説明

治療システム、酸素濃縮装置

【課題】在宅酸素療法に用いる酸素濃縮装置の保守点検の迅速確実且つ効率的な実行を可能とする酸素濃縮装置の動作方法を提供する。
【解決手段】酸素富化気体を患者が継続的に吸入する療法である在宅酸素療法の実行に用いるために酸素富化気体を生成する、酸素濃縮装置であって、(1)当該酸素濃縮装置の運転に関する情報であって、過去に蓄積した情報および/または現在直接検出したリアルタイムの情報を表示させるための表示部と、(2)前記表示を行なわせるための操作部と、を備えたことを特徴とする酸素濃縮装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素濃縮装置の動作方法に係り、特に、在宅で酸素富化気体の吸入を続ける在宅酸素療法に用いる酸素濃縮装置の保守点検を迅速確実且つ容易に実行可能とした構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、呼吸器疾患の患者に対して空気中の酸素を分離濃縮して酸素富化気体を得るための呼吸用気体供給装置(以下、酸素濃縮装置ともいう)が開発され、それを用いた酸素療法が次第に普及するようになってきた。
【0003】
斯かる酸素療法は患者が医療機関に入院しつつ実施される場合もあるが、患者の呼吸器疾患が慢性症状を呈し、長期に渡ってこの酸素療法を実行して症状の平静化、安定化を図る必要がある場合には、患者の自宅に上記の酸素濃縮装置を設置し、この酸素濃縮装置が供給する酸素富化された気体をカニューラと呼ぶ管部材を用いて患者の鼻腔付近まで導いて、患者が吸引を行う治療方法も行われている。この種の治療方法を特に、在宅酸素療法あるいはHOT(Home Oxygen Therapy)とも称する。
【0004】
上記の在宅酸素療法は1985年に保険が適用されて以降、主に慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺結核後遺症を対象として処方が行なわれており、その患者数の概要はわが国においては人口10万人に対して60〜65人で凡そ8万人に上る(2000年時点)。またこの在宅酸素療法が患者の生命予後を改善する点も、旧厚生省呼吸不全班などから報告がなされている。このように在宅酸素療法が効果を奏する理由は、低酸素血症の改善に伴う肺循環動態の改善によるものと推察される。
【0005】
上記の在宅酸素療法は、(1)医師による患者の診察、(2)診察に基づいてこの患者に対する処方を記した在宅酸素療法実行指示書の医師による発行、(3)この指示書に基づいて患者宅への酸素濃縮装置の設置、(4)酸素濃縮装置を用いた酸素富化気体吸入の継続実行、(5)定期的、例えば月に一度の通院時の診察、といったステップを経て実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−227516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の在宅酸素療法に用いる酸素濃縮装置(以下、酸素濃縮器ともいう)は、典型的には、窒素を選択的に吸着する吸着剤を用いた圧力変動吸着型酸素濃縮装置として構成され、従来、在宅酸素療法を受ける患者の自宅に固定的に設置されて酸素濃縮気体(酸素富化気体)を吐出して患者の呼吸に供するものであった。尚、医療機関への定期的な通院時など患者の外出時には、患者は携帯する小型酸素ボンベから供給される酸素富化気体を吸入していた。
【0008】
従って酸素濃縮装置は患者宅にて長期に亘って運転の継続が可能であり、且つ酸素富化気体生成のための所定性能を維持していく必要があるが、そのためには酸素濃縮装置の定期点検を実施して装置の状態を正しく把握し、適切な処置をしていくことが重要である。
【0009】
上記の定期点検は、従来、酸素濃縮装置の構造や修理方法、性能評価方法等に精通する専門技術者が定期的に患者宅を訪問し、所定の測定器具などを用いてこの酸素濃縮装置の運転状態や性能の確認を行っていたものであって、その実行のためには多数の専門技術者の養成と全国各地の拠点への配置が必要であり医療経済面での負担も大きく、また患者も点検日程を予め約束した上で専門技術者を自宅に迎えることが必要であった。
