説明

治療用ウイルスを使用する肝細胞癌の処置

インターフェロン感受性の複製能のあるRNAウイルスは、肝細胞癌腫瘍を有する哺乳動物被験体を処置するために使用される。具体的には、本発明は、肝細胞癌腫瘍を有する哺乳動物被験体を処置するための方法であって、該方法は、以下の工程:該状態を処置するに有効な量の治療用ウイルスを該被験体に投与する工程、を包含し、ここで該治療用ウイルスは、インターフェロン感受性の複製能のあるRNAウイルスである、方法、を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ウイルスを使用する癌腫の処置が、WO00/62735に開示されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0002】
(発明の要旨)
本発明は、肝細胞癌腫瘍を有する哺乳動物被験体を処置するための方法を提供し、この方法は、その腫瘍を処置するために有効な量の治療用ウイルスをその被験体に投与する工程を包含し、そのウイルスは、インターフェロン感受性の複製能のあるRNAウイルスである。
【0003】
本発明は、インターフェロン感受性の複製能のあるRNAウイルス(例えば、ニューキャッスル病ウイルス)が、肝細胞癌細胞型に対する有効な抗腫瘍活性を有するという知見に基づく。インビトロでのウイルス媒介性抗新生物活性は、インビボでの有効な抗腫瘍活性に相関する。例えば、Pecoraら(1)は、ニューキャッスル病ウイルスのPV701株が、扁平上皮細胞癌の完全な退縮および結腸細胞癌の部分的退縮を引き起こし得ることを示す。中皮腫の患者、黒色腫の患者、乳癌の患者、膵臓癌の患者、および神経内分泌細胞腫の患者における、測定可能な腫瘍退縮もまた、観察された(1)。これらの腫瘍型の各々は、インビトロ実験によって、ニューキャッスル病ウイルス(PPMK107)による死滅に対して感受性であることが示された(WO00/62735)。他のウイルスもまた、インビトロ活性と臨床効力との間の相関性を示した。例えば、単純ヘルペスウイルスのG207株は、インビトロで神経芽細胞腫に対する腫瘍崩壊活性を示した(2)。この株は、神経芽細胞腫の患者において神経芽細胞腫に対する抗腫瘍活性の徴候を示した(3)。Onyx−015は、扁平上皮細胞腫に対するインビトロ活性を有することが示された(4)。この同じ腫瘍型に対する臨床試験において、Onyx−015で処置した患者は、部分的腫瘍退縮および完全腫瘍退縮を経験した(5)。同様に、腫瘍崩壊ウイルスCV706は、インビトロおよび(6)および臨床試験(7)において、前立腺腫瘍に対する活性を示した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0004】
(発明の詳細な説明)
本明細書中で使用される場合、移行句「含む(包含する)(comprising)」は、開放型である。この用語を利用する請求項は、そのような請求項において記載される構成要件に加えて、構成要件を含み得る。従って、例えば、特許請求の範囲は、記載された構成要件またはその均等物が存在する限りは、その特許請求の範囲中に具体的には記載されていない他の治療剤または治療用ウイルスもまた含む処置レジメンに関して示し得る。
【0005】
本明細書中で使用される場合、「NDV」とは、ニューキャッスル病ウイルスについての略語である。本明細書中で使用される場合、「DLT」とは、毒性を制限する用量についての略語である。本明細書中で使用される場合、用語「プラーク形成単位(PFU)」とは、1つの感染ウイルス粒子を意味する。本明細書中で使用される場合、「BPFU」とは、10億PFUを意味する。本明細書中で使用される場合、「PP」とは、プラーク精製されたことを意味する。従って、例えば、PPMK107とは、プラーク精製されたニューキャッスル病ウイルス株MK107を意味する。本明細書中で使用される場合、「PFU/平方メートル」(これは、投与量を表現するための標準単位である)とは、患者の表面積1平方メートル当たりの平均PFUを意味する。本明細書中で使用される場合、用語「複製能のある」ウイルスとは、癌細胞において感染性の子孫を生じるウイルスを指す。
【0006】
本発明の方法に従って、利用される治療用ウイルスがニューキャッスル病ウイルスである場合、そのウイルスは、低い毒性(遅延性(lentogenic))、中程度の毒性(中程度病原性(mesogenic))、または高い毒性(重症型(velogenic))であり得る。毒性のレベルは、卵における平均死亡時間(MDT)試験に従って決定される(Alexander,Laboratory Manual for the Isolation and Identification of Avian Pathogens,第3版,Purchaseら編(Kendall/Hunt,Iowa)第117頁「Chapter 27:Newcastle Disease」)。ニューキャッスル病ウイルスは、MDT試験によって、遅延性(MDT>90時間);中程度病原性(MDT 60〜90時間);および(MDT<60時間)として分類される。
【0007】
