治療用処置装置
【課題】熱効率がよく高周波電極の温度分布が均一となる治療用処置装置を提供する。
【解決手段】第1の高周波電極110には、発熱チップが配置されている。この発熱チップは、一対の第1の発熱チップ用通電ライン164の間に直列に接続され、電力が供給されて発熱し、第1の高周波電極110を加熱する。第1のカバー部材120には、第1の高周波電極用通電ライン162が接続された導電性コーティング132が形成されている。第1の高周波電極110と第1のカバー部材120とが組み立てられたときに、この導電性コーティング132は、第1の高周波電極110のツメ114と接触し導通する。導電性コーティング132の熱抵抗が十分に高ければ、発熱チップによる熱の第1の高周波電極用通電ライン162からの流出を防止することができる。
【解決手段】第1の高周波電極110には、発熱チップが配置されている。この発熱チップは、一対の第1の発熱チップ用通電ライン164の間に直列に接続され、電力が供給されて発熱し、第1の高周波電極110を加熱する。第1のカバー部材120には、第1の高周波電極用通電ライン162が接続された導電性コーティング132が形成されている。第1の高周波電極110と第1のカバー部材120とが組み立てられたときに、この導電性コーティング132は、第1の高周波電極110のツメ114と接触し導通する。導電性コーティング132の熱抵抗が十分に高ければ、発熱チップによる熱の第1の高周波電極用通電ライン162からの流出を防止することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療用処置装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、高周波エネルギや熱エネルギを用いて生体組織を治療する治療用処置装置が知られている。例えば特許文献1には、次のような治療用処置装置が開示されている。すなわち、この治療用処置装置は、処置対象である生体組織を把持する開閉可能な保持部を有する。この保持部の生体組織と接する部分には、高周波の電圧を印加するための高周波電極が設けられている。さらに、高周波電極には、この高周波電極を加熱するための発熱チップが設けられている。また、高周波電極には、高周波電極や発熱チップに対する配線が施されている。また、保持部には、カッタが設けられている。このような治療用処置装置の使用においては、保持部は、まず生体組織を把持する。保持部は、この生体組織に高周波の電圧を印加し、更に発熱チップを用いて生体組織を加熱することで、生体組織を吻合する。また、保持部に備えられたカッタにより、生体組織端部を接合した状態で切除することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−247893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した高周波電極に高周波電力を供給する高周波電力線は、供給する高電圧に耐え得る程度の太さを有する導電性材料で形成されている。この高周波電力線が高周波電極に直接接続されると、生体組織の加熱の際に、発熱チップで発生した熱が高周波電極を介して高周波電力線から流出し得る。すなわち、治療用処置装置の熱効率が悪くなるおそれがあり、また、高周波電極の温度が場所によって不均一となるおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、熱効率がよく高周波電極の温度分布が均一となる治療用処置装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を果たすため、本発明の一態様によれば、治療用処置装置は、生体組織にエネルギを作用させて治療するための治療用処置装置であって、表裏をなす第1の主面と第2の主面とのうち前記第1の主面において前記生体組織に接触してこの生体組織への高周波電圧の印加及びこの生体組織の加熱を行う導電性の高周波電極と、前記第2の主面と接合し、前記高周波電極を加熱する発熱素子と、前記発熱素子を前記高周波電極とともに囲む絶縁性のカバー部材と、少なくとも一部が前記カバー部材に形成され、前記高周波電極と電気的に接続している導電部と、前記高周波電極との絶縁性が確保され、前記導電部と電気的に接続しており、この導電部を介して前記高周波電極に高周波電流を供給する高周波電力線と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高周波電力線は導電部を介して高周波電極に電力を供給するので、熱効率がよく高周波電極の温度分布が均一となる治療用処置装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の各実施形態に係る治療用処置システムの構成例を示す概略図。
【図2】本発明の各実施形態に係るエネルギ処置具のシャフト及び保持部の構成例を示す断面の概略図であり、(A)は保持部が閉じた状態を示す図、(B)は保持部が開いた状態を示す図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る保持部の第1の保持部材の構成例を示す概略図であり、(A)は平面図、(B)は(A)に示す3B−3B線に沿う縦断面図、(C)は(A)に示す3C−3C線に沿う横断面図。
【図4A】本発明の各実施形態に係る発熱チップの構成例の概略を示す上面図。
【図4B】本発明の各実施形態に係る発熱チップの構成例の概略を示す図であって、図4Aに示す4B−4B線に沿う断面図。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る第1の電極部の構成例を示す分解斜視図。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る第1の電極部の構成例を示す分解斜視図。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る第1の電極部の構成例を示す斜視図。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る第1の電極部の構成例を示す斜視図。
【図9】導電性コーティングにおける熱流について説明するための図。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る第1の電極部の構成例を示す斜視図。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る第1の電極部の構成例を示す分解斜視図。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る第1の電極部の構成例を示す分解斜視図。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る第1のカバー部材の構成例を示す斜視図。
【図14】本発明の第3の実施形態に係る第1の電極部の構成例を示す分解斜視図。
【図15】本発明の第4の実施形態に係る第1の電極部の構成例を示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係る治療用処置装置は、生体組織の治療に用いるための装置である。この治療用処置装置は、生体組織に高周波エネルギと熱エネルギとを作用させる。図1に示すように、治療用処置装置300は、エネルギ処置具310と、制御装置370と、フットスイッチ380とを備えている。
【0010】
エネルギ処置具310は、例えば腹壁を貫通させて処置を行うための、リニアタイプの外科治療用処置具である。エネルギ処置具310は、ハンドル350と、ハンドル350に取り付けられたシャフト340と、シャフト340の先端に設けられた保持部320とを有する。保持部320は、開閉可能であり、処置対象である生体組織を把持して、生体組織の凝固、切開等の処置を行う処置部である。以降説明のため、保持部320側を先端側と称し、ハンドル350側を基端側と称する。ハンドル350は、保持部320を操作するための複数の操作ノブ352を備えている。また、ハンドル350には、そのエネルギ処置具310に係る固有値等を記憶する図示しない不揮発性のメモリが備えられている。なお、ここで示したエネルギ処置具310の形状は、もちろん一例であり、同様の機能を有していれば、他の形状でもよい。例えば、鉗子のような形状をしていてもよいし、シャフトが湾曲していてもよい。
【0011】
ハンドル350は、ケーブル360を介して制御装置370に接続されている。ここで、ケーブル360と制御装置370とは、コネクタ365によって接続されており、この接続は着脱自在となっている。すなわち、治療用処置装置300は、処置毎にエネルギ処置具310を交換することができるように構成されている。制御装置370には、フットスイッチ380が接続されている。足で操作するフットスイッチ380は、手で操作するスイッチやその他のスイッチに置き換えてもよい。フットスイッチ380のペダルを術者が操作することにより、制御装置370からエネルギ処置具310へのエネルギの供給のON/OFFが切り換えられる。制御装置370は、治療用処置装置300の各部の動作を制御する。なお、制御装置370は、ハンドル350に設けられた不揮発性のメモリからそのエネルギ処置具310に係る情報を取得する。
【0012】
保持部320及びシャフト340の構造の一例を図2に示す。図2(A)は保持部320が閉じた状態を示し、図2(B)は保持部320が開いた状態を示す。シャフト340は、筒体342とシース343とを備えている。筒体342は、その基端部でハンドル350に固定されている。シース343は、筒体342の外周に、筒体342の軸方向に沿って摺動可能に配設されている。
【0013】
筒体342の先端部には、保持部320が配設されている。保持部320は、第1の保持部材322と、第2の保持部材324とを備えている。第1の保持部材322の基部は、シャフト340の筒体342の先端部に固定されている。一方、第2の保持部材324の基部は、シャフト340の筒体342の先端部に、支持ピン346によって、回動可能に支持されている。したがって、第2の保持部材324は、支持ピン346の軸回りに回動し、第1の保持部材322に対して開いたり閉じたりする。
【0014】
保持部320が閉じた状態では、第1の保持部材322の基部と、第2の保持部材324の基部とを合わせた断面形状は、円形となる。第2の保持部材324は、第1の保持部材322に対して開くように、例えば板バネなどの弾性部材347により付勢されている。シース343を、筒体342に対して先端側にスライドさせ、シース343によって第1の保持部材322の基部及び第2の保持部材324の基部を覆うと、図2(A)に示すように、弾性部材347の付勢力に抗して、第1の保持部材322及び第2の保持部材324は閉じる。一方、シース343を筒体342の基端側にスライドさせると、図2(B)に示すように、弾性部材347の付勢力によって第1の保持部材322に対して第2の保持部材324は開く。
【0015】
筒体342には、後述する第1の高周波電極110に電力を供給する第1の高周波電極用通電ライン162と、第2の高周波電極210に電力を供給する第2の高周波電極用通電ライン262とが挿通されている。また、筒体342には、後述する発熱部材である発熱チップ140に電力を供給する一対の第1の発熱チップ用通電ライン164と、発熱チップ240に電力を供給する一対の第2の発熱チップ用通電ライン264とが挿通されている。
【0016】