【0010】
斯かる状況に対し、本出願人は先に、前記特許文献1に記載の酸素濃縮器点検システムを提案している。この提案システムは、運転データを内部に蓄積する酸素濃縮器、この酸素濃縮器と接続して運転データを受信可能なハンディターミナルを主な構成要素とし、このハンディターミナルを持参した技術者が各患者宅でこのハンディターミナルを用いて収集した運転情報を、センター施設等に設置されたメインコンピュータへ送信して集計することにより効率的な点検を可能とするものであった。しかしながら上記の提案システムを用いた場合でも、各患者宅を一戸一戸訪問して運転データを収集する必要がある点は従来と同様であり、且つ、訪問を受ける患者側の作業も依然として必要であり、改善が望まれていた。
【0011】
本発明は上記の状況に鑑みなされたものであって、在宅で酸素富化気体の吸入を続ける在宅酸素療法に用いる酸素濃縮装置の保守点検の迅速確実且つ効率的な実行を可能とする酸素濃縮装置の動作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明は、下記する1)乃至7)に記載の各構成を提供する。
1) 酸素富化気体を患者が継続的に吸入する療法である在宅酸素療法の実行に用いるために酸素富化気体を生成する、酸素濃縮装置であって、(1)当該酸素濃縮装置の運転に関する情報であって、過去に蓄積した情報および/または現在直接検出したリアルタイムの情報を表示させるための表示部と、(2)前記表示を行なわせるための操作部と、を備えたことを特徴とする酸素濃縮装置。
2) 酸素濃縮装置が生成する酸素富化気体を患者が継続的に吸入する療法である在宅酸素療法の実行に用いるための、治療システムであって、(1)パスワードを用いた認証確認あるいは物理的な鍵を用いたロック解除の後に、当該酸素濃縮装置の運転に関する情報の送信、読み出し、表示、リセットおよび消去のうち少なくともいずれかの処理を実行する制御部を備えた、酸素濃縮装置と、(2)前記酸素濃縮装置へ前記パスワードを送信する送信部を有する情報端末装置と、を備えたことを特徴とする治療システム。
3) 酸素富化気体を患者が継続的に吸入する療法である在宅酸素療法の実行に用いるために酸素富化気体を生成する、酸素濃縮装置であって、外部の情報端末装置から送信されたパスワードを受信し、前記パスワードを用いた認証確認あるいは物理的な鍵を用いたロック解除の後に、当該酸素濃縮装置の運転に関する情報の送信、読み出し、表示、リセットおよび消去のうち少なくともいずれかの処理を実行する制御部を備えたことを特徴とする酸素濃縮装置。
4) 酸素濃縮装置が生成する酸素富化気体を患者が継続的に吸入する療法である在宅酸素療法の実行に用いるための、治療システムであって、(1)当該酸素濃縮装置の運転に関する情報を蓄積して操作に応じて装置外へ出力する情報出力手段を備えた、酸素濃縮装置と、(2)前記酸素濃縮装置から受信した前記運転に関する情報を用いて、(a)当該酸素濃縮装置の運転状況のトレンドデータの生成、(b)異常が発生した酸素濃縮装置のリストアップ、および、(c)交換や保守が必要となる酸素濃縮装置のリストアップのうち少なくともいずれかの処理を実行する実行手段を備えた情報装置と、を備えたことを特徴とする治療システム。
5) 前記情報端末装置は、前記(c)の処理において、交換や保守が必要となる酸素濃縮装置と対処期日のリストアップを行なうことを特徴とする上記4)記載の治療システム。
6) 酸素濃縮装置が生成する酸素富化気体を患者が継続的に吸入する療法である在宅酸素療法の実行に用いるための、治療システムであって、(1)当該酸素濃縮装置の運転に関する情報を直接的に記録保持可能とされ、かつ、当該酸素濃縮器に対して脱着可能に構成されたメモリ媒体を備えた、酸素濃縮装置と、(2)前記酸素濃縮装置から取り外された前記メモリ媒体を取り付けて、前記運転に関する情報の読み出しを行なう情報端末装置と、を備えたことを特徴とする治療システム。
