説明

油水分離装置

【課題】処理対象液が存在する場所まで迅速かつ容易に移動させて処理対象液の浄化処理を実行し得る油水分離装置を提供する。
【解決手段】処理対象液を貯留する貯液槽3、油吸着材が充填されたフィルタ4、および処理対象液を圧送して貯液槽3からフィルタ4に移動させてフィルタ4を通過させる圧送ユニット6(液移動機構)が一体化された本体部2を備えると共に、キャスタ2b(車輪)が本体部2に取り付けられている。また、処理対象液を吸引して貯液槽3に汲み上げる吸引ポンプ8が本体部2に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理対象液から油分を除去して浄化する油水分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の油水分離装置として、出願人は、空気圧縮機(エアコンプレッサ)等の機器において生じたドレン(処理対象液)から油分を除去する油水分離装置を特開2001−293304号公報に開示している。この油水分離装置では、ドレン入口に接続されている機器からドレンが圧送されたときに、このドレンが第一の吸着槽内に配設されたノズルを上がって、そのノズルの上端部から第一の吸着槽内に噴出させられる。この際には、ドレンに加わっていた圧力が大気開放されると共に、このドレンが第一の吸着槽内を自重によって流れ落ちる際に、第一の吸着槽内に配設されている吸着材によって油分が粗取りされる。また、第一の吸着槽内をその底部まで流れ着いたドレンは、第一の吸着槽および第二の吸着槽を相互に接続している接続用配管内に流れ出し、その一部が上記の接続用配管に接続されている圧送ユニット内に流入する。
【0003】
この際には、圧送ユニット内に流入したドレンの液面上昇に伴ってユニット内に配設されたフロートが浮上し、これにより、フロートに接続されたセンサによって液面上昇が検出されて制御装置が作動させられる。また、制御装置は、予め規定されたタイミングで電磁弁を断続的に開閉制御することにより、圧力調節器において一定圧力に調節された加圧空気(圧縮エア)を圧送ユニットに供給する。これにより、圧送ユニット内のドレンが第二の吸着槽に向けて圧送される。また、第二の吸着槽に圧送されたドレンは、その底部から第二の吸着槽内に流入する。この際に、圧送ユニットによって第二の吸着槽内にドレンが順次圧送されることにより、第二の吸着槽内に流入したドレンが第二の吸着槽内に積層されている吸着材の隙間を通過して上方に向かって移動させられる。これにより、残存する油分が第二の吸着槽内において吸着材によって除去されてドレンの浄化処理が完了する。この後、浄化されたドレンは、処理水出口から放流用配管に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−293304号公報(第2−4頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、出願人が開示している油水分離装置には、以下の改善すべき課題が存在する。すなわち、出願人が開示している油水分離装置では、圧送された処理対象のドレンが噴出される第一の吸着槽と、圧送ユニットによって圧送されたドレンに含まれている油分を除去するための第二の吸着槽とを別個独立して設置すると共に、両吸着槽を接続用配管によって相互に接続して第一の吸着槽から第二の吸着槽にドレンを圧送する構成が採用されている。一方、例えば、工場や研究施設等において機械設備の作動油や燃料等の油分が漏れ出して排水溝内に流れ込んでしまったときには、排水溝内において排水と油分とが混ざり合った液体(処理対象液)から油分を除去して浄化する必要がある。
【0006】
この場合、出願人が開示している油水分離装置では、第一の吸着槽内に噴出されて圧力が大気解放されたドレンを圧送ユニットによって第二の吸着槽に圧送して浄化する構成が採用されているため、排水溝内の処理対象液を第一の吸着槽内に汲み上げることによって処理対象液から油分を取り除くことが可能となっている。しかしながら、出願人が開示している油水分離装置では、ドレンを排出する機器の近傍に固定的に設置した状態においてドレンから油分を除去するのを想定した設計となっているため、排水溝内の処理対象液を浄化しようとした場合には、設置場所(以下、「常設位置」ともいう)における油水分離装置の固定解除や分解の作業、設置場所から浄化処理の作業場所(以下、単に「作業場所」ともいう:この例では、処理対象液が存在する排水溝の敷設位置)までの運搬作業、および作業場所における組立てや固定の作業が煩雑であるばかりでなく、処理対象液の浄化処理が完了した後には、作業場所における固定解除や分解の作業、作業場所から常設位置までの運搬作業、および常設位置における組立てや固定の作業が煩雑となっている。
【0007】
具体的には、排水溝内の処理対象液の浄化処理に際しては、まず、常設位置において第一の吸着槽や第二の吸着槽などをそれぞれ固定しているボルトやナットを外した後に、ドレンを排出する機器とドレン入り口との接続の解除、第一の吸着槽および第二の吸着槽を接続している接続用配管や圧送ユニット等の取り外し、および処理水出口と放流用配管との接続の解除を実施する。次いで、一例として、第一の吸着槽、第二の吸着槽、接続用配管および圧送ユニット等をクレーンで吊り上げて台車に載せ、台車を押して常設位置から作業場所までそれぞれ運搬する。続いて、作業場所において第一の吸着槽、第二の吸着槽、接続用配管および圧送ユニット等をクレーンで吊り上げて台車から下ろし、これらを相互に接続して固定する。これにより、排水溝内の処理対象液の浄化処理を実施することが可能となる。また、浄化処理が完了した際には、上記の一例の手順を逆順でそれぞれ実行することにより、常設位置においてエアコンプレッサ等の機器から排出されたドレンの浄化処理を実行させることが可能となる。
【0008】
このように、出願人が開示している油水分離装置では、第一の吸着槽や第二の吸着槽等が別個独立して設置されて接続用配管によって接続されているため、作業場所への運搬に先立って油水分離装置の固定を解除したり分解したりする作業が必要となっている。また、出願人が開示している油水分離装置では、固定的に設置して使用するのを想定しているため、運搬に際しては、台車やハンドリフト等の移動手段を用意する必要がある。このため、出願人が開示している油水分離装置では、常設位置以外において浄化処理を実行させるために煩雑な作業を強いられている現状があり、この点を改善すべきとの要望がある。
【0009】
