説明

治療薬剤のポリマー担体および疾病部位の抗体に基づく標的化のための認識部分

本発明は、治療薬剤を標的細胞、組織、または臓器に送達するための方法および組成物に関する。好ましい実施形態において、治療薬剤は、1つ以上の治療薬剤の多くの複製を含み得る、治療薬担持ポリマーの形態で送達される。より好ましい実施形態において、ポリマーは、1つ以上のハプテン、例えばHSGを含有するペプチド部分に共役され得る。薬剤−ポリマー−ペプチド複合体は、例えば、ハプテンを認識する少なくとも1つの結合アームと、疾病または病原体関連の抗原、例えば腫瘍関連の抗原に特異的に結合する少なくとも1つの第2の結合アームと、を有する二重特異性あるいは多特異性抗体またはフラグメントを利用する事前標的化技法によって、標的細胞に送達され得る。かかる治療薬担持ポリマーおよびそれらの共役体を合成および使用するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、35U.S.C.§119(e)に基づく2007年1月17日出願の米国特許出願第60/885,325号からの優先権を主張し、その文章全体は、それを参照することによって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
腫瘍選択的単クローン抗体(MAb)を使用する、疾病部位に対する薬剤、毒素、および放射性核種の標的化は、生物薬剤学的研究の発展している分野であり、3つの認可された製品が、医療活動に影響を与えている(Sharkey RM and Goldenberg DM,CA Cancer JClin.2006;56:226−243)。
【0003】
典型的に、疾病部位上、例えば腫瘍細胞の表面上で発現した抗原に対するMAbは、薬剤あるいは毒素または放射性核種で修飾されて免疫抱合体を形成し、後者は体内で標的化される。免疫抱合体の形成において、限られた数の修飾基のみしか、MAbの免疫反応性に影響することなく、抗体上に導入することができない。さらに、これらの修飾因子、例えば薬剤の多くは、概して疎水性であり、置換が閾値レベルを超えて増加すると溶解度問題を引き起こす。これらの問題は、薬剤または他の部分を水溶性ポリマー、例えばデキストラン上に担持し、その後、抗体に対して、薬剤−ポリマーをFc領域炭水化物に部位特異的に共有結合することによって対応している。いずれもそれら全体を参照することによって本明細書に組み込まれる、Shihらの米国特許第4,699,784号および米国特許第5,057,313号を参照されたい。ある適用においては、直接共役した抗体−ポリマー−薬剤組成物の大きさが問題になる可能性があり、直接免疫抱合体を使用する以外に、疾病部位における薬剤の濃度を増加させるための代替手法が望ましい。
【0004】
「事前標的化」と呼ばれる直接免疫抱合体の使用の制限を回避する手法は、疾病抗原ならびに小分子量ハプテンに対する特異性を有する二重または多特異性抗体を利用する(Goldenberg DM,et al,J Clin Oncol.2006;24:823−834)。この方法において、疾病標的化ステップは、薬剤分子の標的化から時間的に分離される。簡潔に述べると、最初に二重特異性または多特異性抗体を患者に投与する。疾病関連の抗原に結合することによって、抗体が疾病部位に集中した後、小分子量ハプテンに付着した薬剤から成る第2の薬剤を投与する。この薬剤付着ハプテンは、疾病部位に事前標的化された二重特異性抗体の抗ハプテン成分に選択的に結合する。概して、第2のステップの薬剤は、ハプテン、および付着した薬剤を有するペプチドのような小分子であり、循環から急速にクリアし、物質が捕捉されなければならない腫瘍部位において、単一またはごく少数のパスのみが可能である。さらに、かかる第2のステップの薬剤の通常設計では、わずかな薬剤分子が付着するにすぎない。急速クリアランスと低薬剤置換の組み合わせによって、疾病部位における薬剤の比活性度が低くなる。
【0005】
したがって、疾病部位に対して多数の治療薬剤を選択的に標的化するための新しい方法の開発が必要とされている。直接免疫抱合体、ならびに第2のステップの薬剤の事前標的化手法のいずれにも適用可能な一般的方法が極めて望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低分子量ペプチドにも共有結合される治療薬担持ポリマーを提供することによって、抗体ベースの治療薬送達の直接または事前標的化形態に関する前述の問題を解決する。事前標的化に適用する場合、ペプチド部分は、1つまたは2つのハプテン単位、例えばHSG(ヒスタミン−スクシニル−グリシン)を含み得る。二重特異性の1つのアームとしての抗HSG抗体で例示される、二重特異性抗体を診断および治療に使用することは十分に周知であり、当該技術分野において、HSG含有ペプチドの調製方法も記載されている(米国特許第7,138,103号および第7,172,751号、いずれもそれら全体を参照することによって本明細書に組み込まれる)。
【0007】
直接免疫抱合体とともに使用する場合、ペプチドは、二価あるいは多価抗体、またはそれらのフラグメントへの共有結合のための官能基を、抗体の抗原結合特性に影響しない方法で含み得る。好ましい実施形態において、ペプチドは、「ドックアンドロック(DNL)」方法を使用して、二価あるいは多価抗体、またはそれらのフラグメントに付着され得る(Rossi EA,et al.,Proc Natl Acad Sci USA 2006;103:6841−6846、米国特許出願第20060228300号、第20070086942号、および第20070140966号、それぞれの文章は、その全体を参照することによって本明細書に組み込まれる)。本発明のこれらの態様および他の態様は、以下に詳細に記載する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
好ましい実施形態において、例えばデキストラン分子等のポリマーは、誘導体化されて複数のカルボン酸基を所有する。これらのカルボン酸基の画分は、ポリマーの分子当たり約1分子のマレイミド含有架橋剤が付着するように、エチレンジアミンを用いるアミド形成によって誘導体化される。残りのカルボン酸基は修飾され、薬剤に付着するために化学選択的である、規定レベル(置換)の官能基を所有する。この官能基の置換レベルは、ポリマーに付着した薬剤の置換レベルを決定する。
【0009】
一実施形態において、ポリマー上の官能基はアセチレン部分である。ポリマー−(アルキン)−ペプチド誘導体は、「クリック化学」と呼ばれる銅(+1)触媒付加環化反応において、アジド含有薬剤と連結される(Kolb HC and Sharpless KB,Drug Discov Today 2003;8:1128−37)。クリック化学は、水溶液において、中性pHに近い状態で起こり、したがって、薬剤共役が起こりやすい。クリック化学の利点は、それが化学選択的であり、他の周知の共役化学反応、例えばチオール−マレイミド反応を補完することである。ポリマー−ペプチド追加物に対する薬剤の付着は、事前標的化のための材料調製における最終ステップとして行われる。DNL手法の文脈における免疫抱合体形成において、薬剤は、DNLアセンブリの前にポリマーに付着することができる。DNLアセンブリ後の最終ステップとして、より有利に行うこともでき、このようにして、薬剤はDNLプロセス中に関与しない。
