説明

油脂含有組成物およびその風味改良方法

【課題】油脂含有組成物の保存期間や加工処理時における加熱及び酸化等による異味異臭
の発生による不都合な風味をマスキングし、風味を改良する。
【解決手段】油脂含有組成物中、スクラロースを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂含有組成物及びその風味改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油脂類を多く含む食品、例えば、油脂類を多く含有するマーガリン、マヨネーズなどは時間の経過とともに風味の劣化が進むことはよく知られていて、特に開封後にその傾向が著しい。例えば、風味の劣化の原因は、その食品を構成している、例えば、糖類、蛋白質、脂肪、灰分、酸類が光、熱、酸素の影響を受けて酸化分解して揮発性化合物を生成し、または相互に反応して着色物質を生成したり、重合物質を形成するなど、製造時には予測出来なかった変化を生じる結果、品質の劣化、とりわけ風味の劣化をもたらす原因になっている。
【0003】
油脂含有食品の品質保持方法については種々の提案がなされており、酸化防止剤などを添加することが記載されている(例えば、特許文献1など)。しかし、これら酸化防止剤自体の風味が問題となることもあり、更なる風味を改良する方法が求められていた。
【特許文献1】特開平10−183164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題点の解決を目的とするものであり、油脂含有組成物の風味を改良することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記のごとき従来提案の欠点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、油脂含有組成物にスクラロースを添加することにより、油脂含有組成物の保存期間や加工処理時における加熱及び酸化等による異味異臭の発生による不都合な風味をマスキングし、風味を改良させることができることを見いだした。
【0006】
従って、本発明は、下記の態様を含むものである:
項1.スクラロースを含有することを特徴とする油脂含有組成物。
項2.油脂含有組成物中、油脂を10質量%以上含有するものである項1に記載の油脂含有組成物。
項3.スクラロースの含有量が油脂含有組成物中0.0001〜0.2質量%である、項1又は2に記載の油脂含有組成物。
項4.スクラロースを含有することを特徴とする油脂含有組成物の風味改良方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、油脂含有組成物の保存期間や加工処理時における加熱及び酸化等による異味異臭の発生による不都合な風味をマスキングし、風味を改良させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、油脂含有組成物中、スクラロースを含有することを特徴とする。本発明で使用するスクラロースは、ショ糖分子内のフルクトース残基の1、6位およびグルコース残基の4位の三つの水酸基を塩素分子で置換した構造をしており、ショ糖の約600倍の良質の甘味を示す高甘味度甘味料である。油脂含有組成物中のスクラロースの含有量としては、当該組成物や含有される油脂の種類によって適宜配合することができるが、0.0001〜0.2質量%、好ましくは、0.001〜0.06質量%、更に好ましくは0.002〜0.02質量%を挙げることができる。なお、本発明で使用するスクラロースは商業上入手可能であり、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のサンスイートシリーズなどを挙げることができる。
【0009】
なお、本発明ではスクラロース以外の、アセスルファムカリウム、ソーマチン及びアリテームなどの高甘味度甘味料を併用してもよい。なお、アスパルテームやネオテームといった加熱により分解し甘味が減少しやすい傾向にある高甘味度甘味料も、加熱方法によっては用いることもできるが、他の熱安定性に優れた高甘味度甘味料と併用することがより好ましい。
【0010】
また、スクラロースは、適当な希釈剤もしくは担体との組成物の形態であってもよい。このような希釈剤もしくは担体の例としては、アラビアガム、デキストリン、グルコース、サイクロデキストリン等の如き固体希釈剤もしくは担体、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、界面活性剤等の如き液体希釈剤もしくは担体を挙げることができる。かかる希釈剤もしくは担体を用いて液状、乳液状、ペースト状、粉末状、顆粒状その他適宜の剤形とすることができる。
【0011】
