説明

河川の洗掘測定装置

【課題】 環境に悪影響を与えることがなく、簡単な構成でコストの低減が図れる河川の洗掘測定装置の提供。
【解決手段】 洗掘計測装置10は、複数のセグメント12aが上下方向に積層された状態で河床内に埋設され、セグメント12aの高さと、洗掘深さの演算基準となる上端または下端から測定対象である河床面までの距離とが既知であるセグメントユニット12と、各セグメント12に個別に配置され、当該セグメント12の積層ないしは離脱状態に応じて電気的な特性が変化する複数のセンサー14と、セグメントユニット12の下端に埋設され、センサー14に電力を供給し、その電気特性を経時的に測定記録する計測記録装置16とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、出水や洪水時に河川の底質土砂(概略粒径10mm以下)が下流側に押し流される洗掘状態ないしは最大洗掘深度を測定する河川の洗掘測定装置に関するものである。
【0002】
ここで、出水とは、大雨や融雪などにより川の水量が増大することであり、又、洪水とは、河川の水位や流量が異常に増大することにより、平常の河道から河川敷内に水があふれること、および、破堤または堤防からの溢水が起こり、河川敷の外側に水が溢れることを意味している。
【背景技術】
【0003】
河川の底質は、出水や洪水時の洗掘により絶えず変化している。底質が洗掘されると堤体上部までの高さが変化し、定められた計画高水位に達するまでの流量が変化するため、河川計画に影響を与えるので、洪水時における底質の洗掘状況および最大洗掘深度の日時を把握する必要がある。河川の底質の変動を知る場合、深浅測量や底質の変動を測る計測器などで洗掘の深さを測定している。しかし、深浅測量の測定結果では、洪水前後の測定結果のため洪水時の変動を特定することができない。そこで、特許文献1,2には、河床の低下量を時間的な変化とともに計測し、河床の変化に伴って発生する災害の予知などに役立てようとする河床低下測定装置や河床洗掘状況遠隔監視システムが提案されている。
【0004】
これらの特許文献に開示されている河床低下測定装置や監視システムにおいては、河道における河床に埋設され、発信器を内蔵したセンサー部と、このセンサー部から発信された電波をアンテナを介して受信する受信機と、この受信機で受信された受信状況を記録する受信記録計とを備え、センサー部は、河床から下方に向けて、目標とする計測範囲(予測洗掘深さに相当)に複数を積層した状態で埋設することを基本構成としている。
【0005】
このように構成した河床低下測定装置ないしは監視システムによれば、洪水が起きたときに、センサー部が離脱して浮上すると、センサー部に内蔵された発信器が駆動して、これから発信された電波が、アンテナを介して受信機で受信され、さらに、この受信機で受信された受信状態が受信記録器に記録されることにより、河床低下量が時間的変化に応じて計測されることになる。
【0006】
しかしながら、このような構成の河床低下量測定装置ないしは監視システムには、以下に説明する技術的な課題があった。
【特許文献1】特開2002-365046号公報
【特許文献2】特開2004-271243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
すなわち、上述した従来の測定装置ないしは監視システムでは、センサー部に発信器を内蔵させることが基本的な構成要件となっているが、発信器を駆動させるためには、センサー部に内臓電池を必要とする。
【0008】
センサー部に内臓電池を設けると、センサー部が流下して、そのまま放置されると、環境に悪影響を及ぼすし、また、センサー部を浮上させるためには、浮体などを必要として、さらには、センサー部の離脱により発信器を駆動させるためには、スイッチ機構も必要とするので、構造が複雑になり、センサー部がコスト高になるという問題があった。
【0009】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、環境に悪影響を与えることがなく、簡単な構成でコストの低減が図れる河川の洗掘測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、複数のセグメントが上下方向に積層された状態で河床内に埋設され、前記セグメントの高さと、洗掘深さの演算基準となる上端または下端から測定対象である河床面までの距離とが既知であるセグメントユニットと、前記セグメントに個別に配置され、当該セグメントの積層状態と積層離脱状態とを検出する複数のセンサーと、前記セグメントユニットの下端に埋設され、前記センサーの検出状態を経時的に測定記録する計測記録装置とを備えている。
