説明

油脂組成物およびその製造方法

【課題】
バター様の独特の風味を持ち、かつ、好ましい塩味発現を有する油脂組成物および油脂組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】
含硫化合物を0.001〜10ppm含有させることによって、良好なバター風味をもつ油脂組成物を得ることができる。また、原料油脂からなる油相に、粉乳および食塩を含有する水相を徐々に添加する混合工程と、混合工程によって得られた混合物を加熱する加熱工程と、加熱工程後の混合物を急冷可塑化する急冷工程を有する油脂組成物の製造方法において、混合工程を経た以後の混合物に含硫化合物を0.001ppm〜10ppmとなるように添加する添加工程を有することを特徴とする油脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バター様の風味を有する油脂組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、製菓・製パン・調理用油脂として、バターは広く用いられている。マーガリンに比べ、バターは“美味しさ”という風味上の利点があるが、一方でマーガリンに比べ高価であるという価格上の問題、低温でのスプレッド性不良等の物性上の問題がある。そこでバターに代えて可塑性に優れるマーガリンが使用されることが多くなっている。但し、マーガリンはバターに比べて風味が劣るため、バターとマーガリンの欠点を相互に補うためにバターコンパウンドマーガリン(以下、コンパウンドマーガリンと略す)が存在する。しかし、コンパウンドマーガリンであってもバターに比べると風味上の満足感には乏しいのが現実である。このため、バターの香気成分を解析した事例は多数存在するが、こうした解析は、香気成分を分析する手法によって結果が大きく異なっているため、人口的に完全な状態でバターの組成を再現することは困難である。よって数多くのバラエティに富んだバターフレーバーが製造されているのが現状である。
特許文献1には、良好なバター風味を有する油脂組成物の方法が記載されているが、これは水相のpHを調整し醗酵バターを添加する方法で、風味は酸味の方向に移行する。日本では非発酵型のスイートバターが主流であり、酸味のある風味はバター風味としての認知が浅いため、現状は好ましくない。また、特許文献2などにはスターター醗酵菌留出物や醗酵バター用培養濃縮物などを含有することによりマーガリンの風味の改善を狙ったものがあるが、いずれもマーガリンの風味は改善されるものの、こちらも基本的には風味が酸味の方向へ向かうため、上記理由を含め、十分なものではなかった。
このほか、乳脂肪分を含有する油中水型乳化油脂が提案されている(特許文献3、特許文献4、特許文献5)。しかしながら、乳脂肪分を含有する方法は、乳脂肪分を高含有することで風味を得ており、乳脂肪を減らしていくとその分風味が弱くなってしまうという欠点があるため、バターの代替としての効果、すなわち安価な油脂組成物で代用するという目的からすると十分な効果があるとはいえないものであった。また、バターの良好な風味の要因の一つに“塩味”があるが、過剰な塩分の添加は健康面の問題から好ましくないことから、塩分を増加させること無く、適度な塩味を付与する方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3916317号
【特許文献2】特開2002−345403号公報
【特許文献3】特開2006−34102号公報
【特許文献4】特開平11−276069号公報
【特許文献5】特開2002−345403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、良好な風味を有する油脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題の解決を目指し鋭意研究を進めたところ、油脂組成物中に含硫化合物を含有させることで、良好な風味を付与できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち本発明は、以下の態様を含むものである。
(1)含硫化合物を0.001〜10ppm含有することを特徴とする油脂組成物。
(2)脂肪酸誘導体を0.01〜10ppm、脂肪酸を0.01〜100ppm、ラクトンを0.01〜10ppm含有することを特徴とする請求項1記載の油脂組成物。
(3)塩分含量が2%以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の油脂組成物。