7) 酸素富化気体を患者が継続的に吸入する療法である在宅酸素療法の実行に用いるために酸素富化気体を生成する、酸素濃縮装置であって、当該酸素濃縮装置の運転に関する情報を直接的に記録保持可能とされ、かつ、当該酸素濃縮器に対して脱着可能に構成されたメモリ媒体を備えたことを特徴とする酸素濃縮装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、在宅で酸素富化気体の吸入を続ける在宅酸素療法に用いる酸素濃縮装置の保守点検の迅速確実且つ効率的な実行を可能とする酸素濃縮装置の動作方法を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る好ましい実施例である在宅酸素療法システムの接続図である。
【図2】図1の在宅酸素療法システムが有する酸素濃縮装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係る好ましい実施例である在宅酸素療法システムを、図1及び図2を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係る好ましい実施例である在宅酸素療法システムの接続図、図2は図1の在宅酸素療法システムが有する酸素濃縮装置の構成図である。
【0016】
〔在宅酸素療法システムの構成〕
本実施例の在宅酸素療法システムは、図1の接続図に示すように、酸素富化気体を呼吸器疾患患者へ供給する酸素濃縮装置1、及びこの酸素濃縮装置1の運転状態を確認する機能を有する医療機関端末2cを主な構成要素としている。
【0017】
上記の酸素濃縮装置1は、先に説明したように主に在宅酸素療法に用いるために空気中の窒素を分離し高濃度酸素(酸素富化気体)を供給する装置であり、例えば、酸素より窒素を選択的に吸着し得る吸着剤としてモレキュラーシーブゼオライト5A、13X、或いはリチウム系ゼオライトなどを吸着筒(吸着ユニット5内)に充填し、空気圧縮装置(コンプレッサー4)によって作られた加圧空気を供給することで、酸素を取り出す圧力変動吸着型の酸素濃縮装置である。尚、本発明の実施に際して、酸素濃縮装置の基本的な酸素濃縮機能に係る構成はここに説明を行う態様に限定されず、既に公知の構成、あるいは今後提案される様々な構成とすることが出来る。
【0018】
圧力変動型吸着型酸素濃縮装置である本実施例の酸素濃縮装置1は、図2の構成図に示すように、酸素よりも窒素を選択的に吸着する吸着剤を充填した吸着筒(吸着ユニット5に含まれる)に、コンプレッサ4によって大気中から圧縮された加圧空気を供給し、吸着筒内部を加圧状態にして窒素を吸着させ、吸着されなかった酸素を取り出す。吸着筒より取り出された酸素を主とする酸素富化気体は、製品タンク6に貯留した後、超音波センサー部7、呼吸同調部8を経て製品供給端9から装置1の外部へ供給され、酸素富化気体を酸素濃縮装置1から患者の鼻腔付近まで輸送するチューブ部材である鼻カニューラ12を介して使用者(酸素療法患者)に供給される。
【0019】
ここで吸着剤は、1回の工程で吸着できる窒素の量が吸着剤の量や種類によって決まっているため、吸着剤に吸着される窒素の量が飽和する前に流路切換弁を切り換えて吸着筒を大気開放して吸着筒内部を減圧し、窒素を脱着させて吸着剤を再生させる。また、流路切換弁は、予め設定された時間によって切り換えられるようにメイン制御部14によって制御される。なお、一工程中の吸脱着量を増やすべく、真空ポンプを用いて、脱着工程における吸着筒内部の圧力を真空にしても良い。
【0020】
尚、本実施例システムの酸素濃縮装置1を小型軽量に構成することにより、患者宅に固定的に設置されるのではなく可搬型として実現するために、例えば、特許第3269626号公報に記載された構成を用いて、複数の吸着筒に対する加圧及び脱着のための気体流路を順次連続的に形成する回転バルブ手段を備えた吸着ユニット5とすることは望ましい態様である。