【0011】
このように構成した河川の洗掘測定装置によれば、セグメントユニットは、土砂の洗掘により露出すると、上端側のセグメントから順に、水の流速に押されて積層状態から離脱する。
【0012】
セグメントが離脱すると、その状態がセンサーにより検出され、これが計測記録装置に経時的に記録される。このような情報が記録されている計測記録装置を回収すると、セグメントが離脱した際の時間を知ることができる。
【0013】
この場合、セグメントユニットは、セグメントの高さと、洗掘深さの演算基準となる上端または下端から測定対象である河床面までの距離とが既知なので、セグメントの離脱個数を計数すると、洗掘された深さを知ることができる。
【0014】
本発明では、セグメントは、河川の出水ないしは洪水時に発生する洗掘により、積層状態から離脱すればよいので、発信器などの機能部品を搭載する必要がなく、発信器を内蔵させる場合のように電源電池を内蔵する必要もないので、セグメントが流失したとしても環境に悪影響を及ぼす恐れがなく、構造も簡単でコストの低減を図ることができる。
【0015】
前記セグメントは、時間の経過により比較的早期に腐食・消滅する薄い金属製の表面を有する柱状体、または、時間の経過により自然に消失する特殊段ボール性の柱状体から構成することができる。この構成によれば、セグメントの環境負荷をより一層低減することができ、コストの低減効果も大きくなる。
【0016】
前記計測記録装置は、発信器を内蔵し、当該発信器からの発信信号を受信して、前記計測記録装置の埋設位置の検出が可能とすることができる。この構成によれば、計測記録装置の回収が容易に行える。
【0017】
前記セグメントおよび計測記録装置の埋設位置は、現場測量ないしはGPS測量により特定することができる。この構成でも計測記録装置の回収が容易に行える。
【0018】
前記センサーは、前記セグメントの積層状態と積層離脱状態とを電気的な特性変化により検出することができる。
【0019】
この場合、センサーは、細銅線から構成され、この細銅線を前記セグメントに折り返すように配置し、当該セグメントが離脱すると、前記細銅線が切断されるようにすることができる。この構成によれば、センサーの構造が簡単になり、コスト削減効果も大きくなる。
【0020】
前記センサーの電気的特性は、電圧,電流,抵抗値のいずれかから選択することができる。この構成によれば、計測記録装置での経時変化の記録に大きな容量を必要とせず、簡単に記録することができる。
【0021】
前記センサーは、前記セグメントの積層状態と積層離脱状態とを光伝播の特性変化により検出することができる。
【0022】
この場合、センサーは、光ファイバから構成され、この光ファイバを前記セグメントに折り返すように配置し、当該セグメントが離脱すると、前記光ファイバが切断されるように構成することができる。光信号によりセグメントの積層状態と積層離脱状態とを検出すると、電気を使用するセンサーのように漏れ電流の影響が全くなくなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかる河川の洗掘測定装置によれば、洗掘状態を計測するために用いるセグメントは、河川の出水ないしは洪水時に発生する洗掘により、積層状態から離脱すればよいので、発信器などの機能部品を搭載する必要がなく、発信器を内蔵させる場合のように電源電池を内蔵する必要もないので、セグメントが流失したとしても環境に悪影響を及ぼす恐れがなく、構造も簡単でコストの低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。図1から図5は、本発明に係る河川の洗掘測定装置の一実施例を示している。これらの図に示した洗掘測定装置10は、セグメントユニット12と、センサー14と、計測記録装置16とを有している。
【0025】
洗掘測定装置10は、河川の底質を計測する際に用いられるものであって、図1に示すように、河川の河床Aの水底地盤B中に所定の間隔を隔てて、複数が埋設設置される。この時の設置位置は、特に制限はなく、例えば、上下流側の装置同士が流れに沿って重ならないように、任意の位置に設定することができる。なお、図1に示したように複数の洗掘測定装置10を設置する場合には、各測定装置10の識別が可能になるように、番号などを付けることが望ましい。