筒体342の内部には、その基端側で操作ノブ352の一つと接続した駆動ロッド344が、筒体342の軸方向に沿って移動可能に設置されている。駆動ロッド344の先端側には、先端側に刃が形成された薄板状のカッタ345が設置されている。操作ノブ352を操作すると、駆動ロッド344を介してカッタ345は、筒体342の軸方向に沿って移動させられる。カッタ345が先端側に移動するとき、カッタ345は、保持部320に形成された後述する第1のカッタ案内溝332及び第2のカッタ案内溝334内に収まる。
【0017】
第1の保持部材322には、図3に示すように、前記したカッタ345を案内するための第1のカッタ案内溝332が形成されている。第1の保持部材322には、例えば銅の薄板で形成された第1の高周波電極110が設けられている。この第1の高周波電極110は、その一方の主面(第1の主面)で生体組織と接触するように構成されている。第1の高周波電極110は、第1のカッタ案内溝332を有するので、その平面形状は、図3(A)に示すように、U字形状となっている。
【0018】
第1の高周波電極110の生体組織と接触しない面(第2の主面)には、後に詳述するように、複数の発熱チップ140が接合されている。さらに第2の主面には、この発熱チップ140への配線のため、フレキシブル基板150が配置されている。発熱チップ140と、フレキシブル基板150を含む配線等と、第1の高周波電極110とを覆うように、第1のカバー部材120が配置されている。
【0019】
第1のカバー部材120は、例えば樹脂で形成されており、電気的絶縁性を有する。第1のカバー部材120の第1の高周波電極110と対向する主面を第3の主面と称し、第3の主面の裏側を第4の主面と称することにする。第1のカバー部材120の第3の主面には、後述するように第1の高周波電極110と接触する導電性コーティング132が設けられている。この導電性コーティング132には、第1の高周波電極用通電ライン162が例えばハンダ付けにより接続されている。その結果、第1の高周波電極110は、導電性コーティング132、第1の高周波電極用通電ライン162及びケーブル360を介して制御装置370に接続されている。
【0020】
第1の高周波電極110と第1のカバー部材120とで囲まれた空間には、封止剤170が充填されている。なお、図2では、図面の簡略化のために、第1のカバー部材120と、封止剤170とは、図示を省略している。
【0021】
このようにして、第1の高周波電極110と第1のカバー部材120とに囲まれた第1の電極部100が形成されている。第1の電極部100は、電気絶縁性と断熱性とを有する第1の保持部材本体326に埋め込まれて固定されている。なお、第1の電極部100の構成例を後にさらに詳述する。
【0022】
図2に示すように、第2の保持部材324は、第1の保持部材322と対称をなす形状をしており、第1の保持部材322と同様の構造を有する。すなわち、第2の保持部材324には、第1のカッタ案内溝332と対向する位置に、第2のカッタ案内溝334が形成されている。また、第2の保持部材324には、第1の高周波電極110と対向する位置に、第2の高周波電極210が設けられている。この第2の高周波電極210は、その一方の主面で生体組織と接触するように構成されている。第2の高周波電極210は、第2の高周波電極用通電ライン262、導電性コーティング及びケーブル360を介して制御装置370に接続されている。
【0023】
また、第2の高周波電極210の生体組織と接触しない面には、発熱チップ140と同様の発熱チップ240が接合されている。この発熱チップ240と、発熱チップ240への接続のためのフレキシブル基板を含む配線等と、第2の高周波電極210とを覆うように、第1のカバー部材120と同様の第2のカバー部材が配置されている。第2の高周波電極210と第2のカバー部材との間の空間には封止剤が充填されている。このようにして、第2の高周波電極210と第2のカバー部材220とに囲まれた第2の電極部200が形成されている。この第2の電極部200は、第2の保持部材本体328に埋め込まれて固定されている。
【0024】
第1の電極部100について詳述する。なお、第2の電極部200は、第1の電極部100と同様の構造を有するので、第2の電極部200についての説明は省略する。発熱チップ140について図4A及び図4Bを参照して説明する。ここで、図4Aは上面図であり、図4Bは図4Aに示した4B−4B線に沿う断面図である。発熱チップ140は、アルミナ製の基板141を用いて形成されている。基板141の主面の一方である表面には、発熱用の例えばPt薄膜である抵抗パターン143が形成されている。また、基板141の表面の、長方形の2つの短辺近傍には、それぞれ矩形の電極145が形成されている。ここで、電極145は、抵抗パターン143のそれぞれの端部に接続している。電極145が形成されている部分を除き、抵抗パターン143上を含む基板141の表面には、例えばポリイミドで形成された絶縁膜147が形成されている。
【0025】
基板141の裏面全面には、接合用金属層149が形成されている。電極145と接合用金属層149とは、例えばTiとCuとNiとAuとからなる多層の膜である。これら電極145と接合用金属層149とは、ハンダ付け等に対して安定した強度を有している。接合用金属層149は、例えば第1の高周波電極110に発熱チップ140をハンダ付けする際に、接合が安定するように設けられている。
【0026】
発熱チップ140は、第1の高周波電極110の生体組織と接する面(第1の主面)とは反対側の面(第2の主面)に配置されている。ここで発熱チップ140は、それぞれ接合用金属層149の表面と第1の高周波電極110の第2の主面とをハンダ付けすることにより固定されている。なお、第2の高周波電極210に固定された発熱チップ240も、上述の発熱チップ140と同じ構造を有している。
【0027】
第1の高周波電極110及び第1のカバー部材120の構成例を図5及び図6を参照して説明する。図5は、第1の高周波電極110及び第1のカバー部材120を含む第1の電極部100を、第1のカバー部材120の第4の主面側から見た分解斜視図を示す。図6は、第1の高周波電極110及び第1のカバー部材120を含む第1の電極部100を、第1の高周波電極110の第1の主面側から見た分解斜視図を示す。これら図に示すように、第1のカッタ案内溝332を形成するように、第1の高周波電極110及び第1のカバー部材120の平面形状はU字型をしている。第1の高周波電極110には、第2の主面側に、その外周を囲むように壁112が設けられている。壁112は、第1の高周波電極110の端が折り曲げられて形成されている。ただし、第1の高周波電極110の基端側の辺には、壁112が設けられていない。また、第1の高周波電極110の先端部分において、壁112に突起部であるツメ114が設けられている。
【0028】
一方、第1のカバー部材120は、第1の高周波電極110と同様にU字型をしている。ここで、第1のカバー部材120と第1の高周波電極110との平面形状はほぼ等しく、それらの基端から先端までの長さは互いにほぼ等しい。第1のカバー部材120には、第1の高周波電極110と対向する第3の主面側に、その外周を囲むように第1の壁122が設けられている。また、第1のカバー部材120には、その内周を囲むように第2の壁124が設けられている。第2の壁124は、第1のカッタ案内溝332を形成し、第1のカッタ案内溝332を挟んで対向する第2の壁124は、その第4の主面側の端部で互いにつながっている。第1のカバー部材120の基端側の辺には、第1の壁122も第2の壁124も設けられていない。また、第1のカバー部材120の先端部分には、ツメ114が収まる切り欠き部126が設けられている。
【0029】
第1の高周波電極110の第1の主面には、図5に示すように6個の発熱チップ140が離散的に配置されている。すなわち、発熱チップ140は、基端側から先端側に向けて第1のカッタ案内溝332を挟んで対称に2列に3個ずつ並べて配置されている。また、第1の高周波電極110の第1の主面には、発熱チップ140を避けるようにフレキシブル基板150が配置されている。このフレキシブル基板150には、隣り合う発熱チップの電極145をつなぐように、電極152が設けられている。これら発熱チップ140の電極145と、この電極145と面するフレキシブル基板150の電極152とは、ワイヤーボンディングにより形成されたワイヤー156により電気的に接続されている。以上によって、6個の発熱チップ140は電気的に直列に接続されている。
【0030】
また、最も基端側に配置された第1のカッタ案内溝332を挟んで対向する2つの発熱チップ140の更に基端側にも、フレキシブル基板150上にそれぞれ電極154が形成されている。この2つの電極154も、それぞれ隣接する発熱チップ140の電極145とワイヤーボンディングにより形成されたワイヤー156によって電気的に接続されている。また、2つの電極154には、一対の第1の発熱チップ用通電ライン164のうちのそれぞれが例えばハンダを用いて接続されている。したがって、一対の第1の発熱チップ用通電ライン164の間に6個の発熱チップ140が直列に接続されている。
【0031】
各発熱チップ140は、第1の発熱チップ用通電ライン164及びケーブル360を介して制御装置370に接続されている。制御装置370は、発熱チップ140に投入する電力を制御する。制御装置370から出力された電流は、各発熱チップ140の各抵抗パターン143を流れる。その結果、各抵抗パターン143は発熱する。抵抗パターン143が発熱すると、第1の高周波電極110にその熱が伝達される。この熱により、第1の高周波電極110に接した生体組織が焼灼される。
【0032】
図6に示すように、第1のカバー部材120の第3の主面には、導電性コーティング132が設けられている。この導電性コーティング132は、例えば導電性メッキや導電性樹脂で形成されている。導電性コーティング132は、第1のカバー部材120よりも薄い。導電性コーティング132は、第1のカバー部材120の基端から先端まで形成されている。導電性コーティング132の先端部分は、第1のカバー部材120が第1の高周波電極110にかぶされて組み立てられたときに、第1の高周波電極110のツメ114と接触するように配置されている。導電性コーティング132の基端部分には、第1の高周波電極用通電ライン162が例えばハンダ付けにより接続されている。その結果、第1の高周波電極110は、導電性コーティング132、第1の高周波電極用通電ライン162及びケーブル360を介して制御装置370に接続されている。
【0033】
第1の電極部110は、次のように製造される。第1の高周波電極110には発熱チップ140、フレキシブル基板150、ワイヤー156、第1の発熱チップ用通電ライン164等が配置される。また、第1のカバー部材120には導電性コーティング132、第1の高周波電極用通電ライン162等が配置される。その後、これら第1の高周波電極110と第1のカバー部材120とが組み合わされる。
【0034】