本発明は、かかる改善すべき課題に鑑みてなされたものであり、処理対象液が存在する場所まで迅速かつ容易に移動させて処理対象液の浄化処理を実行し得る油水分離装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく請求項1記載の油水分離装置は、可搬型の油水分離装置であって、処理対象液を貯留する貯液槽、油吸着材が充填されたフィルタ、および前記処理対象液を圧送または吸引して前記貯液槽から前記フィルタに移動させて当該フィルタを通過させる液移動機構が一体化された本体部を備えると共に、車輪と、敷設された軌道に沿って滑動させられる滑動部との少なくとも一方が前記本体部に取り付けられている。
【0011】
また、請求項2記載の油水分離装置は、請求項1記載の油水分離装置において、前記処理対象液を吸引して前記貯液槽に汲み上げる汲上げ機構が前記本体部に取り付けられている。
【0012】
さらに、請求項3記載の油水分離装置は、請求項1または2記載の油水分離装置において前記本体部に前記車輪が取り付けられると共に、当該車輪を回転させて当該本体部を移動させる動力源を備えている。
【0013】
また、請求項4記載の油水分離装置は、請求項1から3のいずれかに記載の油水分離装置において、圧縮エアを導入するエア導入部を備え、前記液移動機構が、前記圧縮エアによって前記貯液槽から前記フィルタに前記処理対象液を圧送するエア作動式の圧送ユニットと、前記圧縮エアによって前記貯液槽から前記フィルタに前記処理対象液を吸引するエア作動式の吸引ユニットとの少なくとも一方を備えている。
【0014】
さらに、請求項5記載の油水分離装置は、請求項1から4のいずれかに記載の油水分離装置において、前記貯液槽と前記フィルタとを接続する接続用配管が当該貯液槽の底部よりも下方に位置するように配設されている。
【0015】
また、請求項6記載の油水分離装置は、請求項1から5のいずれかに記載の油水分離装置において、前記貯液槽内に油吸着材が配設されている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の油水分離装置によれば、処理対象液を貯留する貯液槽、油吸着材が充填されたフィルタ、および処理対象液を圧送または吸引して貯液槽からフィルタに移動させてフィルタを通過させる液移動機構が一体化された本体部を備えると共に、車輪と、敷設された軌道に沿って滑動させられる滑動部との少なくとも一方を本体部に取り付けたことにより、保管場所や前回の作業場所から、浄化しようとする処理対象液が存在する作業場所まで油水分離装置を移動させる際に、保管場所等や作業場所において煩雑な作業を行うことなく、貯液槽やフィルタなどが一体化された本体部をそのまま移動させて浄化処理を迅速に開始することができる。また、本体部に車輪および滑動部の少なくとも一方を取り付けたことにより、台車やハンドリフトなどを別途用意することなく油水分離装置を移動させることができる。したがって、この油水分離装置によれば、処理対象液が存在する場所まで迅速かつ容易に移動させて処理対象液の浄化処理を実行することができる。
【0017】
また、請求項2記載の油水分離装置によれば、処理対象液を吸引して貯液槽に汲み上げる汲上げ機構を本体部に取り付けたことにより、例えばバケツ等の容器を用いて貯液槽内に処理対象液を汲み上げる作業を行うことなく、処理対象液を貯液槽内に容易に汲み上げることができる。また、汲上げ機構が本体部に取り付けられているため、油水分離装置とは別個に汲上げ用の容器やポンプを用意して、油水分離装置、および汲上げ用の容器やポンプをそれぞれ別個に移動させるのと比較して容易に移動させることができる。
【0018】
さらに、請求項3記載の油水分離装置によれば、本体部に取り付けた車輪を回転させて本体部を移動させる動力源を備えたことにより、手で押したり、牽引用のロープ等を引っ掛けて引っ張ったりして移動させる構成と比較して、油水分離装置を一層容易に移動させることができる。
【0019】
また、請求項4記載の油水分離装置によれば、圧縮エアによって貯液槽からフィルタに処理対象液を圧送するエア作動式の圧送ユニットと、圧縮エアによって貯液槽からフィルタに処理対象液を吸引するエア作動式の吸引ユニットとの少なくとも一方を備えて液移動機構を構成したことにより、例えば電動式の圧送ユニットや電動式の吸引ユニットによって構成した液移動機構と比較して、エア作動式の圧送ユニットや、エア作動式の吸引ユニットが非常に簡易な構成のため、処理対象液に含まれる油分に起因する目詰まり等の故障を招くことなく、長期に亘って処理対象液を移動させる能力を維持することができると共に、目詰まり等が生じた場合においても、分解、清掃および組立ての作業を容易に行うことができる。また、変圧器やバッテリが不要な分だけ十分に軽量化することができるため、油水分離装置を容易に移動させることができる。
【0020】
さらに、請求項5記載の油水分離装置によれば、貯液槽とフィルタとを接続する接続用配管を貯液槽の底部よりも下方に位置するように配設したことにより、貯液槽内の処理対象液のすべてを自重によって接続用配管内に流入させて液移動機構によってフィルタに圧送することができるため、油水分離装置による処理対象液の浄化処理が完了した時点において貯液槽内や接続用配管内に処理対象液が残留しない状態とすることができる。したがって、この油水分離装置によれば、浄化処理の完了後に油水分離装置を車両等に積載して運搬するときや、保管場所に保管するときに油水分離装置を横倒ししたとしても、油水分離装置から未処理の処理対象液が流れ出して積載用の車両や保管場所に汚れが生じる事態を回避することができる。
【0021】
また、請求項6記載の油水分離装置によれば、貯液槽内に油吸着材を配設したことにより、フィルタへの移動に先立って貯液槽内において処理対象液に含まれている油分の一部を除去することができるため、貯液槽とフィルタとを連結している配管や、液移動機構などに油分が付着して目詰まりが生じる事態を回避できるだけでなく、フィルタだけで油分を除去する構成と比較して、処理対象液から油分を十分に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】油水分離装置1の正面図である。
【図2】油水分離装置1の側面図である。
【図3】油水分離装置1の構成図である。
【図4】圧送ユニット6の断面図である。
【図5】制御バルブ22の構成について説明するための概念図である。
【図6】制御バルブ32の構成について説明するための概念図である。