従来の任意のインターフェロン感受性の複製能のあるRNAウイルスが、本発明に従って、肝細胞癌腫瘍を有する哺乳動物被験体を処置するために使用され得る。本発明の方法の実施形態において、そのインターフェロン感受性の複製能のあるRNAウイルスは、マイナス鎖である。進行的により具体的な実施形態において、マイナス鎖RNAウイルスは、パラミクソウイルス属(例えば、ニューキャッスル病ウイルス)であり、より具体的には、ニューキャッスル病ウイルスの中程度病原性株である。
【0008】
本発明に従って、ウイルスを被験体に投与するために従来の任意の経路または技術が、利用され得る。たとえば、そのウイルスは、以下の経路によって投与され得る:口腔内(buccal)経路、舌下経路、腸内経路、直腸経路;ならびに非経口経路(皮下経路、経皮経路、皮内経路、腫瘍内経路、腫瘍周囲(peritumoral)経路、頭蓋内経路、髄腔内経路、筋肉内経路、吸入、鼻内経路、胸膜腔内経路、気管支内経路、内視鏡経路、膣経路、硬膜外経路、局所的(local)経路、および局所性(topical)経路を包含する);ならびに全身経路(静脈内経路、動脈内経路、および腹腔内経路を包含する)。そのウイルスがエンテロウイルスまたはレオウイルスである場合、経路経路がまた、適切である。本発明の一実施形態において、そのウイルスは、全身投与(好ましくは、静脈内投与)される。本発明に従う治療用ウイルスの静脈内投与のために、好ましくは、そのウイルスは、ニューキャッスル病ウイルスの中程度病原性株である。
【0009】
望ましくない副作用は、上記ウイルスが投与される速度を制御することによって減少され得ることが、見出された。静脈内経路によってニューキャッスル病ウイルスの中程度病原性株を投与する場合は、そのウイルスの用量が、24時間までの投与時間にわたって投与されることが好ましい。その投与時間内の任意の10分間サンプリング期間中に、患者の表面積1平方メートル当たり7.0×10PFU間での速度でその用量が投与されることが、好ましい。より好ましくは、その用量が投与される速度は、その投与時間内の任意の10分間サンプリング期間中に、患者の表面積1平方メートル当たり2.0×10PFU間での速度で投与される。一般的に、その投与時間が少なくとも1時間であるように、その投与速度を選択することが、簡便である。より少ない副作用は、一般的には、その投与時間が少なくとも3時間である場合に観察される。
【0010】
本発明の一実施形態において、上記治療用ウイルスは、1回以上のサイクルで上記被験体に投与され、少なくとも1回のサイクルは、上記ウイルスの1以上の脱感作用量を連続的に投与し、その後、上記ウイルスの1以上の増大用量を投与する工程を包含し、各増大用量中の上記ウイルスの量は、各脱感作用量中のそのウイルスの量より多い。より具体的な実施形態において、上記サイクルは、患者の表面積1平方メートルあたり少なくとも1.2×1010PFUの1脱感作用量、および患者の表面積1平方メートルあたり少なくとも2.4×1010PFUの1以上の増大用量を含む。脱感作用量および増大用量を利用するレジメンは、1以上の上記用量の投与の速度を制御するという上記の技術と組み合わせ得る。上記ウイルスの第1感作用量が投与される速度を制御することは、特に役に立つ。
【0011】
本発明の方法に従って、必要に応じて、その治療用ウイルスは、別の抗腫瘍剤(例えば、WO00/62735(36頁20行目〜37頁10行目に記載されるもの)と組み合わせて投与され得る。
【0012】
本発明に従って処置される被験体は、ヒト被験体または非ヒト哺乳動物被験体のいずれかであり得る。
【0013】
その処置をモニタリングすることは、本発明の本質的な局面ではないものの、その処置の治療効果を測定するための技術が存在する。これらは、そのウイルスの投与後の腫瘍の大きさを測定することを包含し、腫瘍のサイズの縮小は、陽性の結果である。
【0014】
本発明は、以下の実施例を参照することによってより理解される。その実施例は、本明細書に記載される本発明を例示するが、限定しない。以下の実施例において、使用されるNDVは、ニューキャッスル病ウイルスのMK107株の三重プラーク生成弱毒化(中程度病原性)バージョンであった。このNDVは、国際特許公開WO00/62735(2000年10月26日公開、Pro−Virus,Inc.)においてより十分に記載される。WO00/62735の内容全体は、本明細書に参考として援用される。
【実施例】
【0015】
(実施例1:細胞傷害性アッセイおよびTC50の決定)
肝細胞癌(HepG2)細胞を、PPMK107による殺傷に対する感度についてアッセイした。細胞を、24ウェル組織培養ディッシュ中で、約70〜80%コンフルエントになるまで増殖させた。増殖培地を除去し、PPMK107を、1×10〜1pfu/ウェルの範囲の10倍希釈で、ウェルに添加した。ウイルスを添加しないコントロールウェルを、各プレートに含めた。ウイルスを90分間吸着させ、ウイルスを除去し、培地と交換し、次いで、37℃および5%COにおいて5日間インキュベートした。細胞生存度の定量的評価を、CELLTITER 96 非放射活性増殖アッセイ(PROMEGA)を用いて行った。このアッセイは、MTTテトラゾリウム塩[3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド]を呈色したホルマゾン生成物に変換することに基づく。そのMTT色素溶液を各ウェルに直接添加して、37℃および5%COにおいて4時間インキュベートした。次いで、各ウェルに停止/可溶化溶液(1ml)を添加した。そのプレートを37℃および5%COにおいて一晩インキュベートし、570nmでの吸光度を測定した。シグナル量は、そのウェル中の生存細胞の数に正比例する。ウイルス処理したウェル中の細胞の生存度を、未処理コントロールウェル中の活性の%として表した。そのデータを、1ウェルあたり接種したPFU 対 コントロールの%としての細胞生存度として、グラフにプロットした。そのTC50を、4パラメーターロジスティック曲線にデータをフィットさせた後に平方和を最小化することによって、50%細胞生存度を生じるPFU/ウェルを決定するグラフから計算した(図1)。
