説明

汚泥減容化装置及びこれを用いた汚泥処理設備並びに汚泥減容化方法

【課題】排水の中の汚泥を減容化し易くする。
【解決手段】汚泥減容化装置1が、装置圧力ポンプ2で加圧された汚泥流体を噴射する噴射ノズル11と、噴射ノズル11の下流側に設けられ噴射ノズル11よりも大きな直径の噴射管12と、噴射管12の下流側に設けられ噴射管12を流れる汚泥流体が衝突する細胞膜破壊壁18を有する噴射管12よりも大きな直径の前方管14と、を具え、噴射ノズル11と噴射管12との間に噴射管12内に空気を導入可能な空気導入口13が形成され、噴射管12内部には、噴射管12の内径よりも外径が小さい管状のパワーチューブ16が噴射管12と略同心に設けられており、当該パワーチューブ16が噴射管12の長手方向に前方管14に向けて延びている。また、前方管14の細胞膜破壊壁18に当該細胞膜破壊壁18から突出する複数の突起部19が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥減容化装置及びこれを用いた汚泥処理設備並びに汚泥減容化方法に関し、特に、汚泥を減容化するために汚泥の中に含まれる微生物の細胞膜を可溶化し易く構成した汚泥減容化装置及びこれを用いた汚泥処理設備並びに汚泥減容化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水等の汚水を処理する方法として、微生物を用いた生物学的な処理方法が知られている。このような処理方法では、微生物を用いて汚水中の有機物を分解処理する。しかしながら、微生物による分解処理の過程で大量の余剰汚泥が発生する。このような余剰汚泥は産業廃棄物であり、大量に発生する余剰汚泥を可能な限り減容化する処理が必要となる。
【0003】
余剰汚泥を減容化するには、余剰汚泥を構成する微生物細胞の細胞膜を破壊(可溶化)することが必要である。余剰汚泥を減容化するための処理方法として、機械的処理法、キャビテーション処理法といった、様々な処理方式がある。これらの処理方法のうち、例えばキャビテーション処理法においては、ポンプによって加圧した汚泥流体を減容化処理装置に噴射導入し、減容化処理装置において急激に流体を減圧することによってキャビテーションを発生させ、気泡の崩壊時に加えられる衝撃力により汚泥を可溶化するよう構成されている。さらに、減容化処理装置内に衝突板を設けて、減容化処理装置に噴射導入された汚泥を衝突板に衝突させることにより、キャビテーションによる衝撃力と衝突板に衝突する衝撃力との複合的な作用によって汚泥の減容化を行っている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2007−152268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記公報にあるようなキャビテーション処理法では、噴射導入された汚泥流体が、衝突板に向かう過程でキャビテーションにより大幅に減速されるため衝突板に衝突する衝撃力が弱くなり、汚泥を十分に減容化することができない。また、キャビテーションを利用した場合、気泡の崩壊時の衝撃力により減容化処理装置に微小な破壊が起き易く処理装置の寿命が短いことが問題となっている。
【0005】
以上のような課題に鑑みて、本発明は、汚泥に十分な衝撃力を加えて減容化することができるように構成された汚泥減容化装置及びこれを用いた汚泥処理設備並びに汚泥減容化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明に係る汚泥減容化装置は、加圧手段(例えば、実施形態における圧力ポンプ2)で加圧された汚泥流体を噴射する噴射ノズルと、噴射ノズルの下流側に設けられ噴射ノズルよりも大きな直径の噴射管と、噴射管の下流側に設けられ噴射管を流れる汚泥流体が衝突する衝突面(例えば、実施形態における細胞膜破壊壁18)と、噴射ノズルと噴射管との間の噴射管内に空気を導入可能な空気導入口とを具える。
【0007】
また、上記構成の汚泥減容化装置において、噴射管内部には、噴射管の内径よりも外径が小さい管状のパワーチューブが噴射管と略同心に設けられており、当該パワーチューブが噴射管の長手方向に衝突面に向けて延びているのが好ましい。
【0008】
また、上記構成の汚泥減容化装置において、衝突面に、当該衝突面から突出する複数の突起部(例えば、円筒形又は三角錐)が設けられているのが好ましい。
