説明

油圧カッター及び油圧カッター用の補助具

【課題】油圧を解除しても可動刃が後退しない場合に、可動刃を損傷させることなく元の位置に復帰させることができる油圧カッターを提供する。
【解決手段】タンク7から供給された作動油hの油圧により前進すると共に油圧を解除すると後退するピストン14を有しているシリンダブロック11を備えている。また、前進したピストン14のさらに前方に設けられている固定刃31、ピストン14と共に固定刃31に向かって前進する可動刃32、及び、可動刃32の進退移動をガイドするガイド部38,39を有しているヘッド30を備えている。さらに、可動刃32の側面32a,32bから突出して設けられ異常時に可動刃32を後退させる方向に衝撃力を与える突起部41,42を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線やワイヤーなどを油圧により切断する油圧カッター及びその補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
電線やワイヤーなどを油圧により切断する油圧カッターとして、例えば特許文献1に記載のものがある。この油圧カッターは、油圧により前進すると共に油圧を解除すると後退するピストンを有しているシリンダブロックと、前進したピストンのさらに前方に設けられている固定刃と、ピストンと共に固定刃に向かって前進する可動刃とを備えている。
【0003】
この油圧カッターにより電線やワイヤーなどの被切断物を切断するためには、被切断物を固定刃と可動刃との間に設け、油圧によってピストンと共に可動刃を固定刃に向かって前進させる。そして、被切断物が切断され、シリンダブロック内の油圧を解除すると、ピストンと共に可動刃は元の位置へと後退する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−245177号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような油圧カッターを用いて、電線やワイヤーなどを切断している際、油圧カッターのフレーム(可動刃をガイドしているガイド部)と、可動刃との間に異物が挟まったり、電線などに対する可動刃の当たり具合によって可動刃が一様に前進せず可動刃がフレーム(ガイド部)に噛み込んだりした場合、シリンダブロック内の油圧を解除しても、可動刃は後退できず元の位置に戻らないことがある。
【0006】
この場合、従来では、ハンマーによってフレーム又は可動刃を打撃したり、フレームと可動刃との間にドライバーなどの工具を挿し入れて可動刃を無理に後退させたりしている。しかし、このような手段では、可動刃を元の位置に復帰させるのに時間を要し、切断作業を中断する必要があるばかりか、可動刃及びフレームが損傷し、以後、その油圧カッターを用いて、切断作業ができなくなるおそれもある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、油圧を解除しても可動刃が後退しない場合に、可動刃を損傷させることなく元の位置に復帰させることができる油圧カッター、及び、この油圧カッターに用いる補助具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の油圧カッターは、作動油を溜めるタンクと、前記タンクから供給された前記作動油の油圧により前進すると共に油圧を解除すると後退するピストンを有しているシリンダブロックと、前進した前記ピストンのさらに前方に設けられている固定刃、前記ピストンと共に前記固定刃に向かって前進する可動刃、及び、前記可動刃の進退移動をガイドするガイド部を有しているヘッドと、前記可動刃の側面から突出して設けられ異常時に当該可動刃を後退させる方向に衝撃力を与える突起部とを備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、例えば可動刃とガイド部との間に異物が挟まり、シリンダブロックの油圧を解除しても可動刃が後退しない場合(異常時)に、可動刃の側面から突出している突起部に対して可動刃を後退させる方向の衝撃力を与えることで、可動刃を強制的に後退させることできる。これにより、可動刃を損傷させることなく元の位置に復帰させることができ、次の切断作業を迅速に開始することが可能となる。
【0010】
また、前記突起部は、前記可動刃の両側面に設けられているのが好ましく、この場合、可動刃の両側面に設けられている突起部を、可動刃の後退方向に同時に押せば、後退方向に向かって可動刃を直線的に移動させる力を付与することが可能となる。このため、可動刃を元の位置に戻しやすくなる。
【0011】
また、前記ガイド部は、隙間をあけて前記可動刃を左右両側から挟む側壁を有しており、前記側壁に、前記可動刃と共に進退移動する前記突起部を通過させる当該進退方向に長い長孔が形成されているのが好ましい。