【0026】
図2は、図1に示した洗掘測定装置10の拡大図である。セグメントユニット12は、本実施例の場合、高さが既知の100mmで、直径が約60φmmの大きさを有する中心に貫通孔が穿設された円筒状に形成されたセグメント12aが用いられていて、複数のセグメント12aが上下方向に積層されている。セグメント12aは、例えば、撥水ライナ紙を外径6cm、内径5cm、高さ10cm、厚み5mmの円筒型に整形し、外部をペイント材で色分けし、1,2…と追い番を付している。これは回収時にどの層のセグメントかを識別しやすくするためである。紙管で構成したセグメント12aは、厚手・硬質であり、堆積物中に設置した場合、約1年程度の耐用性がある。なお、セグメント12aは、この構成に限られることはなく、例えば、時間の経過により比較的早期に腐食・消滅する薄い金属製の表面を有する柱状体とすることができる。この場合、柱状体は、金属殻からなり中空体であって良いし、内部に前述したライナ紙を詰めたものであってもよい。さらに、金属製の表面材に代えて、例えば、生分解性プラスチックを用いることも可能である。
【0027】
セグメント12aのより具体的な構成例は、実坪量222.0g/m2、密度0.76g/m3、厚さ0.29mm、比破裂強さ2.95kPa・m2/g、比圧縮強さ(横)173N・m2/g、裂断長(縦)6.43km、比引裂強さ(縦)9.7mNm2/g、撥水度(表)6.5、コブ吸水度67g/m2・2min、水分(リール)8.1%の撥水ライナ紙を好適に使用することができ、このような性状のセグメント12aを用いると、そのまま放置したとしても、環境負荷が非常に少なくなる。
【0028】
なお、セグメント12aの形状は、図示したものに限る必要はなく、例えば、各柱状や多角形柱状などであってもよい。また、前述した比較的早期に腐食・消滅する薄い金属製の表面を有する柱状体セグメント12aの具体的な構成としては、以下の構成が挙げられる。幅110mm、厚さ0.22mmのブリキ鋼板を用い、これを長径が54φmmの中空円柱状に溶接したものである。このような性状のセグメント12aを用いると、紙製の場合よりも比較的耐用性があり、なおかつそのまま放置したとしても、腐食するため、環境負荷は非常に少ない。この場合の耐用性は、鋼板の厚みを選択することにより、適宜変更することが可能である。
【0029】
セグメント12aは、複数個が上下方向に積層された状態で、河床Aの地盤B中に埋設される。セグメント12aを積層状態で埋設する際には、本実施例の場合には、図2に示すように、上端のセグメント12aの上面が、測定対象である河床面Cと一致するようにして埋設されており、この場合には、積層されたセグメント12aの上端が、洗掘深さの演算基準となっていて、これを河床面Cと一致させている。
【0030】
なお、図2に示したセグメントユニット12の埋設状態において、上端のセグメント12aの上面が、測定対象である河床面Cと必ずしも一致するようにして埋設する必要はなく、例えば、河床面Cが通常の流れにおいて、若干変動するのであれば、これを見込んで、上端を河床面Cから若干陥没する位置に設定することも可能である。この場合の変動値は、出水状態に至らない範囲での洗掘状態を意味している。
【0031】
さらに、セグメントユニット12の埋設状態は、図2に示した状態に限る必要はなく、例えば、積層されたセグメント12aの下端が洗掘深さの演算基準となるようにすることも可能であり、この場合には、下端から測定対象である河床面Cまでの距離を測定して既知とすればよい。
【0032】
なお、複数のセグメント12aを積層するセグメントユニット12の積層状態の安定化を図るには、例えば、上下のセグメント12a同士で凹凸嵌合させればよい。この場合、洗掘による離脱の容易性を考慮して、緩い嵌合状態とすれば問題はない。
【0033】
センサー14は、各セグメント12aに個別に配置されており、セグメント12aの積層状態と、積層から離脱した2つの状態とを検出する。本実施例の場合、電気的な特性の変化により、このような異なる状態を検知するものであり、各センサー14は、絶縁被覆された極細の銅線から構成されている。
【0034】
本実施例の場合、図3に示すように、銅線は、各セグメント12aの外側面の下端近傍で折り返すように配置され、接着剤などにより固定されている。なお、センサー14の固定位置は、図示した個所以外に、セグメント12aの貫通孔の内面や、上下端面のいずれであってもよい。
