説明

沈砂等の移送装置

【課題】小さな動力と加圧水量で沈砂等を移送する。
【解決手段】一方の管路P1に供給する加圧水と共に共に沈砂を汲み上げる揚砂ポンプ3等を備え、正圧移送タンク4に投入する。正圧移送タンク4を圧力的に閉状態にして供給側管路P2から加圧水を供給する。正圧移送タンク4内は下面5が水平面5bと上り傾斜の傾斜面5aからなり、傾斜面上5aに各一対の第一撹拌ブロック6Aと第二撹拌ブロック6Bを設置して沈砂を堆積させる。撹拌ブロック近傍に逆洗管路P5から分岐した第一吐出管路P6、第二吐出管路P7等を通して別個の加圧水を吐出させて沈砂を排出側管路P4へ移送する。沈砂の移送は先ず下流側の第二撹拌ブロック上のものを移送し、その後に上流側の第一撹拌ブロック上の沈砂を移送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流水中に含まれる沈砂やし渣等を移送するための沈砂等の移送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の沈砂やし渣等(以下、沈砂等という)の移送装置として、沈砂池内または掻き上げによってタンク内に貯溜された沈砂等を渦巻きポンプ類で配管内に吸い込んで移送するものがある。この場合、羽根車への沈砂等の移送物の絡みつきやポンプの吸い込み効率の低さ、空転防止策の必要性等の問題があるために適用範囲は限られていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これに対して駆動源として負圧ポンプを用いて沈砂等を移送する移送装置がある。この装置によれば、渦巻きポンプのように羽根車が不必要であるために沈砂等の絡みつきがなく逆洗が可能であり、洗浄効果を期待できる等の利点があるものの、吸引と移送を同一の機構で行い、沈砂等を配管という閉空間に吸引して移送を行うものであり、負圧を発生させるために所要動力が大きい上に使用水量が大きく特に移送部の搬送効率が低い等の欠点があった。そのため装置が大型化する上に付帯設備も大型化するためにコスト高であり、大規模な設備となり、スペースの少ない場所や小規模な施設等では採用できないという欠点があった。
本発明は、このような実情に鑑みて、小規模な動力や使用水量で沈砂等を移送可能な沈砂等の移送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明による沈砂等の移送装置は、加圧流体を供給する主管路が途中で分岐された一方の管路及び他方の管路と、一方の管路に接続された揚砂ポンプと、この揚砂ポンプで沈砂池から汲み上げた沈砂等が投入されていて圧力的に閉空間を形成可能な槽と、槽内の沈砂等を排出する排出側通路とを備え、他方の管路によって正圧の加圧流体を圧力的に閉空間を形成する槽内に供給してこの槽内の沈砂等を排出側通路を通して移送するようにしたことを特徴とする。
また、一方の管路には揚砂ポンプの上流側と下流側に加圧水弁と揚砂弁とを配設し、これら加圧水弁及び揚砂弁を開弁することで揚砂ポンプから沈砂等を汲み上げて槽内に供給し、加圧水弁及び揚砂弁を閉弁して他方の管路から加圧水を槽内に投入することが好ましい。
また、他方の管路を分岐してなる分岐供給管路を介して、槽内の底面に別個の加圧流体を吐出させる吐出部を加圧流体の流れ方向に1または複数配設してもよい。
槽内の沈砂等を排出させる際、槽内底面の下流側の吐出部から別個の加圧流体を吐出することで、先ず下流側の沈砂等を更に下流側または排出側通路に吐出させ、次いで槽内底面の上流側の沈砂等を下流側に移送することで移送負荷を分散し沈砂等を確実に移送できる。別個の加圧流体を吐出させる吐出部(吐出管路)を加圧流体の流れ方向に1または複数配設することで、沈砂等の移送を複数回に分散して行うことができる。
また、槽内の底面に、他方の管路側から排出側通路側に向けて上下方向に変位する傾斜面または段差部が設けられ、これら傾斜面または段差部に別個の加圧流体を供給する吐出部を配設してもよい。