第1のカバー部材120が第1の高周波電極110にかぶされて組み合わされたときの第1の電極部100の、第1のカバー部材120の先端側から見た斜視図を図7に、基端側から見た斜視図を図8に示す。これら図に示すように、第1の高周波電極110の壁112と第1のカバー部材120の第2の壁124の第3の主面からの高さはほぼ等しい。その結果、第2の主面と第3の主面とがほぼ平行に対向し、第1の高周波電極110と、壁112と、第1のカバー部材120と、第2の壁124とに囲まれた、発熱チップ140等が含まれる空間が形成される。なお、第1のカバー部材120の第1の壁122は、第1の高周波電極110の壁112の外側に位置する。また、第1の高周波電極110のツメ114は、第1のカバー部材120の切り欠き部126に収まる。導電性コーティング132は、第1の高周波電極110のツメ114と接触し導通する。なお、導電性コーティング132は、第1のカバー部材120と第1の高周波電極110のツメと第1の高周波電極用通電ライン162以外とは接触しないものとする。また、第1の高周波電極用通電ライン162は、導電性コーティング132と接続している部分以外は、第1の高周波電極110と第1のカバー部材120とに囲まれた空間には位置していない。
【0035】
第1の高周波電極110と第1のカバー部材120とが組み合わされた後、第1の高周波電極110と第1のカバー部材120とに囲まれた空間には、封止剤170が充填される。封止剤170には、例えば熱硬化性の物質が用いられる。この場合、第1の高周波電極110と第1のカバー部材120とに囲まれた空間に流動性を有する封止剤170のもととなる物質が充填され、その後加熱処理されて封止剤170が形成される。封止剤170は、発熱チップ140やフレキシブル基板150等の露出電極等を封止し、水密状態とする。このようにして、第1の電極部100は形成される。
【0036】
発熱チップ140で生じた熱を効率よく第1の高周波電極110へ伝えるために、封止剤170、第1のカバー部材120及びその周囲の第1の保持部材本体326は、第1の高周波電極110や基板141の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有することが好ましい。封止剤170、第1のカバー部材120及び第1の保持部材本体326の熱伝導率が低いことで、発熱チップ140で生じた熱の損失は小さくなり、高効率で生体組織に伝達される。
以上、第1の電極部100について説明したが、第2の電極部200も第1の電極部100と同様の構造を有する。
【0037】
このように、例えば第1の高周波電極110及び第2の高周波電極210は、生体組織への高周波電圧の印加及び生体組織の加熱を行う導電性の高周波電極として機能する。例えば発熱チップ140及び発熱チップ240は、高周波電極を加熱する発熱素子として機能する。例えば第1のカバー部材120及び第2のカバー部材220は、発熱素子を高周波電極とともに囲む絶縁性のカバー部材として機能する。例えば導電性コーティング134は、少なくとも一部がカバー部材に形成され、高周波電極と電気的に接続している導電部として機能する。例えば第1の高周波電極用通電ライン162及び第2の高周波電極用通電ライン262は、導電部を介して高周波電極に高周波電流を供給する高周波電力線として機能する。例えば封止剤170は、導電部及び高周波電力線と高周波電極との間に充填されている高周波電極よりも低い熱伝導率を有する絶縁部材として機能する。
【0038】
次に本実施形態に係る治療用処置装置300の動作を説明する。術者は、予め制御装置370の入力部を操作して、治療用処置装置300の出力条件、例えば、高周波エネルギ出力の設定電力、熱エネルギ出力の目標温度や加熱時間等を設定しておく。治療用処置装置300は、それぞれの値が個別に設定されるようになっていてもよいし、術式に応じた設定値のセットが選択されるようになっていてもよい。
【0039】
エネルギ処置具310の保持部320及びシャフト340は、例えば、腹壁を通して腹腔内に挿入される。術者は、操作ノブ352を操作して保持部320を開閉させ、第1の保持部材322と第2の保持部材324とによって処置対象の生体組織を把持する。このとき、第1の保持部材322に設けられた第1の高周波電極110と第2の保持部材324に設けられた第2の高周波電極210との両方の第1の主面に、処置対象の生体組織が接触する。
【0040】
術者は、保持部320によって処置対象の生体組織を把持したら、フットスイッチ380を操作する。フットスイッチ380がONに切り換えられると、制御装置370から、ケーブル360内を通る第1の高周波電極用通電ライン162を介して第1の電極部100に電力が供給され、第2の高周波電極用通電ライン262を介して第2の電極部200に電力が供給される。その結果、導電性コーティング134を介して、第1の高周波電極110に予め設定した電力の高周波電力が供給される。同様に第2の高周波電極210に予め設定した電力の高周波電力が供給される。供給される電力は、例えば、20W〜80W程度である。その結果、生体組織は発熱し、組織が焼灼される。この焼灼により、当該組織は変性し、凝固する。
【0041】
次に制御装置370は、高周波エネルギの出力を停止した後、第1の高周波電極110及び第2の高周波電極210の温度が目標温度になるように、各発熱チップ140にそれぞれ電力を供給する。ここで、目標温度は、例えば200℃である。このとき電流は、制御装置370から、ケーブル360及び第1の発熱チップ用通電ライン164を介して、各発熱チップ140の抵抗パターン143を流れる。各発熱チップ140の抵抗パターン143は、電流によって発熱する。抵抗パターン143で発生した熱は、基板141及び接合用金属層149を介して、第1の高周波電極110に伝わる。その結果、第1の高周波電極110の温度は上昇する。
【0042】
同様に、制御装置370から、ケーブル360及び第2の発熱チップ用通電ライン264を介して、発熱チップ240に電力が供給され、発熱チップ240が発熱する。発熱チップ240で発生した熱により、第2の高周波電極210の温度は上昇する。
【0043】
これらの熱によって第1の高周波電極110又は第2の高周波電極210と接触している生体組織は更に焼灼され、更に凝固する。加熱によって生体組織が凝固したら、熱エネルギの出力を停止する。最後に術者は、操作ノブ352を操作してカッタ345を移動させ、生体組織を切断する。以上によって生体組織の処置が完了する。
【0044】
本実施形態によれば、第1の高周波電極110と第1の高周波電極用通電ライン162とを導電性コーティング132を介して接続することで、第1の高周波電極110から第1の高周波電極用通電ライン162への熱流を抑制することができる。
【0045】
この熱流について説明する。第1の高周波電極110の温度T1は、例えば術式に応じて決められる所定の値である。第1の高周波電極用通電ライン162を介して第1の電極部100から流出する熱量を減少させるためには、第1の高周波電極用通電ライン162の熱伝導率や長さ等が決まっている場合、第1の高周波電極用通電ライン162の両端の温度差を小さくする必要がある。すなわち、導電性コーティング132と第1の高周波電極用通電ライン162との接続部分の温度T2を、第1の高周波電極用通電ライン162の他端の温度、例えば室温にすることが好ましい。
【0046】
導電性コーティング132は、第1の高周波電極110に接している側が高温で、第1の高周波電極用通電ライン162が接続されている側が低温であるので、熱は、第1の高周波電極110に接している側から第1の高周波電極用通電ライン162が接続されている側に流れる。導電性コーティング132を介して移動する単位長さあたりの熱量Qは、導電性コーティング132の断面積をA、熱流束をqとするとQ=A・qで表される。導電性コーティング132を移動する熱量Qを小さくするためには、導電性コーティング132の断面積A、又は熱流束qを小さくすればよい。
【0047】
導電性コーティング132における熱流を、図9を参照して説明する。導電性コーティング132の長手方向に沿ってx軸を定義する。導電性コーティング132の長さをLとする。導電性コーティング132の一端のx座標をaとし、他端のx座標をbとする。x=aにおける温度をT1とし、x=bにおける温度をT2とする。ここで、T1>T2である。
【0048】
このとき、x=aとx=bとの間の任意の位置における温度Tは、下記式(1)で表される。
【数1】
また、熱伝導のフーリエの法則は下記式(2)で表される。
【数2】
ここで、qは熱流束、λは熱伝導率を表す。
【0049】
すなわち、下記式(3)が成り立つ。
【数3】
導電性コーティング132内の熱流束qを小さくするためには、上述のとおり温度T2及び温度T1が所定の値であるとすると、上記式(3)より、導電性コーティング132の材質によって決まる熱伝導率λを小さくするか、導電性コーティング132の長さLを大きくすることが好ましい。
【0050】
以上のとおり、導電性コーティング132を移動する熱量を小さくするためには、導電性コーティング132の断面積Aを小さくするか、導電性コーティング132を形成する材料に熱伝導率λが小さい材料を用いるか、導電性コーティング132の長さLを大きくすることが好ましい。すなわち、熱の伝達されにくさである熱抵抗が高いことが好ましい。本実施形態では、断面積Aを小さくするため、導電性コーティング132を薄膜にしている。また、導電性コーティング132の長さLを大きくするため、導電性コーティング132は、第1のカバー部材120の先端側で第1の高周波電極110と接触し、第1のカバー部材120の基端側で第1の高周波電極用通電ライン162に接続している。十分な長さの導電性コーティング132が設けられ、第1の高周波電極と接触していれば、導電性コーティング132の形状や配置はどのようなものでもよい。
【0051】
本実施形態によれば、導電性コーティング132の断面積Aを小さくし、長さLを長くすることで、導電性コーティング132の熱抵抗を高くし、熱流を導電性コーティング132内に留めることができる。このように、導電性コーティング132は、第1の高周波電極用通電ライン162よりも高い熱抵抗を有する。
【0052】
本実施形態によれば、第1の高周波電極110の熱を効率的に生体組織に伝達できる。すなわち、エネルギ効率のよい治療用処置装置を実現できる。また、本実施形態の構成は、第1の高周波電極110の熱分布の均一化にも効果を奏する。すなわち、第1の高周波電極用通電ライン162から熱が流出することにより、第1の高周波電極用通電ライン162が接続している部分において局所的に第1の高周波電極110の温度が低くなることを防止できる。
【0053】
また、この治療用処置装置の製造時の導電性コーティング132に第1の高周波電極用通電ライン162をハンダで接続する工程においても、本実施形態は効果を奏する。すなわち、導電性コーティング132は、熱伝導性が低いためハンダ付けの際に素早く高温になるので、ハンダ付けの作業時間が短縮され得る。
【0054】
なお本実施形態では、導電性コーティング132は、第1のカバー部材120の第3の主面に形成されているが、その他の部分に形成されていてもよい。例えば、第2の壁124に形成されてもよい。また、導電性コーティング132は、第3の主面と表裏をなす第4の主面に形成されてもよい。これらの場合も、導電性コーティング132は、第1の高周波電極110と電気的に接続し、第1の高周波電極用通電ライン162は、導電性コーティング132に接続される。導電性コーティング132は、第1の高周波電極110に直接接触せず、導電性コーティング132と第1の高周波電極110とが導電体を介して接続していてもよい。この場合、導電性コーティング132とこの導電体とを合わせて、上述のように十分に大きな熱抵抗を有していれば、本実施形態と同様の効果が得られる。ただし、導電性コーティング132の絶縁性、第1の高周波電極用通電ライン162と導電性コーティング132との電気的接続部等の絶縁性、第1の電極部100の形状、製造の容易さ等を考慮すると、第1の実施形態のように、導電性コーティング132は、第3の主面に形成されることが好ましい。
【0055】