本発明における油脂含有組成物に含まれる油脂に特に制限はなく、例えば、練りこみ用油脂組成物、ココアバター、パセリシードオイル、植物性ステロール、植物性スタノール、ステロールエステル、ローズオイル、脂肪酸(EPA、DPA)、肝油(サメ由来など)、ジアシルグリセリルエーテル(DAGE)、アラキドン酸(ARA)、中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)、アシルグリセリン、アマニ種子油、米ぬか油、共役リノレン酸(CLA)、CLAグリセライド、CLA脂肪酸、CLAアルキルエステル、部分的エステル化ポリオールポリエステル脂肪酸、グレープシードオイル、カズノコ油、オート麦油、オレイン酸、パルミチン酸、天然カロチンオイル、沙棘オイル(果実・種子)、シソオイル、しょうが油、ニンニクオイル、ノコギリヤシ油、はと麦オイル、α−リノレン酸、バターオイル、無水乳脂、ギー、植物油脂、豚脂、牛脂、魚油、獣脂、乳化脂肪(水中油型、油中水型)、濃縮バター、低脂肪バター、低脂肪マーガリン、脂肪をベースにしたデザート、リンゴバター、バターオイル、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、オメガー6脂肪酸、オメガー3脂肪酸やその混合物、PS(フォスファチジルセリン)、リノレン酸、シソ・エゴマ油、亜麻、フラックスシード(亜麻仁)油、月見草油、ボラージ油、CLA(共役リノール酸)、沙棘油(サージオイル)、スフィンゴミエリン、魚油、タラ肝臓油、トリグリセライド、HDLコレステロール、LDLコレステロール、コーンオイル、マツヨイ草油、フィトステロール、フィトステロールエステル、オジシアルキル化アルコール潤滑剤、キャノーラ油、大豆ステロール、フィトステロール、ヘイゼルナッツ油、ヤシ実油、リン脂質、スフィンゴ糖脂質、ライスレシチン、ライスセラミド、ワックス、オコタコサノールなどを挙げることができるが、これらに限定されない。また、油脂のうち1種類を使用することも出来るが、2種類以上を併用しても構わない。
【0012】
本発明の油脂含有組成物中における油脂の配合量としては、10質量%以上、好ましくは、30質量%以上のものを挙げることができる。
【0013】
本発明品を使用することができる油脂含有組成物は、適当な乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなど)や分散剤(アラビアガム、ガティガムなど)を用いて乳化製剤としたものであってもよく、或いは、マーガリン、ファットスプレッド、ピーナッツバター、マヨネーズ、バタークリーム、バター、コーヒーホワイトナー、ドレッシング、クリーム、チーズ類等のような加工食品であってもよい。好ましくは、油脂含有組成物において上記油脂類を50%以上含有する製剤或いは、ファットスプレッド、マーガリン、マヨネーズなどを例示することができる。
【0014】
本発明に係る油脂含有組成物は、必須原料としてスクラロース及び油脂の他に、その他必要に応じて本発明の効果を損なわない限りにおいて糖類、イースト、食塩、乳製品、調味料(グルタミン酸類、核酸等)、化学膨脹剤、香料、色素、酸化防止剤、保存料等を添加混合してもよい。特に、油脂含有組成物が乳化製剤や分散剤のような製剤の形態を取る場合には、グリセリン脂肪酸エステルやショ糖脂肪酸エステルといった公知の乳化剤、アラビアガム等の分散剤により溶媒中に安定に分散させ、そのまま溶液状の製剤としたり、デキストリン等の担体を用いた粉末化製剤としてもよい。
【0015】
本発明に係る油脂含有組成物の製造工程は、スクラロースを含有して調製する以外は、通常用いられる方法であれば特に制限はない。スクラロースを油脂含有組成物に練り込む工程についても特に制限はなく、粉体で混合したり、あらかじめ水中に溶かして使用したりすることができ、加熱工程前であればどの工程中で添加しても良い。
【実施例】
【0016】
以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例等を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。特に断りのない限り、「部」は「重量部」を示すものとし、文中「*」は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製を示す。
【0017】
実験例1:チョコレート(油脂含量約36質量%)の調製(1)
下記表1に掲げる処方の通り、定法によりチョコレートを調製した。得られたチョコレートは油脂の加工処理時における加熱による劣化臭が感じられない良好な風味であった。また、得られたチョコレートを常温(25℃)で3ヶ月間保存後食したが、保存期間における酸化等による異味異臭の発生による不都合な風味がマスキングされていた。また、実施例のスクラロース・還元乳糖に代えて、砂糖を使用した以外は、実施例1と同様の処方でチョコレートを調製し(比較例1)、常温で3ヶ月保存後食したが、保存中の劣化臭が感じられた。
【0018】
【表1】

