌の範囲が狭く、浄化対象となる汚染土壌からVOCを十分に除去することができないという問題もある。
【0007】
すなわち、特許文献1に開示された発明の如く、配管を用いて、汚染土壌に高圧蒸気を供給する場合には、例えば、配管に破裂などの不具合が生じると、当該配管から高圧蒸気が漏れてしまうことが懸念される。そのため、日本のように国土が狭く人工密集地で施工を行うときには、安全対策上の制約があり、当該発明を実施することは困難である。また、配管を用いて、汚染土壌に高圧蒸気を供給する場合には、配管による熱ロスが避けられないことから、特許文献1に開示された発明では、土中加熱の方法としては熱効率が良くないという問題がある。
【0008】
また、特許文献2に開示された発明の如く、VOCで汚染された汚染土壌中に発熱体を設置するとともに、発熱体の上方の土壌中に汚染物質捕捉体を設置するだけでは、浄化対象となる汚染土壌の範囲が狭く、しかも、浄化対象となる汚染土壌からVOCを十分に除去することができないという問題がある。
【0009】
本発明は、このような従来の技術の問題に鑑みてなされたものであり、熱効率に優れており、広範囲の汚染土壌からVOCを十分に除去することが可能な汚染土壌の原位置浄化方法及び汚染土壌の原位置浄化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、揮発性有機化合物で汚染された汚染土壌を原位置で浄化するための汚染土壌の原位置浄化方法であって、前記汚染土壌中に、エア噴射口に加熱体が設けられたエア噴射管を配設するとともに、当該汚染土壌中の地表側にガス回収管を配設し、前記エア噴射管によって前記汚染土壌へ加熱されたエアを噴射することにより、前記汚染土壌から前記揮発性有機化合物を分離させ、分離した前記揮発性有機化合物を前記ガス回収管によって回収することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、揮発性有機化合物で汚染された汚染土壌を原位置で浄化するための汚染土壌の原位置浄化方法であって、前記汚染土壌中にエア噴射管を配設するとともに、当該エア噴射管の周囲に加熱帯を配設する一方で、当該汚染土壌中の地表側にガス回収管を配設し、前記エア噴射管によって前記汚染土壌へエアを噴射することにより、前記加熱帯によって加熱された前記汚染土壌から前記揮発性有機化合物を分離させ、分離した前記揮発性有機化合物を前記ガス回収管によって回収することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、揮発性有機化合物で汚染された汚染土壌を原位置で浄化するための汚染土壌の原位置浄化方法であって、前記汚染土壌中に、エア噴射口に加熱体が設けられたエア噴射管を配設するとともに、当該エア噴射管の周囲に加熱帯を配設する一方で、当該汚染土壌中の地表側にガス回収管を配設し、前記エア噴射管によって前記汚染土壌へ加熱されたエアを噴射することにより、前記加熱帯によって加熱された前記汚染土壌から前記揮発性有機化合物を分離させ、分離した前記揮発性有機化合物を前記ガス回収管によって回収することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、揮発性有機化合物で汚染された汚染土壌を原位置で浄化するための汚染土壌の原位置浄化システムであって、前記汚染土壌中に配設されたエア噴射管と、前記エア噴射管のエア噴射口に設けられた加熱体と、前記汚染土壌中の地表側に配設されたガス回収管と、を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、揮発性有機化合物で汚染された汚染土壌を原位置で浄化するための汚染土壌の原位置浄化システムであって、前記汚染土壌中に配設されたエア噴射管と、前記汚染土壌中のうち前記エア噴射管の周囲に配設された加熱帯と、前記汚染土壌中の地表側に配設されたガス回収管と、を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、揮発性有機化合物で汚染された汚染土