また、フレキシブル基板150は、ガラスエポキシ基板のような硬質な基板に変更してもよい。ワイヤー156を用いずに、フレキシブル基板とバンプ、フレキシブル基板とハンダ、フレキシブル基板と導電性ペースト等を用いて発熱チップ140間を電気的に接続させることもできる。また、封止剤170には、熱硬化性の物質が用いられなくてもよい。例えば、封止剤170には、紫外線硬化性の物質が用いられ得る。また、封止剤170は、空気やシリコーンオイルのような熱伝導性が低い流体でもよい。また、本実施形態の説明で示した第1の高周波電極110の形状や、第1の高周波電極110上の発熱チップ140やフレキシブル基板150等の配置は一例であり、任意である。
【0056】
[第2の実施形態]
第2の実施形態について説明する。ここでは、第1の実施形態との相違点について説明し、同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。本実施形態では、第1の電極部100及び第2の電極部200の構造が第1の実施形態に係る第1の電極部100及び第2の電極部200の構造と異なる。本実施形態においても、第1の電極部100の構造と第2の電極部200の構造とは互いに同じであるので、第1の電極部100を例に挙げてその構造を説明する。
【0057】
本実施形態に係る第1の電極部100を示す斜視図を図10に示す。この図に示すように、本実施形態に係る第1の高周波電極110の長手方向の長さは、長さL1である。これに対して第1のカバー部材120の長手方向の長さは、長さL1よりもSだけ長い長さL2である。
【0058】
第1の電極部100の第1のカバー部材120の第3の主面側から見た分解斜視図を図11に示す。この図に示すように、第1の高周波電極110よりも長いために突出する第1のカバー部材120の長さSの部分において、導電性コーティング132に第1の高周波電極用通電ライン162が接続されている。さらに、導電性コーティング132に第1の高周波電極用通電ライン162が接続されている部分には、絶縁性材料を被せ、他の部材との電気的に絶縁性を確保する。その他の部分の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0059】
以上のような本実施形態によれば、導電性コーティング132の長さを十分に確保することができ、導電性コーティング132の熱流束を十分に小さくすることができる。また、第1の高周波電極110から封止剤170を介して第1の高周波電極用通電ライン162に流れる熱流を小さくすることができる。その結果、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0060】
[第3の実施形態]
第3の実施形態について説明する。ここでは、第1の実施形態との相違点について説明し、同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。本実施形態では、第1の電極部100及び第2の電極部200の構造が第1の実施形態に係る第1の電極部100及び第2の電極部200の構造と異なる。本実施形態においても、第1の電極部100の構造と第2の電極部200の構造とは互いに同じであるので、第1の電極部100を例に挙げてその構造を説明する。
【0061】
第1の実施形態では、発熱チップ140への配線のため、第1の高周波電極110の第2の主面に配置されたフレキシブル基板150が用いられている。これに対して本実施形態では、発熱チップ140への配線を、第1のカバー部材120の第3の主面に形成した導電性コーティングによって行う。本実施形態では、図12に示すように、第1の高周波電極110の第2の主面には、発熱チップ140のみを配置し、フレキシブル基板は配置しない。一方、第1のカバー部材120の第3の主面には、第1の高周波電極110のための配線と、発熱チップ140のための配線とが設けられている。
【0062】
本実施形態に係る第1のカバー部材120の第3の主面側から見た斜視図を図13に示す。この図に示すように、第1のカバー部材120の第3の主面には、第1の高周波電極110と第1の高周波電極用通電ライン162とを接続するための導電性コーティング132(以下、第1の導電性コーティング132と称する)に加えて、第1の発熱チップ用通電ライン164と各発熱チップ140とを接続するための、発熱チップ用の導電性コーティング134(以下、第2の導電性コーティング134と称する)が配置されている。第1の導電性コーティング132と第2の導電性コーティング134とは、交差しないように配置されている。導電性コーティング134の最も基端側には、一対の第1の発熱チップ用通電ライン164が接続されている。
【0063】
第2の導電性コーティング134と発熱チップ140の電極145とは、発熱チップ140の電極145に設けられたバンプ(突起電極)146によって接続されている。第2の導電性コーティング134と発熱チップ140の電極145との接続の様子を表す斜視図を図14に示す。この図において、分かり易さのため、第1のカバー部材120の図示は省略している。このようにして、一対の第1の発熱チップ用通電ライン164の間には、6個の発熱チップ140が第2の導電性コーティング134とバンプ146を介して直列に接続されている。以上のように、第1の高周波電極110及び発熱チップ140に電力を供給するための配線は、第1のカバー部材120に設けられている。その他の部分の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0064】
本実施形態によれば、第1の高周波電極110に、第1の発熱チップ用通電ライン164を配置する必要がない。したがって、第1の高周波電極110から第1の発熱チップ用通電ライン164を介して流出する熱を大幅に抑制できる。本実施形態によれば、第1の実施形態よりもさらにエネルギ効率のよい治療用処置装置を実現できる。また、第1の高周波電極110の構成を単純化することができる。
【0065】
[第4の実施形態]
第4の実施形態について説明する。ここでは、第1の実施形態との相違点について説明し、同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。本実施形態では、第1の電極部100及び第2の電極部200の構造が第1の実施形態に係る第1の電極部100及び第2の電極部200の構造と異なる。本実施形態においても、第1の電極部100の構造と第2の電極部200の構造とは互いに同じであるので、第1の電極部100を例に挙げてその構造を説明する。
【0066】
本実施形態の第1の電極部100の分解斜視図を図15に示す。この図に示すように、本実施形態では、第1の実施形態と同様に第1の高周波電極110の第2の主面に、発熱チップ140とフレキシブル基板150とが配置されている。各発熱チップ140は、フレキシブル基板150の電極とワイヤーボンディングによるワイヤー156により電気的に接続されている。
【0067】
第1の発熱チップ用通電ライン164は、第1のカバー部材120の第3の面に配置された図示しない導電性コーティングに接続されている。この導電性コーティングとフレキシブル基板150とは、バンプ136によって接続されている。バンプ136は、熱抵抗が高く設計されている。したがって、バンプ136を介して第1の高周波電極110から第1の発熱チップ用通電ライン164へと移動する熱は抑制される。その他の部分の構成は、第1の実施形態と同様である。
本実施形態によれば第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0068】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても、発明が解決しようとする課題の欄で述べられた課題が解決でき、かつ、発明の効果が得られる場合には、この構成要素が削除された構成も発明として抽出され得る。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0069】
100…第1の電極部、110…第1の高周波電極、112…壁、114…ツメ、120…第1のカバー部材、122…第1の壁、124…第2の壁、126…切り欠き部、132…導電性コーティング、134…導電性コーティング、136…バンプ、140…発熱チップ、141…基板、143…抵抗パターン、145…電極、146…バンプ、147…絶縁膜、149…接合用金属層、150…フレキシブル基板、152…電極、154…電極、156…ワイヤー、162…第1の高周波電極用通電ライン、164…第1の発熱チップ用通電ライン、170…封止剤、200…第2の電極部、210…第2の高周波電極、220…第2のカバー部材、240…発熱チップ、262…第2の高周波電極用通電ライン、264…第2の発熱チップ用通電ライン、300…治療用処置装置、310…エネルギ処置具、320…保持部、322…第1の保持部材、324…第2の保持部材、326…第1の保持部材本体、328…第2の保持部材本体、332…第1のカッタ案内溝、334…第2のカッタ案内溝、340…シャフト、342…筒体、343…シース、344…駆動ロッド、345…カッタ、346…支持ピン、347…弾性部材、350…ハンドル、352…操作ノブ、360…ケーブル、365…コネクタ、370…制御装置、380…フットスイッチ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療用処置装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、高周波エネルギや熱エネルギを用いて生体組織を治療する治療用処置装置が知られている。例えば特許文献1には、次のような治療用処置装置が開示されている。すなわち、この治療用処置装置は、処置対象である生体組織を把持する開閉可能な保持部を有する。この保持部の生体組織と接する部分には、高周波の電圧を印加するための高周波電極が設けられている。さらに、高周波電極には、この高周波電極を加熱するための発熱チップが設けられている。また、高周波電極には、高周波電極や発熱チップに対する配線が施されている。また、保持部には、カッタが設けられている。このような治療用処置装置の使用においては、保持部は、まず生体組織を把持する。保持部は、この生体組織に高周波の電圧を印加し、更に発熱チップを用いて生体組織を加熱することで、生体組織を吻合する。また、保持部に備えられたカッタにより、生体組織端部を接合した状態で切除することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−247893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した高周波電極に高周波電力を供給する高周波電力線は、供給する高電圧に耐え得る程度の太さを有する導電性材料で形成されている。この高周波電力線が高周波電極に直接接続されると、生体組織の加熱の際に、発熱チップで発生した熱が高周波電極を介して高周波電力線から流出し得る。すなわち、治療用処置装置の熱効率が悪くなるおそれがあり、また、高周波電極の温度が場所によって不均一となるおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、熱効率がよく高周波電極の温度分布が均一となる治療用処置装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を果たすため、本発明の一態様によれば、治療用処置装置は、生体組織にエネルギを作用させて治療するための治療用処置装置であって、表裏をなす第1の主面と第2の主面とのうち前記第1の主面において前記生体組織に接触してこの生体組織への高周波電圧の印加及びこの生体組織の加熱を行う導電性の高周波電極と、前記第2の主面と接合し、前記高周波電極を加熱する発熱素子と、前記発熱素子を前記高周波電極とともに囲む絶縁性のカバー部材と、少なくとも一部が前記カバー部材に形成され、前記高周波電極と電気的に接続している導電部と、前記高周波電極との絶縁性が確保され、前記導電部と電気的に接続しており、この導電部を介して前記高周波電極に高周波電流を供給する高周波電力線と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高周波電力線は導電部を介して高周波電極に電力を供給するので、熱効率がよく高周波電極の温度分布が均一となる治療用処置装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の各実施形態に係る治療用処置システムの構成例を示す概略図。
