説明

油性固形化粧製品の製造方法

【課題】油性固形化粧料の表面に対する模様の形成を、簡単かつ低コストで、見栄えよく行う。
【解決手段】スタンプ体6は、基部6aと、第1の弾性部6bと、第2の弾性部6dとによって構成されている。第1の弾性部6bは、凹凸によって模様が刻まれたスタンプ面6cを有する。第2の弾性部6dは、基部6aと第1の弾性部6bとの間に介在し、第1の弾性部6bおよび油性固形化粧料よりも柔らかな部材によって形成されている。油性固形化粧料4aの表面に対する模様の転写は、スタンプ面6cの一部である凸部に粉末化粧料4bを付着させ、このスタンプ面6cを油性固形化粧料4aに当接させることによって行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性固形化粧製品の製造方法に係り、特に、油性固形固形化粧料の表面への模様形成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、口紅、アイシャドウ、ファンデーションといった固形化粧料に関して、その露出した表面に凹凸模様を施したものが知られている。このような模様の形成手法の一つとして、例えば、特許文献1には、化粧皿に充填された粉末化粧料の表面を薄葉紙で覆った上で、模様が凹凸状に刻まれた弾性型で圧縮打型する油性固形化粧製品の製法が開示されている。また、別の手法として、圧縮打型によって成形された固形化粧料の表面をレーザ等で部分的に剥離することによって、凹凸模様を表面に形成する手法も知られている。
【特許文献1】特開平8−154732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、油性固形化粧料の加飾には、パール剤噴霧、凹凸模様等があるが、複雑な模様を付けようとすると、きれいな模様転写が行い難いという不都合がある。なぜなら、油性固形化粧料は、その表面が崩れやすく、また、油性のためにベタつきやすいという特徴があるからである。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、油性固形化粧料の表面に対する模様の形成を、簡単かつ低コストで、見栄えよく行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決するために、本発明は、油性固形化粧製品の製造方法を提供する。この製造方法は、基部と、凹凸によって模様が刻まれたスタンプ面を有する第1の弾性部と、基部と第1の弾性部との間に介在し、第1の弾性部および油性固形化粧料よりも柔らかな第2の弾性部とを有するスタンプ体を用意するステップと、スタンプ体におけるスタンプ面の一部である凸部に粉末化粧料を付着させるステップと、粉末化粧料が凸部に付着したスタンプ面を、油性固形化粧料の表面に当接させることによって、油性固形化粧料の表面に模様を転写するステップとを有する。
【0006】
ここで、本発明において、第2の弾性部は、スポンジ、ウレタン、バネまたは蛇腹によって構成されていることが好ましい。また、粉末化粧料の色は、油性固形化粧料の色とは異なることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、基部と第1の弾性部との間に、第1の弾性部および油性固形化粧料よりも柔らかな第2の弾性部を介在させた上で、油性固形化粧料の表面への模様転写を行う。これにより、スタンプ体の押圧時に、余分な力が第2の弾性部によって吸収される。したがって、表面の崩れやベタつきが生じやすい油性固形化粧料に対しても、簡単かつ低コストで美しい模様を形成することができ、複雑な模様であっても、その形成を容易に行うことができる。また、油性固形化粧製品を使用するユーザに新鮮味を与えることができ、アイキャッチ効果による商品訴求力の向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、本実施形態にかかる油性固形化粧製品の斜視図である。この油性固形化粧製品1は、化粧料容器2、化粧皿3、および、この化粧皿3内に充填された化粧料4を主体に構成されている。化粧料容器2は、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等からなる透明なプラスチック製の容器であり、その内部には凹状に窪んだ収納部が形成されている。この収納部には、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス等の金属製、または、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の合成樹脂製の化粧皿3が収納されている。また、化粧料容器2には、開閉可能な蓋部2aが取り付けられており、この蓋部2aを開くと、化粧料容器2の上部が開口して化粧料4が露出する。この化粧料4は、口紅、アイシャドウ、ファンデーション等の如く、粉末状の化粧料を固形化したものであるが、その露出した表面には、凹凸模様(すなわち、表面を凹凸状に起伏させて陰影によって表現された模様)が表現されている。
【0009】
図2は、化粧皿3に充填された化粧料4の断面図である。この化粧料4は、積層構造になっており、下層の油性固形化粧料4aと、上層の粉末化粧料4bとを有する。油性固形化粧料4aは、例えば、口紅、アイシャドウ、ファンデーション等の油性化粧料を固形化したものであるが、油性固有の特性上、その表面に崩れやベタつきが生じ易い。油性固形化粧料4a上に積層された粉末化粧料4bは、油性固形化粧料4aとは異なる成分を含有しており、本実施形態では、パールやラメ等を想定している。油性固形化粧料4aおよび粉末化粧料4bは共に化粧料の粉末をベースに形成されるが、後述する特徴的な製造方法が用いられる関係上、粉末化粧料4bには、油性固形化粧料4aのような圧縮が施されていない点である。したがって、圧縮が施されていない粉末化粧料4bの密度(粒子密度)は、圧縮が施された油性固形化粧料4aのそれよりも低くなっている。また、粉末化粧料4bは、表面が凹凸状に起伏した油性固形化粧料4aの全面を覆っているのではなく、部分的に付着しており、具体的には、粉末化粧料4bが付着した凹部と、粉末化粧料4bが付着していない凸部とが混在した状態で存在する。