【0009】
また、上記構成の汚泥減容化装置において、噴射ノズルから噴射される汚泥流体の噴射圧力が、0.7〜0.9MPaの圧力であるのが好ましい。
【0010】
一方、前記課題を解決するために本発明に係る汚泥処理設備は、上記汚泥減容化装置と、噴射ノズルに流体を供給する加圧手段と、汚泥流体を収容する汚泥槽とを具える。
【0011】
また、上記構成の汚泥処理設備において、汚泥流体を減容化し易くするための汚泥可溶化液を貯留する汚泥可溶化液貯留槽を具えているのが好ましい。
【0012】
一方、前記課題を解決するために本発明に係る汚泥減容化方法は、加圧手段で加圧された汚泥流体を噴射する噴射ノズルと、噴射ノズルの下流側に設けられ噴射ノズルよりも大きな直径の噴射管と、噴射管の下流側に設けられ噴射管を流れる汚泥流体が衝突する衝突面と、を具える汚泥減容化装置を用いて、加圧手段で加圧された汚泥流体を噴射ノズルから噴射し、衝突面に汚泥流体を衝突させることにより汚泥を減容化させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の汚泥減容化装置及びこれを用いた汚泥処理設備並びに汚泥減容化方法によれば、汚泥減容化装置を構成する噴射ノズルから噴射された圧力流が噴射管内いっぱいに広がったときに高速移動するピストン状態となり、当該圧力流上流側の噴射管内に負圧が生じる。そして、この負圧により汚泥減容化装置に形成された空気導入口から噴射管内に空気が自然吸引され、汚泥流体を噴射管の下流側に向けて圧送する。これにより、噴射ノズルの上流側と下流側との圧力差が緩和されるため、キャビテーションが発生せず汚泥高速流体が減速することがなく、細胞膜破壊壁に衝突する衝撃力をキャビテーションが発生する場合よりも遙かに高くすることができる。また、キャビテーションが発生しないことから装置が破壊されず、汚泥減容化装置の使用寿命を従来よりも伸ばすことができる。
【0014】
また、汚泥減容化装置の噴射管内部にパワーチューブが設けられている。これにより、噴射ノズルから噴射された高圧の汚泥流体が、噴射管内を拡散せずにパワーチューブに沿って案内されて棒状の高速流体となり、高速を保持したまま下流側に流れて前方に位置する衝突面に高い衝撃力で衝突する。これにより、汚泥の中に含まれる微生物の細胞膜を高い衝撃力で破壊させて汚泥を減容させることが可能である。
【0015】
なお、パワーチューブによって高速を保持したまま汚泥流体が衝突する衝突面に、当該衝突面から突出する複数の突起部(円筒状又は三角錐等)を設ければ、これらの突起部に汚泥中の微生物の細胞膜が衝突することで、細胞膜がさらに破壊され易くなり、効率よく細胞膜を破壊することができる。
【0016】
さらに、苛性ソーダや安定化次亜塩素酸水といった微生物の細胞膜を軟らかくするための汚泥可溶化液と処理対象の汚泥とを予め混合した状態で汚泥減容化装置に送るようにすれば、汚泥減容化装置での汚泥流体の減容化処理をより行い易くすることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
ここで、本発明に係る汚泥減容化装置及びこれを用いた汚泥処理設備並びに汚泥減容化方法の実施形態について説明する。図1は、本発明に係る汚泥処理設備の全体構成を示す概略図である。図1に示すように、汚泥処理設備100は、汚泥を減用化するための汚泥減容化装置1と、汚泥槽3に設置され当該汚泥減容化装置1に汚泥を含む排水を加圧供給する圧力ポンプ2と、汚泥を含む排水を貯留するための汚泥槽3と、汚泥の中に含まれる微生物を処理する汚泥可溶化液を貯留するための汚泥可溶化液貯留槽4と、を具えている。
【0018】
圧力ポンプ2は公知の圧力ポンプを用いることができ、処理対象となる汚泥槽3内の汚泥を吸引して汚泥減容化装置1側に圧送する。また、汚泥可溶化液貯留槽4から汚泥槽3に汚泥可溶化液を送ることができるよう構成されており、汚泥槽3において汚泥と汚泥可溶化液とが混合した上で汚泥減容化装置1側に圧送される。また図示しないが、圧力ポンプ2の吸引口には必要十分なフィルタが設けられており、汚泥槽3内の汚れ成分が前段で濾過されるようになっている。汚泥減容化装置1に送られた汚泥は、汚泥減容化装置1内で減容され、再び汚泥槽3に戻り汚泥槽3内に貯留する。
【0019】