【図7】エアコンプレッサから供給された圧縮エアのドレン処理用起動バルブ21、制御バルブ32,22およびシャトルバルブ36を通過する状態について説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る油水分離装置の実施の形態について説明する。
【0024】
最初に、油水分離装置1の構成について、添付図面を参照して説明する。
【0025】
図1,2に示す油水分離装置1は、可搬型の油水分離装置の一例であって、エアコンプレッサ等の機器から圧送されたドレンを対象として油分を除去して浄化する浄化処理(油水分離処理)だけでなく、排水溝等に排水された処理対象液(常設場所以外に存在する処理対象液であって、大気圧下におかれた処理対象液)を対象とする浄化処理を実行することができるように構成されている。この油水分離装置1は、図3に示すように、貯液槽3、フィルタ4、エアカプラ5、圧送ユニット6、圧送ユニット駆動制御部7、吸引ポンプ8、吸引ポンプ駆動制御部9を備え、図1,2に示すように、これらがベース部2a上に一体的に取り付けられて本体部2が構成されている。また、この油水分離装置1は、ベース部2aの底部に4つのキャスタ2b(「車輪」の一例)が取り付けられ、油水分離装置1を手で押したり、牽引用のロープ等を引っ掛けて引っ張ったりして移動させることができるように構成されている(「外部から加えられた力」によって移動させる構成の例)。
【0026】
この場合、この油水分離装置1は、本体部2が、全体として縦長の直方体状に形成されると共に、その幅および奥行きが、一例として、20リットルサイズのペール缶の直径と同程度の大きさに規定されている。したがって、実験室や廊下などの狭い空間においても使用することができると共に、例えばライトバンなどの小型貨物車両等に積載して任意の場所に容易に搬送することが可能となっている。貯液槽3は、上面開口の有底直方体状に形成され、図1,2に示すように、ベース部2aの後方寄りに固定されている。この場合、貯液槽3内には、貯留した処理対象液に含まれている油分を吸着して処理対象液を粗処理するための油吸着材3a(図2参照)が収容されている。また、貯液槽3の上面開口部は、開口部を開口可能に閉塞する蓋体(図示せず)が取り付けられている。
【0027】
フィルタ4は、一例として、板状のポリプロピレンの小片、または、繊維状のポリプロピレンを細断した小片で構成された油吸着材がポリプロピレン製の容器体内に充填されたフィルタエレメント(図示せず)と、このフィルタエレメントを収容するハウジングとを備えている。このフィルタ4は、後述するように圧送ユニット6によってハウジング内に圧送された処理対象液がフィルタエレメントを通過させられる際に処理対象液に含まれている油分をポリプロピレンの小片(油吸着材)に吸着させて除去可能に構成されている。この場合、この油水分離装置1は、フィルタエレメント内の油吸着材が大量の油分を吸着して油分を除去する能力が低下したときに、ハウジングからフィルタエレメントを取り外して新たなフィルタエレメントを装着することで、その浄化能力を長期に亘って維持することが可能となっている。
【0028】
また、この油水分離装置1では、フィルタ4が本体部2の上方寄りに取り付けられてフィルタ4の下方に空間が生じるように構成されている。これにより、上記のフィルタエレメントの交換作業時には、汚れたフィルタエレメントをハウジングに対して下方に移動させて取り外しでき、かつ新しいフィルタエレメントをハウジングに対して下方側から容易に装着することが可能な十分な作業スペースが確保される。さらに、図3に示すように、この油水分離装置1では、フィルタ4の排水口に処理水監視槽13が取り付けられており、フィルタ4による浄化処理が完了した処理済液を目視によって監視することができるように構成されている。
【0029】
エアカプラ5は、エア導入部に相当し、一例として、エアホースの先端に取り付けられたメスカプラ(図示せず)を接続可能なオスカプラで構成されている。この場合、この油水分離装置1では、エアカプラ5をオスカプラで構成したことにより、エアブロア、エアインパクトレンチ、およびエアリュータ等の各種エアツールに圧縮エアを供給するための汎用のエアホースを接続して使用することが可能となっている。なお、上記のエアホースは、エアコンプレッサや、エアコンプレッサによって圧縮された圧縮エアを貯留するエアタンク等のエア供給源(図示せず)に接続されている。
【0030】
圧送ユニット6は、図3に示すように、貯液槽3とフィルタ4とを接続している接続用配管10に接続されると共に、後述するように、貯液槽3内に貯留されている処理対象液をエアカプラ5から導入した圧縮エアによって接続用配管10を介してフィルタ4に圧送する。この圧送ユニット6は、図4に示すように、容器体6a内にフロート6bが収容されて、エアカプラ5からの矢印B1の向きでの圧縮エアの流入を許容すると共に、処理対象液のエアカプラ5側への流入を阻止する逆止弁として機能するように構成されている。この場合、圧送ユニット6における容器体6aの容量は、処理対象液の1回当りの圧送量(1回で圧送すべき処理対象液の量)に応じて規定されている。したがって、この圧送ユニット6は、フィルタ4の処理能力を超える大量の処理対象液が圧送されるのを阻止するリミッタとしても機能するように構成されている。
【0031】
さらに、図4に示すように、この圧送ユニット6では、上記の接続用配管10において容器体6aに接続されている部位(以下、この部位を「接続用配管10a」ともいう)の内径よりも容器体6aの内径が十分に大径となるように形成されている。このため、処理対象液が接続用配管10a内を容器体6a内に向けて移動したときに、この処理対象液が容器体6a内に吐出された時点において圧力が低下する結果、処理対象液が接続用配管10a内を矢印A1の向きで移動する速度よりも処理対象液が容器体6a内を矢印A2の向きで移動する速度を十分に低下させることが可能となっている(「ブローバック」の防止)。このため、この油水分離装置1では、処理対象液が圧縮エア供給用の接続用配管20内に流入する事態が確実に回避されている。
【0032】
また、この油水分離装置1では、貯液槽3から圧送ユニット6(フィルタ4)に向かう向きにだけ処理対象液を通過させる逆止弁11が接続用配管10における圧送ユニット6と貯液槽3との間に取り付けられると共に、圧送ユニット6(貯液槽3)からフィルタ4に向かう向きにだけ処理対象液を通過させる逆止弁12が接続用配管10における圧送ユニット6とフィルタ4との間に取り付けられている。さらに、この油水分離装置1では、図1,2に示すように、圧送ユニット6が本体部2の下方寄りに取り付けられると共に、上記の接続用配管10において貯液槽3の底部よりも下方に位置している部位に圧送ユニット6が接続されている。この結果、後述するようにして、貯液槽3内に貯留されている処理対象液のすべてをその自重によって貯液槽3から接続用配管10内に流入させて、かつ圧送ユニット6によってフィルタ4に向けて圧送させることが可能となっている。
