説明

油圧回路の保守方法

【課題】給排管を複数の区間回路に区切ることによって給排管に生じた異常を短時間で検査することができる油圧回路の保守方法を提供する。
【解決手段】連続した複数の区間回路の最下流側の止弁を遮断して構成する破損検査区域構成工程と、前記破損検査区域構成程の破損検査区域を加圧した状態でその上流側の止弁を遮断して圧力を保持して検査可能とする加圧力保持工程と前記加圧力保持工程で圧力を保持した破損検査区域内の圧力が一定時間内に降下する度合いを測定して破損の有無を検出する破損検出工程と、より構成した破損部分検出工程よりなる油圧回路の保守方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水門、建設機械、産業機械などを駆動する油圧シリンダ、油圧モータ等の油圧駆動装置(以下、油圧シリンダと記載する場合もある。)の油圧回路、この油圧回路に用いられる止弁、および油圧回路の保守方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、上記の油圧シリンダに接続される給排管の途中に設けられた止弁を開閉して、シリンダの駆動や給排管およびシリンダ内の空気抜きや作動油の充填をする油圧回路が公知である。
【0003】
例えば、特許文献1に開示された流体圧回路は、油圧シリンダに一対の作動油の給排用のポートを設け、これらを一対のポートのうちの一方のポートと油圧ポンプの吐出口とを第1ポペット弁を介して接続するとともに、他方のポートとドレン回路とを第2ポペット弁を介して接続している。このような構成により、第1ポペット弁および第2ポペット弁を開閉して油圧シリンダの駆動や給排管およびシリンダ内の空気抜きや作動油の充填を実施する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−194009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された流体圧回路構造は、地震などの災害や老朽化などによって給排管に破損の疑いがあった場合でも、給排管の端から端まで全てを目視検査する必要があった。特に水門の駆動装置など大規模な用途に用いられる場合は、給排管も長距離に亘り、場合によっては埋設配管となる事もあるため、給排管全体を検査すると非常に手間や時間が掛かってしまう問題があった。また、給排管およびシリンダ内の空気抜きや作動油の充填をする際は、長い給排管に作動油を充填させているため、予め回路内に滞留していた空気が油に混入し、シリンダなどの作動に不具合を招く。また、油タンクに帰還した作動油に混入した空気によってキャビテーションの発生を防止するため、帰還させた作動油から空気を抜くことが必要となり、その分手間や時間が掛かってしまう問題があった。
【0006】
本発明は、上記の問題を鑑みてされたものであり、給排管を複数の区間回路に区切ることによって、給排管に生じた異常の検査、および給排管の空気抜きや作動油の充填などの保守を手間無く短時間ですることができる油圧回路と、それに用いられる止弁と、油圧回路の保守方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
また、本発明の油圧回路の保守方法は、水門、産業機械などの被作動装置を駆動する油圧シリンダと、前記油圧シリンダを駆動するため作動油を吐出する油圧源と、前記油圧源が接続し前記油圧シリンダの作動油が帰還する油タンクと、前記油圧シリンダと前記油圧源および油タンクとの間に設けてあり油圧シリンダへの作動油の給排方向を制御する方向切替弁と、前記油圧シリンダと前記方向切替弁との間に設けてあり方向切替弁の操作により前記油圧源が吐出する作動油を油圧シリンダに供給し油圧シリンダからの作動油を前記油タンクに帰還させる給排管と、前記給排管に開閉機能を備えた止弁を複数個設けてありこの止弁により前記給排管に複数の区間回路を形成すると共に前記区間回路に連通する多目的ポートを設けた構成の油圧回路において、連続した複数の前記区間回路の最下流側の止弁を遮断して破損検査区域を構成する破損検査区域構成工程と、前記破損検査区域構成程で構成した破損検査区域を加圧した状態でその上流側の止弁を遮断して圧力を保持して検査可能とする加圧力保持工程と前記加圧力保持工程で圧力を保持した破損検査区域内の圧力が一定時間内に降下する度合いを測定して破損の有無を検出する破損検出工程と、より構成した破損部分検出工程を備えたことを特徴とする。
【0008】
