説明

汚泥掻寄機の制御システム

【課題】汚泥掻寄機のフライト板を駆動するための樹脂製チェーンの劣化及び破断を低減する。
【解決手段】制御システム100は、商用電源からの電力と再生可能エネルギ源からの電力とを選択的に切り替えるスイッチSW11、SW12を備えた電源スイッチング部110と、汚泥掻き寄せの駆動装置600に、電源スイッチング部によって切り替えられた電力を供給するか否かを切り替える負荷駆動スイッチング部120と、これらを制御する制御回路部140とを備えている。制御回路部は、保守運転モードにおいて、電源スイッチング部及び負荷駆動スイッチング部を制御し、再生可能エネルギ源300からの電力を汚泥掻寄機の駆動装置に印加し、フライト板を数回/日程度保守運転させる。保守運転により、樹脂製チェーンのある特定の部分が長時間空気中に露呈しないので、劣化等を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理施設等の沈殿池内に設置されて、沈殿池の池底に堆積する汚泥を掻き寄せるとともに、沈殿池の水面に浮遊するスカムを掻き寄せる汚泥掻寄機(フライトコンベア)を制御するための制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チェーンの走行に伴って沈殿池の内部を長尺状のフライト板が循環し、フライト板が沈殿池の池底を走行するときに地底に堆積する汚泥を掻き寄せるとともに、フライト板が沈殿池の水面を走行するときに水面に浮遊するスカムを掻き寄せる汚泥掻寄機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
該特許文献1に記載された汚泥掻寄機においては、駆動軸及び従動軸に掛け渡されたチェーンの走行に伴って沈殿池の内部を長尺状のフライト板が、そのガイドシューがガイドレールに沿って走行しつつ、汚泥やスカムの掻き寄せを行っている。しかしながら、該汚泥掻寄機においては、大地震が発生した場合に、フライト板がガイドレールから脱線したり、また、駆動軸及び従動軸に掛け渡されたチェーンがスプロケットホイールから脱輪したりしてしまう恐れがあり、それを解消するために、本出願人は、特許文献2に記載されている汚泥掻寄機を提案した。
【0003】
特許文献2に記載された汚泥掻寄機は、地震の振動によりフライト板のガイドシューがガイドレールから離れても、フライト板の移動位置をガード板によって規制することにより、フライト板のガイドシューのガイドレールからの脱線を防止するように構成されている。
その他、特許文献3及び4にも、従来例の汚泥掻寄機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−57713号公報
【特許文献2】特許第4536595号公報
【特許文献3】特開2000−406号公報
【特許文献4】特開平11−70380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、汚泥掻寄機において、駆動軸(駆動モータ軸)と従動軸との間に一対の掻寄チェーンが掛けられている。この掻寄チェーンは、水中で使用することを前提として樹脂材料で構成されており、空気中に長時間露呈される場合には、紫外線、腐食性ガス、チェーンに固着した汚泥等により、劣化して破断したという事例が近年報告されている。これは、汚泥掻寄機が、運転を長時間停止された状態で、掻寄チェーンの一部又は全てが空気中に長時間露呈されてしまうことにより生じたものである。特に、汚泥掻寄機が配備される沈殿池からは腐食性のガスが発生される可能性が高く、また、紫外線が増大傾向にある近年の環境においては、樹脂製の掻寄チェーンの劣化による破断がより多く発生する恐れがある。また、一対の掻寄チェーンには、該チェーンの走行方向に直交する方向に、沈殿汚泥を掻き寄せるための複数のフライト板が設けられており、これらフライト板が掻寄チェーンと同様な樹脂材料で構成されている場合には、掻寄チェーンと同様な問題が生じる可能性がある。
【0006】