この場合、側壁によって可動刃の進退をガイドすることが可能となる。つまり、可動刃を左右両側から覆って保護する側壁を、当該可動刃の進退をガイドする部材として兼用することができ、構成が簡略化される。そして、可動刃から突出している突起部を、さらにこの側壁から突出させることができ、この側壁から突出している突起部に対して衝撃力を与えることで、可動刃を強制的に後退させることができる。
【0012】
また、本発明は、前記突起部が可動刃の両側面に設けられている油圧カッターに用いられる補助具であって、一対の前記突起部に対して前記可動刃の後退方向に向かって当接する一対の当接部と、前記一対の当接部を連結していると共に前記後退方向の衝撃力を直接的に与える連結部とを有していることを特徴とする。
本発明によれば、連結部に与えた衝撃力を、一対の当接部が一対の突起部を同時に後退方向へ押す力として、当該当接部へ伝達することができる。このため、後退方向に向かって可動刃を直線的に移動させる力を付与することが可能となり、可動刃を元の位置に戻しやすくなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の油圧カッターによれば、油圧を解除しても可動刃が後退しない場合に、可動刃の側面から突出している突起部に対して可動刃を後退させる方向の衝撃力を与えることで、可動刃を強制的に後退させることできる。これにより、可動刃を損傷させることなく元の位置に復帰させることができ、次の切断作業を迅速に開始することが可能となる。
また、本発明の補助具によれば、後退方向に向かって可動刃を直線的に移動させる力を、付与することが可能となり、可動刃を元の位置に戻しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の油圧カッターの実施の一形態を示す側面図である。
【図2】油圧カッターの一部を側面から見た断面図である。
【図3】油圧カッターの一部を、図2とは別の方向から見た断面図である。
【図4】油圧カッターを前方から後方へ向かって見た概略図である。
【図5】補助具及び油圧カッターのヘッドを示している概略図である。
【図6】補助具を用いた場合の油圧カッター(一部)の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の油圧カッターの実施の一形態を示す側面図である。この油圧カッター1は、電線やワイヤーなどの被切断物Wを切断するための工具であり、本実施形態では、作業者が持ち運びすることができる可搬型の油圧カッター1である。また、この油圧カッター1では、被切断物Wを切断するために、油圧によって可動刃32を移動させる。そして、この油圧の発生は、作業者による操作レバー4の操作に基づくものであり、手動式の切断工具である。
【0016】
この油圧カッター1は、作動油hを溜めているタンク7と、往復直線移動するピストン14を内部に有しているシリンダブロック11と、被切断物Wを切断する刃(固定刃31及び可動刃32)を有しているヘッド30とを備えている。さらに、本実施形態では、手動式の切断工具とするために、シリンダブロック11に固定されている作業者が掴むハンドル3と、作業者が操作する前記操作レバー4とを備えている。
【0017】
図2は、油圧カッター1の一部を側面から見た断面図である。図3は、この油圧カッター1の一部を、図2とは別の方向から見た断面図である。
ハンドル3は中空の直線状部材であり、シリンダブロック11の軸方向一端部に固定されている。そして、タンク7は、このハンドル3の内部に位置しており、シリンダブロック11の軸方向一端部に固定されている。
【0018】
操作レバー4は、ハンドル3に隣接して設けられており、作業者は一方の手でハンドル3を握り、他方の手で操作レバー4を握ることができる。操作レバー4はシリンダブロック11に揺動可能に取り付けられており、この操作レバー4の操作によって、固定刃31に対して可動刃32を接近移動させ、被切断物Wを切断(剪断)する。
【0019】
シリンダブロック11は、ピストン14を収容しているシリンダ本体部12と、タンク7とシリンダ本体部12との間に位置し作動油hを流すための流路が形成されている流路部13とを有している。シリンダ本体部12及び流路部13の構成については後に説明する。
なお、本実施形態では、ピストン14がヘッド30側へ移動する方向を前進方向とし、ピストン14が流路部13(タンク7)側へ移動する方向を後退方向としている。
【0020】
図1において、ヘッド30は、シリンダブロック11の軸方向他端部に固定されているフレーム33と、相互が接近することで被切断物Wを挟んで切断する固定刃(ヘッドカッター)31及び可動刃(ピストンカッター)32とを有している。