上記の方法によれば、給排管に破損検査区域構成工程で破損検査区域を構成してこの破損検査区域を加圧した状態に保持して検査可能とする圧力保持工程と、この圧力保持工程で圧力が保持された破損検査区域の圧力の一定定時間内の圧力降下を測定する給排管破損部分検出工程を有するので、給排管の任意の場所に破損検査区域を構成して破損を認識でき、給排管の破損箇所を重点的に検査することが可能であり、破損箇所を早く特定できるので破損に対する修理や対応を早くすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の油圧回路によると、油圧シリンダと油圧源および油タンクとを接続する給排管を複数の止弁によって区切り区間回路を形成することができる。そして、区間回路ごとに異常を検査、作動油の供給、修理を行うことが出来るので、例えば地震などの災害や老朽化などによって給排管に故障の疑いがあった場合でも、区間回路単位で測定できるので破損箇所が特定し易い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る油圧回路を示す模式図である。
【図2(a)】本発明の実施形態に係る止弁の構造を示す図である。
【図2(b)】本発明の実施形態に係る止弁における多目的ポートを構成する自封機能を有する継手の構造を示す図である。
【図3(a)】空気抜き・油充填時における本発明の実施形態に係る油圧回路を示す模式図である。
【図3(b)】空気抜き・油充填時における本発明の実施形態に係る油圧回路を示す模式図である。
【図4(a)】空気抜き・油充填時における本発明の実施形態に係る油圧回路を示す模式図である。
【図4(b)】空気抜き・油充填時における本発明の実施形態に係る油圧回路を示す模式図である。
【図5(a)】空気抜き・油充填時における本発明の実施形態に係る油圧回路を示す模式図である。
【図5(b)】空気抜き・油充填時における本発明の実施形態に係る油圧回路を示す模式図である。
【図6(a)】空気抜き・油充填時における本発明の実施形態に係る油圧回路を示す模式図である。
【図6(b)】空気抜き・油充填時における本発明の実施形態に係る油圧回路を示す模式図である。
【図7(a)】異常対応・検査時における本発明の実施形態に係る油圧回路を示す模式図である。
【図7(b)】異常対応・検査時における本発明の実施形態に係る油圧回路を示す模式図である。
【図8(a)】異常対応・検査時における本発明の実施形態に係る油圧回路を示す模式図である。
【図8(b)】異常対応・検査時における本発明の実施形態に係る油圧回路を示す模式図である。
【図9(a)】異常対応・検査時における本発明の実施形態に係る油圧回路を示す模式図である。
【図9(b)】異常対応・検査時における本発明の実施形態に係る油圧回路を示す模式図である。
【図10(a)】本発明の別の実施形態に係る止弁の構造を示す図である。
【図10(b)】本発明の別の実施形態に係る止弁の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。尚、上流側とは作動油が供給される側であり、下流側は作動油が帰還する側とする。
【0012】
図1および図2に示すように、本実施形態に係る油圧回路1は、水門、産業機械の作動装置を駆動する油圧駆動装置50(以下、油圧シリンダ50と記載する。)と、油圧シリンダ50を作動させる作動油を吐出する油圧源34(以下ポンプ34と記載する。)と、このポンプ34の吐出側に接続した方向切替弁37と油圧シリンダ50を接続する給排管35と、油圧シリンダ50に接続して油圧シリンダ50の作動油を方向切替弁37を経て油タンク30に帰還させる給排管36と、を備え前記方向切替弁37は、油圧シリンダ50への作動油の給排方向を操作してその作動方向を制御する。また、前記給排管35と給排管36、に設けた止弁10は、給排管35、36を複数の区間に分割して区間回路を構成する。尚、この区間回路は、給排管35側の区間回路を符号21にアルファベッドを添え字して示し、給排管36側の区間回路を符号22にアルファベッドを添え字して示す。
【0013】
また、本実施形態に係る油圧回路1の給排管35、36の区間回路21c22cを構成するホース35a、36aは、給排管35、36が地震などでずれたときそのずれを吸収して給排管35、36の破損を回避するために設けてある。前記給排管35に設けたホース35aの両端には止弁10cと止弁10dが設けてあり、この止弁10cと止弁10dを閉鎖することでホース35aが破損あるいは老朽化による交換を可能にしている。なお、前記給排管36に設けたホース36aも同様であるから説明を省き必要に応じて説明する。
【0014】
また、『保守』とは、地震などの災害時において油圧回路1の災害や老朽化による給排管35、36の故障など、油圧回路1に生じた異常を検査する異常検査と工事終了後の作動油を油圧回路1内に充満させる、あるいは汚れた油を入れ替えたりする給排管の空気抜き・作動油の充填とを少なくとも含んでおり、給排管、ポンプ34、油圧シリンダ50を正常に作動させるための全てを含むものである。
【0015】
供給管35、36は、油タンク30の作動油を吸引し加圧して作動油として吐出するポンプ34と油タンク30に接続した方向切替弁37に接続しており、この方向切替弁37がポジション37aに操作されると、給排管35、36が作動油の供給回路と排出回路となり、ポジション37cに操作されると給排管35、36が作動油の排出回路と供給回路となる。さらに、ポジション37bに操作されると給排管35、36を閉鎖して油圧シリンダ50を停止位置に保持する。
