沈胴式カメラ
【目的】沈胴式カメラにおいて、バリアを閉じるときにバリアのレンズ鏡筒との干渉を防止できる構造を有しながら、カメラのコンパクト化も可能とする沈胴式カメラを提供すること。
【構成】バリア2の全開位置2(B)とバリア2が突出位置1(B)にあるレンズ鏡筒1の側面と付き当たる位置の間において、バリア2を更に閉方向に移動させたときにクリック作用を与えるクリックボール5a、および、クリックバネ4aで構成されるクリック手段と、バリア全開位置2(B)と上記クリック手段が作用するクリック作用位置であるバリア準開位置との間で動作し、撮影レンズの沈胴、突出移動動作のトリガ信号を与えるスイッチ手段とを具備する沈胴式カメラ。
【構成】バリア2の全開位置2(B)とバリア2が突出位置1(B)にあるレンズ鏡筒1の側面と付き当たる位置の間において、バリア2を更に閉方向に移動させたときにクリック作用を与えるクリックボール5a、および、クリックバネ4aで構成されるクリック手段と、バリア全開位置2(B)と上記クリック手段が作用するクリック作用位置であるバリア準開位置との間で動作し、撮影レンズの沈胴、突出移動動作のトリガ信号を与えるスイッチ手段とを具備する沈胴式カメラ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、沈胴式カメラ、詳しくは、沈胴式カメラのバリア回りの構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、沈胴式のカメラにおけるバリアの構造に関して、各種の提案がなされているが、特開平1−255839号公報に開示のものは、バリアの開閉に連動して、撮影レンズを繰り出しと沈胴を行い、沈胴に連動してバリアロックを解除するように構成したものである。また、特開平2−50143号公報に開示のものは、バリア連動スイッチにより撮影レンズの繰り出しと沈胴を行い、バリアを開くとバリアをロックする。そして、バリアのロックの解除は、手動により行うものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上述の特開平1−255839号公報、および、特開平2−50143号公報に開示のものは、何れも機能的には十分なものであるが、撮影レンズとバリアの連動機構の構造が複雑でコスト的に不利であると同時に、スペ−スを多く必要とし、コンパクト化が難しいものであった。
【0004】本発明は、上述の不具合を解決するためになされたものであり、沈胴式カメラにおいて、バリアを閉じるときにバリアのレンズ鏡筒との干渉を防止できる構造を有しながら、カメラのコンパクト化も可能とする沈胴式カメラを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の沈胴式カメラは、撮影レンズを有し、カメラボディに対して撮影を行なう突出位置と、撮影を行なわない沈胴位置との間を移動可能なレンズ鏡筒と、上記カメラボディに設けられ、撮影レンズの光軸と交差する方向に移動し、レンズ鏡筒が上記沈胴位置にあるときには該レンズ鏡筒の正面を覆う全閉位置と該レンズ鏡筒が上記突出位置にある時には該レンズ鏡筒を覆うことのない全開位置とに移動可能であるバリアとを備えた沈胴式カメラにおいて、該バリアの全開位置と、バリアが突出位置にある該レンズ鏡筒の側面と付き当たる位置の間において、バリアを更に閉方向に移動させたときにクリックを与えるクリック手段と、バリア全開位置と上記クリック手段が作用するクリック作用位置の間で動作し、撮影レンズの沈胴、突出移動動作のトリガ信号を与えるスイッチ手段とを具備することを特徴とする。
【0006】
【作用】バリアの全閉位置から開方向に移動させていくと、バリアがレンズ鏡筒を覆わない位置に達する。このときは、クリック手段によるクリック作用は効かない。さらにバリアを移動させるとトリガスイッチが作用して、レンズ鏡筒が撮影可能な突出位置に突出する。
【0007】一方、バリアの全開位置から閉方向に移動させていくと、トリガスイッチが作用してレンズ鏡筒が沈胴を始める。バリアを更に閉方向に移動させるとクリック手段が作用し、撮影者にレンズ鏡筒が完全に沈胴するまで待機することを促す。
【0008】そして、沈胴が完全に終了し、バリアは全閉が可能な状態となったとき、クリックを乗り越すように移動させ、バリアを全閉させる。
【0009】
【実施例】以下、本発明の実施例を図に基づいて説明する。図1は本実施例の第1実施例の沈胴式カメラの斜視図でバリアを全開し、レンズ鏡筒が突出した状態を示す。図2は、上記バリアを完全に閉めた状態でレンズ鏡筒は沈胴位置にある状態での斜視図であって、図3は、上記図2の状態におけるバリアを取り外した状態の斜視図である。なお、バリア2は、カメラボディの前カバー3のバリアレール溝3dと下側の同様の溝(不図示)に沿って移動可能になっており、図2の閉位置2(A)から図1の開位置2(B)に位置させることができる。また、このとき、レンズ鏡筒1は、図3の沈胴位置1(B)から図1の撮影可能な突出位置1(A)迄突出した状態になる。
【0010】図3に示すように、カメラボディ3には、レンズ鏡筒1の近傍位置であって、カメラに向かって左側に円筒凸状のボス部3a,3b,3cが縦方向一列に配設されている。ボス部3aは、クリック手段である第1のバリアクリック部を内蔵する。ボス部3bは、第2のバリアクリック部を内蔵する。該第1,第2のバリアクリック部は、第1、第2のクリックバネ4a,4bと第1、第2のクリックボール5a,5bで構成され、クリックボール5a,5bを前方向に付勢している。また、ボス3c部には、スイッチ手段であるバリアスイッチ部を構成する、後述のバリアスイッチ7を操作するためのスイッチ軸6がその中心に摺動自在に貫通している。
