説明

治療のモニタリング

本発明は、治療の有効性をモニターする方法であって、前記治療がRas/Raf/MEK/ERK経路の異常活性を含む疾患を治療するように設計された阻害剤を含む方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインビボイメージングに関し、特に治療のモニタリングに対するインビボイメージングの応用に関する。詳しくは、本発明はRas/Raf/MEK/ERK経路に作用する薬剤による黒色腫の治療をモニターするために適している。
【背景技術】
【0002】
RGDペプチドに基づく多数のインビボイメージング剤がインテグリン発現の検出のために適することが知られており、これらは例えば国際公開第2002/26776号、同第2003/006491号、同第2005/012335号及び同第2006/54904号に記載されている。これらのイメージング剤は細胞表面インテグリンを標的化し、ある範囲の血管新生関連病態の診断に有用であると教示されている。これらの先行技術文献はまた、RGDペプチドに基づくこれらのイメージング剤が血管新生関連病態の治療をモニターする際にも有用であることを教示している。
【0003】
生理学的には、Ras/Raf/MEK/ERKシグナリング経路(MEK:マイトジェン活性化プロテインキナーゼ/細胞外シグナル関連キナーゼキナーゼ(itogen−activated protein kinase/xtracellular signal related kinase inase)、ERK:細胞外シグナル関連キナーゼ(xtracellular signal elated inase)は、(Peyssonnaux and Eychene Biology of the Cell 2001;93:3−62に総説されているように)細胞増殖、分化、生存、不死化及び血管新生を含む各種の細胞機能の調節において中心的な役割を果たす。この経路はすべての真核生物間で高度に保存されており、各種の細胞外シグナルを核中にトランスデュースする際に肝要な役割を果たす。成長因子及びインテグリンの接合作用がRas/Raf/MEK/ERKシグナリング経路を活性化して血管新生をもたらすと考えられている(Hood et al J.Cell Biol.2003;162(5):933−43)。これは、αvβ3−インテグリン発現の阻害がERKシグナリングを抑制して内皮細胞のアポトーシス及び血管新生の阻止をもたらすという事実によって裏付けられる(Eliceiri et al J Cell Biol.1998;140:1255−1263)。この「アウトサイド・イン(outside−in)」シグナリングに加えて、並行した「インサイド・アウト(inside−out)」シグナリング機構も示されている。Woods et al(Mol.Cell Biol.2001;21(9):3192−205)は、ヒト黒色腫細胞株におけるMEK1の薬理学的阻害が細胞表面のα6及びβ3インテグリンの発現低下をもたらすことを実証した。
【0004】
ある範囲の疾患においてRas/Raf/MEK/ERK経路の異常な又は不適切な機能が確認され、特に癌の腫瘍形成挙動においてRas/Raf/MEK/ERK経路の構成性活性化が確認された。黒色腫の9〜15%を含め、すべての癌の約30%においてRasの活性化突然変異が見出される(Bos Cancer Research 1989;49(17):4682−9)。構成性活性化をもたらすB−Rafの体細胞ミスセンス突然変異は黒色腫において一層頻度が高く、60〜66%の悪性皮膚黒色腫で見出される(Davies et al.,Nature 2002;417:949 954)。B−Rafにおいて最も頻度が高い突然変異(80%)は、599位におけるバリンからグルタミン酸への置換(V599E)である。これらのB−Raf置換はB−Rafの基礎キナーゼ活性を高め、Ras及び成長因子受容体の活性化を含む上流の増殖駆動因子からRas/Raf/MEK/ERKシグナリングを切り離してERKの構成性活性化をもたらすと考えられる。変異したB−Rafタンパク質は、黒色腫細胞の生存能力及びトランスフォーメーションにとって必須であることが実証されている(Hingorani et al.,Cancer Res.2003;63:5198−5202)。
【0005】
最近の数年間において、B−Rafを阻害する化合物の癌治療における評価に関する多数の抄録及び科学論文が発表されている(Eisen et al Br.J.Cancer 2006;95P:581−6、Gatzemeier et al Proc.Am.Soc.Clin.Oncol.2006;24:abstract 7002、Wu et al Prostate Cancer Symposium.San Francisco,CA,USA.Feb 24−26,2006:abstract 259、及びFlaherty et al Proc.Am.Soc.Clin.Oncol.2003;22:410)。加えて、MEKを阻害する化合物の癌治療における評価に関する様々な報告も発表されている(Sebolt−Leopold et al Nat.Med.1999;5:810−6、Sebolt−Leopold et al Nat.Rev.Cancer 2004;4:937−47、Alessi et al J.Biol Chem.1995;270(46):27489−94、Haas et al Melanoma Res.2006;16:S92−S93、Adjei et al J.Clin.Oncol.2008;26(13):2139−46、及びMackin et al J.Surgical Res.2006;130(2):262)。
【0006】
B−Raf又はMEKの阻害は、Ras又はB−Rafの活性化突然変異を有する黒色腫を効果的に治療するものと期待される。しかし、一定割合の黒色腫はかかる治療に応答しないであろう。最良の治療計画を選択するためには、(i)B−Raf又はMEK阻害剤に応答する黒色腫と(ii)応答しない黒色腫とを識別できることが有益であろう。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、先行技術の上述した問題を解決する方法を提供する。本発明の方法はインビボイメージングを用いて黒色腫治療の有効性をモニターするものであり、したがって最小限の侵襲性を有する。本発明の方法は治療に対する初期応答を観察するために使用でき、特定の治療が適当であるか否か、或いはそれを継続すべきか否かを判定するために役立ち得る。臨床用として承認された治療法の有効性をモニターするのに有用であるばかりでなく、本発明の方法は、新しい治療法の開発(例えば、最適用量及び投与計画の決定)において並びに治療に最も応答しそうな被験体を同定するために応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、拡大した外腸骨リンパ節中の転移性黒色腫腫瘍を示すPETスキャンである。
【図2】図2は、左腹膜後腔中の転移性黒色腫腫瘍を示すPETスキャンである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一態様では、本発明は、B−raf、MEK1/2(MEK:マイトジェン活性化プロテインキナーゼ/細胞外シグナル関連キナーゼキナーゼ(itogen−activated protein kinase/xtracellular signal related kinase inase))又はERK1/2(ERK:細胞外シグナル関連キナーゼ(xtracellular signal elated inase))の阻害剤であって、黒色腫に罹患した被験体を治療するために使用される阻害剤の有効性をモニターする方法であって、
(a)第1の時点で、前記被験体に関してインビボイメージング手順を実施して検査対象領域の第1のインビボ画像を生成する段階であって、前記検査対象領域が前記黒色腫であり、前記インビボイメージング手順が
(i)インビボイメージング成分で標識されたベクターを含むインビボイメージング剤であって、αvβ3インテグリンに関する競合的結合アッセイにおいて<10nMのKi(ここで、Ki値はエキスタチンとの競合によって決定される。)をもってαvβ3インテグリンに結合するインビボイメージング剤を前記被験体に投与し、
(ii)段階(i)で投与されたインビボイメージング剤を前記黒色腫によって発現されたαvβ3インテグリンに結合させ、
(iii)段階(ii)の結合したインビボイメージング剤のインビボイメージング成分によって放出される信号を検出し、
(iv)段階(iii)で検出された信号を、前記検査対象領域中の前記黒色腫細胞の表面上でのαvβ3インテグリン発現を表す第1のインビボ画像に変換することを含む段階、
(b)前駆体被験体を前記阻害剤で治療する段階、
(c)第2の時点で、段階(a)で定義したインビボイメージング手順を繰り返して前記検査対象領域の第2のインビボ画像を生成する段階、並びに
(d)前記第1のインビボ画像を前記第2のインビボ画像と比較することで、前記第2の時点での前記検出信号の減少が前記黒色腫の治療における前記阻害剤の有効性を表す段階
を含んでなる方法を提供する。
【0010】
本発明の「被験体」は、任意のヒト又は動物被験体であり得る。好ましくは、本発明の被験体は哺乳動物である。最も好ましくは、前記被験体はインタクトな哺乳動物生体である。特に好ましい実施形態では、本発明の被験体はヒトである。
【0011】
本発明に関しては、「Ras/Raf/MEK/ERK経路」という用語は当技術分野で知られている意味を有し、即ち、最終的には転写因子の活性を調節するように作用する一連のプロテインキナーゼを含むシグナルトランスダクション経路を意味する。成長因子、サイトカイン、紫外線及びストレス誘発剤を含む各種のシグナルに応答して、Rafファミリーのメンバーはグアノシン三リン酸(GTP)をロードしたRasとの結合後に原形質膜に動員され、Rafタンパク質のリン酸化及び活性化をもたらす。次いで、活性化されたRafタンパク質がMAPK/ERKキナーゼ1/2(MEK1/2)のリン酸化及び活性化を行い、ひいては細胞外シグナル調節キナーゼ1/2(ERK1/2)のリン酸化及び活性化を行う。活性化後、ERKは細胞質から核に転位し、Elk−I及びMycのような転写因子のリン酸化及び活性調節をもたらす。Ras/Raf/MEK/ERK経路の異常な活性は腫瘍転移に関連している。
【0012】
B−raf、MAPK/ERKキナーゼ1/2(MEK1/2)又は細胞外シグナル調節キナーゼ1/2(ERK1/2)の阻害剤」は、それぞれB−raf、MEK1/2又はERK1/2の阻害によってRas/Raf/MEK/ERK経路を標的化する化合物である。MEK1/2及びERK1/2は、Ras/Raf/MEK/ERK経路中でB−Rafより下流のプロテインキナーゼである。前記被験体を前記阻害剤で「治療」する段階は、前記阻害剤を適当な医薬組成物として前記被験体に投与することで実施される。一般的に述べれば、「医薬組成物」は、活性薬剤を哺乳動物への投与に適した形態で生体適合性キャリヤーと共に含んでいる。前記活性薬剤がB−raf、MEK1/2又はERK1/2の阻害剤である場合、「生体適合性キャリヤー」は、組成物が生理学的に認容され得るようにして(即ち、毒性又は過度の不快感なしに哺乳動物体に投与できるようにして)活性薬剤を混入するための薬学的に許容される賦形剤である。生体適合性キャリヤーの選択は投与経路に依存する。本発明の方法の阻害剤は、無毒性の薬学的に許容される賦形剤又は希釈剤を含む単位用量製剤として、(例えば、錠剤、カプセル、顆粒又は粉末の形態での)経口投与、舌下投与、口腔内適用、(例えば、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射又は胸骨内注射或いは(例えば、無菌で注射用の水性又は非水性溶液又は懸濁液としての)輸液技法による)非経口投与、(例えば、吸入スプレーによる)鼻腔内投与、(例えば、クリーム又は軟膏の形態での)局所適用、或いは(例えば、坐剤の形態での)直腸内投与によって投与できる。
【0013】
キャリヤー材料と組み合わせて1回分の用量形態の医薬組成物を生成することができる阻害剤の量は、処置されるホスト及び個々の投与モードに依存する。好ましくは、阻害剤組成物は、0.01〜100mg/kg体重/日の用量の阻害剤を被験体に投与できるように製剤化すべきである。また、任意の個々の被験体に関する特定の用量及び治療計画は、使用する特定の阻害剤、年齢、体重、全身の健康、性別、食事、適用時間、排泄速度、薬物の併用、並びに治療する医師の判断及び治療すべき特定の疾患の重篤度を含む各種の因子に依存することを理解すべきである。組成物中の阻害剤の量はまた、個々の阻害剤にも依存する。
【0014】
好ましい阻害剤は、(i)BAY 43−9006、PLX 4032及びCHIR−265のようなB−Rafを阻害する薬剤、並びに(ii)PD184352、PD098059、PD0325901、AZD6244及びUO126のようなMEKを阻害する薬剤から選択される。次に、これらの薬剤の各々を一層詳しく説明する。
【0015】