【0016】
また、給排管35に設けた複数の止弁10で区画される区間回路21は、止弁10a〜10eで構成した区間回路21a〜21dと、止弁10eと多機能弁60で構成した区間回路21eとを備えている。同様に給排管36に複数の止弁10で区画した区間回路22は、止弁10k〜10fで構成した区間回路22a〜22dと、止弁10fと多機能弁60で構成した区間回路22eを備えている。なお、区間回路21c、22cは、説明の都合上ホース35a、36aと記載する場合もある。(なお、特定の区間回路を表示する場合は、区間回路21と22にアルファベッドを添え字して示すが、そうでない場合、区間回路21、22として説明する場合がある。)
【0017】
止弁10は、図2(a)に示すように、給排管35、36が接続され弁本体15内の弁
座17に当接する弁体19を備えており、弁座17に弁体19を当接させることでポート18bとポート18bの間を遮断する。この弁体19がポート18bとポート18bの間を遮断すると給排管35、36が遮断されるので、給排管35、36に任意の区間回路21、22を構成する。弁体19がポート18aとポート18bを連通すると給排管35、36が給排管を構成する。(尚、止弁10の連通を「開」遮断を「閉」と記載する場合もあるまた、止弁10は左右対称形であるから左右を特定する場合等では同一数字符号にアルファベッドを添えて表す場合がある。)
【0018】
また、図2(a)に示す止弁10の弁本体15の左右方向における一方の端部には、給排管35(または給排管36)が接続するポート18aとポート18bが形成されている。そして、弁本体15の中心部には、弁座17を備えポート18aとポート18bとを連通する流路16が設けてある。この流路16の弁座17には、流路16と同一軸線上であり、把持部11が固定され、この把持部11で回転させると上下動する回転軸12により上下する弁体19が当接可能に設けてあり、回転軸12を回転させて弁体19を弁座17に当接させるとポート18aとポート18bの間を遮断し、回転軸12により弁体19が弁座17から離されると、ポート18aとポート18bの間が連通する機能を有し、ポート18a,18bに連通する多目的ポート13a,13bを備えている。
【0019】
前記多目的ポート13aは、弁本体15のポート18aの分岐流路14aに自封機能を有する継手40aを取り付けた構成である。この継手40aの自封機能は、図2(b)に示す接続金具70の接続金具本体71が接続された時のみ開封する構成である。この多目的ポート13aに接続金具本体71が接続されない状態では、キャップ55aにより保護されている。同様に多目的ポート13bは、弁本体15のポート18bの分岐流路14bに自封機能を有する継手40bを取り付けた構成である。この継手40bの自封機能は、接続金具70の接続金具本体71が接続されたときのみ開封する構成である。この多目的ポート13aに接続金具本体71が接続されない状態ではキャップ55bにより保護されている。尚、継手40a、40bおよびキャップ55は、図2(b)に示すような同一構成であるから、継手およびキャップを特定する場合は、継手40及びキャップ55の数字にアルファベッドを添え字して示すが、そうでない場合、数字のみにて説明する場合がある。
【0020】
図2(b)に示す自封機能を有する継手40は、その本体43の下端に設けたネジ44で弁本体15の分岐流路14に取り付けられており、その内部に設けた流路49にバネ41で押し圧される球弁42(逆止弁であり自封機能を有する。)で分岐流路14に連通する流路49を閉鎖する。この継手40の内部に設けてあり、分岐流路14に接続する流路49は、上端が開放され接続金具70のロッド72が挿入される通路48を有している。継手40は、接続金具70が取付けられない状況では球弁42が流路49を封鎖している。したがって、止弁10が給排管35、または給排管36に設置されていても流路49を閉鎖したままであり油を放出しない。上記した自封機能の役割を果たす球弁42は、特に球弁42である必要性は無く例えば締切弁でも良い。(尚、継手40、接続金具70及びキャップ55は、左右の識別が必要な場合は符号にアルファベットを添えて表示する場合がある。)
【0021】
前記通路48の外周には、嵌合部47を設けてありこの嵌合部47の下方に連接してキャップ55または接続金具70を取り付けるためのネジ53を設けてあり、図2(a)はキャップ55が前記ネジ53に装着された状態である。
【0022】
図2(b)に示す接続金具70は、接続金具本体71とこの接続金具本体71に固定されたホース75が固定される端体78を有しており、このホース75の通路74は、接続金具本体71に設けてあるロッド72の内部に設けてありその先端の山形凹部77に開放した通路76に接続しており、ロッド72の先端が球弁42を押し圧して開放した時流路49に連通する構成である。尚、接続金具本体71と端体78は、回転継手79により接続してあるので接続金具本体71を回転してもホース75が捩れない様に構成してある。