図3を参照して、汚泥掻寄機の構成及びその問題点を詳細に説明する。図3は、特許文献2に記載された汚泥掻寄機の概要を示す断面図である。この汚泥掻寄機は、下水処理場等の沈殿池1に配置され、駆動装置(駆動モータ)2と、沈殿池1の内部に配置された駆動軸3、アイドラ軸4、テークアップ軸5及び水中軸6と、これらの各軸間に掛け渡した一対の無端状の掻寄チェーン7と、このチェーン7に所定のピッチで固着したフライト板(掻寄せ板)8とを備えている。アイドラ軸4、テークアップ軸5及び水中軸6は、駆動軸3に対する従動軸を構成する。また、テークアップ軸5は、フライト板8の走行方向に沿って前後動してチェーン7の張力を調節できるよう構成されている。
【0007】
そして、駆動装置2により駆動軸3を回転させることによって、掻寄チェーン7が走行し、この掻寄チェーン7の走行に伴って、沈殿池1の池底側を走行しているフライト板8が、池底側に溜まった汚泥を汚泥貯留部1aに掻寄せ、また水面側を走行しているフライト板8が水面に浮遊するスカムをスカムスキマ9に掻寄せる。該スカムスキマ9には、溢流堰が開閉自在に取付けられており、この溢流堰をフライト板8の走行を利用して押し下げることにより、沈殿池1の液面に浮遊しているスカムをフライト板により掻寄せ、水と共にトラフ9a内に流入させる。符号10、11は、フライト板8の走行をガイドするため、沈殿池1の側壁に沿って支持されたガイドレールであり、符号12は、池底に敷設されたレール12である。
【0008】
図3に示した汚泥掻寄機において、例えば、沈殿池1の水位が駆動軸3の上端に達している場合には、汚泥掻寄機の運転が停止中であっても、チェーン7はほぼ全体が水中にある。チェーン7は、水中使用を意図した樹脂で形成されているため、水中に存在する限り、劣化はさほど進行しない。しかしながら、沈殿池1の水位は環境によって常時変動するものであり、特に休止中の場合は、水位の長期間の低下は免れない。そして、汚泥掻寄機の運転が停止状態で水位の低下が長期間継続すると、チェーン7の一部が長期的に空気中に晒されることになり、これにより、劣化が生じてしまい、場合によっては、チェーン7が破断してしまう。
【0009】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、汚泥掻寄機において使用される樹脂製の掻寄チェーンの劣化及び破断を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、本発明は、汚泥掻寄機を制御するための制御システムであって、
商用電源からの電力と再生可能エネルギ源からの電力とを選択的に切り替える電源切替手段と、
汚泥掻寄機のフライト板の駆動装置に、電源切替手段によって切り替えられた電力を供給するか否かを切り替える負荷駆動スイッチング手段と、
汚泥掻寄機の運転を制御する制御手段であって、保守運転モードにおいて、電源切替手段及び負荷駆動スイッチング手段を制御して、再生可能エネルギ源からの電力を汚泥掻寄機のフライト板の駆動装置に印加するよう制御する制御手段と
を備えていることを特徴とする制御システムを提供する。
【0011】
上記した本発明に係る制御システムにおいては、制御システムは更に、保守運転モードにおいて、フライト板をどの程度の時間駆動させるかをオペレータが設定することができる設定手段を備え、制御手段は、設定手段において設定された時間だけ、再生可能エネルギ源からの電力をフライト板の駆動装置に印加するよう制御するよう構成することが好ましい。また、負荷駆動スイッチング手段はさらに、スカムスキマの駆動装置に、電源切換手段によって切り替えられた電力を供給するか否かを切り替える手段を備えていることが好ましい。さらにまた、制御システムはさらに、商用電源からの電圧を検出する電圧検出手段と、電圧検出手段によって商用電源の電圧低下が検出された場合に、電源切換手段を制御して、商用電源からの電力を遮断して、再生可能エネルギ源からの電力をフライト板の駆動装置に供給するよう制御する手段とを備えていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る、汚泥掻寄機の制御システムの概略を示すブロック図である。
【図2】図1に示した制御システムの詳細を示す図である。