壌を原位置で浄化するための汚染土壌の原位置浄化システムであって、前記汚染土壌中に配設されたエア噴射管と、前記エア噴射管のエア噴射口に設けられた加熱体と、前記汚染土壌中のうち前記エア噴射管の周囲に配設された加熱帯と、前記汚染土壌中の地表側に配設されたガス回収管と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、熱効率に優れており、広範囲の汚染土壌からVOCを十分に除去することが可能な汚染土壌の原位置浄化方法及び汚染土壌の原位置浄化システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る汚染土壌の原位置浄化システム100を示す概略図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る汚染土壌の原位置浄化システム200を示す概略図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る汚染土壌の原位置浄化システム300を示す概略図である。
【図4】本発明のその他の実施形態に係る汚染土壌の原位置浄化システムにおける中央部の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
===第1実施形態(加熱体10が設けられた構成)===
図1は、本発明の第1実施形態に係る汚染土壌の原位置浄化システム100を示す概略図である。図1に示す汚染土壌の原位置浄化システム100は、エア噴射管1、ガス回収管2、及び水平加熱帯3を備えている。
【0019】
エア噴射管1は、VOCに汚染された汚染土壌中に鉛直方向に配設されており、その先端部にはエア噴射口が設けられ、当該先端が地下水面付近まで到達している。エア噴射管1の先端部には、加熱体10が設けられている。ガス回収管2は、有孔管であり、ポンプなどでガス吸引するように構成されており、土壌中の地表側において水平方向に配設されている。また、水平加熱帯3は、土壌中のガス回収管2の下方において当該ガス回収管2と平行に配設されている。
【0020】
なお、エア噴射管1は、例えば、特許第3711819号の「汚染地盤や廃棄物埋立地盤の浄化装置」などであり、具体的には、汚染地盤や廃棄物埋立地盤に挿入される注入井と、この注入井の上端部に取り付けられて超高圧(0.2〜0.7MPa程度)の圧搾空気を短時間の間隔でパルス状にして間欠的に該注入井に供給する高圧間欠注入装置と、該圧搾空気の供給経路に接続され浄化促進成分を圧搾空気に添加する浄化促進成分供給設備とを備えて、上記注入井の噴出口から圧搾空気とともに浄化促進成分を汚染地盤や廃棄物埋立地盤中に吹き込む汚染地盤や廃棄物埋立地盤の浄化装置であり、高圧間欠注入装置は、エアコンプレッサで発生される高圧の圧搾空気が供給管を介して導入されるタンクと、タンク内の圧力が所定圧以上になると瞬時に開弁して圧搾空気を排出するとともに、この排出によってタンク内圧力が低下すると瞬時に閉弁して、圧搾空気を短い間欠タイミングでパルス状に排出する間欠バルブとを備えている。
【0021】
このような汚染土壌の原位置浄化システム100にあっては、汚染土壌中に、噴射口に加熱体10が設けられたエア噴射管1が配設されるとともに、土壌中の地表側にガス回収管2が配設されている。そのため、エア噴射管1によって加熱されたエアが広範囲の汚染土壌に噴射され、汚染土壌からVOCがほぼ完全に分離することとなる。そして、分離したVOCは上方へ移動し、ガス回収管2によって分離したVOCがほぼ完全に回収される。
【0022】
このようにして、汚染土壌の原位置浄化システム100によれば、広範囲の汚染土壌からVOCを十分に除去することが可能となるのである。なお、ガス回収管2の下方には、水平加熱帯3が配設されているので、VOCを連行するエアが水平加熱帯3によって加熱されることになり、VOCは揮発性を維持することとなる。そのため、汚染土壌から分離したVOCは、ガス回収管2によって確実に回収される。
【0023】