【0019】
実施例2:チョコレート(油脂含量約35質量%)の調製(2)
下記表2に掲げる処方の通り、定法によりチョコレートを作成した。得られたチョコレートは油脂の加工処理時における加熱による劣化臭が感じられない良好な風味であった。また、得られたチョコレートを常温(25℃)で3ヶ月間保存後食したが、保存期間における酸化等による異味異臭の発生による不都合な風味がマスキングされていた。
【0020】
【表2】

【0021】
実施例3:セパレートドレッシング(からし明太子風味)
下記表3に示す処方に従って、からし明太子風味のセパレートドレッシングを調製した。詳細には、水と果糖ぶどう糖液糖に、ジェランガム含有製剤とこんにゃく加工品の粉体混合物を加え、80℃10分間加熱攪拌溶解した。更に、淡口醤油、白しょうゆ、スクラロース、レモン果汁透明濃縮還元、食塩、L−グルタミン酸ナトリウム、かつお風味調味料、調味料を加え溶解させた後、醸造酢、リンゴ酢、香料、一味唐辛子を加え攪拌し、水層部を調製した。一方、油層部としてコーンサラダ油14.9kg、辛子明太子フレーバー(カラシメンタイコ オイルNo.47284*)0.1kgを攪拌混合し、合計15kgの油層部を調製した。そして、水層部と油層部が85:15の割合となるように容器に充填・殺菌し、からし明太子風味のセパレートドレッシング(pH3.8)を調製した。
【0022】
【表3】

【0023】
注1)サンライク※カツオ M*を使用した。
注2)サンライク※ アミノベース NAG*を使用した。
注3)ビストップ※ D−1796*を使用した。
注4)サンスマート※300*を使用した。
注5)カラシメンタイコ オイル NO.47284*を使用した。
【0024】
スクラロースを含有して得られたドレッシング(実施例3)は調製時の殺菌工程による
油脂の劣化臭が感じられず、からし明太子風味が強調された良好な風味をもつドレッシン
グとなった。更には、調製したドレッシングを蛍光灯下に、15日間室温保存した後に食
したが、保存期間における酸化等による異味異臭の発生による不都合な風味がマスキング
されていた。一方、スクラロースを含有せずに調製されたドレッシング(比較例2)も同
様にして、蛍光灯下に、15日間室温保存した後に食したが、保存中の劣化臭が感じられ
た。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明により、油脂含有組成物の保存期間や加工処理時における加熱及び酸化等による
異味異臭の発生による不都合な風味をマスキングし、風味を改良することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクラロースを含有することを特徴とする油脂含有組成物。
【請求項2】
油脂含有組成物中、油脂を10質量%以上含有するものである請求項1に記載の油脂含有
組成物。
【請求項3】
スクラロースの含有量が油脂含有組成物中0.0001〜0.2質量%である、請求項1
又は2に記載の油脂含有組成物。
【請求項4】
スクラロースを含有することを特徴とする油脂含有組成物の風味改良方法。

【公開番号】特開2008−99680(P2008−99680A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245994(P2007−245994)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】