説明

油汚染土壌の浄化方法

【課題】土壌に含まれる油を廃棄する必要がない油汚染土壌の浄化方法を提供する。
【解決手段】ヨシ、ススキ、オニウシノケグサ、シロクローバー、リードカナリーグラス、イタドリ、ヨモギ、メマツヨイグサ、メドハギ、キョウチクトウ、ヤマモモ、セイヨウハコヤナギ、ヤマナラシ、イヌコリヤナギ、オノエヤナギ、ヤマハンノキ、ハマナス、ヤマハギ、ネムノキ、エニシダ、ダイズ、ニセアカシア、ヒメウキガヤ、アカメガシワ、ヌルデ、ナンキンハゼ、フキ、オオシロヤナギ、オオタチヤナギ、アカクローバー、グラジオラス、シュロソウ、ドロヤナギ、コゴメヤナギ、オーチャードグラスの中から少なくとも一種類の植物を油が存在する土壌で生育させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油によって汚染された土壌を浄化する油汚染土壌の浄化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、油によって汚染された土壌を浄化するには、例えば、最初に土壌を採掘してから、その採掘した土壌に水を加え、次に、水と土壌とを洗浄機によって攪拌した後、攪拌したものを分離槽に入れることで、土壌を分解槽の下部に沈降させ、かつ油を分解槽の上部に浮遊させ、土壌と水と油とを分離する。その後、油を除去し、かつ水を除去した土壌を元の位置に戻せば、油汚染土壌を浄化することができる(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−254063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した土壌洗浄法で油汚染土壌を浄化した場合には、分離した油を廃棄する必要がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、土壌に含まれる油を廃棄する必要がない油汚染土壌の浄化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、ヨシ、ススキ、オニウシノケグサ、シロクローバー、リードカナリーグラス、イタドリ、ヨモギ、メマツヨイグサ、メドハギ、キョウチクトウ、ヤマモモ、セイヨウハコヤナギ、ヤマナラシ、イヌコリヤナギ、オノエヤナギ、ヤマハンノキ、ハマナス、ヤマハギ、ネムノキ、エニシダ、ダイズ、ニセアカシア、ヒメウキガヤ、アカメガシワ、ヌルデ、ナンキンハゼ、フキ、オオシロヤナギ、オオタチヤナギ、アカクローバー、グラジオラス、シュロソウ、ドロヤナギ、コゴメヤナギ、オーチャードグラスの中から少なくとも一種類の植物を油が存在する土壌で生育させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかる油汚染土壌の浄化方法によれば、ヨシ、ススキ、オニウシノケグサ、シロクローバー、リードカナリーグラス、イタドリ、ヨモギ、メマツヨイグサ、メドハギ、キョウチクトウ、ヤマモモ、セイヨウハコヤナギ、ヤマナラシ、イヌコリヤナギ、オノエヤナギ、ヤマハンノキ、ハマナス、ヤマハギ、ネムノキ、エニシダ、ダイズ、ニセアカシア、ヒメウキガヤ、アカメガシワ、ヌルデ、ナンキンハゼ、フキ、オオシロヤナギ、オオタチヤナギ、アカクローバー、グラジオラス、シュロソウ、ドロヤナギ、コゴメヤナギ、オーチャードグラスの中から少なくとも一種類の植物を油が存在する土壌で生育させるため、上記植物の生育に伴って土壌に含まれる油が植物に分解され、それにより油で汚染された土壌を浄化することができる。しかも、土壌に含まれる油は植物で分解されるため、油を廃棄する必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明にかかる油汚染土壌の浄化方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0009】
本発明において、油によって汚染された土壌で生育する植物は、マメ科の植物、イネ科の植物、トウダイグサ科の植物、キョウチクトウ科の植物、タデ科の植物、ウルシ科の植物、バラ科の植物、ヤナギ科の植物、アカバナ科の植物、ヤマモモ科の植物、カバノキ科の植物、キク科の植物、アヤメ科の植物、ユリ科の植物の中から少なくとも一種類である。
【0010】