BAY 43−9006(ソラフェニブ/Nexavar(登録商標)、Bayer Pharmaceuticals社)は、癌細胞増殖及び血管新生に関する広いスペクトルの抗腫瘍活性を有するマルチキナーゼ阻害剤である(Wilhelm et al Cancer Res.2004;64:7099−7109)。その標的の1つはB−Rafである。非小細胞肺癌、前立腺癌及び黒色腫におけるBAY 43−9006の効力は、無作為化第2相治験(Eisen et al Br.J.Cancer 2006;95P:581−6)及びシングルアーム第2相臨床試験(Gatzemeier et al Proc.Am.Soc.Clin.Oncol.2006;24:abstract 7002;及びWu et al Prostate Cancer Symposium.San Francisco,CA,USA.Feb 24−26,2006:abstract 259)で評価を受けた。BAY 43−9006に比べてB−Raf阻害に関し一層高い親和性及び特異性を有し得る他の薬剤、即ちPLX 4032及びCHIR−265が開発中であり、両者は第1相治験で評価されたか、又は評価されつつある(Flaherty et al Proc.Am.Soc.Clin.Oncol.2003;22:410;及びwww.plexxicon.com)。
【0016】
PD184352(CI−1040、Pfizer社)は、MEK1/2の経口用選択的小分子阻害剤である。PD184352は、インビボで腫瘍増殖を阻止することが報告された最初のMEK阻害剤である(Sebolt−Leopold et al Nat.Med.1999;5:810−6;及びSebolt−Leopold et al Nat.Rev.Cancer 2004;4:937−47)。PD0325901(Pfizer社)は臨床開発に入った第二世代のMEK阻害剤であって、良好な薬理学的性質を有するように思われ、研究者達はこれが一層良好な抗癌効果をもたらし得るものと期待している。第2相試験では、生検腫瘍組織がすへての用量レベル並びに(黒色腫、乳癌、結腸癌及び肺癌を含む)すべての腫瘍タイプにおいてリン酸化ERKの抑制を示した。
【0017】
PD098059は、RafによるMEK1/2の活性化を阻害することでRas/Raf/MEK/ERK経路をブロックするが、他のRaf又はMEKキナーゼ基質のリン酸化を阻害せず、それは不活性形のMEK1/2に結合することでその効果を及ぼすことを表している。PD098059はまた、Swiss 3T3細胞におけるMEKの活性化の特異的阻害剤としても作用し、各種のアゴニストによるその活性化を80〜90%抑制する(Alessi et al J.Biol Chem.1995;270(46):27489−94)。
【0018】
AZD6244(Astra Zeneca社)は、インビトロ及びインビボでB−Raf V600E保有黒色腫の増殖をブロックすることが証明されているMEK阻害剤である(Haas et al Melanoma Res.2006;16:S92−S93)。57名の癌患者群における第1相治験が文書化されていて、AZD6244は推奨される第2相用量でERKリン酸化の実証可能な阻害を示しながら十分に認容されることを報告している(Adjei et al J.Clin.Oncol.2008;26(13):2139−46)。最近、Astra Zeneca社及びMerck社は、AZD6244及びMK−2206を含む治療法を共同研究することを公表した(www.astrazeneca.com)。MK−2206はホスファチジルイノシトール−3キナーゼ経路と相互作用する。
【0019】
UO126は、MEKの阻害によってRas/Raf/MEK/ERK経路をブロックする。癌細胞株HepG2(肝癌)、Ht−29(結腸癌)、MiaPaca(膵臓癌)及びPanc−1(膵臓癌)を20〜50μMの範囲内の濃度のUO126で45分間処理したところ、試験した細胞株においてかなりの活性を有することが証明された(Mackin et al J.Surgical Res.2006;130(2):262)。
【0020】
かかる阻害剤のいずれか1種の「有効性のモニタリング」は、該阻害剤で治療しようとする罹患組織の測定可能な特性の選択を含んでいる。本発明の場合、測定可能な特性はRas/Raf/MEK/ERK経路の活性であって、これはαvβ3インテグリンの発現レベルから推論される。
【0021】
モニタリングが価値を有するためには、罹患組織の治療に際して阻害剤が有効であれば、罹患組織の細胞中のRas/Raf/MEK/ERK経路の活性の低下が予想されるような特定の時点が選択される。例えば、「第1の時点」は、被験体が黒色腫に罹患しているという診断後かつ阻害剤を被験体に適用する前であるのが有用であり得る。「第2の時点」は、阻害剤による治療を開始した後に選択される。阻害剤が効力を生じるために要する時間が知られている場合には、この第2の時点はほぼこの時間に位置するように選択できる。他の場合、特に新しい薬物候補を評価する場合には、この時間は知られていないことがあるので、第2の時点は経験的に決定する必要がある。Ras/Raf/MEK/ERK経路の活性が経時的に減少する場合、これは阻害剤が有効であったことを示している。本発明の方法の好ましい実施形態では、さらに他の時点を選択することで、疾患の寛解のような明確な終点に至るまでの治療期間全体にわたって阻害剤による治療の経過をモニターすることができる。
【0022】
B−Raf遺伝子中の突然変異を有する黒色腫は、B−Raf、MEK1/2又はERK1/2の阻害剤によく応答するものと予想される。したがって、本発明の方法における好ましい黒色腫は、B−Raf遺伝子中の突然変異、特にV599E置換から生じる突然変異を含む黒色腫である。
【0023】
本明細書中で使用する「インビボイメージング」という用語は、本発明の被験体の内部構造の全部又は一部の画像を非侵襲的に生成する技法をいう。本発明で使用するための好ましいインビボイメージング方法は、単光子放出コンピューター断層撮影(SPECT)、陽電子放出断層撮影(PET)及び磁気共鳴イメージング(MRI)である。最も好ましいインビボイメージング方法はSPECT又はPETであり、PETが特に好ましい。本発明の方法においてPETが好ましいのは、それが優れた感度及び分解能を有する結果、病変部における比較的小さい変化でも経時的に観察できるからである。PETスキャナーは、日常的にピコモル範囲内の放射能濃度を測定している。現在、マイクロPETスキャナーは約1mmの空間分解能に接近しているが、臨床スキャナーは約4〜5mmである。
【0024】
本発明のインビボイメージング方法は、前記被験体にインビボイメージング剤を「投与」することで開始される。ここで、前記インビボイメージング剤はインビボイメージング成分で標識されたベクターを含んでいる。インビボイメージング剤の投与のためには非経口投与が好ましく、最も好ましくは静脈内投与である。投与後、前記インビボイメージング剤を前記黒色腫によって発現されるαvβ3インテグリンに結合させる。インビボイメージング剤は、<10nM、好ましくは<5nMのKiをもってαvβ3インテグリンに結合するように選択される。Kiを決定するためには、αvβ3インテグリンに関する公知の競合的結合アッセイが使用でき、この場合にKi値はエキスタチンとの競合によって決定される(Kumar et al J Pharmacol Exp Ther.1997;283:843−853)。
【0025】
インビボイメージング成分で標識された」という用語は、インビボイメージング成分がベクターの構成部分(例えば、11C又は18F原子)であることを意味する。別法として、インビボイメージング成分がベクターにコンジュゲートされる化学基の一部をなし、任意のリンカー部分がベクターとインビボイメージング成分とを互いに結合する。「インビボイメージング成分」は、投与後に前記被験体の外部で検出できる信号を放出する原子を含んでいる。本発明の好ましいインビボイメージング成分は下記に記載される。
【0026】
ベクター」はαvβ3インテグリンと結合する化合物である。背景技術セクションに記載した通り、かかる化合物には、RGD含有ペプチド及び対応するペプチド模倣体並びにモノクローナル抗体である。定義上、αvβ3インテグリンと結合するエキスタチン及びその誘導体も好適なベクターである。「ペプチド模倣体」は、天然親ペプチドの生物学的作用を模倣し又はそれに拮抗することが可能な非ペプチド構造要素を含む化合物である。かかるベクターを含むインビボイメージング剤を得るための方法は、当技術分野の文献に記載されている(例えば、Hua et al Circulation 2005;111:3255−3260、Bach−Gansmo et al J Nucl Med 2006;47:1434−1439、Sipkins et al Nature Medicine 1998;4(5):623−6、Ellegala et al(Circulation 2003;108:336−41、Winter et al,Circulation 2003;108:2270−4を参照されたい)。好適には、ベクターがRGD含有ペプチドである場合、それは5〜20のアミノ酸、好ましくは6〜12のアミノ酸、最も好ましくは8〜10のアミノ酸の長さを有する。若干の好ましいRGDペプチドが下記に一層詳しく記載される。
【0027】
本発明の「リンカー部分」は、式−(L)n−を有する二価基である。式中、
各Lは独立に−C(=O)−、−CR’2−、−CR’=CR’−、−C≡C−、−CR’2CO2−、−CO2CR’2−、−NR’−、−NR’CO−、−CONR’−、−NR’(C=O)NR’−、−NR’(C=S)NR’−、−SO2NR’−、−NR’SO2−、−CR’2OCR’2−、−CR’2SCR’2−、−CR’2NR’CR’2−、C4-8シクロヘテロアルキレン基、C4-8シクロアルキレン基、C5-12アリーレン基、C3-12ヘテロアリーレン基、アミノ酸、ポリアルキレングリコール、ポリ乳酸又はポリグリコール酸部分であり、
nは1〜15の値を有する整数であり、
各R’基は独立にH、C1-10アルキル、C3-10アルキルアリール、C2-10アルコキシアルキル、C1-10ヒドロキシアルキル又はC1-10フルオロアルキルであるか、或いは2以上のR’基がこれらの結合する原子と共に炭素環式又は複素環式の飽和又は不飽和環を形成する。
【0028】
好ましくは、前記リンカー部分は10〜100原子、最も好ましくは10〜50原子の鎖である。好ましいL基は、−C(=O)−、−CH2−、−NH−、−NHC(=O)−、−C(=O)NH−、−CH2−O−CH2−及びアミノ酸である。特に除外されるのは、2以上のカルボニル基が互いに結合したリンカー部分、又は2以上のヘテロ原子が互いに結合したリンカー部分である。当業者には理解される通り、これらは化学的に実現できないか、或いは過度の反応性又は不安定性を有するため本発明で使用するのに適さない。
【0029】
好ましいインビボイメージング成分は、以下のものから選択される。
(a)放射性金属イオン、
(b)γ線放出型放射性ハロゲン、
(c)陽電子放出型放射性非金属、及び
(d)常磁性金属イオン。
インビボイメージング成分(a)〜(c)が好ましく、(c)が最も好ましい。
【0030】
本発明の方法の「検出」段階は、インビボイメージング剤のインビボイメージング成分によって放出される信号を、前記信号に対して感受性を有する検出器によって検出することを含んでいる。本発明で使用するのに適した、インビボイメージング成分によって放出される信号の例は、投与後に前記被験体の外部で検出できるものである。
【0031】
本発明の方法の「変換」段階は、検出された信号に再構築アルゴリズムを適用してデータセットを得るコンピューターによって実施される。通例、このデータセットを操作することで、細胞表面上におけるαvβ3インテグリン発現を表す被験体内の領域を示す前記第1及び第2のインビボ画像が生成される。また、かかるデータセットをインビボ画像の生成前又は生成なしに評価することで、検出された信号の量及び強度の経時的な変化を観察することもできる。しかし、より多くの情報(例えば、罹患組織の位置及びサイズ)を得ることができる点でインビボ画像の生成が好ましい。
【0032】
Ras/Raf/MEK/ERK経路の活性化とαvβ3インテグリン発現との間における公知の関連(Woods et al Molecular and Cellular Biology 2001;21(9):3192−3205)に基づき、本発明者らは、αvβ3インテグリン発現がRas/Raf/MEK/ERK経路活性の代用マーカーとして使用できることを提唱する。
【0033】
好ましい実施形態では、インビボイメージング剤のベクターはRGDペプチドである。多数のかかるインビボイメージング剤が当技術分野で知られており、αvβ3インテグリン発現のインビボイメージングのために有用であることが教示されている(例えば、Zhang et al Cancer Res.2007;67(4):1555−62、Beer et al Clin.Cancer Res.2006;12(13):3942−9、国際公開第02/26776号、同第2003/006491号、同第2005/12335号及び同第2005/123767号を参照されたい)。
【0034】
本発明の方法で使用するための、RGDペプチドに基づく好ましいインビボイメージング剤は、次の式Iを有している。
【0035】
【化1】

