説明

汚泥掻寄機

【課題】汚泥掻寄機の駆動軸や主務スプロケットホイールに付設する歯飛び防止装置の据え付けに際して生じるその誤差を簡易な方法で吸収して軸受に過大な負荷をかけないようにした汚泥掻寄機を提供すること。
【解決手段】沈殿池P内に配設された主務スプロケットホイール1及び従動スプロケットホイール2間に張架された無端チェーン3にフライト4を取り付け、無端チェーン3を循環駆動させることによって池底Pbに沈殿した汚泥を汚泥ピットPa側に掻き寄せるようにした汚泥掻寄機において、沈殿池Pの側壁Wに軸受10を介して回転可能に支持した駆動軸5に主務スプロケットホイール1及び歯飛び防止部材Bを備え、歯飛び防止部材Bを取り付ける二叉ブラケット8と沈殿池Pの側壁Wに突設した回転防止用ブラケット7の据付誤差を吸収する据付誤差吸収部Dを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥掻寄機に関し、特に、沈砂池内側壁等の土木構造物に軸受を介して回転可能に駆動軸を支持し、かつ該駆動軸に主務スプロケットホイール及びこれに付設する歯飛び防止部材を取り付ける際、これらの据え付けに際して生じるその誤差を吸収して軸受に過大な負荷をかけないようにした汚泥掻寄機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下水処理場や浄水場においては、泥土や土砂(以下、「汚泥物質」という。)が混入している流入水を一端沈殿池に導入し、ここで流入水に含まれている前記汚泥物質を沈殿分離させるようにしている。そして、沈殿した汚泥物質を、沈殿池内に設置した汚泥掻寄機にて該沈殿池の一端部に配置した汚泥ピット内に集泥した後、汚泥ポンプ等を用いて池外へ排出するようにしている。
【0003】
この汚泥掻寄機として、例えば、図3の概略図で示すようなチェーンフライト式汚泥掻寄機が用いられている(特許文献1−2参照。)。
このチェーンフライト式汚泥掻寄機は、駆動軸5に主務スプロケットホイール1を、従動軸に従動スプロケットホイール2をそれぞれ取り付け、主務スプロケットホイール1及び従動スプロケットホイール2を沈殿池P内に配設し、かつ主務スプロケットホイール1と従動スプロケットホイール2の間に所定間隔で汚泥掻き寄せ用のフライト4を取り付けた無端チェーン3を張架し、駆動軸5を駆動用モータMにて駆動することで無端チェーン3を沈殿池内で循環駆動する際、フライト4にて沈殿池の内底に沈殿する汚泥を汚泥ピット側に掻き寄せ排出するように構成している。
【0004】
ところで、駆動軸5は、一般的に対向する沈砂池の側壁にそれぞれ軸受を取り付け、この軸受間に架け渡すようにして回転可能に取り付けている。
しかし、この駆動軸5を沈砂池の側壁等の土木構造物に据え付けるにあたり、製作及び/又は据え付けに誤差が生じることは避けられない。
さらには、主務スプロケットホイール1の外周部に歯飛び防止部材を取り付ける際、この歯飛び防止部材の製作及び/又は据え付けに誤差が生じたりする。
この歯飛び防止部材の取り付け時の据付誤差により部材同士が引っ張りあう状態となり、これが軸受に過大な負荷を与えるものとなる。
この軸受に対しての過大な負荷は、軸受や歯飛び防止部材に不具合が生じさせたり、破損の起因となったりする。
また、このため、駆動軸や歯飛び防止部材の据え付けに必要以上の手数を要し、かつまたその据え付けに熟練を要する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、汚泥掻寄機の駆動軸や主務スプロケットホイールに付設する歯飛び防止部材の据え付けに際して生じるその誤差を簡易な方法で吸収して軸受に過大な負荷をかけないようにした汚泥掻寄機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の汚泥掻寄機は、沈殿池内に配設された主務スプロケットホイール及び従動スプロケットホイール間に張架された無端チェーンにフライトを取り付け、無端チェーンを循環駆動させることによって池底に沈殿した汚泥を汚泥ピット側に掻き寄せるようにした汚泥掻寄機において、沈殿池の側壁に軸受を介して回転可能に支持した駆動軸に主務スプロケットホイール及び歯飛び防止部材を備え、歯飛び防止部材を取り付ける二叉ブラケットと沈殿池の側壁に突設した回転防止用ブラケットの据付誤差を吸収する据付誤差吸収部を備えたことを特徴とする。
