説明

油吸着部材及び油吸着部材の保存方法

【課題】本発明は、従来にない作用効果を発揮する画期的な油吸着部材及び油吸着部材の保存方法を提供することを目的とする。
【解決手段】油を吸着せしめる油吸着部材1であって、籾殻炭を主原料として構成され、この籾殻炭のグラファイト含有量を、この籾殻炭1g当たり0.5g以上としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水面に流出した油、各種機械装置から漏洩した油などの油を吸着せしめる油吸着部材及び油吸着部材の保存方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、籾殻炭はその有用性が認められて様々な分野において使用されており、この籾殻炭は秀れた油吸着性能を有することから油吸着部材としての使用も注目されている。
【0003】
例えば水面に流出した油を吸着する油吸着部材として、例えば特開2003−144918号に開示される油吸着部材(以下、従来例)が提案されている。
【0004】
この従来例は、籾殻を炭化し賦活した籾殻活性炭を、通油性を具備する袋体に充填したものであり、水に浮かせ水面に流出した油を吸着させるものである。
【0005】
【特許文献1】特開2003−144918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述した油吸着部材について更なる研究開発を進め、その結果、従来にない作用効果を発揮する画期的な油吸着部材及び油吸着部材の保存方法を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0008】
油を吸着せしめる油吸着部材1であって、籾殻炭を主原料として構成され、この籾殻炭のグラファイト含有量を、この籾殻炭1g当たり0.5g以上としたことを特徴とする油吸着部材に係るものである。
【0009】
また、請求項1記載の油吸着部材において、前記籾殻炭は含水率20%(重量)以下のものであることを特徴とする油吸着部材に係るものである。
【0010】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の油吸着部材において、この油吸着部材1は撥水性及び通油性を具備する袋体2に収納されていることを特徴とする油吸着部材に係るものである。
【0011】
また、請求項3記載の油吸着部材において、前記袋体2として織布若しくは不織布からなる袋体2を採用したことを特徴とする油吸着部材に係るものである。
【0012】
また、請求項3,4いずれか1項に記載の油吸着部材において、前記袋体2は複数連設されており、また、前記袋体2の端部は他の袋体2の端部と切離自在に連設されていることを特徴とする油吸着部材に係るものである。
【0013】
また、請求項3〜5いずれか1項に記載の油吸着部材において、前記袋体2の端部にはフック,ロープ,連結環などの連結部材10を係止し得る係止部7が設けられていることを特徴とする油吸着部材に係るものである。
【0014】
また、請求項1〜6いずれか1項に記載の油吸着部材を通気しない容体4内に収納した後、前記容体4を密閉することを特徴とする油吸着部材の保存方法に係るものである。
【0015】
また、請求項1〜6いずれか1項に記載の油吸着部材を通気しない容体4内に収納するとともに該容体4内を真空処理した後、前記容体4を密閉することを特徴とする油吸着部材の保存方法に係るものである。
【0016】
また、請求項1〜6いずれか1項に記載の油吸着部材を不活性ガスとともに通気しない容体4内に収納した後、前記容体4を密閉することを特徴とする油吸着部材の保存方法に係るものである。
【0017】
また、請求項1〜6いずれか1項に記載の油吸着部材1,脱酸素剤5及び乾燥剤6を通気しない容体4内に収納して密閉することを特徴とする油吸着部材の保存方法に係るものである。
【0018】
また、請求項7〜10いずれか1項に記載の油吸着部材の保存方法において、前記容体4として帯電防止性を具備する容体4を採用したことを特徴とする油吸着部材の保存方法に係るものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上述のように構成したから、秀れた油吸着性能及び秀れた水浮き性能を発揮することになるなど従来にない画期的な油吸着部材及び油吸着部材の保存方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施例に係る籾殻炭化装置の説明図である。