【図3】汚泥掻寄機の構成を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る、汚泥掻寄機の駆動制御装置の実施形態を説明する前に、本発明の原理について説明する。
上述したように、掻寄チェーンを長期間連続的に空気中に露呈させた状態にしておくと劣化が大きく進行してしまうが、汚泥掻寄機を稼働している状態すなわちチェーンが、間欠的ではあっても沈殿池の水面下にある状態では、劣化がさほど進行するものではない。したがって、このような問題は、汚泥掻寄機を通常の運転モードで常時稼働すれば解消するが、使用していない沈殿池で汚泥掻寄機を連続的に稼働することは、電力エネルギを無駄に消費することになり、環境負荷を増大させることになる。
【0014】
そこで、本発明においては、休止中の沈殿池においては、汚泥掻寄機を、1日に数回程度、間欠的に駆動させ、掻寄チェーンのある決まった部分が長期的に空気中に晒されることを防止する。また、汚泥掻寄機は、通常の運転状態においては、1周/1時間程度で常時走行しているが、使用停止中に掻寄チェーンを水中に浸すための走行は、1日に2周程度で、しかも低速走行でも十分である。さらに、休止中の沈殿池であるため、汚泥堆積が少ない。このようなことから、休止中の沈殿池での保守運転による掻き寄せ負荷は比較的小さいため、保守運転用に、主に太陽光発電装置等の再生可能な電力源を採用する。
【0015】
上記した原理に基づいた本発明に係る、汚泥掻寄機の駆動制御システムの実施形態を図1及び図2を参照して説明する。
図1は、本発明に係る、汚泥掻寄機の駆動制御システムの全体構成図であり、図1において、100は動力制御装置、200は商用電源、300は太陽光発電等の再生可能エネルギ源、400は再生可能エネルギ源300からの電力を調整するパワーコンディショナ、500はパワーコンディショナを介して供給される電力を蓄電する蓄電池である。また、600は汚泥掻寄機の駆動装置(図5の駆動装置2に相当)、700はスカムスキマの駆動装置である。なお、以降においては、再生可能エネルギ源300、パワーコンディショナ400及び蓄電池500を総称して、再生可能エネルギ源300と称することにする。
【0016】
動力制御装置100は、電源スイッチング部110と、負荷駆動スイッチング部120と、商用電源及び再生可能エネルギ源の電圧を検出する電圧検出部130a及び130bと、制御回路部140と、により構成されている。電源スイッチ部110は、商用電源200からの電力を負荷に供給するためのスイッチSW11と、パワーコンディショナからすなわち再生可能エネルギ源300からの電力を負荷に供給するためのスイッチSW12とを備えており、スイッチSW11及びS12は、排他的にオン/オフされる。スイッチSW11及びSW12は、デフォルト状態では、スイッチSW11がオンでSW12がオフ状態であり、制御回路部140からの信号によりオン/オフ制御され、また、手動操作によってもオン/オフ状態を切り替えることができる。
【0017】
負荷駆動スイッチング部120は、汚泥掻寄機の駆動装置600を駆動するか否かを示す信号に基づいて該駆動装置600に電力を供給/遮断し、かつ、スカムスキマの駆動装置700を駆動するか否かを示す信号に基づいて、該駆動装置700に電力を供給/遮断するよう制御されるスイッチを備えている。負荷駆動スイッチング部120に具備されるスイッチは、配線用遮断器(MCCB)SW21、SW22、SW23と、リレー接点(MS)SW24、SW25である。スイッチSW21、SW22、SW23は、商用電源回路200に設けられた電源スイッチSW2と同期してオン/オフされる。また、スイッチSW24、SW25は、制御回路部140からの信号によりオン/オフ制御される。
電圧検出部130a及び130bは、商用電源200及び再生可能エネルギ源300の電圧をそれぞれ検出する手段を備え、その検出出力を制御回路部140に供給する。
【0018】
図2は、本発明に係る制御システムの構成をより詳細に示す図であり、特に、制御回路部140の構成を詳細に示している。なお、図2において、図1に示した構成要素と同様な構成要素には、同一の参照番号を付している。図2に示すように、制御回路部140は、機器操作マスタ141、電源切替マスタ142、機器制御マスタ143、電源選択回路144、汚泥掻寄機操作選択回路145、スカムスキマ操作選択回路146、汚泥掻寄機運転指令回路147、スカムスキマ運転指令回路148を備えている。これらは、オペレータにより操作され選択されて、以下に示す信号を出力する。