図2は、汚泥減容化装置1の詳細を示す拡大図である。本図に示すように、汚泥減容化装置1は、最も上流側(圧力ポンプ2側)に設けられ図示しない圧力ゲージが設置される圧力ゲージ管15と、圧力ゲージ管15の下流側に接続された噴射ノズル設置管17の中に設けられ圧力ポンプ2で加圧された汚泥流体を噴射する噴射ノズル11と、噴射ノズル設置管17に接続されて当該噴射ノズル11の下流側に設けられ噴射ノズル11よりも大きな直径の噴射管12と、噴射管12の下流側に噴射管12の長手方向に対して略垂直方向に延びるよう接続された前方管14とを具えている。なお、噴射管12の内径は、その上流側から下流側にわたって殆ど同じ内径である。
【0020】
噴射ノズル11は先端側(下流側)が細くなっており、圧力ポンプ2からの汚泥流体が噴射ノズル11を通過する際にさらに加圧され、毎秒約30〜約45m(例えば、圧力流5kg/cmでの速度が毎秒31.30m、圧力流7kg/cmでの速度が毎秒37.04m、圧力流9kg/cmでの速度が毎秒42.00m、圧力流10kg/cmでの速度が毎秒44.27m)の速度で噴射管12に向けて噴射される構成となっている。噴射管12に噴射される噴射速度として、上記の範囲が好適であるが、その理由は、これらの速度よりも噴射速度を低くすると汚泥流体が前方管14に衝突する速度が遅いため減容化しにくくなり、逆にこれらの速度よりも噴射速度が高い場合には減容化装置1にかかる衝撃力に耐え得るよう装置を大型化する必要があり又は衝撃力により装置が壊れやすくなるためである。又、10kg/cm以上の圧力の汚泥流体が噴射される公知の圧力ポンプは汎用ポンプではなく、汎用的な使用が難しい高価な特殊圧力ポンプであるため、本装置に使用する圧力ポンプとしては適さない。
【0021】
噴射管12内部には、噴射管12の内径よりも外径が小さい管状のパワーチューブ16が噴射管12と略同心に設けられている。このパワーチューブ16は、噴射管12の内部を噴射間の下流側からその上流側に向かって長手方向に延びている。このような構成により、噴射ノズル11から噴射管12に噴射された汚泥流体の高圧のジェット流が、パワーチューブ16に沿って案内されることにより拡散せずに棒状の高速流体となり、高速を保持したまま噴射管12の前方に位置する前方管14の内壁に衝突する。この時の衝撃力により、汚泥の中の微生物の細胞膜が破壊して減容化される。
【0022】
噴射ノズル11と噴射管12との間の噴射ノズル設置管17には、噴射ノズル11と噴射管12との間に設けられた隙間と汚泥減容化装置1の外部とを連通させる空気導入口13が形成されている。この空気導入口13は汚泥減容化装置1の外側表面に環状に複数配設されており、ここから噴射管12の中へと外気が取り込まれるよう構成されている。
【0023】
上記のように、圧力ポンプ2により圧送された汚泥流は噴射ノズル11にてさらに加圧され、噴射ノズル11から勢いよく噴射される。噴射ノズル11からのジェット流が噴射管内で拡がることによって高速移動するピストン状態となり、噴射管12の上流側に真空状態が発生する。このように噴射管12の上流側が負圧になることで、空気導入口13から噴射管12内に空気が自然吸引される。この状態では、噴射ノズルの上流側から下流側にわたる高速流体の圧力分布は一様となり減圧される部分が生じないため、キャビテーションが発生しない。したがって、汚泥高速流体は減速されず、前方管14の内壁に衝突する衝撃力が高く汚泥の中の微生物の細胞膜の破壊を効率的に行うことが可能となる。また、キャビテーションが発生しないことから、汚泥減容化装置1が壊れにくくなりその使用寿命を伸ばすことができる。
【0024】
前方管14の内壁面上であって噴射管12の長手方向下流側に位置する部分には、細胞膜破壊壁18が設けられている。この細胞膜破壊壁18の表面には、例えば円柱状又は三角錐状の突起部19が多数設けられている(明瞭のため、図2では三角錐状の突起部19を細胞膜破壊壁18に対して誇張して図示している)。これにより、噴射管12内を高速で流れてきた汚泥流体の中の微生物の細胞膜が、細胞膜破壊壁18表面に形成された突起部19に衝突することで破壊され易くなり、効率よく細胞膜を破壊することができる。また、前方管14の内径は噴射管12の内径の2倍以上に設定されており、これにより表面積の大きな細胞膜破壊壁18が前方管14の内部に設置され、細胞膜破壊壁18に衝突する汚泥流体の中の微生物の細胞膜を効率よく破壊することが可能となる。