【0010】
別の実施形態において、ポリマー上の官能基はヒドラジドである。例えばドキソルビシン等のケト基を含有する薬剤は、pH5からpH7の範囲でヒドラジド添付ポリマーに連結することができる。
【0011】
第3の実施形態において、ポリマー上の官能基は、ホストゲスト複合化によって、薬物に非共有的に結合可能なシクロデキストリン分子である。
【0012】
一部の実施形態において、ポリマーは、2つ以上の薬剤と置換することができる。これは、クリック化学手法に特に適し、それによって、複数のアルキン部分(通常一置換のアセチレン)を有する単一ポリマー追加物は、最初に1つのアジド含有薬剤と連結され得る。モル当量を限定することによって、アセチレン基の一定画分のみが、第1のアジド含有薬剤により誘導体化される。残りのアセチレン基が連結されるように、第2のアジド含有薬剤を用いてプロセスを反復する。例えば、第1の薬剤は、トポイソメラーゼII阻害剤であるドキソルビシンであり得、第2の薬剤は、トポイソメラーゼI阻害剤であるSN−38であり得る。
【0013】
クリック化学方法によってポリマーに付着すると、結合は安定したトリアゾールを介する。開裂可能リンカーを、薬剤とアジドとの間の架橋剤に付加的に構築して、薬剤放出を可能にすることができる。
【0014】
「認識部分」の性質に関する実施形態は以下のとおりである。(1)例えば、それぞれ抗HSGまたは抗体DTPA抗体に特異的に結合する、HSGまたはDTPA等のハプテンの1つまたは2つの分子を含有するペプチドであり得る。次いで、疾病部位に特異的な少なくとも1つのアーム、およびハプテンに特異的な少なくとも1つのアームを所有する二重または多特異性抗体を用いて疾病部位を標的化した後、薬剤−ポリマー−ハプテンを事前標的化形態で使用することができる。代替として、事前複合化多特異性抗体−ポリマー−ハプテンは、本発明の範囲内で利用することができる。(2)ポリマー−薬剤−葉酸複合体を使用して、疾病部位上の葉酸受容体を標的化するような葉酸であり得、例えば癌において、葉酸受容体をできる限り標的化する際に、葉酸添付の診断的または治療薬部分を使用することは、周知の方法である。(3)疾病部位における受容体の標的化に有用なペプチド、例えばソマトスタチン(SS)またはVIPペプチドであり得る。(4)アビジン/ストレプトアビジンベースの事前標的化プロトコルで使用するためのビオチンであり得る。(5)相補アンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。(6)「ドックアンドロック」(DNL)手法の固着ドメイン(AD)ペプチドであり得る(その全体を参照することによって、それぞれ本明細書に組み込まれる、例えば、2006年3月24日出願の米国特許出願番号第11/389,358号、2006年3月28日出願の第11/391,584号、2006年6月29日出願の第11/478,021号、および2006年12月5日出願の第11/633,729号を参照されたい)。この段落に記載される実施形態1から5を使用して、事前標的化プロトコルで使用される「認識部分」に特異的な成分、および二重または多特異性抗体の一部は、それぞれ抗HSGまたは抗DTPA抗体、抗葉酸抗体、抗ソマトスタチン抗体、アビジン/ストレプトアビジン、またはオリゴヌクレオチドである。第6の実施形態の対応成分は、DNL手法の性質によって定義され、AD配列に対しては相補DDD配列である。実施形態2および3において、ポリマー−薬剤−葉酸またはポリマー−薬剤−SSは、疾病部位において事前標的化された二重または多特異性抗体上にラッチし、それぞれ葉酸またはSS受容体を標的化することもでき、それによって、疾病部位における標的化機構を補強する。ポリマー上に導入される、かかる認識部分の数は、好ましくは1から10であり、さらに好ましくは1から5であり、最も好ましくは1から2である。ポリマー当たりの認識部分の数は、DNL複合体の文脈において使用する場合、好ましくは1であるが、事前標的化形式で使用する場合は1より多くてもよい。
【0015】
薬剤−デキストランの実施例を以下に示す。スキーム1は、アセチレン−アジド連結化学反応を使用して、ポリマーを修飾するための一般的手法を示し、構造1から3によって例示される。
【0016】
スキーム−1
【化1】

【0017】
代替として、ポリマーを誘導体化し、アセチレンの代わりにアジド基を含むことができ、薬剤は、アジドの代わりにアセチレン基を用いて誘導体化することができる。
【0018】
構造4:これは、「クリック化学」による1種類の薬剤に対する連結の一例を表す。この場合、「Rm」は認識部分であり、n=0から16、x=10から1000、および「(Z)」は(CH−NH−CO部分から成る追加スペーサであって、式中、mは1から20の値の整数であり、好ましくは1から5、最も好ましくは1である。
【化2】

【0019】
構造5:これは、「クリック化学」による2種類の薬剤に対する連結の一例を表す(「認識部分」は「Rm」によって示される)。薬剤−1は、トポイソメラーゼII阻害剤であるアントラサイクリン薬剤、例えばドキソルビシンであり得、第2の薬剤は、トポイソメラーゼI阻害剤であるカンプトセシン、例えばSN−38であり得る。この実施例において、「x」はポリマーの大きさによって定義される反復デキストラン単位であり、「n」は、薬剤1および薬剤2を用いて誘導体化された部分の数であって、薬剤担持レベルを定義し、「Z」はスペーサである。この構造において、薬剤1および薬剤2に対して「n」として示されるが、「n」の値は、異なる薬剤担持のレベルを実現するため、薬剤1および薬剤2に対して異なり得る。アセチレン−アジド連結は、図示されるようなトリアゾール構造部分を生じる。スペーサ1およびスペーサ2は、開裂可能リンカー部分を含む。開裂可能リンカーは、アントラサイクリン、例えばドキソルビシンの場合において、酸−開裂可能ヒドラゾンまたはカテプシンB開裂可能ペプチドであり得、カンプトセシンの場合において、エステルまたは炭酸結合および/またはカテプシンB開裂可能ペプチドであり得る。薬剤は、表示されるもの以外であり得、薬剤種の数は2に限られない。[この構造において、「Rm」は認識部分であり、n=0から16、x=10から1000、および「(Z)」は(CH−NH−CO部分から成る追加スペースであって、式中、mは1から20の値の整数であり、好ましくは1から5、最も好ましくは1である。]
【化3】

【0020】