【0011】図4は、バリア2の全閉状態での第1のバリアクリック部を通る面の横断面図である。図5は、バリア2の全開状態での第1のバリアクリック部を通る面の横断面図である。また、図6は、バリア2の準開状態での第1のバリアクリック部を通る面の断面図である。なお、上記バリア2の準開状態とは、バリア2の全開位置2(B)と、バリア2を閉方向に移動させ、突き出したレンズ鏡筒1にバリア2の先端が当接する位置との概ね中間の位置にバリアが位置する状態をいう。また、そのバリア2の位置を準開位置2(C)とする。
【0012】上記バリア2のクリックボール5aが接触する面の形状は、バリアの全閉位置2(A)から準開位置2(C)の直前まで移動する間は平面部2cを形成し、準開位置2(C)では、斜面部2bが形成され、更に、全開位置2(B)では、凹平面部2aが形成されている。
【0013】さて、バリアを図4の全閉位置2(A)にある状態から図5の状態への開方向に移動していくと、バリア2の全開前の準開位置2(C)において、バリア斜面2a部に第1のクリックボール5aが押しつけられる。しかし、該斜面2aはバリア2の開き方向の移動に対し抵抗力は発生しないので図4の全閉位置2(A)から図5の全開位置2(B)に、バリア2はスムーズに移動可能である。逆に、図5の全開位置2(B)からバリアを閉じ方向に移動させていくと、バリア準開位置2(C)でバリア斜面部2bに第1のクリックボール5aが押しつけられ、バリアを閉じようとする動作に対して抵抗力が発生する(図6参照)。そこで、更に強い力でバリアを閉じ方向に動かすと、クリックボール5aをバリア斜面部2bで押し込みバリア2は閉じ方向に移動する。
【0014】図7は、バリア2の全閉状態での第2のバリアクリック部を通る部分の横断面図である。図8は、バリア2の全開状態での第2のバリアクリック部を通る面の横断面図である。また、図9は、バリア2の準開状態での第2のバリアクリック部を通る面の断面図である。これらの図におけるバリア位置は各上記図4,5,6のバリア位置にそれぞれ対応している。
【0015】図7の状態では、全閉位置2(A)でのクリックを効かせるためのバリア凹部2fに、第2のクリックボール5bが第2のクリックバネ4bにより押し付けられている。図8では、全開位置2(B)でのクリックを効かせるためのバリア凹部2dに第2のクリックボール5bが第2のクリックバネ4bにより押し付けられている。図8の全開位置2(B)からクリックボール5bの押し込みに充分な力でバリア2を閉めていくと、第2のクリックボール5bはバリア凹部2dを抜け出し、平らな面に2eに当接して摺動する。この第2のバリアクリック部だけを考えると全閉,全開位置2(A),2(B)以外の区間ではバリア2はそのスムーズな移動が妨げられない。
【0016】図10は、バリア2の全閉状態でのバリアスイッチ部を通る面の横断面図である。図11は、バリア2の全開状態でのバリアスイッチ部を通る面の横断面図である。前述したようにボス3c部には、カメラボディ前カバ−3の内面に配設されたバリアスイッチ7を操作するためのスイッチ軸6が摺動自在に貫通している。そして、バリアスイッチ7の可動接片7aによりバリア軸6は前方に付勢されている。バリア軸6がバリア2の内平面2hに当接しているときはバリアスイッチ7の可動接片7aと固定接片7bは離間しており、スイッチはオフ状態である(図10参照)。バリア2を開方向に移動していくと、スイッチ軸6はバリア突起2gに当接し、スイッチ軸6が可動接片7aを押し込み、固定接片7bと接触させる。このとき、バリアスイッチ7はオン状態となる(図11参照)。
【0017】なお、前記バリア2の突起2gの斜面部2iは、前述のバリア全開位置2(B)と準開位置2(C)の概ね中間の位置にバリアが位置したときにスイッチ軸7が当接し、スイッチ7がオンオフするように配設されている。また、バリアスイッチ7がオン状態になると、レンズ鏡筒1は、該オン信号を受けて図示しないカメラ内蔵の制御装置により撮影可能な突出位置1(B)へ繰り出される。また、バリアスイッチ7がオフ状態になると、レンズ鏡筒1は、該オフ信号を受けて撮影を行わない沈胴位置1(A)へ繰り込まれる。
【0018】次に、以上のように構成された本実施例の沈胴式カメラのバリア開閉とレンズ鏡筒の沈胴,繰り出し動作について説明する。バリア2の閉状態では、第2のクリックボール5bが第2のクリックバネ4bによりバリア凹部2fに押し付けられているので、不用意にバリア2が開いてしまうことはない(図7参照)。第2のクリックボール5bが第2クリックバネ4bを押し、前カバ−3のボス部3bの後方へ押むのに十分な力でバリア2を開方向に動かすと、第2のクリックボール4bは、バリア凹部2fを外れ、バリア平面部2eを摺動して移動する。
【0019】一方、上述のバリア開方向の初期移動においては、第1のバリアクリック部の第1のクリックボール5aは、バリア2の平面部2cの滑らかな面に当接しており(図4参照)、そのとき、スイッチ軸6もバリア2の平面部2hの滑らかな面に当接している。また、第2のクリックボール5bもバリア凹部2bから外れた後、平面部2eに当接している。従って、スムーズにバリア2は移動していく。このときのバリアスイッチ7はオフ状態であり、当然、レンズ鏡筒1は沈胴位置1(A)にある。
【0020】更に、バリア2を開いていくと、バリア準開位置2(C)で第1のクリックボール5bがバリア斜面部2bに達する(図6参照)。しかし、この斜面部2bはバリアを開方向移動に対する抵抗を与えることにはならないので、スムーズにバリア2は開いてゆく。そして、第1のクリックボール5aはバリア凹面部2aに当接する。このときはまだバリアスイッチ7はオフ状態を保っている。