【0019】
機器操作マスタ141は、汚泥掻寄機の駆動装置600及びスカムスキマの駆動装置700を、中央又は現場のいずれからの指令に基づいて運転するかを設定するものであり、中央からの指令に基づいて制御することを示す信号S1及び現場からの指示に基づいて制御することを示す信号S1*を出力する。なお、信号S1*は信号S1の反転信号であり、以下においても同様である。信号S1*は、マスタ141内で信号S1を反転して生成してもよい。
電源切換マスタ142は、汚泥掻寄機及びスカムスキマの駆動装置600及び700へ供給する電源を、自動で切り替えるか(自動運転モード)又は手動で切り替えるか(手動運転モード)表す信号S2及びS2*を出力する。信号S2*は、マスタ142内で信号S2を反転して生成してもよい。
【0020】
機器制御マスタ143は、汚泥掻寄機及びスカムスキマを「自動」、「通常」及び「保守」のいずれの運転状態とすべきかどうかを示す信号S31、S32、S33を出力する。
電源選択回路144は、汚泥掻寄機及びスカムスキマの駆動装置600及び700へ供給する電源を、商用電源200とするか又は再生可能エネルギ源300とするかを示す信号S4及びS4*を出力する。なお、電源選択回路144は、電源切換マスタ142の出力信号S2*が高レベルの場合だけアクティブ状態となり、オペレータの選択に応じて、商用電源及び再生可能エネルギ源のいずれを使用するかを示すために、信号S4又はS4*を出力する。信号S4*は、回路144内において、信号S4を反転して生成してもよい。
【0021】
汚泥掻寄機用の操作選択回路145は、汚泥掻寄機を自動操作するか又は手動操作するかを示す信号S5及びS5*を出力する。信号S5*は、回路145内で信号S5を反転して生成してもよい。
スカムスキマ用の操作選択回路146は、スカムスキマを自動モードで運転するか又は手動モードで運転するかを示す信号S6及びS6*を出力する。信号S6*は、回路146内で、信号S6を反転して生成してもよい。
【0022】
汚泥掻寄機用の運転手動操作回路147は、操作選択回路145の出力信号S5*が高レベル(「手動」設定)である場合にアクティブ状態となり、オペレータが汚泥掻寄機の運転を手動で操作することができる。運転の手動操作では、汚泥掻寄機をオペレータが逐次的に手動操作する。該回路147は、手動操作に応じて、汚泥掻寄機の運転/停止を示す運転指令を運転指令信号S11として出力する。
同様に、スカムスキマ用の運転手動操作回路148は、操作選択回路146の出力信号S6*が高レベルのときに、アクティブ状態となり、オペレータにより、スカムスキマの駆動が手動で操作される。該回路148は、手動操作に応じて、スカムスキマの運転/停止を示す運転指令を運転指令信号S12として出力する。
【0023】
汚泥掻寄機用の運転指令回路149及びスカムスキマ用の運転指令回路150は、自動運転モードの時にアクティブ状態となり、予め設定された自動運転スケジュールに基づいて、汚泥掻寄機及びスカムスキマの駆動装置をそれぞれ駆動する運転指令信号S13及びS14を出力する。なお、機器制御マスタ143における設定が保守運転モードである場合、運転指令信号S13及びS14は、保守用の運転指令信号となる。
また、制御回路部140には、中央機器操作マスタ(不図示)から、汚泥掻寄機用の運転指令信号S7、スカムスキマ用の運転指令信号S8が供給される。
【0024】
図2に示した制御回路部140の動作を以下に説明する。なお、それぞれの信号が意図する指令状態は、それぞれの信号レベルが高レベルであるとする。また、商用電源及び再生可能エネルギ源それぞれが通常の電圧状態であって、それぞれの電圧検出部130a及び130bは、高レベルの信号を出力しているものとし、さらに、電源スイッチSW2がオン状態を保持し、それに同期してスイッチSW21〜SW23もオン状態を保持しているとする。
【0025】