構造6:これは、デキストランの化学選択的修飾の実施例である。70KD MWデキストランのこの実施例において、44のCOOH基が、6−ブロモヘキサン酸と反応させることによって最初に導入され、モノマー単位の「11%」(または44部分)が修飾されたことを表す。これらのうち、20の使用可能なCOOH基(「モノマー単位の「5%」」は、BOC−NHNHおよび水溶性カルボジイミド、EDCを使用して、Boc保護ヒドラジドに変換される。残りのCOOH基は、エチレンジアミンおよびEDC連結を使用して、アミンで終結するように部分的に変換され、ポリマー当たり8つのアミンが置換される。これらのアミノ基のうちの1つのみを、修飾因子、例えば構造7のピリジルジチオ基と置換し、後にペプチドに付着させるための条件が開発された。
【化4】

【0021】
構造7:この構造は、平均1つのSPDP分子を70kDデキストラン上に置換できることを示す。ジスルフィド交換反応において、チオール含有ペプチドと最初に反応させることによって、平均1つのペプチドを導入することができる。代替として、構造7のジスルフィドは、ジチオスレイトールまたはTCEPで還元することができ、チオール含有デキストランは、マレイミド含有ペプチドと反応させることができる。さらに別の変型例は、デキストラン上のアミンは、チオール含有ペプチドとのさらなる反応のためのマレイミド含有架橋剤を用いて誘導体化される。ペプチド部分は、1つまたは2つのハプテン分子、例えばHSGを含有するか、またはDNL手法の「DDD」成分と融合するために適切な「AD」ペプチドである。次いで、酸性状態下でのBOC脱保護は、薬剤上でアデルヒドまたはケト基と反応させるために適切なヒドラジドを解放する。代替として、またDNL手法においてさらに好ましくは、後にアジド含有薬剤に連結可能なアセチレン基でヒドラジド部分を置換する。この手法における利益は、DNLアセンブリを最初に行うことができ、結果として生じるアセンブリは、実際にアセチレン(またはアジド)基である、薬剤シグニチャを含むことである。DNL生成物は、アジド(またはアセチレン)添付薬剤と化学選択的に反応させることができる。DNL生成物の事前アセンブリの利点は、薬剤をその後に定義できることである。定義した多価抗体成分を含有する各アセンブリに対して、対応するアジド誘導体化薬剤を使用することによって、異なる薬剤種を置換することができる。
【0022】
「認識部分」の性質は、DNL生成物において「AD」ペプチドとして定義されるが、前項で列挙されるように、他の実施例において異なり得る。
【化5】

【0023】
構造8:これは構造2の変型例であり、アセチレンの代わりにシクロデキストリンのデキストラン上の置換を示す。例えばドキソルビシンのような、シクロデキストリンとの非共有複合体を形成することがでる適切な薬剤が、その後添加される。シクロデキストリン置換は、薬剤置換を決定する。[この構造において、「Rm」は認識部分であり、n=0から16、x=10から1000、および「(Z)」は(CH−NH−CO部分から成る追加スペースであって、式中、mは1から20の値の整数であり、好ましくは1から5、最も好ましくは1である。]
【化6】

【0024】
構造9:これは構造5の変型例であり、「クリック化学」を介する第1の薬剤のデキストラン上の置換、および第2の薬剤との複合化のためのシクロデキストリンの置換を示す。他の図解におけるように、「Rm」は認識部分であり、n=0から16、x=10から1000、および「(Z)」は(CH−NH−CO部分から成る追加スペースであって、式中、mは1から20の値の整数であり、好ましくは1から5、最も好ましくは1である。
【化7】

【0025】
水溶性ポリマー、例えばデキストラン、ポリグルタミン酸、デンドリマー等は、本発明の範囲内である。デキストランで例示されるが、ポリマー成分は、デキストランに限られない。ポリグルタミン酸は、既にその中にカルボン酸基を含み、そのため本開示の観点から、カルボン酸−添加されたデキストランに相当する。COOH添加されたデキストランについての、いかなる方法も、ポリグルタミン酸に対して等しく適用可能である。異なる世代のデンドリマーを用いて、官能基を連続的に誘導体化し、薬剤シグニチャ、例えばそれぞれアジド−薬剤あるいはアルキン薬剤との誘導体化が可能なアルキンまたはアジド、および二官能性薬剤誘導体に連結可能な他の誘導体を含有するようにする。
【0026】
本発明で使用するための治療薬剤は、例えば、ビンカアルカロイド、アントラサイクリン、エピドフィロトキシン、タキサン、アンチメタボライト、アルキル化剤、抗生物質、Cox−2阻害剤、抗有糸分裂剤、抗血管由来剤、およびアポトーシス促進剤、特にドキソルビシン、メトトレキサート、タキソール、カンプトセシン、これらのクラスおよび他のクラスの抗がん剤から生じる他の薬剤等の化学療法薬である。他の癌化学療法薬は、ナイトロジェンマスタード、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、トリアゼン、葉酸類似体、ピリミジン類似体、プリン類似体、白金配位複合体、ホルモン等を含む。適切な化学療法薬は、REMINGTON′S PHARMACEUTICAL SCIENCES,19th Ed.(Mack Publishing Co.1995)、およびGOODMAN AND GILMAN’S THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS,7th Ed.(MacMillan Publishing Co.1985)、ならびにこれらの発行物の改訂版に記載されている。他の適切な化学療法薬、例えば実験薬は、当業者に知られている。本発明で使用される治療薬剤は、リシン、アブリン、リボヌクレアーゼ(RNase)、DNase I、ブドウ球菌エンテロトキシン−A、ヤマゴボウ抗菌タンパク質、ゲロニン、ジフテリン毒素、緑膿菌外毒素、および緑膿菌内毒素を含む毒素でもあり得る(例えば、Pastan.et at.,Cell(1986),47:641、およびGoldenberg,CA−A Cancer Journal for Clinicians(1994),44:43を参照されたい)。本明細書での使用に適切な追加の毒素は、当業者に既知であり、米国特許第6,077,499号において開示され、その全体を参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0027】
一実施形態において、標的部分は、多価および/または多特異性MAbであり得る。別の実施形態において、標的部分は、DNL(ドックアンドロック)手法で形成される多価抗体フラグメントである。標的部分は、ムリン化、キメラ化、霊長類化、ヒト化、またはヒト単クローン抗体であり得、前記抗体は、無傷フラグメント(Fab、Fab’、F(ab)、F(ab’))、またはサブフラグメント(一本鎖組成物)形態である。
【0028】
好ましい実施形態において、標的部分は、抗原または癌または悪性細胞上で発現した抗原のエピトープと反応性がある。癌細胞は、好ましくは、造血性腫瘍、癌腫、肉腫、黒色腫、またはグリア腫瘍からの細胞である。
【0029】
本発明に従って治療される好ましい悪性腫瘍は、悪性固形腫瘍または造血性腫瘍である。
【0030】