【図2】籾殻炭からなる油吸着部材1の油吸着性能及び水浮き性能の実験結果図である。
【図3】本実施例に係る油吸着体を示す平面図である。
【図4】本実施例に係る要部の説明斜視図である。
【図5】本実施例に係る要部の説明断面図である。
【図6】本実施例に係る油吸着体の保存方法の説明図である。
【図7】本実施例に係る油吸着体を示す平面図である。
【図8】本実施例の使用状態説明図である。
【図9】本実施例の使用状態説明図である。
【図10】本実施例の使用状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0022】
例えば水面に流出した油を処理する場合、この油が流出した部位に本発明に係る籾殻炭を主原料とした油吸着部材1を投入し、油を吸着する。籾殻炭は多孔質であり秀れた油吸着性能を具備する。また、この油吸着部材1は秀れた撥水性(水浮き性能)を具備しており、例えば水面に浮く油膜を吸着するものとして極めて秀れる。
【0023】
即ち、本発明者は、籾殻炭を、撥水性が要求される油吸着部材1に適用させることを考え、この籾殻炭の撥水性に着目した。
【0024】
既存の炭化装置(炭化処理部を密閉空間とすることで低酸素雰囲気中で炭化処理を行うバッジ式炭化装置)で製造された籾殻炭を水中に投入した場合、直ちに水中に沈む籾殻炭(以下、親水性籾殻炭)と、これとは正反対の性質の全く水に沈まない籾殻炭(以下、撥水性籾殻炭)とがある。尚、半分沈んだ状態で水面に浮く籾殻炭(以下、準親水性籾殻炭)もある。
【0025】
そこで、先ずは既存の炭化装置で製造された親水性籾殻炭と撥水性籾殻炭について調べた(実験1)。
【0026】
即ち、X線マイクロアナライザー分析を行った結果、親水性籾殻炭と撥水性籾殻炭とでは炭素含有量が大きく異なり、親水性籾殻炭の炭素含有量は全体の8.587%であり、撥水性籾殻炭の炭素含有量は全体の13.827%であり、この炭素含有量の違いが親水性と撥水性に大きく関係すると考えた。
【0027】
次に、籾殻炭に含有される炭素について調べた(実験2)。
【0028】
即ち、フーリエ変換赤外線分光法にて計測した結果、炭素はグラファイトであった。
【0029】
このグラファイトは極めて高い撥水性を有するから、この各籾殻炭における炭素含有量の違いが親水性と撥水性に大きく関わることが判明した。よって、このグラファイト含有量により親水性籾殻炭と撥水性籾殻炭とに区別できる。
【0030】
次に、親水性籾殻炭及び撥水性籾殻炭における1g当たりのグラファイト含有量について調べた(実験3)。
【0031】
具体的には、発熱量分析を行った結果、親水性籾殻炭1g当たりの発熱量は16,060J/gであり、準親水性籾殻炭1g当たりの発熱量は16,760J/gであり、撥水性籾殻炭1g当たりの発熱量は19,020J/gであった。
【0032】
前述した実験1,2から、この発熱量の違いはグラファイト含有量の違いであり、籾殻炭1g当たりのグラファイト含有量を次のように算出した。
【0033】
グラファイトの発熱量が394kJ/molで、炭素1molの原子量は12であるから、12g当たり394kJ/molで、1g当たり32,800J/gであり、これを基に親水性籾殻炭,準親水性籾殻炭及び撥水性籾殻炭1g当たりのグラファイト含有量を求めると次のようになる。
【0034】
<親水性籾殻炭>
(親水性籾殻炭1g当たりの発熱量16,060J/g)÷(グラファイト1g当たりの発熱量3,2800J/g)=0.489g(親水性籾殻炭1g当たりのグラファイト含有量)
<準親水性籾殻炭>
(準親水性籾殻炭1g当たりの発熱量16,760J/g)÷(グラファイト1g当たりの発熱量32,800J/g)=0.510g(準親水性籾殻炭1g当たりのグラファイト含有量)
<撥水性籾殻炭>
(撥水性籾殻炭1g当たりの発熱量19,020J/g)÷(グラファイト1g当たりの発熱量32,800J/g)=0.579g(撥水性籾殻炭1g当たりのグラファイト含有量)
【0035】
次に、親水性籾殻炭及び撥水性籾殻炭の含水率を略同じ状態に設定しての吸水率を調べた結果(実験4)、親水性籾殻炭は撥水性籾殻炭に比し約1.7倍多く吸水することを確認した。
【0036】
