説明

汚泥濃縮方法及び汚泥濃縮システム

【課題】十分な汚泥濃縮効果及び濃縮汚泥の排出の容易性を発揮すると共に、汚泥濃縮操作の連続高速化を実現しつつ、構成の簡素化やコンパクト化を図る汚泥濃縮方法及び汚泥濃縮システムの提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、原汚泥を常圧下又は減圧下で水平又は略水平方向に灌流させ、分離汚泥と脱離液との固液分離を図る固液分離工程と、上記固液分離工程の下流において、減圧下で上記分離汚泥を発泡ガスと同伴させ、垂直又は略垂直方向に浮上させて濃縮化を図り浮上汚泥を得る浮上濃縮工程とを有する汚泥濃縮方法及び汚泥濃縮システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥濃縮方法及び汚泥濃縮システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下水汚泥などの汚泥を濃縮、脱水等して処理する汚泥処理技術として、様々な汚泥処理方法や汚泥処理システム等が提供されている。このような汚泥を濃縮する技術としては、例えば、真空の減圧容器内に汚泥を投入し、汚泥中の溶存ガスを減圧発泡させ、発泡したガスに汚泥の固体分を同伴させ浮上させることで固液分離を行い、汚泥の濃縮化を図るという技術が知られている。
【0003】
このように、汚泥の固体分と減圧発泡させた溶存ガスとを同伴させて浮上させ、固液分離することで汚泥を濃縮する技術としては、例えば、汚泥を供給する供給口を上部に有し下部に排出口を有する密閉可能な減圧容器を、この減圧容器の排出口から汚泥貯留槽へ汚泥を排出する汚泥排出管の下端をシールする液面に作用する大気圧と減圧容器内の汚泥圧力とがつり合う高さよりも高い位置に配置し、減圧容器内を汚泥で満たした後、減圧容器内の汚泥を排出口から自然落下によって排出することで容器内に真空を形成し、この真空の容器内のほぼ中間位置まで汚泥を供給して汚泥中の溶存ガスを減圧発泡させ、発泡したガスに汚泥の固体分を同伴させ浮上させて固液分離を図る汚泥濃縮装置及び汚泥処理方法が挙げられる(特許第3781755号公報等)。
【0004】
しかしながら、上述の汚泥濃縮装置及び汚泥処理方法は、減圧下で汚泥をかき寄せる機構を配設することが困難であり、減圧容器内で浮上分離した高濃度かつ高粘度の汚泥を減圧容器内の液圧のみで排泥する必要があることから、高濃度かつ高粘度まで汚泥を濃縮することができず、その結果、十分な汚泥濃縮効果及び濃縮汚泥の排出の容易性を満足するには至っていない。また、減圧容器内の減圧操作を所謂サイフォンの原理を利用した排液操作により行う必要があるため、給泥操作を連続して行うことができず、汚泥濃縮操作の連続高速化を図ることが困難である。さらに、減圧容器内の減圧操作をサイフォンの原理を利用して行うことから、減圧容器を大気圧液面から約10m程度の位置に配設する必要があり、構成の簡素化やコンパクト化を図ることが困難である。
【0005】
つまり、十分な汚泥濃縮効果及び濃縮汚泥の排出の容易性を発揮すると共に、汚泥濃縮操作の連続高速化を実現しつつ、構成の簡素化やコンパクト化を図る汚泥濃縮方法及び汚泥濃縮システムは、未だ提供されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3781755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、これらの不都合に鑑みてなされたものであり、十分な汚泥濃縮効果及び濃縮汚泥の排出の容易性を発揮すると共に、汚泥濃縮操作の連続高速化を実現しつつ、構成の簡素化やコンパクト化を図る汚泥濃縮方法及び汚泥濃縮システムの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、
原汚泥を常圧下又は減圧下で水平又は略水平方向に灌流させ、分離汚泥と脱離液との固液分離を図る固液分離工程と、
上記固液分離工程の下流において、減圧下で上記分離汚泥を発泡ガスと同伴させ、垂直又は略垂直方向に浮上させて濃縮化を図り、浮上汚泥を得る浮上濃縮工程と
を有する汚泥濃縮方法である。
【0009】
当該汚泥濃縮方法は、上記固液分離工程を有することで、常圧下又は減圧下において原汚泥が水平又は略水平方向に灌流するにつれて原汚泥中の溶存ガスが発泡し、原汚泥が発泡ガスを含む分離汚泥と脱離液とに分離され、その結果、汚泥の固液分離を効果的かつ確実に実現できると共に、このような灌流操作により固液分離を停止させることなく連続的かつ高速に行うことができる。また、当該汚泥濃縮方法は、上述の固液分離工程の下流において上記浮上濃縮工程を有することで、固液分離工程で分離された分離汚泥の溶存ガスが減圧下で発泡し、かかる分離汚泥を発泡ガスに同伴させて垂直又は略垂直方向に浮上させ、その結果、浮上した分離汚泥の層が厚く形成され、分離汚泥の圧密による濃縮効果を一層向上させることができる。加えて、このような高濃度かつ高粘度の浮上汚泥を、垂直又は略垂直方向の浮上移動の最終地点の位置、即ち上方から容易に排出できることから、当該汚泥濃縮方法は、濃縮汚泥の排出の容易化を図ることができる。さらに、当該汚泥濃縮方法は、上述した原汚泥の灌流及び分離汚泥の浮上という一連の過程において原汚泥の分離及び分離汚泥の濃縮を達成できることから、給泥操作を連続して行うことができ、汚泥濃縮操作の連続高速化を実現ことができる。つまり、当該汚泥濃縮方法は、上述の固液分離工程と浮上濃縮工程とを組み合わせて有することで、十分な汚泥濃縮効果、濃縮汚泥の排出の容易化、汚泥濃縮操作の連続高速化を、簡素でコンパクトな構成により達成することができる。