マメ科の植物としては、例えばエニシダ(学名:Cytisus scoparius、エニシダ属)、シロクローバー(別名:シロツメクサ、学名:Trifolium repens、シャジクソウ属)、ダイズ(学名:Glycine max、ダイズ属)、ニセアカシア(別名:ハリエンジュ、学名:Robinia pseudoacacia、ハリエンジュ属)、ネムノキ(学名:Albizia julibrissin、ネムノキ属)、メドハギ(学名:Lespedeza juncea、ハギ属)、およびヤマハギ(学名:Lespedeza bicolor、ハギ属)、アカクローバー(別名:ムラサキツメクサ、学名:Trifolium pratense、シャジクソウ属)等がある。
【0011】
イネ科の植物としては、例えばオニウシノケグサ(別名:トールフェスク、学名:Festuca arundinacea、ウシノケグサ属)、ススキ(学名:Miscanthus sinensis、ススキ属)、ヒメウキガヤ(学名:Glyceria depauperata、ドジョウツナギ属)、ヨシ(学名:Phragmites communis、ヨシ属)、およびリードカナリーグラス(別名:クサヨシ、学名:Phalaris arundinacea、クサヨシ属)、オーチャードグラス(別名:カモガヤ、学名:Dactylis glomerata、カモガヤ属)等がある。
【0012】
トウダイグサ科の植物としては、例えばアカメガシワ(学名:Mallotus japonicus、アカメガシワ属)、およびナンキンハゼ(学名:Sapium sebiferum、シラキ属)等がある。
【0013】
キョウチクトウ科の植物としては、例えばキョウチクトウ(学名:Nerium indicum、キョウチクトウ属)等がある。
【0014】
タデ科の植物としては、イタドリ(学名:Reynoutria japonica、イタドリ属)等がある。
【0015】
ウルシ科の植物としては、例えばヌルデ(学名:Rhus javanica、ウルシ属)等がある。
【0016】
バラ科の植物としては、例えばハマナス(学名:Rosa rugosa、バラ属)等がある。
【0017】
ヤナギ科の植物としては、例えばセイヨウハコヤナギ(学名:Populus nigra、ヤマナラシ属)、ヤマナラシ(学名:Populus sieboldii、ヤマナラシ属)、イヌコリヤナギ(学名:Salix integra、ヤナギ属)、オノエヤナギ(学名:Salix sachalinensis、ヤナギ属)、オオシロヤナギ(学名:Salix eriocarpa、ヤナギ属)、オオタチヤナギ(学名:Salix pierotii、ヤナギ属)、ドロヤナギ(別名:ドロノキ、学名:Populus maximowiczii、ヤマナラシ属)、コゴメヤナギ(学名:Salix serissaefolia、ヤナギ属)等がある。
【0018】
アカバナ科の植物としては、例えばメマツヨイグサ(学名:Oenothera biennis、マツヨイグサ属)等がある。
【0019】
ヤマモモ科の植物としては、例えばヤマモモ(学名:Myrica rubra、ヤマモモ属 )等がある。
【0020】
カバノキ科の植物としては、例えばヤマハンノキ(学名:Alnus hirsuta、ハンノキ属)等がある。
【0021】
キク科の植物としては、ヨモギ(学名:Artemisia indica、ヨモギ属)、フキ(学名:Petasites japonicus、フキ属)等の植物がある。
【0022】
アヤメ科の植物としては、グラジオラス(学名:Gladiolus、グラジオラス属)等がある。
【0023】
ユリ科の植物としては、シュロソウ(学名:Veratrum maackii、シュロソウ属)等がある。
【0024】
上記植物を油で汚染された土壌で生育する。油で汚染された土壌とは、本発明では、例えば、少なくとも炭素、水素を構成元素とする有機化合物で汚染された土壌であって、油の濃度が100,000ppm未満のものを言う。
【0025】
また、植物を生育する場合には、例えば最初に地表から1mの深さまでの土壌を耕し、かつその耕した土壌に水および肥料を加える。その後、上記植物の種を、油で汚染された土壌に播き、もしくは上記植物の苗を、油で汚染された土壌に植え、その植物を生育する。すると、植物の生長に伴って、土壌に含まれる油が減少する。
【0026】
上記ヨシ、ススキ、オニウシノケグサ、シロクローバー、リードカナリーグラス、イタドリ、ヨモギ、メマツヨイグサ、メドハギ、キョウチクトウ、ヤマモモ、セイヨウハコヤナギ、ヤマナラシ、イヌコリヤナギ、オノエヤナギ、ヤマハンノキ、ハマナス、ヤマハギ、ネムノキ、エニシダ、ダイズ、ニセアカシア、ヒメウキガヤ、アカメガシワ、ヌルデ、ナンキンハゼ、フキ、オオシロヤナギ、オオタチヤナギ、アカクローバー、グラジオラス、シュロソウ、ドロヤナギ、コゴメヤナギ、オーチャードグラスの根の先端は、地表から30〜100cmの地中にまで到達する。
