説明

油圧作業機

【目的】 他人が無断運転するのを防止する機能を備えつつ、不測の事故も防止することのできる安全性の高い油圧作業機を提供するする。
【構成】 アクチュエータ7と、アクチュエータ駆動用の油圧ポンプ6と、コントロ−ルバルブ8と、ゲートロックレバー12aを有するゲートロックバルブ12と、油圧ポンプ6駆動用の原動機1と、始動用モータ2とを備えた油圧作業機において、施錠操作により始動用モータ2を駆動不能にする盗難防止用スイッチ15と、ゲートロックレバー12aの非中立位置への操作により始動モータ2を駆動不能にする中立スイッチ18とを設け、原動機を始動するため盗難防止用スイッチ15を開錠操作した際、ゲートロックレバー12aが中立位置へ操作されているときに限り始動モータ2が駆動されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、他人が無断運転するのを防止する機能を付加するとともに、これに伴って生じる安全上の問題を解消するようにした油圧作業機に関するもので、特に、油圧ショベル、油圧クレーン等の建設用油圧作業機に有用なものである。
【0002】
【従来の技術】クローラ式油圧ショベル、油圧式トラックレーン等の油圧作業機は、走行用油圧モータ、旋回用油圧モータ、ブ−ム用油圧シリンダ、ア−ム用油圧シリンダ等の各種アクチュエータと、このアクチュエータへの圧油の供給を制御するコントロ−ルバルブと、アクチュエ−タ駆動用の油圧ポンプやパイロットポンプのような油圧駆動装置運転用の油圧ポンプと、パイロットポンプの圧油の供給油路を閉止するためのゲートロックバルブにおけるゲートロックレバーやコントロールバルブを操作するためのパイロットバルブにおける操作レバーのような、中立位置に操作することによりアクチュエータへの圧油の供給を停止させる機能を具備する操作手段と、油圧駆動装置運転用の油圧ポンプを駆動するための原動機と、この原動機を始動するための原動機始動機構とを有する油圧駆動装置を備えている。本発明は、この種の油圧作業機において、他人が無断運転するのを防止する機能を付加するとともに、その機能付加に伴って生じる安全上の問題を解消しようとするものであるので、まず、この種の油圧作業機の油圧駆動装置に関する基本的な構成の一例を図5に基づいて説明する。図5は、油圧作業機が備えている一般的な油圧駆動装置に関する基本的な構成の一例を示す油圧回路図である。
【0003】図5において、1は原動機、2はこの原動機1の始動用モータ、3はこの始動用モータ2を駆動するための電流を供給する電路、4はバッテリ、5は電路3に設けた始動用スイッチである。原動機1を始動するための原動機始動機構は、これら始動用モータ2、電路3、バッテリ4、始動用スイッチ5とから構成される。6はアクチュエ−タを駆動するための油圧を発生する斜軸式プランジャポンプ等のアクチュエ−タ駆動用の可変容量形油圧ポンプで、図示されていないサーボピストン等の押しのけ容積可変装置により傾転角を変更して吐出量が制御される。7は走行用油圧モータ、旋回用油圧モータ等のアクチュエ−タ、8はスプールの左右方向の移動により所定ポートを開閉してアクチュエータ7に供給する圧油の流量や流れの方向を制御するコントロールバルブ、9はこのコントロールバルブ8を通じて油圧ポンプ6の圧油をアクチュエータ7へ導くための供給管路である。図においては、アクチュエータ7として油圧モータが示されているが、アクチュエータ7は、ブ−ム用、ア−ム用、バケット用等の油圧シリンダであってもよく、油圧作業機の種類によって定まる。