【図2】本発明の各実施形態に係るエネルギ処置具のシャフト及び保持部の構成例を示す断面の概略図であり、(A)は保持部が閉じた状態を示す図、(B)は保持部が開いた状態を示す図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る保持部の第1の保持部材の構成例を示す概略図であり、(A)は平面図、(B)は(A)に示す3B−3B線に沿う縦断面図、(C)は(A)に示す3C−3C線に沿う横断面図。
【図4A】本発明の各実施形態に係る発熱チップの構成例の概略を示す上面図。
【図4B】本発明の各実施形態に係る発熱チップの構成例の概略を示す図であって、図4Aに示す4B−4B線に沿う断面図。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る第1の電極部の構成例を示す分解斜視図。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る第1の電極部の構成例を示す分解斜視図。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る第1の電極部の構成例を示す斜視図。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る第1の電極部の構成例を示す斜視図。
【図9】導電性コーティングにおける熱流について説明するための図。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る第1の電極部の構成例を示す斜視図。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る第1の電極部の構成例を示す分解斜視図。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る第1の電極部の構成例を示す分解斜視図。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る第1のカバー部材の構成例を示す斜視図。
【図14】本発明の第3の実施形態に係る第1の電極部の構成例を示す分解斜視図。
【図15】本発明の第4の実施形態に係る第1の電極部の構成例を示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係る治療用処置装置は、生体組織の治療に用いるための装置である。この治療用処置装置は、生体組織に高周波エネルギと熱エネルギとを作用させる。図1に示すように、治療用処置装置300は、エネルギ処置具310と、制御装置370と、フットスイッチ380とを備えている。
【0010】
エネルギ処置具310は、例えば腹壁を貫通させて処置を行うための、リニアタイプの外科治療用処置具である。エネルギ処置具310は、ハンドル350と、ハンドル350に取り付けられたシャフト340と、シャフト340の先端に設けられた保持部320とを有する。保持部320は、開閉可能であり、処置対象である生体組織を把持して、生体組織の凝固、切開等の処置を行う処置部である。以降説明のため、保持部320側を先端側と称し、ハンドル350側を基端側と称する。ハンドル350は、保持部320を操作するための複数の操作ノブ352を備えている。また、ハンドル350には、そのエネルギ処置具310に係る固有値等を記憶する図示しない不揮発性のメモリが備えられている。なお、ここで示したエネルギ処置具310の形状は、もちろん一例であり、同様の機能を有していれば、他の形状でもよい。例えば、鉗子のような形状をしていてもよいし、シャフトが湾曲していてもよい。
【0011】
ハンドル350は、ケーブル360を介して制御装置370に接続されている。ここで、ケーブル360と制御装置370とは、コネクタ365によって接続されており、この接続は着脱自在となっている。すなわち、治療用処置装置300は、処置毎にエネルギ処置具310を交換することができるように構成されている。制御装置370には、フットスイッチ380が接続されている。足で操作するフットスイッチ380は、手で操作するスイッチやその他のスイッチに置き換えてもよい。フットスイッチ380のペダルを術者が操作することにより、制御装置370からエネルギ処置具310へのエネルギの供給のON/OFFが切り換えられる。制御装置370は、治療用処置装置300の各部の動作を制御する。なお、制御装置370は、ハンドル350に設けられた不揮発性のメモリからそのエネルギ処置具310に係る情報を取得する。
【0012】
保持部320及びシャフト340の構造の一例を図2に示す。図2(A)は保持部320が閉じた状態を示し、図2(B)は保持部320が開いた状態を示す。シャフト340は、筒体342とシース343とを備えている。筒体342は、その基端部でハンドル350に固定されている。シース343は、筒体342の外周に、筒体342の軸方向に沿って摺動可能に配設されている。
【0013】
筒体342の先端部には、保持部320が配設されている。保持部320は、第1の保持部材322と、第2の保持部材324とを備えている。第1の保持部材322の基部は、シャフト340の筒体342の先端部に固定されている。一方、第2の保持部材324の基部は、シャフト340の筒体342の先端部に、支持ピン346によって、回動可能に支持されている。したがって、第2の保持部材324は、支持ピン346の軸回りに回動し、第1の保持部材322に対して開いたり閉じたりする。
【0014】
保持部320が閉じた状態では、第1の保持部材322の基部と、第2の保持部材324の基部とを合わせた断面形状は、円形となる。第2の保持部材324は、第1の保持部材322に対して開くように、例えば板バネなどの弾性部材347により付勢されている。シース343を、筒体342に対して先端側にスライドさせ、シース343によって第1の保持部材322の基部及び第2の保持部材324の基部を覆うと、図2(A)に示すように、弾性部材347の付勢力に抗して、第1の保持部材322及び第2の保持部材324は閉じる。一方、シース343を筒体342の基端側にスライドさせると、図2(B)に示すように、弾性部材347の付勢力によって第1の保持部材322に対して第2の保持部材324は開く。
【0015】
筒体342には、後述する第1の高周波電極110に電力を供給する第1の高周波電極用通電ライン162と、第2の高周波電極210に電力を供給する第2の高周波電極用通電ライン262とが挿通されている。また、筒体342には、後述する発熱部材である発熱チップ140に電力を供給する一対の第1の発熱チップ用通電ライン164と、発熱チップ240に電力を供給する一対の第2の発熱チップ用通電ライン264とが挿通されている。
【0016】
筒体342の内部には、その基端側で操作ノブ352の一つと接続した駆動ロッド344が、筒体342の軸方向に沿って移動可能に設置されている。駆動ロッド344の先端側には、先端側に刃が形成された薄板状のカッタ345が設置されている。操作ノブ352を操作すると、駆動ロッド344を介してカッタ345は、筒体342の軸方向に沿って移動させられる。カッタ345が先端側に移動するとき、カッタ345は、保持部320に形成された後述する第1のカッタ案内溝332及び第2のカッタ案内溝334内に収まる。
【0017】
第1の保持部材322には、図3に示すように、前記したカッタ345を案内するための第1のカッタ案内溝332が形成されている。第1の保持部材322には、例えば銅の薄板で形成された第1の高周波電極110が設けられている。この第1の高周波電極110は、その一方の主面(第1の主面)で生体組織と接触するように構成されている。第1の高周波電極110は、第1のカッタ案内溝332を有するので、その平面形状は、図3(A)に示すように、U字形状となっている。
【0018】
第1の高周波電極110の生体組織と接触しない面(第2の主面)には、後に詳述するように、複数の発熱チップ140が接合されている。さらに第2の主面には、この発熱チップ140への配線のため、フレキシブル基板150が配置されている。発熱チップ140と、フレキシブル基板150を含む配線等と、第1の高周波電極110とを覆うように、第1のカバー部材120が配置されている。
【0019】
第1のカバー部材120は、例えば樹脂で形成されており、電気的絶縁性を有する。第1のカバー部材120の第1の高周波電極110と対向する主面を第3の主面と称し、第3の主面の裏側を第4の主面と称することにする。第1のカバー部材120の第3の主面には、後述するように第1の高周波電極110と接触する導電性コーティング132が設けられている。この導電性コーティング132には、第1の高周波電極用通電ライン162が例えばハンダ付けにより接続されている。その結果、第1の高周波電極110は、導電性コーティング132、第1の高周波電極用通電ライン162及びケーブル360を介して制御装置370に接続されている。
【0020】
第1の高周波電極110と第1のカバー部材120とで囲まれた空間には、封止剤170が充填されている。なお、図2では、図面の簡略化のために、第1のカバー部材120と、封止剤170とは、図示を省略している。
【0021】
このようにして、第1の高周波電極110と第1のカバー部材120とに囲まれた第1の電極部100が形成されている。第1の電極部100は、電気絶縁性と断熱性とを有する第1の保持部材本体326に埋め込まれて固定されている。なお、第1の電極部100の構成例を後にさらに詳述する。
【0022】
図2に示すように、第2の保持部材324は、第1の保持部材322と対称をなす形状をしており、第1の保持部材322と同様の構造を有する。すなわち、第2の保持部材324には、第1のカッタ案内溝332と対向する位置に、第2のカッタ案内溝334が形成されている。また、第2の保持部材324には、第1の高周波電極110と対向する位置に、第2の高周波電極210が設けられている。この第2の高周波電極210は、その一方の主面で生体組織と接触するように構成されている。第2の高周波電極210は、第2の高周波電極用通電ライン262、導電性コーティング及びケーブル360を介して制御装置370に接続されている。
【0023】
また、第2の高周波電極210の生体組織と接触しない面には、発熱チップ140と同様の発熱チップ240が接合されている。この発熱チップ240と、発熱チップ240への接続のためのフレキシブル基板を含む配線等と、第2の高周波電極210とを覆うように、第1のカバー部材120と同様の第2のカバー部材が配置されている。第2の高周波電極210と第2のカバー部材との間の空間には封止剤が充填されている。このようにして、第2の高周波電極210と第2のカバー部材220とに囲まれた第2の電極部200が形成されている。この第2の電極部200は、第2の保持部材本体328に埋め込まれて固定されている。