【0010】
上記固液分離工程において常圧下で原汚泥を水平又は略水平方向に灌流させる場合、上記浮上濃縮工程における最上位の負圧としては、5kPa以上25kPa以下が好ましい。このように、上記固液分離工程において常圧下で原汚泥を水平又は略水平方向に灌流させる場合、浮上濃縮工程における最上位の負圧を上記範囲とすることで、発泡ガスを含む分離汚泥の浮上速度を向上させ、その結果、上述した分離汚泥の圧密による濃縮効果の向上を確実なものとすることができると共に、濃縮された浮上汚泥の排出の容易性を向上させることができる。ここで、「最上位」とは、発泡ガスを含む浮上汚泥が垂直又は略垂直方向に浮上移動する最終地点の位置を意味する。
【0011】
また、上記固液分離工程において減圧下で原汚泥を水平又は略水平方向に灌流させる場合、上記浮上濃縮工程における最上位の負圧としては、65kPa以上95kPa以下が好ましい。このように、上記固液分離工程において減圧下で原汚泥を水平又は略水平方向に灌流させる場合、浮上濃縮工程における最上位の負圧を上記範囲とすることで、発泡ガスを含む分離汚泥の浮上速度を向上させ、その結果、上述した分離汚泥の圧密による濃縮効果の向上を確実なものとすることができると共に、濃縮された浮上汚泥の排出の容易性を向上させることができる。
【0012】
当該汚泥濃縮方法は、上記浮上濃縮工程から得られる浮上汚泥を滞留させて脱気し、脱気汚泥を得る固気分離工程をさらに有するとよい。当該汚泥濃縮方法は、上述した浮上濃縮工程の後段に上記固気分離工程を有することにより、浮上濃縮工程で得られる高濃度かつ高粘度の浮上汚泥を脱気させ、脱気汚泥とガスとに効果的かつ確実に固気分離できると共に、汚泥密度を向上させ、搬送性や取り扱いの容易性を向上させることができる。なお、このような脱気汚泥は、例えば汚泥の脱水処理工程における脱水性やメタン発酵処理工程における発酵効果を向上させることから、かかる脱水処理工程やメタン発酵処理工程の前処理工程として有効に利用することができる。
【0013】
当該汚泥濃縮方法は、上記減圧及び脱気を行う真空形成工程をさらに有するとよい。このように、当該汚泥濃縮方法は、真空形成工程を有することで、上記固液分離工程及び/又は浮上濃縮工程における減圧状態を容易に形成し、上述した原汚泥の固液分離及び浮上濃縮を確実に実現することができる。また、当該汚泥濃縮方法は、真空形成工程を有することで、上述の固液分離工程及び/又は浮上濃縮工程における減圧状態を形成し、浮上濃縮工程における浮上汚泥を最上位から容易に吸引及び排出でき、かかる浮上汚泥の固気分離工程への搬送をスムーズに行うことができる。特に、この真空形成工程を上記固気分離工程の後段に有することで、当該汚泥濃縮方法は、真空形成工程に浮上汚泥等の固形物が侵入することを防止又は低減でき、その結果、良好な真空状態が連続的かつ効果的に形成され、十分な汚泥濃縮効果を安定的に維持することができる。
【0014】
また、上記課題を解決するための別の発明は、
原汚泥を常圧下又は減圧下で水平又は略水平方向に灌流させて分離汚泥と脱離液との固液分離を図る固液分離部と、この固液分離部の下流において減圧下で上記分離汚泥を発泡ガスと同伴させ垂直又は略垂直方向に浮上させて濃縮化を図り浮上汚泥を得る浮上濃縮部とを備える分離浮上濃縮装置と、
上記浮上汚泥を滞留させて脱気し、脱気汚泥を得る固気分離装置と、
上記減圧及び脱気を行う真空装置と
を備える汚泥濃縮システムである。
【0015】
当該汚泥濃縮システムは、(1)上記分離浮上濃縮装置が固液分離部を備えることで、常圧下又は減圧下において原汚泥が水平又は略水平方向に灌流するにつれて原汚泥中の溶存ガスが発泡し、原汚泥が発泡ガスを含む分離汚泥と脱離液とに分離され、その結果、汚泥の固液分離を効果的かつ確実に実現できると共に、このような固液分離を停止させることなく連続的かつ高速に行うことができる。また、上記固液分離部の下流において浮上濃縮部を備えることで、固液分離部で分離された分離汚泥の溶存ガスが減圧下で発泡し、かかる分離汚泥を発泡ガスに同伴させて垂直又は略垂直方向に浮上させ、その結果、浮上した分離汚泥の層が厚く形成され、分離汚泥の圧密による濃縮効果を一層向上させることができる。加えて、かかる高濃度かつ高粘度の浮上汚泥を、垂直又は略垂直方向の最終地点の位置、即ち上方から容易に排出できることから、濃縮汚泥の排出の容易化を図ることができる。そして、この浮上分離装置は、上述した原汚泥の灌流及び分離汚泥の浮上という一連の過程において汚泥の分離及び濃縮を達成できることから、給泥操作を連続して行うことができ、汚泥濃縮操作の連続高速化を実現することができる。