【0023】
接続金具本体71の内孔73は、本体43のネジ53に螺合する内ネジ81が設けてあると共に前記継手40の通路48に嵌合するロッド72が突設してあり、この内部孔73を本体43のネジ53にねじ込み接続すると球弁42が開かれ分岐流路14がホース75に接続される構成である。
【0024】
上述した接続金具本体71は、そのホース75の先端に圧力計、真空ポンプ、接続金具本体を接続して他の止弁10の継手40の多目的ポート13に接続して区間回路の迂回回路にする等、その目的に対応した機器を接続することで多彩な用途に使用することが出来る。尚、図2(a)において、多目的ポート13a、13bをポート18a、18bに連通するように弁体19の両側に設けた実施例を示したが、必要に応じて多目的ポート13a、13bのいずれか片方でも良い。
【0025】
図1に示してあり、油タンク30にその吸引側が接続するポンプ34は、2つの歯車が噛み合うことによって回転し、油タンク30に収容された油を吸入し、方向切替弁37によって給排管35又は36へ吐出する。なお、ポンプ34は、歯車式ポンプに限らず、他種類のポンプを用いていてもよい。
【0026】
水門、産業機械の被駆動装置を駆動する油圧シリンダ50は、シリンダ本体52内を長手方向に摺動自在に勘合されたピストンとこのビストンに固定してあるロッド51とで構成してあり、前記ピストンはシリンダ本体52内にヘッド側圧力室とロッド側圧力室を構成する。そして、このヘッド側圧力室に作動油が供給されるとロッド51は矢印Aの方向に作動し、ヘッド側圧力室に作動油が供給されると矢印Bの方向に作動する。尚、矢印A方向を伸張と記載し、矢印B方向を縮小と記載する場合もある。
【0027】
また、油圧シリンダ50に設けてある多機能弁60は、給排管35、36と油圧シリンダ50との間を開閉する止弁62・63と、給排管35、36との間をバイパスする回路に向けた止弁61とを有する構成であり、止弁62、63の双方を遮断すると、油圧シリンダ50をその位置に保持し、止弁62,63の一方を閉鎖して他方から作動油の圧力を作用させると遮断した止弁の方の漏れを検出できる。また止弁61を連通することでバイパス回路を構成して給排管35、36のフラッシングを行うことが出来る機能を有する。これらの機能は、出願人が保有する特許第3696850号に詳細に記載してあるので詳細説明は省く。尚、本願発明の多機能弁60の止弁62、63および止弁61は、止弁10と同様の構成であり開閉機能を有する。
【0028】
図1に示すように、油タンク30とポンプ34の吐出側および給排管35,36が接続する方向切替弁37は、3つのポジションを備えており、ポジション37bに操作すると給排管35をポンプ34の吐出側に接続し、給排管36を油タンク30に接続するので油圧シリンダ50が矢印A方向に作動する。また、ポジション37cに操作すると給排管36をポンプ34の吐出側に接続し、給排管35を油タンク30に接続するので油圧シリンダ50がB方向に作動する。さらに、ポジション37bに操作すると給排管35とポンプ34の吐出側および給排管36と油タンク30の間が閉鎖されるので、油圧シリンダ50が停止位置を保つ3つのポジションに操作することで油圧シリンダ50の作動を制御する。すなわち、ポジション37bに操作すると油圧シリンダ50のロッド51がA方向に作動し、ポジション37cに操作すると油圧シリンダ50のロッド51がB方向に作動し、ポジション37aに操作すると油圧シリンダ50のロッド51その位置で停止する。
【0029】
次に、本実施形態に係る油圧回路1の保守方法について説明する。
【0030】
工事が終了した状態の油圧回路では、油圧回路1の給排管35、36に作動油が供給されていない状態であり、この状態で給排管の空気を排除しながら作動油を充填する順次作動油充填方法を有する油圧回路の保守方法について述べる。
【0031】
この順次作動油充填方法は図3(a)に示すように、まず前記複数の区間回路21a〜22a(尚、区間回路は、区間回路21a〜21eと区間回路22a〜22eを表す場合に短縮して区間回路21a〜22aと記載する場合もある。)の内区間回路の最上流側止弁10aと最下流側の止弁10kを閉じ他の全ての止弁10を開放して区間回路21a〜22aを作動油充填区域として構成する(作動油充填区域構成工程)。次に、方向切替弁37をポジション37bに操作して前記作動油充填区域構成工程で構成された作動油充填区域の上流側止弁10aの上流側にポンプ34の吐出作動油を供給した状態に保持し前記作動油充填区画に作動油を充填可能とする(充填作動油保持工程)。次に、前記区間回路21a〜22aで構成された作動油充填区域を最下流側の区間回路の止弁10kの多目的ポート13bに接続した真空ポンプ20により前記作動油充填区域の空気を吸引して作動油充填区域を真空に保持する充填準備が行われる(真空保持工程)。尚、前記した充填準備では前記の工程において「充填作動油保持工程」と「真空保持工程」とは入れ替わっても良い。また、「充填作動油保持工程」と「真空保持工程」は充填が終了するまで持続されるものである。