槽内底面に段差部が設けられていれば、先ず下流側段差部の沈砂等を更に下流側に移送した後で、空間となった下流側段差部に上流側の沈砂等を吐出部から吐出する別個の加圧流体と他方の管路の加圧流体とによって確実に下流側段差部に移送できる。槽内底面が傾斜面の場合にも同様に吐出部によって沈砂等を順次下流側に移送できる。
【0005】
なお、本発明による沈砂等の移送装置は、沈砂等が投入されていて圧力的に閉空間を形成可能な槽と、この槽内に加圧流体を供給する供給側通路と、槽内の沈砂等を排出する排出側通路とを備え、供給側通路によって正圧の加圧流体を圧力的に閉空間を形成する槽内に供給してこの槽内の沈砂等を排出側通路を通して移送するようにしたことを特徴とする。
沈砂等を槽内に投入し、その後に槽内を圧力的な閉空間に形成した状態で、供給側通路から正圧の加圧流体を槽内に供給すると、圧力の逃げ場が排出側通路にしかないために槽内の沈砂等は加圧流体と共に排出側通路から外部に移送される。移送のための流体は外部から加えられるために、沈砂等は羽根車等を通過することがない。また負圧ポンプ等のように吸引のための負圧発生の必要がなく、負圧発生のための加圧水を移送する必要もないので効率的である。
尚、圧力的な閉空間とは、槽内の加圧流体の入口と出口だけを開口して他を密閉した空間の状態をいう。これに対して沈砂池や開口を設けた槽等を圧力的な開放空間という。
【0006】
また槽内に沈砂等を機械的に移動させる搬送部材が設けられていて、この搬送部材の搬送方向前方側の槽の底面に沈砂等を貯留する貯留空間が形成され、この貯溜空間に供給側通路と排出側通路とが連結されていてもよい。
槽内の沈砂等を搬送部材を用いて順次移送して、前方側で沈砂等を搬送部材から貯溜空間に落下させると、供給側通路から供給された加圧流体で貯溜空間内の沈砂等を排出側通路に押し出すことができる。また、槽内の沈砂等を搬送部材を用いて順次移送して貯溜空間に落下させ、加圧流体で沈砂等を押し出すことができ、比較的小さな動力と加圧水量とで効率的な移送を行うことができ、設備を小規模にできる。
また加圧流体を排出側通路側から槽内に供給して供給側通路側へ逆流させる逆流機構を備えていてもよい。
加圧流体を排出側通路側から槽内に供給して供給側通路側へ搬送して逆流させれば、沈砂等の詰まりを逆洗解除できる。逆流機構は正圧の加圧流体を槽内の下流側から上流側に供給する逆洗管路と、この管路に設けられた逆洗弁と、加圧流体の排出管路とを備えている。
加圧流体を排出側通路側から槽内に逆流させることで容易に槽内の詰まりを解除できる。また沈砂等の移送経路に羽根車等が介在しないために詰まりにくい。加圧水または移送水を沈砂等の集積に流用できるので、集積用の水量を別に確保する必要がない。
【0007】
また槽内には、浮遊する沈砂等を含む加圧流体の逆流を抑制する阻流部材を配設してもよい。
沈砂等が槽内の流体中に浮遊している場合、これら浮遊沈砂等は槽内に移送用の加圧流体を供給すると循環流路を形成するため、これら沈砂等を外部へスムーズに移送できなくなるが、この循環流路中に阻流部材を配設すれば流体の循環流を阻止して沈砂等を含む流体の下流側及び外部への移送をガイドできる。
また槽の底面と阻流部材との間に間隙を形成してもよい。
循環流を阻止された沈砂等を含む流体は阻流部材にガイドされて槽の底面との間隙を通過して下流側に移送されることになる。
また供給側通路側から排出側通路側に向けた加圧流体の流れ方向に設けた阻流部材間に、加圧流体の流れを許容する間隙を形成してもよい。
この間隙を通して沈砂等を含む加圧流体を移送させることで、循環流路の形成を阻止すると共に沈砂等の下流側への移送を確実に行える。
【0008】
本発明による沈砂等の移送方法は、沈砂等が投入されている槽内を圧力的な閉空間に形成して、供給側通路から正圧の加圧流体を槽内に供給して、槽内の沈砂等を排出側通路から排出させるようにしたことを特徴とする。
槽内を圧力的な閉空間に形成した状態で、供給側通路から正圧の加圧流体を槽内に供給することで、槽内の加圧流体は昇圧して沈砂等と共に排出側通路から排出され、比較的小さい圧力と流体量で沈砂等の移送を実現できる。