【0035】
このように構成したセンサー14では、セグメント12aが積層状態から離脱すると、銅線が切断する。この際に、センサー14に微小電圧を印加しておくと、切断により、その端子電圧が変化することになり、電圧を監視しておくと、セグメント12aの離脱を検出することができる。
【0036】
なお、センサー14で積層状態と積層離脱状態とを検出する際の電気的特性の対象は、電圧に限る必要はなく、例えば、電流や抵抗値であってもよい。
【0037】
計測記録装置16は、水密性の筐体18内に配置され、セグメント12aが積層されたセグメントユニット12の下端に埋設されている。本実施例の計測記録装置16は、センサー14が個別に接続された複数のコンパレータ16aと、コンパレータ16aに接続された複数のラッチ回路16bと、ラッチ回路16bに接続された抵抗を組合わせたラダー回路16cとを備えている。
【0038】
コンパレータ16aは、センサー14から検出される端子電圧と基準電圧とを比較して、所定の出力信号をラッチ回路16bに送出するものであって、ラッチ回路16bは、コンパレータ16aからの送出信号を一時的に保持する。
【0039】
ラダー回路16cは、制御器16dに接続され、制御器16dには、メモリ16eと発信器16fとが接続されている。制御器16dは、マイクロコンピュータから構成され、センサー14に所定の電圧を供給するとともに、コンパレータ16aからの送出信号を、ラダー回路16cを介して受信し、これをメモリ16eに経時的に記憶させる。なお、センサー14が筐体18から取り出される個所には、適宜な水密構造が設けられる。
【0040】
図4には、メモリ16eに記憶されるセンサー14の送出信号の一例が示されている。図4は、横軸が時刻であり、縦軸が電圧となっている。本実施例の場合、センサー14は、被覆された極細の銅線から構成されており、各セグメント12に外面で折り返されている端子電圧を測定している。
【0041】
セグメント12aが積層状態から離脱して、センサー14が切断すると、端子電圧が急激に大きくなって、セグメント12aの離脱が、その時刻とともに検出される。
【0042】
このようなセグメント12aの離脱条件としては、川の水の流速によっても異なるが、例えば、洗掘によりセグメント12aの高さの半分以上が露出した場合に離脱するように設定することができる。
【0043】
図6および図7には、本発明に係る洗掘測定装置10の設置方法を示している。これらの図に示した設置方法では、まず、測定対象河床Aの水底地盤B中に、掘削孔20が形成される。
【0044】
掘削孔20の形成には、図6に示すように、中空円筒状のケーシング22が用いられる。このケーシング22は、内部に洗掘測定装置10の挿入が可能な直径を備えている。
【0045】
ケーシング22を地盤B中に貫入する際には、ケーシング22に隣接してガイドパイプ24を立設し、これを測量員が測量器24で視認することにより、設置位置の座標が測量される。なお、セグメントユニット12および計測記録装置16を含む洗掘測定装置10の埋設位置は、図示したような現場測量だけでなく、例えば、衛星の観測に基づくGPS測量で行ってもよい。
【0046】
ケーシング20の貫入には、本実施例の場合にはジェット水流が用いられ、これを噴出するジェットボーリングパイプ26がケーシング内に挿入される。ボーリングパイプ26は、川面に浮かべられた船体28に搭載されているジェットポンプ30が接続されている。
【0047】
ケーシング20の地盤B中への貫入が進行し、これが所定の深度まで貫入されると、図6に示すように、ケーシング20内にセグメントユニット12と計測記録装置16が挿入される。この際には、計測測量装置16が設置された筐体18が下端に配置され、その上にセグメントユニット12が配置される。
【0048】
そして、筐体18が掘削された水底地盤の下端に到達すると、ケーシング20を抜き取ることにより設置が完了する。なお、本発明にかかる洗掘計測装置10の設置方法は、図示した方法に限る必要はなく、例えば、ケーシング20を使用しない掘削方法であってもよい。
【0049】
図8,9には、本発明に係る洗掘計測装置10の回収方法の一例を示している。洗掘計測装置10の回収に際しては、本実施例の場合、計測記録装置16に発信器16fが設けられているので、これを利用する。
【0050】
