説明

沸騰冷却装置

【課題】 比較的簡易な構成で、関連技術に比べ冷媒量を低減することができ、また沸騰冷却装置が正位置あるいは回転させた位置であっても発熱体を十分冷却することができ、かつ冷媒の発熱と凝固の循環を促進させることが可能な沸騰冷却装置の提供。
【解決手段】 六面体で形成される冷却槽6と、冷却槽内部に設けられ冷却槽内部を2部屋に分割するロの字状の補強部材3と、冷却槽外部の表面に設けられる発熱体10と、冷却槽外部の表面の上部および下部に設けられる放熱部1,2と、冷却槽内部の2部屋のうち外側の部屋に流入される冷媒7とを含み沸騰冷却装置が構成され、冷媒の水位が少なくとも発熱体の位置に到達するよう冷媒の量が設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沸騰冷却装置に関し、特に冷媒の沸騰による吸熱と、冷媒の凝縮による放熱とにより発熱体を冷却する沸騰冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子実装部品等の高密度実装、高発熱の発熱体の冷却方式の一つとして、サイフォン式の沸騰冷却装置(以降、「沸騰冷却装置」はサイフォン式の沸騰冷却装置を指す)が知られている。本発明に関連する沸騰冷却装置では、発熱体の沸騰による吸熱と、凝縮による放熱との循環により冷却を行うため、下部に吸熱部、上部に放熱部をそれぞれ設ける構造を有している。
【0003】
一方、吸熱部の下部に発熱体が取り付けられ、吸熱部と放熱部とが蒸気用管および液用管を介して接続されるサーマルサイフォン式沸騰冷却器が知られている(たとえば、特許文献1参照)。この発明では冷却器を反時計方向に90度回転させて設ける例も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−249314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、関連技術では、冷媒の沸騰のため、冷媒の浸漬位置への発熱体の設置、および発熱体を浸漬させるに十分な冷媒量が必要なため、冷媒量、コストおよび質量が増加するという課題がある。また、発熱体実装部よりも上部に多量の冷媒が存在する場合、冷媒の吸熱により発生する気泡は、発熱体上部の冷媒により上昇動作を妨げられ、冷却性能の低下を招くという課題がある。
【0006】
よって、沸騰冷却装置が正位置にある場合、あるいは上下反転して発熱体の位置が変化した場合に、発熱体を常に冷媒に浸漬させること、および発熱体上部の冷媒量の過多を防止することが困難という課題がある。
【0007】
一方、特許文献1に記載の発明では、吸熱部に冷媒を通過させるための複雑な流路を形成する必要があり、沸騰冷却装置の構成が複雑化するという欠点がある。また、沸騰冷却装置を回転して設置した場合の冷媒の水位については何ら記載がない。したがって、特許文献1に記載の発明によって本発明の課題を解決することはできない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、比較的簡易な構成で、関連技術に比べ冷媒量を低減することができ、また沸騰冷却装置が正位置あるいは回転させた位置であっても発熱体を十分冷却することができ、かつ冷媒の発熱と凝固の循環を促進させることが可能な沸騰冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明による沸騰冷却装置は、六面体で形成される冷却槽と、前記冷却槽内部に設けられ前記冷却槽内部を2部屋に分割するロの字状の補強部材と、前記冷却槽外部の表面に設けられる発熱体と、前記冷却槽外部の表面の上部および下部に設けられる放熱部と、前記冷却槽内部の2部屋のうち外側の部屋に流入される冷媒とを含み、前記冷媒の水位が少なくとも前記発熱体の位置に到達するよう前記冷媒の量が設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、比較的簡易な構成で、関連技術に比べ冷媒量を低減することができ、また沸騰冷却装置が正位置あるいは回転させた位置であっても発熱体を十分冷却することができ、かつ冷媒の発熱と凝固の循環を促進させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る沸騰冷却装置の一実施形態の構成図である。
【図2】図1の沸騰冷却装置を180度回転させた位置に設置した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係る沸騰冷却装置の一実施形態の構成図である。同図において(A)は沸騰冷却装置の側面図、(B)は正面図、(C)はA−A断面図をそれぞれ示している。また、図2は図1の沸騰冷却装置を180度回転させた位置に設置した例を示す図である。同図において、(A)は沸騰冷却装置の正面図、(B)はA−A断面図をそれぞれ示している。なお、同図において、図1と同様の構成部分には同一番号を付し、その説明を省略する。
【0013】
図1(A)〜(C)を参照すると、本発明に係る沸騰冷却装置の一実施形態は、ヒートシンク1,2と、ロの字状のリブ3,4と、冷却板5と、冷却槽6と、冷媒7と、ファン8,9と、発熱体10と、空気層11とを含んで構成される。
【0014】
冷却槽6は冷却板5を切削、溶接、ロウ付け、押し出し等により製作される。また、冷却槽6にヒートシンク1,2と、リブ3,4と、ファン8,9と、発熱体10とがボルト等により取り付けられている。
【0015】
次に、沸騰冷却装置の具体的な構成について説明する。冷却槽6内の周囲にリブ4が設けられ、リブ4の内側に台形状のリブ3が設けられている。図1(C)では、一例として、リブ3は上底が下底よりも短い台形状をなしている。
【0016】