フレーム33は、ピストン14の移動に基づいて往復直線移動する可動刃32をガイドしているガイドフレーム(ガイド部)34と、このガイドフレーム34の前部に取り付けられている先端フレーム35とを有している。この先端フレーム35に固定刃31が固定されている。
【0021】
図3において、ガイドフレーム34は、シリンダブロック11に固定されており、隙間をあけて可動刃32を左右両側から挟む側壁38,39を有している。この側壁38,39に沿って可動刃32はガイドされ、可動刃32は直線移動が可能となる。つまり、側壁38,39が、可動刃32の直線移動(進退移動)をガイドする部材となる。なお、可動刃32は、ピストン14と連結されており、ピストン14と一体となって移動する。
以上より、このヘッド30では、前進したピストン14のさらに前方に固定刃31設けられており、この固定刃31に向かって可動刃32はピストン14と共に前進する。そして、ガイドフレーム34は、可動刃32の進退移動をガイドすることができる。
【0022】
図1において、先端フレーム35は、支持ピン36によってガイドフレーム34に揺動可能に取り付けられていると共に、ロック機構37によって、この揺動を拘束することができる。ロック機構37によって、揺動を拘束した状態では、ガイドフレーム34に対して先端フレーム35は固定された状態にあるが、ロック機構37において拘束を解除した状態とすれば、先端フレーム35はガイドフレーム34に対して支持ピン36回りに揺動することができる。先端フレーム35を揺動させた状態を、図1では二点鎖線で示しており、この状態で、固定刃31と可動刃32との間に、被切断物Wを位置させることができる。
【0023】
シリンダ本体部12及び流路部13の構成について説明する。
図2において、シリンダ本体部12には、柱状の空間が形成されており、この空間に、シリンダ本体部12の内周面12aに摺動可能であるピストン14が設けられている。ピストン14は大径部14aと小径部14bとを有している。前記柱状の空間のうち、大径部14aよりも流路部13側にシリンダ室20が形成される。ピストン14の大径部14aを挟んでシリンダ室20の軸方向反対側の空間には、弾性部材15が設けられている。弾性部材15は、ピストン14を流路部13側へ付勢している、本実施形態の弾性部材15は、コイルスプリングからなる。
【0024】
流路部13には、タンク7内の作動油hをシリンダ室20へ供給するためのラムシリンダ16が形成されている。ラムシリンダ16は有底の孔からなり、このラムシリンダ16に軸状のラム17が設けられており、ラム17はラムシリンダ16内を摺動可能である。ラム17の端部は、操作レバー4の基部が連結されており、操作レバー4を揺動することによりラム17はラムシリンダ16内を往復移動する。後にも説明するが、往復移動するラム17のポンプ作用により、タンク7内の作動油hをシリンダ室20へ供給することが可能となる。
【0025】
流路部13には、タンク7の作動油hをシリンダ室20へ供給する流路として、ラムシリンダ16を挟んで第1流路18と第2流路19とが形成されている。第1流路18はタンク7とラムシリンダ16とを連通し、第2流路19はラムシリンダ16とシリンダ室20とを連通している。また、第1流路18には、スプリングとボールとからなる第1の一方向弁21が設けられており、第2流路19には、スプリングとボールとからなる第2の一方向弁22が設けられており、これら一方向弁21により、作動油hの逆流を防止している。
【0026】
図3において、流路部13には、中空のバルブ室23が形成されており、その一端がプラグ24により栓されている。バルブ室23には、スプリングとボールとからなる戻し弁25が設けられている。また、流路部13には、シリンダ室20に供給された作動油をタンク7へ戻すための流路として、バルブ室23を挟んで第3流路28と第4流路29とが形成されている。第3流路28はシリンダ室20とバルブ室23とを連通し、第4流路29はバルブ室23とタンク7とを連通している。
【0027】
また、戻し弁25は通常、閉状態にあり、第3流路28と第4流路29とは繋がっていないが、開状態になると第3流路28と第4流路29とは連通する。これにより、シリンダ室20の作動油をタンク7側へ戻すことが可能となる。バルブ室23の他端側には軸26が設けられており、流路部13の外側に設けられている戻しレバー27によって、この軸26が押し入れられると、軸26が戻し弁25のスプリングに抗してボールを押し、戻し弁25を開くことができる。
【0028】
このように構成されたシリンダ本体部12及び流路部13における機能について説明する。図2において、操作レバー4を揺動させると、ラムシリンダ16内のラム17が移動し、ラム17が操作レバー4側へ引かれる工程では、ラムシリンダ16内が負圧となることから、第1の一方向弁21が開き、タンク7内の作動油hがラムシリンダ16内へ流入する。
