説明

沈下測定装置

【課題】内部の水の温度を均一に保ち、温度による誤差が生じない沈下測定装置を提供する。
【解決手段】基準水槽と複数の沈下計とを連通管によって連結し、構造物の変位を計測する、沈下測定装置において、前記複数の沈下計と、連通管とを収容する外殻を有し、前記外殻内部に緩衝流体を注入し、前記複数の沈下計と連通管とを前記緩衝流体によって包囲すると共に、前記外殻の一方の端部と他方の端部とを外部配管によって連結し、前記外部配管の一部に搬送機を設け、前記緩衝流体を循環させることを特徴とする、沈下測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の変位を測定するための沈下測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、構造物の変位を測定する装置として、水盛りの原理を利用した沈下測定装置が知られている。
この沈下測定装置は基準水槽と測定点に設置した沈下計とを連通管によって連結し、沈下計の水位や水圧の差異によって測定点の沈下量を測定するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の沈下測定装置には、沈下計や連通管内部の水に温度むらがあると、水の密度の変化から水位や水圧が変化し、誤差が生じるという問題があった。
【0004】
本発明は、内部の水の温度を均一に保ち、温度による誤差が生じない沈下測定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた本願の第1発明は、基準水槽と複数の沈下計とを連通管によって連結し、構造物の変位を計測する、沈下測定装置において、前記複数の沈下計と、連通管とを収容する外殻を有し、前記外殻内部に緩衝流体を注入し、前記複数の沈下計と連通管とを前記緩衝流体によって包囲すると共に、前記外殻の一方の端部と他方の端部とを外部配管によって連結し、前記外部配管の一部に搬送機を設け、前記緩衝流体を循環させることを特徴とする、沈下測定装置を提供する。
本願の第2発明は、第1発明の沈下測定装置において、前記沈下計を、固定具を介して構造物に取り付けることを特徴とする、沈下測定装置を提供する。
本願の第3発明は、第1発明の沈下測定装置において、前記外殻を、固定具を介して構造物に取り付けることを特徴とする、沈下測定装置を提供する。
本願の第4発明は、第3発明の沈下測定装置において、前記外殻の、前記沈下計間に位置する部位に可撓部を形成することを特徴とする、沈下測定装置を提供する。
本願の第5発明は、第1発明又は第2発明の沈下測定装置において、前記外殻は前記構造物の一部であることを特徴とする、沈下測定装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果の少なくとも一つを得ることができる。
<1>沈下計や連通管内部の水の温度が均一となるため、温度むらによる誤差が生じない。
<2>外殻内の緩衝流体に空気や水を用いることで、安全かつ安価に沈下測定装置を作ることができる。
<3>沈下計を、固定具を介して構造物に取り付けるため、構造物の変位を直に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(1)本発明の全体の構成
本発明に係る沈下測定装置は、構造物の変位を測定するためのものである。
本発明の沈下測定装置は、基準水槽1と、複数の沈下計2、基準水槽1と複数の沈下計2間を連結する連通管3、及び複数の沈下計2と連通管3とを内部に収容する外殻4からなる。また、外殻4内部には緩衝流体5を注入する。(図1)
基準水槽1、沈下計2、連通管3の内部には測定水6が封入されている。
外殻4の一方の端部と他方の端部とは外部配管7によって連結する。外部配管7の一部には搬送機8を設ける。
以下、各構成部材について説明する。
【0008】
(2)基準水槽
基準水槽1は、連通管3によって連結する沈下計2の水圧や水位を一定にするためのものである。
基準水槽1は、基準部水槽11と回収補給槽12の2槽からなる。基準水槽1の内部には測定水6が封入されている。(図1)
基準部水槽11と回収補給槽12との間は、所定の高さの堰13によって仕切られている。
【0009】
基準部水槽11には、回収補給槽12から給水ポンプ14によって常に測定水6が供給されている。
