説明

汚水槽における曝気ポンプの据付構造

【目的】 汚物ポンプと曝気ポンプとを1個の小さい保守点検用開口を通じて一挙に昇降できるようにする。
【構成】 保守点検用開口15を備えた汚水槽3内に排水用の汚物ポンプ7を設け、その汚物ポンプ7に水平方向の軸芯P周りで回転可能に支持アーム20を取り付けるとともに、空気と汚水とを混合した汚水混合空気を噴出するノズル13を備えた曝気ポンプ8を、支持アーム20に取り付け、かつ、曝気ポンプ8にチェーン23を連結し、チェーン23の引っ張りと繰り出しとによって支持アーム20を回転させることにより、ノズル13の噴出方向が水平方向側を向いた据付姿勢と曝気ポンプ8が汚物ポンプ7の上方に位置する引き上げ姿勢とに変位するとともに両ポンプ7,8を昇降できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ビルの地下ピットを利用した汚水槽とか、地上等に設置されるFRP製の汚水槽などにおいて悪臭防止のために適用されるもので、保守点検用開口(マンホール)を備えるとともに排水用の汚物ポンプを設けた汚水槽内に、空気と汚水とを混合した汚水混合空気を噴出するノズルを備えた曝気ポンプを据え付けた汚水槽における曝気ポンプの据付構造に関する。
【0002】
【従来の技術】汚水槽内での汚水の滞留に伴い、汚泥の堆積やスカムの成長などが生じて汚水排出時に悪臭が発生し、公害の要因となる問題があり、汚水を好気性に保つために、汚水槽内の汚水を曝気処理する必要があった。
【0003】このような汚水槽内の汚水を曝気処理する構成としては、汚水槽内に散気管を設けるとともに汚水槽上の機械室などに設置したブロワーと散気管とを接続し、汚水槽内に空気を供給するものがあったが、ブロワーによって発生される騒音が大きくて隣室や上階などの近隣に悪影響を及ぼす不都合があった。
【0004】そこで、近年では、上述したように、汚水を吸入して高速噴出させ、その噴出によって生じる吸い込み圧力の低下を利用して空気を吸入し、ノズルの先端から汚水混合空気を高速で噴出する曝気ポンプを汚水槽内に据付ける構成が採用されている。
【0005】一方、汚水槽では汚物ポンプも必要であり、従来では、汚水槽の上部に保守点検用開口を形成するとともに、曝気ポンプおよび汚物ポンプそれぞれにチェーンなどやガイドなどの昇降構成を付設し、保守点検用開口を通じて昇降することにより、汚水槽内に汚物ポンプと曝気ポンプとを据え付けるとともに定期点検など適宜保守点検できるようにしていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来では、汚物ポンプおよび曝気ポンプそれぞれに対して個別に専用の保守点検用開口と昇降構成が必要で、工数が多くなって据え付けに手間を要するとともに使用部材数が多くなって工費が増大し、更に、保守点検に手間を要する欠点があった。
【0007】また、ビルなどでは、汚水槽の上部空間を別の用途に極力有効利用することが望まれるが、従来のものでは、汚水槽の上部にポンプ数に応じた数の保守点検用開口を設けなければならないうえに、そこにポンプを引き上げて保守点検を行うための作業用空間を確保しなければならず、汚水槽の上部において有効利用を図ることのできるスペースが狭くなる欠点があった。
【0008】そこで、汚物ポンプと曝気ポンプとを近接して並ぶ状態で据え付け、汚水槽の上部に形成した1個の保守点検用開口を通じて両ポンプを一挙に昇降できるようにする構成も考えられているが、保守点検用開口が大きくなるとともに昇降構成が大掛かりなものになってコスト高を招きやすく、未だ改善の余地があった。
【0009】本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、請求項1に係る発明の汚水槽における曝気ポンプの据付構造は、汚物ポンプと曝気ポンプとを1個の小さい保守点検用開口を通じて一挙に昇降できるようにすることを目的とし、また、請求項2に係る発明の汚水槽における曝気ポンプの据付構造は、汚物ポンプと曝気ポンプとを所定の安定した姿勢で昇降できるようにすることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明の汚水槽における曝気ポンプの据付構造は、上述のような目的を達成するために、保守点検用開口を備えるとともに排水用の汚物ポンプを設けた汚水槽内に、空気と汚水とを混合した汚水混合空気を噴出するノズルを備えた曝気ポンプを据え付けた汚水槽における曝気ポンプの据付構造であって、汚物ポンプに水平方向の軸芯周りで回転可能に支持アームを取り付けるとともに、その支持アームに曝気ポンプを取り付け、かつ、曝気ポンプに、支持アームを回転させることによりノズルの噴出方向が水平方向側を向いた据付姿勢と曝気ポンプが汚物ポンプの上方に位置する引き上げ姿勢とに変位するとともに両ポンプを昇降する索状体を連結して構成する。