【0032】
上述したように充填準備が完了した状態において、作動油充填区域の最上流側の作動油充填区間である区間回路21aへの作動油の充填についてのべる。図3(b)に示すように、区間回路21aの下流側の止弁10b閉じて充填区間を構成した後、給排管35の止弁10aを開くと、止弁10aの上流側に到達していた作動油が供給されて、区間回路21aで構成される充填区間への作動油の充填が、完了する。
【0033】
次に図4(a)に示すように次の作動油充填区間である区間回路21bへの作動油の充填する場合について述べる。止弁10bの上流側で充填作動油が保持されるので、区間回路21bの下流側の止弁10cを閉じた後その上流側の止弁10bを開くと区間回路21bへの充填が終了する。
【0034】
図4(b)に示すように次の作動油充填区間である区間回路21cへの作動油の充填する場合について述べる、前記の充填により止弁10cの上流側で充填作動油が保持されるので、区間回路21cの下流側の止弁10dを閉じ区間回路21cを充填区間とした後止弁10cを開くと区間回路21cに作動油が充填される。
【0035】
図5(a)に示すように次の作動油充填区間である区間回路21dへの作動油の充填する場合ついて述べる、前記の充填により止弁10dの上流側で充填作動油が保持されるので、区間回路21dの下流側の止弁10eを閉じ区間回路21dを充填区間とした後止弁10dを開くと区間回路21dに作動油が充填される。
【0036】
図5(b)に示すよう次の作動油充填区間である区間回路21eと油圧シリンダ50のヘッド側油圧室へ作動油の充填する場合ついて述べる。前記の充填により止弁10eの上流側で充填作動油が保持されるので、区間回路21eの下流側に設けてある多機能弁60の止弁61を閉じることで多機能弁60のバイパス回路を閉じ、多機能弁60の止弁62を開き区間回路21dと油圧シリンダ50のヘッド側圧力室を充填区間とした後、止弁10eを開くと区間回路21eと油圧シリンダ50のヘッド側圧力室に作動油が充填される。
【0037】
図6(a)に示すように次の作動油充填区間である区間回路22eとロッド側油圧室へ作動油の充填する場合ついて述べる。前記の充填により多機能弁60のバイパス回路の止弁61の上流側で充填作動油が保持されるので、区間回路22eの下流側の止弁10fを閉じ多機能弁60の止弁63を開き油圧シリンダ50のロッド側圧力室を充填区間とした後止弁10eを開くと区間回路21eと油圧シリンダ50のロッド側圧力室に作動油が充填される。
【0038】
上述したように、作動油を充填した区間回路の次の区間回路の下流側の止弁を閉じた後作動油を充填した区間回路の下流側の止弁を開くことで区間回路に順次作動油を充填して、図6(b)に示すように作動油充填区間を区間回路21a〜22aとして構成して順次作動油を充填して区間回路22aの充填を終了した後最下流の止弁10kを連通させると、区間回路22a内の作動油が方向切替弁37を介して油タンク30に帰還することで図60(b)に示すように油圧回路1への作動油の充填が完了する。
【0039】
上記の油圧回路1への作動油充填の保守方法によれば、給排管35、36内を真空ポン
プ20で常に真空に保ちながら、作動油を充填させる区間回路を複数個の止弁によって順
次進捗していくことにより、作動油を充填する際に作動油への空気の混入を非常に少なく
することができる。
【0040】
尚、上記の説明では、区間回路をその上流側から順次作動油を充填する方法を説明したが、区間回路を複数個まとめて充填するようにしてもよい。すなわち、図2(a)に示すように比較的単純な通路である区間回路21a〜22aを作動油充填区域として構成した後、区間回路21a〜21dを作動油充填区間として構成し、区間回路21aの上流側の止弁10aを開くと区間回路21a〜21dに作動油を供給することが出来る。
【0041】
次に破損部分検出方法を有する保安回路につい述べる。
図7(a)に示すように、油圧回路1における供給管35に故障部が発生した場合の破損部分検出方法について説明する。このような故障部は、例えば地震などの災害や老朽化などによって生じる。この場合、供給管35を流れる作動油は、この故障部から外部に流出し、油圧シリンダ50の動作不良(出力不足、作動停止、停止位置保持不良等)が発生する。そのため、どの部分が故障したかを早急に把握し、修理することが必要不可欠となってくる。そこで、本実施形態に係る保守方法の場合、先ず図7(b)に示すように、全ての止弁10を遮断し、破損検査区域を構成する。次に方向切替弁37をポジション37bに操作して区間回路21aの上流側(止弁10aの上流側)にポンプ34の吐出する作動油を供給する。
【0042】
