説明

汚泥の電解処理装置

【課題】陰極板表面に析出し付着したスケールを剥がし取り、電極の能力を復活させることができる汚泥の電解処理装置を提供すること。
【解決手段】汚泥を導入する電解槽1に陰陽の電極2、3を交互に配設し、陰極2の表面に発生するスケールを拭い取る固定ワイパー4を電解槽1の上部に配設するとともに、固定ワイパー4が摺接する陰極2を駆動装置により昇降可能に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は汚泥の電解処理装置に関し、電気分解によって生じたスケール(電解生成物)を物理的に清掃するようにした汚泥の電解処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
汚泥減容化の一手段として、例えば、下記の特許文献1に示すように、汚泥を電解する方法が知られている。
この方法は、食塩水添加した汚泥を電気分解し、陽極側で生成する次亜塩素酸イオンや塩素ガスを用いて汚泥中の細菌や原虫を殺すことにより、これら汚泥中の細菌や原虫を生物分解できる状態にし、汚泥の減容化を図るものである。
【0003】
このような処理に使用する汚泥の電解処理装置は、汚泥を導入する電解槽に陰極と陽極を交互に配設したものからなり、形状安定化電極(DSE)又は形状安定化アノード(DSA)と呼ばれる、チタン表面に白金系酸化物をコーティングしたものを陽極に用いることで、安定した性能を得るようにしている。
【0004】
このとき、陰極側にはステンレス板等を用いるが、この陰極の表面には、電解によって生成されたスケール(Ca、Mg等の化合物などの電解生成物)が析出し、ペースト状になって電極表面を覆うことがあり、CaやMg等の化合物を含有するスケールは電気を通しにくいため、厚密するにつれて電解の妨げとなるという問題がある。
【0005】
従来では、炭素電極を使用する場合には電極の定期的極性反転と気泡洗浄により、陰極での電解生成物の成長を押さえてきたが、前記DSEのような電極は陽極側にしか使えないため、極性反転を行うことができず、気泡洗浄だけでは陰極生成物を取除くことができないことから、新たな対策が必要となっている。
【特許文献1】特開2004−351354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の汚泥の電解処理装置が有する問題点に鑑み、陰極板表面に析出し付着したスケールを剥がし取り、電極の能力を復活させることができる汚泥の電解処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本第1発明の汚泥の電解処理装置は、汚泥を導入する電解槽に陰陽の電極を配設した汚泥の電解処理装置において、電極の表面に発生するスケールを拭い取る固定ワイパーを電解槽の上部に配設するとともに、該固定ワイパーが摺接する電極を駆動装置により昇降可能に設けたことを特徴とする。
【0008】
この場合において、電極の昇降時に固定ワイパーを振動させる加振装置を設けることができる。
【0009】
また、同じ目的を達成するため、本第2発明の汚泥の電解処理装置は、汚泥を導入する電解槽に陰陽の電極を配設した汚泥の電解処理装置において、電極の表面に発生するスケールを拭い取るワイパーを電極表面に摺接するとともに、該ワイパーを駆動装置によりスライド可能に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本第1発明の汚泥の電解処理装置によれば、電極の表面に発生するスケールを拭い取る固定ワイパーを電解槽の上部に配設するとともに、該固定ワイパーが摺接する電極を駆動装置により昇降可能に設けることから、定期的に電極を昇降させることにより固定ワイパーで電極表面に発生するスケールを拭い取ることができ、これにより、比較的単純な操作により陰極板表面に析出し付着した電解生成物を剥がし取り、電極の能力を復活させることができる。
【0011】
この場合、固定ワイパーを振動させる加振装置を設けることにより、電極の昇降時に固定ワイパーを振動させて、通常では落ちにくいスケールを拭い取ることができる。
【0012】
また、本第2発明の汚泥の電解処理装置によれば、電極の表面に発生するスケールを拭い取るワイパーを電極表面に摺接するとともに、該ワイパーを駆動装置によりスライド可能に設けることから、定期的にワイパーを摺動させることにより電極表面に発生するスケールを拭い取ることができ、これにより、比較的単純な操作により陰極板表面に析出し付着した電解生成物を剥がし取り、電極の能力を復活させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の汚泥の電解処理装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1に、本発明の汚泥の電解処理装置の第1実施例を示す。
この汚泥の電解処理装置は、汚泥を導入する電解槽1に陰陽の電極2、3を交互に配設し、陰極2の表面に発生するスケールを拭い取る固定ワイパー4を電解槽1の上部に配設するとともに、該固定ワイパー4が摺接する陰極2を駆動装置により昇降可能に設けている。
【0015】
電解槽1の内側には、ガイドレール5が設けられており、電極同士はこのガイドレール5によって隔てられることにより、陽極3と陰極2が交互に配置されるとともに、陽極3と陰極2の接触事故を避けている。
なお、通常状態では、電極洗浄用通気管6より一定時間毎に曝気を行い、電極面を洗浄する。
【0016】
陰極2は、すべてその上部がタイロッド7によって繋げられている。
一方、電解槽1の外側に設けた軸受座8によって支持される駆動軸9の両端にスウィングアーム10を固定し、タイロッド7は、このスウィングアーム10の先端部と係合している。
これにより、駆動軸9を回動させるとスウィングアーム10が揺動し、陰極2が上方に引抜かれて、固定ワイパー4(本実施例においては、電解槽1の蓋を兼ねるようにしている。)の間をすり抜ける際に、電解生成物であるスケールが掻き落とされる。