式中、
1及びW2は独立に任意のリンカー部分であり、前記リンカー部分は上記に定義した通りであり、
1及びZ2は独立に(i)インビボイメージング成分を含む基、(ii)糖部分又は(iii)水素であるが、Z1及びZ2の少なくとも一方はインビボイメージング成分である。
【0036】
式Iのインビボイメージング剤のペプチド部分は、あらゆる公知の化学合成方法を用いて合成できるが、特に有用なのは自動化ペプチド合成機を用いたMerrifieldの固相法である(J.Am.Chem.Soc.1964;85:2149)。合成戦略のための標準的手順は、E.Atherton & R.C.Sheppard,“Solid phase peptide synthesis:a practical approach,1989,IRL Press,Oxford中に記載されている。
【0037】
酸不安定リンカー基を有する合成樹脂を用いて、これに所望の保護C末端アミノ酸残基をアミド結合形成によって結合する。例えば、(ジメトキシフェニル−アミノメチル)−フェノキシ系リンカーを有するいわゆるRinkアミドAM樹脂が適用できる(Rink,Tetrahedron Lett.1987;30:3787)。この樹脂からペプチドを酸分解で切断すれば、ペプチドアミドが得られる。別法として、O−ビス−(アミノエチル)エチレングリコールトリチル樹脂(Barlos et al,Liebigs Ann.Chem.1988;1079)を用いることもでき、酸分解で切断すれば、第一アミンハンドルを有するペプチドが得られる。
【0038】
インビボイメージング剤を得るためのインビボイメージング成分によるベクターの標識は、「前駆体化合物」を用いて簡便に実施できる。前駆体化合物は、好都合な化学形態の所望インビボイメージング成分との化学反応が部位特異的に起こり、最小数の段階(理想的にはただ1つの段階)で反応を実施でき、かつ格別の精製の必要なしに(理想的にはいかなる追加の精製も必要なしに)所望のインビボイメージング剤が得られるように設計された、αvβ3発現を標的化するベクターの誘導体である。かかる前駆体化合物は合成品であり、良好な化学純度で簡便に得ることができる。
【0039】
前駆体化合物はキットの一部として供給できるが、これは放射線薬局における放射性標識インビボイメージング剤の調製のため特に好都合である。かかるキットは、適宜に改造された自動化合成装置内に挿入できるカートリッジを含み得る。かかるカートリッジは、前駆体化合物以外に、不要の放射性イオンを除去するためのカラム、及び反応混合物を蒸発させかつ生成物を製剤化するため必要に応じて連結される適当な容器を含み得る。試薬及び溶媒並びに合成のために必要なその他の消耗品もまた、放射能濃度、体積、送出時間などに関するカスタマーの要求条件を満たすように合成装置を運転させるソフトウェアを保持したコンパクトディスクと共に含めることができる。簡便には、試験間での汚染の可能性を最小限に抑えると共に無菌性及び品質を保証するため、キットのすべての構成要素は使い捨てである。
【0040】
前駆体化合物は、任意にはベクターのある種の官能基に関して1以上の保護基を含むことができる。「保護基」という用語は、望ましくない化学反応を阻止又は抑制するが、分子の残部を変質させない十分に温和な条件下で問題の官能基から脱離させ得るのに十分な反応性を有するように設計された基を意味する。脱保護後には所望の生成物が得られる。保護基は当業者にとって公知であり、アミン基に関してはBoc(ここでBocはtert−ブチルオキシカルボニルである。)、Fmoc(ここでFmocはフルオレニルメトキシカルボニルである。)、トリフルオロアセチル、アリルオキシカルボニル、Dde[即ち、1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)エチル]及びNpys(即ち、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル)から適宜に選択され、カルボキシル基に関してはメチルエステル、tert−ブチルエステル及びベンジルエステルから適宜に選択される。ヒドロキシル基に関しては、好適な保護基は、メチル、エチル又はtert−ブチル、アルコキシメチル又はアルコキシエチル、ベンジル、アセチル、ベンゾイル、トリチル(Trt)、又はテトラブチルジメチルシリルのようなトリアルキルシリルである。チオール基に関しては、好適な保護基はトリチル及び4−メトキシベンジルである。さらに他の保護基の使用は、‘Protective Groups in Organic Synthesis’,Theorodora W.Greene and Peter G.M.Wuts(Third Edition,John Wiley & Sons,1999)に記載されている。
【0041】
好ましくは、リンカー部分が存在する場合、それはバイオモディファイアー部分として作用する。「バイオモディファイアー部分」は、インビボイメージング剤の薬物動態及び血中クリアランス速度を調整する機能を有する。好適なバイオモディファイアー部分の例は、単分散PEG構成単位に基づいていて、1〜10の前記構成単位を含むものである。さらに、前記バイオモディファイアー部分は1〜10のアミノ酸残基を表すこともできる。前記バイオモディファイアー部分用の好ましいアミノ酸残基は、リシン及びグルタミン酸のような帯電アミノ酸、或いはシステイン酸及びホスホノアラニンのような帯電非天然アミノ酸である。加えて、アミノ酸であるグリシン、アスパラギン酸及びセリンも含めることができる。好ましい実施形態では、バイオモディファイアー部分は、単分散PEG様構造である次の式(II)の17−アミノ−5−オキソ−6−アザ−3,9,12,15−テトラオキサヘプタデカン酸からなる。
【0042】
【化2】