【0021】更に、バリア2が開けれていき、バリア全開位置2(B)とバリア準開位置2(C)の概ね中間位置に達すると、スイッチ軸6がバリア斜面2iにより押し込まれ、バリアスイッチ7がオン状態になる(図11参照)。この信号によりカメラは、レンズ鏡筒1の突出位置1(B)まで繰り出し動作を実行する。既に、このとき、バリア2はレンズ鏡筒1の移動軌跡から退避した位置にあるので、レンズ鏡筒1は障害なく繰り出せる。ここで、バリア軸6がバリアスイッチ7の可動接片7aによりバリア2に当て付いている力量は非常に弱い。従って、バリア斜面2iによりバリア軸6を押し込むためのバリア移動力も弱く設定され、バリア2を開くときの抵抗としては殆ど働かず、バリア2は、スムーズに開方向へ移動させることができる。
【0022】更に、バリア2を開いていくと、バリア全開位置2(B)に到達する。そして、第2のクリックボール5bがバリア凹部2dに入り込み、バリア2は不用意に閉方向に締まらない(図8参照)。以上のように、バリア2の全閉位置2(A)における第2のクリック部を外れれば、バリア2は、全開位置2(B)までスムーズに動いていき、レンズ鏡筒1は、撮影可能な突出位置1(B)まで繰り出され、撮影準備が完了する。
【0023】次に、撮影終了後にバリア2を閉じるときの動作を説明する。撮影を終了し、レンズ鏡筒1を沈胴させ、バリア2を閉じようとする場合、まず、バリア2を閉方向に動かし、バリア全開位置1(B)での第2のクリックボール5bが第2のクリックバネ4bを押圧して、前カバ−3のボス部3bの後方へ押し込むようにする。第2のクリックボール5bは、バリア凹部2dを外れ、バリア平面部2eの滑らかな面に当接する。
【0024】更に、バリア2を閉じ方向に動かしていくと、バリア2の斜面部2iがスイッチ軸6の位置に達する。スイッチ軸6はスイッチ7の可動接片7aにより前方に押されていることから、バリア平面部2hの面に当て付く。そして、可動接片7aと固定接片7bが離間し、バリアスイッチ7はオフ状態となる。この信号によりカメラ内蔵の制御部は、レンズ鏡筒1を突出位置1(B)から沈胴位置1(A)への繰り込み動作を開始させる。
【0025】更に、バリア2を閉方向へ移動し続けると、次に第1のクリックボール5aがバリア斜面部2aに当て付く(図6参照)。第1のクリックボール5aは、第1クリックバネ4aにより前方に付勢されているので、該斜面部2aによる付勢力は、バリア2を閉方向の移動に対する抵抗力になって、撮影者にレンズ鏡筒1が沈胴中であることを認識させる。そして、レンズ鏡筒1が完全に沈胴するまでバリア2の閉動作を中止させる。もし、この第1のクリック部のクリック作用がないと、バリア2をそのまま閉位置2(A)まで移動させてしまうので、バリアスイッチ7がオフ状態になり、沈胴動作を開始してレンズ鏡筒1がバリア2の移動軌跡から退避してしまう以前に、バリア2がレンズ鏡筒1の側面に当たり、レンズ鏡筒1の沈胴動作を阻害することになる。
【0026】撮影者は、沈胴終了を確認し、第1のクリックボール5aをバリア斜面3a部で押し込むのに十分な力でバリア2を閉方向へ動かす。完全にバリア2が閉まる閉位置2(A)で第2のクリックボール5bがバリア凹部2bに落ち込みバリア2が不用意に開かないようになる(図7参照)。
【0027】図12は、バリア2を開いていくときのタイミングチャートであって、バリア全閉位置2(A)から全開位置2(B)への変化に対するバリアスイッチ7のオンオフと、第1、第2のクリック部によるバリア開き力量F1 ,F2 の変化、バリア開き力量F1 とF2 の和の値で示されるバリア操作力量の変化、および、レンズ鏡筒1の動きを示したものである。但し、スイッチ軸7による開き力量への影響は第1、第2のクリック部の力量に比べて非常に小さいので無視している。
【0028】図13は、バリア2を閉じていくときのタイミングチャートであって、バリア全開位置2(B)から準開位置2(C)を経由して全閉位置2(A)への変化に対するバリアスイッチ7のオンオフと、第1、第2のクリック部によるバリア開き力量F1 ,F2 の変化、および、バリア開き力量F1 とF2 の和の値で示されるバリア操作力量の変化を示したものである。
【0029】次に、本発明の第2実施例を示す沈胴式カメラについて説明する。前記第1実施例のものでは、クリックボール、クリックバネを第1,第2のクリック部用としてそれぞれ2組使用したが、本実施例のものは、クリックボール、クリックを1組のみ使用するものである。その基本的構造は、第1実施例のものの第2のクリック部を無くし、その第2のクリック部の作用を行うための凹部形状をバリアに配設した構造ものである。
【0030】図14は、本実施例のカメラのバリア11が全閉位置11(A)にある状態でのバリアクリック部回りの横断面図であり、図15は、バリア11が全開位置11(B)にある状態での該クリック部回りの横断面図である。また、図16は、バリア11が準開位置11(C)の位置にある状態での該クリック部の横断面図である。図17は、バリア11に配設される全開位置用と準開位置用クリック凹部11b,11cの拡大断面図である。
【0031】本実施例のカメラにおいて、カメラの前カバ−3には、前記第1実施例のものと同様にレンズ鏡筒1の側部に円筒凸状のボス部3aと図示しないボス3c部が配設されている。ボス部3aには、クリック手段であるバリアクリック部を内蔵する。該バリアクリック部は、クリックボール5aと該クリックボール5aを前方向に付勢しているクリックバネ4aで構成される。また、ボス3c部は、図10,11の第1実施例のものと同様に、スイッチ手段であるバリアスイッチ部を構成するバリアスイッチ7を操作するためのスイッチ軸6が貫通しているものとする。
【0032】上記バリア11が全閉位置11(A)にあるとき、バリア凹部11aにはクリックボール5aが入り込み、不用意にバリア11が開かないようになっている(図14参照)。全開位置11(B)にあるときは、バリア凹部11cにクリックボール5aが入り込み、不用意にバリアが閉じないようになっている(図15参照)。