しかも、汚染土壌の原位置浄化システム100にあっては、地表側に、高温高圧の液体や蒸気が流れる配管を配設する必要がないので、配管漏れなどのおそれがない。また、汚染土壌の原位置浄化システム100にあっては、蒸気噴射法と異なり、土中に発熱体若しくは発熱帯が設けられているため、これらによる発熱エネルギーは、ほぼすべて土中加熱に消費されることから、熱効率の点でも優れている。
【0024】
===第2実施形態(鉛直加熱帯20が設けられた構成)===
図2(a)は、本発明の第2実施形態に係る汚染土壌の原位置浄化システム200を示す概略図であり、図2(b)は、図2(a)の中央部付近の断面図である。
【0025】
図2(a)に示す汚染土壌の原位置浄化システム200は、エア噴射管1、ガス回収管2、及び水平加熱帯3を備えるとともに、鉛直加熱帯20を備えている。
【0026】
エア噴射管1、ガス回収管2、及び水平加熱帯3は、それぞれ、図1に示したものとほぼ同様のものであるが、図2(a)に示すエア噴射管1は、図1に示したエア噴射管1と異なり、その先端部には、加熱体10が設けられていない。
【0027】
鉛直加熱帯20は、複数の加熱帯からなるフレキシブル加熱帯(例えば、夢現テクノ株式会社製のアグリヒータ40若しくはアグリヒータ60など)であり、汚染土壌に対して鉛直方向に配設され、より具体的には、図2(b)に示すように、エア噴射管1を中心として、その同心円上に配設されている。フレキシブル加熱帯は、帯状の薄い金属体からなり、その両端が電気配線された電熱方式の加熱帯である。このフレキシブル加熱帯は、フレキシブルで容易にロール状に巻き取ることが可能であり、しかも、土木用のペーパードレーン打設機械などにより地中に打設することも可能である。
【0028】
このような汚染土壌の原位置浄化システム200にあっては、汚染土壌中にエア噴射管1が配設されるとともに、エア噴射管1の周囲に鉛直加熱帯20が配設され、土壌中の地表側にガス回収管2が配設されている。そのため、エア噴射管1によって汚染土壌にエアが噴射され、鉛直加熱帯20によって加熱された汚染土壌からが分離し、分離したVOCがガス回収管2によって回収されることとなる。また、汚染土壌の原位置浄化システム200にあっては、汚染土壌の原位置浄化システム100と同様の構成を有するため、熱効率の点でも優れている。
【0029】
===第3実施形態(加熱体10及び鉛直加熱帯20が設けられた構成)===
図3は、本発明の第3実施形態に係る汚染土壌の原位置浄化システム300を示す概略図である。
【0030】
図3に示す汚染土壌の原位置浄化システム300は、図1に示した汚染土壌の原位置浄化システム100と、図2(b)に示した汚染土壌の原位置浄化システム200とを組み合わせたものであり、エア噴射管1、ガス回収管2、水平加熱帯3及び鉛直加熱帯20を備え、エア噴射管1の先端部には、加熱体10が設けられている。
【0031】
このような汚染土壌の原位置浄化システム300にあっては、汚染土壌中に、噴射口に加熱体10が設けられたエア噴射管1が配設されるとともに、エア噴射管1の周囲に鉛直加熱帯20が配設され、土壌中の地表側にはガス回収管2が配設されている。そのため、エア噴射管1によって汚染土壌に加熱されたエアが噴射され、加熱されたエア及び鉛直加熱帯20の双方の作用によって汚染土壌が加熱される。その結果、汚染土壌からVOCが分離し易くなり、分離したVOCがガス回収管2によって回収されることとなる。また、汚染土壌の原位置浄化システム300にあっては、汚染土壌の原位置浄化システム100、200と同様の構成を有するため、熱効率の点でも優れている。
【0032】
===その他の実施形態===
以上の各実施形態に関する説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨、目的を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0033】
例えば、図2(b)に示すように、本発明の第2実施形態では、エア噴射管1の同心円上に鉛直加熱帯20を4枚配設することとしたが、本発明は、この第2実施形態の構成に限定されるものではなく、その枚数は任意であり、例えば、図4に示すように、エア噴射管1の同心円上に鉛直加熱帯20を8枚配設することとしてもよい。