(4)乳脂肪含量が80重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至3記載の油脂組成物。
(5) 請求項1乃至4のいずれかに記載の油脂組成物を含有することを特徴とする食品。
(6)原料油脂からなる油相に、粉乳および食塩を含有する水相を徐々に添加する混合工程と、混合工程によって得られた混合物を加熱する加熱工程と、加熱工程後の混合物を急冷可塑化する急冷工程を有する油脂組成物の製造方法において、混合工程を経た以後の混合物に含硫化合物を0.001ppm〜10ppmとなるように添加する添加工程を有することを特徴とする油脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の油脂組成物は、バター様の風味を有し、かつ良好な塩味発現を有するものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明で使用する油脂としては、通常食用として用いられているものであれば植物油脂、動物油脂のいずれでもよく、例えば乳脂、牛脂、豚脂、大豆油、綿実油、米油、コーン油、ヤシ油、パーム油、カカオ脂等が挙げられ、これらを単独或いは混合、硬化、分別、エステル交換したものを単独或いは2種以上を混合して用いることが出来る。本発明においては、乳脂を配合することも可能ではあるが、乳脂は必須ではなく、油脂中80重量%以下の使用でも問題なくバター様の風味を持たせることが可能である。
【0010】
前述の油脂を油相として使用し、一方の水相は、全脂粉乳や脱脂粉乳、バターミルク粉、ホエーパウダー、食塩などを水に溶解することで調整する。食塩の添加量は、最終的な塩分含量が2%以下となるようにすることが望ましい。
油層と水相を混合した後、混合物に含流化合物を添加するが、油脂組成物中の含硫化合物の含有量が0.001ppm〜10ppmとなるように添加する。なお、一般に油脂組成物の香気成分は、製造直後から徐々に放散し、2週間程度で安定する。含硫化合物についても同様で、2週間保存後の油脂組成物では、配合量の1%〜10%程度減少するため、製品設計上はこれを考慮して配合量を決定することが望ましい。油脂組成物中の含硫化合物の含有量が0.001ppm以下では十分な風味が得られず、10ppmよりも多い場合は風味が強くなりすぎ、悪化することになる。
【0011】
本発明の油脂組成物では、通常油脂組成物に使用されるフレーバー類を用いることも可能である。例えば、生乳、脱脂乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、乳清、生クリーム、チーズ類、ヨーグルト類、バター、バターミルク又はこれらを濃縮加工したものを脂質分解酵素、蛋白質分解酵素、糖分解酵素を用いたものの1種又は2種以上を組合せたフレーバーを挙げることが出来る。これらの配合割合は、油脂100重量%に対して0.01〜10重量%、さらに望ましくは0.05〜5重量%の範囲である。配合割合が0.01重量%未満では十分な風味が得られず、10重量%を越えて配合しても効果は頭打ちとなる。
【0012】
本発明は、混合工程後に含硫化合物を添加することを特徴とするが、添加する含硫化合物としては、例えば、メチルメルカプタン、イソブチルメルカプタン、2,4−ジチアペンタン、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、酪酸チオメチルエステルが挙げられ、これらを組合せて添加してもよい。
【0013】
本発明では、加熱工程後、含硫化合物を加えるのと同じタイミングで、脂肪酸誘導体を0.01〜10ppm、脂肪酸を0.01〜100ppm、ラクトンを0.01〜10ppm含有させることによってより良好な風味を付与することが出来る。
脂肪酸誘導体としてはアルデヒド類、メチルケトン類、脂肪酸エステル類があげられ、炭素数4〜20までの成分が好ましく、脂肪酸としては酪酸を始めとした炭素数4〜16の脂肪酸がこのましく、ラクトンとしてはγ型及びδ型の炭素数4〜14までの成分が好ましく挙げることができ、またこれらのものを組合せて使用してもよい。
【実施例】
【0014】
以下に本発明の実施例を示して詳細に説明すると共に、比較例を示し、本発明の効果をより明瞭にする。ただし、実施例は本発明の態様の1つであり、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0015】