【0033】上記バリア11のバリア凹部11bは、バリア準開位置11(C)でのクリック作用のためのものであり、図17に示すようにバリア11が開方向に動いているときには、クリックボール5aが上記凹部11bに落ち込んだ後、斜面11b”によりクリックボール5aがクリックバネ4aをチャージし、押し込まれる。逆にバリア11が閉方向に動いているときには、斜面11b’によりクリックボール5aを押し込んでゆく。なお、上記斜面11b’より斜面11b”の方が傾きが緩やかであるので凹部11bによるバリア閉方向の力量は重く、バリア開方向の力量は軽くなっている。
【0034】前述したように本実施例のものも第1実施例と同じようにバリアスイッチ7が配設されており、バリア全開位置11(B)とバリア準開示位置11(C)の概ね中間位置で該バリアスイッチ7がオン,オフするようになっている。そして、このオン,オフ信号によって、レンズ鏡筒1の繰り出し動作と沈胴動作が制御される。
【0035】以上のように構成された本実施例のカメラのバリア開閉とレンズ鏡筒の沈胴,繰り出し動作は、第1実施例のものと同じである。即ち、準開位置11(C)近傍において、バリア11を開き側に動かしているときは、クリックによる抵抗を減らし、全開位置迄バリア11をスムーズに動かされるようにする。逆に、バリア11を閉じ側に動かしているときは、クリックによる抵抗を増やしている。この抵抗によって、バリアの閉操作において、準開位置11(C)でレンズ鏡筒1が完全に沈胴する迄、待機させることができる。このような準開位置11(C)近傍での開き側と閉じ側へのバリア11の移動抵抗の差は、バリア凹部11bの両側の斜面11b’,11b”の傾きを上述のように変化させた形状にしたことによって達成される。
【0036】以上説明したように、本実施例の沈胴式カメラにおいては、カメラ前カバ−3に配設されるクリック部の構成が、第1実施例のものよりも単純なものとなり、更に、カメラのコンパクト化と低コスト化に有利なカメラとなる。
【0037】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の沈胴式カメラは、レンズ鏡筒が撮影可能位置に突出した位置にあるときに、バリアを開位置から閉位置に動かそうとすると、バリアがレンズ鏡筒側面に当接する手前でクリック手段により抵抗力が作用し、撮影者に待機を促す。そして、この位置へのバリアの移動直前でスイッチ手段がオフし、レンズ鏡筒を完全に沈胴させることができ、更には、バリアとレンズ鏡筒間に複雑な連動機構を必要とせず、カメラ自体もコンパクト化が可能となるなど数多くの顕著な効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示す沈胴式カメラのレンズ鏡筒の突出状態での斜視図。
【図2】図1の沈胴式カメラのレンズ鏡筒の沈胴状態でバリア閉状態での斜視図。
【図3】図1の沈胴式カメラのレンズ鏡筒の沈胴状態でバリアを取り外した状態での斜視図。
【図4】図1の沈胴式カメラのバリア全閉状態での第1のバリアクリック部を通る面での横断面図。
【図5】図1の沈胴式カメラのバリア全開状態での第1のバリアクリック部を通る面での横断面図。
【図6】図1の沈胴式カメラのバリア準開状態での第1のバリアクリック部を通る面での横断面図。
【図7】図1の沈胴式カメラのバリア全閉状態での第2のバリアクリック部を通る面での横断面図。
【図8】図1の沈胴式カメラのバリアの全開状態での第2のバリアクリック部を通る面での横断面図。
【図9】図1の沈胴式カメラのバリアの準開状態での第2のバリアクリック部を通る面での断面図。
【図10】図1の沈胴式カメラのバリアの全閉状態でのバリアスイッチ部を通る面での横断面図。
【図11】図1の沈胴式カメラのバリアの全開状態でのバリアスイッチ部を通る面での横断面図。
【図12】図1の沈胴式カメラのバリアを開いていくときのタイミングチャート。
【図13】図1の沈胴式カメラのバリアを閉じていくときのタイミングチャート。
【図14】本発明の第2実施例の沈胴式カメラのバリアが全閉位置にある状態でのバリアクリック部回りの横断面図。
【図15】上記図14の沈胴式カメラのバリアが全開位置にある状態でのバリアクリック部回りの横断面図。
【図16】上記図14の沈胴式カメラのバリアが準開位置にある状態でのバリアクリック部の横断面図。
【図17】上記図14の沈胴式カメラのバリアに配設される全開位置用と準開位置用クリック凹部の拡大断面図。
【符号の説明】
1 …………………レンズ鏡筒
1(A)…………………レンズ鏡筒の沈胴位置
1(B)…………………レンズ鏡筒の突出位置
2,11…………………バリア
2(A),11(A)…………………バリア閉位置
2(B),11(B)…………………バリア開位置
4a …………………クリックバネ(クリック手段)
5a …………………クリックボール(クリック手段)
6 …………………スイッチ軸(スイッチ手段)
7 …………………バリアスイッチ(スイッチ手段)
7a …………………可動接片(スイッチ手段)
7b …………………固定接片(スイッチ手段)
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、沈胴式カメラ、詳しくは、沈胴式カメラのバリア回りの構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、沈胴式のカメラにおけるバリアの構造に関して、各種の提案がなされているが、特開平1−255839号公報に開示のものは、バリアの開閉に連動して、撮影レンズを繰り出しと沈胴を行い、沈胴に連動してバリアロックを解除するように構成したものである。また、特開平2−50143号公報に開示のものは、バリア連動スイッチにより撮影レンズの繰り出しと沈胴を行い、バリアを開くとバリアをロックする。そして、バリアのロックの解除は、手動により行うものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上述の特開平1−255839号公報、および、特開平2−50143号公報に開示のものは、何れも機能的には十分なものであるが、撮影レンズとバリアの連動機構の構造が複雑でコスト的に不利であると同時に、スペ−スを多く必要とし、コンパクト化が難しいものであった。