また、(2)固気分離装置を備えることで、浮上濃縮部で得られる高濃度かつ高粘度の浮上汚泥を脱気させ、脱気汚泥とガスとに効果的かつ確実に固気分離できると共に、汚泥密度を向上させ、搬送性や取り扱いの容易性を向上させることができる。また、(3)真空装置を有することにより、上記固液分離部及び/又は浮上濃縮部における減圧状態を容易に形成し、上述した原汚泥の固液分離及び浮上濃縮を確実に実現すると共に、浮上濃縮部における浮上汚泥を最上位から容易に吸引及び排出でき、浮上汚泥の固気分離装置への搬送をスムーズに行うことができる。つまり、当該汚泥濃縮システムは、十分な汚泥濃縮効果、濃縮汚泥の排出の容易化、汚泥濃縮操作の連続高速化を、簡素な構成により容易に達成することができる。なお、当該汚泥濃縮システムは、高濃度の脱気汚泥を確実に得ることができ、この脱気汚泥を、例えば汚泥の脱水処理装置やメタン発酵処理装置の前処理装置として有効に利用することができる。
【0016】
上記真空装置がエジェクターであり、このエジェクターの動作流体として上記脱離液を用いるとよい。このように、当該汚泥濃縮システムは、真空装置としてエジェクターを用いることで、例えば真空ポンプ等のようにモーターでポンプを回転させるような機械的構成によらず、簡素な構成により固液分離部及び/又は浮上濃縮部の減圧状態を容易に形成することができ、汚泥濃縮システムの簡素化やコンパクト化を実現することができる。また、このエジェクターの動作流体としてガス溶存度が比較的低い上記脱離液を用いることで、エジェクターにおける吸引ガス量の負荷を低減して真空能力を高めることができることに加え、上記固液分離部から分離された脱離液を再利用してエジェクターを稼働させることから、省資源化及びリサイクル化を実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の汚泥濃縮方法及び汚泥濃縮システムは、原汚泥を常圧下又は減圧下で水平又は略水平方向に灌流させて分離汚泥と脱離液との固液分離を図り、この固液分離の下流において減圧下で上記分離汚泥を発泡ガスと同伴させて垂直又は略垂直方向に浮上させ濃縮化を図ることから、従来の課題である十分な汚泥濃縮効果の発揮、濃縮汚泥の排出の容易化、汚泥濃縮操作の連続高速化、構成の簡素化やコンパクト化を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る汚泥濃縮方法を示すフロー図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る汚泥濃縮システムを示す概略構成図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る汚泥濃縮システムの分離浮上濃縮装置を示す模式的斜視図である。
【図4】本発明の別の実施形態に係る汚泥濃縮システムの分離浮上濃縮装置を示す模式的斜視図である。
【図5】本発明の別の実施形態に係る汚泥濃縮システムの分離浮上濃縮装置を示す模式的斜視図である。
【図6】本発明の別の実施形態に係る汚泥濃縮システムの分離浮上濃縮装置を示す模式的斜視図である。
【図7】本発明の別の実施形態に係る汚泥濃縮システムの分離浮上濃縮装置を示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、適宜図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳説する。
【0020】
まず、図1を参照しつつ、当該汚泥濃縮方法に係るSTP1〜STP4の各工程について説明する。具体的には、当該汚泥濃縮方法は、原汚泥Pを分離汚泥Qと脱離液Rとに分離するための固液分離工程STP1、分離汚泥Qを浮上濃縮し浮上汚泥Sを得るための浮上濃縮工程STP2、浮上汚泥Sを脱気してガスTと脱気汚泥Uとに分離するための固気分離工程STP3、この固気分離工程STP3の後段にあって上記STP1〜STP3における減圧や脱気を行うための真空形成工程STP4を主として有する。
【0021】
(固液分離工程)
固液分離工程STP1は、原汚泥Pを常圧下又は減圧下で水平又は略水平方向に灌流させ、分離汚泥Qと脱離液Rとの固液分離を図る工程である。この固液分離工程STP1において、常圧下又は減圧下で原汚泥Pを水平又は略水平方向に灌流させるにつれ、原汚泥P中の溶存ガスが発泡し、原汚泥Pは、かかる発泡ガスを含む成分と液体成分とに徐々に分離する。そして、かかる原汚泥Pの流れの下流において、原汚泥Pは、発泡ガスを含む分離汚泥Qと、脱離液Rとに固液分離する。つまり、固液分離工程STP1は、原汚泥Pを常圧下又は減圧下で水平又は略水平方向に灌流させるという簡易な手段により、原汚泥Pの固液分離を効果的かつ確実に実現することができる。また、かかる固液分離工程STP1は、上述した原汚泥Pの灌流操作を連続して行うことで、原汚泥Pの固液分離を停止させることなく連続的かつ高速に行うことができる。
【0022】
上記原汚泥Pの灌流が減圧下で行われる場合において、かかる減圧状態における負圧としては、特に限定されず、例えば85kPaであれば上述した原汚泥Pの固液分離を十分効果的に行うことができる。また、この場合における原汚泥Pの灌流速度についても特に限定されず、例えば0.01m/secであれば原汚泥Pの灌流が滞ることなく、固液分離を確実に行うことができる。