中央制御部からの指令に基づいて動作する場合
中央制御部からの指令に基づいて動作する場合は、機器操作マスタ141の信号S1が高レベルに設定され、すなわち中央制御部からの指令に基づいて、汚泥掻寄機の駆動装置600及びスカムスキマの駆動装置700の駆動を制御するよう設定される。また、スイッチSW11がオペレータにより、手動でターンオンされる。
この状態で、中央制御部からの汚泥掻寄機用の運転指令信号S7が高レベルとなると、AND1(AND回路1(以下同様))の出力は高レベルとなり、OR1(OR回路1(以下同様))の出力信号S9は高レベルとなる。その結果、スイッチング回路120のスイッチSW24がターンオンされ、商用電源200からの電力が、スイッチSW11、SW21、SW24を介して汚泥掻寄機の駆動装置600に印加される。これにより、該装置が駆動されて掻き寄せ動作を実行する。同様に、中央制御部からのスカムスキマ用の運転指令信号S8が高レベルとなると、AND2を介してOR2の出力信号S10が高レベルとなってスイッチSW25がターンオンし、商用電源200からの電力が、スイッチSW11、SW22、SW25を介してスカムスキマの駆動装置700に印加されて、スカムスキマ動作を実行する。
【0026】
現場からの指令に基づいて手動運転モードで動作する場合
このモードでは、機器操作マスタ141の信号S1*が高レベル(「現場」を選択)となるよう設定され、また、電源切替マスタ142、汚泥掻寄機操作選択回路145、及びスカムスキマ操作選択回路146の出力信号S2*、S5*、及びS6*がそれぞれ高レベル(「手動」を選択)に設定される。
そして、オペレータが商用電源を選択することにより、電源選択回路144の出力S4が高レベルとなると、OR3を介して高レベルの制御信号がスイッチSW11に供給され、これにより、スイッチSW11がターンオンされて、商用電源200からの電力が供給可能となる。逆に、オペレータが再生可能エネルギ源300を選択した場合には、信号S4*が高レベルとなって、スイッチSW12をターンオンする高レベルの制御信号を供給し、再生可能エネルギ源からの電力が供給可能となる。
【0027】
商用電源200からの電力が供給可能な状態、すなわち、スイッチSW2、スイッチSW11、SW21〜SW23がオン状態で、汚泥掻寄機操作選択回路145の出力信号S5*が高レベルとなると、汚泥掻寄機手動操作回路147がアクティブ状態となる。そして、該回路147からオペレータの設定に基づいた高レベルの運転指令信号S11が出力されると、OR1の出力信号S9が高レベルとなり、スイッチSW24をターンオンして、汚泥掻寄機の駆動装置600を駆動する。同様に、スカムスキマ操作選択回路146の出力信号S6*が高レベルであるため、スカムスキマ手動操作回路148がアクティブ状態となり、該回路148から、オペレータの設定に基づいた高レベルの運転指令信号S12によりOR2の出力信号S10が高レベルとなり、スイッチSW25をターンオンして、スカムスキマの駆動装置700を駆動する。
【0028】
現場からの指令に基づいて自動運転モードで動作する場合
このモードでは、機器操作マスタ141の信号S1*が高レベル(「現場」を選択)となるよう設定され、また、電源切替マスタ142、機器制御マスタ143、汚泥掻寄機操作選択回路145、及びスカムスキマ操作選択回路146の出力信号S2、S31、S5、及びS6がそれぞれ高レベル(「自動」を選択)に設定される。なお、電源選択回路144は、電源切換マスタ142の出力信号S2*が高レベルの場合だけアクティブ状態となるため、信号S4及びS4*のいずれも低レベル状態である。
【0029】