【0027】
次に、油汚染土壌の浄化方法の具体例を説明する。例えば図1に示すように、2005年において、地上体積量がおよそ100,000cm、根の深さが25cmであったセイヨウハコヤナギを、汚染濃度がおよそ5,000ppmである重油で汚染された土壌において1年間生育すると、地上体積量は、ほぼ変わらずおよそ100,000cmであるが、根の深さは40cmとなる。このセイヨウハコヤナギの生育に伴い、例えば土壌に含まれる油がセイヨウハコヤナギの根圏(根の周辺領域)で分解され、土壌に含まれる重油の量が減少する。なお、地上体積量とは、幹、茎、枝、葉等が占めている空間の全体積をいう。
【0028】
また、2005年において、地上体積量がおよそ43,000cm、根の深さが15cmであったニセアカシアを、汚染濃度がおよそ5,000ppmである重油で汚染された土壌において1年間生育すると、地上体積量は800,000cmとなり、根の深さは25cmとなる。このニセアカシアの生育に伴い、例えば土壌に含まれる油がニセアカシアの根圏で分解され、土壌に含まれる重油の量が減少する。
【0029】
さらに、2005年において、地上体積量がおよそ220,000cm、根の深さが25cmであったイヌコリヤナギを、汚染濃度がおよそ5,000ppmである重油で汚染された土壌において1年間生育すると、地上体積量は234,000cmとなり、根の深さは25cmとなる。このイヌコリヤナギの生育に伴い、例えば土壌に含まれる油がイヌコリヤナギの根圏で分解され、土壌に含まれる重油の量が減少する。
【0030】
また、2005年において、地上体積量がおよそ88,000cm、根の深さが25cmであったヨシを、汚染濃度がおよそ5,000ppmである重油で汚染された土壌において1年間生育すると、地上体積量は140,000cmとなり、根の深さは25cmとなる。このヨシの生育に伴い、例えば土壌に含まれる油がヨシの根圏で分解され、土壌に含まれる重油の量が減少する。
【0031】
さらに、2005年において、地上体積量がおよそ180,000cm、根の深さが15cmであったススキを、汚染濃度がおよそ5,000ppmである重油で汚染された土壌において1年間生育すると、地上体積量は110,000cmとなり、根の深さは25cmとなる。このススキの生育に伴い、例えば土壌に含まれる油がススキの根圏で分解され、土壌に含まれる重油の量が減少する。
【0032】
また、2005年において、地上体積量がおよそ36,000cm、根の深さが35cmであったオニウシノケグサを、汚染濃度がおよそ5,000ppmである重油で汚染された土壌において1年間生育すると、地上体積量は89,000cmとなり、根の深さは25cmとなる。このオニウシノケグサの生育に伴い、例えば土壌に含まれる油がオニウシノケグサの根圏で分解され、土壌に含まれる重油の量が減少する。
【0033】
さらに、2005年において、地上体積量がおよそ2,700cm、根の深さが20cmであったイタドリを、汚染濃度がおよそ5,000ppmである重油で汚染された土壌において1年間生育すると、地上体積量は116,000cmとなり、根の深さは20cmとなる。このイタドリの生育に伴い、例えば土壌に含まれる油がイタドリの根圏で分解され、土壌に含まれる重油の量が減少する。
【0034】
また、2005年において、地上体積量がおよそ1,700cm、根の深さが0cmであったヨモギを、汚染濃度がおよそ5,000ppmである重油で汚染された土壌において1年間生育すると、地上体積量は74,000cmとなり、根の深さは20cmとなる。このヨモギの生育に伴い、例えば土壌に含まれる油がヨモギの根圏で分解され、土壌に含まれる重油の量が減少する。
【0035】