式中、mは1〜10の整数に等しく、C末端単位はアミド部分である。バイオモディファイアー部分は、インビボイメージング剤の薬物動態及び血中クリアランス速度を調整するように作用する。本発明におけるバイオモディファイアー成分の機能は、組織中への取込みを減少させると共に腎臓経由の排泄を増加させることで、バックグラウンド妨害を少なくして一層良好なインビボ画像を与えることである。バイオモディファイアー部分はさらに、グルタル酸及び/又はコハク酸及び/又はポリエチレングリコール系単位及び/又は上記に示した式IIの単位から優先的に導かれる部分を表すことができる。本発明の目的のためには、バイオモディファイアー部分の主たる目標の1つはインビボイメージング剤のバックグラウンド組織取込みを低減させることである。これにより、バックグラウンド信号に比べ、特異的に結合したインビボイメージング剤から放出される信号の最適検出が保証される。リンカー部分の性質は、標的受容体に対するインビボイメージング剤の親和性を妨害すべきでない。加えて、リンカー部分は、例えば過大なポリエチレングリコール系単位を使用した場合に起こり得るようなインビボイメージング剤のバックグラウンド肝臓取込みを増加させるように作用すべきでない。
【0043】
1又はZ2のいずれかが糖部分である場合、それも上記に定義したバイオモディファイアー部分として作用し得る。「糖部分」は、通常は多価アルコールのアルデヒド又はケトン誘導体である炭水化物基である。それはフルクトース又はグルコースのようなモノマー(単糖)であってもよいし、或いは2つの糖が互いに結合して二糖を形成してもよい。二糖には、グルコース及びフルクトースから構成されるスクロースのような糖がある。糖という用語は、置換糖及び非置換糖の両方並びに糖の誘導体を含む。好ましくは、糖はグルコース、グルコサミン、ガラクトース、ガラクトサミン、マンノース、ラクトース、フコース及びこれらの誘導体(例えば、シアル酸及びグルコサミンの誘導体)から選択される。糖は好ましくはα又はβである。糖は特にマンノピラノシド又はガラクトースピラノシドであり得る。糖上のヒドロキシル基は、例えば1以上のアセチル基で保護することができる。糖部分は、好ましくはN−アセチル化されている。かかる糖の好ましい例には、N−アセチルガラクトサミン、シアル酸、ノイラミン酸、N−アセチルガラクトース及びN−アセチルグルコサミンがある。
【0044】
最近、糖コンジュゲーションがインビボイメージング剤の薬物動態を有利に変化させ得ることが示された。炭水化物化は小さい放射性標識ペプチドの親油性を低下させ、かくして肝胆道排泄を劇的に減少させて腎排泄を増加させる(Haubner et al J.Nuc.Med.2001;42:326−36)。
【0045】
インビボイメージング成分が放射性金属イオン(即ち、放射性金属)からなる場合、好適な放射性金属は、64Cu、48V、52Fe、55Co、94mTc又は68Gaのような陽電子放射体、或いは99mTc、111In、113mIn又は67Gaのようなγ放射体であり得る。好ましい放射性金属は99mTc、64Cu、68Ga及び111Inである。最も好ましい放射性金属はγ放射体、特に99mTcである。
【0046】
インビボイメージング成分が常磁性金属イオンからなる場合、好適なかかる金属イオンには、Gd(III)、Mn(II)、Cu(II)、Cr(III)、Fe(III)、Co(II)、Er(II)、Ni(II)、Eu(III)及びDy(III)がある。好ましい常磁性金属イオンはGd(III)、Mn(II)及びFe(III)であり、Gd(III)が特に好ましい。
【0047】
インビボイメージング成分が金属イオンからなる場合、それは好ましくは金属イオンと合成リガンドとの金属錯体として存在する。「金属錯体」という用語は、金属イオンと1以上のリガンドとの配位錯体を意味する。金属錯体は、「キレート交換に耐える」こと(即ち、金属配位座に関して他の潜在的に競合するリガンドとのリガンド交換を受けにくいこと)が極めて好ましい。潜在的に競合するリガンドには、インビトロでは製剤中の他の賦形剤(例えば、製剤中に使用される放射線防護剤又は抗菌防腐剤)があり、インビボでは内因性化合物(例えば、グルタチオン、トランスフェリン又は血漿タンパク質)がある。「合成」という用語はそれの通常の意味を有し、即ち、天然の供給源(例えば、哺乳動物体)から単離されるものではなく人造のものを意味する。かかる化合物は、それの製造及び不純物プロファイルを完全に制御できるという利点を有している。
【0048】
キレート交換に耐える金属錯体を形成するために本発明で使用するのに適したリガンドには、2〜6(好ましくは2〜4)の金属ドナー原子が(金属ドナー原子を結合する炭素原子又は非配位ヘテロ原子の非配位主鎖を有することで)五員又は六員のキレート環を生じるように配列されたキレート剤、或いは金属イオンと強く結合するドナー原子を含む単座リガンド(例えば、イソニトリル、ホスフィン又はジアゼニド)がある。キレート剤の一部として金属とよく結合するドナー原子種の例は、アミン、チオール、アミド、オキシム及びホスフィンである。ホスフィンは非常に強い金属錯体を形成するので、単座又は二座のホスフィンでも好適な金属錯体を形成する。イソニトリル及びジアゼニドの直線形状はキレート剤中に組み込みにくいものであり、したがって通例は単座リガンドとして使用される。好適なイソニトリルの例には、tert−ブチルイソニトリルのような単純アルキルイソニトリル、及びMIBI(即ち、1−イソシアノ−2−メトキシ−2−メチルプロパン)のようなエーテル置換イソニトリルがある。好適なホスフィンの例には、テトロフォスミン(Tetrofosmin)、及びトリス(3−メトキシプロピル)ホスフィンのような単座ホスフィンがある。好適なジアゼニドの例には、HYNIC系列のリガンド(即ち、ヒドラジン置換ピリジン又はニコチンアミド)がある。
【0049】
金属イオンがテクネチウムである場合、キレート交換に耐える金属錯体を形成する好適なキレート剤には、特に限定されないが、下記のものがある。
(i)ジアミンジオキシム、
(ii)MAG3(メルカプトアセチルトリグリシン)のようなチオールトリアミドドナーセット又はPicaのようなジアミドピリジンチオールドナーセットを有するN3Sリガンド及び関連するリガンド、
(iii)BAT又はECD(即ち、エチルシステイネート二量体)のようなジアミンジチオールドナーセット或いはMAMAのようなアミドアミンジチオールドナーセットを有するN22リガンド、
(iv)シクラム、モノオキソシクラム又はジオキソシクラムのようなテトラアミン、アミドトリアミン又はジアミドジアミンドナーセットを有する開鎖又は大環状リガンドであるN4リガンド、並びに
(v)ジアミンジフェノールドナーセットを有するN22リガンド。
【0050】
インビボイメージング成分がテクネチウムからなる場合における本発明の好ましいキレート剤は、ジアミンジオキシム及びテトラアミンである。好ましいジアミンジオキシムキレート剤の構造及びそれを得るための方法は、国際公開第03/006070号に開示されている。好ましいテトラアミンキレート剤の構造及びそれを得るための方法は、国際公開第06/008496号に開示されている。
【0051】
上述のリガンドはテクネチウム(例えば、94mTc又は99mTc)を錯体化するために特に適しており、Jurisson et al(Chem.Rev.1999;99:2205−2218)によって一層詳しく記載されている。かかるリガンドは、銅(64Cu又は67Cu)、バナジウム(例えば、48V)、鉄(例えば、52Fe)或いはコバルト(例えば、55Co)のような他の金属に対しても有用である。
【0052】
他の好適なリガンドはSandozの国際公開第91/01144号に記載されており、その中にはインジウム、イットリウム及びガドリニウムに対して特に好適なリガンド(特に大環状アミノカルボキシレート及びアミノホスホン酸リガンド)が含まれる。ガドリニウムの非イオン性(即ち、中性)金属錯体を形成するリガンドが知られており、米国特許第4,885,363号に記載されている。ガドリニウムに対して特に好ましいのは、DTPA、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)、10−(2−ヒドロキシプロピル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸(DO3A)及びこれらの誘導体をはじめとするキレートである。
【0053】
インビボイメージング成分が金属錯体の一部をなす場合、本明細書中において前記に定義したような付随するリンカー部分が存在することが好ましい。この場合におけるリンカー部分の役割は、金属配位後に生じる比較的バルキーな金属錯体をペプチドの活性部位から遠ざけることで、例えば基質の結合が損なわれないようにすることである。これは、バルキーな基が活性部位から離れて位置する自由を与えるような柔軟性(例えば、単純アルキル鎖)及び/又は金属錯体が活性部位から離れるように向きを定める剛性(例えば、シクロアルキル又はアリールスペーサー)の組合せによって達成できる。これらのキレーターに関連する好ましいリンカー部分は、2〜10の原子、最も好ましくは2〜5の原子を含む主鎖を有しており、2つ又は3つの原子が特に好ましい。2つの原子を含む最小リンカー基主鎖は、キレーターがペプチドから十分に引き離される結果としていかなる相互作用も最小限に抑えられるという利点を与える。さらに、ペプチドが金属イオンに対するキレーターの配位と効果的に競合することはありそうにない。このようにして、ペプチドの生物学的標的化特性及びキレーターの金属錯体化能力が共に維持される。金属錯体は、結合が血中において容易に代謝を受けないようにしてペプチドに結合していることが極めて好ましい。それは、インビボイメージング剤が所望のインビボ標的部位に到達する前に、かかる代謝がイメージング金属錯体の切断をもたらすからである。したがってペプチドは、好ましくは容易に代謝されない結合を含むリンカー部分を介して金属錯体に共有結合される。好適なかかる結合は、炭素−炭素結合、アミド結合、尿素又はチオ尿素結合、或いはエーテル結合である。
【0054】
アルキレン基又はアリーレン基のような非ペプチドリンカー基は、式Iのペプチド部分との顕著な水素結合が存在しない結果としてリンカーがペプチドと相互作用しないという利点を有する。好ましいアルキレンスペーサー基は−(CH2q−(式中、qは2〜5の値を有する整数である。)である。好ましくは、qは2又は3である。好ましいアリーレンスペーサーは次の式IIIを有する。
【0055】
【化3】