【0033】
この場合、この油水分離装置1では、エアカプラ5から導入した圧縮エアによって動作する圧送ユニット駆動制御部7によって圧送ユニット6による処理対象液の圧送量(処理対象液を圧送する時間長およびその時間間隔)を制御する構成が採用されている。具体的には、圧送ユニット駆動制御部7は、図3に示すように、ドレン処理用起動バルブ21、制御バルブ22および制御弁開閉部23を備え、エアカプラ5を介して導入される圧縮エアの一部を利用して制御バルブ22を作動させることで圧送ユニット6(接続用配管20)に対する圧縮エアの供給量を制御する。なお、エアカプラ5とドレン処理用起動バルブ21(以下、「起動バルブ21」ともいう)との間に減圧弁を配設してもよい。起動バルブ21は、手動開閉式のエアバルブで構成されてエアカプラ5から導入された圧縮エアの通過を規制または許容する。
【0034】
制御バルブ22(制御弁)は、一例として、エア作動式の三方弁で構成されている。この場合、この油水分離装置1では、図5に示すように、上流側(同図における上側:エアカプラ5側)の配管が制御バルブ22のPポートに接続されると共に、下流側(同図における下側:圧送ユニット6側)の接続用配管20が制御バルブ22のAポートに接続されている。また、制御バルブ22は、パイロットエアが供給されていない常態において同図に実線で示すように圧縮エアの通過を規制すると共に、後述するようにパイロットエアが供給されているときに同図に破線で示すようにPポートからAポートへの矢印Dの向きでの圧縮エアの通過を許容する。制御弁開閉部23は、図3に示すように、絞り31、制御バルブ32、エアタンク33、調整弁34,35およびシャトルバルブ36を備え、制御バルブ22に対するパイロットエア(第1パイロットエア)の供給を制御する。
【0035】
絞り31は、エアカプラ5から導入された圧縮エアの流量(通過量)を制限することにより、起動バルブ21を開放した際に圧縮エアが制御バルブ22のパイロットエア導入部に突入して制御バルブ22が破損する事態を防止するためのダンパとして機能する。制御バルブ32(第1パイロットエア供給部)は、一例として、エア作動式の三方弁で構成されている。この場合、この油水分離装置1では、図6に示すように、上流側(同図における上側:エアカプラ5側)の配管が制御バルブ32のRポートに接続されると共に、下流側(同図における下側:制御バルブ22のパイロットエア導入部側)の配管が制御バルブ32のAポートに接続されている。また、制御バルブ32は、パイロットエアが供給されていない常態において同図に実線で示すようにRポートからAポートへの矢印Eの向きでの圧縮エアの通過を許容すると共に、後述するようにパイロットエアが供給されているときに同図に破線で示すように圧縮エアの通過を規制する。
【0036】
エアタンク33は、図3に示すように、上記の制御バルブ22と圧送ユニット6とを相互に接続する接続用配管20に接続され、制御バルブ22を通過した圧縮エアの一部を貯留可能に構成されている。調整弁34(第2パイロットエア供給部)は、上記のエアタンク33内に貯留された圧縮エアをパイロットエア(第2パイロットエア)として制御バルブ32のパイロットエア導入部に所定の流量(第1の流量)で供給する。具体的には、調整弁34は、制御バルブ32からエアタンク33に向けての圧縮エアの通過を許容しつつその逆向きの圧縮エアの通過を規制する逆止弁と、流量の調整が可能な可変式の絞り弁とを備えて構成されている。調整弁35は、シャトルバルブ36と相俟って排気部を構成し、制御バルブ22を通過した圧縮エアのエアタンク33内への通過を許容すると共に、エアタンク33内に貯留された圧縮エアを調整弁34よりも少量の所定の流量(第2の流量)でシャトルバルブ36に案内してシャトルバルブ36の排気口36aから大気に放出(排気)させる。具体的には、調整弁35は、接続用配管20(制御バルブ22)からエアタンク33に向けての圧縮エアの通過を許容しつつその逆向きの圧縮エアの通過を規制する逆止弁と、流量の調整が可能な可変式の絞り弁とを備えて構成されている。
【0037】
この場合、この油水分離装置1では、上記の圧送ユニット駆動制御部7における制御バルブ22,32およびシャトルバルブ36等のバルブが無給油タイプ(オイルレスタイプ)のバルブで構成されている。したがって、この油水分離装置1では、圧送ユニット6や圧送ユニット駆動制御部7に供給する圧縮エアにオイラー等によってオイルを含ませる必要がないだけでなく、オイルストレーナ等によって油分を取り除いた圧縮エアを圧送ユニット6や圧送ユニット駆動制御部7に供給することが可能となっている。これにより、この油水分離装置1では、処理対象液を圧送するために圧送ユニット6に供給される圧縮エアにオイルが混入して、このオイルが圧送ユニット6において処理対象液内に混入する事態が回避されている。
【0038】
吸引ポンプ8は、吸引用ホース8a(図1,3参照)や吸引ポンプ駆動制御部9と相俟って汲上げ機構を構成し、後述するようにして、大気圧下におかれた処理対象液をエアカプラ5から導入された圧縮エアを用いて吸引して貯液槽3に汲み上げる(液送する)。具体的には、吸引ポンプ8は、エジェクター効果によって処理対象液を吸引する吸引ポンプであって、エアカプラ5から導入された圧縮エアを吸引室(図示せず)内に噴射することで吸引室内に負圧を生じさせ、この負圧によって、吸引室に接続されている吸引用ホース8aを介して処理対象液を吸引して貯液槽3に排出する。
【0039】
吸引ポンプ駆動制御部9は、ドレン吸引用起動バルブ41(以下、「起動バルブ41」ともいう)および調整弁42を備え、吸引ポンプ8(上記の吸引室)に対する圧縮エアの供給を制御することによって吸引用ホース8aを介しての処理対象液の吸引量(貯液槽3への液送量)を制御する。具体的には、起動バルブ41は、前述した起動バルブ21と同様に手動開閉式のエアバルブで構成されてエアカプラ5から導入された圧縮エアの通過を規制または許容する。調整弁42は、起動バルブ41を通過した圧縮エアの流量を調整することで、上記の吸引室内に生じさせる負圧の大きさを調整して吸引ポンプ8による処理対象液の吸引量(貯液槽3への液送量)を調整する。