【0024】
第1の電極部100について詳述する。なお、第2の電極部200は、第1の電極部100と同様の構造を有するので、第2の電極部200についての説明は省略する。発熱チップ140について図4A及び図4Bを参照して説明する。ここで、図4Aは上面図であり、図4Bは図4Aに示した4B−4B線に沿う断面図である。発熱チップ140は、アルミナ製の基板141を用いて形成されている。基板141の主面の一方である表面には、発熱用の例えばPt薄膜である抵抗パターン143が形成されている。また、基板141の表面の、長方形の2つの短辺近傍には、それぞれ矩形の電極145が形成されている。ここで、電極145は、抵抗パターン143のそれぞれの端部に接続している。電極145が形成されている部分を除き、抵抗パターン143上を含む基板141の表面には、例えばポリイミドで形成された絶縁膜147が形成されている。
【0025】
基板141の裏面全面には、接合用金属層149が形成されている。電極145と接合用金属層149とは、例えばTiとCuとNiとAuとからなる多層の膜である。これら電極145と接合用金属層149とは、ハンダ付け等に対して安定した強度を有している。接合用金属層149は、例えば第1の高周波電極110に発熱チップ140をハンダ付けする際に、接合が安定するように設けられている。
【0026】
発熱チップ140は、第1の高周波電極110の生体組織と接する面(第1の主面)とは反対側の面(第2の主面)に配置されている。ここで発熱チップ140は、それぞれ接合用金属層149の表面と第1の高周波電極110の第2の主面とをハンダ付けすることにより固定されている。なお、第2の高周波電極210に固定された発熱チップ240も、上述の発熱チップ140と同じ構造を有している。
【0027】
第1の高周波電極110及び第1のカバー部材120の構成例を図5及び図6を参照して説明する。図5は、第1の高周波電極110及び第1のカバー部材120を含む第1の電極部100を、第1のカバー部材120の第4の主面側から見た分解斜視図を示す。図6は、第1の高周波電極110及び第1のカバー部材120を含む第1の電極部100を、第1の高周波電極110の第1の主面側から見た分解斜視図を示す。これら図に示すように、第1のカッタ案内溝332を形成するように、第1の高周波電極110及び第1のカバー部材120の平面形状はU字型をしている。第1の高周波電極110には、第2の主面側に、その外周を囲むように壁112が設けられている。壁112は、第1の高周波電極110の端が折り曲げられて形成されている。ただし、第1の高周波電極110の基端側の辺には、壁112が設けられていない。また、第1の高周波電極110の先端部分において、壁112に突起部であるツメ114が設けられている。
【0028】
一方、第1のカバー部材120は、第1の高周波電極110と同様にU字型をしている。ここで、第1のカバー部材120と第1の高周波電極110との平面形状はほぼ等しく、それらの基端から先端までの長さは互いにほぼ等しい。第1のカバー部材120には、第1の高周波電極110と対向する第3の主面側に、その外周を囲むように第1の壁122が設けられている。また、第1のカバー部材120には、その内周を囲むように第2の壁124が設けられている。第2の壁124は、第1のカッタ案内溝332を形成し、第1のカッタ案内溝332を挟んで対向する第2の壁124は、その第4の主面側の端部で互いにつながっている。第1のカバー部材120の基端側の辺には、第1の壁122も第2の壁124も設けられていない。また、第1のカバー部材120の先端部分には、ツメ114が収まる切り欠き部126が設けられている。
【0029】
第1の高周波電極110の第1の主面には、図5に示すように6個の発熱チップ140が離散的に配置されている。すなわち、発熱チップ140は、基端側から先端側に向けて第1のカッタ案内溝332を挟んで対称に2列に3個ずつ並べて配置されている。また、第1の高周波電極110の第1の主面には、発熱チップ140を避けるようにフレキシブル基板150が配置されている。このフレキシブル基板150には、隣り合う発熱チップの電極145をつなぐように、電極152が設けられている。これら発熱チップ140の電極145と、この電極145と面するフレキシブル基板150の電極152とは、ワイヤーボンディングにより形成されたワイヤー156により電気的に接続されている。以上によって、6個の発熱チップ140は電気的に直列に接続されている。
【0030】
また、最も基端側に配置された第1のカッタ案内溝332を挟んで対向する2つの発熱チップ140の更に基端側にも、フレキシブル基板150上にそれぞれ電極154が形成されている。この2つの電極154も、それぞれ隣接する発熱チップ140の電極145とワイヤーボンディングにより形成されたワイヤー156によって電気的に接続されている。また、2つの電極154には、一対の第1の発熱チップ用通電ライン164のうちのそれぞれが例えばハンダを用いて接続されている。したがって、一対の第1の発熱チップ用通電ライン164の間に6個の発熱チップ140が直列に接続されている。
【0031】
各発熱チップ140は、第1の発熱チップ用通電ライン164及びケーブル360を介して制御装置370に接続されている。制御装置370は、発熱チップ140に投入する電力を制御する。制御装置370から出力された電流は、各発熱チップ140の各抵抗パターン143を流れる。その結果、各抵抗パターン143は発熱する。抵抗パターン143が発熱すると、第1の高周波電極110にその熱が伝達される。この熱により、第1の高周波電極110に接した生体組織が焼灼される。
【0032】
図6に示すように、第1のカバー部材120の第3の主面には、導電性コーティング132が設けられている。この導電性コーティング132は、例えば導電性メッキや導電性樹脂で形成されている。導電性コーティング132は、第1のカバー部材120よりも薄い。導電性コーティング132は、第1のカバー部材120の基端から先端まで形成されている。導電性コーティング132の先端部分は、第1のカバー部材120が第1の高周波電極110にかぶされて組み立てられたときに、第1の高周波電極110のツメ114と接触するように配置されている。導電性コーティング132の基端部分には、第1の高周波電極用通電ライン162が例えばハンダ付けにより接続されている。その結果、第1の高周波電極110は、導電性コーティング132、第1の高周波電極用通電ライン162及びケーブル360を介して制御装置370に接続されている。
【0033】
第1の電極部110は、次のように製造される。第1の高周波電極110には発熱チップ140、フレキシブル基板150、ワイヤー156、第1の発熱チップ用通電ライン164等が配置される。また、第1のカバー部材120には導電性コーティング132、第1の高周波電極用通電ライン162等が配置される。その後、これら第1の高周波電極110と第1のカバー部材120とが組み合わされる。
【0034】
第1のカバー部材120が第1の高周波電極110にかぶされて組み合わされたときの第1の電極部100の、第1のカバー部材120の先端側から見た斜視図を図7に、基端側から見た斜視図を図8に示す。これら図に示すように、第1の高周波電極110の壁112と第1のカバー部材120の第2の壁124の第3の主面からの高さはほぼ等しい。その結果、第2の主面と第3の主面とがほぼ平行に対向し、第1の高周波電極110と、壁112と、第1のカバー部材120と、第2の壁124とに囲まれた、発熱チップ140等が含まれる空間が形成される。なお、第1のカバー部材120の第1の壁122は、第1の高周波電極110の壁112の外側に位置する。また、第1の高周波電極110のツメ114は、第1のカバー部材120の切り欠き部126に収まる。導電性コーティング132は、第1の高周波電極110のツメ114と接触し導通する。なお、導電性コーティング132は、第1のカバー部材120と第1の高周波電極110のツメと第1の高周波電極用通電ライン162以外とは接触しないものとする。また、第1の高周波電極用通電ライン162は、導電性コーティング132と接続している部分以外は、第1の高周波電極110と第1のカバー部材120とに囲まれた空間には位置していない。
【0035】
第1の高周波電極110と第1のカバー部材120とが組み合わされた後、第1の高周波電極110と第1のカバー部材120とに囲まれた空間には、封止剤170が充填される。封止剤170には、例えば熱硬化性の物質が用いられる。この場合、第1の高周波電極110と第1のカバー部材120とに囲まれた空間に流動性を有する封止剤170のもととなる物質が充填され、その後加熱処理されて封止剤170が形成される。封止剤170は、発熱チップ140やフレキシブル基板150等の露出電極等を封止し、水密状態とする。このようにして、第1の電極部100は形成される。
【0036】
発熱チップ140で生じた熱を効率よく第1の高周波電極110へ伝えるために、封止剤170、第1のカバー部材120及びその周囲の第1の保持部材本体326は、第1の高周波電極110や基板141の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有することが好ましい。封止剤170、第1のカバー部材120及び第1の保持部材本体326の熱伝導率が低いことで、発熱チップ140で生じた熱の損失は小さくなり、高効率で生体組織に伝達される。
以上、第1の電極部100について説明したが、第2の電極部200も第1の電極部100と同様の構造を有する。
【0037】
このように、例えば第1の高周波電極110及び第2の高周波電極210は、生体組織への高周波電圧の印加及び生体組織の加熱を行う導電性の高周波電極として機能する。例えば発熱チップ140及び発熱チップ240は、高周波電極を加熱する発熱素子として機能する。例えば第1のカバー部材120及び第2のカバー部材220は、発熱素子を高周波電極とともに囲む絶縁性のカバー部材として機能する。例えば導電性コーティング134は、少なくとも一部がカバー部材に形成され、高周波電極と電気的に接続している導電部として機能する。例えば第1の高周波電極用通電ライン162及び第2の高周波電極用通電ライン262は、導電部を介して高周波電極に高周波電流を供給する高周波電力線として機能する。例えば封止剤170は、導電部及び高周波電力線と高周波電極との間に充填されている高周波電極よりも低い熱伝導率を有する絶縁部材として機能する。
【0038】
次に本実施形態に係る治療用処置装置300の動作を説明する。術者は、予め制御装置370の入力部を操作して、治療用処置装置300の出力条件、例えば、高周波エネルギ出力の設定電力、熱エネルギ出力の目標温度や加熱時間等を設定しておく。治療用処置装置300は、それぞれの値が個別に設定されるようになっていてもよいし、術式に応じた設定値のセットが選択されるようになっていてもよい。
【0039】
エネルギ処置具310の保持部320及びシャフト340は、例えば、腹壁を通して腹腔内に挿入される。術者は、操作ノブ352を操作して保持部320を開閉させ、第1の保持部材322と第2の保持部材324とによって処置対象の生体組織を把持する。このとき、第1の保持部材322に設けられた第1の高周波電極110と第2の保持部材324に設けられた第2の高周波電極210との両方の第1の主面に、処置対象の生体組織が接触する。