【0004】10はパイロット圧力発生源としてのパイロットポンプ、11はこのパイロットポンプ10の圧油が導かれ操作レバ−11aの操作によりパイロット圧力を出力するパイロットバルブ、12は操作レバー12aの操作によりパイロットポンプ10の圧油の供給油路を閉止するためのゲートロックバルブ、13はパイロットポンプ10の圧油の供給油路の一部をなす管路である。パイロットポンプ10は、アクチュエータ駆動用の可変容量形油圧ポンプ6とともに油圧駆動装置運転用の油圧ポンプとして原動機1により同時駆動される。パイロットバルブ11は、その操作レバー11aを矢印a方向又はb方向に操作することによりパイロット信号管路14a又はパイロット信号管路14bを通じてコントロールバルブ8の信号受け部8a,8bにパイロット圧力を出力する。また、操作レバー11aの操作量に応じてその信号受け部a,bに出力するパイロット圧力を調整でき、所望の値のパイロット圧力を出力することができるようになっている。パイロットバルブ11は、このように、操作レバー11aの操作に応じてコントロールバルブ8へパイロット圧力を出力することから、その操作レバー11aの操作方向a,bや操作量を選択すると、コントロールバルブ8は、その選択に応じて、スプールを左右所定の方向に移動するとともに所定のポートを所定の開口量だけ開放し、アクチュエータ7を正逆所望の方向に駆動するとともにアクチュエータ7への供給流量すなわちその駆動速度を所望の値にするように調節する。したがって、図中のコントロールバルブ8は、いわゆる油圧パイロット式方向切換弁である。ゲートロックバルブ12は、ゲートロックレバー12aを中立位置に操作すると、パイロットポンプ10の圧油を管路13へ導くためのポートを閉じタンクポートを開いてパイロットポンプ10の圧油の供給油路を閉止するとともに管路13内の圧油をタンクへ導く。また、ゲートロックレバー12aを非中立位置に操作すると、パイロットポンプ10の圧油を管路13へ導くためのポートを開きタンクポートを閉じてパイロットポンプ10の圧油を管路13を通じてパイロットバルブ11へ導く。このゲートロックレバー12aやパイロットバルブ11の操作レバー11aは、何れも、中立位置に操作することによりアクチュエータ7への圧油の供給を停止させる機能を具備し、オペレータがその作業を中断して運転席から降りる際には、中立位置に切換操作される。
【0005】ところで、最近、この種の油圧作業機においては、盗難やいたずら等を防止するため、施錠、開錠操作により接点が切り換えられ施錠操作により油圧駆動装置の始動を不能にする盗難防止用スイッチと称する無断運転防止用スイッチが開発されている。このようなスイッチを設けた油圧作業機においては、オペレータが作業を中断して運転席から降りる際に、前記のように、ゲートロックレバーやパイロットバルブの操作レバーを中立位置に操作するほか、そのスイッチを施錠操作するようになっている。本発明は、このような施錠機能を有するスイッチを備えた油圧作業機を改良したものであり、その油圧作業機の従来例としては、特開平2ー43422号公報に記載のものを挙げることができる。そこで、この特開平2ー43422号公報に記載の油圧作業機を従来の技術として図6に示し、同図に基づいてその技術内容を説明する。図6は、従来の油圧作業機の油圧駆動装置に関する油圧回路図である。
【0006】図6の油圧回路図は油圧ショベルに関するものであり、同図において、31はアクチュエ−タ駆動用油圧ポンプ、32は油圧ショベルのアクチュエ−タとしてのブーム用油圧シリンダ、33はスプールの左右方向の移動により所定ポートを開閉してブーム用油圧シリンダ32に供給する圧油の流量や流れの方向を制御する図5のコントロールバルブと同様の機能を有する油圧パイロット式方向切換弁、34はパイロットポンプ、35はこのパイロットポンプ34の圧油が導かれ操作レバ−35aの操作によりパイロット圧力を出力する図5のパイロットバルブと同様の機能を有するリモコン弁、36はこのリモコン弁35を内蔵したコントロールボックス、37はソレノイド37aへの通電操作によりパイロットポンプ10の圧油の供給油路を閉止するための電磁弁である。リモコン弁35は、図5のパイロットバルブ11と同様、その操作レバー35aの操作方向を矢印ホ方向又はヘ方向に選択したりその操作量を選択したりすることにより、油圧パイロット式方向切換弁33のパイロット圧受け部33a,33bの一方に適宜の値のパイロット圧力を出力し、ブーム用油圧シリンダ32を正逆所望の方向に駆動するとともに、同シリンダ32への供給流量を調節することができる。