【0025】
なお、汚泥を減容化するためには、噴射管12内に噴射された高速の汚泥流体を何らかの手段に衝突させればよいため、汚泥減容化装置1は上記のような構成に限られない。上述の実施形態は前方管14の細胞膜破壊壁18に汚泥を衝突させる構成であるが、例えば、前方管14を噴射管12に接続せずに噴射管12の下流側出口付近に衝突板を設け、この衝突板に高速の汚泥流体を衝突させる構成であってもよい。また、汚泥の中の微生物の細胞膜を十分に破壊させることが可能であれば、必ずしも細胞膜破壊壁18面上に突起部19を形成する必要はない。
【0026】
さらに、上述のように、汚泥流体には微生物の細胞膜を軟らかくするための汚泥可溶化液が混合しており、細胞膜破壊壁18に衝突する汚泥流体の中の微生物の細胞膜が破壊し易くなっている。汚泥可溶化液として、苛性ソーダを含むpH11〜12のアルカリ性溶液、又は除菌効果を有する安定化次亜塩素酸水が好適であるが、これらに限定されず他のものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の汚泥処理設備の全体構成を示す概略図である。
【図2】図2は、図1に示す汚泥減容化装置の詳細を示す概略図である。
【符号の説明】
【0028】
1 汚泥減容化装置
2 圧力ポンプ(加圧手段)
3 汚泥槽
4 汚泥可溶化液貯留槽
11 噴射ノズル
12 噴射管
13 空気導入口
14 前方管
16 パワーチューブ
17 噴射ノズル設置管
18 細胞膜破壊壁(衝突面)
19 突起部
100 汚泥処理設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥減容化装置であって、
加圧手段で加圧された汚泥流体を噴射する噴射ノズルと、前記噴射ノズルの下流側に設けられ前記噴射ノズルよりも大きな直径の噴射管と、前記噴射管の下流側に設けられ前記噴射管を流れる汚泥流体が衝突する衝突面と、前記噴射ノズルと前記噴射管との間の前記噴射管内に空気を導入可能な空気導入口とを具えることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記噴射管内部には、前記噴射管の内径よりも外径が小さい管状のパワーチューブが前記噴射管と略同心に設けられており、当該パワーチューブが前記噴射管の長手方向に前記衝突面に向けて延びていることを特徴とする請求項1に記載の汚泥減容化装置。
【請求項3】
前記衝突面に、当該衝突面から突出する複数の突起部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の汚泥減容化装置。
【請求項4】
前記噴射ノズルから噴射される汚泥流体の噴射圧力が、0.7〜0.9MPaの圧力であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の汚泥減容化装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の汚泥減容化装置と、前記噴射ノズルに流体を供給する加圧手段と、汚泥流体を収容する汚泥槽とを具えることを特徴とする汚泥処理設備。
【請求項6】
さらに、汚泥流体を減容化し易くするための汚泥可溶化液を貯留する汚泥可溶化液貯留槽を具えていることを特徴とする請求項5に記載の汚泥処理設備。
【請求項7】
汚泥減容化方法であって、
加圧手段で加圧された汚泥流体を噴射する噴射ノズルと、前記噴射ノズルの下流側に設けられ前記噴射ノズルよりも大きな直径の噴射管と、前記噴射管の下流側に設けられ前記噴射管を流れる汚泥流体が衝突する衝突面と、を具える汚泥減容化装置を用いて、
前記加圧手段で加圧された汚泥流体を前記噴射ノズルから噴射し、前記衝突面に汚泥流体を衝突させることにより汚泥を減容化させることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−82574(P2010−82574A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255986(P2008−255986)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(592101736)株式会社日本水処理技研 (9)
【Fターム(参考)】