そして、信号S2が高レベルであることから、AND3及びOR3を介して、スイッチSW11をオン状態とする制御信号が出力される。また、信号S2及びS31が高レベルであるため、AND3、AND5の出力信号が高レベルとなり、OR5及びOR7を介して高レベルの信号がAND7に印加される。このとき、信号S5が高レベルであることから、汚泥掻寄機用の自動運転指令回路149をアクティブ状態とし、該回路149に予め設定された汚泥掻寄機の駆動装置600に対する自動運転指令信号S13を出力する。これにより、OR1を介してスイッチSW24に高レベルの制御信号S9が供給されることにより、自動運転指令に応答してSW24がターンオンし、汚泥掻寄機の駆動装置を駆動する。同様に、信号S6が高レベルであることから、スカムスキマ用の自動運転指令回路150をアクティブ状態とし、該回路に予め設定されたスカムスキマの駆動装置700に対する自動運転指令信号S14が出力される。これにより、OR2を介してスイッチSW25に高レベルの制御信号S10が供給されるので、自動運転指令に応答してスイッチSW25がターンオンし、スカムスキマの駆動装置700を駆動する。
【0030】
現場からの指令に基づいて通常運転モードで動作する場合
この通常運転モードでは、機器操作マスタ141の信号S1*が高レベル(「現場」を選択)となるよう設定され、機器制御マスタ143の出力信号S32が高レベル(すなわち、「通常運転」をするよう設定され、また、汚泥掻寄機操作選択回路145、及びスカムスキマ操作選択回路146の出力信号S5、及びS6がそれぞれ高レベル(「自動」を選択)に設定される。
信号S32が高レベルに設定されているので、OR5、OR7及びAND7を介して汚泥掻寄機用の自動運転指令回路149がアクティブ状態となり、また、OR5及びAND8を介してスカムスキマ用の自動運転指令回路150がアクティブ状態となる。したがって、自動モードの場合と同様に、これら回路からの運転指令信号が、OR1及びOR2を介して、制御信号S9及びS10としてスイッチSW24及びSW25に印加され、対応する駆動装置が運転指令信号に基づいて駆動される。
【0031】
現場からの指令に基づいて保守運転モードで動作する場合
保守運転モードでは、機器操作マスタ141の信号S1*が高レベル(「現場」を選択)となるよう設定され、電源切換マスタ142の信号S2*が高レベル(「手動」を選択)となるように設定され、機器制御マスタ143の出力信号S33が高レベル(すなわち、「保守運転」をするよう設定され、また、汚泥掻寄機操作選択回路145、及びスカムスキマ操作選択回路146の出力信号S5、及びS6がそれぞれ高レベル(「自動」を選択)に設定される。また、信号S2*が高レベルとなることから、電源選択回路144がアクティブ状態となり、保守運転モードでは、通常、オペレータにより、再生エネルギ源を使用するように選択され、これにより、OR4を介してスイッチSW12をターンオンさせる。これにより、再生エネルギ源300側から電力が供給される。
【0032】
そして、信号S33が高レベルとなることにより、OR6及びOR7を介してAND7の一方の入力が高レベルとなり、また、信号S5が高レベルであることから、AND7の出力が高レベルとなる。また、保守運転モードであることを示す高レベルの信号S33が自動運転指令回路149に供給されることから、該回路は、予め設定された保守運転指令に基づいて運転指令信号S13を出力する。これにより、OR1を介してスイッチSW24がターンオンされて、汚泥掻寄機の駆動装置600が駆動される。
【0033】
これにより、保守運転用の運転指令信号に基づき、再生可能エネルギ源からの電力が印加されて、汚泥掻寄機の駆動装置600が駆動される。保守運転モードでは、汚泥掻寄機は、例えば1日に2〜3回の割合で汚泥掻寄機のチェーンが1周すればよく、自動運転指令回路149は、そのようなタイミング及び時間幅の運転指令信号を出力する。再生可能エネルギ源300からの電力が低下しても、汚泥掻寄機を比較的低速で駆動しても問題がない。
【0034】
以上、商用電源及び再生可能エネルギ源からの電力供給に異常が生じていない状態についての動作を説明したが、自動運転モードで運転中に電力供給に異常が生じた場合について、以下に説明する。
【0035】
商用電源200からの電力で汚泥掻寄機又はスカムスキマの駆動装置600又は700が駆動されている状態で、障害等によって商用電源200からの電圧低下が生じた場合、それを電圧検出部130aが検出すると、その出力が低レベルとなる。その結果、AND3の出力が低レベルとなり、自動運転モードであるため、電源選択回路144の出力S4が低レベルであるため、OR3の出力信号が低レベルとなり、これにより、スイッチSW11をターンオフする。また、電圧検出部130aの出力信号が低レベルであるため、AND4の出力が高レベルとなり、OR4を介してスイッチSW12がターンオンされる。これにより、負荷すなわち汚泥掻寄機及びスカムスキマの駆動装置600及び700に供給される電力源が、商用電源200から再生エネルギ源300に切り替えられる。