【0009】
また槽内の底面に、加圧流体の下流側から上流側に順次別個の加圧流体を供給させることで沈砂等を下流側から順次排出させるようにしてもよい。
つまり正圧の加圧流体を先ず下流側で供給して下流側の沈砂等を更に下流側の排出側通路へ排出し、次いで上流側で別個の加圧流体を供給して上流側の沈砂等を下流側に移送する。すると下流側の沈砂等は既に更に下流側に送られているから、上流側から移送した沈砂等が下流側の沈砂等の上に堆積して後戻りしたり渋滞することなく確実に移送できる。
また槽内の底面は、加圧流体の流れ方向に沿って上下方向に変位する傾斜面または段差部が設けられていてもよい。
段差部があれば段差部毎に、また傾斜面であれば傾斜面に沿って確実に移送できる。
【発明の効果】
【0010】
上述のように本発明による沈砂等の移送装置は、比較的小さな動力と加圧水量とで槽内の沈砂等を正圧の加圧流体と共に外部に移送でき、しかも負圧を用いることなく比較的小さな圧力の加圧流体によって沈砂等を確実に押し出すことができ、効率的で、移送装置の設備を小規模にできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第一の実施の形態による沈砂の移送装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す正圧移送タンクのA−A線縦断面図である。
【図3】本発明の第二の実施の形態による沈砂の移送装置の概略構成を示す図である。
【図4】図3に示す正圧移送タンクのB−B線縦断面図である。
【図5】本発明の第三の実施の形態によるし渣の移送装置の概略構成を示す図である。
【図6】図5に示す正圧移送タンクのC−C線縦断面図である。
【図7】正圧移送タンクの平面図である。
【図8】阻流板がない正圧移送タンク中の加圧水による水流を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を添付図面により説明する。図1は第一の実施の形態による沈砂等の移送装置の概略構成図、図2は図1に示す移送装置に含まれる正圧移送タンクのA−A線縦断面図である。
本実施の形態による沈砂等の移送装置1は、図1に示すように沈砂やし渣等(沈砂等)が堆積した沈砂池2または沈砂池等から沈砂等を掻き上げたタンク内から沈砂等を汲み上げる負圧ポンプ等の揚砂ポンプ3と、揚砂ポンプ3から汲み上げた沈砂等を投入して密閉タンク状態で外部に沈砂等を移送排出する槽としての正圧移送タンク4とを備え、これら揚砂ポンプ3と正圧移送タンク4とが配管で接続された構成を有している。そして、正圧移送タンク4から排出された沈砂等を水と沈砂等とに分離する沈砂分離機Qが移送装置1に接続されている。
移送装置1において、図示しない加圧ポンプ等から加圧水を供給する主管路Pは途中で分岐され、その一方の管路P1は加圧水弁V1を介して揚砂ポンプ3に接続され、更に揚砂弁V2を通して正圧移送タンク4に接続されている。これによって揚砂ポンプ3で沈砂池2から汲み上げた沈砂を正圧移送タンク4内に投入することになる。
【0013】
主管路Pを分岐した他方の管路は供給側管路P2(供給側通路)として主加圧水弁V3を介して正圧移送タンク4の供給側入口に連結されている。正圧移送タンク4は圧力的に閉空間を形成可能なタンク形状であり、その下面5は供給側入口付近が水平面5bとされ、途中から排出側出口に向けて上方に傾斜する傾斜面5aが形成されている。この傾斜面5aは図2の縦断面図に示すように略V字状のテーパ状に形成されている。
この傾斜面5a上には沈砂が下方に流れ落ちるのを防ぎ且つ正圧移送タンク4内に撹拌流を発生させるために複数対の攪乱ブロック6,6…が段差部として突出して延在方向に所定間隔で配列されている。隣り合う各一対の撹拌ブロック6,6はそれぞれ傾斜面5aとの間の沈砂を堆積可能に保持し、両撹拌ブロック6,6間には図2に示すように若干の隙間が形成されている。図1に示す例では、上流側に第一撹拌ブロック6A,6Aが、下流側に第二撹拌ブロック6B,6Bが設けられている。