このリモコン弁35を内蔵したコントロールボックス36は、オペレータがそのリモコン弁35の操作を快適に行えるように、前転方向から後転方向へと傾けて傾倒角度を所望の角度に調整し、その角度位置にロックできるようになっている。また、その後方側部に後述のリミットスイッチを作動させるための接触子36aが設けられている。電磁弁37は、そのソレノイド37aへの通電操作によりニの中立位置に作動させると、パイロットポンプ34の圧油の供給油路を閉止するとともにその2次側の圧油をタンク38へ導き、通電解除の操作によりハの非中立位置に作動させると、その供給油路を開放をしてパイロットポンプ34の圧油をリモコン弁35へ導く。したがって、電磁弁37は、ソレノイドへの通電操作により操作されるものではあっても、基本的には図5のゲートロックバルブ12と同等の機能をする。
【0007】39はこの電磁弁37を操作するための電源、40はエンジン用キースイッチ、41はバッテリリレー、42は電源39を電磁弁37のソレノイド37aに接続する電路に設けられたりミットスイッチ、43はこのリミットスイッチ42に並列接続され隠し位置に設置された盗難防止用キースイッチである。リミットスイッチ42は、通常は開いているが、前記コントロールボックス36を後転方向に限度まで傾けたとき、その後方側部に設けられている接触子36aが当接することにより、閉作動するようになっている。なお、油圧ショベルのエンジン用キースイッチは、自動車等ものと異なり、生産管理上の理由等により共通のキーを使用できるようにしているため、他人によって開錠操作されやすいものであるとされている。
【0008】従来の油圧作業機は、以上のような構成を備えているので、オペレータは、作業を中断して運転席から降りる際に、エンジン用キースイッチ40を施錠操作するほか、コントロールボックス36を後転方向に限度まで傾けてその位置にロックするとともに、盗難防止用キースイッチ43を施錠操作する。そうすると、リミットスイッチ42が閉作動するとともに、これに並列接続されている盗難防止用キースイッチ43も閉作動する。その結果、電磁弁37のソレノイド37aには、リミットスイッチ42と盗難防止用キースイッチ43の双方を通じて通電し、電磁弁37は中立位置に作動する。なお、この場合、アクチュエータとしてのブーム用シリンダ32の駆動は行われていないので、当然のことながら、操作レバー35aは中立位置に操作された状態にあり、リモコン弁35も中立位置に切り換えられた状態にある。以上のような操作が行われた状態においては、他人が窃盗やいたずら等の目的で、仮に、エンジン用キースイッチ40を開錠操作し、コントロールボックス36やリモコン弁35の操作レバー35aを別の位置に移動させたとしても、盗難防止用キースイッチ43を開錠操作しない限り、電磁弁37は同スイッチ43を通じて通電されていて中立位置にあり、アクチュエータを駆動することはできない。
【0009】一方、前記の作業中断後作業を再開するときには、オペレータは、通常、最初にエンジン用キースイッチ40とともに盗難防止用キースイッチ43を開錠操作し、次いで、コントロールボックス36をロック解除後、運転に快適な所望の角度位置に移動してロックする。その結果、リミットスイッチ42と盗難防止用キースイッチ43の双方が開作動して電磁弁37は非中立位置に作動し、油圧作業機は運転可能な状態になる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】以上述べたような従来の技術は、盗難防止等油圧作業機を他人が無断で運転するのを防止するという点では好ましいものであるが、作業中断後作業を再開するまでの間に、コントロールボックス36とリモコン弁35の操作レバー35aとを他人が勝手に操作して別の位置に移動させた場合には、ブーム用油圧シリンダ32等のアクチュエータが突発的に駆動され、きわめて危険である。すなわち、コントロールボックス36とリモコン弁35の操作レバー35aとがオペレータの知らぬ間に作業中断時と異なる位置に操作されている場合には、その操作によりリミットスイッチ42がすでに開作動しているとともに、リモコン弁35も油圧パイロット式方向切換弁33にパイロット圧力を出力する状態になっているため、オペレータがこれらの操作機構を点検する前の段階であるの盗難防止用キースイッチ43を開錠操作する段階で、その開錠操作と同時にアクチュエータが突発的に駆動され、不測の事故を招く恐れがある。しかしながら、従来の技術においては、このような事態の発生を想定しておらず、このようなことに対する配慮がなされていなかった。