式中、a及びbは各々独立に0、1又は2である。
【0056】
かくして、好ましいリンカー部分は−CH2CH2−(L)p−(式中、Lは上記に定義した通りであり、pは0〜3の値を有する整数である。)である。最も好ましくは、−(L)p−は−CO−又は−NR−である。
【0057】
イメージング金属がテクネチウムである場合、通常のテクネチウム出発原料は、テクネチウムがTc(VII)酸化状態にある過テクネチウム酸イオン(即ち、TcO4-)である。過テクネチウム酸イオン自体は容易に金属錯体を形成せず、したがってテクネチウム錯体の製造には、第一スズイオンのような適当な還元剤を添加してテクネチウムの酸化状態を低い酸化状態(通常はTc(I)乃至Tc(V))に還元することで錯体化を容易にすることが通常必要である。溶媒は、有機溶媒又は水性溶媒或いはこれらの混合物であり得る。溶媒が有機溶媒を含む場合、有機溶媒は好ましくはエタノール又はDMSOのような生体適合性溶媒である。好ましくは、溶媒は水性溶媒であり、最も好ましくは等張食塩水である。
【0058】
インビボイメージング成分がγ線放出型放射性ハロゲンである場合、放射性ハロゲンは好適には123I、131I及び77Brから選択される。125Iは、外部インビボイメージング用のイメージング成分として使用するのに適さないので特に除外される。インビボイメージング用の好ましいγ線放出型放射性ハロゲンは123Iである。
【0059】
インビボイメージング成分が放射性ヨウ素である場合、式Iのインビボイメージング剤は、求電子又は求核ヨウ素化を受ける誘導体或いは標識アルデヒド又はケトンとの縮合を受ける誘導体からなる前駆体化合物を用いて得ることができる。第1のカテゴリーの例は下記の(a)〜(c)である。
(a)トリアルキルスタンナン(例えば、トリメチルスタンニル又はトリブチルスタンニル)、トリアルキルシラン(例えば、トリメチルシリル)或いは有機ホウ素化合物(例えば、ボロネートエステル又はオルガノトリフルオロボレート)のような有機金属誘導体。
(b)ハロゲン交換用の非放射性アルキルブロミド、或いは求核ヨウ素化用のアルキルトシレート、メシレート又はトリフレート。
(c)求核ヨウ素化に向けて活性化された芳香環(例えば、アリールヨードニウム塩、アリールジアゾニウム塩、アリールトリアルキルアンモニウム塩又はニトロアリール誘導体)。
【0060】
好ましいかかる前駆体化合物は、(放射性ヨウ素交換を可能にするための)アリールヨージド又はブロミドのような非放射性ハロゲン原子、有機金属前駆体化合物(例えば、トリアルキルスズ、トリアルキルシリル又は有機ホウ素化合物)、或いはトリアゼンのような有機前駆体又は求核置換のための良好な脱離基(例えば、ヨードニウム塩)からなる。放射性ヨウ素化のために好ましくは、前駆体は有機金属前駆体化合物からなり、最も好ましくはトリアルキルスズからなる。
【0061】
有機分子中に放射性ヨウ素を導入するための前駆体化合物及び方法は、Bolton(J.Lab.Comp.Radiopharm.2002;45:485−528)によって記載されている。好適なボロネートエステル有機ホウ素化合物及びその製法は、Kabalka et al(Nucl.Med.Biol.2002;29:841−843及びNucl.Med.Biol.2003;30:369−373)によって記載されている。好適なオルガノトリフルオロボレート及びその製法は、Kabalka et al(Nucl.Med.Biol.2004;31:935−938)によって記載されている。
【0062】
放射性ヨウ素を結合できるアリール基の例を下記に示す。
【0063】
【化4】