【0040】
術者は、保持部320によって処置対象の生体組織を把持したら、フットスイッチ380を操作する。フットスイッチ380がONに切り換えられると、制御装置370から、ケーブル360内を通る第1の高周波電極用通電ライン162を介して第1の電極部100に電力が供給され、第2の高周波電極用通電ライン262を介して第2の電極部200に電力が供給される。その結果、導電性コーティング134を介して、第1の高周波電極110に予め設定した電力の高周波電力が供給される。同様に第2の高周波電極210に予め設定した電力の高周波電力が供給される。供給される電力は、例えば、20W〜80W程度である。その結果、生体組織は発熱し、組織が焼灼される。この焼灼により、当該組織は変性し、凝固する。
【0041】
次に制御装置370は、高周波エネルギの出力を停止した後、第1の高周波電極110及び第2の高周波電極210の温度が目標温度になるように、各発熱チップ140にそれぞれ電力を供給する。ここで、目標温度は、例えば200℃である。このとき電流は、制御装置370から、ケーブル360及び第1の発熱チップ用通電ライン164を介して、各発熱チップ140の抵抗パターン143を流れる。各発熱チップ140の抵抗パターン143は、電流によって発熱する。抵抗パターン143で発生した熱は、基板141及び接合用金属層149を介して、第1の高周波電極110に伝わる。その結果、第1の高周波電極110の温度は上昇する。
【0042】
同様に、制御装置370から、ケーブル360及び第2の発熱チップ用通電ライン264を介して、発熱チップ240に電力が供給され、発熱チップ240が発熱する。発熱チップ240で発生した熱により、第2の高周波電極210の温度は上昇する。
【0043】
これらの熱によって第1の高周波電極110又は第2の高周波電極210と接触している生体組織は更に焼灼され、更に凝固する。加熱によって生体組織が凝固したら、熱エネルギの出力を停止する。最後に術者は、操作ノブ352を操作してカッタ345を移動させ、生体組織を切断する。以上によって生体組織の処置が完了する。
【0044】
本実施形態によれば、第1の高周波電極110と第1の高周波電極用通電ライン162とを導電性コーティング132を介して接続することで、第1の高周波電極110から第1の高周波電極用通電ライン162への熱流を抑制することができる。
【0045】
この熱流について説明する。第1の高周波電極110の温度T1は、例えば術式に応じて決められる所定の値である。第1の高周波電極用通電ライン162を介して第1の電極部100から流出する熱量を減少させるためには、第1の高周波電極用通電ライン162の熱伝導率や長さ等が決まっている場合、第1の高周波電極用通電ライン162の両端の温度差を小さくする必要がある。すなわち、導電性コーティング132と第1の高周波電極用通電ライン162との接続部分の温度T2を、第1の高周波電極用通電ライン162の他端の温度、例えば室温にすることが好ましい。
【0046】
導電性コーティング132は、第1の高周波電極110に接している側が高温で、第1の高周波電極用通電ライン162が接続されている側が低温であるので、熱は、第1の高周波電極110に接している側から第1の高周波電極用通電ライン162が接続されている側に流れる。導電性コーティング132を介して移動する単位長さあたりの熱量Qは、導電性コーティング132の断面積をA、熱流束をqとするとQ=A・qで表される。導電性コーティング132を移動する熱量Qを小さくするためには、導電性コーティング132の断面積A、又は熱流束qを小さくすればよい。
【0047】
導電性コーティング132における熱流を、図9を参照して説明する。導電性コーティング132の長手方向に沿ってx軸を定義する。導電性コーティング132の長さをLとする。導電性コーティング132の一端のx座標をaとし、他端のx座標をbとする。x=aにおける温度をT1とし、x=bにおける温度をT2とする。ここで、T1>T2である。
【0048】
このとき、x=aとx=bとの間の任意の位置における温度Tは、下記式(1)で表される。
【数1】
また、熱伝導のフーリエの法則は下記式(2)で表される。
【数2】
ここで、qは熱流束、λは熱伝導率を表す。
【0049】
すなわち、下記式(3)が成り立つ。
【数3】
導電性コーティング132内の熱流束qを小さくするためには、上述のとおり温度T2及び温度T1が所定の値であるとすると、上記式(3)より、導電性コーティング132の材質によって決まる熱伝導率λを小さくするか、導電性コーティング132の長さLを大きくすることが好ましい。
【0050】
以上のとおり、導電性コーティング132を移動する熱量を小さくするためには、導電性コーティング132の断面積Aを小さくするか、導電性コーティング132を形成する材料に熱伝導率λが小さい材料を用いるか、導電性コーティング132の長さLを大きくすることが好ましい。すなわち、熱の伝達されにくさである熱抵抗が高いことが好ましい。本実施形態では、断面積Aを小さくするため、導電性コーティング132を薄膜にしている。また、導電性コーティング132の長さLを大きくするため、導電性コーティング132は、第1のカバー部材120の先端側で第1の高周波電極110と接触し、第1のカバー部材120の基端側で第1の高周波電極用通電ライン162に接続している。十分な長さの導電性コーティング132が設けられ、第1の高周波電極と接触していれば、導電性コーティング132の形状や配置はどのようなものでもよい。
【0051】
本実施形態によれば、導電性コーティング132の断面積Aを小さくし、長さLを長くすることで、導電性コーティング132の熱抵抗を高くし、熱流を導電性コーティング132内に留めることができる。このように、導電性コーティング132は、第1の高周波電極用通電ライン162よりも高い熱抵抗を有する。
【0052】
本実施形態によれば、第1の高周波電極110の熱を効率的に生体組織に伝達できる。すなわち、エネルギ効率のよい治療用処置装置を実現できる。また、本実施形態の構成は、第1の高周波電極110の熱分布の均一化にも効果を奏する。すなわち、第1の高周波電極用通電ライン162から熱が流出することにより、第1の高周波電極用通電ライン162が接続している部分において局所的に第1の高周波電極110の温度が低くなることを防止できる。
【0053】
また、この治療用処置装置の製造時の導電性コーティング132に第1の高周波電極用通電ライン162をハンダで接続する工程においても、本実施形態は効果を奏する。すなわち、導電性コーティング132は、熱伝導性が低いためハンダ付けの際に素早く高温になるので、ハンダ付けの作業時間が短縮され得る。
【0054】
なお本実施形態では、導電性コーティング132は、第1のカバー部材120の第3の主面に形成されているが、その他の部分に形成されていてもよい。例えば、第2の壁124に形成されてもよい。また、導電性コーティング132は、第3の主面と表裏をなす第4の主面に形成されてもよい。これらの場合も、導電性コーティング132は、第1の高周波電極110と電気的に接続し、第1の高周波電極用通電ライン162は、導電性コーティング132に接続される。導電性コーティング132は、第1の高周波電極110に直接接触せず、導電性コーティング132と第1の高周波電極110とが導電体を介して接続していてもよい。この場合、導電性コーティング132とこの導電体とを合わせて、上述のように十分に大きな熱抵抗を有していれば、本実施形態と同様の効果が得られる。ただし、導電性コーティング132の絶縁性、第1の高周波電極用通電ライン162と導電性コーティング132との電気的接続部等の絶縁性、第1の電極部100の形状、製造の容易さ等を考慮すると、第1の実施形態のように、導電性コーティング132は、第3の主面に形成されることが好ましい。
【0055】
また、フレキシブル基板150は、ガラスエポキシ基板のような硬質な基板に変更してもよい。ワイヤー156を用いずに、フレキシブル基板とバンプ、フレキシブル基板とハンダ、フレキシブル基板と導電性ペースト等を用いて発熱チップ140間を電気的に接続させることもできる。また、封止剤170には、熱硬化性の物質が用いられなくてもよい。例えば、封止剤170には、紫外線硬化性の物質が用いられ得る。また、封止剤170は、空気やシリコーンオイルのような熱伝導性が低い流体でもよい。また、本実施形態の説明で示した第1の高周波電極110の形状や、第1の高周波電極110上の発熱チップ140やフレキシブル基板150等の配置は一例であり、任意である。
【0056】
[第2の実施形態]
第2の実施形態について説明する。ここでは、第1の実施形態との相違点について説明し、同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。本実施形態では、第1の電極部100及び第2の電極部200の構造が第1の実施形態に係る第1の電極部100及び第2の電極部200の構造と異なる。本実施形態においても、第1の電極部100の構造と第2の電極部200の構造とは互いに同じであるので、第1の電極部100を例に挙げてその構造を説明する。
【0057】
本実施形態に係る第1の電極部100を示す斜視図を図10に示す。この図に示すように、本実施形態に係る第1の高周波電極110の長手方向の長さは、長さL1である。これに対して第1のカバー部材120の長手方向の長さは、長さL1よりもSだけ長い長さL2である。
【0058】
第1の電極部100の第1のカバー部材120の第3の主面側から見た分解斜視図を図11に示す。この図に示すように、第1の高周波電極110よりも長いために突出する第1のカバー部材120の長さSの部分において、導電性コーティング132に第1の高周波電極用通電ライン162が接続されている。さらに、導電性コーティング132に第1の高周波電極用通電ライン162が接続されている部分には、絶縁性材料を被せ、他の部材との電気的に絶縁性を確保する。その他の部分の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0059】
以上のような本実施形態によれば、導電性コーティング132の長さを十分に確保することができ、導電性コーティング132の熱流束を十分に小さくすることができる。また、第1の高周波電極110から封止剤170を介して第1の高周波電極用通電ライン162に流れる熱流を小さくすることができる。その結果、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0060】
[第3の実施形態]
第3の実施形態について説明する。ここでは、第1の実施形態との相違点について説明し、同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。本実施形態では、第1の電極部100及び第2の電極部200の構造が第1の実施形態に係る第1の電極部100及び第2の電極部200の構造と異なる。本実施形態においても、第1の電極部100の構造と第2の電極部200の構造とは互いに同じであるので、第1の電極部100を例に挙げてその構造を説明する。
【0061】
第1の実施形態では、発熱チップ140への配線のため、第1の高周波電極110の第2の主面に配置されたフレキシブル基板150が用いられている。これに対して本実施形態では、発熱チップ140への配線を、第1のカバー部材120の第3の主面に形成した導電性コーティングによって行う。本実施形態では、図12に示すように、第1の高周波電極110の第2の主面には、発熱チップ140のみを配置し、フレキシブル基板は配置しない。一方、第1のカバー部材120の第3の主面には、第1の高周波電極110のための配線と、発熱チップ140のための配線とが設けられている。