【0011】本発明は、このような現状に鑑み、その従来の技術の有する問題を解消しようとするものであり、他人が無断運転するのを防止する機能を備えつつ、その機能の付加に伴って発生する恐れのある前記のような不測の事故も防止することのできる安全性の高い油圧作業機を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の前記の目的は、「アクチュエータと、このアクチュエータへの圧油の供給を制御するコントロ−ルバルブと、油圧駆動装置運転用の油圧ポンプと、中立位置に操作することによりアクチュエータへの圧油の供給を停止させる機能を具備する操作手段と、油圧駆動装置運転用の油圧ポンプを駆動するための原動機と、この原動機を始動するための原動機始動機構とを有する油圧駆動装置を備えた油圧作業機において、施錠、開錠操作により接点が切り換えられ施錠操作により原動機始動機構を作動不能にする機能を果たす無断運転防止用スイッチと、前記操作手段を中立位置、非中立位置へ操作することにより接点が切り換えられその操作手段の非中立位置への操作により原動機始動機構を作動不能にする機能を果たす中立スイッチとを設け、原動機を始動する場合において、無断運転防止用スイッチを開錠操作し、かつ、前記操作手段を中立位置へ操作したときに限り原動機始動機構を作動可能にするようにしたことを特徴とする」特許請求範囲に記載されているとおりの油圧作業機により達成することができる。
【0013】
【作用】本発明は、このような構成を備えているから、オペレータが作業を中断する際に、「中立位置に操作することによりアクチュエータへの圧油の供給を停止させる機能を具備する操作手段」を中立位置に操作するとともに、無断運転防止用スイッチを施錠操作すると、中立スイッチは原動機始動機構を作動不能にしないものの、無断運転防止用スイッチが原動機始動機構を作動不能にするので、原動機を勝手に駆動することができない状態になる。
【0014】一方、前記の作業中断後作業を再開するときには、オペレータは、まず、原動機始動機構を作動可能にするように無断運転防止用イッチを開錠操作するが、その場合に、前記操作手段が中立位置に操作された作業中断時の状態にあるときには、原動機始動機構が作動して原動機が始動するため、オペレータは、原動機の始動の完了を確認後、前記操作手段を非中立位置に操作しさえすれば、油圧作業機は運転可能な状態になる。また、前記操作手段を他人が勝手に操作して作業中断時とは異なる非中立位置に移動させた状態にあるときには、その操作手段がこのように非中立位置に移動すると、原動機始動機構が作動不能の状態となって原動機1が駆動されることはないため、無断運転防止用スイッチを開錠操作すると同時にアクチュエータが突発的に駆動されるようなことはない。
【0015】
【実施例】以下、本発明の実施例を図1乃至図4に基づいて説明する。図1は、本発明の第1の実施例の油圧作業機の油圧駆動装置に関する油圧回路図、図2は、本発明の第2の実施例の油圧作業機の油圧駆動装置に関する油圧回路図、図3は本発明の第3の実施例の油圧作業機の油圧駆動装置に関する油圧回路図、図4は本発明の第4の実施例の油圧作業機の油圧駆動装置に関する油圧回路図である。図1乃至図4の各図において、図5と同一符号を付けた部分は、同図と同一部分を表すので、これらの部分については、説明の重複を避けるため詳述しない。また、図1乃至図4の各図において、同一符号を付けた部分は、同等の部分を表すので、これらの部分については、各図の一つについてだけ詳述し、他の図については、説明の重複を避けるため詳述しない。