【0007】
この場合において、据付誤差吸収部を、回転防止用ブラケットに備えた取付板に形成した長孔と、該長孔に挿通し、二叉ブラケット間に架け渡した取合ピンとで構成することができる。
【0008】
また、取合ピンに二叉ブラケット間の間隔を保持するスペーサパイプを外嵌することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の汚泥掻寄機によれば、沈殿池の側壁に軸受を介して回転可能に支持した駆動軸に主務スプロケットホイール及び歯飛び防止部材を備え、歯飛び防止部材を取り付ける二叉ブラケットと沈殿池の側壁に突設した回転防止用ブラケットの据付誤差を吸収する据付誤差吸収部を備えることにより、据付誤差による軸受への過大な負荷を未然に防止することができるので、軸受その他の部材の破損や故障を防止して汚泥掻寄機の安全運転を行うことができる。
【0010】
また、据付誤差吸収部を、回転防止用ブラケットに備えた取付板に形成した長孔と、該長孔に挿通し、二叉ブラケット間に架け渡した取合ピンとで構成することにより、簡単な機構であるため新設或いは既設を問わずすべての汚泥掻寄機に適用でき、かつ確実に据付誤差を吸収することができる。
【0011】
また、取合ピンに二叉ブラケット間の間隔を保持するスペーサパイプを外嵌することにより、取合ピンに螺合するナットの締め付けによっても二叉ブラケットの下端間隔をスペーサパイプにて一定に保持できるので、据付誤差を吸収可能にして両部材間の締結が確固に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の汚泥掻寄機の一実施例を示す外観斜視図である。
【図2】回転防止用ブラケットの取付板と二叉ブラケットとの取合ピンによる係合状態を示す外観斜視図である。
【図3】図2の断面図である。
【図4】汚泥掻寄機の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の汚泥掻寄機の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0014】
図1〜図3に、本発明の汚泥掻寄機の一実施例を示す。
下水処理場や浄水場に流入する流入水は、該下水処理場等に設置された沈殿池P内にまず導入され、ここで固液分離により汚泥物質が沈殿して分離されるが、この沈殿池P内には汚泥掻寄機Aが設置されているので、沈殿分離した汚泥物質は該汚泥掻寄機Aにて汚泥ピットPa側へ掻き寄せられて池外へ排出除去される。
【0015】
この汚泥掻寄機Aとしては、特に限定されるものではないが、例えば、図4に示すように、沈殿池P内に配置された主務スプロケットホイール1(駆動スプロケットホイール)と複数の従動スプロケットホイール2間に無端チェーン3を張架し、かつ該無端チェーン3に複数のフライト4を取り付け、該主務スプロケットホイール1を介して無端チェーン3を駆動するように構成している。
この場合、これらのスプロケットホイール1、2間に張架される無端チェーン3の一部が池底Pbに沿うように配置されているので、無端チェーン3が循環駆動される際、無端チェーン3が池底Pbに沿って移動することにより該無端チェーン3に取り付けられたフライト4にて池底Pbに沈殿した汚泥物質を汚泥ピットPa側に掻き寄せられる。
【0016】
また、主務スプロケットホイール1は、駆動軸5にコッター等を介して固定的に取り付けるようにしたボス(図示省略)に、2枚の円盤1a、1aを対峙するように配設固定し、かつ該円盤外周部においてその周回方向に沿って所定間隔で複数本のピン1Pを植設するようにして一体とし、この2枚の対向する円盤間内に無端チェーン3の一部が挿入するようして該ピン1Pと無端チェーン3の各駒に形成したノッチ(図示省略)とが確実に噛合し、動力を伝達できるように構成するものである。