【0062】
本実施形態に係る第1のカバー部材120の第3の主面側から見た斜視図を図13に示す。この図に示すように、第1のカバー部材120の第3の主面には、第1の高周波電極110と第1の高周波電極用通電ライン162とを接続するための導電性コーティング132(以下、第1の導電性コーティング132と称する)に加えて、第1の発熱チップ用通電ライン164と各発熱チップ140とを接続するための、発熱チップ用の導電性コーティング134(以下、第2の導電性コーティング134と称する)が配置されている。第1の導電性コーティング132と第2の導電性コーティング134とは、交差しないように配置されている。導電性コーティング134の最も基端側には、一対の第1の発熱チップ用通電ライン164が接続されている。
【0063】
第2の導電性コーティング134と発熱チップ140の電極145とは、発熱チップ140の電極145に設けられたバンプ(突起電極)146によって接続されている。第2の導電性コーティング134と発熱チップ140の電極145との接続の様子を表す斜視図を図14に示す。この図において、分かり易さのため、第1のカバー部材120の図示は省略している。このようにして、一対の第1の発熱チップ用通電ライン164の間には、6個の発熱チップ140が第2の導電性コーティング134とバンプ146を介して直列に接続されている。以上のように、第1の高周波電極110及び発熱チップ140に電力を供給するための配線は、第1のカバー部材120に設けられている。その他の部分の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0064】
本実施形態によれば、第1の高周波電極110に、第1の発熱チップ用通電ライン164を配置する必要がない。したがって、第1の高周波電極110から第1の発熱チップ用通電ライン164を介して流出する熱を大幅に抑制できる。本実施形態によれば、第1の実施形態よりもさらにエネルギ効率のよい治療用処置装置を実現できる。また、第1の高周波電極110の構成を単純化することができる。
【0065】
[第4の実施形態]
第4の実施形態について説明する。ここでは、第1の実施形態との相違点について説明し、同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。本実施形態では、第1の電極部100及び第2の電極部200の構造が第1の実施形態に係る第1の電極部100及び第2の電極部200の構造と異なる。本実施形態においても、第1の電極部100の構造と第2の電極部200の構造とは互いに同じであるので、第1の電極部100を例に挙げてその構造を説明する。
【0066】
本実施形態の第1の電極部100の分解斜視図を図15に示す。この図に示すように、本実施形態では、第1の実施形態と同様に第1の高周波電極110の第2の主面に、発熱チップ140とフレキシブル基板150とが配置されている。各発熱チップ140は、フレキシブル基板150の電極とワイヤーボンディングによるワイヤー156により電気的に接続されている。
【0067】
第1の発熱チップ用通電ライン164は、第1のカバー部材120の第3の面に配置された図示しない導電性コーティングに接続されている。この導電性コーティングとフレキシブル基板150とは、バンプ136によって接続されている。バンプ136は、熱抵抗が高く設計されている。したがって、バンプ136を介して第1の高周波電極110から第1の発熱チップ用通電ライン164へと移動する熱は抑制される。その他の部分の構成は、第1の実施形態と同様である。
本実施形態によれば第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0068】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても、発明が解決しようとする課題の欄で述べられた課題が解決でき、かつ、発明の効果が得られる場合には、この構成要素が削除された構成も発明として抽出され得る。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0069】
100…第1の電極部、110…第1の高周波電極、112…壁、114…ツメ、120…第1のカバー部材、122…第1の壁、124…第2の壁、126…切り欠き部、132…導電性コーティング、134…導電性コーティング、136…バンプ、140…発熱チップ、141…基板、143…抵抗パターン、145…電極、146…バンプ、147…絶縁膜、149…接合用金属層、150…フレキシブル基板、152…電極、154…電極、156…ワイヤー、162…第1の高周波電極用通電ライン、164…第1の発熱チップ用通電ライン、170…封止剤、200…第2の電極部、210…第2の高周波電極、220…第2のカバー部材、240…発熱チップ、262…第2の高周波電極用通電ライン、264…第2の発熱チップ用通電ライン、300…治療用処置装置、310…エネルギ処置具、320…保持部、322…第1の保持部材、324…第2の保持部材、326…第1の保持部材本体、328…第2の保持部材本体、332…第1のカッタ案内溝、334…第2のカッタ案内溝、340…シャフト、342…筒体、343…シース、344…駆動ロッド、345…カッタ、346…支持ピン、347…弾性部材、350…ハンドル、352…操作ノブ、360…ケーブル、365…コネクタ、370…制御装置、380…フットスイッチ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織にエネルギを作用させて治療するための治療用処置装置であって、
表裏をなす第1の主面と第2の主面とのうち前記第1の主面において前記生体組織に接触してこの生体組織への高周波電圧の印加及びこの生体組織の加熱を行う導電性の高周波電極と、
前記第2の主面と接合し、前記高周波電極を加熱する発熱素子と、
前記発熱素子を前記高周波電極とともに囲む絶縁性のカバー部材と、
少なくとも一部が前記カバー部材に形成され、前記高周波電極と電気的に接続している導電部と、
前記高周波電極との絶縁性が確保され、前記導電部と電気的に接続しており、この導電部を介して前記高周波電極に高周波電流を供給する高周波電力線と、
を具備することを特徴とする治療用処置装置。
【請求項2】
前記カバー部材は、前記第2の主面と対向する第3の主面を有し、
前記導電部は、前記第3の主面に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の治療用処置装置。
【請求項3】
前記高周波電力線は、前記カバー部材の端部に位置する接続部において前記導電部と接続し、前記接続部以外においては前記高周波電極と前記カバー部材とで囲まれた空間には位置せず、
前記カバー部材は、前記高周波電極よりも低い熱伝導率を有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の治療用処置装置。
【請求項4】
前記導電部は、前記高周波電力線よりも高い熱抵抗を有することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の治療用処置装置。
【請求項5】
前記導電部及び前記高周波電力線と前記高周波電極との間に充填されている、前記高周波電極よりも低い熱伝導率を有する絶縁部材をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の治療用処置装置。
【請求項6】
前記カバー部材は、前記高周波電極よりも突出した延在部を有し、
前記導電部は前記延在部にも形成されており、
前記高周波電力線は、前記延在部において前記導電部に接続している、
ことを特徴とする請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の治療用処置装置。
【請求項7】
前記発熱素子に供給する電力を伝達するための前記カバー部材に配置された発熱用電力線と、
前記発熱用電力線と前記発熱素子とを接続する接続部材と、
をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至6のうち何れか1項に記載の治療用処置装置。
【請求項1】
生体組織にエネルギを作用させて治療するための治療用処置装置であって、
表裏をなす第1の主面と第2の主面とのうち前記第1の主面において前記生体組織に接触してこの生体組織への高周波電圧の印加及びこの生体組織の加熱を行う導電性の高周波電極と、
前記第2の主面と接合し、前記高周波電極を加熱する発熱素子と、
前記発熱素子を前記高周波電極とともに囲む絶縁性のカバー部材と、
少なくとも一部が前記カバー部材に形成され、前記高周波電極と電気的に接続している導電部と、
前記高周波電極との絶縁性が確保され、前記導電部と電気的に接続しており、この導電部を介して前記高周波電極に高周波電流を供給する高周波電力線と、
を具備することを特徴とする治療用処置装置。
【請求項2】
前記カバー部材は、前記第2の主面と対向する第3の主面を有し、
前記導電部は、前記第3の主面に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の治療用処置装置。
【請求項3】
前記高周波電力線は、前記カバー部材の端部に位置する接続部において前記導電部と接続し、前記接続部以外においては前記高周波電極と前記カバー部材とで囲まれた空間には位置せず、
前記カバー部材は、前記高周波電極よりも低い熱伝導率を有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の治療用処置装置。
【請求項4】
前記導電部は、前記高周波電力線よりも高い熱抵抗を有することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の治療用処置装置。
【請求項5】
前記導電部及び前記高周波電力線と前記高周波電極との間に充填されている、前記高周波電極よりも低い熱伝導率を有する絶縁部材をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の治療用処置装置。
【請求項6】
前記カバー部材は、前記高周波電極よりも突出した延在部を有し、
前記導電部は前記延在部にも形成されており、
前記高周波電力線は、前記延在部において前記導電部に接続している、
ことを特徴とする請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の治療用処置装置。
【請求項7】
前記発熱素子に供給する電力を伝達するための前記カバー部材に配置された発熱用電力線と、
前記発熱用電力線と前記発熱素子とを接続する接続部材と、
をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至6のうち何れか1項に記載の治療用処置装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−106909(P2013−106909A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256441(P2011−256441)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】
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