【0016】図1乃至図4から明らかなように、第1の実施例乃至第4の実施例の油圧作業機は、何れも、図5の油圧作業機と同様、アクチュエータ7と、このアクチュエータへの圧油の供給を制御するコントロ−ルバルブ8と、油圧駆動装置運転用の油圧ポンプであるアクチュエ−タ駆動用の油圧ポンプ6やパイロットポンプ10と、中立位置に操作することによりアクチュエータ7への圧油の供給を停止させる機能を具備する操作手段であるゲートロックレバー12aやパイロットバルブ11の操作レバー11aと、アクチュエータ駆動用の油圧ポンプ6やパイロットポンプ10を駆動するための原動機1と、始動用モータ2、電路3、バッテリ4、始動用スイッチ5とから構成された原動機1を始動するための原動機始動機構とを有する油圧駆動装置とを備えていて、べ−スとなる構成については、図5の油圧駆動装置と差異はない。
【0017】そこで、本発明により改良を加えた点に関する実施例の構成を述べると、図1において、15は図6R>6の盗難防止用キースイッチ43と同様に隠し位置に設置された無断運転防止用スイッチとしての盗難防止用スイッチ、16はこの盗難防止用スイッチ15が設けられその閉作動時にバッテリ4からの電流を後記リレー17に送るための電路、17はバッテリ4からの電流を原動機1の始動用モータ2に送るための電路中に常閉接点を設けたリレー、18はゲートロックレバー12aの操作により開閉する中立スイッチ、19はこの中立スイッチ18が設けられその閉作動時にバッテリ4からの電流をリレー17に送る電路である。盗難防止用スイッチ15は、施錠操作したときに閉作動し、中立スイッチ18は、ゲートロックレバー12aを非中立位置に操作したときに閉作動するようになっている。したがって、盗難防止用スイッチが施錠操作されているかゲートロックレバー12aが非中立位置に操作されている限り、電路16又は電路19を通じてリレー17に電流が流れ、その常閉接点が開かれているので、原動機始動機構は作動不能であって原動機1の始動用モータ2を駆動することはできない。
【0018】本実施例の油圧作業機は、以上のような構成を備えているので、オペレータは、作業を中断して運転席から降りる際に、ゲートロックレバー12aを中立位置に操作するとともに、盗難防止用スイッチ15を施錠操作する。このような操作が行われた状態においては、中立スイッチ18が開作動しているとともに、盗難防止用スイッチ15は閉作動している。その結果、リレー17は、盗難防止用スイッチ15が設けられた電路16を通じて通電してその常閉接点を開き、原動機1の始動用モータ2を駆動できない状態になる。
【0019】一方、前記の作業中断後作業を再開するときには、オペレータは、最初に盗難防止用イッチ15を開錠操作するが、その場合に、ゲートロックレバー12aが中立位置に操作され中立スイッチ18が開かれた作業中断時の状態にある限り、盗難防止用スイッチ15が設けられた電路16及び中立スイッチ18が設けられた電路19の何れも遮断されるため、リレー17は、通電が解除されて常閉接点が閉作動する。図1には、このように、盗難防止用スイッチ15が開錠操作され中立スイッチ18が開かれていて、リレー17の常閉接点が閉作動いる状態を図示している。このような状態になると、原動機始動機構が作動して始動用モータ2が駆動され、原動機1が始動する。オペレータは、原動機1の始動が完了したことを確認するとともに、パイロットポンプ11の操作レバー11aが中立位置にあることを確認し、その確認後、パイロットバルブ11によりコントロールバルブ8を操作できるようにするために、ゲートロックレバー12aを非中立位置に操作する。かくて、パイロットポンプ10の圧油が管路13を通じてパイロットバルブ11へ導かれることとなり、油圧作業機は運転可能な状態になる。その間、前記のようにゲートロックレバー12aを非中立位置に操作するため、中立スイッチ18が閉作動して始動モータは停止するが、この時点では、原動機1の始動がすでに完了しているので、油圧作業機の運転に支障が生じるようなことはない。