【0004】本発明は、上述の不具合を解決するためになされたものであり、沈胴式カメラにおいて、バリアを閉じるときにバリアのレンズ鏡筒との干渉を防止できる構造を有しながら、カメラのコンパクト化も可能とする沈胴式カメラを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の沈胴式カメラは、撮影レンズを有し、カメラボディに対して撮影を行なう突出位置と、撮影を行なわない沈胴位置との間を移動可能なレンズ鏡筒と、上記カメラボディに設けられ、撮影レンズの光軸と交差する方向に移動し、レンズ鏡筒が上記沈胴位置にあるときには該レンズ鏡筒の正面を覆う全閉位置と該レンズ鏡筒が上記突出位置にある時には該レンズ鏡筒を覆うことのない全開位置とに移動可能であるバリアとを備えた沈胴式カメラにおいて、該バリアの全開位置と、バリアが突出位置にある該レンズ鏡筒の側面と付き当たる位置の間において、バリアを更に閉方向に移動させたときにクリックを与えるクリック手段と、バリア全開位置と上記クリック手段が作用するクリック作用位置の間で動作し、撮影レンズの沈胴、突出移動動作のトリガ信号を与えるスイッチ手段とを具備することを特徴とする。
【0006】
【作用】バリアの全閉位置から開方向に移動させていくと、バリアがレンズ鏡筒を覆わない位置に達する。このときは、クリック手段によるクリック作用は効かない。さらにバリアを移動させるとトリガスイッチが作用して、レンズ鏡筒が撮影可能な突出位置に突出する。
【0007】一方、バリアの全開位置から閉方向に移動させていくと、トリガスイッチが作用してレンズ鏡筒が沈胴を始める。バリアを更に閉方向に移動させるとクリック手段が作用し、撮影者にレンズ鏡筒が完全に沈胴するまで待機することを促す。
【0008】そして、沈胴が完全に終了し、バリアは全閉が可能な状態となったとき、クリックを乗り越すように移動させ、バリアを全閉させる。
【0009】
【実施例】以下、本発明の実施例を図に基づいて説明する。図1は本実施例の第1実施例の沈胴式カメラの斜視図でバリアを全開し、レンズ鏡筒が突出した状態を示す。図2は、上記バリアを完全に閉めた状態でレンズ鏡筒は沈胴位置にある状態での斜視図であって、図3は、上記図2の状態におけるバリアを取り外した状態の斜視図である。なお、バリア2は、カメラボディの前カバー3のバリアレール溝3dと下側の同様の溝(不図示)に沿って移動可能になっており、図2の閉位置2(A)から図1の開位置2(B)に位置させることができる。また、このとき、レンズ鏡筒1は、図3の沈胴位置1(B)から図1の撮影可能な突出位置1(A)迄突出した状態になる。
【0010】図3に示すように、カメラボディ3には、レンズ鏡筒1の近傍位置であって、カメラに向かって左側に円筒凸状のボス部3a,3b,3cが縦方向一列に配設されている。ボス部3aは、クリック手段である第1のバリアクリック部を内蔵する。ボス部3bは、第2のバリアクリック部を内蔵する。該第1,第2のバリアクリック部は、第1、第2のクリックバネ4a,4bと第1、第2のクリックボール5a,5bで構成され、クリックボール5a,5bを前方向に付勢している。また、ボス3c部には、スイッチ手段であるバリアスイッチ部を構成する、後述のバリアスイッチ7を操作するためのスイッチ軸6がその中心に摺動自在に貫通している。
【0011】図4は、バリア2の全閉状態での第1のバリアクリック部を通る面の横断面図である。図5は、バリア2の全開状態での第1のバリアクリック部を通る面の横断面図である。また、図6は、バリア2の準開状態での第1のバリアクリック部を通る面の断面図である。なお、上記バリア2の準開状態とは、バリア2の全開位置2(B)と、バリア2を閉方向に移動させ、突き出したレンズ鏡筒1にバリア2の先端が当接する位置との概ね中間の位置にバリアが位置する状態をいう。また、そのバリア2の位置を準開位置2(C)とする。
【0012】上記バリア2のクリックボール5aが接触する面の形状は、バリアの全閉位置2(A)から準開位置2(C)の直前まで移動する間は平面部2cを形成し、準開位置2(C)では、斜面部2bが形成され、更に、全開位置2(B)では、凹平面部2aが形成されている。
【0013】さて、バリアを図4の全閉位置2(A)にある状態から図5の状態への開方向に移動していくと、バリア2の全開前の準開位置2(C)において、バリア斜面2a部に第1のクリックボール5aが押しつけられる。しかし、該斜面2aはバリア2の開き方向の移動に対し抵抗力は発生しないので図4の全閉位置2(A)から図5の全開位置2(B)に、バリア2はスムーズに移動可能である。逆に、図5の全開位置2(B)からバリアを閉じ方向に移動させていくと、バリア準開位置2(C)でバリア斜面部2bに第1のクリックボール5aが押しつけられ、バリアを閉じようとする動作に対して抵抗力が発生する(図6参照)。そこで、更に強い力でバリアを閉じ方向に動かすと、クリックボール5aをバリア斜面部2bで押し込みバリア2は閉じ方向に移動する。
【0014】図7は、バリア2の全閉状態での第2のバリアクリック部を通る部分の横断面図である。図8は、バリア2の全開状態での第2のバリアクリック部を通る面の横断面図である。また、図9は、バリア2の準開状態での第2のバリアクリック部を通る面の断面図である。これらの図におけるバリア位置は各上記図4,5,6のバリア位置にそれぞれ対応している。