以上の実験1〜4から、親水性籾殻炭と撥水性籾殻炭との違いは撥水性を有するグラファイト含有量の違いであり、籾殻炭のグラファイト含有量を、この籾殻炭1g当たり0.5g未満としたものが親水性籾殻炭であり、籾殻炭1g当たり0.5g以上としたものが撥水性籾殻炭である。
【0037】
従って、本発明は、油吸着部材1を構成する籾殻炭として、グラファイト含有量が籾殻炭1g当たり0.5g以上の籾殻炭を採用しており、この油吸着部材1は極めて秀れた撥水性を具備し、よって、例えば水面に浮く油膜を吸着するものとして極めて秀れる。
【0038】
また、請求項2記載の発明によれば、含水率20%(重量)以下の籾殻炭を採用しており、この油吸着部材1は油を瞬間的に大量に吸着する秀れた油吸着性能(親油性能)を有し、また、水に対して良好に浮く秀れた水浮き性能(撥水性)も有する。
【0039】
この点は実験により確認済みであり、異なる含水率の籾殻炭を用意して各籾殻炭に関する油吸着性能と水浮き性能の実験をしたところ、図2に図示したように含水率20%(重量)よりも含水率が多くなると(図2中の含水率22.8%(重量)と含水率34.8%(重量)との境あたり)、急激に各性能(油吸着性能及び水浮き性能)が低下することを確認した。今回の実験から実際の使用レベルでは含水率20%(重量)以下が望ましいと考えられる。
【0040】
そこで、請求項2記載の発明は、この実験により得られた結果を請求項としてまとめたものであり、油吸着部材1として含水率20%(重量)以下の籾殻炭を採用している。
【0041】
実際、例えばこの含水率20%(重量)以下の籾殻炭からなる油吸着部材1を水面に流出した油に投入した場合には、油を瞬時に且つ大量に吸着し、しかも、水に良好に浮くため水面の油を効率良く良好に吸着することができる。
【0042】
また、籾殻炭を主原料とする油吸着部材1は脱臭効果も得られ、吸着した油の臭いを消臭することもできる。
【0043】
従って、この含水率20%(重量)以下の籾殻炭を主原料とする油吸着部材1は、秀れた油吸着性能を有し、しかも、秀れた水浮き性能を有するものであるから特に水面に流出した油を処理する際に有効となる。尚、各種機械装置から漏洩した油などの油を処理する際にも有効なのは勿論である。
【実施例】
【0044】
本発明の具体的な一実施例について図面に基づいて説明する。
【0045】
本実施例は、油を吸着せしめる油吸着部材1であって、この油吸着部材1を袋体2に収納して油吸着体3としたものである。
【0046】
以下、本実施例に係る構成各部について詳細な説明をする。
【0047】
油吸着部材1は、籾殻炭(炭化処理した籾殻)であり、後述する籾殻炭化装置の加熱処理によりグラファイト含有量を、籾殻炭1g当たり0.5g以上(0.579g)、且つ、含水率20%(重量)以下とされている。尚、油吸着部材1は籾殻炭でない他の素材を混合せしめて構成するようにしても良い。
【0048】
前述したようにグラファイト含有量を籾殻炭1g当たり0.5g以上とした籾殻炭は秀れた撥水性を有し、撥水性が要求される油吸着部材1を構成する籾殻炭として極めて有用である。
【0049】
そして更に、油吸着部材1を構成する籾殻炭は、含水率20%(重量)以下とすることで秀れた油吸着性能及び秀れた水浮き性能を有する(図1参照)。
【0050】
図1に示す含水率,水浮き率及び油吸い込み率の定義は次の通りである。
【0051】
含水率(重量)は、乾燥減量法と称される測定原理に基づく下記の式により求められるものである。
【0052】

((W−Wo)÷W)×100=含水率(MOIST)
W:初期試料質量
Wo:絶対乾燥質量
水浮き率は、所定量のものを水に浮かせた際、水に浮くものと沈むものとの量から算出される率である。
【0053】
油吸い込み率は、基準となる含水率(籾殻炭であれば1.1%、籾殻であれば1.0%)のものが吸い込む油の量を油吸い込み率100%とし、これに対する各含水率のものが油を吸い込む量から算出される率である。
【0054】
また、籾殻炭は、多孔質であるため前述したような油吸着性能を有するが、湿気などの水分を吸収する毛管凝縮現象がおきにくい部材、即ち、籾殻炭の表面に形成される細孔は、例えば吸湿剤で使用されるシリカゲルなどに比し、毛管凝縮現象が生じ易い大きさとされる約2〜12μmの細孔の分布が少ない部材である。
【0055】
従って、長期に亙って保管されていた場合であっても、湿気などが存在する環境下においても水分を吸収しにくく、よって、常に最良の油吸着性能を発揮することになる。