【0020】他方、作業中断後作業を再開するまでの間に、ゲートロックレバー12aとパイロットバルブ11の操作レバー11aとを他人が勝手に操作して作業中断時とは異なる非中立位置に移動させた場合でも、ゲートロックレバー12aがこのように非中立位置に移動すると、中立スイッチ18が閉作動して電路19を通じてリレー17に通電し、その常閉接点が開位置に切り換えられるので、原動機始動機構が作動不能の状態になり、原動機1が駆動されることはない。したがって、従来の技術におけるような、盗難防止用スイッチ15を開錠操作すると同時にアクチュエータ7が突発的に駆動されて不測の事故を招く危惧は全くない。
【0021】次に、図2に基づいて、本発明の第2の実施例について説明すると、同図において、20はリレースイッチ、21はこのリレースイッチ20を開閉するための開閉信号を出力するリミット回路、22はこのリミット回路21にこのような開閉信号を出力させるための暗号入力手段である。暗号入力手段22は、テンキーにより所定の暗号番号が入力されると、リミット回路21からリレースイッチ20へ開閉信号を出力させることができるようになっている。本実施例の油圧作業機は、無断運転防止用スイッチがこれらリレースイッチ20、リミット回路21及び暗号入力手段22から構成されており、第1の実施例のものと比べ、隠し位置に設置された盗難防止用スイッチを、このような暗号入力により開閉するタイプのスイッチに変えた点で相違するだけである。したがって、その作用も、第1の実施例のものと実質上差異はない。なお、図2には、図1と同様、この無断運転防止用スイッチが開錠操作され中立スイッチ18が開かれていて、リレー17の常閉接点が閉作動いる状態を図示している。
【0022】図3に基づいて、本発明の第3の実施例について説明すると、同図において、23はパイロットバルブ11の操作レバー11aの操作により開閉作動する中立スイッチで、操作レバー11aの操作方向両側に一個ずつ設けられている。したがって、レバー11aを非中立位置に操作したときには、何れの方向に操作したときでも中立スイッチ23の一方が閉作動するようになっている。本実施例の油圧作業機は、第1の実施例のものと比べ、中立スイッチを、このようなパイロットバルブ11の操作レバー11aの操作により開閉するものに変えた点で相違するだけである。なお、図3には、図1と同様、盗難防止用スイッチ15が開錠操作され左右双方の中立スイッチ23が開かれていて、リレー17の常閉接点が閉作動いる状態を図示している。
【0023】第3の実施例は、このような構成を備えているから、作業中断後作業を再開するまでの間に、ゲートロックレバー12aとパイロットバルブ11の操作レバー11aとを他人が勝手に操作して作業中断時とは異なる非中立位置に移動させた場合でも、操作レバー11aがこのように非中立位置に移動すると、中立スイッチ23が閉作動し、第1の実施例と同様にして原動機始動機構を作動不能にするので、盗難防止用スイッチ15を開錠操作すると同時にアクチュエータ7が突発的に駆動されるようなことはない。しかも、アクチュエータ7を駆動するための究極の操作手段であるパイロットポンプ11の操作レバー11aを中立位置にセットしない限り、油圧作業機を運転可能な状態にすることができないようになっているから、操作ミスが生じ得る余地は全くなく、安全性を高めるという点では最良のものである。
【0024】図4に基づいて、本発明の第4の実施例について説明すると、同図において、24は電磁コイル、24aはこの電磁コイル24への通電により突出するように作動して常閉の始動スイッチ5を開作動させる作動片であり、通常時は引っ込められるように構成されている。本実施例の油圧作業機は、第1の実施例のものと比べ、同実施例中のリレー17をこのようものに変えた点を除けば、構成に実質上差異はない。したがって、その作用も、第1の実施例のものと実質上差異はない。なお、図4には、盗難防止用スイッチ15が施錠操作され中立スイッチ18が開かれていて、常閉の始動スイッチ5が開作動いる状態、換言すると、作業中断時の状態を図示している。