【0040】
次に、油水分離装置1による処理対象液の油水分離方法(浄化処理)について、図面を参照して説明する。
【0041】
この油水分離装置1を使用して、例えば、エアコンプレッサから排水されてバケツ等の容器に貯留されているドレン水(大気圧下におかれた処理対象液の一例)を浄化する際には、まず、ドレン水が貯留されている(ドレン水が排出された)場所まで油水分離装置1を移動させる。この油水分離装置1では、前述したように、貯液槽3やフィルタ4等がベース部2aに取り付けられて(一体化されて)本体部2が構成されると共に、ベース部2aに移動用のキャスタ2bが取り付けられている。このため、出願人が開示している従来の油水分離装置とは異なり、不使用時の保管場所や、前回の浄化処理の作業場所から、浄化しようとする処理対象液が存在する作業場所まで油水分離装置1を押したり引っ張ったりして迅速かつ容易に移動させることが可能となっている。したがって、油水分離装置1を使用する工場等のレイアウトが変更されたときであっても、新たな作業位置に油水分離装置1を容易に移動させることが可能となっている。また、例えば、浄化処理を常時実行する必要がない環境下で処理対象液を浄化するための仮設用の浄化装置、レンタル用、および出張用の浄化装置として、この油水分離装置1を好適に使用することが可能となっている。さらに、災害の発生時や、常設の油水分離装置が故障したときにも、この油水分離装置1を搬送して処理対象液の浄化処理を実行させることが可能となっている。
【0042】
また、作業場所が保管場所等から遠く離れている場合においても、十分に小形化されているため、小さな車両であっても油水分離装置1を積載して運搬することが可能となっている。この場合、この油水分離装置1では、後述するようにして、浄化処理の完了時に貯液槽3内や接続用配管10内の処理対象液のすべてを油水分離装置1の外部に排出することが可能に構成されている。したがって、運搬時において貯液槽3や接続用配管10内に前回処理時の処理対象液が残留していないため、油水分離装置1を車両に積載する際に横倒ししたとしても、油水分離装置1から処理対象液が流れ出して車両内に汚れが生じる事態が回避されている。
【0043】
次いで、搬送が完了した油水分離装置1による浄化処理を開始する。具体的には、まず、エアカプラ5にエアホースを接続すると共に、貯液槽3の上面開口部から容器内のドレン水を貯液槽3に注ぎ入れる。この際には、貯液槽3内に注ぎ入れたドレン水に含まれている油分の一部が貯液槽3内に収容されている油吸着材3aに吸着されて除去される。また、この油水分離装置1では、圧送ユニット6が接続用配管10における貯液槽3の底部よりも下方に位置している部位に接続されると共に、図5に実線で示すように、この圧送ユニット6に接続用配管20を介して接続されている制御バルブ22のAポートがRポートに連通させられて圧送ユニット6(容器体6aの内部)が大気解放された状態となっている。したがって、貯液槽3内に注ぎ入れられたドレン水が自重によって接続用配管10内に流れ込んで逆止弁11を通過すると共に、図4に矢印Aで示すように接続用配管10aを通過して圧送ユニット6における容器体6a内に流入する。
【0044】
これに伴って、容器体6a内のエアが接続用配管20を通過して制御バルブ22に向かって移動して、図5に矢印Cで示すように制御バルブ22のRポートから排気される。また、容器体6a内に十分な量のドレン水が流入したときには、図4に破線で示すようにフロート6bが浮上して容器体6aにおける接続用配管20側の孔(圧送ユニット駆動制御部7側の孔)がフロート6bによって閉塞される結果、圧送ユニット6から接続用配管20へのドレン水の侵入が阻止されて、圧送ユニット駆動制御部7の各部にドレンが流れ込む事態が回避されている。なお、容器体6a内へのドレンの流れ込み時には、逆止弁11を通過したドレン水の一部が接続用配管10内を移動して逆止弁12を通過してフィルタ4側にも流入する。
【0045】
次いで、起動バルブ21を開状態に操作する。この際には、上記したように、制御バルブ22が常態において圧縮エアの通過を規制すると共に、制御弁開閉部23の制御バルブ32が常態において圧縮エアの通過を許容しているため、起動バルブ21を通過した圧縮エアが絞り31および制御バルブ32を順に通過して制御バルブ22のパイロットエア導入部に供給される。この場合、絞り31によって圧縮エアの流量が制限されているため、起動バルブ21を開状態に操作してから、制御バルブ22を作動させるのに十分な量の圧縮エア(パイロットエア)が制御バルブ22に供給されるまでにある程度の時間(一例として、1〜5秒程度:以下、「時間Ta」ともいう)を要する。また、図7に示すように、起動バルブ21を開状態に操作した時点t0から、絞り31の存在によって生じる上記の時間Taが経過した時点t1(制御バルブ22に対して十分な量のパイロットエアが供給された時点)において、制御バルブ22が図5に破線で示す状態に切り替えられる。
【0046】
この際には、起動バルブ21を通過した圧縮エアが制御バルブ22を矢印Dの向きで通過し、制御バルブ22を通過した圧縮エアの一部が接続用配管20を介して圧送ユニット6に供給される。また、図4に示す矢印B1の向きで容器体6a内に圧縮エアが供給されることにより、容器体6a内に流入したドレン水が矢印B2の向きで逆止弁12を通過させられてフィルタ4内に圧送される。この際に、貯液槽3側に逆止弁11が設けられているため、容器体6a内から貯液槽3へのドレン水の逆流が阻止される。また、フィルタ4内に圧送されたドレン水は、フィルタエレメントを通過させられる際に、油吸着材に油分が吸着されて除去された後に、処理水監視槽13内に排出される。
【0047】
一方、制御バルブ22を通過した圧縮エアの他の一部は、シャトルバルブ36および調整弁35をこの順で通過してエアタンク33内に貯留される。具体的には、制御バルブ22が圧縮エアの通過を許容する状態に切り替えられた時点t1において、制御バルブ22を通過した圧縮エアの力によってシャトルバルブ36が制御バルブ22およびエアタンク33間を連通する状態(排気口36aを閉塞する状態)に切り替えられ、これにより、シャトルバルブ36を通過した圧縮エアが調整弁35を通過してエアタンク33内に貯留される。また、エアタンク33内に貯留された圧縮エアは、調整弁34を通過して制御バルブ32のパイロットエア導入部にパイロットエアとして供給される。この際に、調整弁34がある程度小さな絞り量に調整されているため、図7に示すように、エアタンク33内に圧縮エアが流入した(制御バルブ22が通過許容状態に切り替えられた)時点t1から1〜5秒程度の時間Tbが経過した時点t2において、制御バルブ32を作動させるのに十分な量の圧縮エア(パイロットエア)が制御バルブ32に供給される。