【0021】
超音波センサー部7は、本出願人の出願に係る特開2002-214012号公報等に記載されているように、鼻カニューラ1c内を流れる酸素富化気体の流れる方向と同方向及び逆方向の2つの音波、例えば超音波の伝播速度を測定し、2つの測定値の相違する量から、鼻カニューラ1c内を流れる酸素富化気体の実際の流量を測定することが出来る。またその他の構成や方式を用いて酸素富化気体の実際の流量を測定する構成を有しても良い。
【0022】
更に、呼吸同調部8は、患者の呼吸を検知して吸気期間(空気を吸っている)だけに酸素富化気体を供給し、呼気期間(空気を吐いている)内は供給を停止する所謂デマンドレギュレータの機能を実現することによって、患者の吸入に影響が無いようにしつつ患者へ供給する酸素富化気体の量を節約 (conserving) するためのものであって、この結果、AC電源を電力供給源としている運転モードでは使用電力量を削減することが出来、再充電可能な電池を電力供給源としている運転モードでは次の充電までの運転時間を延長することが出来る。
【0023】
尚、上記の如く患者の呼吸を検知して吸気期間のみ酸素富化気体を供給する運転モード(以下、同調モードともいう)と、患者の呼吸とは無関係に一定の流量の酸素富化気体を常に供給する運転モード(以下、連続モードともいう)とを切り替え操作するための操作スイッチ(図示しない)を酸素濃縮装置1は備えており、例えば睡眠時には必ずこの操作スイッチを操作して連続モードで酸素富化気体の吸入を行うこととなっている。これは睡眠時の患者が鼻腔ではなく口腔経由で呼吸を行って呼吸の検知がされない場合であっても、酸素富化気体の供給を継続出来るようにするためである。
【0024】
患者の呼吸を検知するための具体的な構成は、例えば、本出願人の出願に係る特開2002-272845号公報に記載された構成の如く、光マイクを用いて音声信号(患者の呼吸音)を光信号に変換したのち電圧信号に変換し、更に周波数に変換することにより周波数領域での解析を行い、周波数帯域の違いにより呼吸を検知する構成や、特開昭62-270170号公報に記載があるように鼻カニューラに焦電素子からなるセンサーを設ける方法、特公平5-71894号公報に記載があるように導電性層を積層した高分子フィルムを用いて静電容量を検出するダイヤ不ラム式の圧力検出器を用いる構成や、特開平2-88078号公報に記載があるように圧力検出器を酸素濃縮装置本体の酸素供給口近傍に設け、圧力検出器の信号に基づいて酸素富化気体の供給を制御する方法や、あるいはその他の方法により実現することが出来る。
【0025】
表示部10は液晶パネルのような表示部材とその周辺インターフェイス部を含んだ表示手段であって、メイン制御部14から送信された情報をこの表示部材に表示する。表示部10が表示を行うデータの内容は、運転オン状態の表示、警報やアラームの表示、設定された流量の表示などのような従来の酸素濃縮装置でも表示が行われていた内容の他に、この酸素濃縮装置1が有する各構成の運転状態を検知した結果の情報(以下、運転情報、運転データともいう)などである。この運転情報の具体的な内容については後記する。
【0026】
情報出力端11はメイン制御部14から送出される種々の情報を、無線あるいは有線伝送路を介して酸素濃縮装置1外の装置例えばパーソナルコンピュータへ送出するための出力端子あるいは送信インターフェイスであって、IrDA、RS-232C、USB、bluetoothその他公知の通信規格に準じた構成であっても良い。送出される情報は、同じく従来の酸素濃縮装置でも表示が行われていた内容の他に、この酸素濃縮装置1の運転状態を検知した結果の情報(以下、運転情報、運転データともいう)などである。
【0027】
流量設定部12は患者等使用者が操作して供給すべき酸素富化気体の流量を設定操作するためのもので、例えばダイアルスイッチを回転操作して、1リットル/分、2リットル/分、3リットル/分等の内から所望の選択値を選択操作すると、この選択値を検知したメイン制御部14がコンプレッサー4や吸着ユニット5の動作速度などを制御して、設定された所望の流量を実現するものである。