ところで、上記ヨシ、ススキ、オニウシノケグサ、シロクローバー、リードカナリーグラス、イタドリ、ヨモギ、メマツヨイグサ、メドハギ、キョウチクトウ、ヤマモモ、セイヨウハコヤナギ、ヤマナラシ、イヌコリヤナギ、オノエヤナギ、ヤマハンノキ、ハマナス、ヤマハギ、ネムノキ、エニシダ、ダイズ、ニセアカシア、ヒメウキガヤ、アカメガシワ、ヌルデ、ナンキンハゼ、フキ、オオシロヤナギ、オオタチヤナギ、アカクローバー、グラジオラス、シュロソウ、ドロヤナギ、コゴメヤナギ、オーチャードグラスの35種の植物の中から、図3に示すように、10種類の植物を選定し、それらの植物を日本のある地区(A地区)の屋外と屋内において、油で汚染された土壌で生育する実験を行った。また、上記35種の植物の中から、図3に示すように、24種類の植物を選定し、上記と同一の地区(B地区)の屋内と屋外において、油で汚染された土壌でそれぞれ生育する実験を行った。さらに、上記35種類の植物の中から、図3に示すように、21種類の植物を選定し、上記と異なる地区(C地区)の屋内と屋外において、油で汚染された土壌でそれぞれ生育する実験を行った。その結果を図2に示す。
【0036】
なお、この実験では、油濃度は、テトラクロロエチレン抽出FTIR測定法を用いて測定した。また、図2に記す「相対濃度[C/Co]とは、試験初期油濃度[Co]で、測定したときの油濃度[C]をそれぞれ除した相対値である。
【0037】
図2に示すように、室外において油によって汚染された土壌で植物を生育した場合には、日数の経過にともない植物が油を分解し、土壌に含有される油の濃度が徐々に減少する。そして、1年経過すれば、土壌に含まれる油の量がほぼ半減する。
【0038】
この実施形態による油汚染土壌の浄化方法によれば、ヨシ、ススキ、オニウシノケグサ、シロクローバー、リードカナリーグラス、イタドリ、ヨモギ、メマツヨイグサ、メドハギ、キョウチクトウ、ヤマモモ、セイヨウハコヤナギ、ヤマナラシ、イヌコリヤナギ、オノエヤナギ、ヤマハンノキ、ハマナス、ヤマハギ、ネムノキ、エニシダ、ダイズ、ニセアカシア、ヒメウキガヤ、アカメガシワ、ヌルデ、ナンキンハゼ、フキ、オオシロヤナギ、オオタチヤナギ、アカクローバー、グラジオラス、シュロソウ、ドロヤナギ、コゴメヤナギ、オーチャードグラスの中から少なくとも一種類の植物を油が存在する土壌で生育させるため、上記植物の生育に伴って土壌に含まれる油が植物に分解され、それにより油で汚染された土壌を浄化することができる。しかも、土壌に含まれる油は植物で分解されるため、油を廃棄する必要がない。加えて、土壌洗浄法で油を除去するのに比して安価である。
【0039】
なお、上述した実施の形態において、油で汚染された土壌に上記植物の種を播いたり苗を植えたりすることで、原位置において上記植物を生育しても良いし、油で汚染された土壌を掘削し、その掘削した土壌を適宜の場所に運搬した後、その運搬後の土壌に上記植物の種を播いたり苗を植えたりすることで、上記植物を生育しても良い。原位置で植物を生育すれば、運搬するコストが不要となるため、安価に油汚染土壌を浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明において、油で汚染された土壌で1年間、植物を生育させたときの地上における地上体積量の増減、および根の深さの増減を植物毎に示したグラフである。
【図2】油で汚染された土壌を室内で放置したとき(室内コントロール)、室内において油で汚染された土壌で植物を生育したとき(室内生育)、または室外において油で汚染された土壌で植物を生育したとき(フィールド生育)において、土壌における油の相対濃度と、日数との関係をそれぞれ示すグラフである。
【図3】実験において使用した植物を示す図表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨシ、ススキ、オニウシノケグサ、シロクローバー、リードカナリーグラス、イタドリ、ヨモギ、メマツヨイグサ、メドハギ、キョウチクトウ、ヤマモモ、セイヨウハコヤナギ、ヤマナラシ、イヌコリヤナギ、オノエヤナギ、ヤマハンノキ、ハマナス、ヤマハギ、ネムノキ、エニシダ、ダイズ、ニセアカシア、ヒメウキガヤ、アカメガシワ、ヌルデ、ナンキンハゼ、フキ、オオシロヤナギ、オオタチヤナギ、アカクローバー、グラジオラス、シュロソウ、ドロヤナギ、コゴメヤナギ、オーチャードグラスの中から少なくとも一種類の植物を油が存在する土壌で生育させることを特徴とする油汚染土壌の浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−296182(P2008−296182A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−147454(P2007−147454)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(304003860)株式会社ジャパンエナジー (344)
【Fターム(参考)】