【0011】請求項2に係る発明の汚水槽における曝気ポンプの据付構造は、上述のような目的を達成するために、請求項1に係る発明の汚水槽における曝気ポンプの据付構造において、汚水槽内に、保守点検用開口に近い箇所に上端が位置するように鉛直方向のガイドを設けるとともに、そのガイドに昇降可能に汚物ポンプを取り付けて構成する。
【0012】
【作用】請求項1に係る発明の汚水槽における曝気ポンプの据付構造の構成によれば、索状体を引っ張って支持アームを回転させ、曝気ポンプが汚物ポンプの上方に位置する引き上げ姿勢にした状態で、保守点検用開口を通じて曝気ポンプおよび汚物ポンプを汚水槽内に下降し、汚物ポンプが汚水槽の底部側の所定位置で下降を停止した後に、索状体を更に繰り出していくことにより支持アームを回転させ、ノズルの噴出方向が水平方向側を向いた据付姿勢になるように曝気ポンプを変位させて据え付けることができる。また、据付状態から索状体を引き上げることにより、支持アームを回転させ、曝気ポンプを据付姿勢から引き上げ姿勢に変位させ、更に引き上げることにより、曝気ポンプと汚物ポンプとを上下に重ねた状態で上昇させ保守点検用開口を通じて汚水槽の上部に取り出し、点検することができる。
【0013】請求項2に係る発明の汚水槽における曝気ポンプの据付構造の構成によれば、曝気ポンプを上方に位置させた状態で汚物ポンプをガイドに沿わせて昇降し、所定の据え付け位置と保守点検用開口とにわたって移動させることができる。
【0014】
【実施例】次に、本発明の実施例を図面に基づいて詳述する。
【0015】図1は、ビルの全体概略縦断面図であり、ビル1の地下ピット2に、汚物の混入した汚水を貯留する汚水槽3、湧き水を貯留する湧水槽4、雑排水を貯留する雑排水槽5、および、雨水を貯留する雨水槽6それぞれが設けられている。
【0016】<第1実施例>汚水槽3内には、図2の第1実施例の要部の拡大側面図に示すように、汚物ポンプ7と曝気ポンプ8とが設けられ、汚物ポンプ7と排水管9とが着脱曲管10を介して接続され、かつ、両ポンプ7,8それぞれに通電用の水中ケーブル11が接続されている。
【0017】曝気ポンプ8には、混合管12を介して水平方向に向けて噴出するようにノズル13が接続されるとともに、混合管12に、空気を供給するフレキシブルチューブ14が接続され、汚水を吸入して高速噴出させ、その噴出によって生じる吸い込み圧力の低下を利用して空気を吸入し、ノズルの先端から汚水混合空気を高速で噴出できるように構成されている。
【0018】汚水槽3の上部の所定箇所に保守点検用開口15が形成されるとともに、その保守点検用開口15に近い箇所に上端が位置するように一対の鉛直方向のガイド16,16が設けられ、両ガイド16,16に連結プレート17を介して汚物ポンプ7が昇降可能に取り付けられている。
【0019】両ガイド16,16の下端側箇所に、着脱曲管10がそのポンプ側開口を水平方向に向けた状態で据え付けられるとともに、その着脱曲管10のポンプ側開口の上部側に当り部18が形成され、一方、連結プレート17の端部が当り部18に当接するように曲げ形成され、汚物ポンプ7を下降して連結プレート17の端部が当り部18に当接するに伴い、その自重によって、汚物ポンプ7側の開口フランジ面を着脱曲管10のポンプ側開口フランジ面に圧着し、汚物ポンプ7側の開口と着脱曲管10のポンプ側開口とがシール性の良好な状態で連通するように構成されている。図示しないが、汚物ポンプ7側の開口フランジ面および着脱曲管10のポンプ側開口フランジ面それぞれには、ゴムパッキングが焼き付けられ、シール性を高めるようになっている。