これらの基はいずれも、芳香環上への容易な放射性ヨウ素置換を可能にする置換基を含んでいる。チロシン残基は、その固有のフェノール基を用いて放射性ヨウ素化を実施することを可能にする。
【0064】
放射性ヨウ素を含む別の置換基は、例えば次式のように、放射性ハロゲン交換による直接ヨウ素化で合成することができる。
【0065】
【化5】

飽和脂肪族系に結合したヨウ素原子はインビボでの代謝を受けやすく、したがって放射性ヨウ素の損失を招きやすいことが知られているので、放射性ヨウ素原子は好ましくはベンゼン環のような芳香環への直接共有結合によって結合される。
【0066】
インビボイメージング成分が陽電子放出型放射性非金属である場合、好適なかかる陽電子放射体には、11C、13N、15O、17F、18F、75Br、76Br及び124Iがある。好ましい陽電子放出型放射性非金属は11C、13N、18F及び124Iであり、特に好ましくは11C及び18Fであり、最も好ましくは18Fである。
【0067】
放射性フッ素化は、18F−フッ化物と良好な脱離基を有する前駆体化合物(例えば、アルキルブロミド、アルキルメシレート又はアルキルトシレート)中の適当な化学基との反応を用いる直接標識によって実施できる。18Fはまた、18F(CH23OH反応体でN−ハロアセチル基をアルキル化して−NH(CO)CH2O(CH2318F誘導体を得ることによっても導入できる。アリール系に関しては、アリールジアゾニウム塩、アリールニトロ化合物又はアリール第四級アンモニウム塩からの18F−フッ化物求核置換が、アリール−18F誘導体への好適な経路である。
【0068】
本発明の18F標識化合物は、18F−フルオロジアルキルアミンを生成させ、次いで18F−フルオロジアルキルアミンを(例えば)塩素、P(O)Ph3又は活性化エステルを含む前駆体と反応させた場合のアミド生成によって得ることができる。
【0069】
ペプチドの放射性フッ素化のために特に適するさらに別の放射性フッ素化アプローチが国際公開第03/080544号に記載されており、これはチオールカップリングを使用するものである。以下の置換基の1つを含む前駆体化合物を
【0070】
【化6】

次の式IVの化合物と反応させることで、
【0071】
【化7】

(式中、
Xは式−(LYy−(式中、LYはLに関して前記に定義した通りであり、yは1〜10である。)のリンカー部分であり、任意には1〜6のヘテロ原子を含み、
Xは式−(LXx−(式中、LXはLに関して前記に定義した通りであり、xは1〜30である。)のリンカーであり、任意には1〜10のヘテロ原子を含み、
星印(*)はインビボイメージング剤の残部への結合点を定義する。)
それぞれ次の式(IVa)又は式(IVb)の放射性フッ素化インビボイメージング剤を得る。
【0072】
【化8】