【0010】
なお、ユーザに新鮮味を与え、アイキャッチ効果の向上を図るべく、油性固形化粧料4aおよび粉末化粧料4bは、「異なる色」に着色されていることが好ましい。本明細書では、「異なる色」という用語を、ユーザ等が色の違いを視覚的に認識できれば足りる程度の意味で用いている。したがって、明度、彩度、色相の違いはもとより、同一色であっても、パール等を加えたものと、そうでないものとは、「異なる色」ということになる。
【0011】
以下、図3および図4を参照しつつ、上述した油性固形化粧製品1の製造方法について説明する。まず、図3に示すようなスタンプ体6を用意する。このスタンプ体6は、基部6aと、第1の弾性部6bと、第2の弾性部6dによって構成されている。基部6aは、金属やプラスチックといった如く、変形が生じにくい比較的剛性の高い部材が用いられる。第1の弾性部6bは、例えば、シリコーンゴムやエストラマー(合成ゴム)等の弾性体によって形成されており、その下方にスタンプ面6cを有する。このスタンプ面6cには、その表面の凹凸によって、転写対象となる模様(例えば花の模様)が刻まれている。基部6aと第1の弾性部6bとの間に介在する第2の弾性部6dは、スタンプ対象となる油性固形化粧料4aよりも柔らな材質によって構成されており、本実施形態では、スポンジによって形成されている。本実施形態では、一例として、2.4Nの力を加えたときに、2〜5mm程度収縮するスポンジを用いている。ここで、第2の弾性部6dに要求されるスペックとしては、(1)油性固形化粧料4aよりも柔らかいこと以外に、(2)第1の弾性部6bよりも柔らかいことも必要である。サンドイッチされる第2の弾性部6dがスタンプ面6cの材質よりも硬いと、油性固形化粧料の崩れが容易に生じて、良好な模様転写を行うことが困難となる。このような要求スペックを満たす限り、第2の弾性部6dの材質としては、スポンジ以外にウレタン、バネまたは蛇腹等を用いてもよい。
【0012】
つぎに、このスタンプ体6が有するスタンプ面6cの一部である凸部に、粉末化粧料4bをほぼ均一に付着させる。粉末化粧料4bとしてのパール等は単色であってもよいが、複数色を混ぜてもよい。
【0013】
つぎに、化粧皿3内に油性化粧料を充填し、これを固化させた油性固形化粧料4aを用意する。そして、図4(a)に示すように、このスタンプ面6cを上方より油性固形化粧料4aに当接させ、その後、同図(b)に示すように、スタンプ面6cを油性固形化粧料4aの表面より離す。これにより、スタンプ面6cの凹凸に応じて、油性固形化粧料4aの表面に粉末化粧料4bが付着して、模様が転写される。なお、スタンプ体6を油性固形化粧料4aの表面に当接させる強さ、プレス範囲、弾性体の材質や硬度は、事前の実験やシミュレーション等を通じて適宜設定される。
【0014】
このように、本実施形態によれば、基部6aと第1の弾性部6bとの間に第2の弾性部6dを介在させたサンドイッチ構造のスタンプ体6を用いて、油性固形化粧料4aに対する模様転写が行われる。これにより、スタンプ体6の押圧時(油性固形化粧料4aの表面へのスタンプ面6cの当接時)、余分な力が第2の弾性部6dによって吸収される。したがって、表面の崩れやベタつきが生じやすい油性固形化粧料4aに対しても、簡単かつ低コストで美しい模様を形成することができ、複雑な模様であっても、その形成を容易に行うことができる。また、油性固形化粧製品1を使用するユーザに新鮮味を与えることができ、アイキャッチ効果による商品訴求力の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】油性固形化粧製品の斜視図
【図2】化粧皿に充填された油性固形化粧料の断面図
【図3】凹凸模様が刻まれたスタンプ体の斜視図
【図4】スタンプ体による模様転写の説明図
【符号の説明】
【0016】
1 油性固形化粧製品
2 化粧料容器
2a 蓋部
3 化粧皿
4 化粧料
4a 油性固形化粧料
4b 粉末化粧料
6 スタンプ体
6a 基部
6b 第1の弾性部
6c スタンプ面
6d 第2の弾性部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油性固形化粧製品の製造方法において、
基部と、凹凸によって模様が刻まれたスタンプ面を有する第1の弾性部と、前記基部と前記第1の弾性部との間に介在し、前記第1の弾性部および油性固形化粧料よりも柔らかな第2の弾性部とを有するスタンプ体を用意するステップと、
前記スタンプ体における前記スタンプ面の一部である凸部に粉末化粧料を付着させるステップと、
前記粉末化粧料が前記凸部に付着した前記スタンプ面を、前記油性固形化粧料の表面に当接させることによって、前記油性固形化粧料の表面に前記模様を転写するステップと
を有することを特徴とする油性固形化粧製品の製造方法。
【請求項2】
前記第2の弾性部は、スポンジ、ウレタン、バネまたは蛇腹によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載された油性固形化粧製品の製造方法。
【請求項3】
前記粉末化粧料の色は、前記油性固形化粧料の色とは異なることを特徴とする請求項1または2に記載された油性固形化粧製品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−155275(P2009−155275A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335858(P2007−335858)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)
【Fターム(参考)】