【0028】
コンプレッサー4は、コンプレッサー4を駆動させるためのコンプレッサー駆動モーターを具備しており、コンプレッサー駆動モーターはメイン制御部14によって設定された回転数を実現するように電源制御部3が生成出力する駆動電流に従いコンプレッサー4を回転駆動させる。コンプレッサー4が有する圧縮機構部は、コンプレッサー駆動モーターによって得た回転力によって空気を圧縮するものであり、その圧縮方式によって様々な種類が存在し、往復運動式のピストンタイプや回転式のスクロールタイプなどが一般的によく用いられているが、大気中の空気を圧縮できるものであればどのタイプを用いても構わない。
【0029】
電源制御部3は上述のようにコンプレッサー4を駆動する駆動電流出力のほかに、装置1に含まれる各構成へ電力を供給する機能を有する。尚、本実施例の酸素濃縮装置1は、可搬型として構成するための特徴的な点として、従来の典型的な固定設置型酸素濃縮装置では家庭用AC電源のみからの電力供給方法であったのを改め、内蔵バッテリー、家庭用AC電源、及び自動車の車載DC電源、のスリーウェイ電源方式を採用している。そのために、装置外部に面する筐体外周部には電源入力端2を設け、ここを通じてAC電源ユニット15または、自動車車内のシガーライター接点に接続する車載電源ユニット16から直流にて電力の供給を受けることが出来る。
【0030】
更に、酸素濃縮装置1の内部には取り外しが可能な態様にて繰り返し充電可能なバッテリー13が設けられており、電源入力端2を通じた電力供給が出来ない場合に、バッテリー13からの放電により電源制御部3へ電力を供給する。尚、バッテリー13への充電は、通常、バッテリー13を酸素濃縮装置1へ装着したまま、AC電源ユニット15または車載電源ユニット16から供給された電力が電源入力端2及び電源制御部3を経由して供給されることにより実行される。また2次電池であるバッテリー13に代えて、燃料電池などその他の構成の電力蓄積手段を用いても良い。
【0031】
メイン制御部14は酸素濃縮装置1が有する各構成を制御して酸素富化気体の供給を行わせる、という従来構成の酸素濃縮装置と同様な機能とともに、この酸素濃縮装置1の運転状態を検知して必要に応じてデジタル化したデジタル情報(以下、運転情報、運転データともいう)を生成して蓄積する機能を有する。
【0032】
上記の運転情報は、先に説明した構成以外の構成を含む、酸素濃縮装置1に含まれる各構成要素の運転の状態を検知した結果得られたデジタル情報であって、(1)圧力変動吸着型酸素濃縮装置であるこの酸素濃縮装置1における吸着圧力、(2)この酸素濃縮装置1が吐出する酸素富化気体の酸素濃度、(3)この酸素濃縮装置1の運転時間、(4)この酸素濃縮装置1における異常の有無、の情報の内の少なくともいずれかを含むように構成しても良い。
【0033】
これらの運転情報を情報出力端11経由で酸素濃縮装置1外の装置、例えばパーソナルコンピュータへ出力したり、表示部10あるいはその他の表示手段へ出力して表示を行わせる機能、などを有する。これらの機能は後記する。
【0034】
更に、上記したメイン制御部14を公知技術に係るコンピュータ手段を用いて構成し、このコンピュータ手段に組みつけられてこのコンピュータ手段上で走るコンピュータプログラムが、既に説明し、あるいは下記するような動作が実現されるように各動作ステップが記載されたコード部を含んで構成されるようにしても良い。
【0035】
また、本実施例の酸素濃縮装置1は可搬型の機能を実現するための特徴的な構成として、先に説明した点の他に例えば、必要な程度の防塵、防滴機能を持って酸素濃縮装置1の内部を保護する筐体部、この筐体部に付帯する車輪部、同じく筐体部に付帯する保持ハンドルなど(いずれも図示しない)を有して、患者が引っ張るなどして外出時に帯同することが出来る。車輪部を有することなく、スリングベルトで直接患者が携行したりリュックに入れて背負ったりするなどの構成としてもよい。