【0015】図7の状態では、全閉位置2(A)でのクリックを効かせるためのバリア凹部2fに、第2のクリックボール5bが第2のクリックバネ4bにより押し付けられている。図8では、全開位置2(B)でのクリックを効かせるためのバリア凹部2dに第2のクリックボール5bが第2のクリックバネ4bにより押し付けられている。図8の全開位置2(B)からクリックボール5bの押し込みに充分な力でバリア2を閉めていくと、第2のクリックボール5bはバリア凹部2dを抜け出し、平らな面に2eに当接して摺動する。この第2のバリアクリック部だけを考えると全閉,全開位置2(A),2(B)以外の区間ではバリア2はそのスムーズな移動が妨げられない。
【0016】図10は、バリア2の全閉状態でのバリアスイッチ部を通る面の横断面図である。図11は、バリア2の全開状態でのバリアスイッチ部を通る面の横断面図である。前述したようにボス3c部には、カメラボディ前カバ−3の内面に配設されたバリアスイッチ7を操作するためのスイッチ軸6が摺動自在に貫通している。そして、バリアスイッチ7の可動接片7aによりバリア軸6は前方に付勢されている。バリア軸6がバリア2の内平面2hに当接しているときはバリアスイッチ7の可動接片7aと固定接片7bは離間しており、スイッチはオフ状態である(図10参照)。バリア2を開方向に移動していくと、スイッチ軸6はバリア突起2gに当接し、スイッチ軸6が可動接片7aを押し込み、固定接片7bと接触させる。このとき、バリアスイッチ7はオン状態となる(図11参照)。
【0017】なお、前記バリア2の突起2gの斜面部2iは、前述のバリア全開位置2(B)と準開位置2(C)の概ね中間の位置にバリアが位置したときにスイッチ軸7が当接し、スイッチ7がオンオフするように配設されている。また、バリアスイッチ7がオン状態になると、レンズ鏡筒1は、該オン信号を受けて図示しないカメラ内蔵の制御装置により撮影可能な突出位置1(B)へ繰り出される。また、バリアスイッチ7がオフ状態になると、レンズ鏡筒1は、該オフ信号を受けて撮影を行わない沈胴位置1(A)へ繰り込まれる。
【0018】次に、以上のように構成された本実施例の沈胴式カメラのバリア開閉とレンズ鏡筒の沈胴,繰り出し動作について説明する。バリア2の閉状態では、第2のクリックボール5bが第2のクリックバネ4bによりバリア凹部2fに押し付けられているので、不用意にバリア2が開いてしまうことはない(図7参照)。第2のクリックボール5bが第2クリックバネ4bを押し、前カバ−3のボス部3bの後方へ押むのに十分な力でバリア2を開方向に動かすと、第2のクリックボール4bは、バリア凹部2fを外れ、バリア平面部2eを摺動して移動する。
【0019】一方、上述のバリア開方向の初期移動においては、第1のバリアクリック部の第1のクリックボール5aは、バリア2の平面部2cの滑らかな面に当接しており(図4参照)、そのとき、スイッチ軸6もバリア2の平面部2hの滑らかな面に当接している。また、第2のクリックボール5bもバリア凹部2bから外れた後、平面部2eに当接している。従って、スムーズにバリア2は移動していく。このときのバリアスイッチ7はオフ状態であり、当然、レンズ鏡筒1は沈胴位置1(A)にある。
【0020】更に、バリア2を開いていくと、バリア準開位置2(C)で第1のクリックボール5bがバリア斜面部2bに達する(図6参照)。しかし、この斜面部2bはバリアを開方向移動に対する抵抗を与えることにはならないので、スムーズにバリア2は開いてゆく。そして、第1のクリックボール5aはバリア凹面部2aに当接する。このときはまだバリアスイッチ7はオフ状態を保っている。
【0021】更に、バリア2が開けれていき、バリア全開位置2(B)とバリア準開位置2(C)の概ね中間位置に達すると、スイッチ軸6がバリア斜面2iにより押し込まれ、バリアスイッチ7がオン状態になる(図11参照)。この信号によりカメラは、レンズ鏡筒1の突出位置1(B)まで繰り出し動作を実行する。既に、このとき、バリア2はレンズ鏡筒1の移動軌跡から退避した位置にあるので、レンズ鏡筒1は障害なく繰り出せる。ここで、バリア軸6がバリアスイッチ7の可動接片7aによりバリア2に当て付いている力量は非常に弱い。従って、バリア斜面2iによりバリア軸6を押し込むためのバリア移動力も弱く設定され、バリア2を開くときの抵抗としては殆ど働かず、バリア2は、スムーズに開方向へ移動させることができる。
【0022】更に、バリア2を開いていくと、バリア全開位置2(B)に到達する。そして、第2のクリックボール5bがバリア凹部2dに入り込み、バリア2は不用意に閉方向に締まらない(図8参照)。以上のように、バリア2の全閉位置2(A)における第2のクリック部を外れれば、バリア2は、全開位置2(B)までスムーズに動いていき、レンズ鏡筒1は、撮影可能な突出位置1(B)まで繰り出され、撮影準備が完了する。
【0023】次に、撮影終了後にバリア2を閉じるときの動作を説明する。撮影を終了し、レンズ鏡筒1を沈胴させ、バリア2を閉じようとする場合、まず、バリア2を閉方向に動かし、バリア全開位置1(B)での第2のクリックボール5bが第2のクリックバネ4bを押圧して、前カバ−3のボス部3bの後方へ押し込むようにする。第2のクリックボール5bは、バリア凹部2dを外れ、バリア平面部2eの滑らかな面に当接する。
【0024】更に、バリア2を閉じ方向に動かしていくと、バリア2の斜面部2iがスイッチ軸6の位置に達する。スイッチ軸6はスイッチ7の可動接片7aにより前方に押されていることから、バリア平面部2hの面に当て付く。そして、可動接片7aと固定接片7bが離間し、バリアスイッチ7はオフ状態となる。この信号によりカメラ内蔵の制御部は、レンズ鏡筒1を突出位置1(B)から沈胴位置1(A)への繰り込み動作を開始させる。