【0056】
また、この籾殻炭の細孔は、一度吸着した油が流出し難い形状であり、且つ、籾殻炭自体が保形性を有することから、籾殻炭から成る油吸着部材1は、従来から提案される繊維系部材から成る油吸着部材に比して吸着した油の保持性能が極めて秀れている。
【0057】
従って、油を吸着させた油吸着体3を回収する作業に際して、一度吸着させた油が再び回収した場所に流出してしまうことが可及的に防止されることになる。
【0058】
また、油吸着部材1は用途に応じて界面活性処理しても良い。
【0059】
即ち、油吸着部材1の表面を少量の界面活性剤(例えばアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)により処理することにより、更に油吸着性能を向上しつつ、撥水性能を低減して吸水性能を向上することで、油吸着部材1は水分を吸収しながら質量の小さな油膜も同時に吸着する。
【0060】
従って、油吸着の仕上げ処理として、油膜を除去する際には、この界面活性処理を施したものを使用するのが良い。
【0061】
前述した油吸着部材1を袋体2に収納して油吸着体3とする場合、全て籾殻炭からなる油吸着部材1を収納する場合、籾殻炭とその他の素材とを混合してなる油吸着部材1を収納する場合がある。
【0062】
この全て籾殻炭からなる油吸着部材1を収納した場合、秀れた油吸着性能や秀れた水浮き性能などの籾殻炭が持つメリットが最大限に活かされる油吸着体3が得られる。
【0063】
また、籾殻炭とその他の素材とを混合してなる油吸着部材1を収納した場合、前述した籾殻炭が持つメリットとその他の素材が持つメリットとを兼備した油吸着体3が得られる。
【0064】
袋体2は、図3〜5に図示したように撥水性及び通油性を有する素材(織布若しくは不織布)で形成したものであり、平面視方形状(225mm×225mm)に形成されている。尚、袋体2の大きさや形状は適宜設計変更し得るものである。
【0065】
また、この袋体2は、水若しくは油に反応して変色する機能(インジケーター機能)を具備せしめても良く、その他、油を吸着することで変色した籾殻炭が透けて見える素材や構造のもので構成するようにしても良い。
【0066】
本実施例では、図3に図示したように4つの袋体2の端部2a同士を分離自在に連設しており、この連設部は鋏などの切断具を用いて分離する。尚、この連設部にミシン目を設けて手の力で分離し得るように構成しても良い。
【0067】
また、図7に図示したように袋体2の端部にフック,ロープ,連結環などの連結部材10を係止し得る係止部7を設けても良い。
【0068】
具体的には、この係止部7は、適宜な合成樹脂製の部材で形成した環状体である。
【0069】
具体的には、基端部に筒部7aを設けた線材7Aの先端部に該筒部7aに貫挿係止する係止部7bを設けたものであり、この線材7Aを袋体2の端部2aに設けた環部材(ハトメ)に貫挿して係止部7bを筒部7aに貫挿係止することで環状に連結する。
【0070】
この係止部7は、図8に図示したように油が流出した部位にオイルフェンスを形成する場合に複数の袋体2同士をロープや連結環などの連結部材10を用いて連結したり、その他にも、例えば油が流出した部位へ油吸着体3を配する場合若しくは当該部位から回収する場合に吊り上げるフックなどの連結部材10を係止する部位として使用したりすることができる。
【0071】
前述した本実施例に係る油吸着体3は、図6に図示したように適宜な脱酸素剤5(例えば三菱ガス化学株式会社製のエージレス(登録商標))及び適宜な乾燥剤6(例えばAGCエスアイテック株式会社製のヒシビート(商品名))とともに通気しない容体4内に収納して密閉することで保存される。
【0072】
容体4は、通気性を具備しない部材(合成樹脂や金属など)からなる袋(例えば株式会社メイワパックス製のバリアナイロン/ポリエチレンからなる袋、ポリエチレンテフタレート/アルミ/ポリエチレンからなる袋)であり、開口部から所定量の油吸着体3と脱酸素剤5と乾燥剤6を収納した後、開口部がシール(熱融着)される。この容体4の開口部を閉塞する際、場合によっては脱酸素剤5及び乾燥剤6を収納せず単に密閉するだけでも良いし、容体4内を真空処理しても良いし、不活性ガスを充填するようにしても良い。
【0073】