【0036】
更に、酸素濃縮装置1を可搬型とするために質量及び容積を従来から大きく低減しており、例えば従来の固定設置型の典型的な酸素濃縮装置が約30kgの質量を有していたものが、本実施例の装置1は5kgを切る質量にて構成されており、持ち運びが容易であるので、患者が通院先である医療機関へ帯同することも容易である。
尚、本システムが有する医療機関端末2cの構成は、下記する本システムの動作とともに説明を行なうこととする。
【0037】
〔在宅酸素療法システムの動作〕
次に本実施例の在宅酸素療法システムの動作を、システムの接続図である図1を参照しながら説明する。
【0038】
まず、患者1bが患者宅1aに居て酸素療法を受ける場合には、従来と同様に家庭用AC電源から電力供給を受け、酸素富化気体の吸入を行うことが出来るとともに、患者宅内でバッテリー13駆動で吸入を行えば、ACコンセントの制約なく患者1bは装置1を帯同して患者宅内を自由に移動しながら吸入が継続できるので、従来の固定設置型装置のように何メートルにも及ぶ長大な延長チューブ付きカニューラを酸素濃縮装置に接続し、この延長チューブ付きカニューラ経由で吸入を行う不便さが解消される。
【0039】
そして本実施例に特徴的な点として、装置1が有するメイン制御部14は、酸素富化気体を供給している際に、常時、あるいは適当なタイミングで上記した運転情報を検知し、メイン制御部14内部のメモリ部(図示しない)に記録保持する。
【0040】
更に上記の運転情報が記録保持されるのがメイン制御部14内部のメモリではなく、独立して設けられたメモリ手段であってもよいし、あるいはメモリーステッィク-TM、SDカード-TMのように脱着可能なメモリ手段として、医療機関2aへの通院時には酸素濃縮器1全体ではなくこれら脱着可能なメモリ手段のみを取り出して医療機関2aへ持ち込むようにしても良い。あるいは通院先の医療機関2aへ酸素濃縮装置1を患者が持ち込むものの、上記の運転情報を医療機関の情報機器に渡す方法として酸素濃縮装置1からこれら脱着可能なメモリ手段を取り外した後、医療機関の情報機器に取り付けて受け渡す、所謂媒体渡しを行う様にしても良い。
【0041】
これらの運転情報は、患者宅1a内ばかりではなく、患者の外出先3aにおいても生成がなされるようにしても勿論よい。
そして定期的、例えば月に一度の通院日に、患者1bはこの酸素濃縮装置1を帯同して医療機関2aを訪れる。すなわち患者1bは酸素濃縮装置1をこの医療機関2aに搬入することとなる。
【0042】
医療機関2aには予め医療機関端末2cが設置されている。医療機関端末2cは汎用のパーソナルコンピュータに酸素濃縮装置1の運転情報を受けて表示信号に変換するための専用のコンピュータプログラムが組みつけられて実現される。すなわち医療機関端末2cに具備された中央情報処理部(CPU)は、上記の専用コンピュータプログラムに従い、酸素濃縮装置1のメイン制御部14から出力されるデジタル信号である運転情報を受けて、この医療機関端末2cに付属するモニタ部あるいはその他の情報表示手段で運転情報の内容を表示するための表示信号を生成するよう動作を行なう。
【0043】
医療機関2aの医師2bは、伝送ケーブル2eその他の伝送路を介して情報出力端11と接続した医療機関端末2cに付属するモニタ部で上記のようなあるいはその他の構成の運転情報を表示させて確認することにより、酸素濃縮装置1が正しく運転され、この結果患者が正しく在宅酸素療法を受けているかを把握することが出来、在宅酸素療法の治療効果を大きく増進させることが出来る。
【0044】
尚、上記の運転情報は、医療機関端末2cの外部に有る図示しない情報表示手段へ送信されて運転情報の表示が行なわれるよう構成してもよいし、更に、運転情報を図示しない印刷手段を用いて紙媒体に印刷するように構成することも勿論可能である。
【0045】
また運転情報を医療機関端末2cへ出力して表示その他を行なうのではなく、表示を行なわせるべく酸素濃縮装置1が有する図示しない操作部を操作することによって酸素濃縮装