【0048】
この結果、制御バルブ32が図6に破線で示す状態に切り替えられ、制御バルブ22に対してパイロットエアとして供給されていた圧縮エアの供給が停止する。また、制御バルブ32と制御バルブ22(パイロットエア導入部)とを接続している配管内の圧縮エアが図6に矢印Fで示すように制御バルブ32のPポートから大気中に排気される。この結果、制御バルブ22が図5に実線で示す常態(圧縮エアの通過を規制する状態)に切り替えられる。このように、この油水分離装置1では、制御バルブ22が通過許容状態に切り替えられた時点t1から制御バルブ22が通過規制状態に切り替えられる時点t2までの時間Tb(この例では、1〜5秒)に亘って圧送ユニット6に対して圧縮エアが供給され、圧送ユニット6に対して圧縮エアが供給されている間だけ、圧送ユニット6からフィルタ4に向かってドレン水が圧送されることとなる。したがって、上記の調整弁34の絞り量を調整することにより、圧送ユニット6に対して圧縮エアを供給する時間長、すなわち、圧送ユニット6からフィルタ4にドレン水を圧送する時間長を任意に調整することが可能となっている。
【0049】
一方、制御バルブ22が通過規制状態に切り替えられてエアタンク33内への圧縮エアの流入が停止した時点t2において、圧送ユニット6の容器体6a内が制御バルブ22のRポートを介して大気解放された状態となる。したがって、貯液槽3内に注ぎ入れられたドレン水が逆止弁11を通過して容器体6a内に再び流入する。また、エアタンク33内の圧縮エアは、制御バルブ22を通過した圧縮エアのエアタンク33へ向けての流入が停止してエアタンク33における制御バルブ22側が低圧となることにより、調整弁35を通過してシャトルバルブ36に向けて逆流する。この際に、エアタンク33から逆流する圧縮エアの力によってシャトルバルブ36が排気口36aを開口する状態に切り替えられ、これにより、エアタンク33内の圧縮エアがシャトルバルブ36(排気口36a)から大気中に排気される。また、調整弁35がある程度大きな絞り量に調整されているため、エアタンク33内の圧縮エアが完全に排気されてエアタンク33内が大気圧となるまでには、30〜60秒程度の時間Tc(図7参照)を要する。
【0050】
また、図7に示すように、時間Tcが経過してエアタンク33内の圧縮エアがシャトルバルブ36から排気されてエアタンク33内がある程度低圧となった時点t3においては、制御バルブ32をオフ状態に維持するための十分な量のパイロットエアをエアタンク33から制御バルブ32に供給することができなくなり、制御バルブ32が図6に実線で示す常態に切り替えられる。この際には、制御バルブ32によって通過を規制されていた圧縮エアがパイロットエア導入部にパイロットエアとして供給される結果、制御バルブ22が図5に破線で示す通過許容状態に切り替えられる。このように、この油水分離装置1では、制御バルブ22が通過規制状態に切り替えられた時点t2からエアタンク33内の圧縮エアの排気が完了する時点t3までの時間Tc(この例では、30〜60秒)に亘って圧送ユニット6に対する圧縮エアの供給が停止した状態が維持される。したがって、調整弁35の絞り量を調整することで、圧送ユニット6に圧縮エアを供給する時間間隔、すなわち、圧送ユニット6からフィルタ4にドレン水を圧送する時間間隔をフィルタ4の処理能力(フィルタ4が単位時間当りに処理可能な処理対象液の量)やドレン水に含まれている油分の量(ドレン水の汚れ度合い)に応じて任意に調整することが可能となっている。
【0051】
また、制御バルブ22が通過許容状態に切り替えられたときには、起動バルブ21を通過した圧縮エアが制御バルブ22を矢印Dの向きで通過し、制御バルブ22を通過した圧縮エアの一部が圧送ユニット6に供給される。さらに、制御バルブ22が通過許容状態に切り替えられた時点t3から前述した時間Tbが経過して制御バルブ32による制御バルブ22へのパイロットエアの供給が停止する時点t4においては、圧送ユニット6への圧縮エアの供給が停止する。この後、起動バルブ21が閉状態に操作される時点tN(図7参照)まで、時間Tc毎に時間Tbだけ圧送ユニット6に圧縮エアが供給され、圧送ユニット6に対して圧縮エアが供給されている状態において圧送ユニット6からフィルタ4にドレン水が圧送されて浄化される。
【0052】
この場合、前述したように、この油水分離装置1では、貯液槽3内の処理対象液をフィルタ4に圧送する圧送ユニット6が油水分離装置1における下方寄りに取り付けられると共に、貯液槽3およびフィルタ4を相互に接続している接続用配管10における貯液槽3の底部よりも下方に位置している部位に圧送ユニット6が接続されている。このため、貯液槽3内の処理対象液のすべてを処理対象液の自重によって接続用配管10内に流入させて、かつ、この接続用配管10内の処理対象液のすべてをエアカプラ5から導入された圧縮エアの力によって(圧送ユニット6によって)フィルタ4に圧送することができる。したがって、貯液槽3内や接続用配管10内に処理対象液を残留させることなく、そのすべてをフィルタ4に圧送して浄化処理することができるため、浄化処理の完了後に貯液槽3内や接続用配管10内等に処理対象液が残留する事態が回避されている。
【0053】
一方、例えば、化石燃料や潤滑油等の貯蔵庫に雨水が浸入して、貯蔵庫内において雨水と油分とが混ざり合ってしまったときには、この雨水と油分との混合液を浄化処理する必要がある。この場合、この油水分離装置1では、雨水と油分との混合液(大気圧下におかれた処理対象液の他の一例)を排水溝から吸引して貯液槽3内に汲み上げつつ浄化することが可能となっている。具体的には、まず、上記の作業場所から新たな作業場所(この例では、貯蔵庫)に油水分離装置1を移動させる。次いで、混合液が流入した排水溝内に吸引用ホース8aの先端部(吸引口)を挿入した状態において、吸引ポンプ駆動制御部9の起動バルブ41を開状態に操作する。この際には、エアカプラ5から導入された圧縮エアが調整弁42を通過して吸引ポンプ8に供給され、吸引ポンプ8が、供給された圧縮エアによって吸引用ホース8aを介して排水溝内の混合液を吸引して貯液槽3内に液送する。この結果、バケツ等の容器内に排水されたドレン水を貯液槽3内に注ぎ入れた上記の例と同様にして、油分を含んだ混合液が貯液槽3内に貯留される。
【0054】