【0020】汚物ポンプ7には、図3の斜視図に示すように、取付ブラケット19が取り付けられ、その取付ブラケット19に水平方向の軸芯P周りで回転可能に支持アーム20が取り付けられるとともに、その支持アーム20に、固定位置を調整可能に曝気ポンプ8を取り付けるポンプ台21が取り付けられ、支持アーム20を回転させることによりノズル13の噴出方向が水平方向側を向いた据付姿勢と曝気ポンプ8が汚物ポンプ7の上方に位置する状態で鉛直上方側を向いた引き上げ姿勢とに変位できるように構成されている。
【0021】取付ブラケット19の下部には、支持アーム19に当接して回転を阻止するストッパー22が連接され、上述据付姿勢に確実に変位するとともにその据付姿勢を良好に維持できるように構成されている。また、汚物ポンプ7から水平に延長された台座30も曝気ポンプ8の着床を位置決めし、かつ、その重量を確実に支持する。
【0022】また、ポンプ台21にチェーン23が連結され、そのチェーン23を引っ張り上げることによって支持アーム20を、前述した据付姿勢から引き上げ姿勢に変位させ、しかる後に、チェーン23をチェーンブロック(図示せず)を利用して更に引き上げることにより、引き上げ姿勢でもって、曝気ポンプ8と汚物ポンプ7とを保守点検用開口15を通じて汚水槽3上まで一挙に上昇できるようになっている。上記チェーン23に代えて、ワイヤーやロープなどを使用しても良く、それらをして索状体と総称する。
【0023】逆に、引き上げ姿勢でもってチェーン23を繰り出していくことにより、先ず、汚物ポンプ7側の開口と着脱曲管10のポンプ側開口とが連通する位置まで曝気ポンプ8と汚物ポンプ7とを下降し、更に、支持アーム20を回転させ、曝気ポンプ8を引き上げ姿勢から据付姿勢に変位させ、両ポンプ7,8を所定の安定した状態で据え付けることができるようになっている。
【0024】図中24は、両ポンプ7,8を汚水槽3内の底部側に据え付けた通常時においてチェーン23を引っ掛けておく掛け金具を示している。
【0025】<第2実施例>図4は、第2実施例の概略縦断面図を示し、第1実施例と異なるところは次の通りである。すなわち、ガイド16,16が無くされるとともに、排水管9および着脱曲管10がフレキシブルチューブ25で構成され、汚物ポンプ7の底部に第1のマグネット26が、そして、汚水槽3の底部の所定箇所に第2のマグネット27がそれぞれ付設されている。他の構成は第1実施例と同様である。
【0026】この構成により、チェーン23を繰り出して引き上げ姿勢で汚物ポンプ7と曝気ポンプ8とを下降したときに、第1のマグネット26が第2のマグネット27に相互の磁力によって引き付けられ、汚物ポンプ7が所定の据付姿勢で固定され、その後に、支持アーム20を回転して曝気ポンプ8が据付姿勢に変位されるように、一方、チェーン23を引っ張って上昇するときには、先ず、曝気ポンプ8を据付姿勢から引き上げ姿勢に変位させた後に、両マグネット26,27の磁力に抗して引き上げ姿勢で汚物ポンプ7と曝気ポンプ8とを上昇し、汚水槽3の上方まで取り出すことができる。
【0027】前記曝気ポンプ8において、混合管12およびノズル13の向きとしては、汚水槽3の形状や保守点検用開口15の位置それぞれに応じて次のような各種の構成が採用できる。
【0028】図5の(a)は、第1変形例の概略平面図であり、曝気ポンプ8の吐出口にアングル状のエルボ28を介して混合管12およびノズル13が接続され、曝気ポンプ8の吐出方向に対して直交する方向に汚水混合空気を噴出するように構成されている。
【0029】図5の(b)は、第2変形例の概略平面図であり、曝気ポンプ8の吐出口にU字状のエルボ29を介して混合管12およびノズル13が接続され、曝気ポンプ8の吐出方向に対して正反対の方向に汚水混合空気を噴出するように構成されている。
【0030】図5の(c)は、第3変形例の概略平面図であり、前述第1変形例の曝気ポンプ8が、汚物ポンプ7に対して水平方向の軸芯周りで希望する角度に回転した状態で取り付けられ、ノズル13を水平に対して希望する上向きの角度で汚水混合空気を噴出するように構成されている。