また、容体4は帯電防止性を有している。前述した素材は油が着火する程度の静電気が帯電しないことは確認済みである。
【0074】
例えば油を吸着する場面(例えば事故現場やガソリンスタンドなど)において、吸着しようとする油が、現場に持ち込んだ部材に帯電した静電気により着火することが危惧される。
【0075】
この点、本実施例は、容体4は帯電防止性を具備しているため、油が静電気により着火する静電気火災が起きる心配はなく極めて有用である。尚、袋体2も帯電防止性を具備する部材からなるものが望ましいが、袋体2が帯電防止性を具備しない部材であったとしても籾殻炭は電気抵抗が小さく帯電しにくい素材である為、この籾殻炭に袋体2は触れていることで着火する程度の静電気が帯電することはない。即ち、袋体2を構成する不織布は静電気を帯びる素材であるが、内部に入っている導電性の籾殻炭と接触する事によって、静電気誘導が起き静電気を除去する事ができる。また、容体4は酸素バリアができるうえ静電気防止対策が施されて製品化される為、より安全性が高くなる。静電気誘導とは帯電した物体を導体(籾殻炭)に接近させることで、帯電した物体に近い側に、帯電した物体とは逆の極性の電荷が引き寄せられる現象である。導体(籾殻炭)中を実際に電荷が移動することで引き起こされる。このときの電荷は導体(籾殻炭)内の電位差を打ち消すように移動する為、導体(籾殻炭)内は等電位となる。
【0076】
尚、容体4は袋に限らず箱状体でも良い。
【0077】
前述した特性を具備する油吸着部材1(籾殻炭)は次の装置(籾殻炭化装置S)を用いて製造される。
【0078】
この籾殻炭化装置Sは、図1に図示したように籾殻を炭化する炭化処理部11を具備する。
【0079】
炭化処理部11は、図1に図示したように適宜な金属製の部材で形成された箱状基体12の内空間に籾殻搬送炭化部13を設けて構成されており、この籾殻搬送炭化部13は図示省略のバーナー装置で加熱(間接加熱)される。
【0080】
具体的には、この籾殻搬送炭化部13は、図1に図示したように基体12内に配設され該基体12の左右側壁間に水平状態で架設される筒状部14と、この筒状部14内に配設され図示省略の駆動装置により回転する回転軸15aの周面に螺旋羽根15bが設けられた回転搬送部15とで構成されている。
【0081】
従って、籾殻搬送炭化部13は、回転搬送部15の回転に伴い筒状部14内を籾殻が一側から他側へ搬送されることになる。
【0082】
また、籾殻搬送炭化部13の基端部には、籾殻を該籾殻搬送炭化部13に供給する籾殻供給部16が設けられている。
【0083】
この籾殻供給部16は、図1に図示したように前述した筒状部14の端部に径小筒状部16Aを設け、この径小筒状部16A内にも前述した回転軸15aを配し、この回転軸15aの周面に螺旋羽根16aが突設された構成であり、この籾殻供給部16にはホッパー体16bが設けられている。
【0084】
また、籾殻搬送炭化部13の先端部には、炭化処理された処理済の籾殻炭を排出する籾殻炭排出部17が設けられている。
【0085】
この籾殻炭排出部17は、図1に図示したように筒状部14の先端側下方部に垂設筒体17aを設けて構成されており、この垂設管体17aの下方位置には籾殻炭受け体17bが設けられている。
【0086】
以上の構成から成る籾殻炭化装置Sを用いた籾殻炭(油吸着部材1)の製造方法について説明する。
【0087】
籾殻供給部16から供給された籾殻は、炭化処理部11に係る籾殻搬送炭化部13で搬送されながら炭化し籾殻炭となる。
【0088】
その後、籾殻搬送炭化部13で搬送されながら炭化された籾殻炭は籾殻炭排出部17で排出される。
【0089】
この籾殻炭化装置Sにより製造される籾殻炭は、グラファイト含有量が籾殻炭1g当たり0.5g以上であり、且つ、含水率が20%(重量)以下である。
【0090】
以上の構成からなる本実施例に係る油吸着体3を用いた油の処理作業について説明する。
【0091】
例えば河川や海洋に油が流出した場合、図8に図示したように複数の油吸着体3(袋体2)同士を連結部材10(ロープ)を用いて連結し、水面に流出した油の更なる流出を抑制するオイルフェンスとして使用する。袋体2同士の連設部が折り曲がることで水面の形状変化(波立ち)に対応して該水面に対する接触面積が維持されることになり、オイルフェンスとして良好に機能する。
【0092】
この場合、必要に応じて油吸着体3で形成されたオイルフェンスにより滞留する油を他の油吸着体3を配して吸着させる。