【0023】
上記原汚泥Pの灌流が常圧下で行われる場合において、かかる原汚泥Pの灌流は、具体的には大気解放状態における大気圧下で行われることとなる。このように、原汚泥Pの灌流を常圧下で行うことで、上述した原汚泥Pの固液分離を達成しつつ、後述する浮上濃縮工程STP2における減圧下の負圧を低く調整することができる。なお、かかる場合における原汚泥Pの灌流速度についても特に限定されず、例えば0.01m/secであれば原汚泥Pの灌流が滞ることなく、固液分離を確実に行うことができる。
【0024】
上記原汚泥Pを水平又は略水平方向に灌流させるための手段としては、特に限定されず、例えば、後述する真空形成工程STP4の真空状態を利用して原汚泥Pを減圧吸引する手段や、原汚泥Pを加圧により押し出して灌流させる手段等が挙げられる。また、固液分離工程STP1における減圧手段としては、特に限定されず、例えば、後述する真空形成工程STP4の真空状態を利用する手段が挙げられる。
【0025】
原汚泥Pの種類としては、特に限定されず、例えば、初沈汚泥、余剰汚泥、消化汚泥、浄化槽汚泥、凝集沈殿汚泥、加圧浮上汚泥、有機性汚泥等が挙げられる。
【0026】
(浮上工程)
浮上濃縮工程STP2は、上記固液分離工程STP1の下流において、減圧下で上記分離汚泥Qを発泡ガスと同伴させ、垂直又は略垂直方向に浮上させて濃縮化を図り、浮上汚泥Sを得るための工程である。この浮上濃縮工程STP2において、固液分離工程STP1の下流で得られる分離汚泥Qは、発泡ガスを含む成分であり、減圧下において分離汚泥Q中の溶存ガスの発泡が促進されることから、かかる発泡ガスと同伴して垂直又は略垂直方向に浮上する。つまり、浮上濃縮工程STP2は、固液分離工程STP1で得られる分離汚泥Qを減圧下において垂直又は略垂直方向にガスを同伴させて浮上させるという簡易な手段により、浮上した分離汚泥Qの層が厚く形成され、この分離汚泥Qの圧密による濃縮効果により高濃度の浮上汚泥Sを得ることができ、その結果、汚泥濃縮効果を一層向上させることができる。また、この浮上汚泥Sは、垂直又は略垂直方向への浮上移動の最終地点の位置、即ち、最上位に蓄積されることから、高濃度かつ高粘度の浮上汚泥Sの排出や回収を上方から容易に達成することができ、濃縮汚泥の排出の容易化を実現することができる。さらに、上述した固液分離工程STP1の後段に浮上濃縮工程STP2を有することで、当該汚泥濃縮方法は、原汚泥Pの灌流及び分離汚泥Qの浮上という一連の過程において原汚泥Pの固液分離及び分離汚泥Qの浮上濃縮を達成できることから、原汚泥Pの給泥操作を連続して行うことができ、その結果、汚泥濃縮操作の連続高速化を実現することができる。つまり、当該汚泥濃縮方法は、上記固液分離工程STP1と浮上濃縮工程STP2とを組み合わせて有することで、十分な汚泥濃縮効果、濃縮汚泥の排出の容易化、汚泥濃縮操作の連続高速化を、簡素でコンパクトな構成により達成することができる。
【0027】
浮上工程STP2における減圧手段としては、特に限定されず、例えば、後述する真空形成工程STP4の真空状態を利用する手段が挙げられる。
【0028】
固液分離工程STP1において常圧下で原汚泥Pを水平又は略水平方向に灌流させる場合、浮上濃縮工程STP2における最上位の負圧としては、5kPa以上25kPa以下が好ましく、10kPa以上20kPa以下がより好ましい。このように、浮上濃縮工程STP2における最上位の負圧を上記範囲とすることで、発泡ガスを含む分離汚泥Qの浮上速度を向上させ、その結果、上述した分離汚泥Qの圧密による濃縮効果の向上を確実なものとすることができると共に、濃縮された浮上汚泥Qの排出や回収の容易性を向上させることができる。かかる負圧が上記上限を超えると、汚泥中のガスの発泡が過度に促進され、分離汚泥Q及び発泡ガスの同伴浮上の効率性が低下し、上述した汚泥濃縮効果が低減する可能性がある。また、かかる負圧が上記下限未満であると、汚泥中の溶存ガスの発泡が不十分となり、分離汚泥Qの浮上効果が低減し、上述した汚泥濃縮効果が低減する可能性がある。
【0029】
一方、固液分離工程STP1において減圧下で原汚泥Pを水平又は略水平方向に灌流させる場合、浮上濃縮工程STP2における最上位の負圧としては、65kPa以上95kPa以下が好ましく、75kPa以上85kPa以下がより好ましい。このように、浮上濃縮工程STP2における最上位の負圧を上記範囲とすることで、発泡ガスを含む分離汚泥Qの浮上速度を向上させ、その結果、上述した分離汚泥Qの圧密による濃縮効果の向上を確実なものとすることができると共に、濃縮された浮上汚泥Qの排出や回収の容易性を向上させることができる。かかる負圧が上記上限を超えると、汚泥中のガスの発泡が過度に促進され、分離汚泥Q及び発泡ガスの同伴浮上の効率性が低下し、上述した汚泥濃縮効果が低減する可能性がある。また、かかる負圧が上記下限未満であると、汚泥中の溶存ガスの発泡が不十分となり、分離汚泥Qの浮上効果が低減し、上述した濃縮効果が低減する可能性がある。
【0030】
(固気分離工程)