次に、図8(a)に示すように、区間回路21aの上流側の止弁10aのみを連通する破損検査区域構成工程の区間回路21aを破損検査区域とし、方向切替弁37をポジション37bに操作することでポンプ34が吐出する作動油を区間回路21aに作用させる圧力保持工程で圧力を保持する。次に止弁10aを遮断の直後から区間回路21aの圧力を止弁10aの多目的ポート13bに設けた圧力計45で、一定時間経過の圧力降下が一定の降下値を超えるか否かを測定する破損検出工程で破損の有無を検出する。
【0043】
次に、図8(b)に示すように、区間回路21a、21bの上流側の止弁10a、10bを連通する破損検査区域構成工程で区間回路21a、21bを破損検査区域とし、方向切替弁37をポジション37bに操作することでポンプ34が吐出する作動油を区間回路21a、21bに作用させる圧力保持工程で圧力を保持する。次に止弁10aを遮断の直後から区間回路21aの圧力を止弁10aの多目的ポート13bに設けた圧力計45で、一定時間経過の圧力降下が一定の降下値を超えるか否かを測定する破損検出工程で破損の有無を検出する。なお、圧力計45は、止弁10cの多目的ポート13aに設置した圧力計45に設置しても良い。
【0044】
次に、図9(a)に示すように、区間回路21a〜21cの上流側の止弁10a〜10cを連通する破損検査区域構成工程で区間回路21a〜21cを破損検査区域とし、方向切替弁37をポジション37bに操作することでポンプ34が吐出する作動油を区間回路21a〜21cに作用させる圧力保持工程で圧力を保持する。次に止弁10aを遮断の直後から区間回路21aの圧力を止弁10aの多目的ポート13bに設けた圧力計45で、一定時間経過の圧力降下が一定の降下値を超えるか否かを測定する破損検出工程で破損の有無を検出する。なお、圧力計45は、止弁10cの多目的ポート13aに設置した圧力計45に設置しても良い。
【0045】
次に、図9(b)に示すように、区間回路21a〜21dの上流側の止弁10a〜10dを連通する破損検査区域構成工程で区間回路21a〜21dを破損検査区域とし、方向切替弁37をポジション37bに操作することでポンプ34の吐出する作動油を区間回路21a〜21dに作用させる圧力保持工程で圧力を保持する。次に止弁10aを遮断の直後から区間回路21aの圧力を止弁10aの多目的ポート13bに設けた圧力計45で、一定時間経過の圧力降下が一定の降下値を超えるか否かを測定する破損検出工程で破損の有無を検出する。この破損検出工程で区間回路21a〜21dの圧力降下が一定の値以上になり破損しているとされた場合、上述したように区間回路21a〜21cが破損していないので、破損箇所80が区間回路21に存在することが判明する。
【0046】
上記の破損部分検出工程によれば、方向切替弁37と油圧シリンダ50とを接続する給排管35、36を複数の止弁10によって区間回路にする。そして、複数の止弁10によってつくられた区間ごとにポンプ34が吐出する作動油を順供給し封入して止弁10の多目的ポート13aに設けられた圧力計45によって給排管35、36内の圧力変化を順次計測していくことにより、各区間に生じた異常を検査することができる。つまり、圧力計45によって計測され圧力降下が一定の範囲内の場合は、その区間内には異常がなく、一方、圧力計45によって計測され圧力降下が一定の範囲より大きい場合は、その区間内に異常が生じていることが分かる。このように、短い区間ごとに異常を検査することができるため、例えば地震などの災害や老朽化などによって給排管35、36に破損長い給排管全体を検査する必要がなく、その分の手間や時間を省くことができる。
【0047】
以上区間回路を順次破損を測定する方法の実施例を記載したが、破損が発生している可能性が大きいこと等が想定できる場合に特定の区間回路を優先して測定したい場合、例えば、区間回路21dの検査を優先する場合は、その最下流の止弁10eを遮断する破損検査区域構成工程により、区間回路21a〜21d破損検査区域にして、方向切替弁37をポジション37bに操作することでポンプ34が吐出する作動油を区間回路21a〜21dに充填する圧力保持工程で圧力を保持する。次に止弁10dを遮断の直後から区間回路21dの圧力を止弁10eの多目的ポート13aに設けた圧力計45で、一定時間経過の圧力降下が一定の降下値を超えるか否かを測定する破損検出工程で破損の有無を検出する、この方法によると区間回路21dを優先して検査することが出来る。
【0048】
上述の説明の他に、給排管35、36の任意の連続した区間回路(例えば、区間回路21cと区間回路21d)の上流側の止弁10cと下流側の止弁10eを遮断する破損検査区域構成工程で、区間回路21dと区間回路21cを破損検査区域とし、前記止弁10cの多目的ポート13bに過般式油圧源などのポンプ34とは別の油圧源から圧力を作用させる圧力保持工程により検査可能にし、検査可能となった前記前記破損検査区域下流側の止弁10内の一定時間内の圧力降下を測定しこの降下の値が一定の値に達したとき破損とする破損検知工程で破損を検出する方法がある。なお、この方法において、複数の区間回路21を破損検査区域としたが、単数の区間回路21を破損検査区域としても良い。