【0093】
その後、この油を吸着した油吸着体3を回収する場合、図9に図示したように回収用の棒体11を用いて袋体2の連設部の折り曲げ性を利用して回収したり、袋体2の端部に設けた係止部7に図示省略のフックなどの連結部材10を係止して吊り上げて回収したりする。
【0094】
また、本実施例に係る油吸着体3を用いたその他の油の処理作業としては、図10に図示したように袋体2同士の連設部を切断してU字溝12に流出した油を吸着させたり、各種機械装置から漏洩した油などの油を吸着させたりすることができる。
【0095】
尚、本実施例では、油吸着部材1を袋体2に収納した油吸着体3を用いて油を処理する場合であるが、場合によっては油吸着部材1(含水率が20%(重量)以下の籾殻炭)を直接油に散布するようにしても良い。
【0096】
特に水面に浮かぶ約1μm程度の油膜を回収する場合に油吸着部材1の直接散布は適しており、袋体2を破って散布するようにしても良いし、直接散布用として密閉性の高い袋に収納しておき、必要に応じて袋を開けて散布するようにしても良い。この水面の油を吸着させた油吸着部材1は金属網を使用して回収する。
【0097】
本実施例は上述のように構成したから、秀れた油吸着性能及び秀れた水浮き性能(撥水性能)を発揮することになる。
【0098】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0099】
1 油吸着部材
2 袋体
4 容体
5 脱酸素剤
6 乾燥剤
7 係止部
10 連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油を吸着せしめる油吸着部材であって、籾殻炭を主原料として構成され、この籾殻炭のグラファイト含有量を、この籾殻炭1g当たり0.5g以上としたことを特徴とする油吸着部材。
【請求項2】
請求項1記載の油吸着部材において、前記籾殻炭は含水率20%(重量)以下のものであることを特徴とする油吸着部材。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の油吸着部材において、この油吸着部材は撥水性及び通油性を具備する袋体に収納されていることを特徴とする油吸着部材。
【請求項4】
請求項3記載の油吸着部材において、前記袋体として織布若しくは不織布からなる袋体を採用したことを特徴とする油吸着部材。
【請求項5】
請求項3,4いずれか1項に記載の油吸着部材において、前記袋体は複数連設されており、また、前記袋体の端部は他の袋体の端部と切離自在に連設されていることを特徴とする油吸着部材。
【請求項6】
請求項3〜5いずれか1項に記載の油吸着部材において、前記袋体の端部にはフック,ロープ,連結環などの連結部材を係止し得る係止部が設けられていることを特徴とする油吸着部材。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1項に記載の油吸着部材を通気しない容体内に収納した後、前記容体を密閉することを特徴とする油吸着部材の保存方法。
【請求項8】
請求項1〜6いずれか1項に記載の油吸着部材を通気しない容体内に収納するとともに該容体内を真空処理した後、前記容体を密閉することを特徴とする油吸着部材の保存方法。
【請求項9】
請求項1〜6いずれか1項に記載の油吸着部材を不活性ガスとともに通気しない容体内に収納した後、前記容体を密閉することを特徴とする油吸着部材の保存方法。
【請求項10】
請求項1〜6いずれか1項に記載の油吸着部材,脱酸素剤及び乾燥剤を通気しない容体内に収納して密閉することを特徴とする油吸着部材の保存方法。
【請求項11】
請求項7〜10いずれか1項に記載の油吸着部材の保存方法において、前記容体として帯電防止性を具備する容体を採用したことを特徴とする油吸着部材の保存方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−67809(P2011−67809A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250947(P2009−250947)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(593013317)進展工業株式会社 (16)
【Fターム(参考)】