固気分離工程STP3は、上記浮上濃縮工程STP2から得られる浮上汚泥Sを滞留させて脱気し、脱気汚泥Uを得るための工程である。具体的には、この固気分離工程STP3は、浮上濃縮工程STP2で得られる高濃度かつ高粘度の浮上汚泥Sを滞留させて脱気し、ガスTと脱気汚泥Uとに効果的かつ確実に固気分離できると共に、汚泥密度を向上させ、搬送性や取り扱いの容易性を向上させることができる。また、このような高濃度の脱気汚泥Sは、例えば、別工程である汚泥の脱水処理工程における脱水性やメタン発酵処理工程における発酵効果を向上させることから、固気分離工程STP3は、かかる脱水処理工程やメタン発酵処理工程の前処理工程として有効に利用することができる。
【0031】
固気分離工程STP3における浮上汚泥Sの脱気手段としては、特に限定されず、例えば、後述する真空形成工程STP4の真空状態を利用する手段が挙げられる。なお、かかる真空状態を利用する手段等を継続して用い、ガスTを連続的に排出させることで、浮上汚泥Sの固気分離及び高密度化を連続的かつ高速に行うことができる。
【0032】
(真空形成工程)
真空形成工程STP4は、上記固液分離工程STP1及び/又は浮上濃縮工程STP2における減圧と、上記固気分離工程STP3における脱気を行うための工程である。具体的には、真空形成工程STP4は、上記固液分離工程STP1及び/又は浮上濃縮工程STP2における減圧状態を容易に形成し、上述した原汚泥Pの固液分離及び分離汚泥Qの浮上濃縮を確実に実現することができる。また、真空形成工程STP4は、上述の固液分離工程STP1及び/又は浮上濃縮工程STP2における減圧状態を形成し、浮上濃縮工程STP2における浮上汚泥Sを最上位から容易に吸引及び排出でき、高濃度かつ高粘度の浮上汚泥Sの固気分離工程STP3への搬送をスムーズに行うことができる。特に、この真空形成工程STP4は、当該汚泥濃縮方法の最後段、即ち固気分離工程STP3の後段に配設されることで、真空形成工程STP4において浮上汚泥S等の固形物が侵入することを防止又は低減でき、その結果、真空形成工程STP4では固気分離工程STP3で排出されるガスTのみを効率的に吸引脱気することができる。つまり、真空形成工程STP4が当該汚泥濃縮方法の最後段に配設されることで、良好な真空状態が連続的かつ効果的に形成され、十分な汚泥濃縮効果を安定的に維持することができる。
【0033】
真空形成工程STP4における真空形成手段としては、特に限定されず、例えば、真空ポンプや後述するエジェクター等が挙げられる。
【0034】
次に、図2及び図3を参照しつつ、汚泥濃縮システム1について説明する。汚泥濃縮システム1は、分離浮上濃縮装置2、固気分離装置3、真空装置4を主として備える。
【0035】
(分離浮上濃縮装置)
図2及び図3の分離浮上濃縮装置2は、汚泥濃縮システム1の一部を構成する装置であり、原汚泥Pを分離汚泥Qと脱離液Rとに固液分離し、この分離汚泥Qを浮上濃縮し浮上汚泥Sを得るための装置である。具体的には、分離浮上濃縮装置2は、固液分離部5、浮上濃縮部6、原汚泥供給管7、脱離液排出管8、浮上汚泥排出管9を主として備える。なお、この原汚泥Pの種類としては、特に限定されず、上述の汚泥濃縮方法における場合と同様である。
【0036】
固液分離部5は、原汚泥Pを減圧下で水平又は略水平方向に灌流させ、分離汚泥Qと脱離液Rとの固液分離を図るための部材である。具体的には、固液分離部5は、後述する原汚泥供給管7を備えると共に、供給及び灌流された原汚泥Pの流れの下流において後述の浮上濃縮部6と連通する構造を有している。
【0037】
固液分離部5に原汚泥Pを供給し、水平又は略水平方向に灌流させるための手段としては、特に限定されず、例えば、後述する真空装置4が形成する真空状態を利用して浮上濃縮部6の浮上汚泥排出管9側から原汚泥Pを減圧吸引する手段や、真空ポンプなどを用いて原汚泥供給管7側から原汚泥Pを加圧して供給及び灌流させる手段等が挙げられる。また、固液分離部5の内部を減圧する手段としては、特に限定されず、例えば、後述する真空装置4が形成する真空状態を利用して浮上濃縮部6の浮上汚泥排出管9側から減圧吸引する手段や、真空ポンプなどを用いて脱離液排出管8から減圧吸引する手段等が挙げられる。また、固液分離部5の形状としては、原汚泥Pの水平方向又は略水平方向の流れを形成することができるものであれば特に限定されず、例えば、円筒形や直方体等が挙げられる。また、固液分離部5の素材としては、内部の減圧状態を維持できるものであれば特に限定されず、公知の素材を用いることができる。
【0038】
浮上濃縮部6は、固液分離部5の下流において減圧下で上記分離汚泥Qを発泡ガスと同伴させ垂直又は略垂直方向に浮上させて濃縮化を図り、浮上汚泥Sを得るための部材である。具体的には、浮上濃縮部6は、後述する脱離液排出管8及び浮上汚泥排出管9を備えると共に、固液分離部5の下流部分と連通する構造を有している。
【0039】
浮上濃縮部6において減圧下で分離汚泥Qを発泡ガスと同伴させ垂直又は略垂直方向に浮上させるための手段としては、例えば、後述の真空装置4が形成する真空状態を利用して浮上濃縮部6の浮上汚泥排出管9側から減圧吸引する手段等が挙げられる。また、浮上濃縮部6の形状としては、分離汚泥Qや浮上汚泥Sの垂直方向又は略垂直方向への浮上移動を実現できるものであれば特に限定されず、例えば、円筒形や直方体等が挙げられる。また、浮上濃縮部6の素材としては、内部の減圧状態を維持できるものであれば特に限定されず、公知の素材を用いることができる。