そして、ラム17が操作レバー4により押し込まれると、第1の一方向弁21が閉じると共に、ラムシリンダ16内が加圧され第2の一方向弁22が開き、ラムシリンダ16内の作動油hがシリンダ室20へ圧送される。
このような操作レバー4の揺動を複数回繰り返すことにより、シリンダ室20の作動油hの圧力(油圧)が上昇し、やがて、弾性部材15の弾性力に抗して、ピストン14をヘッド30側へ前進させる。これにより、可動刃32は前進し、被切断物Wを切断する。
【0029】
これに対して、図3において、戻しレバー27によって軸26を押し、戻し弁25を開くと、弾性部材15の弾性力によって、ピストン14は流路部13側へ押され、シリンダ室20の作動油hは、第3流路28及び第4流路29を通ってタンク7へ戻る。すなわち、戻しレバー27によって戻し弁25を開くと、シリンダ室20内の作動油hはタンク7へ流れることができるので、シリンダ室20の作動油hの油圧が解除され(油圧が低くなり)、弾性部材15の復元力によって、ピストン14は流路部13側へ移動する。これにより、可動刃32は後退することができる。
【0030】
以上のように、このシリンダブロック11では、タンク7から供給された作動油hのシリンダ室20における油圧によりピストン14は前進し、可動刃32を固定刃31に接近させる。また、このシリンダ室20における作動油hの油圧が解除されると、ピストン14は後退し、可動刃32を固定刃31から離すことができる。
【0031】
そして、本発明の油圧カッター1は、図2と図3とに示しているように、可動刃32の側面から突出している突起部を備えている。なお、本実施形態では、可動刃32の左右両側の側面32a,32bから突出している突起部41,42が設けられおり、突起部41,42は可動刃32を挟んで左右対称に配置されている。
図1と図3とに示しているように、ガイドフレーム34の側壁38,39には、可動刃32の進退方向に長い長孔43,44が形成されており、突起部41,42は、この長孔43,44を通じて、側壁38,39よりも外側に突出している(図4参照)。図4は、油圧カッター1を前方から後方へ向かって見た概略図である。そして、可動刃32が進退移動する際に、突起部41,42は、この長孔43,44を移動する。
【0032】
突起部41,42は、可動刃32と同様に硬い部材からなり、金属製である。突起部41,42は、軸状の部材であり、本実施形態(図3)では、突起部41,42それぞれの基部41a,42aをねじ部とし、可動刃32の側面32a,32bにねじ孔を形成し、突起部41,42を可動刃32に螺合させ、突起部41,42と可動刃32とを一体としている。または、図示しないが、可動刃32の幅方向に貫通孔を形成し、この貫通孔に可動刃32の幅寸法よりも長いシャフトを挿入(圧入)し、その両端部を突出させて突起部41,42としてもよい。または、突起部41,42を可動刃32と一体ものとして製造してもよく、この場合、ガイドフレーム34を二分割組み立て式とする。
【0033】
この突起部41,42の機能について説明する。
油圧カッター1を用いて、作業者が電線やワイヤーなどの被切断物Wを切断している際、可動刃32とガイドフレーム34との間に異物が挟まったり、被切断物Wに対する可動刃32の当たり具合によって可動刃32が一様に前進せず可動刃32がガイドフレーム34に噛み込んだりすることがある。このような異常時では、作業者は、突起部41,42をハンマーなどによって、直接、又は、後述する補助具50を介して、可動刃32を後退させる方向(図2及び図3では右方向)に打撃し、突起部41,42に対して、可動刃32を後退させる方向の衝撃力を与える。これにより、可動刃32を強制的に後退させることができ、迅速に切断作業に復帰することが可能となる。
【0034】
補助具50を介して突起部41,42に衝撃力を与える場合を説明する。
図5は、補助具50及び油圧カッター1のヘッド30を示している概略図である。図6は、補助具50を用いた場合の油圧カッター1(一部)の側面図である。補助具50は、ヘッド30とは別体の治具であり、必要に応じてこの補助具50をヘッド30に装着し、作業を行う。
【0035】
補助具50は、直線軸状である一対の当接部51,52と、これら一対の当接部51,52を連結している連結部53とを有している。連結部53は固定刃31よりも前方に位置し、ヘッド30を前方位置で跨いでいる。この連結部53の両側に当接部51,52が固定されている。当接部51,52それぞれが可動刃32の後退方向に向かって直線状となるようにして、補助具50はヘッド30に対して設置される。設置状態で、補助具50は、ヘッド30を挟んで左右対称の構成である。
【0036】