この際に、調整弁42の絞り量を調整して吸引ポンプ8に対する圧縮エアの供給量を調整することで、排水溝から吸引する混合液の吸引量(貯液槽3内に液送する混合液の液送量:汲上げ量)を調整することができる。また、処理対象液の吸引(貯液槽3内への汲み上げ)と並行して、起動バルブ21を開状態に操作して前述した処理対象液の浄化処理を実行することにより、吸引ポンプ8によって貯液槽3内に汲み上げた処理対象液(混合液)から油分を除去して浄化することができる。これにより、処理対象液(混合液)の貯液槽3内への汲み上げを完了した後に浄化処理する処理方法と比較して、短時間で効率良く処理対象液(混合液)を浄化することができる。なお、吸引ポンプ8による処理対象液の吸引(汲み上げ)を完了してから、圧送ユニット6による処理対象液の圧送を開始して処理することもできる。具体的には、例えば、吸引ポンプ8および圧送ユニット6を同時に作動させるのに十分な量の圧縮エアの供給を受けることが困難なときには、吸引ポンプ8による処理対象液の吸引(汲み上げ)を完了してから、圧送ユニット6による圧送(フィルタ4による浄化)を実行することができる。
【0055】
このように、この油水分離装置1によれば、処理対象液を貯留する貯液槽3、油吸着材が充填されたフィルタ4、および処理対象液を圧送して貯液槽3からフィルタ4に移動させてフィルタ4を通過させる圧送ユニット6(液移動機構)が一体化された本体部2を備えると共に、キャスタ2bを本体部2に取り付けたことにより、保管場所や前回の作業場所から、浄化しようとする処理対象液が存在する作業場所まで油水分離装置1を移動させる際に、保管場所等や作業場所において煩雑な作業を行うことなく、貯液槽3やフィルタ4などが一体化された本体部2をそのまま移動させて浄化処理を迅速に開始することができる。また、本体部2にキャスタ2bを取り付けたことにより、台車やハンドリフトなどを別途用意することなく油水分離装置1を移動させることができる。したがって、この油水分離装置1によれば、処理対象液が存在する場所まで迅速かつ容易に移動させて処理対象液の浄化処理を実行することができる。
【0056】
また、この油水分離装置1によれば、処理対象液を吸引して貯液槽3に汲み上げる吸引ポンプ8(汲上げ機構)を本体部2に取り付けたことにより、例えばバケツ等の容器を用いて貯液槽3内に処理対象液を汲み上げる作業を行うことなく、処理対象液を貯液槽3内に容易に汲み上げることができる。また、吸引ポンプ8が本体部2に取り付けられているため、油水分離装置とは別個に汲上げ用の容器やポンプを用意して、油水分離装置、および汲上げ用の容器やポンプをそれぞれ別個に移動させるのと比較して容易に移動させることができる。
【0057】
さらに、この油水分離装置1によれば、圧縮エアによって貯液槽3からフィルタ4に処理対象液を圧送するエア作動式の圧送ユニット6を備えて液移動機構を構成したことにより、例えば電動式の圧送ユニットや電動式の吸引ユニットによって構成した液移動機構と比較して、エア作動式の圧送ユニット6が非常に簡易な構成のため、処理対象液に含まれる油分に起因する目詰まり等の故障を招くことなく、長期に亘って圧送能力を維持することができると共に、目詰まり等が生じた場合においても、分解、清掃および組立ての作業を容易に行うことができる。また、変圧器やバッテリが不要な分だけ十分に軽量化することができるため、油水分離装置1を容易に移動させることができる。
【0058】
また、この油水分離装置1によれば、貯液槽3とフィルタ4とを接続する接続用配管10を貯液槽3の底部よりも下方に位置するように配設したことにより、貯液槽3内の処理対象液のすべてを自重によって接続用配管10内に流入させて圧送ユニット6によってフィルタ4に圧送することができるため、油水分離装置1による処理対象液の浄化処理が完了した時点において貯液槽3内や接続用配管10内に処理対象液が残留しない状態とすることができる。したがって、この油水分離装置1によれば、浄化処理の完了後に油水分離装置1を車両等に積載して運搬するときや、保管場所に保管するときに油水分離装置1を横倒ししたとしても、油水分離装置1から未処理の処理対象液が流れ出して積載用の車両や保管場所に汚れが生じる事態を回避することができる。
【0059】
さらに、この油水分離装置1によれば、貯液槽3内に油吸着材3aを配設したことにより、フィルタ4への圧送に先立って貯液槽3内において処理対象液に含まれている油分の一部を除去することができるため、貯液槽3とフィルタ4とを連結している配管や、圧送ユニット6などに油分が付着して目詰まりが生じる事態を回避できるだけでなく、フィルタ4だけで油分を除去する構成と比較して、処理対象液から油分を十分に除去することができる。
【0060】
なお、ベース部2aにキャスタ2bを取り付けて手で押したり引っ張ったりして移動させる構成の油水分離装置1を例に挙げて説明したが、油水分離装置の構成はこれに限定されない。例えば、キャスタ2bに代えて、敷設された軌道(レール)に係合可能な車輪や滑動部(スライダ)を本体部に取付け(図示せず)、軌道に沿って油水分離装置を移動させる構成を採用することもできる。この場合、上記の軌道は、床面や大地に敷設したものに限定されず、橋脚上に敷設したもの、天井に敷設したもの、橋脚や天井から吊り下げたものなどの各種の軌道がこれに含まれる。このように軌道に沿って移動させる構成を採用した場合においても、上記の油水分離装置1と同様にして、手で押したり、牽引用のロープ等を引っ掛けて引っ張ったりして容易に移動させることができる。
【0061】
また、手で押したり、牽引用のロープ等を引っ掛けて引っ張ったりして移動させる構成の油水分離装置1を例に挙げて説明したが、図1,2に破線で示すように、油水分離装置1における前方寄りの2つのキャスタ2bの位置に取り付けた車輪(図示せず)を回転させるための動力源51を本体部2に取り付けて油水分離装置1を自走させて移動させる構成を採用することもできる。この場合、動力源51は、車輪を回転させるためのモータと、このモータに電源を供給するためのバッテリとがパッケージングされて構成されている。このように、本体部2に取り付けた車輪を回転させて本体部2を移動させる動力源51を備えた油水分離装置1によれば、手で押したり、牽引用のロープ等を引っ掛けて引っ張ったりして移動させる構成と比較して、油水分離装置1を一層容易に移動させることができる。
【0062】