洗掘計測装置10の探索は、受信機30を作業員が所持して、発信器16fからの電波を受信することで設置場所を特定する。この場合、発信器16fは、常時電波を送出するようにしてもよいが、受信機30からの信号を受けた場合にだけ電波を送出するようにすれば電池の消耗を防ぐことができる。
【0051】
洗掘計測装置10の設置位置が特定されると、次に、図9に示すように、潜水士がジェットボーリンクパイプ26を把持して、その先端を地盤Bに向けることにより、ジェット水流により地盤を掘削して、洗掘計測装置10を回収することになり、回収した装置10は、再利用することができる。なお、洗掘計測装置10の埋設位置は、現場測量やGPS測量により特定されている場合には、発信器16fは必ずしも必要としない。
【0052】
以上のよう構成された洗掘計測装置10では、河川の出水や洪水時に洗掘が発生すると、セグメント12aが土砂の洗掘により河床面から露出すると、水の流速により押されて積層状態から離脱する。
【0053】
このとき、離脱したセグメント12aに配置されているセンサー14が切断すると、その電気的な特性が変化して、これが計測記録装置16に経時的に記録され、計測記録装置16を回収すると、セグメント12aが離脱した際の時間を知ることができる。
【0054】
このような情報が記録されている計測記録装置16を回収すると、セグメント12aが離脱した際の時間を知ることができる。この場合、セグメントユニット12は、セグメント12aの高さと、洗掘深さの演算基準となる上端または下端から測定対象である河床面Cまでの距離とが既知なので、セグメント12aの離脱個数を計数すると、洗掘された深さを知ることができる。
【0055】
図5には、本発明に係る洗掘測定装置10で得られる洗掘深度と電圧との関係の一例を示している。同図において、横軸が時刻で縦軸が洗掘深度であり、本実施例の場合、セグメント12aの単体での高さが100mmになっているので、6月15日の7時12分に、上端の1個のセグメント12aが離脱し、その時の洗掘深さが100nmとなっている。
【0056】
また、図5に示した例では、時間の経過とともに、セグメント12aは、上端側から、順次積層状態から離脱し、6月15日の12時には、7個のセグメント12aが離脱して、洗掘深度が700mmになっている。
【0057】
以上のように構成された洗掘計測装置10では、セグメントユニット12は、河川の出水ないしは洪水時に発生する洗掘により、積層状態から離脱すればよいので、発信器などの機能部品を搭載する必要がなく、発信器を内蔵させる場合のように電源電池を内蔵する必要もないので、セグメント12aが流失したとしても環境に悪影響を及ぼす恐れがなく、構造も簡単でコストの低減を図ることができる。
【0058】
図10は、本発明に係る洗掘測定装置の他の実施例を示しており、上記実施例と同一もしくは相当する部分には、同一符号を付してその説明を省略するとともに、以下にその特徴点についてのみ詳述する。
【0059】
同図に示した例では、セグメント12aの積層状態と積層離脱状態とを検出するセンサー14aに光ファイバを用いている。光ファイバ型のセンサー14aは、 セグメント12aの積層状態と積層離脱状態とを光伝播の特性変化により検出する。
【0060】
この場合、センサー14aは、上記実施例と同様に、各セグメント12aで折り返すように配置され、当該セグメント12aが離脱すると、光ファイバ14aが切断されるように構成されている。なお、光ファイバ14aは、比較的破断されやすいので、例えば、折り返す際には、セグメント12aの内周または外周を周回するようにして折り返すほうがよい。
【0061】
筐体18内には、光ファイバ型センサー14aの端部に、光電変換器16hが配置されている。この光電変換器16hは、光ファイバの送信側に発光ダイオードが配置され、受信側にホトダイオードが配置されている。
【0062】
発光ダイオードから送出された光信号は、センサー14a内を伝播して、ホトダイオードに出力され、ホトダイオードで変換された電気信号が制御器16dを介して、メモリ16eに記録される。
【0063】
セグメント12aが積層離脱状態になると、センサー14aが切断されて、伝播する光信号が消失して、その結果、ホトダイオードの出力がなくなり、セグメント12aの積層状態と積層離脱状態とが検出される。
【0064】
このような構成の光ファイバ型センサー14aを用いても、上記実施例と同等の作用効果が得られるとともに、これに加えて、光信号を用いるセンサー14aによれば、電気を使用するセンサーのように漏れ電流の影響を全く考慮しなくてもよくなる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明にかかる洗掘計測装置によれば、出水や洪水時の河川の洗掘状態が、経時的に測定することができるので、堤体を設計する際の資料として有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明にかかる洗掘計測装置の設置状態の説明図である。
【図2】図1に示した洗掘計測装置の拡大図である。
【図3】図2に示した洗掘計測装置の要部拡大図である。
【図4】図1に示した洗掘計測装置における記録データの一例を示す説明図である。
【図5】図1に示した洗掘計測装置で得られた測定結果から、洗掘深度の経時的な変化を示すグラフである。
【図6】図1に示した洗掘計測装置を設置する際の方法を示す説明図である。
【図7】図6に示した設置手順に引続いて行われる工程を示す説明図である。
【図8】図1に示した洗掘計測装置を回収する際の方法を示す説明図である。
【図9】図8に示した回収手順に引続いて行われる工程を示す説明図である。
【図10】本発明に係る洗掘測定装置で用いるセンサーの他の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0067】
10 洗掘計測装置
12 セグメントユニット
12a セグメント
14 センサー
16 計測記録装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセグメントが上下方向に積層された状態で河床内に埋設され、前記セグメントの高さと、洗掘深さの演算基準となる上端または下端から測定対象である河床面までの距離とが既知であるセグメントユニットと、
前記セグメントに個別に配置され、当該セグメントの積層状態と積層離脱状態とを検出する複数のセンサーと、
前記セグメントユニットの下端に埋設され、前記センサーの検出状態を経時的に測定記録する計測記録装置とを備えたことを特徴とする河川の洗掘測定装置。
【請求項2】
前記セグメントは、時間の経過により比較的早期に腐食・消滅する薄い金属製の表面を有する柱状体、または、時間の経過により自然に消失する特殊段ボール性の柱状体から構成することを特徴とする請求項1記載の河川の洗掘測定装置。
【請求項3】
前記計測記録装置は、発信器を内蔵し、当該発信器からの発信信号を受信して、前記計測記録装置の埋設位置の検出を可能とすることを特徴とする請求項1また2記載の河川の洗掘測定装置。
【請求項4】
前記セグメントおよび計測記録装置の埋設位置は、現場測量ないしはGPS測量により特定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の河川の洗掘測定装置。
【請求項5】
前記センサーは、前記セグメントの積層状態と積層離脱状態とを電気的な特性変化により検出することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の河川の洗掘測定装置。
【請求項6】
前記センサーは、細銅線から構成され、この細銅線を前記セグメントに折り返すように配置し、当該セグメントが離脱すると、前記細銅線が切断されることを特徴とする請求項5記載の河川の洗掘測定装置。
【請求項7】
前記センサーの電気的特性は、電圧,電流,抵抗値のいずれかから選択されることを特徴とする請求項6記載の河川の洗掘測定装置。
【請求項8】
前記センサーは、前記セグメントの積層状態と積層離脱状態とを光伝播の特性変化により検出することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の河川の洗掘測定装置。
【請求項9】
前記センサーは、光ファイバから構成され、この光ファイバを前記セグメントに折り返すように配置し、当該セグメントが離脱すると、前記光ファイバが切断されることを特徴とする請求項8記載の河川の洗掘測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−78593(P2010−78593A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193070(P2009−193070)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(301050278)日本ミクニヤ株式会社 (4)