説明

汚染敷設材処理方法

【課題】既存施設の汚染敷設材処理に適した処理方法を提案する。
【解決手段】汚染敷設材を含んでいる施工場所をテント1で覆い、該施工場所にセメント系固化剤を散布車両4で散布する工程と、該セメント系固化剤散布後の施工場所をスタビライザー5で所定の深さ攪拌する工程と、該攪拌後の施工場所を養生する工程と、該養生後の施工場所を所定の形状に切断し、該切断片を搬出する工程と、を含む、汚染敷設材処理方法を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
駐車場や遊歩道などに敷設された砕石等の敷設材が有害物質で汚染されている場合の処理に関する技術が以下に開示される。
【背景技術】
【0002】
建築物の解体時に発生した解体廃材は、リサイクル意識の高まりから、種類毎に分類され、一部が再生砕石にリサイクルされて路盤材などに使用される。この再生砕石は、敷設材として、アスファルトやコンクリート舗装の路盤材としての用途の他、駐車場や遊歩道などの表面層をなすリサイクル砂利として、舗装代わりに敷設されることも多い(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このように駐車場や遊歩道、公園などの施設に敷設された敷設材に関し、最近になって、その再生砕石中にアスベスト含有材が混入している場合があることが発見され、対策を要望する声があがっている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−301732号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「工事現場や駐車場で次々見つかるアスベスト」,ECO JAPAN,http://eco.nikkeibp.co.jp/article/report/20100901/104685/,2010年10月25検索
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既存施設において、再生砕石などの敷設材に混入したアスベスト含有材を処理するには、周辺環境へのアスベスト飛散を防止する対策が必要である。すなわち、何の対策も講じないままアスベスト含有材の混入した再生砕石を掻き集めて搬出するだけでは、その掻き集める作業の間に周辺環境へのアスベスト飛散が懸念され、工事を実施することができない。しかし、現時点で有効な対策を講じた処理手法は無いので、本発明により、このような既存のアスベスト含有材混入再生砕石の処理に適した処理方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に対する汚染敷設材処理方法として、次の二つを提案する。
一つは、汚染敷設材を含んでいる施工場所にセメント系固化剤を散布する工程と、該セメント系固化剤散布後の施工場所を所定の深さ攪拌する工程と、該攪拌後の施工場所を養生する工程と、該養生後の施工場所を所定の形状に切断し、該切断片を搬出する工程と、を含む、汚染敷設材処理方法である。
もう一つは、汚染敷設材を含んでいる施工場所にセメントミルクを散布して養生する工程と、該養生後の施工場所を所定の形状に切断し、該切断片を搬出する工程と、を含む、汚染敷設材処理方法である。
【発明の効果】
【0008】
上記提案に係る汚染敷設材処理方法によれば、セメント系固化剤により、汚染敷設材を全体的にコンクリート化したうえで搬出する手法としたので、周辺への汚染物質飛散を防止しつつ、汚染敷設材の除去工事を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】汚染敷設材処理方法の第1実施形態の説明図。
【図2】図1に続く工程を説明する説明図。
【図3】汚染敷設材処理方法の第2実施形態の説明図。
【図4】汚染敷設材処理方法の第3実施形態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1及び図2に、汚染敷設材処理方法の第1実施形態について示している。
まず、施工にあたっては、駐車場や遊歩道など、路床上の表面層として再生砕石などの敷設材が敷設されている施設において、施工場所をテント1で覆って周辺環境から隔離状態とする。施工場所は、汚染敷設材の例としてアスベスト含有材の混入した再生砕石を敷設してある施設の、一部の場合もあるし全部の場合もある。テント1は、例えば15m×15m程度の広さのもので、シート1aの材質は、例えば、ポリエチレンシート、ポリフィルム0.2mmとすることができる。
【0011】
このテント1のシート1aの内側空間は、HEPAフィルタを備えた負圧除塵装置2により負圧に保たれる。テント1内を負圧に維持することによって、内部に舞う粉塵や汚染物質がテント1の外へ漏洩し難くなる。また、シート1aの内側には、水をミスト状にして散布するミスト装置3が1台以上設置され、施工空間に水をミスト散布しつつ施工することにより、粉塵や汚染物質の舞い上がりが抑制される。