好ましい実施形態において、「薬剤−ポリマー認識部分」に組み込まれる細胞内開裂可能部分は、事前標的化した多特異性抗体とのその共役体、または多特異性抗体とのその非共役の後に開裂され得るか、または共役DNL組成物は、細胞に内在化され、特にエステラーゼおよびペプチダーゼによって、あるいはpH依存性プロセスによって、またはジスルフィド還元によって開裂される。
【0031】
標的部分は、好ましくは、抗体(完全ヒト、非ヒト、ヒト化、またはキメラ化抗体を含む)、または抗体フラグメント(酵素的または組み換えによって生成されるフラグメントを含む)、および抗体または抗体フラグメントからの配列を組み込む結合タンパク質である。抗体、フラグメント、および結合タンパク質は、上述のように、多価多特異性または多価単一特異性であり得る。
【0032】
好ましい実施形態において、マーカーを認識または結合する抗体、例えばMAb等、または標的細胞上に高レベルで発現し、正常組織に対して疾患細胞上で優位にまたは唯一発現する腫瘍関連の抗原、および急速に内在化する抗体を使用する。本発明の範囲内において有用な抗体は、上述のような特性を有する(および異なるレベルの細胞および微生物への内在化の特徴的な特性を示す)MAbを含み、癌においては、以下のMAbの使用が考えられるが、これらに限定されない。LL1(抗CD74)、LL2およびRFB4(抗体CD22)、RS7(抗上皮糖タンパク質−1(EGP−1)、PAM−4およびKC4(いずれも抗MUC1)、MN−14(抗癌胎児性抗原(CEA、CD66eとしても知られる))、Mu−9(抗大腸特異的抗原−p)、Immu31(抗α−フェトプロテイン)、TAG−72(例えば、CC49)、Tn、J591(抗PSMA(前立腺特異的膜抗原))、G250(抗炭酸脱水酵素IX MAb)およびL243(抗HLA−DR)。これらの共役体を使用して、標的化され得る他の有用な抗原は、HER−2/neu、BrE3、CD19、CD20(例えば、C2B8、hA20、1F5 MAb)、CD21、CD23、CD37、CD45、CD74、CD80、α−フェトプロテイン(AFP)、VEGFR(例えば、Avastin(登録商標)、フィブロネクチンスプライス変異体)、ED−B(例えば、L19)、EGF受容体またはErbB1(例えば、Erbitux(登録商標))、ErbB2、ErbB3、胎盤成長因子(P1GF)、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、PSMA、ガングリオシド、HCG、EGP−2(例えば、17−1A)、CD37、HLA−DR、CD30、Ia、A3、A33、Ep−CAM、KS−1、Le(y)、S100、PSA(前立腺特異的抗原)、テネイシン、葉酸受容体、トーマス−フリードリッヒ抗原、腫瘍壊死抗原、腫瘍血管形成抗原、Ga733、IL−2、IL−6、T101、MAGE、インスリン様成長因子(ILGF)、遊走阻止因子(MIF)、L243が結合するHLA−DR抗原、CD66抗原、すなわち、CD66a〜d、またはそれらの組み合わせを含む。CD66抗原は、同様の構造を有する5つの異なる糖タンパク質、それぞれ抗癌胎児性抗原(CEA)遺伝子家族、BCG、CGM6、NCA、CGM1、およびCEAによってコードされるCD66a〜eから成る。これらのCD66抗原は、主に顆粒球、消化管の正常上皮細胞、および様々な腫瘍細胞において発現する。多数の前述の抗原は、2002年11月15日出願の米国暫定特許出願番号第60/426,379号「Use of Multi−specific,Non−covalent Complexes for Targeted Delivery of Therapeutics」において開示され、それを参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0033】
DNL手法によって事前複合または融合したポリマー治療認識部分を伴う本発明の別の好ましい実施形態において、急速に内在化する抗体を使用し、次いで細胞表面上で再発現、処理、および提示して、細胞による継続的な摂取および循環共役体の増大を可能にする。最も好ましい抗体/抗原対の実施例は、LL1、抗CD74 Mab(不変鎖、クラスII特異的シャペロン、Ii)である。CD74抗原は、B−細胞リンパ腫、特定のT−細胞リンパ腫、黒色腫、および特定の他の癌(Ong et al.,Immunology 98:296−302(1999))、ならびに特定の自己免疫疾患で高く発現する。この実施形態は、ポリマー治療認識部分を組み込む、事前複合化またはDNL組成物として特に好ましい。
【0034】
抗CD74抗体で好ましく治療される疾患は、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、黒色腫、肺癌、骨髄性白血病、および多発性骨髄腫を含むが、これらに限定されない。標的細胞の表面上の短期間のCD74抗原の連続発現、それから抗原の内在化、および抗原の再発現は、標的LL1抗体を、それが担持する任意の化学療法部分とともに内在化することができる。これにより、高い治療濃度のLL1化学療法薬剤共役体を、かかる細胞の内部に蓄積することができる。内在化LL1化学療法薬剤共役体は、リソソームおよびエンドソームを通して循環し、化学療法部分は、活性形態で標的細胞内に放出される。
【0035】
別の実施形態は、対象を治療する方法に関連し、本発明の好ましい実施形態の治療有効量の治療薬共役体を対象に投与するステップを含む。好ましい実施形態の治療薬共役体で治療され得る疾患は、B−細胞悪性腫瘍(例えば、LL2 MAbを使用する非ホジキンリンパ腫および慢性リンパ性白血病、米国特許第6,183,744号を参照されたい)、内胚葉的に生成された消化器系上皮の腺癌、例えば、乳癌および非小細胞肺癌等の癌、および他の癌腫、肉腫、グリア腫、骨髄性白血病等を含むが、これらに限定されない。特に、抗原に対する抗体、例えば、胃腸、肺、乳房、前立腺、卵巣、精巣、脳、またはリンパ腫、肉腫、または黒色腫等の悪性固形腫瘍または造血性腫瘍によって生成される、または関連する腫瘍胎児抗原が有利に使用される。かかる治療薬は、疾病状態および共役体の忍容性に依存して、一度または繰り返し投与することができ、例えば手術、外部放射線、放射免疫治療、免疫療法、化学療法、アンチセンス療法、干渉RNA療法、遺伝子治療等の他の治療薬様式と組み合わせて、最適に使用することもできる。各組み合わせは、腫瘍の種類、段階、患者の状態および事前療法、ならびに担当医師によって考慮される他の因子に適合される。
【0036】
本明細書で使用されるように、「対象」という用語は、それに限定されないがが、ヒトを含む哺乳動物を含む任意の動物(すなわち、脊椎動物および無脊椎動物)を意味する。対象という用語は、齧歯類(例えば、マウス、ラット、およびモルモット)も含む。該用語は、特定の年齢または性別に限られるものではない。したがって、雄または雌にかかわらず、成人および新生児対象、ならびに胎児がその用語により包含される。
【0037】