【0016】
(参考文献)
【0017】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】中程度病原性ニューキャッスル病ウイルス(PPMK107)の感染後のHepG2細胞についてのTC50値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝細胞癌腫瘍を有する哺乳動物被験体を処置するための方法であって、該方法は、該状態を処置するに有効な量の治療用ウイルスを該被験体に投与する工程を包含し、ここで該治療用ウイルスは、インターフェロン感受性の複製能のあるRNAウイルスである、方法。
【請求項2】
前記ウイルスは、マイナス鎖RNAウイルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ウイルスは、パラミクソウイルスである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記パラミクソウイルスは、ニューキャッスル病ウイルスである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ウイルスは、ニューキャッスル病ウイルスの中程度病原性株である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ウイルスは、全身投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ウイルスは、静脈内投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記投与されるウイルスは、ニューキャッスル病ウイルスの中程度病原性株である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ウイルスは、24時間までの投与期間間隔で投与され;その用量は、該投与期間間隔内のどこかの10分間のサンプリング時間において、患者の表面積1平方メートルあたり7.0×10PFUまでの割合で投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記速度は、前記投与時間間隔内のどこかの10分間のサンプリング時間において、患者の表面積1平方メートルあたり2.0×10PFUまでの割合で投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記投与期間は、少なくとも1時間である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記投与期間は、少なくとも3時間である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記治療用ウイルスは、1回以上の周期で前記被験体に投与され、少なくとも1回のサイクルは、逐次、1以上の脱感作用量の該ウイルスを投与し、続いて、該ウイルスの1以上の増大用量を投与する工程を包含し、ここで各増大用量中の該ウイルスの量は、各脱感作用量中の該ウイルスの量より多い、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記サイクルは、患者の表面積1平方メートルあたり少なくとも1.2×1010PFUの1脱感作用量、および患者の表面積1平方メートルあたり少なくとも2.4×1010PFUの1以上の増大用量を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記被験体はヒト被験体である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記被験体は非ヒト哺乳動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記腫瘍のサイズは、前記ウイルスの投与後に縮小する、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−524692(P2006−524692A)
【公表日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510011(P2006−510011)
【出願日】平成16年4月14日(2004.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/011447
【国際公開番号】WO2004/096126
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(504397480)ウェルスタット バイオロジクス コーポレイション (13)
【Fターム(参考)】