【0017】
なお、本実施例では、駆動装置としてギヤモータ11を使用しているが、駆動装置としてはシリンダを用いたり手動式とする場合もある。
また、電極の昇降動作にスウィングアーム10を用いているが、カム駆動やクランク駆動とする場合もある。
さらに、陰極2をただ引抜いただけでは巧く拭えない場合もあるので、そういう場合は、図示省略する加振装置により、固定ワイパー4に振動を加えるようにする。
【0018】
かくして、本実施例の電解処理装置は、電極の表面に発生するスケールを拭い取る固定ワイパー4を電解槽1の上部に配設するとともに、該固定ワイパー4が摺接する電極を駆動装置により昇降可能に設けることから、定期的に電極を昇降させることにより固定ワイパー4で電極表面に発生するスケールを拭い取ることができ、これにより、比較的単純な操作により陰極板表面に析出し付着した電解生成物を剥がし取り、電極の能力を復活させることができる。
この場合、固定ワイパー4を振動させる加振装置を設けることにより、電極の昇降時に固定ワイパー4を振動させて、通常では落ちにくいスケールを拭い取ることができる。
【実施例2】
【0019】
図2〜図3に、本発明の汚泥の電解処理装置の第2実施例を説明する。
この汚泥の電解処理装置は、汚泥を導入する電解槽1に陰陽の電極2、3を配設しており、電極2の表面に発生するスケールを拭い取るワイパー12を電極表面に摺接するとともに、該ワイパー12を駆動装置によりスライド可能に設けている。
【0020】
電解槽1の内側には、ガイドレール5が設けられており、電極同士はこのガイドレール5によって隔てられることにより、陽極3と陰極2が交互に配置されるとともに、陽極3と陰極2の接触事故を避けている。
通常状態では、電極洗浄用通気管6より一定時間毎に曝気を行い、電極面を洗浄する。
【0021】
ワイパー12は、櫛状に繋がって、陰極2の表面上部に配置されており、ピン13を介してスウィングアーム10に繋がっている。
スウィングアーム10は、水槽内部設置された駆動軸9にそれぞれ固定されており、駆動軸9は、電解槽1の外側に設けた軸受座8によって支持され、ギヤモータ11により回動する。
【0022】
そして、一定回数曝気洗浄が行われた後、駆動軸9を回動させることによりスウィングアーム10が揺動し、陰極2の表面を掻くようにワイパー12が降下する。
下端までスウィングアーム10がスライドし、最後は電極上部の待機位置に戻って停止する。この一連の動作により電解生成物が掻き落とされる。
【0023】
なお、本実施例では、駆動装置としてギヤモータ11を用いているが、シリンダ等の他の駆動装置でも動作は可能であり、駆動方式には拘らない。
また、本実施例ではワイパー12の駆動機構にスウィングアーム10を用いているが、クランク駆動やカム駆動によっても実現可能なので、こちらの駆動方式にも拘らない。
【0024】
かくして、本実施例の電解処理装置は、電極の表面に発生するスケールを拭い取るワイパー12を電極表面に摺接するとともに、該ワイパー12を駆動装置によりスライド可能に設けることから、定期的にワイパー12を摺動させることにより電極表面に発生するスケールを拭い取ることができ、これにより、比較的単純な操作により陰極板表面に析出し付着した電解生成物を剥がし取り、電極の能力を復活させることができる。
【0025】
以上、本発明の汚泥の電解処理装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、実施例に記載した構成を適宜組み合わせるなど、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の汚泥の電解処理装置は、ワイパーで電極表面に発生するスケールを拭い取ることにより、比較的単純な操作により陰極板表面に析出し付着した電解生成物を剥がし取り、電極の能力を復活させるという特性を有していることから、電解処理装置の電極の清掃の用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の汚泥の電解処理装置の第1実施例を示し、(a)はその縦断面図、(b)は(a)のA−A線矢視図、(c)は(a)のB−B線断面図である。
【図2】本発明の汚泥の電解処理装置の第2実施例を示す縦断面図である。
【図3】図2のB−B線断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 電解槽
2 陰極
3 陽極
4 固定ワイパー
5 ガイドレール
6 通気管
7 タイロッド
8 軸受座
9 駆動軸
10 スウィングアーム
11 ギヤモータ
12 ワイパー
13 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥を導入する電解槽に陰陽の電極を配設した汚泥の電解処理装置において、電極の表面に発生するスケールを拭い取る固定ワイパーを電解槽の上部に配設するとともに、該固定ワイパーが摺接する電極を駆動装置により昇降可能に設けたことを特徴とする汚泥の電解処理装置。
【請求項2】
固定ワイパーを振動させる加振装置を設けたことを特徴とする請求項1記載の汚泥の電解処理装置。
【請求項3】
汚泥を導入する電解槽に陰陽の電極を配設した汚泥の電解処理装置において、電極の表面に発生するスケールを拭い取るワイパーを電極表面に摺接するとともに、該ワイパーを駆動装置によりスライド可能に設けたことを特徴とする汚泥の電解処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−275727(P2007−275727A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103694(P2006−103694)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】