別の好ましい実施形態において、Mu−9 MAbを含む治療薬共役体を使用して、2002年4月5日出願のGoldらによる米国出願番号第10/116,116に開示されるように、結腸直腸、ならびに膵臓および卵巣癌を治療することができる(Cancer Res.50:6405(1990)、およびそこで引用される参照文献)。さらに、PAM−4 MAbを含む治療薬共役体を使用して、2002年6月14日出願の米国暫定特許出願番号第60/388,314に開示されるように、膵臓癌を治療することができる。
【0038】
別の好ましい実施形態において、RS−7 MAbを含む治療薬共役体を使用して、2002年3月1日出願のSteinらによる米国暫定特許出願番号第60/360,229に開示されるように、例えば肺、胃、膀胱、胸、卵巣、子宮、および前立腺の癌腫等の癌腫を治療することができる(Cancer Res.50:1330(1990)およびAntibody Immunoconj.Radiopharm.4:703(1991))。
【0039】
別の好ましい実施形態において、抗AFP MAbを含む治療薬共役体を使用して、2002年8月1日出願の米国暫定特許出願番号第60/399,707に開示されるように、ヒト化、キメラ化、およびヒト抗体形態を使用して、肝細胞癌、細菌細胞腫瘍、および他のAFP生成腫瘍を治療することができる。
【0040】
別の好ましい実施形態において、抗テネイシン抗体を含む治療薬共役体を使用して、造血性および固形腫瘍を治療することができ、Le(y)に対する抗体を含む共役体を使用して、固形腫瘍を治療することができる。
【0041】
好ましい実施形態において、ヒト疾病の治療に使用される抗体は、ヒトまたはヒト化(CDR移植)バージョンの抗体であるが、ムリン化およびキメラ化バージョンの抗体を使用することができる。送達剤としての同種IgG分子は、免疫応答を最小化するために最も好ましい。これは、反復治療を考慮すると特に重要である。ヒトの場合、ヒトまたはヒト化IgG抗体は、患者から抗IgG免疫応答を引き起こす可能性が低い。hLL1およびhLL2等の抗体は、標的細胞上の内在化抗原に結合した後に、急速に内在化し、これは、担持されている化学療法薬剤も同様に細胞内へ急速に内在化されることを意味する。しかしながら、内在化速度の遅い抗体を使用して、本発明を用いる選択的治療を達成することもできる。
【0042】
別の好ましい実施形態において、病原体に対する抗体が知られているため、病原体に対して治療薬共役体を使用することができる。例えば、細菌、リケッチア、マイコプラズマ、原虫、菌類、およびウィルス等の病原菌、および抗原、およびかかる微生物に関連した生成物によって引き起こされる、例えばウィルス性、細菌性、真菌性、および寄生生物性感染を含む、感染性病変によって生成される、または関連するマーカーに特異的に結合する抗体および抗体フラグメントは、特に上で引用されるHansenらの米国特許第3,927,193号およびGoldenbergの米国特許第4,331,647号、第4,348,376号、第4,361,544号、第4,468,457号、第4,444,744号、第4,818,709号、および第4,624,846号、ならびにReichertおよびDewitzにおいて開示されている。好ましい実施形態において、病原体は、米国特許第6,440,416号に開示されるように、エイズを引き起こすヒト免疫不全ウィルス(HIV)、結核菌、アガラクシア連鎖球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、レジオネラニューモフィラ、化膿連鎖球菌、大腸菌、淋菌、髄膜炎菌、肺炎球菌、血友病性B型インフルエンザ、梅毒トレポネーマ、ライム病スピロヘータ、緑膿菌、ハンセン菌、ウシ流産菌、狂犬病ウィルス、インフルエンザウィルス、サイトメガロウィルス、単純ヘルペスウィルスI型、単純ヘルペスウィルスII型、ヒト血清パルボ様ウィルス、呼吸器合胞体ウィルス、水痘帯状疱疹ウィルス、B型肝炎ウィルス、麻疹ウィルス、アデノウィルス、ヒトT−細胞白血病ウィルス、エプスタイン−バーウィルス、マウス白血病ウィルス、流行性耳下腺炎ウィルス、水疱性口内炎ウィルス、シンドビスウィルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウィルス、いぼウィルス、ブルータングウィルス、センダイウィルス、ネコ白血病ウィルス、レオウィルス、ポリオウィルス、シミアンウィルス40、マウス乳癌腫瘍ウィルス、デング熱ウィルス、風疹ウィルス、ウエストナイルウィルス、熱帯マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、トキソプラズマ原虫、ランゲルトリパノソーマ、クルーズトリパノソーマ、ローデシアトリパノソーマ、ブルセイトリパノソーマ、マンソン住吸血虫、日本住吸血虫、ウシバベシア、エルメリア・テネラ、回旋糸状虫、熱帯リーシュマニア、旋毛虫、タイレリア・パルバ、胞状条虫、羊条虫、無鉤条虫、単包条虫、メソ条虫亜鋼コルチ、マイコプラズマ関節炎、マイコプラズマ・ヒオリニス、マイコプラズマ・オラール、マイコプラズマ・アルギニーニ、アコレプラズマ・レイドロウィ、マイコプラズマ・サリバリウム、およびマイコプラズマ・ニューモニエから成る群より選択される。
【0043】
さらに好ましい実施形態において、抗gp120および他のかかる抗HIV抗体から成る薬剤共役体は、エイズ患者におけるHIVの治療薬として使用することができ、ヒト結核菌に対する抗体の薬剤共役体は、薬剤屈折性結核の治療薬として適切である。抗gp120 MAb(抗HIV MAb)の融合タンパク質および毒素、例えばシュードモナス外毒素は、抗ウィルス特性について試験されている(Van Oigen et al.,J Drug Target,5:75−91,1998))。エイズ患者においてHIV感染を治療する試みは、恐らく不十分な有効性または容認できない宿主毒性のために失敗した。本発明の薬剤共役体は、タンパク質毒性のかかる毒性副作用を有利に欠失し、したがって、エイズ患者においてHIV感染の治療に有利に使用される。これらの薬剤共役体は、単独で投与するか、または単独で投与された場合にかかる患者において有効な他の抗体または治療薬剤と組み合わせることができる。
【0044】