また正圧移送タンク4の側面上部にはオーバーフロー弁V5を有するオーバーフロー管路P3が接続されており、正圧移送タンク4内でオーバーフローした流水を沈砂池2に戻す。また正圧移送タンク4の傾斜面5aの上端に位置する出口には排出側管路P4(排出側通路)が連結され、この管路P4の他端は主揚砂弁V6を介して沈砂分離機Qに連結されており、正圧移送タンク4から排出された沈砂は沈砂分離機Qに汲み上げられて水と沈砂とを分離するようになっている。
【0014】
また供給側管路P2の途中から更に管路が1または複数に分岐されてそれぞれ正圧移送タンク4内の撹拌ブロック6近傍の下流側に連通する吐出管路(吐出部)P6、P7、…が設けられている。吐出管路P6、P7、…によって、正圧移送タンク4内で傾斜面5aの撹拌ブロック6下流側に加圧水を吐出することで撹拌ブロック6の下流側に堆積した沈砂を分散して排出側管路P4に押し上げることができる。
供給側管路P2から分岐された逆洗管路P5は逆洗弁V9を介して主揚砂弁V6の上流側で排出側管路P4に連結されていて、加圧ポンプから供給された加圧水を排出側管路P4を通して正圧移送タンク4の出口から正圧移送タンク4内に逆流させるようになっている。
吐出管路P6、P7、…の吐出開口は好ましくは傾斜面5aに沿って下流側に向けて開口している。また各吐出管路P6,P7…にはそれぞれ加圧水弁V7、V8、…が設けられている。尚、図では吐出管路は2つ開示されており、第一撹拌ブロック6A下流側近傍に第一吐出管路P6、第二撹拌ブロック6B下流側近傍に第二吐出管路P7がそれぞれ設けられている。
また供給側管路P2において、主加圧水弁V3の下流側で分岐された分岐供給管路P8は正圧移送タンク4と排出側管路P4とを接続する出口付近に連通していて、出口付近に集中する沈砂を撹拌して排出側管路P4への送り込みを補助するように開口が形成されている。尚、この管路P8を吐出管路に含めても良い。
正圧移送タンク4の上面にはエア抜きの管路P9が形成され、その他端は排出側管路P4に連通している。また正圧移送タンク4の下面5には排出弁V10を介してオーバーフロー管P3に連通する排出管P10が設けられている。
【0015】
本実施の形態による移送装置は上述の構成を有しており、次にこの装置による沈砂の移送方法について説明する。
図1において沈砂池2内に沈砂等が滞留されているとして、これを高低差または距離の少ない領域で配管移送する場合、加圧水弁V1と揚砂弁V2を開弁した状態で、先ず図示しない加圧ポンプを作動して加圧水を管路Pから分岐した一方の管路P1に供給して揚砂ポンプ3を通過させることで、揚砂ポンプ3から沈砂池2内の沈砂を水と共に汲み上げて、正圧移送タンク4の上面から正圧移送タンク4内に投入する。正圧移送タンク4内に投入される水が容量を超えた場合にはオーバーフロー管路P3を通して沈砂池2に戻される。
次に加圧水弁V1と揚砂弁V2とオーバーフロー弁V5を閉弁し正圧移送タンク4内を圧力的に閉空間に形成する。この状態で、主加圧水弁V3と主揚砂弁V6を開弁することで供給側管路P2を通して正圧の加圧水を入口から正圧移送タンク4内に供給する。正圧移送タンク4内では、揚砂ポンプ3から投入された沈砂が下面5に堆積しており、これに正圧の加圧水が供給されることで、下面5の水平面5b或いは傾斜面5aに位置する沈砂が排出側管路P4方向に移送される。
【0016】
傾斜面5aでは、各一対の撹拌ブロック6,6で保持された沈砂に対して、先ず出口に近い第二撹拌ブロック6B,6Bの下流側近傍に堆積している沈砂を、第二吐出管路P7から加圧水を吐出することで出口に送り出す。
次に上流側の第一撹拌ブロック6A,6Aに堆積している沈砂を、第一吐出管路P6から加圧水を吐出することで同様に排出側管路P4に送り出す。更に主加圧水弁V3を介して供給される加圧水によって、水平面5bの沈砂を排出側管路P4に移送することができる。分岐供給管路P8は排出側管路P4への出口付近に集中する沈砂等をほぐすために加圧水の一部を噴射する。