置1が有する表示部10にて表示を行なわせるようにしてもよい。
【0046】
更に、これら表示や出力がなされる運転情報は、先にメイン制御部14が検出して蓄積した過去の運転に関わる情報ばかりではなく、現在のリアルタイムな運転情報を直接検出して上記の表示などを行なうことも考えられる。
【0047】
運転情報を医療機関の医療機関端末2cで表示させる際には、先に説明したように予めこの医療機関端末2cにインストールされている専用の表示用プログラムの機能により、まずメニュー画面(図示しない)が医療機関端末2cの表示画面上に表示され、このメニュー画面に含まれている項目名、例えば、上記の「吸着圧」、「酸素濃度」等の中から所望の情報名を選んでこの医療機関端末2cの表示画面に表示させることが出来る。メニュー画面中の項目名の表示順番は表示頻度順として選択作業の効率を上げても良い。
【0048】
また、運転情報の改変や消去防止等の目的で、運転情報の読み出しや、表示や、リセット(消去)作業は、予め決められた医療従事者のみが実行出来るように、パスワード等を用いた認証確認、あるいは物理的な鍵でロックを解除するように構成してもよい。そのために、酸素濃縮装置1側に錠を設けたり、あるいは情報を受信するために接続している医療機関端末2cから正しいパスワードが送られてきた場合のみ、これらの情報を送信、表示するようメイン制御部14を構成してもよい。
【0049】
医療機関端末2cで運転情報が表示された後の動作は次の通りである。
まず、医師2bは、所定の酸素濃度が出ていないなどの異常の発生を、表示された運転情報から読み取った場合には、代替用の酸素濃縮装置1を患者1bの下へ届けるよう医療機器供給業者へ連絡することが可能である。酸素濃縮装置1の交換が緊急を要しない場合には、次回の通院時(一ヵ月後)に代替用の酸素濃縮装置1を患者1bが受け取れるよう、次回の通院時までにこの医療機関へ配送するよう依頼することも出来る。
【0050】
また運転情報は、インターネット通信網5aを経由して管理センター4aの管理端末4cへ送信され、管理センター担当者4bの操作に応じて、個々の酸素濃縮装置の運転状況のトレンドデータの生成、異常が発生した酸素濃縮装置のリストアップ、近々交換や保守が必要となる酸素濃縮装置と対処期日のリストアップなどが実行されるよう構成しても良い。そのために、酸素濃縮装置1から医療機関端末2cへ送出される運転情報は、予め、汎用表計算ソフトウェアのデータ形式や、テキストデータ形式など、電子メールの添付データとして送受信が容易なデータ形式として構成されると有利である。あるいはまた、上記の管理端末4cがインターネット通信網5a上で有しているアドレス、具体的には例えばIPアドレスがこの運転情報に予め付加されて送出されることなども考えられる。
【0051】
異常発生への対処、代替装置の手配の際には、上記に説明したのと同様に医療機関や患者宅への代替用酸素濃縮装置の配送が実行される。
【0052】
尚、運転情報を一時的に蓄積するサーバ2dを医療機関に設けて、医療機関供給業者の担当者が定期的に医療機関を訪問してサーバ2dから運転情報を収集するようにして、医療機関端末2cとインターネット通信網5aとのアイソレートを行うようにしても良い。
【0053】
本実施例の酸素濃縮装置1は上記のように構成したので、定期的に専門技術者が患者宅を訪問して酸素濃縮装置の保守点検を実施する必要がなくなり、あるいは少なくとも回数を低減できるので経済効率が向上し、医療経済面での負担が軽減できる効果がある。また管理センターの担当エリアを広域化して、より少ない施設、人員で酸素濃縮装置の保守点検を実行継続できるので、更に経済効率が向上する。また医療機関の医師が、患者が用いている酸素濃縮装置の運転状況を直接確認できるので、在宅酸素療法実行の上での確実性、安全性がより高まる効果もある。
【符号の説明】
【0054】
1 酸素濃縮装置
1a 患者宅
2a 医療機関
2c 医療機関端末(情報端末装置)
13 バッテリー(バッテリー手段)