【0036】
なお、再生可能エネルギ源300は、通常、手動運転モード及び保守運転モードで使用されて自動運転モードでは使用されないが、商用電源200に障害が生じた場合のみ、自動運転モードでもバックアップ電源として自動的に切替られ使用される。
また、通常運転モードにおいては、商用電源200に障害が生じない限り汚泥掻寄機の駆動電力として商用電源を使用するので、スカムスキマの駆動用に常に再生可能エネルギ源を用いるように制御してもよい。
さらに、保守運転モードの場合、掻寄チェーンの水面から露出する部分が、常に固定されないように、自動運転指令回路149に設定される運転指令における継続時間を設定することが好ましい。例えば、掻寄チェーンが整数周期+α移動することができるように設定すればよい。
【0037】
本発明は上記したように構成され、保守運転モードにおいて、汚泥掻寄機を1日に数回転程度、自動的に保守運転することができるので、樹脂製の掻寄チェーンのある特定の部分を常時空気中に露呈させることがなく、掻寄チェーンの劣化及び破断を低減することができる。また、保守運転モード以外のモードで運転中に商用電源が停電等の電力低下が生じた場合、それを検出して自動的に、使用される電源が商用電源から再生エネルギ源に切り替えられて汚泥掻寄機を駆動するので、沈殿池に汚泥が過度に堆積することを防止することができ、その結果、過度の堆積による汚泥掻寄機の運転不能状態を回避することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥掻寄機を制御するための制御システムであって、
商用電源からの電力と再生可能エネルギ源からの電力とを選択的に切り替える電源切替手段と、
汚泥掻寄機のフライト板の駆動装置に、電源切替手段によって切り替えられた電力を供給するか否かを切り替える負荷駆動スイッチング手段と、
汚泥掻寄機の運転を制御する制御手段であって、保守運転モードにおいて、電源切替手段及び負荷駆動スイッチング手段を制御して、再生可能エネルギ源からの電力を汚泥掻寄機のフライト板の駆動装置に印加するよう制御する制御手段と
を備えていることを特徴とする制御システム。
【請求項2】
請求項1記載の制御システムにおいて、
該システムは更に、保守運転モードにおいて、フライト板をどの程度の時間駆動させるかをオペレータが設定することができる設定手段を備え、
制御手段は、設定手段において設定された時間だけ、再生可能エネルギ源からの電力をフライト板の駆動装置に印加するよう制御する
ことを特徴とする制御システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の制御システムにおいて、負荷駆動スイッチング手段はさらに、
スカムスキマの駆動装置に、電源切換手段によって切り替えられた電力を供給するか否かを切り替える手段を備えている
ことを特徴とする制御システム。
【請求項4】
請求項1−3いずれかに記載の制御システムにおいて、該システムはさらに、
商用電源からの電圧を検出する電圧検出手段と、
電圧検出手段によって商用電源の電圧低下が検出された場合に、電源切換手段を制御して、商用電源からの電力を遮断して、再生可能エネルギ源からの電力をフライト板の駆動装置に供給するよう制御する手段と
を備えていることを特徴とする制御システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−52347(P2013−52347A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192354(P2011−192354)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(591030651)水ing株式会社 (94)