すなわち、冷却槽6内はリブ3で2つの部屋に間仕切りされた密閉構造になっており、リブ3で囲まれた部屋は空気層で形成されている。また、冷却槽6の外側表面の上部にはヒートシンク1が、外側表面の下部にはヒートシンク2がそれぞれ設けられている。
【0017】
また、一例として、ファン8は冷却槽6内のヒートシンク1の位置に、ファン9は冷却槽6内のヒートシンク2の位置にそれぞれ設けられている。また、冷却槽6の外側表面の中心線より少し上部の面に発熱体10が設けられている。
【0018】
次に、本発明に係る沸騰冷却装置の一実施形態の動作の一例について説明する。図1を参照すると、まず、冷却槽6内部の2部屋のうち外側の部屋(リブ4とリブ3との間の部屋)に所定量の冷媒(冷媒の水位が少なくとも発熱体10の位置に到達するに十分な量)が流入される。なお、冷媒7の一例として、アルコール類等の液体を用いることが可能である。
【0019】
冷却槽6に実装された発熱体10の発熱により、冷媒7が沸騰し吸熱を行う。沸騰した蒸気はリブ3に沿って上部のヒートシンク1全面に流動し、ファン8により冷却される。冷却された冷媒7は凝縮し放熱を行い、リブ3に沿って下部ヒートシンク2まで流動し、ファン9により冷却され再び発熱体10まで流動する。以上の動作を繰り返すことで冷媒7の循環を行う。
【0020】
また、沸騰冷却装置の上下が反転された状態(冷却槽6を180度回転させた状態)位置での図2においても、リブ3による堆積調整により、上下反転前の図1と同様な発熱体10の浸漬状態を保持することで、図1と同様の冷媒7の循環が可能なため、上下反転した状態でも高能率な冷却特性を有する。ただし、沸騰凝縮の回転方向は逆転する。
【0021】
次に、上位動作を具体的に説明する。図1(C)を参照すると、リブ3とリブ4との間に、中心線よりも少し上の面まで冷媒7が満たされている。リブ3は一例として台形で、台形の上部付近まで冷媒7の面が存在するので、台形下部の比較的大きな容積部分で冷媒7が排除される。このため、冷媒7の面が上昇し、よって発熱体10の位置まで冷媒7が到達する。これにより、冷媒7の発熱が促進される。
【0022】
一方、図2(B)を参照すると、冷却槽6が180度回転した図が表示されており、リブ3とリブ4との間に、中心線よりも少し下の面まで冷媒7が満たされている。このため、台形下部の比較的小さな容積部分で冷媒7が排除されるため、冷媒7の面はあまり上昇しない。しかし、少なくとも発熱体10の位置まで冷媒7が到達するよう構成される。これにより、冷媒7の発熱が促進される。
【0023】
なお、リブ3を正方形状あるいは長方形状に形成し、冷却槽6外部の表面の上下方向の中央部に発熱体10を設けても、上記と同様の効果を奏する。
【0024】
以上説明したように、本発明に係る沸騰冷却装置の一実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0025】
第1の効果は、冷却槽6の機械強度が向上することである。その理由は、冷却槽6内にロウ付け、溶接、ネジ止め等により、ロの字の補強部材を設けたためである。
【0026】
第2の効果は、沸騰冷却装置の低コスト化、軽量化が得られることである。その理由は、発熱体10を浸漬させるために必要な液量のロの字の補強部材内を空気層とすることで、ロの字の堆積分の液量の削減が可能となるためである。
【0027】
第3の効果は、冷却性能が向上することである。その理由は、ロの字の補強部材により、流動に対し順路を形成することで、冷媒7の発熱と凝固の循環が促進されるためである。
【0028】
第4の効果は、沸騰冷却装置を重力方向に対して、上下に変更させた場合での冷却性能が向上することである。その理由は、冷却槽6の上部と下部にヒートシンク1,2(放熱部)を設けていること、および冷却槽6の上下方向に対する中心位置を基準とした場合、発熱体10の配置が中心位置に対し上部にある場合はロの字の補強部材の上底を狭め、下部にある場合には下底を狭めることで、発熱体10を浸漬させる冷媒7の量を調整することができるためである。
【符号の説明】
【0029】
1,2 ヒートシンク
3,4 リブ
5 冷却板
6 冷却槽
7 冷媒
8,9 ファン
10 発熱体
11 空気層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
六面体で形成される冷却槽と、
前記冷却槽内部に設けられ前記冷却槽内部を2部屋に分割するロの字状の補強部材と、
前記冷却槽外部の表面に設けられる発熱体と、
前記冷却槽外部の表面の上部および下部に設けられる放熱部と、
前記冷却槽内部の2部屋のうち外側の部屋に流入される冷媒とを含み、
前記冷媒の水位が少なくとも前記発熱体の位置に到達するよう前記冷媒の量が設定されることを特徴とする沸騰冷却装置。
【請求項2】
前記冷却槽内部の2部屋のうち内側の部屋は空気層で形成されることを特徴とする請求項1記載の沸騰冷却装置。
【請求項3】
前記ロの字状の補強部材は上底が下底よりも短い台形状をなし、前記冷却槽外部の表面の上下方向の中央部よりも上部に前記放熱体が設けられることを特徴とする請求項1または2記載の沸騰冷却装置。
【請求項4】
前記ロの字状の補強部材は正方形状あるいは長方形状をなし、前記冷却槽外部の表面の上下方向の中央部に前記放熱体が設けられることを特徴とする請求項1または2記載の沸騰冷却装置。
【請求項5】
前記冷却槽を180度回転させた位置に設置することが可能であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の沸騰冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−197994(P2012−197994A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63459(P2011−63459)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)