【0025】以上の実施例から明らかなように、無断運転防止用スイッチは、施錠、開錠操作により接点が切り換えられ施錠操作により原動機始動機構を作動不能にする機能を果たすものであればよい。また、中立スイッチを作動させる操作手段は、直接的であるか間接的であるかを問わず、中立位置に操作することによりアクチュエータへの圧油の供給を停止させる機能を具備するものであればよく、一方、中立スイッチは、操作手段を中立位置、非中立位置へ操作することにより接点が切り換えられその操作手段の非中立位置への操作により原動機始動機構を作動不能にする機能を果たすものであればよい。以上の実施例では、本発明を理解しやすくするため、アクチュエータやコントロールバルブ等を一つ設けた油圧作業機の例しか示されていないが、本発明は、これらを複数設けた油圧作業機にも当然実施できる。
【0026】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明は特許請求範囲に記載の構成、特に、「施錠、開錠操作により接点が切り換えられ施錠操作により原動機始動機構を作動不能にする機能を果たす無断運転防止用スイッチと、前記操作手段を中立位置、非中立位置へ操作することにより接点が切り換えられその操作手段の非中立位置への操作により原動機始動機構を作動不能にする機能を果たす中立スイッチとを設け」るようにした構成を備えているので、他人が無断運転するのを防止する機能を備えつつ、その機能の付加に伴って発生する恐れのある不測の事故も防止することのできる安全性の高い油圧作業機を提供するこができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例の油圧作業機の油圧駆動装置に関する油圧回路図である。
【図2】本発明の第2の実施例の油圧作業機の油圧駆動装置に関する油圧回路図である。
【図3】本発明の第3の実施例の油圧作業機の油圧駆動装置に関する油圧回路図である。
【図4】本発明の第4の実施例の油圧作業機の油圧駆動装置に関する油圧回路図である。
【図5】油圧作業機が備えている一般的な油圧駆動装置に関する基本的な構成の一例を示す油圧回路図である。
【図6】従来の油圧作業機の油圧駆動装置に関する油圧回路図である。
【符号の説明】
1 原動機
2 始動用モータ
4 バッテリ
6 アクチュエ−タ駆動用の可変容量形油圧ポンプ
7 アクチュエータ
8 コントロールバルブ
10 パイロットポンプ
11 パイロットバルブ
11a 操作レバー
12 ゲートロックバルブ
12a ゲートロックレバー
15 盗難防止用スイッチ
18 中立スイッチ
20 リレースイッチ
21 リミット回路
22 暗号入力手段
23 中立スイッチ
24 電磁コイル
24a 作動片
12

【特許請求の範囲】
【請求項1】 アクチュエータと、このアクチュエータへの圧油の供給を制御するコントロ−ルバルブと、油圧駆動装置運転用の油圧ポンプと、中立位置に操作することによりアクチュエータへの圧油の供給を停止させる機能を具備する操作手段と、油圧駆動装置運転用の油圧ポンプを駆動するための原動機と、この原動機を始動するための原動機始動機構とを有する油圧駆動装置を備えた油圧作業機において、施錠、開錠操作により接点が切り換えられ施錠操作により原動機始動機構を作動不能にする機能を果たす無断運転防止用スイッチと、前記操作手段を中立位置、非中立位置へ操作することにより接点が切り換えられその操作手段の非中立位置への操作により原動機始動機構を作動不能にする機能を果たす中立スイッチとを設け、原動機を始動する場合において、無断運転防止用スイッチを開錠操作し、かつ、前記操作手段を中立位置へ操作したときに限り原動機始動機構を作動可能にするようにしたことを特徴とする油圧作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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