【0040】
原汚泥供給管7は、固液分離部5に連通し、原汚泥Pを固液分離部5に供給するための部材である。この原汚泥供給管7の形状や素材については、原汚泥Pを連続的に供給できるものであれば特に限定されず、公知の形状や素材を用いることができる。また、この原汚泥供給管7は、原汚泥Pの供給量や、固液分離部5及び/又は浮上濃縮部6の減圧状態を調整するための調整弁(図示せず)等をさらに備えることができる。
【0041】
脱離液排出管8は、浮上濃縮部6の下方に連通及び垂下し、脱離液Rを外部に排出するための部材である。この脱離液排出管8の形状や素材については、脱離液Rを連続的に排出できるものであれば特に限定されず、公知の形状や素材を用いることができる。また、この脱離液排出管8は、脱離液Rの排出量や、固液分離部5及び/又は浮上濃縮部6の減圧状態を調整するための調整弁(図示せず)や排液ポンプ(図示せず)等をさらに備えることができる。
【0042】
浮上汚泥排出管9は、浮上濃縮部6の上方に連通し、浮上汚泥Sを外部に排出するための部材である。この浮上汚泥排出管9の形状や素材については、浮上汚泥Sを連続的に排出できるものであれば特に限定されず、公知の形状や素材を用いることができる。また、この浮上汚泥排出管9は、浮上汚泥Sの排出量や、固液分離部5及び/又は浮上濃縮部6の減圧状態を調整するための調整弁(図示せず)等をさらに備えることができる。
【0043】
(固気分離装置)
固気分離装置3は、上記浮上汚泥Sを滞留させて脱気し、脱気汚泥Uを得るための装置である。具体的には、固気分離装置3は、分離浮上濃縮装置2の浮上汚泥排出管9から排出される高濃度かつ高粘度の浮上汚泥Sを滞留させて脱気し、ガスTと脱気汚泥Uとに分離する装置である。この固気分離装置3は、ガスTを外部に排出するためのガス排出部10、脱気汚泥Uを外部に排出するための脱気汚泥排出部11を主として備える。
【0044】
固気分離装置3において浮上汚泥Sを脱気するための手段としては、例えば、後述の真空装置4が形成する真空状態を利用してガス排出部10側からガスTを減圧吸引する手段が挙げられる。また、固気分離装置3の形状としては、特に限定されず、例えば、ガス排出部10を上部に、脱気汚泥排出部11を下部に配設し、この下部がコーン状に狭まる略円錐形状であるとよい。このように、固気分離装置3の下部が略円錐形状であることにより、脱気汚泥Uを自然流下により排出しやすくすることができる。なお、固気分離装置3は、ガス排出部10に連通しガスTを外部に排出するためのガス排出管(図示せず)、脱気汚泥排出部11に連通し脱気汚泥Uを排出するための脱気汚泥排出管(図示せず)や排泥ポンプ(図示せず)、固気分離装置3内部の減圧状態を調整するためにガス排出管及び脱気汚泥排出管に配設される調整弁(図示せず)等をさらに備えることができる。
【0045】
真空装置4は、汚泥濃縮システム1における一連の汚泥の減圧及び脱気を行うための装置である。具体的には、真空装置4は、汚泥濃縮システム1の最後段、即ち固気分離装置3の後段に配設され、分離浮上濃縮装置2における減圧及び浮上汚泥Sの吸引と、固気分離装置3における浮上汚泥Sの脱気とを一体的に実現するための装置である。
【0046】
上記真空装置4の種類としては、特に限定されず、例えば、エジェクターや真空ポンプ等が挙げられるが、中でもエジェクターを用いることが好ましい。このエジェクターは、モーター等でポンプを回転させるような機械的運動によらずに圧縮空気から真空を発生させる装置であり、主としてノズル及びディフューザー(図示せず)から構成される。このノズル及びディフューザーは、適当な距離を置いて対向しており、このノズル及びディフューザーに、例えば水などの動作流体が一体的かつ高速に通過することで、ノズルとディフューザーとの間に真空を発生させることができる。つまり、真空装置4としてエジェクターを用いることで、簡素な構成により、分離浮上濃縮装置2における減圧及び浮上汚泥Sの吸引と、固気分離装置3における浮上汚泥Sの脱気とを一体的に実現でき、汚泥濃縮システム1の簡素化やコンパクト化を達成することができる。なお、かかるノズルやディフューザーの寸法、形状、配置等については、要求される到達真空圧や吸い込み流量等に応じて自在に調整することができる。
【0047】
上記エジェクターの動作流体として、上記脱離液Rを用いるとよい。かかる脱離液Rはガス溶存度が比較的低いことから、エジェクターの動作流体として脱離液Rを用いることで、エジェクターにおける吸引ガス量の負荷を低減して真空能力を高めることができることに加え、かかる脱離液Rを再利用してエジェクターを稼働させることから、省資源化及びリサイクル化を実現することができる。なお、上記脱離液Rを分離浮上濃縮装置2からエジェクターに導入する構成としては、特に限定されず、例えば分離浮上濃縮装置2の脱離液排出管8を通じて脱離液Rをエジェクターに供給する構成が挙げられる。