このような操作を繰り返すことで、正圧移送タンク4内に投入された沈砂を加圧水と共にその下流側に堆積するものから順次出口に移送して、更に排出側管路P4を通して沈砂分離機Qに移送できる。沈砂分離機Qでは沈砂と水とを分離し、沈砂は排出され、水は後処理される。
このようにして揚砂ポンプ3によって沈砂を水と共に正圧移送タンク4内に供給する工程と、正圧移送タンク4内の沈砂を沈砂分離機Qまで移送する工程とを繰り返すことで、沈砂池2内の沈砂を比較的小さい加圧水ポンプの動力と加圧水量で移送できる。
【0017】
次に、正圧移送タンク4の出口付近の詰まり等による閉塞を逆洗解除する場合、供給側管路P2の各加圧水弁V3、V7、V8及び主揚砂弁V6を閉弁すると共に逆洗管路P5の逆洗弁V9及びオーバーフロー弁V5を開弁して排出側管路P4を通して正圧移送タンク4の出口から内部に正圧の加圧水を供給する。これによって正圧移送タンク4内へ加圧水を逆流させオーバーフロー管路P3を通して沈砂池2に戻す。このように正圧移送タンク4内や管路に加圧水を逆流させることで沈砂等の詰まりを解除できる。
【0018】
上述のように本実施の形態によれば、沈砂の汲み上げとは分離して移送のみを正圧の加圧水で行うようにしたから、負圧を発生させるための加圧水が被移送物として移送管路に流入せず、比較的小さな動力と加圧水量とで行うことができ、移送装置1の設備を小規模にすることができ、使用エネルギーも少ない。また正圧移送タンク4内に加圧水を逆流させることで容易に閉塞を解除できる。
その点、従来は、吸い込みと移送が分離されておらず、負圧を発生させるために必要な加圧水が移送管路に流入し、この加圧水を更に移送に用いていたため、大きな動力と加圧水量を必要として設備も大規模であった。
【0019】
次に本発明の他の実施の形態を説明するが、上述の実施の形態と同一または同様な部分、部材には同一の符号を用いてその説明を省略する。
図3及び図4は第二の実施の形態を示すものである。
図3に示す沈砂の移送装置10において、正圧移送タンク12は下面13が縦断面視で図4に示すように略V字状に形成され、下面13に沈砂の搬送部材としてスクリューコンベア14が設けられている。このスクリューコンベア14は正圧移送タンク12の外部に駆動モータMが設けられ、スクリューコンベア14は駆動軸15を介して駆動モータMに連結されている。
そしてスクリュウーコンベア14の前方領域には下面13から下方に落ち込む貯溜空間16が形成されており、スクリューコンベア14で前方へ搬送された沈砂がこの貯溜空間16内に落ち込むことになる。
また供給側管路P2は三つに分岐されており、それぞれ主加圧水弁V12、撹拌弁V13、逆洗弁V14を介して供給側管路P11と撹拌管路P12と逆洗管路P13に連通している。供給側管路P11は貯溜空間16の一端下部に連結され、貯溜空間16の他端下部には排出側管路P4が連結されている。
【0020】
撹拌管路P12は他端が正圧移送タンク12の下流側端部に連通しており、正圧の加圧水を正圧移送タンク12内に供給することで沈砂を撹拌させ、上方の空間に舞い上がらせる。その結果、スクリューコンベア14によって沈砂がタンク壁面に圧密してしまうことを防ぐ。撹拌管路P12の途中部分には複数の吐出管路(吐出部)P14、P15、…が分岐して下面13に連通しており、図に示す例では上流側の第一吐出管路P14と下流側の第二吐出管路P15の2つが設けられている。尚、撹拌管路P12も吐出管路とすることができる。
この場合、各吐出管路P14、P15の吐出開口は、スクリューコンベア14の途中部分に位置して、スクリューコンベア14の領域に沈砂が過度に圧密しないように攪乱させて舞い上がらせるようにしている。
また逆洗管路P13は排出側管路P4において主揚砂弁V6の上流側に連通して設けられ、正圧の加圧水を排出側管路P4を通して貯溜空間16内に供給して正圧移送タンク12内からオーバーフロー管路P3に排出されることになる。
【0021】