【0034】
また、本発明は、エア噴射及び土中加熱を主要な構成要件とするものであるが、エア噴射及び土中加熱の形態は、上記実施形態に示したものに限定されるものではない。例えば、エア噴射の形態は、連続式、間欠式を問わず、また、非加熱エア(常温のエア)を噴射する形態のみならず、加熱エアを噴射する形態であってもよい。さらに、エア噴射の形態は、乾燥したエアを噴射する形態に限定されるものではなく、蒸気が含まれるエアを噴射する形態であってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 エア噴射管
2 ガス回収管
3 水平加熱帯
10 加熱体
20 鉛直加熱帯
100、200、300 汚染土壌の原位置浄化システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性有機化合物で汚染された汚染土壌を原位置で浄化するための汚染土壌の原位置浄化方法であって、
前記汚染土壌中に、エア噴射口に加熱体が設けられたエア噴射管を配設するとともに、当該汚染土壌中の地表側にガス回収管を配設し、前記エア噴射管によって前記汚染土壌へ加熱されたエアを噴射することにより、前記汚染土壌から前記揮発性有機化合物を分離させ、分離した前記揮発性有機化合物を前記ガス回収管によって回収することを特徴とする汚染土壌の原位置浄化方法。
【請求項2】
揮発性有機化合物で汚染された汚染土壌を原位置で浄化するための汚染土壌の原位置浄化方法であって、
前記汚染土壌中にエア噴射管を配設するとともに、当該エア噴射管の周囲に加熱帯を配設する一方で、当該汚染土壌中の地表側にガス回収管を配設し、前記エア噴射管によって前記汚染土壌へエアを噴射することにより、前記加熱帯によって加熱された前記汚染土壌から前記揮発性有機化合物を分離させ、分離した前記揮発性有機化合物を前記ガス回収管によって回収することを特徴とする汚染土壌の原位置浄化方法。
【請求項3】
揮発性有機化合物で汚染された汚染土壌を原位置で浄化するための汚染土壌の原位置浄化方法であって、
前記汚染土壌中に、エア噴射口に加熱体が設けられたエア噴射管を配設するとともに、当該エア噴射管の周囲に加熱帯を配設する一方で、当該汚染土壌中の地表側にガス回収管を配設し、前記エア噴射管によって前記汚染土壌へ加熱されたエアを噴射することにより、前記加熱帯によって加熱された前記汚染土壌から前記揮発性有機化合物を分離させ、分離した前記揮発性有機化合物を前記ガス回収管によって回収することを特徴とする汚染土壌の原位置浄化方法。
【請求項4】
揮発性有機化合物で汚染された汚染土壌を原位置で浄化するための汚染土壌の原位置浄化システムであって、
前記汚染土壌中に配設されたエア噴射管と、
前記エア噴射管のエア噴射口に設けられた加熱体と、
前記汚染土壌中の地表側に配設されたガス回収管と、
を有することを特徴とする汚染土壌の原位置浄化システム。
【請求項5】
揮発性有機化合物で汚染された汚染土壌を原位置で浄化するための汚染土壌の原位置浄化システムであって、
前記汚染土壌中に配設されたエア噴射管と、
前記汚染土壌中のうち前記エア噴射管の周囲に配設された加熱帯と、
前記汚染土壌中の地表側に配設されたガス回収管と、
を有することを特徴とする汚染土壌の原位置浄化システム。
【請求項6】
揮発性有機化合物で汚染された汚染土壌を原位置で浄化するための汚染土壌の原位置浄化システムであって、
前記汚染土壌中に配設されたエア噴射管と、
前記エア噴射管のエア噴射口に設けられた加熱体と、
前記汚染土壌中のうち前記エア噴射管の周囲に配設された加熱帯と、
前記汚染土壌中の地表側に配設されたガス回収管と、
を有することを特徴とする汚染土壌の原位置浄化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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