別の好ましい実施形態において、治療薬共役体を使用して治療され得る疾患は、これらに限定されないが、クラスIII自己免疫疾患、例えば、急性特発性血小板減少性紫斑病および慢性特発性血小板減少性紫斑病等の免疫媒介性血小板減少、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、多発性硬化症、シデナム舞踏病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、リウマチ熱、関節リウマチ、多腺性症候群、水疱性類天疱瘡、糖尿病、ヘノッホ−シェーンライン紫斑病、レンサ球菌感染後の腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、関節リウマチ、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎、多型性紅斑、IgA腎症、結節性多発性動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチュア症候群、閉塞性血栓血管炎、シェーグレン症候群、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺亢進、強皮症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、胆汁過多、尋常性天疱瘡、ヴェグナー肉芽腫症、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄癆、巨大細胞動脈炎/多筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎、線維化性肺胞炎、および若年性糖尿病を含む、免疫調節異常疾病および関連自己免疫疾患であり、2002年3月1日出願の米国暫定特許出願番号第60/360,259に開示されるとおりである。これらの疾患において有用な典型的抗体は、これらに限定されないが、HLA−DR抗原またはB−細胞またはT−細胞抗原と反応するものである(例えば、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23,CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD040L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80,CD126、B7,MUC1、Ia、HM1.24、およびHLA−DR)である。これらの自己免疫疾患の多くは、異常なB−細胞集団によって形成される自己抗体の影響を受けるため、本明細書で使用される薬剤と結合した、かかる抗体を伴う治療薬共役体によるこれらのB−細胞の減少は、特にB−細胞抗体が、特定の状況において、HLA−DR抗体および/またはT−細胞抗体(抗原としてIL−2を標的化するもの、例えば抗TAC抗体を含む)と組み合わされる場合、自己免疫疾病治療の好ましい方法である。好ましい実施形態において、抗B−細胞、抗T−細胞、あるいは抗マクロファージ、または自己免疫疾患のある患者の治療において使用する他のかかる抗体を共役して、前記自己免疫疾患に関与する宿主反応を制御するためのより有効な治療薬を生じ、単独で投与するか、または例えばTNF阻害剤またはTNF抗体、非共役B−またはT−細胞抗体等の他の治療薬剤との組み合わせで投与することができる。
【0045】
好ましい実施形態において、治療薬共役体を使用して治療され得る疾患は、例えばフィブリン塊、アテローム性動脈硬化症、心筋虚血、および心筋梗塞等の心血管疾患を含む。フィブリンに対する抗体は、臨床試験において、前記塊および肺塞栓を明らかにするための造影剤として知られているが、抗顆粒球抗体、例えばMN−3、MN−15、NCA95、およびCD15抗体は、心筋梗塞および心筋虚血を標的化することができ、抗マクロファージ、抗低密度リポタンパク質(LDL)、および抗CD74(例えば、hLL1)抗体を使用して、アテローム斑を標的化することができる。
【0046】
さらに別の好ましい実施形態において、例えば、アルツハイマー病に関連するアミロイドまたはβ−アミロイド等の、抗体を位置特定するための標的として機能する、治療薬共役体を使用して治療され得る疾患は、標的部分を使用できる特定の病変によって特徴付けられる神経変性疾患を含む。
【0047】
好ましい実施形態において、細胞および病原体へのより有効な組み込みは、多価多特異性または多価単一特異性抗体を使用することによって達成することができる。多価とは、細胞上で発現した同一または異なる抗原またはエピトープに対する、幾つかの結合アームの使用を意味するが、多特異性抗体は、複数結合アームを使用して、標的細胞または病原体上に含有される少なくとも2つの異なる抗原またはエピトープを標的化することを伴う。かかる二価および二重特異性抗体の実施例は、2002年8月1日出願の米国特許出願番号第60/399,707号、2002年3月1日出願の米国特許出願番号第60/360,229号、2002年6月14日出願の第60/388,314号、および2002年4月5日出願の第10/116,116号において見出され、すべてそれらを参照することによって本明細書に組み込まれる。これらの多価または多特異性抗体は、癌および感染性生物(病原体)の標的化において特に好ましく、複数の抗原標的、さらに同一抗原標的の複数のエピトープをも発現するが、細胞または病原体上の単一の抗原標的の発現または利用可能性が不十分であるため、免疫療法の抗体標的化および十分な結合を回避する場合が多い。複数の抗原またはエピトープを標的化することによって、前記抗体は、標的上のより高い結合および滞留時間を示し、したがって、本発明において標的化される薬剤とのより高い飽和を可能にする。
【0048】
様々な実施形態において、本明細書に開示されるように、共役体は、複合、多特異的な抗体の一部であり得る。そのような抗体は、異なる特異性を有する2つ以上の異なる抗原結合部位を含み得る。多特異的な複合体は、同一の抗原の異なるエピトープに結合し得、または、あるいは、2つの異なる抗原に結合し得る。幾つかのさらに好ましい標的の組み合わせは、以下のものを含む。これは、好ましい組み合わせの例の一覧であるが、完全であることを意図しない。
【表1−1】

【表1−2】

【0049】
例えば癌療法に対して好ましい、さらに他の組み合わせは、CD20+CD22抗体、CD74+CD20抗体、CEACAM5(CEA)+CEACAM6抗体、インスリン様成長因子(ILGF)+CEACAM5抗体、EGP−1(例えば、RS−7)+ILGF抗体、CEACAM5+EGFR抗体を含む。そのような抗体は、組み合わせて使用されるだけでなく、米国特許第6,083,477号、第6,183,744号、第6,962,702号、および米国特許出願公開第20030124058号、第20030219433号、第20040001825号、第20040202666号、第20040219156号、第20040219203号、第20040235065号、第20050002945号、第20050014207号、第20050025709号、第20050079184号、第20050169926号、第20050175582号、第20050249738号、第20060014245号、および第20060034759号(それぞれは、その全体にそれを参照することによって本明細書に組み入れられる)に記載されるように、例えば、IgG、Fab、scFv等の様々な形式の融合タンパク質として複合することができる。
【0050】