【0025】更に、バリア2を閉方向へ移動し続けると、次に第1のクリックボール5aがバリア斜面部2aに当て付く(図6参照)。第1のクリックボール5aは、第1クリックバネ4aにより前方に付勢されているので、該斜面部2aによる付勢力は、バリア2を閉方向の移動に対する抵抗力になって、撮影者にレンズ鏡筒1が沈胴中であることを認識させる。そして、レンズ鏡筒1が完全に沈胴するまでバリア2の閉動作を中止させる。もし、この第1のクリック部のクリック作用がないと、バリア2をそのまま閉位置2(A)まで移動させてしまうので、バリアスイッチ7がオフ状態になり、沈胴動作を開始してレンズ鏡筒1がバリア2の移動軌跡から退避してしまう以前に、バリア2がレンズ鏡筒1の側面に当たり、レンズ鏡筒1の沈胴動作を阻害することになる。
【0026】撮影者は、沈胴終了を確認し、第1のクリックボール5aをバリア斜面3a部で押し込むのに十分な力でバリア2を閉方向へ動かす。完全にバリア2が閉まる閉位置2(A)で第2のクリックボール5bがバリア凹部2bに落ち込みバリア2が不用意に開かないようになる(図7参照)。
【0027】図12は、バリア2を開いていくときのタイミングチャートであって、バリア全閉位置2(A)から全開位置2(B)への変化に対するバリアスイッチ7のオンオフと、第1、第2のクリック部によるバリア開き力量F1 ,F2 の変化、バリア開き力量F1 とF2 の和の値で示されるバリア操作力量の変化、および、レンズ鏡筒1の動きを示したものである。但し、スイッチ軸7による開き力量への影響は第1、第2のクリック部の力量に比べて非常に小さいので無視している。
【0028】図13は、バリア2を閉じていくときのタイミングチャートであって、バリア全開位置2(B)から準開位置2(C)を経由して全閉位置2(A)への変化に対するバリアスイッチ7のオンオフと、第1、第2のクリック部によるバリア開き力量F1 ,F2 の変化、および、バリア開き力量F1 とF2 の和の値で示されるバリア操作力量の変化を示したものである。
【0029】次に、本発明の第2実施例を示す沈胴式カメラについて説明する。前記第1実施例のものでは、クリックボール、クリックバネを第1,第2のクリック部用としてそれぞれ2組使用したが、本実施例のものは、クリックボール、クリックを1組のみ使用するものである。その基本的構造は、第1実施例のものの第2のクリック部を無くし、その第2のクリック部の作用を行うための凹部形状をバリアに配設した構造ものである。
【0030】図14は、本実施例のカメラのバリア11が全閉位置11(A)にある状態でのバリアクリック部回りの横断面図であり、図15は、バリア11が全開位置11(B)にある状態での該クリック部回りの横断面図である。また、図16は、バリア11が準開位置11(C)の位置にある状態での該クリック部の横断面図である。図17は、バリア11に配設される全開位置用と準開位置用クリック凹部11b,11cの拡大断面図である。
【0031】本実施例のカメラにおいて、カメラの前カバ−3には、前記第1実施例のものと同様にレンズ鏡筒1の側部に円筒凸状のボス部3aと図示しないボス3c部が配設されている。ボス部3aには、クリック手段であるバリアクリック部を内蔵する。該バリアクリック部は、クリックボール5aと該クリックボール5aを前方向に付勢しているクリックバネ4aで構成される。また、ボス3c部は、図10,11の第1実施例のものと同様に、スイッチ手段であるバリアスイッチ部を構成するバリアスイッチ7を操作するためのスイッチ軸6が貫通しているものとする。
【0032】上記バリア11が全閉位置11(A)にあるとき、バリア凹部11aにはクリックボール5aが入り込み、不用意にバリア11が開かないようになっている(図14参照)。全開位置11(B)にあるときは、バリア凹部11cにクリックボール5aが入り込み、不用意にバリアが閉じないようになっている(図15参照)。
【0033】上記バリア11のバリア凹部11bは、バリア準開位置11(C)でのクリック作用のためのものであり、図17に示すようにバリア11が開方向に動いているときには、クリックボール5aが上記凹部11bに落ち込んだ後、斜面11b”によりクリックボール5aがクリックバネ4aをチャージし、押し込まれる。逆にバリア11が閉方向に動いているときには、斜面11b’によりクリックボール5aを押し込んでゆく。なお、上記斜面11b’より斜面11b”の方が傾きが緩やかであるので凹部11bによるバリア閉方向の力量は重く、バリア開方向の力量は軽くなっている。
【0034】前述したように本実施例のものも第1実施例と同じようにバリアスイッチ7が配設されており、バリア全開位置11(B)とバリア準開示位置11(C)の概ね中間位置で該バリアスイッチ7がオン,オフするようになっている。そして、このオン,オフ信号によって、レンズ鏡筒1の繰り出し動作と沈胴動作が制御される。
【0035】以上のように構成された本実施例のカメラのバリア開閉とレンズ鏡筒の沈胴,繰り出し動作は、第1実施例のものと同じである。即ち、準開位置11(C)近傍において、バリア11を開き側に動かしているときは、クリックによる抵抗を減らし、全開位置迄バリア11をスムーズに動かされるようにする。逆に、バリア11を閉じ側に動かしているときは、クリックによる抵抗を増やしている。この抵抗によって、バリアの閉操作において、準開位置11(C)でレンズ鏡筒1が完全に沈胴する迄、待機させることができる。このような準開位置11(C)近傍での開き側と閉じ側へのバリア11の移動抵抗の差は、バリア凹部11bの両側の斜面11b’,11b”の傾きを上述のように変化させた形状にしたことによって達成される。
【0036】以上説明したように、本実施例の沈胴式カメラにおいては、カメラ前カバ−3に配設されるクリック部の構成が、第1実施例のものよりも単純なものとなり、更に、カメラのコンパクト化と低コスト化に有利なカメラとなる。