基準部水槽11に供給された測定水6は、堰13を越えて溢れると再び回収補給槽12に流れ込んで循環している。これによって、基準部水槽11の水面は常に堰13の高さと同一のレベルに保たれている。
基準部水槽11には水面下で連通管3を接続し、連通管3の他方の端部は、沈下計2に接続する。
基準水槽1は沈下測定装置の基準の水位となるものであるため、高さの変動が生じない場所に設置する。
【0010】
(3)沈下計
沈下計2は構造物9の変位を測定する位置に配置し、内部の測定水6の圧力差や水位差により、測定位置の沈下量を求めるためのものである。
沈下計2には、例えばベローズと差動トランスで構成され、水圧の変動によるベローズの変形によって差動トランスのコアが移動し、コイルとの間の相対変位に比例して発生する電圧を変換して沈下量を得る装置を用いる。
【0011】
沈下計2は構造物のうち変位を測定したい複数の任意の場所に設置する。
沈下計2は固定具21を介して構造物9に取り付ける。(図2)
隣接する沈下計2間は連通管3によって連結する。沈下計2のうち少なくとも一つは、連通管3によって基準水槽1と連結する。
連通管3は、沈下計2が構造物の変位に追従して移動できるように、合成樹脂等の可撓性を有する材料からなる。
【0012】
(3)外殻
外殻4は沈下計2と、連通管3と、沈下計2と連通管3を包囲する緩衝流体5を内包するものである。
外殻4はプラスチックや塩ビ等の合成樹脂からなり、内部に収容する緩衝流体5が漏洩しない構成とする。
外殻4は上部を開放した形状とし、固定具21を介して構造物9に取り付けた沈下計2を上部から導入して内包する。(図2)
【0013】
(4)緩衝流体
緩衝流体5は外殻4内において沈下計2と連通管3とを包囲する流体である。
緩衝流体5には、空気や水を用いることができる。
外殻4内の沈下計2と連通管3とが、緩衝流体5によって包囲されるため、外殻4の外側の気温の変化が緩衝流体5によって遮断されることとなる。このため沈下計2や連通管3内部の測定水6が、外殻4の外側の気温の変化の影響を受けずに、一定の温度に保たれる。
【0014】
(5)外部配管
外部配管7は、外殻4の一方の端部と他方の端部とを外部配管7によって連結し、緩衝流体5の流路となるものである。
外部配管7の一部には搬送機8を設ける。搬送機8は、緩衝流体5に合わせて、緩衝流体5が水の場合にはポンプを、空気の場合にはファンを使用する。
搬送機8から吐出した緩衝流体5は、外部配管7を通って外殻4の一方の端部から外殻4内へ入り、外殻4内部を通過して他方の端部から外部配管7へと循環される。
また、外部配管7にはクーラーやヒーター等の温度調節器を設けてもよい。
【0015】
[測定方法]
次に、上記のように構成した沈下測定装置を用いて構造物の変位を測定する方法について説明する。
【0016】
構造物のうち、変位を測定する場所に跨って外殻4を配置する。
次に、固定具によって構造物9に取り付けた沈下計2と、連通管3とを接続し、外殻4内部に挿入する。
その後、基準水槽1を設置し、外殻4から延出した連通管3に接続し、測定水6を各装置内部に注入する。
そして、外殻4内に緩衝流体5を注入し、内部に収容した沈下計2と連通管3を緩衝流体5によって包囲する。
【0017】
構造物9のうち、沈下計2の設置場所の高さに変位が生じると、基準水槽1との相対高さに変位が生じる。
沈下計2は固定具21を介して構造物9に取り付けられているため、構造物9の高さの変位が直に沈下計2に伝わる。
基準水槽1と沈下計2とは連通管3で連結されており、内部の測定水6も一体となっている。このため沈下計2の高さの変位に合わせて、沈下計2内部の水位や水圧が変化する。
この変化によって、基準水槽1に対する測定場所の変化量を計測することができる。
【0018】
基準水槽1が高さの変動が生じてしまう場所に設置される場合には、沈下計2のいずれか一つを基準沈下計2aとして、高さの変動が生じない不動点に配置する。
基準沈下計2aの測定値と、その他の沈下計2の測定値との差によって、不動点に対するその他沈下計2の設置場所の変位量を計測することができる。
【0019】
測定中に、沈下計2と連通管3内部の測定水6に温度変化や温度むらが生じると、測定水6の密度が変化し、沈下計2での測定値に誤差が生じてしまう。
しかし、本発明の沈下測定装置は沈下計2と連通管3とを包囲する緩衝流体5によって、外気温の変化が緩和又は遮断されることとなる。
これによって、測定水6の温度が一定に保たれるため、温度変化による誤差が生じることがない。
【0020】