本実施の形態による移送装置10は上述の構成を有しているから、移送方法について説明すれば、加圧水弁V1と揚砂弁V2を開弁した状態で加圧水を管路P1に供給することで、揚砂ポンプ3によって沈砂池2内の沈砂を水と共に管路P1を通して正圧移送タンク12内に投入できる。
次に加圧水弁V1、揚砂弁V2、オーバーフロー弁V5を閉弁し主加圧水弁V12と撹拌弁V13と主揚砂弁V6を開弁させて正圧移送タンク12内を圧力的に閉鎖状態にして、スクリューコンベア14を回転させて沈砂を下流側に移送する。この時、撹拌弁V13を開弁して正圧の加圧水を供給し、撹拌管路P12から正圧移送タンク12内に加圧水を吐出させて、スクリューコンベア14の搬送力によって正圧移送タンク12の内壁面に圧密され易い沈砂を上方空間に舞い上がらせ、同時に第一及び第二吐出管路P14,P15から正圧移送タンク12内に加圧水を吐出させて、下面13の沈砂を攪乱してスクリューコンベア14に過度の沈砂負荷がかかるのを防止する。
そしてスクリューコンベア14で沈砂を前方に送って貯溜空間16内に落ち込ませる。この時、貯溜空間16内には供給側管路P11から正圧の加圧水が供給されており、これによって集められた沈砂が排出側管路P4へ移送される。排出側管路P4内の沈砂は沈砂分離機Q内に汲み上げられて水と沈砂とに分離される。
次に貯溜空間16や排出側管路P4の排出口等が沈砂等で閉塞した場合には、主加圧水弁V12及び主揚砂弁V6を閉弁した状態で、逆洗弁V14とオーバーフロー弁V5を開弁して正圧の加圧水を逆洗管路P13から排出側管路P4を通して貯溜空間16内に逆流させて供給する。すると貯溜空間16内の加圧水は下面13内に溢れ出て上流側に送られ、オーバーフロー管路P3から排出されることになる。
このようにして正圧移送タンク12や管路における沈砂等の詰まりを逆洗解除できる。
【0022】
本実施の形態によっても、第一の実施の形態と同様に、比較的小さな動力と加圧水量とで沈砂等の移送を行うことができ、移送装置10及びその付帯設備を小規模にすることができ、使用エネルギーも少ない。また正圧移送タンク10内に加圧水を逆流させることで容易に詰まり等の閉塞解除を行える。また沈砂等の移送管路に羽根車等が介在しないために閉塞しにくく効率も高い。
【0023】
次に本発明の第三の実施の形態を図5乃至図8により説明する。
本実施の形態はし渣の移送装置に関するものである。
図5に示すし渣の移送装置20は、し渣を粉砕するし渣破砕機21で破砕されたし渣を移送するための正圧移送タンク22と、こられを接続する管路とで概略構成されている。そして正圧移送タンク22から外部に水と共に移送されたし渣はし渣分離機23に導入されてし渣と水を分離することになる。
図示しない移送水ポンプから移送水を送り出す主管路Pは、途中で分岐されて一方の供給側管路P2は給送水弁V16を介して正圧移送タンク22の上流側に接続され、移送水を正圧移送タンク22内に導入することになる。
正圧移送タンク22において、その上部に開口25が設けられ、この開口25には投入ゲート開閉弁26が設けられ、駆動モータMによって開口25の開閉作動を行う。開口25にはし渣破砕機21が接続されていて、投入されたし渣を破砕して開口25を通して正圧移送タンク22内に投入可能とされている。
【0024】
正圧移送タンク22は底面28が上流側から下流側に向けて下方に傾斜する傾斜面とされ、この底面28は図6の縦断面図で示すように水平底面28aの両側にテーパ面28b,28bを形成して構成されている。しかもし渣が浮遊する水面下には上流側から下流側に向けて所定間隔で1または複数の阻流板29…が設けられている。図で示す例では、図6及び図7に示すように二対の阻流板29…が略直立し、水流方向に間隔を開け且つ水流方向に略直交して設けられていて、上流側に第一の阻流板29A,29A、下流側に第二の阻流板29B,29Bが設けられている。