そして、当接部51,52の先端部51a,52aを、一対の突起部41,42に対して可動刃32の後退方向に向かって当接させる。そして、ハンマーなどで連結部53を後退方向に打撃して(矢印F)、連結部53に対して直接的に後退方向の衝撃力を与える。一対の当接部51,52の基端部は、連結部53に連結されていることから、ハンマーなどによってこの連結部53を後退方向に打撃することで、当接部51,52は、突起部41,42を、後退方向に同時にかつ均等な荷重により押すことができる。
この補助具50によれば、連結部53(一箇所)に与えた衝撃力が、当接部51,52に伝達され、しかも、伝達された衝撃力は、一対の当接部51,52が一対の突起部41,42を同時にかつ均等な荷重で後退方向へ押す力となる。
【0037】
以上、本実施形態の油圧カッター1によれば、被切断物Wの切断作業の途中で、例えば可動刃32とガイドフレーム34との間に異物が挟まり、シリンダブロック11の油圧を解除しても可動刃32が後退しない場合に、以下の処置を行うことができる。つまり、作業者が、可動刃32の側面32a,32bから突出している突起部41,42に対して、ハンマーなどを用いて打撃する。この打撃の方向は、可動刃32を後退させる方向であり、この打撃による衝撃力を突起部41,42与えることで、可動刃32を強制的に後退させることできる。
ハンマーなどによって可動刃32を直接打撃するのではなく、突起部41,42を打撃することから、可動刃32を損傷させることなく可動刃32を元の位置に復帰させることができる。この結果、切断作業の途中で、可動刃32が後退しなくなっても、上記の処置を行うことによって、次の切断作業を迅速に開始することが可能となる。
【0038】
また、図5及び図6に示しているように、補助具50を用いた場合では、可動刃32の両側面32a,32bに設けられている突起部41,42に対して、後退方向に同時にかつ均等に押すことができる力(衝撃力)を付与することができるので、後退方向に向かって可動刃32を直線的に移動させることが可能となる。このため、可動刃32を元の位置に戻しやすくなる。
【0039】
本発明の油圧カッターは、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。例えば、上記の実施形態では、突起部41,42はガイドフレーム34と重なる位置に設けられており、このためにガイドフレーム34に長孔43,44を形成する必要がある場合を説明したが、この実施形態よりも、突起部41,42を、さらに前方の位置に設け、ガイドフレーム34と重ならない位置としてもよい。この場合、長孔43,44は不要となる。
【符号の説明】
【0040】
1:油圧カッター 7:タンク 11:シリンダブロック 14:ピストン 30:ヘッド 31:固定刃 32:可動刃 32a,32b:側面 34:ガイドフレーム(ガイド部) 38:側壁 39:側壁 41:突起部 42:突起部 50:補助具 51:当接部 52:当接部 53:連結部 h:作動油

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動油を溜めるタンクと、
前記タンクから供給された前記作動油の油圧により前進すると共に油圧を解除すると後退するピストンを有しているシリンダブロックと、
前進した前記ピストンのさらに前方に設けられている固定刃、前記ピストンと共に前記固定刃に向かって前進する可動刃、及び、前記可動刃の進退移動をガイドするガイド部を有しているヘッドと、
前記可動刃の側面から突出して設けられ異常時に当該可動刃を後退させる方向に衝撃力を与える突起部と、
を備えていることを特徴とする油圧カッター。
【請求項2】
前記突起部は、前記可動刃の両側面に設けられている請求項1に記載の油圧カッター。
【請求項3】
前記ガイド部は、隙間をあけて前記可動刃を左右両側から挟む側壁を有しており、
前記側壁に、前記可動刃と共に進退移動する前記突起部を通過させる当該進退方向に長い長孔が形成されている請求項1又は2に記載の油圧カッター。
【請求項4】
請求項2に記載の油圧カッターに用いられる補助具であって、
一対の前記突起部に対して前記可動刃の後退方向に向かって当接する一対の当接部と、
前記一対の当接部を連結していると共に前記後退方向の衝撃力を直接的に与える連結部と、を有していることを特徴とする油圧カッター用の補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−52454(P2013−52454A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190543(P2011−190543)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】