緩衝流体5には、空気や水が用いられる。
空気や水は安価で安全なものである。このため、安全かつ安価に、温度変化による誤差が生じない沈下測定装置を作ることができる。
【0021】
緩衝流体5は搬送機8によって、外殻4と外部配管7内部を循環する。
循環することによって、外殻4内の緩衝流体5の温度むらが無くなり、沈下計2および連通管3の内部の測定水6もより均一な温度に保たれる。
また、温度調節器9によって外気温度に合わせて、緩衝流体5の温度も一定に調節されるため、緩衝流体5の緩和又は遮断効果が増し、沈下計2および連通管3の内部の測定水6もより均一な温度に保たれる。
【0022】
[その他実施例]
上記実施例においては、外殻4の一部を開放した形状としたが、連続する沈下計2と連通管3とを一体に収容する、例えば塩ビ管等を用いることができる。(図3)
外殻4は固定具41を介して構造物9に取り付ける。(図4)
沈下計2は外殻4に収容し、構造物9に取り付けた外殻4の変位に合わせて変位する。
外殻4の内部に収容した沈下計2が構造物9の変位に追従して移動できるように、外殻4のうち、隣り合う沈下計2間には可撓部41を形成する。可撓部41は合成樹脂等の可撓性を有する材料からなる。(図3)
【0023】
また、上記において、外殻4はプラスチックや塩ビ等の合成樹脂からなる部材を使用したが、外殻4として、測定対象である構造物そのものを利用してもよい。(図5)
例えば、構造物のうち変位を測定する場所に跨って溝を構築し、その内部に沈下計2および連通管3を配置し、溝に緩衝流体5となる水を流し込み、沈下計2および連通管3を沈水する。
このように構成することにより、外殻4を使用せずに、温度変化による誤差が生じない沈下測定装置を作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る沈下測定装置の説明図
【図2】本発明に係る沈下測定装置の断面図
【図3】本発明の他の実施例に係る沈下測定装置の説明図
【図4】本発明の他の実施例に係る沈下測定装置の断面図
【図5】本発明の他の実施例に係る沈下測定装置の説明図
【符号の説明】
【0025】
1 基準水槽
11 基準部水槽
12 回収補給槽
13 堰
14 ポンプ
2 沈下計
21 固定具
3 連通管
4 外殻
41 固定具
5 緩衝流体
6 測定水
7 外部配管
8 搬送機
9 構造物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準水槽と複数の沈下計とを連通管によって連結し、構造物の変位を計測する、沈下測定装置において、
前記複数の沈下計と、連通管とを収容する外殻を有し、
前記外殻内部に緩衝流体を注入し、前記複数の沈下計と連通管とを前記緩衝流体によって包囲すると共に、
前記外殻の一方の端部と他方の端部とを外部配管によって連結し、
前記外部配管の一部に搬送機を設け、前記緩衝流体を循環させることを特徴とする、
沈下測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の沈下測定装置において、前記沈下計を、固定具を介して構造物に取り付けることを特徴とする、沈下測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の沈下測定装置において、前記外殻を、固定具を介して構造物に取り付けることを特徴とする、沈下測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の沈下測定装置において、前記外殻の、前記沈下計間に位置する部位に可撓部を形成することを特徴とする、沈下測定装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の沈下測定装置において、前記外殻は前記構造物の一部であることを特徴とする、沈下測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−300298(P2009−300298A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156432(P2008−156432)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(391005950)株式会社東横エルメス (10)
【出願人】(502143319)株式会社あけぼの産業 (2)