【0031】上述実施例において、通常、曝気ポンプ8としては、例えば、20kg程度の重量のものが使用されるのに対して、汚物ポンプ7は、その汚水の状況などに応じて60〜 200kg、あるいはそれ以上の重量のものが使用される。このため、曝気ポンプ8の引き上げ姿勢と据付姿勢相互の変位を人力によって行い、一方、引き上げ姿勢にした状態での両ポンプ7,8の昇降を、チェーンブロックなどの機械力によって行うことができるが、その昇降の全てを電動ホイストなどによって行うようにしても良い。
【0032】図2および図3において、位置決め用のストッパー22に調節ボルトなどを付設し、ネジにより高さを調節できるようにして、ノズル13の水平に対する仰角を希望通りに設定することができるようにしても良い。また、台座30においても同様に調節ボルトなどを付設し、ノズル13の水平に対する仰角を希望通りに設定することができるようにしても良い。
【0033】
【発明の効果】請求項1に係る発明の汚水槽における曝気ポンプの据付構造によれば、支持アームを介して汚物ポンプに曝気ポンプを連結し、1本の索状体と1個の保守点検用開口を設けるだけの簡単な構成で、同一の保守点検用開口を通じて汚物ポンプと曝気ポンプとを一挙に昇降できるから、両ポンプを個別に昇降させていた従来の場合に比べ、工数少なく容易に据え付けることができて施工性を向上できるとともに保守点検を容易に行うことができ、更に、使用部材数が少なくて安価である。
【0034】しかも、保守点検用開口を通じて昇降するときには、曝気ポンプが汚物ポンプの上方に位置する引き上げ姿勢にするから、両ポンプのうちのいずれかの大きい方のポンプを通過させるに足る大きさの開口を1個形成すれば良く、汚水槽の上部において有効利用できるスペースを拡大でき、設計上の制約が少なくて工費を低減できる。
【0035】請求項2に係る発明の汚水槽における曝気ポンプの据付構造によれば、汚物ポンプと曝気ポンプとを、ガイドに沿わせることにより、所定の据え付け位置と保守点検用開口とにわたって昇降するから、所定の安定した姿勢で昇降でき、両ポンプを汚水槽の側壁や保守点検用開口などに衝突させて傷付けるといったことを確実に回避でき、耐久性を向上できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】ビルの全体概略縦断面図である。
【図2】第1実施例の要部の拡大側面図である。
【図3】第1実施例の要部の斜視図である。
【図4】第2実施例の概略縦断面図である。
【図5】曝気ポンプの変形例を示す概略平面図である。
【符号の説明】
3…汚水槽
7…汚物ポンプ
8…曝気ポンプ
13…ノズル
15…保守点検用開口
16…ガイド
20…支持アーム
23…索状体としてのチェーン
P…水平方向の軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】 保守点検用開口を備えるとともに排水用の汚物ポンプを設けた汚水槽内に、空気と汚水とを混合した汚水混合空気を噴出するノズルを備えた曝気ポンプを据え付けた汚水槽における曝気ポンプの据付構造であって、前記汚物ポンプに水平方向の軸芯周りで回転可能に支持アームを取り付けるとともに、その支持アームに前記曝気ポンプを取り付け、かつ、前記曝気ポンプに、前記支持アームを回転させることにより前記ノズルの噴出方向が水平方向側を向いた据付姿勢と前記曝気ポンプが前記汚物ポンプの上方に位置する引き上げ姿勢とに変位するとともに両ポンプを昇降する索状体を連結したことを特徴とする汚水槽における曝気ポンプの取付構造。
【請求項2】 請求項1の汚水槽内に、保守点検用開口に近い箇所に上端が位置するように鉛直方向のガイドを設けるとともに、そのガイドに昇降可能に汚物ポンプを取り付けてある汚水槽における曝気ポンプの取付構造。

【図1】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平5−115894
【公開日】平成5年(1993)5月14日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−306681
【出願日】平成3年(1991)10月24日
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(000147394)株式会社西原衛生工業所大阪店 (1)
【出願人】(390012748)株式会社相互ポンプ製作所 (3)