ある実施形態において、本明細書に記載の結合部分は、1つ以上のアビマー配列を含み得る。アビマーは、様々な標的分子に対する親和性および特異性において、幾分抗体に似た、一種の結合タンパク質である。それらは、体外エキソンシャッフリングおよびファージ提示法によりヒト細胞外受容体ドメインから開発された。(Silverman et al.,2005,Nat.Biotechnol.,23:1493−94、Silverman et al,2006,Nat.Biotechnol,24:220)得られる多ドメインタンパク質は、多数の独立結合ドメインを含み得、それは、単一エピトープ結合タンパク質と比較して、改善した親和性(場合によっては、サブナノモル)および特異性を示し得る。(同文献)様々な実施形態において、それぞれは、それを参照することによって本明細書に組み入れられる、2005年4月6日出願の米国暫定特許出願第60/668,603号、および2005年12月16日出願の第60/751196号に記載されるように、アビマーは、特許請求される方法および組成物で使用するために、例えば、ADおよび/またはDDD配列に結合し得る。アビマーの構造および使用に関する方法のさらなる詳細は、例えば、米国特許出願公開第20040175756号、第20050048512号、第20050053973号、第20050089932号、および第20050221384号に開示され、それらのそれぞれの実施例の項は、それを参照することによって、本明細書に組み入れられる。
DNL(ドックアンドロック)方法
【0051】
異なるエフェクター部分を含有する複合体を形成するためのDNL方法の様々な実施形態は、周知である(例えば、米国特許出願公開第20060228300号、第20070086942号、第20070140966号を参照)。DNL技法は、例えば、cAMP依存的タンパク質キナーゼの調節サブユニットの二量化およびドッキングドメイン(DDD)領域と、多種多様のAキナーゼアンカータンパク質(AKAP)から得られたアンカードメイン配列との間でなどの自然発生的な結合分子の複合体の形成に基づく。DDDドメインは、自然発生的に二量化し、その後、単一AD配列に連結する。したがって、様々なエフェクターが、定義された化学量論の複合体を形成するために、DDDおよびAD配列に結合され得る。最も簡単な場合には、結果は、DDD配列を抱合する2つの同一のサブユニットおよびAD配列を抱合する1つのサブユニットを含有する三量体である。しかしながら、そのような集合において、ホモ二量体、ホモ四量体、ヘテロ四量体、およびホモまたはヘテロ六量体を含む、多くの異なる形態が可能である(米国特許出願公開第20060228357号および第20070140966号を参照)。合成複合体を形成するためにDNL法に利用され得る典型的なDDDおよびAD配列を以下に開示する。
DDD1
SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号1)
DDD2
CGHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号2)
AD1
QIEYLAKQIVDNAIQQ(配列番号3)
AD2
CGQIEYLAKQIVDNAIQQAGC(配列番号4)
抗体フラグメントの生成
【0052】
モノクローナル抗体生成の方法は、当技術分野で周知であり、任意のそのような既知の方法を使用して、特許請求に記載の方法および組成物において使用される抗体を生成し得る。幾つかの実施形態は、抗体フラグメントに関係し得る。そのような抗体フラグメントは、従来の方法により、全抗体のペプシンまたはパパイン分解により得ることができる。例えば、抗体フラグメントは、ペプシンによる抗体の酵素的切断により生成され、F(ab’)2で示される5Sフラグメントを提供し得る。本フラグメントは、チオール還元剤、およびに、任意に、ジスルフィド結合の切断から生じるスルフヒドリル基に対する遮断基を使用して、さらに切断され、3.5Fab’一価フラグメントを生成し得る。あるいは、ペプシンを使用する酵素的切断は、2つの一価FabフラグメントおよびFcフラグメントを生成する。抗体フラグメントを生成するための典型的な方法は、米国特許第4,036,945号、米国特許第4,331,647号、Nisonoff et al,1960,Arch.Biochem.Biophys.,89:230、Porter,1959,Biochem. J,73:119、Edelman et al,1967,METHODS IN ENZYMOLOGY,page 422(Academic Press)、およびColigan et al. (eds.),1991,CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY,(John Wiley&Sons)に開示される。
【0053】
抗体を切断する他の方法、例えば、一価軽−重鎖フラグメントを形成するための重鎖の分離、フラグメントのさらなる切断、または他の酵素的もしくは化学的もしくは遺伝子技術もまた、フラグメントが、無傷の抗体により認識される抗原に結合する限り、使用され得る。例えば、Fvフラグメントは、VおよびV鎖の会合を含む。この会合は、Inbar et al.,1972,Proc. Nat’l.Acad.Sci.USA,69:2659に記載されるように、非共有であり得る。あるいは、可変鎖は、分子間のジスルフィド結合により結合、またはグルタルアルデヒド等の薬物により架橋し得る。Sandhu,1992,Crit.Rev.Biotech.,12:437を参照。
【0054】
好ましくは、Fvフラグメントは、ペプチドリンカーにより接続される、VおよびV鎖を含む。これらの一本鎖抗原結合タンパク質(sFv)は、VおよびVドメインを符号化するDNA配列を含有する構造遺伝子を構築することにより調製され、オリゴヌクレオチドリンカー配列により接続される。sFvsを生成する方法は、当技術分野で周知である。Whitlow et al.,1991,Methods: A Companion to Methods in Enzymology 2:97、Bird et al,1988,Science,242:423、米国特許第4,946,778号、Pack et al.,1993,Bio/Technology,11:1271、およびSandhu,1992,Crit.Rev.Biotech.,12:437を参照されたい。
【0055】
抗体フラグメントの他の形態は、単一相補性決定領域(CDR)のペプチドコーディングである。CDRペプチド(「最小認識単位」)は、対象となる抗体のCDRを符号化する遺伝子を構築することにより得られる。そのような遺伝子は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して、抗体生成細胞のRNAから可変領域を合成することにより調製される。Larrick et al., 1991,Methods: A Companion to Methods in Enzymology 2:106、Ritter et al. (eds.),1995,MONOCLONAL ANTIBODIES: PRODUCTION, ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION, pages 166−179 (Cambridge University Press)、Birch et al,(eds.),1995,MONOCLONAL ANTIBODIES: PRINCIPLES AND APPLICATIONS,pages 137−185(Wiley−Liss,Inc.)を参照されたい。