【0012】
上記のような、内部を負圧にしたテント1内のミスト散布雰囲気において、アスベスト含有材の混入した再生砕石(本実施形態における汚染敷設材)の処理工程が施工される。
【0013】
まず、セメント系固化剤の散布に先立つ前処理として、必須ではないが、アスベスト湿潤剤(汚染物質湿潤剤であって、汚染物質の種類に応じて選択される薬剤)を施工場所に散布する。念のためにアスベストの湿潤剤を散布することにより、アスベストの飛散がより確実に抑制される。アスベスト湿潤剤としては、例えばAB200(株式会社トッププランニングJAPANの商品)を使用することができる。アスベスト湿潤剤の散布は、噴霧器による作業員の手作業か、噴霧装置を備えた作業車両により実施する。
【0014】
続いて、アスベスト湿潤剤散布後の施工場所に、セメント系固化剤を散布する。散布するセメント系固化剤としては、湿潤セメント又はスラッジモルタルを使用することができる。両者とも、施工時に粉塵(セメントの粉塵)が舞い上がり難い特性をもち、作業性に優れる。例えば湿潤セメントの散布は、専用の散布車両4により実施する。散布車両4は、セメントと所定量の水を混合するためのタンク及び装置を搭載しており、湿潤セメントを形成しながら散布していく。
【0015】
そして、散布車両4の後を追うように一定の距離を置いて、攪拌装置としてスタビライザー5を走行させ、セメント系固化剤散布後の施工場所を所定の深さ攪拌する。攪拌の深さは、敷設材として再生砕石を敷き詰めた表面層の深さ程度でもよいが、例えば図1Bに示すように、再生砕石を敷設した下の路床の10〜15cm程度の深さを、その上の再生砕石と共にスタビライザー5で掘り起こし攪拌するのが好ましい。再生砕石直下にあってアスベスト汚染の可能性が無いとは言い切れない部位も削ってしまうことにより、施工の確実性が上がる。この掘り起こしを行うスタビライザー5は、ドラム周囲にビットを装着して回転させる掘り起こし装置を走行車両の後部に備えた構造であり、好ましくは、掘り起こし装置の部分を、テント1のシート1a同様のシートによる防塵膜5aで覆ってあるものとする。この構造により、セメント粉塵及びアスベストの飛散が抑制される。さらに防塵膜5aの内側空間について、点線で示す負圧除塵装置5bにより負圧に保つとなお好ましい。スタビライザー5のような大型機械の他に、攪拌装置としては、農業用トラクターや耕耘機を流用することもできる。これらの場合も、掘り起こしの機械部分を防塵膜で覆う処置を施すとよい。
【0016】
スタビライザー5による攪拌が終わった施工場所は、ロードローラー6により締め固められ養生される。これにより、再生砕石を主な骨材としたコンクリートが形成される。養生後はロードカッター7による切断が実施されるが、その切断の前に、アスベストの飛散をより確実に抑制するため、アスベスト固化剤(汚染物質固化剤であって、汚染物質の種類に応じて選択される薬剤)を施工場所に散布するのがよい。アスベストの固化剤としては、例えばAB100(株式会社トッププランニングJAPANの商品)を使用することができる。アスベスト固化剤の散布は、噴霧器による作業員の手作業か、噴霧装置を備えた作業車両により実施する。アスベスト固化剤の散布後、ロードカッター7を使用して、搬出に適した所定の形状に施工場所を切断し、その切断片を搬出していく。
【0017】
搬出した切断片(コンクリートブロック)は、規定の手順に従って処分する。また、搬出後の施工場所は、テント解体、新たな砕石の敷き均し、転圧を行って仕上げる。
【0018】
汚染敷設材処理方法の第2実施形態につき、図3を参照して説明する。
第2実施形態は、セメント系固化剤としてスラッジモルタルを使用した例である。第2実施形態の場合も第1実施形態同様に、施工場所をテント1で覆った内側にミスト装置3から水をミスト散布した中で工事が実施され、その他、セメント系固化剤としてスラッジモルタルを散布する以外の手法は、第1実施形態と同様である。
【0019】
スラッジを混入したスラッジモルタルは流動性が高いので、散布車両4を使わずに、テント1の外からミキサー車(生コン車)10及びポンプ装置11を使用して、施工場所に散布することができる。ポンプ装置11から延びた輸送管11aがテント1のシート1aを貫通し施工場所へ臨んでスラッジモルタルが圧送され、施工場所全域に散布が行われる。ミキサー車10及びポンプ装置11がテント1の外にあって汚染物質に暴露しないので、施工後の洗浄の手間を省くことができる。なお、ポンプ装置11の代わりにポンプ車(ブーム車)を使用して実施してもよい。
【0020】
汚染敷設材処理方法の第3実施形態につき、図4を参照して説明する。
第3実施形態は、浸透性の高いセメントミルクを使用した例である。第3実施形態の場合も第1実施形態同様に、施工場所をテント1で覆った内側にミスト装置3から水をミスト散布した中で工事が実施される。
【0021】