(式中、XX、YX及び星印(*)は上記に定義した通りである。)
ペプチドの放射性フッ素化のために特に適する追加のアプローチは、Poethko et al(J.Nuc.Med.,2004;45:892−902)によって記載されており、これはアミノキシカップリングを利用するものである。放射性フッ素化は、次の式(V)の前駆体化合物を次の式(Va)の化合物と反応させるか、
【0073】
【化9】

或いは次の式(VI)の前駆体化合物を次の式(VIa)の化合物と反応させることで実施される。
【0074】
【化10】

(式中、
XI及びXXIIは式−(LXIz−(式中、LXIはLに関して前記に定義した通りであり、zは1〜10である。)のリンカー基であり、任意には1〜6のヘテロ原子を含み、
1はアルデヒド部分、ケトン部分、アセタールのような保護アルデヒド、ケタールのような保護ケトン、或いは酸化剤を用いてアルデヒド又はケトンに迅速かつ効率的に酸化し得る官能基(例えば、ジオール又はN−末端セリン残基)であり、
2は水性緩衝液のような温和な条件下でR1と部位特異的に反応して安定なコンジュゲートを与える官能基であり、R2は第一アミン、第二アミン、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン、ヒドラジド、アミノキシ、フェニルヒドラジン、セミカルバジド又はチオセミカルバジドのようなアンモニア誘導体であり得るが、好ましくはヒドラジン、ヒドラジド又はアミノキシ基であり、
3はR4と部位特異的に反応する官能基であり、R3は第一アミン、第二アミン、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン、ヒドラジド、アミノキシ、フェニルヒドラジン、セミカルバジド又はチオセミカルバジドのようなアンモニア誘導体であり得るが、好ましくはヒドラジン、ヒドラジド又はアミノキシ基であり、
4はアルデヒド部分、ケトン部分、アセタールのような保護アルデヒド、ケタールのような保護ケトン、或いは酸化剤を用いてアルデヒド又はケトンに迅速かつ効率的に酸化し得る官能基(例えば、ジオール又はN末端セリン残基)である。)
かくして、それぞれ次の式(VII)又は式(VIII)のコンジュゲートが得られる。
【0075】
【化11】

(式中、Wは−CO−NH−、−NH−、−O−、−NHCONH−又は−NHCSNH−であり、好ましくは−CO−NH−、−NH−又は−O−であり、YはH、C1-6アルキル又はC5-6アリール置換基であり、XXI、XXII及び星印(*)は前記に定義した通りである。)
本発明の好ましい18F標識インビボイメージング剤は、Indrevoll et al(Bioorg.Med.Chem.Lett.2006;16:6190−3)によって開示されている。18F標識誘導体の合成経路のさらなる詳細は、Bolton(J.Lab.Comp.Radiopharm.2002;45:485−528)によって記載されている。
【0076】
好ましいイメージング成分は、インビボ投与後、例えばSPECT、PET及びMRIによって外部から非侵襲的に検出できるものである。最も好ましいインビボイメージング成分は、放射性のもの、とりわけ放射性金属イオン、γ線放出型放射性ハロゲン及び陽電子放出型放射性非金属であり、特にSPECT又はPETを用いるイメージングに適したもの(例えば、99mTc、123I、11C及び18F)である。
【0077】
好ましい実施形態では、W1はリンカー部分を表し、Z1はインビボイメージング成分を含み、W2は任意のリンカー部分を表し、Z2は水素であって、以下のものがある。
【0078】
【化12】

イメージング剤1及び3の製造方法は国際公開第2005/012335号に詳述されており、イメージング剤2の製造方法はKenny et al(J.Nuc.Med.2008;49:879−86)によって記載されている。
【0079】
さらに別の好ましい実施形態では、W1は任意のリンカー部分を表し、Z1は水素であり、W2はリンカー部分を表し、Z2はインビボイメージング成分を含んでいて、例えば以下のものがある。
【0080】
【化13】