なお、無端チェーン3は、ステンレス等の鋼材を用いることもできるが、汚泥を含む汚水中で使用環境が極めて劣悪な下でも耐用性を図るよう、合成樹脂製とすることができる。
【0017】
また、主務スプロケットホイール1を固定的に取り付ける駆動軸5には、主務スプロケットホイール1だけでなく、図3に示すように、該駆動軸端部に池上等に設置された駆動用モータMにて駆動される駆動用スプロケットホイール6を取り付け、駆動用モータMにて駆動力を駆動軸5に伝達し、駆動軸5と共に主務スプロケットホイール1を回転駆動するようにする。
この駆動軸5は、図1に示すように、沈殿池の側壁Wの内側に取り付けた駆動軸支持用の軸受10にて駆動軸5の端部を回転可能に支持する。そして、この駆動軸5には固定的に上述の如く構成した主務スプロケットホイール1を取り付けるが、この主務スプロケットホイール取り付け位置にさらに歯飛び防止部材Bを配設する。
【0018】
この歯飛び防止部材Bは、主務スプロケットホイールの外周面にその周回方向に沿って配設する歯飛び防止プレートBpと、この歯飛び防止プレートBpを軸受9に固定するブラケットBbとより構成しているが、この歯飛び防止プレートBpは、主務スプロケットホイール1の外周部のチェーン巻き掛け角度領域となるように配設するものとする。
これにより、無端チェーン3に所定以上の負荷がかかって無端チェーン3が主務スプロケットホイール1より飛び上がり主務スプロケットホイール1から外れるようとする、所謂歯飛びを防止して安定した駆動が行われるようにしている。
【0019】
この歯飛び防止部材Bの駆動軸5への取り付けは軸受9を介して行うが、この駆動軸5へ軸受を介して取り付けるだけでは駆動軸5の回転により歯飛び防止部材Bも共に回転するものとなる。この共回りを防止するため、回転防止用ブラケット7を用いる。
この回転防止用ブラケット7は、図1〜図2に示すように、沈殿池の側壁Wの内側で、かつ駆動軸5の下方で平行するように突設固定し、この回転防止用ブラケット7の先端部に二叉ブラケット8を突設し、この二叉ブラケット上部に前記軸受9を取り付けるものである。
【0020】
この場合、駆動軸5及び歯飛び防止部材Bの据え付け時に生じる据付誤差にて軸受9に過大な負荷をかけるものとなる。この据付誤差を吸収するため、回転防止用ブラケット7と二叉ブラケット8の下端とを直接ねじ等を用いて固定的に取り付けるのではなく、前記据付誤差を吸収できる構成とする。
これは、図2〜図3に示すように、回転防止用ブラケット7の端部の上面に取付基台70を溶接、ねじ等にて固定し、この取付基台70上に2枚の取付板71を互いに突設するようにしたベースプレート72をねじ73にて固定し、この対向する2枚の取付板71、71にそれぞれ上下方向の長孔71h、71hを穿設とともに、この取付板71の長孔71h内にスペーサパイプ11の端部を挿通し、かつ該スペーサパイプ11内に取合ピン12を挿通し、これにナット13を螺合して固定する。
したがって、長孔71hの横方向の内径はスペーサパイプ11を挿通できる程度とし、縦方向の長さは、横方向の内径よりも大きい、据付誤差を吸収できる程度の長さとなるようにする。
【0021】
また、この場合、スペーサパイプ11の端部は取付板71の長孔71h内に嵌合されるもその端面は、図3に示すように、取付基台70の取付板71の外側方に配設される二叉ブラケット8の内側面と直接当接するようにするとともに、これにより二叉ブラケット8の内側面と取付板71の外側面との間には、若干の隙間Cを生じるようにする。
また、これにより、図3に示すように、取合ピン12に螺合するナット13を二叉ブラケット8の外側から固く締結しても、その締め付け力は二叉ブラケット8の両脚片とスペーサパイプ11間にて作用し、取付板71と二叉ブラケット8とは直接押圧設しないため、回転防止用ブラケット7と二叉ブラケット8間にて長孔に沿って上下方向の移動を許容するようになって据付誤差が吸収され、かつ歯飛び防止部材Bの駆動軸5との共回りが防止される。