【0049】
上述のようにして、油圧回路1の区間回路21dに破損が発見された場所を修理するときは、止弁10dの上流側の多目的ポート13aと止弁10e下流側の多目的ポート13bを接続することで区間回路21dを迂回する回路が構成できる。したがって、油圧シリンダ50にこの迂回回路81を介して作動油を供給できるので、油圧シリンダ50の作動を確保しながら修理を可能とする。さらに、止弁10の多目的ポート13bは、両サイドに一つ設ける構成としたが、2つ設ける構成として、その一方に圧力計を設置し他方に過般式の油圧源を接続すると、加圧しながら圧力測定が出来る。
【0050】
止弁10の多目的ポート13aは、区間回路内の圧力降下を測定する圧力計45の設置、区間回路に圧力を作用させるための可般式油圧源の設置、区間回路を迂回する迂回回路の設置、及び区間回路を修理する場合などにおいて区間回路に封入された圧力を解除するための装置の設置等が設置されるものであり、止弁10が区間回路を構成してその区間回路を部分的に検査、修理を行うために必要な機器を接続しえる効果をそなえている。
【0051】
例えば、図10(a)に示すように、本発明の別の実施形態に係る止弁100は、ボール弁タイプの止弁である。具体的に、止弁100は、主体となる凸型の弁本体115と、弁本体115の上側から挿通された回転軸112と、弁本体115の両端に夫々設けられた一対の圧力検出ポート40と、を備えている。
【0052】
弁本体115の左右方向における一方の端部には、油が流入するポート118aが形成されており、他方の端部には、油が流出するポート118bが形成されている。そして、弁本体115の中心内部には、通路116が形成された球弁119が設けられている。回転軸112の下端部は、球弁119と連結されており、回転軸112の上端部には、長尺状の把持部111がナット113によって固定設置されている。そして、把持部111が左右方向に回転することで回転軸112、球弁119も回転し、通路116がポート118aとポート118bとの間が開放、若しくは遮断する。
【0053】
上記の構成を有する止弁100は、作業者によって手動で把持部111が右回りに回転されることによって、回転軸112と共に球弁119が右方向に回転し、ポート118aおよびート118bと、通路116と、が90度の角度で交差するようになる。これにより、流入ポート118aとポート118bとの間が遮断される。一方、作業者によって手動で把持部111が左回りに回転されることによって、回転軸112と共に球弁119が左方向に回転し、ポート118aおよびポート118bと、通路116と、が連通される。これにより、ポート118aとポート118bとの間が開放される。なお、多目的ポートの継手40は、図2(b)に示すものと同じであるため説明を割愛する。
【0054】
また、図10(b)に示すように、本発明の別の実施形態に係る止弁150は、ボール弁タイプでモータ151の駆動によって外部から制御される止弁である。具体的に、止弁150は、主体となる凸型の弁本体165と、弁本体165の両端に夫々設けられた一対の多目的ポート13a、13bを備えている。
【0055】
また、凸型の弁本体165の上部には、支持部164によって固定設置されたコの字型のケース161が嵌め込まれており、ケース161の上面の中心部には、孔が形成されている。さらに、ケース161の上面には、外部からの遠隔操作で駆動するモータ151が設けられており、形成された孔からモータ151の回転軸153が挿通されている。なお、モータ151は、予め内部に油が密閉されている。そのため、油圧回路1が水門などの用途で、モータ151が水中に浸かった場合でも、モータ151の内部に水が入り込むことがなく、正常に駆動することができるようになっている。
【0056】
モータ151の回転軸153は、連結解除部162を介して軸152と連結されており、モータ151の駆動によって回転軸153が回転し、軸152も回転する。なお、連結解除部162は、スパナなどの工具を用いて回転軸153と軸152の連結部を解除することができる。そのため、モータ151に異常があった場合などは、回転軸153と軸152の連結部を解除し、軸152を手動で回転させることができるようになっている。また、軸152は、バネ154によって付勢されており、回転軸153と軸152との連結部の外周には、円筒状のカバー163が被せられている。
【0057】
弁本体165の左右方向における一方の端部には、ポート118aが形成されており、他方の端部には、ポート118bが形成されている。そして、弁本体165の中心内部には、通路156が形成された球弁159が設けられており、軸152の下端部は、球弁159と連結されている。モータ151が遠隔操作によって左右方向に回転することで回転軸153、軸152、球弁159が、左右方向に回転するようになっている。これらの回転によって、通路156がポート118aとポート118bとの間が開放、若しくは遮断されるようになっている。