【0037】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の沈胴式カメラは、レンズ鏡筒が撮影可能位置に突出した位置にあるときに、バリアを開位置から閉位置に動かそうとすると、バリアがレンズ鏡筒側面に当接する手前でクリック手段により抵抗力が作用し、撮影者に待機を促す。そして、この位置へのバリアの移動直前でスイッチ手段がオフし、レンズ鏡筒を完全に沈胴させることができ、更には、バリアとレンズ鏡筒間に複雑な連動機構を必要とせず、カメラ自体もコンパクト化が可能となるなど数多くの顕著な効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示す沈胴式カメラのレンズ鏡筒の突出状態での斜視図。
【図2】図1の沈胴式カメラのレンズ鏡筒の沈胴状態でバリア閉状態での斜視図。
【図3】図1の沈胴式カメラのレンズ鏡筒の沈胴状態でバリアを取り外した状態での斜視図。
【図4】図1の沈胴式カメラのバリア全閉状態での第1のバリアクリック部を通る面での横断面図。
【図5】図1の沈胴式カメラのバリア全開状態での第1のバリアクリック部を通る面での横断面図。
【図6】図1の沈胴式カメラのバリア準開状態での第1のバリアクリック部を通る面での横断面図。
【図7】図1の沈胴式カメラのバリア全閉状態での第2のバリアクリック部を通る面での横断面図。
【図8】図1の沈胴式カメラのバリアの全開状態での第2のバリアクリック部を通る面での横断面図。
【図9】図1の沈胴式カメラのバリアの準開状態での第2のバリアクリック部を通る面での断面図。
【図10】図1の沈胴式カメラのバリアの全閉状態でのバリアスイッチ部を通る面での横断面図。
【図11】図1の沈胴式カメラのバリアの全開状態でのバリアスイッチ部を通る面での横断面図。
【図12】図1の沈胴式カメラのバリアを開いていくときのタイミングチャート。
【図13】図1の沈胴式カメラのバリアを閉じていくときのタイミングチャート。
【図14】本発明の第2実施例の沈胴式カメラのバリアが全閉位置にある状態でのバリアクリック部回りの横断面図。
【図15】上記図14の沈胴式カメラのバリアが全開位置にある状態でのバリアクリック部回りの横断面図。
【図16】上記図14の沈胴式カメラのバリアが準開位置にある状態でのバリアクリック部の横断面図。
【図17】上記図14の沈胴式カメラのバリアに配設される全開位置用と準開位置用クリック凹部の拡大断面図。
【符号の説明】
1 …………………レンズ鏡筒
1(A)…………………レンズ鏡筒の沈胴位置
1(B)…………………レンズ鏡筒の突出位置
2,11…………………バリア
2(A),11(A)…………………バリア閉位置
2(B),11(B)…………………バリア開位置
4a …………………クリックバネ(クリック手段)
5a …………………クリックボール(クリック手段)
6 …………………スイッチ軸(スイッチ手段)
7 …………………バリアスイッチ(スイッチ手段)
7a …………………可動接片(スイッチ手段)
7b …………………固定接片(スイッチ手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】撮影レンズを有し、カメラボディに対して撮影を行なう突出位置と、撮影を行なわない沈胴位置との間を移動可能なレンズ鏡筒と、上記カメラボディに設けられ、撮影レンズの光軸と交差する方向に移動し、レンズ鏡筒が上記沈胴位置にあるときには該レンズ鏡筒の正面を覆う全閉位置と該レンズ鏡筒が上記突出位置にある時には該レンズ鏡筒を覆うことのない全開位置とに移動可能であるバリアとを備えた沈胴式カメラにおいて、該バリアの全開位置と、バリアが突出位置にある該レンズ鏡筒の側面と付き当たる位置の間において、バリアを更に閉方向に移動させたときにクリックを与えるクリック手段と、バリア全開位置と上記クリック手段が作用するクリック作用位置の間で動作し、撮影レンズの沈胴、突出移動動作のトリガ信号を与えるスイッチ手段と、を具備することを特徴とする沈胴式カメラ。
【請求項1】撮影レンズを有し、カメラボディに対して撮影を行なう突出位置と、撮影を行なわない沈胴位置との間を移動可能なレンズ鏡筒と、上記カメラボディに設けられ、撮影レンズの光軸と交差する方向に移動し、レンズ鏡筒が上記沈胴位置にあるときには該レンズ鏡筒の正面を覆う全閉位置と該レンズ鏡筒が上記突出位置にある時には該レンズ鏡筒を覆うことのない全開位置とに移動可能であるバリアとを備えた沈胴式カメラにおいて、該バリアの全開位置と、バリアが突出位置にある該レンズ鏡筒の側面と付き当たる位置の間において、バリアを更に閉方向に移動させたときにクリックを与えるクリック手段と、バリア全開位置と上記クリック手段が作用するクリック作用位置の間で動作し、撮影レンズの沈胴、突出移動動作のトリガ信号を与えるスイッチ手段と、を具備することを特徴とする沈胴式カメラ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図17】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
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【図16】
【公開番号】特開平6−102570
【公開日】平成6年(1994)4月15日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−253166
【出願日】平成4年(1992)9月22日
【出願人】(000000376)オリンパス光学工業株式会社 (11,466)
【公開日】平成6年(1994)4月15日
【国際特許分類】
【出願日】平成4年(1992)9月22日
【出願人】(000000376)オリンパス光学工業株式会社 (11,466)
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