【0022】
なお、二叉ブラケット8の上部には歯飛び防止部材Bの支持用の軸受9を支持し、この軸受9によりブッシュ90を介して、駆動軸5を抱持するようにして支持するようにする。
また、軸受9は上下に2分割とし、下側の軸受部を二叉ブラケット8の上部に溶接等により一体に固定し、この下側の軸受部に、上側の軸受部をねじ等にて一体に固定するようすることもできる。
これにより、軸受9や主務スプロケットホイール1の保守点検を行い易くすることができる。
【0023】
上述のように構成することにより、汚泥掻寄機の駆動軸5の据え付けや、主務スプロケットホイール1に付設する歯飛び防止部材Bの据え付けに際して誤差が生じても、取付板71の長孔71h内にて取合ピン12を挿通したスペーサパイプ11が上下方向に移動してその誤差が自然と吸収される。
また、このとき、ナット13による取合ピン12の締結を強くしても二叉ブラケット8の脚片と取付板41との間にはスペーサパイプ11により常に若干の隙間が形成されるのでスペーサパイプ11の移動に支障を与えない。
このように、誤差を簡易な方法で吸収することができるので軸受9への過大な負荷をかけず軸受9の破損を未然に防止することができる。
【0024】
以上、本発明の汚泥掻寄機について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の汚泥掻寄機は、主務スプロケットホイールを取り付けた駆動軸や歯飛び防止部材の据え付け時、その据付誤差を自然に吸収できるという特性を有していることから、劣悪な環境下で使用される汚泥掻寄機の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0026】
A 汚泥掻寄機
B 歯飛び防止部材
D 据付誤差吸収部
P 沈殿池
Pa 汚泥ピット
Pb 池底
M 駆動用モータ
1 主務スプロケットホイール
1P ピン
1a 円盤
2 従動スプロケットホイール
3 無端チェーン
4 フライト
5 駆動軸
6 駆動用スプロケットホイール
7 回転防止用ブラケット
70 取付基台
71 取付板
71h 長孔
72 ベースプレート
73 ねじ
8 二叉ブラケット
9 軸受
90 ブッシュ
10 駆動軸支持用の軸受
11 スペーサパイプ
12 取合ピン
13 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈殿池内に配設された主務スプロケットホイール及び従動スプロケットホイール間に張架された無端チェーンにフライトを取り付け、無端チェーンを循環駆動させることによって池底に沈殿した汚泥を汚泥ピット側に掻き寄せるようにした汚泥掻寄機において、沈殿池の側壁に軸受を介して回転可能に支持した駆動軸に主務スプロケットホイール及び歯飛び防止部材を備え、歯飛び防止部材を取り付ける二叉ブラケットと沈殿池の側壁に突設した回転防止用ブラケットの据付誤差を吸収する据付誤差吸収部を備えたことを特徴とする汚泥掻寄機。
【請求項2】
据付誤差吸収部を、回転防止用ブラケットに備えた取付板に形成した長孔と、該長孔に挿通し、二叉ブラケット間に架け渡した取合ピンとで構成したことを特徴とする請求項1記載の汚泥掻寄機。
【請求項3】
取合ピンに二叉ブラケット間の間隔を保持するスペーサパイプを外嵌したことを特徴とする請求項1又は2記載の汚泥掻寄機。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−232261(P2012−232261A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102920(P2011−102920)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)