第一の阻流板29A,29Aは正圧移送タンク22の両側壁に支持され、両阻流板29A,29Aの間に若干の間隙C1が形成され、両阻流板29A,29Aと底面28との間にも間隙C2が形成されている。第二の阻流板29B,29Bも正圧移送タンク22の両側壁に支持され、両阻流板29B,29Bの間に若干の間隙C3が形成され、両阻流板29B,29Bと底面28との間にも間隙C4が形成されている。
また各阻流板29は図7に示す平面視で上流側の面が間隙C1,C3に向けて下流側に傾斜しており、比重の大きい混入物の移送を誘導している。
【0025】
また正圧移送タンク22は内部に投入された水とし渣がオーバーフローした際に一部の水を外部に排出するオーバーフロー管路P3がオーバーフロー弁V30を介して設けられている。正圧移送タンク22の下流側出口には排出側管路P4が連結されており、その他端はし渣分離機23に連結されていると共に途中に吐出弁V17が設けられている。
また図示しない移送水ポンプから移送水が供給される供給側管路P2は給送水弁V16の下流側で分岐されて撹拌管路P17が設けられ、この撹拌管路P17は他端が正圧移送タンク22の下端底面28に連通し、排出側管路P4出口付近に集中するし渣をほぐすための噴射水を供給する。また撹拌管路P17の途中部分には1または複数の吐出管路(吐出部)P18、P19…が分岐形成されて底面28の水平底面28bに開口している。図に示す例では2つの吐出管路P18,P19が設けられ、上流側の第一の吐出管路P18は第一の阻流板29Aの下部に位置し下流側の第二の吐出管路P19は第二の阻流板29Bの下部に位置して、それぞれ移送水でし渣を攪乱すると共に比重の大きい混入物を下流側に送るようになっている。
尚、撹拌管路P17の出口部分を吐出管路に含めても良い。
そして撹拌管路P17の他端付近では排出弁V19を介してオーバーフロー管路P3に連通する排出管路P20が分岐している。
【0026】
更に給送水弁V16の上流側で主管路Pを分岐して逆洗管路P21が設けられ、この逆洗管路P21はその途中に逆洗弁V20を設けると共にその他端は排出側管路P4に吐出弁V17の上流側で連結されている。そのため、オーバーフロー弁V30を開弁し、移送水を逆洗管路P21を通して正圧移送タンク22に出口側から逆流させることで、し渣等の詰まりを解除でき、逆洗水は給送水弁V16を閉弁していることでオーバーフロー管路P3から排出されることになる。
【0027】
本実施の形態によるし渣の移送装置20は上述の構成を有しており、し渣破砕機21でし渣を破砕してこれを開口25から正圧移送タンク22内に投入する。
投入に際して投入ゲート開閉弁26を開放して破砕し渣を正圧移送タンク22内に落下させて投入ゲート開閉弁26を閉鎖する。この時、正圧移送タンク22内の水面高さが所定以上になっていればオーバーフロー管路P3から排出する。この状態で、図5に示すように正圧移送タンク22内は水面が例えば阻流板29A,29Bより若干上に位置し、し渣の一部は表面に浮遊している。
【0028】
そしてオーバーフロー弁V30を閉弁し、給送水弁V16と吐出弁V17を開弁した状態で、正圧移送タンク22内を圧力的に閉空間に形成する。この状態で、図示しない移送水ポンプから供給側管路P2を通して移送水を正圧移送タンク22内上流側から供給する。この時正圧移送タンク22内に阻流板29A、29Bが設けられていないと、図8に示すように複雑な循環流が生じ、し渣が排出側管路P4方向に集積しなくなってしまう。
その点、本実施の形態によれば、阻流板29A、29Bが上述の循環流を阻害し、阻流板29A、29Bの間隙C1,C2,C3,C4には排出側管路P4方向へ向かう流れが形成されるので、し渣は排出側管路P4内に送られる。
【0029】
正圧移送タンク22への移送水の導入と同時に、第一及び第二吐出管路P18、P19からも別個の移送水が底面28から内部に吐出され、開口が下流側を向いていることで底面28付近の比重の大きい混入物を撹拌しつつ下流側へ押しやることになる。底面28の下流側端部では撹拌管路P17から吐出される移送水によって、出口付近に集中するし渣をほぐしつつ排出側管路P4へ移送し、し渣分離機23に送られる。し渣分離機23では水とし渣が分離される。