大豆硬化油(融点32℃)650kgを配合して油相を調製した。これに、全脂粉乳20kgと食塩10kgを水350kgに溶解した水相を徐々に添加し混合物とした後、80℃で10分間加熱した。これに、含硫化合物として、酪酸チオメチルエステルが0.001ppm、脂肪酸誘導体として、エチルブチレートを0.1ppm、エチルヘキサノエートを1ppm、エチルオクタノエートを3ppm、エチルデカノエートを2.5ppm、2―ブタノンを0.1ppm、2−ペンタノンを0.1ppm、2-へプタノンを0.5ppm、2-ノナノンを0.01ppm、2-ウンデカノンを0.05ppm、脂肪酸として、酪酸を2ppm、カプロン酸を3ppm、オクタン酸を3ppm、デカン酸を5ppm、ラクトンとして、γオクタラクトンを0.05ppm、γノナラクトンを0.05ppm、γデカラクトンを0.1ppm、δノナラクトンを0.05ppm、δデカラクトンを0.1ppm、δウンデカラクトンを0.5ppm、となるように添加した後、かきとり式冷却機にて急冷可塑化し油脂組成物(実施例品1)を得た。
【実施例2】
【0016】
大豆硬化油(融点32℃)850kgを配合して油相を調製した。これに、全脂粉乳20kgと食塩10kgを水130kgに溶解した水相を徐々に添加し混合物とした後、80℃で10分間加熱した。これに含硫化合物として、ジメチルスルフィドが10ppm、脂肪酸誘導体として、エチルブチレートを0.5ppm、エチルヘキサノエートを1ppm、エチルオクタノエートを2ppm、エチルデカノエートを2.5ppm、2―ブタノンを0.1ppm、2−ペンタノンを0.1ppm、2-へプタノンを0.5ppm、2-ノナノンを0.01ppm、2-ウンデカノンを0.05ppm、脂肪酸として、酪酸を2ppm、カプロン酸を3ppm、オクタン酸を3ppm、デカン酸を5ppm、ラクトンとして、γオクタラクトンを0.05ppm、ノナラクトンを0.05ppm、γデカラクトンを0.1ppm、δノナラクトンを0.1ppm、δデカラクトンを0.1ppm、δウンデカラクトンを0.1ppmとなるように添加した後、かきとり式冷却機にて急冷可塑化し油脂組成物(実施例品2)を得た。
【実施例3】
【0017】
大豆硬化油(融点32℃)650kgを配合して油相を調製した。これに、全脂粉乳20kgと食塩15kgを水350kgに溶解した水相を徐々に添加し混合物とした後、80℃で10分間加熱した。これに含硫化合物として、酪酸チオメチルエステル3ppm、ジメチルスルフィド4ppm、脂肪酸誘導体として、エチルブチレート0.5ppm、エチルヘキサノエート1ppm、エチルオクタノエート2ppm、エチルデカノエート2.5ppm、2―ブタノン0.1ppm、2−ペンタノン0.1ppm、2-へプタノン0.5ppm、2-ノナノン0.01ppm、2-ウンデカノン0.05ppm、脂肪酸として、酪酸2ppm、カプロン酸3ppm、オクタン酸3ppm、デカン酸5ppm、ウンデカン酸5ppm、ラクトンとして、γオクタラクトン0.05ppm、γノナラクトン0.05ppm、γデカラクトン0.1ppm、δノナラクトン0.1ppm、δデカラクトン0.1ppm、δウンデカラクトン0.1ppmとなるように添加した後、かきとり式冷却機にて急冷可塑化し油脂組成物(実施例品3)を得た。
【実施例4】
【0018】
大豆硬化油(融点32℃)850kgを配合して油相を調製した。これに、全脂粉乳20kgと食塩15kgを水130kgに溶解した水相を徐々に添加し混合物とした後、80℃で10分間加熱した。これに含硫化合物としてジメチルスルフィドを0.2ppm、酪酸チオメチルエステルを1.6ppm、脂肪酸誘導体として、エチルブチレートを0.5ppm、エチルヘキサノエートを1ppm、エチルオクタノエートを2ppm、エチルデカノエートを2.5ppm、2―ブタノンを0.1ppm、2−ペンタノンを0.1ppm、2-へプタノンを0.5ppm、2-ノナノンを0.01ppm、2-ウンデカノンを0.05ppm、脂肪酸として、酪酸を2ppm、カプロン酸を3ppm、オクタン酸を3ppm、デカン酸を5ppm、ウンデカン酸5をppm、ラクトンとして、γオクタラクトンを0.05ppm、γノナラクトンを0.05ppm、γデカラクトンを0.1ppm、δノナラクトンを0.1ppm、δデカラクトンを0.1ppm、δウンデカラクトンを0.1ppmとなるように添加した後、かきとり式冷却機にて急冷可塑化し油脂組成物(実施例品4)を得た。
【0019】
[比較例1]