また、貯液槽3からフィルタ4に処理対象液を移動させるための圧送ユニット6を備えた油水分離装置1を例に挙げて説明したが、液移動機構の構成はこれに限定されず、上記の圧送ユニット6に代えて、図3に破線で示すように、一例としてフィルタ4と処理水監視槽13とを接続している接続用配管に処理対象液を圧縮エアによって吸引するエア作動式の吸引ユニット56を配設することにより、この吸引ユニット56の吸引力によって処理対象液を貯液槽3からフィルタ4に処理対象液を移動させる構成を採用することもできる。この場合、吸引ユニット56は、一例として、上記の吸引ポンプ8と同様にしてエジェクター効果によって処理対象液を吸引する構成が採用され、制御バルブ22を通過した圧縮エアが負圧室内に供給されているときに貯液槽3内の処理対象液を接続用配管10およびフィルタ4を介して吸引して処理水監視槽13に排出する。なお、吸引ユニット56の配設位置は、フィルタ4と処理水監視槽13との間に限定されるものではなく、フィルタ4よりも下流側であれば、例えば、処理水監視槽13の下流側に吸引ユニット56を配設することもできる。また、圧送ユニット6および吸引ユニット56の双方を配設して圧送ユニット6によって圧送しつつ吸引ユニット56によって吸引することで処理対象液を移動させる構成を採用することもできる。
【0063】
さらに、外部装置としてのエアコンプレッサによって生成された圧縮エアを使用する例について説明したが、エア供給源はこれに限定されず、例えば、ハンドポンプやフットポンプ等を用いて人力で圧縮エアを供給することにより、この圧縮エアの力によって処理対象液を圧送または吸引して浄化処理する構成を採用することもできる。また、圧縮エアに代えて、工業用窒素等の各種気体が充填されたボンベをエアカプラ5に接続することにより、ボンベから供給される気体によって処理対象液を圧送または吸引して移動させて浄化処理する構成を採用することもできる。さらに、エアカプラ5から導入した圧縮エア等を貯留するエアタンクをエアカプラ5の直後に配設すると共に、エア供給源に接続可能な場所でエアタンク内に圧縮エアを充填しておき、その状態でエアカプラ5からエアホースを取り外して作業場所まで移動させてエアタンク内の圧縮エアを用いて浄化処理を実行する構成を採用することもできる。このように、ボンベから供給される気体や、エアカプラ5から導入した圧縮エアを別途配設したエアタンク内に充填しておいて使用する構成を採用することにより、エア供給源への接続が困難な場所においても、処理対象液を浄化処理することができる。
【0064】
また、起動バルブ21と制御バルブ32との間に絞り31を設けた油水分離装置1を例に挙げて説明したが、この絞り31を設けることなく、起動バルブ21を通過した圧縮エアが直ちに制御バルブ32を通過して制御バルブ22にパイロットエアとして供給される構成を採用することもできる。このような構成においては、上記の例における時間Taが生じることなく、起動バルブ21を開状態に操作した時点において制御バルブ22が通過許容状態に切り替えられる点を除き、油水分離装置1による浄化処理時と同様の浄化処理が実行される。
【0065】
さらに、圧縮エアの力によって処理対象液を圧送する圧送ユニット6や、圧縮エアの力によって処理対象液を吸引する吸引ユニット56によって液移動機構を構成する例について説明したが、モータや内燃機関等の原動機を動力源として処理対象液を圧送または吸引する液移動機構を採用することもできる。同様にして、貯液槽3に処理対象液を汲み上げる汲上げ機構についても、上記の油水分離装置1における吸引ポンプ8のように圧縮エアの力によって動作するものに限定されず、原動機を動力源として処理対象液を吸引して貯液槽3に汲み上げる構成を採用することもできる。
【0066】
また、上記の油水分離装置1では、油吸着材を充填したフィルタエレメントを有するフィルタ4を備え、このフィルタ4によって処理対象液に含まれている油分を吸着して除去可能に構成されているが、上記のフィルタ4に代えて、一例として、活性炭を充填したフィルタエレメントを有するフィルタ(図示せず)を圧送ユニット6の下流側に取り付けることにより、各種薬品が混入した処理対象液からこれらを除去する廃液処理装置として油水分離装置1を使用することができる。この場合、油水分離装置1を廃液処理装置として使用する際には、油吸着材3aに代えて、活性炭等をパッケージングした液内投入型の浄化フィルタを貯液槽3内に配設するのが好ましい。
【符号の説明】
【0067】
1 油水分離装置
2 本体部
2b キャスタ
3 貯液槽
3a 油吸着材
4 フィルタ
5 エアカプラ
6 圧送ユニット
7 圧送ユニット駆動制御部
8 吸引ポンプ
9 吸引ポンプ駆動制御部
10,10a 接続用配管
51 動力源
56 吸引ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象液を貯留する貯液槽、油吸着材が充填されたフィルタ、および前記処理対象液を圧送または吸引して前記貯液槽から前記フィルタに移動させて当該フィルタを通過させる液移動機構が一体化された本体部を備えると共に、車輪と、敷設された軌道に沿って滑動させられる滑動部との少なくとも一方が前記本体部に取り付けられている可搬型の油水分離装置。
【請求項2】
前記処理対象液を吸引して前記貯液槽に汲み上げる汲上げ機構が前記本体部に取り付けられている請求項1記載の油水分離装置。
【請求項3】
前記本体部に前記車輪が取り付けられると共に、当該車輪を回転させて当該本体部を移動させる動力源を備えている請求項1または2記載の油水分離装置。
【請求項4】
圧縮エアを導入するエア導入部を備え、
前記液移動機構は、前記圧縮エアによって前記貯液槽から前記フィルタに前記処理対象液を圧送するエア作動式の圧送ユニットと、前記圧縮エアによって前記貯液槽から前記フィルタに前記処理対象液を吸引するエア作動式の吸引ユニットとの少なくとも一方を備えている請求項1から3のいずれかに記載の油水分離装置。
【請求項5】
前記貯液槽と前記フィルタとを接続する接続用配管が当該貯液槽の底部よりも下方に位置するように配設されている請求項1から4のいずれかに記載の油水分離装置。
【請求項6】
前記貯液槽内に油吸着材が配設されている請求項1から5のいずれかに記載の油水分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−11157(P2011−11157A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158324(P2009−158324)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)