【0058】
上記の構成を有する止弁150は、モータ151の駆動によって回転軸153および軸152が回転されることによって、軸152と共に球弁159が回転し、ポート118aおよびポート118bと、通路156と、が90度の角度で交差するようになる。これにより、ポート118aとポート118bとの間が遮断される。一方、モータ151の駆動によって回転軸153および軸152が回転されることによって、軸152と共に球弁159が回転し、ポート158aおよびポート158bと通路156とが連通される。これの継手40は、図2(b)に示すものと同じであるため説明を割愛する。
【0059】
以上、本発明の実施例を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施形態に記載された、作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用および効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、水門の駆動装置や建設機械、産業機械などに使用される油圧回路について利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 油圧回路
10a〜10k 止弁
21a〜21e 区間回路
22a〜22e 区間回路
30 油タンク
34 ポンプ
35 給排管
35a ホース
36 給排管
36a ホース
37 方向切替弁
37a ポジション
37b ポジション
37c ポジション
50 油圧駆動装置(油圧シリンダ)
51 ロッド
52 シリンダ本体
60 多機能弁
61 止弁
62 止弁
63 止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水門、産業機械などの被作動装置を駆動する油圧シリンダと、前記油圧シリンダを駆動するため作動油を吐出する油圧源と、前記油圧源が接続し前記油圧シリンダの作動油が帰還する油タンクと、前記油圧シリンダと前記油圧源および油タンクとの間に設けてあり油圧シリンダへの作動油の給排方向を制御する方向切替弁と、前記油圧シリンダと前記油圧源との間および前記油圧シリンダと前記油タンクの間に設けてあり前記方向切替弁の操作により前記油圧源が吐出する作動油を油圧シリンダに供給し油圧シリンダからの作動油を前記油タンクに帰還させる給排管と、前記給排管に開閉機能を備えた止弁を複数個設けてありこの止弁により前記給排管に複数の区間回路を形成すると共に前記区間回路に連通する多目的ポートを設けた構成の油圧回路において、
連続した複数の前記区間回路の最下流側の止弁で遮断して破損検査区域を構成する破損検査区域構成工程と、
前記破損検査区域構成程で構成した破損検査区域を加圧した状態でその上流側の止弁を遮断して圧力を保持して検査可能とする加圧力保持工程と
前記加圧力保持工程で圧力を保持した破損検査区域内の圧力が一定時間内に降下する度合いを測定して破損の有無を検出する破損検出工程と、
より構成した破損部分検出工程を備えたことを特徴とする油圧回路の保守方法。

【図1】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図7(a)】
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【図7(b)】
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【図8(a)】
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【図8(b)】
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【図9(a)】
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【図9(b)】
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【図10(a)】
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【図10(b)】
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【公開番号】特開2012−137183(P2012−137183A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−31050(P2012−31050)
【出願日】平成24年2月15日(2012.2.15)
【分割の表示】特願2011−82897(P2011−82897)の分割
【原出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(500408854)株式会社ユーテック (12)
【Fターム(参考)】