大豆硬化油(融点32℃)850kgを配合して油相を調製した。これに、全脂粉乳20kgと食塩10kgを水130kgに溶解した水相を徐々に添加し混合物とした後、80℃で10分間加熱した。これに脂肪酸誘導体として、エチルブチレートを1.5ppm、エチルヘキサノエートを2ppm、エチルオクタノエートを4ppm、エチルデカノエートを2.5ppm、2―ブタノンを0.1ppm、2−ペンタノンを0.1ppm、2-へプタノンを0.5ppm、2-ノナノンを0.01ppm、2-ウンデカノンを0.05ppm、脂肪酸として、酪酸を2ppm、カプロン酸を3ppm、オクタン酸を2ppm、デカン酸を5ppm、ウンデカン酸を5ppm、ラクトンとして、γオクタラクトンを0.05ppm、γノナラクトンを0.05ppm、γデカラクトンを0.1ppm、δノナラクトンを0.1ppm、δデカラクトンを0.1ppm、δウンデカラクトンを0.1ppmを添加し、かきとり式冷却機にて急冷可塑化し油脂組成物(比較例品1)を得た。
【0020】
[比較例2]
大豆硬化油(融点32℃)850kgを配合して油相を調製した。これに、全脂粉乳20kgと食塩15kgを水130kgに溶解した水相を徐々に添加し混合物とした後、80℃で10分間加熱した。これに脂肪酸誘導体として、エチルブチレートを0.5ppm、エチルヘキサノエートを1ppm、エチルオクタノエートを2ppm、エチルデカノエートを2.5ppm、2―ブタノンを0.1ppm、2−ペンタノンを0.1ppm、2-へプタノンを0.5ppm、2-ノナノンを0.01ppm、2-ウンデカノンを0.05ppm、脂肪酸として、酪酸を2ppm、カプロン酸を3ppm、オクタン酸を3ppm、デカン酸を5ppm、ウンデカン酸を5ppm、ラクトンとして、γオクタラクトンを0.05ppm、γノナラクトンを0.05ppm、γデカラクトンを0.1ppm、δノナラクトンを0.1ppm、δデカラクトンを0.1ppm、δウンデカラクトンを0.1ppm、となるように添加した後、かきとり式冷却機にて急冷可塑化し油脂組成物(比較例品2)を得た。
【0021】
[比較例3]
大豆硬化油(融点32℃)850kgを配合して油相を調製した。これに、全脂粉乳20kgと食塩20kgを水130kgに溶解した水相を徐々に添加し混合物とした後、80℃で10分間加熱した。これに脂肪酸誘導体として、エチルブチレートを3.5ppm、エチルヘキサノエートを1ppm、エチルオクタノエートを2ppm、エチルデカノエートを2.5ppm、2―ブタノンを0.1ppm、2−ペンタノンを0.1ppm、2-へプタノンを0.5ppm、2-ノナノンを0.01ppm、2-ウンデカノンを0.05ppm、脂肪酸として、酪酸を10ppm、カプロン酸を5ppm、オクタン酸を8ppm、デカン酸を2ppm、ウンデカン酸を1ppm、ラクトンとして、γオクタラクトンを0.05ppm、γノナラクトンを1ppm、γデカラクトンを0.1ppm、δノナラクトンを0.1ppm、δデカラクトンを2ppm、δウンデカラクトンを1ppm、となるように添加した後、かきとり式冷却機にて急冷可塑化し油脂組成物(比較例品3)を得た。
【0022】
[比較例4]
乳脂肪50kg、大豆硬化油(融点32℃)800kgを配合して油相を調製した。これに、全脂粉乳20kgと食塩15kgを水130kgに溶解した水相を徐々に添加し混合物とした後、80℃で10分間加熱した。これに脂肪酸誘導体として、エチルブチレートを1ppm、エチルヘキサノエートを2ppm、エチルオクタノエートを5ppm、エチルデカノエートを4ppm、2―ブタノンを0.1ppm、2−ペンタノンを0.1ppm、2-へプタノンを0.5ppm、2-ノナノンを0.1ppm、2-ウンデカノンを0.5ppm、脂肪酸として、酪酸を2ppm、カプロン酸を3ppm、オクタン酸を3ppm、デカン酸を5ppm、ウンデカン酸を5ppm、ラクトンとして、γオクタラクトンを0.05ppm、γノナラクトンを0.05ppm、γデカラクトンを0.1ppm、δノナラクトンを1ppm、δデカラクトンを1ppm、δウンデカラクトンを5ppmとなるように添加した後、これを、かきとり式冷却機にて急冷可塑化し油脂組成物(比較例品4)を得た。
【0023】
[比較例5]
乳脂肪50kg、大豆硬化油(融点32℃)800kgを配合して油相を調製した。これに、全脂粉乳20kgと食塩20kgを水130kgに溶解した水相を徐々に添加し混合物とした後、80℃で10分間加熱した。これに脂肪酸誘導体として、エチルブチレートを0.3ppm、エチルヘキサノエートを1ppm、エチルオクタノエートを2ppm、エチルデカノエートを2.5ppm、2―ブタノンを0.1ppm、2−ペンタノンを0.1ppm、2-へプタノンを0.5ppm、2-ノナノンを0.01ppm、2-ウンデカノンを0.05ppm、脂肪酸として、酪酸を3ppm、カプロン酸を5ppm、オクタン酸を3ppm、デカン酸を5ppm、ウンデカン酸を5ppm、ラクトンとして、γオクタラクトンを0.05ppm、γノナラクトンを0.05ppm、γデカラクトンを0.1ppm、δノナラクトンを0.1ppm、δデカラクトンを0.1ppm、δウンデカラクトンを0.2ppmとなるように添加した後80℃で10分間加熱した。これを、かきとり式冷却機にて急冷可塑化し油脂組成物(比較例品5)を得た。