14 メイン制御部(情報出力手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素富化気体を患者が継続的に吸入する療法である在宅酸素療法の実行に用いるために酸素富化気体を生成する、酸素濃縮装置であって、
(1) 当該酸素濃縮装置の運転に関する情報であって、過去に蓄積した情報および/または現在直接検出したリアルタイムの情報を表示させるための表示部と、
(2) 前記表示を行なわせるための操作部と、
を備えたことを特徴とする酸素濃縮装置。
【請求項2】
酸素濃縮装置が生成する酸素富化気体を患者が継続的に吸入する療法である在宅酸素療法の実行に用いるための、治療システムであって、
(1) パスワードを用いた認証確認あるいは物理的な鍵を用いたロック解除の後に、当該酸素濃縮装置の運転に関する情報の送信、読み出し、表示、リセットおよび消去のうち少なくともいずれかの処理を実行する制御部を備えた、酸素濃縮装置と、
(2) 前記酸素濃縮装置へ前記パスワードを送信する送信部を有する情報端末装置と、
を備えたことを特徴とする治療システム。
【請求項3】
酸素富化気体を患者が継続的に吸入する療法である在宅酸素療法の実行に用いるために酸素富化気体を生成する、酸素濃縮装置であって、
外部の情報端末装置から送信されたパスワードを受信し、前記パスワードを用いた認証確認あるいは物理的な鍵を用いたロック解除の後に、当該酸素濃縮装置の運転に関する情報の送信、読み出し、表示、リセットおよび消去のうち少なくともいずれかの処理を実行する制御部を備えたことを特徴とする酸素濃縮装置。
【請求項4】
酸素濃縮装置が生成する酸素富化気体を患者が継続的に吸入する療法である在宅酸素療法の実行に用いるための、治療システムであって、
(1) 当該酸素濃縮装置の運転に関する情報を蓄積して操作に応じて装置外へ出力する情報出力手段を備えた、酸素濃縮装置と、
(2) 前記酸素濃縮装置から受信した前記運転に関する情報を用いて、(a)当該酸素濃縮装置の運転状況のトレンドデータの生成、(b)異常が発生した酸素濃縮装置のリストアップ、および、(c)交換や保守が必要となる酸素濃縮装置のリストアップのうち少なくともいずれかの処理を実行する実行手段を備えた情報装置と、
を備えたことを特徴とする治療システム。
【請求項5】
前記情報端末装置は、前記(c)の処理において、交換や保守が必要となる酸素濃縮装置と対処期日のリストアップを行なうことを特徴とする請求項4記載の治療システム。
【請求項6】
酸素濃縮装置が生成する酸素富化気体を患者が継続的に吸入する療法である在宅酸素療法の実行に用いるための、治療システムであって、
(1) 当該酸素濃縮装置の運転に関する情報を直接的に記録保持可能とされ、かつ、当該酸素濃縮器に対して脱着可能に構成されたメモリ媒体を備えた、酸素濃縮装置と、
(2) 前記酸素濃縮装置から取り外された前記メモリ媒体を取り付けて、前記運転に関する情報の読み出しを行なう情報端末装置と、
を備えたことを特徴とする治療システム。
【請求項7】
酸素富化気体を患者が継続的に吸入する療法である在宅酸素療法の実行に用いるために酸素富化気体を生成する、酸素濃縮装置であって、
当該酸素濃縮装置の運転に関する情報を直接的に記録保持可能とされ、かつ、当該酸素濃縮器に対して脱着可能に構成されたメモリ媒体を備えたことを特徴とする酸素濃縮装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−88925(P2010−88925A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284089(P2009−284089)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【分割の表示】特願2004−60136(P2004−60136)の分割
【原出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(503369495)帝人ファーマ株式会社 (159)