【0048】
(汚泥濃縮システムの操作手順)
汚泥濃縮システム1の操作手順について、作用効果を踏まえて詳説する。
【0049】
例えば、分離浮上濃縮装置2における原汚泥供給管7及び脱離液排出管8の調整弁を閉じると共に浮上汚泥排出管9の調整弁を解放し、固気分離装置3における上述の脱気汚泥排出管の調整弁を閉じると共にガス排出管の調整弁を解放した後、真空装置4を作動させて真空状態を形成させることで、分離浮上濃縮装置2の内部及び固気分離装置3の内部は減圧状態となる。次いで、かかる真空状態を維持継続させつつ原汚泥供給管7の調整弁を解放し、原汚泥Pを分離浮上濃縮装置2内部に供給することで、固液分離部5の内部において原汚泥Pが水平方向又は略水平方向に灌流する。
【0050】
この固液分離部5において、減圧下で原汚泥Pを水平又は略水平方向に灌流させるにつれ、原汚泥P中の溶存ガスが発泡し、原汚泥Pは、かかる発泡ガスを含む分離汚泥Qと脱離液Rとに徐々に分離し、この流れの下流において、分離汚泥Qと脱離液Rとに固液分離する。つまり、原汚泥Pを水平又は略水平方向に灌流させるという簡易な手段により、分離浮上濃縮装置2は、原汚泥Pの固液分離を効果的かつ確実に実現することができる。また、分離浮上濃縮装置2は、上述した原汚泥Pの灌流操作を連続して行うことで、原汚泥Pの固液分離を停止させることなく連続的かつ高速に行うことができる。
【0051】
固液分離部5の下流で固液分離された脱離液Rは、浮上濃縮部6の脱離液排出管8を通じて外部に排出される。また、固液分離部5の下流で固液分離された分離汚泥Qは、浮上濃縮部6に移動し、浮上濃縮部6の減圧下において分離汚泥Q中の溶存ガスの発泡が促進されることにより、この発泡ガスと同伴して垂直又は略垂直方向に浮上する。その結果、浮上濃縮部6において浮上した分離汚泥Qの層が厚く形成され、この分離汚泥Qの圧密による濃縮効果により高濃度の浮上汚泥Sを得ることができ、その結果、汚泥濃縮効果を一層向上させることができる。また、かかる浮上汚泥Sは、浮上濃縮部6における最上位に蓄積されることから、高濃度かつ高粘度の浮上汚泥Sの排出や回収を上方から容易に達成することができ、濃縮汚泥の排出の容易化を実現することができる。さらに、分離浮上濃縮装置2は、原汚泥Pの灌流及び分離汚泥Qの浮上という一連の過程において原汚泥Pの固液分離及び分離汚泥Qの浮上濃縮を達成できることから、原汚泥Pの給泥操作を連続して行うことができ、その結果、汚泥濃縮操作の連続高速化を実現ことができる。つまり、分離浮上濃縮装置2は、固液分離部5と浮上濃縮部6とを組み合わせて備えることで、汚泥濃縮システム1における十分な汚泥濃縮効果、濃縮汚泥の排出の容易化、汚泥濃縮操作の連続高速化を、簡素でコンパクトな構成により達成することができる。
【0052】
分離浮上濃縮装置2の浮上濃縮部6で浮上濃縮された浮上汚泥Sは、真空装置4の真空作用により減圧吸引され、浮上汚泥排出管9を通じて固気分離装置3に搬入され、内部に滞留する。かかる固気分離装置3において、滞留した浮上汚泥Sは、真空装置4の真空作用により減圧脱気され、ガスTと脱気汚泥Uとに固気分離される。このガスTは真空装置4の減圧吸引作用によりガス排出部10を通じて外部に排出され、脱気汚泥Uは脱気汚泥排出部11を通じて外部に排出される。つまり、固気分離装置3は、発泡ガスを含む浮上汚泥Sを脱気汚泥UとガスTとに確実に固気分離できると共に、汚泥密度を向上させ、搬送性や取り扱いの容易性を向上させることができる。また、真空装置4による真空状態を継続する限り、原汚泥Pの灌流、分離汚泥Qの浮上、浮上汚泥Sの回収及び脱気という一連の過程において、原汚泥Pの固液分離、分離汚泥Qの浮上濃縮、浮上汚泥Sの脱気による搬送性及び取り扱い容易性の向上を達成できることから、原汚泥Pの給泥操作、浮上汚泥Sの回収、浮上汚泥Sの濃縮化を連続して行うことができ、その結果、汚泥濃縮操作の連続高速化を簡素でコンパクトな構成により実現することができる。
【0053】
特に、この真空装置4が汚泥濃縮システム1の最後段、即ち固気分離装置3の後段に配設されることで、真空装置4の内部に浮上汚泥S等の固形物が侵入することを防止又は低減でき、その結果、真空装置4では固気分離装置3で排出されるガスTのみを効率的に吸引脱気することができる。つまり、真空装置4が汚泥濃縮システム1の最後段に配設されることで、良好な真空状態が連続的かつ効果的に形成され、十分な汚泥濃縮効果を安定的に維持することができる。なお、上述した通り、この真空装置4がエジェクターであり、このエジェクターの動作流体として浮上濃縮部6から排出される脱離液Rを用いることが好ましい。
【0054】
なお、このような高濃度の脱気汚泥Sは、例えば、別工程である汚泥の脱水処理装置における脱水性やメタン発酵処理装置における発酵効果を向上させることから、汚泥濃縮システム1は、かかる脱水処理装置やメタン発酵処理装置の前処理装置として有効に利用することができる。
【0055】