【0024】
[比較例6]
乳脂肪50kg、大豆硬化油(融点32℃)800kgを配合して油相を調製した。これに、全脂粉乳20kgと食塩15kgを水130kgに溶解した水相を徐々に添加し混合物とした後、80℃で10分間加熱した。これに含硫化合物としてジメチルスルフィドを30ppm、脂肪酸誘導体として、エチルブチレートを0.5ppm、エチルヘキサノエートを1ppm、エチルオクタノエートを2ppm、エチルデカノエートを2.5ppm、2―ブタノンを0.1ppm、2−ペンタノンを0.1ppm、2-へプタノンを0.5ppm、2-ノナノンを0.01ppm、2-ウンデカノンを0.05ppm、脂肪酸として、酪酸を2ppm、カプロン酸を3ppm、オクタン酸を3ppm、デカン酸を5ppm、ウンデカン酸を5ppm、ラクトンとして、γオクタラクトンを0.05ppm、γノナラクトンを0.05ppm、γデカラクトンを0.1ppm、δノナラクトンを0.1ppm、δデカラクトンを0.1ppm、δウンデカラクトンを0.1ppmとなるように添加した後80℃で10分間加熱した。これを、かきとり式冷却機にて急冷可塑化し油脂組成物(比較例品6)を得た。
【0025】
[比較例7]
大豆硬化油(融点32℃)850kgを配合して油相を調製した。これに、全脂粉乳20kgと食塩15kgを水130kgに溶解した水相を徐々に添加し混合物とした後、80℃で10分間加熱した。これに含硫化合物として、酪酸チオメチルエステルを30ppm、脂肪酸誘導体として、エチルブチレートを0.5ppm、エチルヘキサノエートを1ppm、エチルオクタノエートを2ppm、エチルデカノエートを2.5ppm、2―ブタノンを0.1ppm、2−ペンタノンを0.1ppm、2-へプタノンを0.5ppm、2-ノナノンを0.01ppm、2-ウンデカノンを0.05ppm、脂肪酸として、酪酸を2ppm、カプロン酸を3ppm、オクタン酸を3ppm、デカン酸を5ppm、ウンデカン酸を5ppm、ラクトンとして、γオクタラクトンを0.05ppm、γノナラクトンを0.05ppm、γデカラクトンを0.1ppm、δノナラクトンを0.1ppm、δデカラクトンを0.1ppm、δウンデカラクトンを0.1ppmとなるように添加した後80℃で10分間加熱した。これを、かきとり式冷却機にて急冷可塑化し油脂組成物(比較例品7)を得た。
【0026】
表1に実施例品及び比較例品の含硫化合物、脂肪酸誘導体、脂肪酸、ラクトンの添加量を示す。
【0027】
【表1】

【0028】
[試験例1]
実施例品1〜4および比較例品1〜6を用いて官能評価を行った。60名のパネルに、実施例品1〜4および比較例品1〜6をそれぞれトーストに塗布し、食した時の「バター風味の強さ」、「バター風味の好ましさ」、「塩味の強さ」、「塩味の好ましさ」について、5段階の絶対評価方式で評価を行った。官能評価結果の平均点を表2に示す。
【0029】
【表2】

【0030】
表1、表2より、含流化合物が0.001〜10ppm含まれ、さらに脂肪酸誘導体を0.01〜10ppm、脂肪酸を0.01ppm〜100ppm、ラクトンを0.01〜10ppm含有している実施例において、塩分含量に関わらず、バター風味及び、塩味の嗜好性が高い結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含硫化合物を0.001〜10ppm含有することを特徴とする油脂組成物。
【請求項2】
脂肪酸誘導体を0.01〜10ppm、脂肪酸を0.01〜100ppm、ラクトンを0.01〜10ppm含有することを特徴とする請求項1記載の油脂組成物。
【請求項3】
塩分含量が2%以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の油脂組成物。
【請求項4】
乳脂肪含量が80重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至3記載の油脂組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の油脂組成物を含有することを特徴とする食品。
【請求項6】
原料油脂からなる油相に、粉乳および食塩を含有する水相を徐々に添加する混合工程と、混合工程によって得られた混合物を加熱する加熱工程と、加熱工程後の混合物を急冷可塑化する急冷工程を有する油脂組成物の製造方法において、混合工程を経た以後の混合物に含硫化合物を0.001〜10ppmとなるように添加する添加工程を有することを特徴とする油脂組成物の製造方法。