まず、第1実施形態同様に、セメントミルクの散布に先立つ前処理として、汚染物質であるアスベストの飛散をより確実に抑制するため、アスベスト湿潤剤(汚染物質湿潤剤)を施工場所に散布する。本例の場合、アスベスト湿潤剤の散布は、噴霧装置を備えた散布車両20により実施している。
【0022】
続いて、アスベスト湿潤剤散布後の施工場所に、セメントミルクを散布する。セメントミルクは流動性が高いので、第2実施形態同様に、テント1の外からミキサー車10及びポンプ装置11を使用して、施工場所に散布することができる。ポンプ装置11から延びた輸送管11aがテント1のシート1aを貫通し施工場所へ臨んでセメントミルクが圧送され、施工場所全域に散布が行われる。ミキサー車10及びポンプ装置11がテント1の外にあって汚染物質に暴露しないので、施工後の洗浄の手間を省くことができる。
【0023】
施工場所にセメントミルクを流し込んだ後は、養生を行う。養生にあたっては、第1実施形態のようにロードローラー6で締め固めを行ってもよいし、あるいは、敷設材としての再生砕石はもともと締め固められているので、そのままで養生してもよい。セメントミルクのもつ浸透性により、再生砕石のある表面層全域にセメントミルクは浸透し、再生砕石を主な骨材としたコンクリートが形成される。
【0024】
第1実施形態同様、養生後はロードカッター7による切断が実施されるが、その切断の前に、汚染物質であるアスベストの飛散をより確実に抑制するため、アスベスト固化剤(汚染物質固化剤)を施工場所に散布するのがよい。アスベスト固化剤の散布後に、ロードカッター7を使用して、搬出に適した所定の形状に施工場所を切断し、その切断片を搬出していく。
【0025】
搬出した切断片(コンクリートブロック)は、規定の手順に従って処分する。切断片を搬出した後、本例の場合、施工場所の露出表面を所定の深さ削り取る。例えば図1Bで説明したのと同様の理由から、露出した路床の10〜15cm程度の深さを削り取るのがよい。なお、散布したセメントミルクが路床まで浸透する可能性があり、この場合はセメントミルクが浸透した部位の路床も切断片の一部として剥ぎ取られるので、当該工程は不要の場合もある。この後の施工場所は、テント解体、新たな砕石の敷き均し、転圧を行って仕上げる。
【0026】
以上各実施形態によれば、湿潤セメントやスラッジセメント、あるいはセメントミルクといったセメント系固化剤により、汚染敷設材を全体的にコンクリート化したうえで搬出する処理方法としたので、周辺への汚染物質飛散を防止しつつ、汚染敷設材の除去工事を実施することができる。上記説明では、汚染物質の具体例としてアスベストを取り上げて説明したが、汚染物質はアスベストに限られない。例えば、放射性物質その他の有害物質が付着して汚染された既存施設の場合にも、本発明は有効である。
【符号の説明】
【0027】
1 テント
2 負圧除塵装置
3 ミスト装置
4 散布車両
5 スタビライザー
6 ロードローラー
7 ロードカッター
10 ミキサー車
11 ポンプ車
20 散布車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染敷設材を含んでいる施工場所にセメント系固化剤を散布する工程と、
該セメント系固化剤散布後の施工場所を所定の深さ攪拌する工程と、
該攪拌後の施工場所を養生する工程と、
該養生後の施工場所を所定の形状に切断し、該切断片を搬出する工程と、
を含む、汚染敷設材処理方法。
【請求項2】
前記セメント系固化剤を散布する工程の前に、前記施工場所に汚染物質湿潤剤を散布する工程をさらに含む、請求項1記載の汚染敷設材処理方法。
【請求項3】
前記養生後の施工場所を切断する工程の前に、前記養生後の施工場所に汚染物質固化剤を散布する工程をさらに含む、請求項1又は請求項2記載の汚染敷設材処理方法。
【請求項4】
汚染敷設材を含んでいる施工場所にセメントミルクを散布して養生する工程と、
該養生後の施工場所を所定の形状に切断し、該切断片を搬出する工程と、
を含む、汚染敷設材処理方法。
【請求項5】
前記セメントミルクを流し込む工程の前に、前記施工場所に汚染物質湿潤剤を散布する工程をさらに含む、請求項4記載の汚染敷設材処理方法。
【請求項6】
前記養生後の施工場所を切断する工程の前に、前記養生後の施工場所に汚染物質固化剤を散布する工程をさらに含む、請求項4又は請求項5記載の汚染敷設材処理方法。
【請求項7】
前記切断片を搬出する工程の後に、前記施工場所の露出表面を所定の深さ削り取る工程をさらに含む、請求項4〜6のいずれかに記載の汚染敷設材処理方法。
【請求項8】
前記各工程を、水をミスト散布しつつ施工する、請求項1〜7のいずれかに記載の汚染敷設材処理方法。
【請求項9】
前記各工程を、前記施工場所をテントで覆い該テント内を負圧にして施工する、請求項1〜8のいずれかに記載の汚染敷設材処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate