説明

河川用浮遊物回収装置

【課題】装置のトラブル・故障の発生原因をなくして浮遊物を円滑・確実に回収できるようにした河川用浮遊物回収装置を提供すること。
【解決手段】河川内に平面視して河川の流れに対し斜行する角度をなす浮遊物ガイドを設けて両端において水位変動可能に支柱で支持するとともに、同浮遊物ガイドが河川内において水位に合わせて変位可能に浮沈するように構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川用浮遊物回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
河川においては、洪水に伴って多量の塵芥や大木などが流されてきてこれらは下流域や海・湾などに流れてゆき、汚れの原因になったり、あるいは大木にあってはこれが橋脚に滞留して河川決壊や橋梁破損の原因になっていた。
そうした軽減策を講じたものもある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特開2006−97464
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1は、河川異常増水防止装置に係るもので、橋が架けられた河川の上流側に流木や家屋などの浮遊物を捕捉し川岸方向に誘導する循環条材を河川横断方向に対し斜めに張設して設け該誘導される端部に浮遊物を回収するピットを備えてピット内の浮遊物を除去手段で除去し得るように構成したものである。
しかし、こうした河川異常増水防止装置は、循環条材に設けられた捕捉材で浮遊物が捕捉されてピット内に持ち込むようになっているが、捕捉材で捕捉された浮遊物が持ち回されることもあり、これが装置のトラブル・故障の発生原因にもなっていた。
【0005】
本発明は、このような従来の方法が有していた問題を解決しようとするものであり、装置のトラブル・故障の発生原因をなくして浮遊物を円滑・確実に回収できるようにした河川用浮遊物回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、河川内に平面視して河川の流れに対し斜行する角度をなす浮遊物ガイドを設けて両端において水位変動可能に支柱で支持するとともに、同浮遊物ガイドが河川内において水位に合わせて変位可能に浮沈するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上述したように本発明の河川用浮遊物回収装置は、河川内に平面視して河川の流れに対し斜行する角度をなす浮遊物ガイドを設けて両端において水位変動可能に支柱で支持するとともに、同浮遊物ガイドが河川内において水位に合わせて変位可能に浮沈するように構成したことを特徴とするので、装置のトラブル・故障の発生原因をなくして浮遊物を円滑・確実に回収できるようにした河川用浮遊物回収装置を提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の河川用浮遊物回収装置の一実施形態を示す平面図。
【図2】図1の拡大図。
【図3】図2のA−A線断面図。
【図4】図2の要部拡大平面図。
【図5】図4の正面図。
【図6】図5のB−B線断面図。
【図7】図6の間隔規定部材を示す斜視図。
【図8】他の実施形態を示す横断平面図。
【図9】他の実施形態を示す横断平面図。
【図10】他の実施形態を示す側断面図。
【図11】他の実施形態を示す側断面図。
【図12】他の実施形態を示す側断面図。
【図13】他の実施形態を示す側断面図。
【図14】他の実施形態を示す正面図。
【図15】他の実施形態を示す正面図。
【図16】他の実施形態を示す横断面図。
【図17】他の実施形態を示す横断面図。
【図18】図17の斜視図。
【図19】他の実施形態を示す横断面図。
【図20】他の実施形態を示す横断面図。
【図21】他の実施形態を示す横断面図。
【図22】他の実施形態を示す平面図。
【図23】他の実施形態を示す斜視図。
【図24】他の実施形態を示す縦断面図。
【図25】他の実施形態を示す平面図。
【図26】他の実施形態を示す側断面図。
【図27】他の実施形態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態を図1〜図7に基づいて説明する。
【0010】
図1は橋梁1が架かった河川2を上からみた様子を示し、この河川2では矢印Cの方向から河川水が流れてくる。図2は図1の装置である要部を拡大して示し、図3はその正面図である。さらにこれらを拡大したものが図4から図6である。
【0011】
これらの図に示すように、河川2内の橋梁1よりもやや上流側には、両川岸からそれぞれ離れて一対の支柱3,3が川底に埋め込まれて垂直に立設されている。両支柱3,3はその一方がやや上流側に他方がやや下流側にあるように配備されている。この支柱3は丸パイプでなるが、角パイプその他でもよい。
支柱3,3には、水位に追従して動くように水位追従体4が設けられ、この水位追従体4の回りには、フランジ5を備えた取付環6が装着されている。
【0012】
取付環6の両フランジ5,5には、上下に複数の連結ピン7…が配備され、このピン7…は上下に一定の間隔を置いて配置されるとともに、これらのピン7…を介して上下複数段にわたるように浮遊物ガイド8…が張設されている。
浮遊物ガイド8は、ワイヤロープでなるが、これらのガイド8…はそのままでは浮遊物や水の流れによって区々に動かされて間隔が開いて浮遊物がその間から通過したりするため、この実施形態では、間隔規定部材10を設けて常に浮遊物ガイド8…の上下間隔を一定を保つようにすることにより浮遊物を逃さず捕捉して斜め方向に安定確実にしかも円滑に案内できるようにしてある。間隔規定部材10は、金属あるいは樹脂などにより作製することができる。
【0013】
間隔規定部材10は、図7に斜視図を示すように、矩形をした本体部分11と、同部分11の両側からハの字状になるように突出した案内保護部分12,12とからなっているとともに、本体部分11には、縦向きに並ぶボルト通孔13…が左右に離れた位置において列状をなすように設けられている。
【0014】
この間隔規定部材10の下流側の溝内上部には、同溝形状にフィットする形(台形ブロック状)のフロート14がUボルトである止着具15…により取り付けられている。止着具15は、浮遊物ガイド8の上流側から嵌め込まれて前記ボルト通孔13を通じてフロート14の通孔16に通されるとともに、下流側の押さえ板17を介してナット締めすることで浮遊物ガイド8…を間隔規定部材10により上下一定の間隔に規定しながら水位変動に追従させるためのフロート14を一体保持するようにしてある。
尚、この実施形態では、図6のように、浮力を充足できることからフロート14を間隔規定部材10よりも高さの小さいものにしてあるが、間隔規定部材10と同じ高さにすることもある。
【0015】
こうしたフロート14付き間隔規定部材10は、図2に示すように、浮遊物ガイド8の長手方向に沿って複数配備され、互いに離間する関係にしてある。その配備個数は限定されるものではない。
斜行する下流側には、ポスト19…により通水機能をもつ柵や網状の回収ピット20が設けられている。この回収ピット20は、固定式であるが、前記水位追従体4のように上下動自在に構成してもよい。
【0016】
上流側の支柱3はその近くの川岸に対して一定の距離を置いて配置されていて図1の矢印Dのように河川流Cの一部を逃がして洪水時の安全を図るようにしてある。河川流Cによって流されてくる浮遊物21…は、図4のように、浮遊物ガイド8…により捕捉されて下流側斜め方向に沿って円滑に流されてゆく。この際、浮遊物ガイド8…の上下間隔は、間隔規定部材10により一定に保たれるとともに水位追従体4およびフロート14による水位追従作用により浮遊物21…は常に安定確実に捕捉されて流されてゆき、回収ピット20内に回収されることになる。22はピット20内に集められた浮遊物21を土手上に掻き揚げるための回収作業機である。
尚、図1に仮想線で示すように、2段目の回収装置23を設けておくと、矢印Dのように第1段の回収装置で捕捉できなかった浮遊物までも捕捉回収することができる。
また、図6の上欄に示すように、浮遊物ガイド8の外周にはすべり被覆24を付加してもよい。
さらに、図5に示すように、河川水位の上下に対応する2本の浮遊物ガイド8,8間には、今一本の浮遊物ガイド8を通すと浮遊物の捕捉がより確実になる。
【0017】
図8に示す実施形態は、間隔規定部材27の案内保護部分28を本体部分29より垂直に立てることにより、矢印Eのように浮遊物ガイド8間を抜けた浮遊物がそこに溜まらないようにしたものである。
図9の実施形態は、間隔規定部材31の案内保護部分32を更に内向きに曲げて形成しておくことで矢印Fのように抜けやすくしたものである。
【0018】
図10の実施形態は、フロート34付き間隔規定部材35を浮遊物ガイド36…に止着具37で装着するものにおいて、浮遊物ガイド36のうち上下のものを太いものとしその上下間のものをやや細いものにしたもので、これにより、細い浮遊物ガイド36により上下間隔を詰めて浮遊物を捕捉しやすくなる。
【0019】
図11の実施形態は、Uボルトである止着具39内に2本の浮遊物ガイド40を通すようにしたもので、図12の実施形態は、止着具42内に3本の浮遊物ガイド43を通すようにしたものである。図13の実施形態は、T字ボルトである止着具45に2本の浮遊物ガイド46を通すようにしたものである。
これらのように集束状に浮遊物ガイドを設けることにより浮遊物の捕捉効率があがる。
【0020】
また、図14(一本通し)や図15(2本通し)に示すように、止着具48を正面からみて千鳥配置にすることで、浮遊物ガイド49…の上下間隔を詰めることができる。
【0021】
さらに、図16の実施形態のように、間隔規定部材51の上流側にガイド板52を設けることによりUボルトである止着具53が浮遊物ガイド54より突き出た状態をなくすことができ、円滑に浮遊物を流すことができる。この場合、左上に示すようにガイド板52の先端は面取り状に滑らかな形状にしてより流れやすくすることができる。ガイド板52は短いものであったが、前後の間隔規定部材51,51にわたるような長いものにしてもよい。この場合、河川水位の上下にわたる程度の幅の狭いガイド板であってもよい。
【0022】
また、図17および18に示す実施形態のように、ガイド板56の先端に折り曲げ部57を形成して浮遊物ガイド58間から下流側に臨むようにすれば浮遊物の流れが円滑になる。
【0023】
図19から図21に示す実施形態は支柱60に水位追従体61および浮遊物ガイド62をより円滑に水位追従動作させるようにしたもので、図19の実施形態は、ブラケット63に前後一対のローラー64と連結ピン65を備えて支柱60を前後から挟んで上下動するようにしたものである。図20の実施形態は、支柱60を前後一対配備しその間をローラー64が上下するようにしたものである。図21の実施形態は、前後一対の支柱60をアングル型としその間でローラー64が上下するようにしたものである。
【0024】
図22の実施形態は、河川幅が広くて支柱66間のスパンが長く浮遊物ガイド67への負荷が大きくなると想定される場合の対策例で、川岸上に一対の杭68を立てて浮遊物ガイド67との間を引張材69で引っ張るようにしたものである。70はフロート71付き間隔規定部材、72は回収ピットである。
この場合、引張材69は単なる引張ロープである他に、図示のように浮遊物捕捉機能をもたせてもよい。
【0025】
図23および図24の実施形態は、浮遊物ガイド74…の全体を通水機能をもつ強化布地でなる通水被覆75で覆って浮遊物がより円滑にまた小さいものまでも捕捉回収できるようにしてもよい。この場合、図24の右欄のように、上下複数本の丸パイプを連結板でつないだ間隔規定部材76で浮遊物ガイド74の上下間隔を一定に規定するようにしてもよい。また、連結板の前後にフロートを備え付けてもよい。
【0026】
図25の実施形態は、一対の支柱79に水位追従体80を備えてその間をワイヤロープ81で斜め方向につないだものにおいて、ワイヤロープ81の前面に図26のガードレール型浮遊物ガイド82を設けて浮遊物が円滑に滑って回収されるようにしたもので、浮遊物ガイド82の裏面にはブラケット83が取り付けられてワイヤロープ81が通されるとともにフロート84が止着具85により取り付けられるようにしたものである。86は回収ピットである。
【0027】
図27の実施形態は、同ガードレール型浮遊物ガイド82を利用したものを河川下流出口に設置して浮遊物が海洋や湾などに流れ出さないようにしたものである。88は回収船、89は一般通行船である。
【符号の説明】
【0028】
2…河川 3…支柱 4…水位追従体 8…浮遊物ガイド 10…間隔規定部材 14…フロート 20…回収ピット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川内に平面視して河川の流れに対し斜行する角度をなす浮遊物ガイドを設けて両端において水位変動可能に支柱で支持するとともに、同浮遊物ガイドが河川内において水位に合わせて変位可能に浮沈するように構成したことを特徴とする河川用浮遊物回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2011−21452(P2011−21452A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182863(P2009−182863)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(594100838)フジワラ産業株式会社 (51)