上述の作業を繰り返すことで、し渣の移送を繰り返して行うことができる。
また正圧移送タンク22内及び排出側管路P4につながる出口付近の詰まりに際しては、給送水弁V16と吐出弁V17を閉弁して逆洗弁V20とオーバーフロー弁V30を開弁する。この状態で移送水を逆洗管路P21に通すと、排出側管路P4を通して移送水が正圧移送タンク22内に逆流し詰まりを解除する。そして逆洗流入後の排水はオーバーフロー管路P3で排出されることになる。
【0030】
本実施の形態によれば、水面に浮遊するし渣や沈積するし渣について水と共に確実に移送でき、しかもし渣の汲み上げとは分離して移送のみを移送水で行うようにしたから、負圧を発生させるための加圧水が被移送物として移送管路に流入せず、比較的小さな動力と移送水量とで行うことができ、移送装置20及びその付帯設備を小規模にすることができ、使用エネルギーも少ない。また正圧移送タンク22内に移送水を逆流させることで容易に詰まりの解除を行える。またし渣の移送経路に羽根車等がないために詰まり等の閉塞を生じにくく効率も高い。
【0031】
尚、上述の実施の形態では、沈砂の移送装置1,10とし渣の移送装置20は別個としたが、これに限定されることなく、沈砂とし渣等を共に移送できる。また沈砂の移送装置1,10も阻流板29A,29Bを設ければ浮遊し渣の移送も合わせて行える。
尚、逆流機構は、逆洗弁V9,V14,V20と逆洗管路P5,P13,P21と排出管路等を含んでいる。阻流板29A,29Bは阻流部材を構成する。
【符号の説明】
【0032】
1,10,20 移送装置
3 揚砂ポンプ
4,12,22 正圧移送タンク
14 スクリューコンベア
6,6A,6B 撹拌ブロック
16 貯溜空間
29,29A,29B 阻流板(阻流部材)
P2 供給側管路
P4 排出側管路
P6,P7,P14,P15 吐出管路(吐出部)
V9,V14,V20 逆洗弁(逆流機構)
P5,P13,P21 逆洗管路(逆流機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧流体を供給する主管路が途中で分岐された一方の管路及び他方の管路と、前記一方の管路に接続された揚砂ポンプと、この揚砂ポンプで沈砂池から汲み上げた沈砂等が投入されていて圧力的に閉空間を形成可能な槽と、前記槽内の沈砂等を排出する排出側通路とを備え、
前記他方の管路によって正圧の加圧流体を圧力的に閉空間を形成する槽内に供給してこの槽内の沈砂等を前記排出側通路を通して移送するようにした沈砂等の移送装置。
【請求項2】
前記一方の管路には揚砂ポンプの上流側と下流側に加圧水弁と揚砂弁とを配設し、これら加圧水弁及び揚砂弁を開弁することで揚砂ポンプから沈砂等を汲み上げて槽内に供給し、前記加圧水弁及び揚砂弁を閉弁して前記他方の管路から加圧水を槽内に投入するようにした請求項1に記載された沈砂等の移送装置。
【請求項3】
前記他方の管路を分岐してなる分岐供給管路を介して、前記槽内の底面に別個の加圧流体を吐出させる吐出部を加圧流体の流れ方向に1または複数配設した請求項1または2に記載された沈砂等の移送装置。
【請求項4】
前記槽内の底面に、前記他方の管路側から排出側通路側に向けて上下方向に変位する傾斜面または段差部が設けられ、これら傾斜面または段差部に前記別個の加圧流体を供給する吐出部を配設したことを特徴とする請求項3に記載された沈砂等の移送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−86987(P2012−86987A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−266168(P2011−266168)
【出願日】平成23年12月5日(2011.12.5)
【分割の表示】特願2001−166854(P2001−166854)の分割
【原出願日】平成13年6月1日(2001.6.1)
【出願人】(390014074)前澤工業株式会社 (134)