なお、本発明の汚泥濃縮方法及び汚泥濃縮システムは、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明の汚泥濃縮システムにおける分離浮上濃縮装置は、図4に示す通り、固液分離部5の長手方向の両端に原汚泥供給管7を備え、この2本の原汚泥供給管7を通じて2方向から灌流される原汚泥Pの合流地点、即ち固液分離部5の長手方向中央に浮上濃縮部6が連通する構造を備えることができる。このような構造を備えることで、本発明の汚泥濃縮システムにおける分離浮上濃縮装置は、上述した汚泥の固液分離効果及び浮上濃縮効果を妨げることなく、より大量の原汚泥を濃縮処理することができる。
【0056】
また、例えば、図5の分離浮上濃縮装置は、固液分離部5の側面に4本の原汚泥供給管7を備え、かかる4本の原汚泥供給管7を通じて4方向から灌流される原汚泥Pの合流地点、即ち固液分離部5の中央に浮上濃縮部6が連通する構造を備えることができる。このような構造を備えることで、本発明の汚泥濃縮システムにおける分離浮上濃縮装置は、上述した汚泥の固液分離効果及び浮上濃縮効果を妨げることなく、より大量の原汚泥を濃縮処理することができる。
【0057】
また、例えば、図6の分離浮上濃縮装置は、固液分離部5の側面に等間隔に6本の原汚泥供給管7を備え、かかる6本の原汚泥供給管7を通じて6方向から灌流される原汚泥Pの合流地点、即ち固液分離部5の中央に浮上濃縮部6が連通する構造を備えることができる。このような構造を備えることで、本発明の汚泥濃縮システムにおける分離浮上濃縮装置は、上述した汚泥の固液分離効果及び浮上濃縮効果を妨げることなく、より大量の原汚泥を濃縮処理することができる。
【0058】
また、例えば、図7の分離浮上濃縮装置は、固液分離部5の上方に開口部12を備えることができる。具体的には、この分離浮上濃縮装置は、図3の分離浮上濃縮装置における固液分離部5の上方が開口する構造を備えている。かかる開口部12を備えることで、本発明の汚泥濃縮システムにおける分離浮上濃縮装置は、原汚泥を常圧下で水平又は略水平方向に灌流させて分離汚泥と脱離液との固液分離を図ることができ、その結果、かかる原汚泥の灌流が大気解放状態における大気圧下で行われることとなり、原汚泥の固液分離を達成しつつ、浮上濃縮部における減圧下の負圧を低く調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上のように、本発明の汚泥濃縮方法及び汚泥濃縮システムは、初沈汚泥、余剰汚泥、消化汚泥、浄化槽汚泥、凝集沈殿汚泥、有機性汚泥等の濃縮処理に使用され得る。
【符号の説明】
【0060】
1 汚泥濃縮システム
2 分離浮上濃縮装置
3 固気分離装置
4 真空装置
5 固液分離部
6 浮上濃縮部
7 原汚泥供給管
8 脱離液排出管
9 浮上汚泥排出管
10 ガス排出部
11 脱気汚泥排出部
12 開口部
P 原汚泥
Q 分離汚泥
R 脱離液
S 浮上汚泥
T ガス
U 脱気汚泥




【特許請求の範囲】
【請求項1】
原汚泥を常圧下又は減圧下で水平又は略水平方向に灌流させ、分離汚泥と脱離液との固液分離を図る固液分離工程と、
上記固液分離工程の下流において、減圧下で上記分離汚泥を発泡ガスと同伴させ、垂直又は略垂直方向に浮上させて濃縮化を図り、浮上汚泥を得る浮上濃縮工程と
を有する汚泥濃縮方法。
【請求項2】
上記固液分離工程において常圧下で原汚泥を水平又は略水平方向に灌流させる場合、上記浮上濃縮工程における最上位の負圧が5kPa以上25kPa以下である請求項1記載の汚泥濃縮方法。
【請求項3】
上記固液分離工程において減圧下で原汚泥を水平又は略水平方向に灌流させる場合、上記浮上濃縮工程における最上位の負圧が65kPa以上95kPa以下である請求項1記載の汚泥濃縮方法。
【請求項4】
上記浮上濃縮工程から得られる浮上汚泥を滞留させて脱気し、脱気汚泥を得る固気分離工程をさらに有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の汚泥濃縮方法。
【請求項5】
上記減圧及び脱気を行う真空形成工程をさらに有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の汚泥濃縮方法。
【請求項6】
原汚泥を常圧下又は減圧下で水平又は略水平方向に灌流させて分離汚泥と脱離液との固液分離を図る固液分離部と、この固液分離部の下流において減圧下で上記分離汚泥を発泡ガスと同伴させ垂直又は略垂直方向に浮上させて濃縮化を図り浮上汚泥を得る浮上濃縮部とを備える分離浮上濃縮装置と、
上記浮上汚泥を滞留させて脱気し、脱気汚泥を得る固気分離装置と、
上記減圧及び脱気を行う真空装置と
を備える汚泥濃縮システム。
【請求項7】
上記真空装置がエジェクターであり、
このエジェクターの動作流体として上記脱離液を用いる請求項6記載の汚泥濃縮システム。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−40452(P2012−40452A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180802(P2010−180802)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(708001244)株式会社テクノプラン (5)
【Fターム(参考)】