【0081】
【化14】

イメージング剤4〜7の製造方法は国際公開第2003/006491号に詳述されている。
【0082】
本発明の被験体がインタクトな哺乳動物生体である場合、インビボイメージング剤は好ましくは医薬組成物として投与される。本明細書中で前記に示した医薬組成物の一般的な定義が適用される。しかし、この実施形態では、活性薬剤は前記インビボイメージング剤である。生体適合性キャリヤーは、組成物が生理学的に認容され得るようにして(即ち、毒性又は過度の不快感なしに哺乳動物体に投与できるようにして)インビボイメージング剤を懸濁又は溶解するための流体(特に液体)である。生体適合性キャリヤー媒質は、好適には、無菌のパイロジェンフリー注射用水、(有利には注射用の最終生成物が等張性又は非低張性になるように平衡させ得る)食塩水のような水溶液、或いは1種以上の張度調整物質(例えば、血漿陽イオンと生体適合性対イオンとの塩)、糖(例えば、グルコース又はスクロース)、糖アルコール(例えば、ソルビトール又はマンニトール)、グリコール(例えば、グリセロール)又は他の非イオン性ポリオール物質(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなど)の水溶液のような注射可能なキャリヤー液体である。生体適合性キャリヤー媒質はまた、エタノールのような生体適合性有機溶媒を含んでいてもよい。かかる有機溶媒は、親油性の高い化合物又は配合物を可溶化するために有用である。好ましくは、生体適合性キャリヤー媒質はパイロジェンフリー注射用水、等張食塩水又はエタノール水溶液である。静脈内注射用生体適合性キャリヤー媒質のpHは好適には4.0〜10.5の範囲内にある。
【0083】
かかるインビボイメージング剤医薬組成物は、好適には、無菌保全性を維持しながら皮下注射針による1回又は数回の穿刺に適したシール(例えば、クリンプ加工した隔壁シールクロージャー)を備えた容器に入った状態で供給される。かかる容器は1回分又は複数回分の患者用量を含み得る。好ましい複数用量容器は、複数の患者用量を含む(例えば、容積10〜30cm3の)単一のバルクバイアルからなり、したがって臨床的状況に合わせて製剤の実用寿命中に様々な時間間隔で1回分の患者用量を臨床グレードの注射器に抜き取ることができる。予備充填注射器は1回分のヒト用量又は「単位用量」を含むように設計され、したがって好ましくは臨床用に適した使い捨て注射器又は他の注射器である。医薬組成物が放射性医薬組成物である場合、予備充填注射器には、施術者を放射線量から防護するための注射器シールドを任意に設けることができる。好適なかかる放射性医薬品注射器シールドは当技術分野で公知であり、好ましくは鉛又はタングステンからなっている。
【0084】
かかる医薬組成物はキットから製造できる。別法として、それを無菌製造条件下で製造することで所望の無菌生成物を得ることができる。かかる医薬組成物を非無菌条件下で製造し、次いで例えばγ線照射、オートクレーブ処理、乾熱又は(例えば、エチレンオキシドによる)化学処理を用いて終末滅菌を施すこともできる。
【0085】
本発明者らは、本発明の方法が黒色腫に罹患している被験体を含む臨床試験において試験すべき阻害剤の最適用量及び投与計画を決定するために有用であることを提唱する。別の用途は、これらの阻害剤に対する患者の初期応答の評価である。加えて、本発明の方法は、例えば最も応答しそうな患者のみを含む登録治験の一部として、阻害剤に最も応答しそうな被験体を選択するために使用できる。これらの阻害剤のいずれかが臨床用として承認されていれば、本発明の方法は、阻害剤による治療を継続すべきか否か、用量を変えるへきか否か、或いは異なる治療戦略を追求すべきか否かの判断を可能にするために応用できる。これらの使用の各々は、本発明の方法の好ましい態様をなしている。
【0086】
別の態様では、本発明は、本発明の方法におけるαvβ3インテグリンに結合するインビボイメージング剤の使用を提供する。本発明のこの態様に関しては、前記インビボイメージング剤及び前記方法の好適で好ましい実施形態は本発明の前記方法に関して上記に定義した通りである。
【0087】
さらに別の態様では、本発明は、本発明の方法で使用するのに適する薬剤の製造における、αvβ3インテグリンに結合するインビボイメージング剤の使用を提供する。本発明のこの態様に関しては、前記インビボイメージング剤及び前記方法の好適で好ましい実施形態は本発明の前記方法に関して上記に定義した通りである。
【0088】
本発明はさらに、本明細書中に記載した本発明の方法及び使用を実施する際に使用するためのコンピュータープログラムも提供する。本発明のこの態様に関しては、前記インビボイメージング剤及び前記方法の好適で好ましい実施形態は本発明の前記方法に関して上記に定義した通りである。
【実施例】
【0089】
以下の実験例は、黒色腫病変部へのαvβ3インテグリン結合イメージング剤の特異的な取込みを実証している。
【0090】
実施例の簡単な説明
実施例1は、イメージング剤2を用いて確認された転移性黒色腫を有するヒト被験体のイメージングを行ったインビボイメージング実験を表している。
【0091】
実施例中で使用される略語
MBq メガベクレル
PET 陽電子放出断層撮影
CT コンピューター断層撮影
実施例1:転移性黒色腫のインビボイメージング
生検で確認された転移性黒色腫を有する60歳の女性患者に関し、(αvβ3インテグリンに対して11.1nMの結合親和性(IC50)を有する)イメージング剤2(Kenny et al,J.Nuc.Med.2008;49:879−86を参照されたい)を用いたインビボイメージングを実施した。
【0092】
365MBqのイメージング剤2(Kenny et al,J.Nuc.Med.2008;49:879−86に記載された方法によって調製された注入液)を患者に投与した。GE Discovery Rx PET/CT(GE Healthcare社)上でインビボイメージングデータを取得した。
【0093】
全身取得の最初のベッド位置は、イメージング剤2の注入から41分後に開始された。各ベッド位置の持続時間は5分間であり、9平面のオーバーラップを有する5つのベッド位置を取得した。データを不感時間、崩壊、ランダム誤差、散乱及び減衰(後者ではエネルギースケールのCT取得を用いる)に関して補正し、Vue Point HD(GE Healthcare社)再構築アルゴリズム(9回の反復及び21のサブセット)を用いて再構築した。
【0094】
図1及び図2は、確認された転移性黒色腫病変部へのイメージング剤2の取込みを示している。したがって、このインビボイメージング方法は、黒色腫病変部へのαvβ3インテグリン結合イメージング剤の特異的な取込みを実証している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
B−raf、MEK1/2(MEK:マイトジェン活性化プロテインキナーゼ/細胞外シグナル関連キナーゼキナーゼ(itogen−activated protein kinase/xtracellular signal related kinase inase))又はERK1/2(ERK:細胞外シグナル関連キナーゼ(xtracellular signal elated inase))の阻害剤であって、黒色腫に罹患した被験体を治療するために使用される阻害剤の有効性をモニターする方法であって、
(a)第1の時点で、前記被験体に関してインビボイメージング手順を実施して検査対象領域の第1のインビボ画像を生成する段階であって、前記検査対象領域が前記黒色腫であり、前記インビボイメージング手順が
(i)インビボイメージング成分で標識されたベクターを含むインビボイメージング剤であって、αvβ3インテグリンに関する競合的結合アッセイにおいて<10nMのKi(ここで、Ki値はエキスタチンとの競合によって決定される。)をもってαvβ3インテグリンに結合するインビボイメージング剤を前記被験体に投与し、
(ii)段階(i)で投与されたインビボイメージング剤を前記黒色腫によって発現されたαvβ3インテグリンに結合させ、
(iii)段階(ii)の結合したインビボイメージング剤のインビボイメージング成分によって放出される信号を検出し、
(iv)段階(iii)で検出された信号を、前記検査対象領域中の前記黒色腫細胞の表面上でのαvβ3インテグリン発現を表す第1のインビボ画像に変換することを含む段階、
(b)前駆体被験体を前記阻害剤で治療する段階、
(c)第2の時点で、段階(a)で定義したインビボイメージング手順を繰り返して前記検査対象領域の第2のインビボ画像を生成する段階、並びに
(d)前記第1のインビボ画像を前記第2のインビボ画像と比較することで、前記第2の時点での前記検出信号の減少が前記黒色腫の治療における前記阻害剤の有効性を表す段階
を含んでなる方法。
【請求項2】
前記黒色腫がB−raf遺伝子中に突然変異を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記突然変異が単一の置換V599Eによって引き起こされる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記被験体がインタクトな哺乳動物被験体の生体である、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記被験体がヒト被験体である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記インビボイメージング剤が次の式Iを有する、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の方法。
【化1】

(式中、
1及びW2は独立に任意のリンカー部分であり、前記リンカー部分は式−(L)n−(式中、各Lは独立に−C(=O)−、−CR’2−、−CR’=CR’−、−C≡C−、−CR’2CO2−、−CO2CR’2−、−NR’−、−NR’CO−、−CONR’−、−NR’(C=O)NR’−、−NR’(C=S)NR’−、−SO2NR’−、−NR’SO2−、−CR’2OCR’2−、−CR’2SCR’2−、−CR’2NR’CR’2−、C4-8シクロヘテロアルキレン基、C4-8シクロアルキレン基、C5-12アリーレン基、C3-12ヘテロアリーレン基、アミノ酸、ポリアルキレングリコール、ポリ乳酸又はポリグリコール酸部分であり、nは1〜15の値を有する整数であり、各R’基は独立にH、C1-10アルキル、C3-10アルキルアリール、C2-10アルコキシアルキル、C1-10ヒドロキシアルキル又はC1-10フルオロアルキルであるか、或いは2以上のR’基がこれらの結合する原子と共に炭素環式又は複素環式の飽和又は不飽和環を形成する。)を有する二価基であり、
1及びZ2は独立に(i)インビボイメージング成分を含む基、(ii)糖部分又は(iii)水素であるが、Z1及びZ2の少なくとも一方はインビボイメージング成分であることを条件とする。)
【請求項7】
インビボイメージング成分が以下のものから選択される、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の方法。
(a)放射性金属イオン、
(b)γ線放出型放射性ハロゲン、
(c)陽電子放出型放射性非金属、及び
(d)常磁性金属イオン。
【請求項8】
黒色腫の治療におけるB−Raf、MEK1/2又はERK1/2の阻害剤の最適用量及び投与計画を決定するために臨床治験で使用するための、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
黒色腫の治療においてB−Raf、MEK1/2又はERK1/2の阻害剤に対する関連の初期応答を評価するための、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
黒色腫の治療においてB−Raf、MEK1/2又はERK1/2の阻害剤に最も応答しそうな患者を選択するための、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
B−Raf、MEK1/2又はERK1/2の阻害剤による黒色腫の治療を継続すべきか否かについて判断を下すのに使用するための、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか1項記載の方法におけるインビボイメージング剤の使用であって、前記インビボイメージング剤が請求項1、請求項6及び請求項7のいずれか1項で定義した通りである、使用。
【請求項13】
請求項1乃至請求項11のいずれか1項記載の方法で使用するのに適した薬剤の製造におけるインビボイメージング剤の使用であって、前記インビボイメージング剤が請求項1、請求項6及び請求項7のいずれか1項で定義した通りである、使用。
【請求項14】
請求項1乃至請求項11のいずれか1項記載の方法を実施するのに使用するためのコンピュータープログラム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−528014(P2011−528014A)
【公表日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517891(P2011−517891)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/058935
【国際公開番号】WO2010/007030
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(305040710)ジーイー・ヘルスケア・リミテッド (99)
【Fターム(参考)】