キメラおよびヒト化抗体
【0056】
キメラ抗体は、ヒト抗体の可変領域が、例えば、マウス抗体の相補性決定領域(CDR)を含む、マウス抗体の可変領域により置換される組み換えタンパク質である。キメラ抗体は、対象に投与される際、免疫原性の低下および安定性の増加を示す。キメラ抗体を構築する方法は、当技術分野で周知である(例えば、Leung et al.,1994,Hybridoma,13:469)。
【0057】
キメラモノクローナル抗体は、ヒト抗体の対応する可変ドメインに、マウス免疫グロブリンの重および軽可変鎖からマウスCDRを転移することによりヒト化され得る。キメラモノクローナル抗体におけるマウスフレームワーク領域(FR)はまた、ヒトFR配列と置換される。ヒト化モノクローナルの安定性および抗原特異性を保存するために、1つ以上のヒトFR残基は、マウスの対応する残基により置換され得る。ヒト化モノクローナル抗体は、対象の治療処置のために使用され得る。標的に対するヒト化抗体の親和性はまた、CDR配列の選択修飾により増加し得る(国際公開第WO0029584A1号)。ヒト化モノクローナル抗体の生成技術は、当技術分野で周知である。(例えば、Jones et al.,1986,Nature,321:522、Riechmann et al.,Nature,1988,332:323、Verhoeyen et al,1988,Science,239:1534、Carter et al,1992,Proc.Nat’l Acad. Sci.USA,89:4285、Sandhu,Crit.Rev.Biotech.,1992,12:437、Tempest et al,1991,Biotechnology,9:266、Singer et al,J.Immun.,1993,150:2844を参照)
【0058】
他の実施形態は、非ヒトの霊長類抗体に関係し得る。ヒヒにおける治療的に有用な抗体を上昇させるための一般的技術は、例えば、Goldenbergら、国際公開第WO91/11465号(1991)、およびLosman et al,Int.J.Cancer,46:310(1990)において、認められ得る。別の実施形態において、抗体は、ヒトモノクローナル抗体であり得る。そのような抗体は、抗原投与に対応して特異的なヒト抗体を生成するために操作されたトランスジェニックマウスから得られる。本技法において、ヒトの重鎖および軽鎖遺伝子座の構成要素は、内因性重鎖および軽鎖遺伝子座の標的破壊を含む、胚幹細胞株から由来するマウス株に導入される。トランスジェニックマウスは、ヒト抗原に対して特異的なヒト抗体を合成でき、マウスは、ヒト抗体分泌ハイブリドーマを生成するために使用することができる。トランスジェニックマウスからヒト抗体を得るための方法は、Green et al,Nature Genet.,7:13(1994)、Lonberg et al,Nature,368:856(1994)、およびTaylor et al,Int. Immun.,6:579(1994)により記載される。
ヒト抗体
【0059】
組み合わせ法あるいはヒト免疫グロブリン遺伝子座で変換されるトランスジェニック動物を使用して、完全ヒト抗体を生成する方法は、周知である(例えば、Mancini et al,2004,New Microbiol. 27:315−28、Conrad and Scheller,2005,Comb.Chem. High Throughput Screen. 8:117−26、Brekke and Loset,2003,Curr.Opin.Phamacol 3:544−50(それぞれは、それを参照することによって本明細書に組み入れられる))。そのような完全ヒト抗体は、キメラまたはヒト化抗体よりもさらに副作用が少なく、本来の、内因性ヒト抗体として、生体内で機能することが期待される。ある実施形態において、特許請求に記載の方法および手順は、このような技術により生成されるヒト抗体を利用し得る。
【0060】
1つの別法においては、ファージ提示法を使用し、ヒト抗体を生成することができる(例えば、Dantas−Barbosa et al,2005,Genet. Mol Res. 4:126−40、それを参照することによって本明細書に組み入れられる)。ヒト抗体は、正常ヒトまたは癌等の特定の病状を示すヒトから生成され得る(Dantas−Barbosa et al,2005)。罹患した個人からヒト抗体を構築する利点は、循環抗体レパートリーが疾病関連の抗原に対する抗体に偏向し得ることである。本方法論の1つの限定されない実施例において、Dantas−Barbosaら(2005)は、骨肉種患者からのヒトFab抗体フラグメントのファージ提示ライブラリーを構築した。熟練した技術者は、本技法が、例示のみであり、ファージ提示法によりヒト抗体または抗体フラグメントを作製およびスクリーニングするための任意の既知の方法を利用し得ることを理解するであろう。
【0061】
別の方法において、ヒト抗体を生成するように遺伝子操作されているトランスジェニック動物は、上で論じられるように、標準免疫プロトコルを使用して、実質上、いかなる免疫原性の標的に対しても抗体を生成するために使用され得る。このような手順の限定されない例は、Abgenix(Fremont,CA)からのXenoMouse(登録商標)(例えば、Green et al,1999,J.Immunol.Methods 231:11−23、それを参照することによって本明細書に組み入れられる)である。XenoMouse(登録商標)および類似動物において、マウス抗体遺伝子は、不活性化され、機能的なヒト抗体遺伝子により置換されるが、その一方、マウス免疫系の残りは、無傷のままである。

【0062】
標的抗原の免疫があるXenoMouse(登録商標)は、正常免疫反応によりヒト抗体を生成し、それは、上で論じられる標準技術により収穫および/または生成され得る。XenoMouse(登録商標)の様々な株が、利用可能であり、それらのそれぞれは、異なる種の抗体を生成することができる。そのようなヒト抗体は、化学的架橋または他の既知の手法により他の分子に結合され得る。遺伝子で生成されたヒト抗体は、治療に使用できる可能性があることを示す一方、正常ヒト抗体の薬物動態学的特性を保持する(Green et al.,1999)。熟練した技術者は、特許請求に記載の組成物および方法が、XenoMouse(登録商標)系の使用に限定されず、ヒト抗体を生成するために遺伝子組み換えが行われている任意のトランスジェニック動物を利用することができることを理解するであろう。
アビマー
【0063】
ある実施形態において、本明細書に記載の前駆体、モノマー、および/または複合体は、1つ以上のアビマー配列を含み得る。アビマーは、様々な標的分子に対する親和性および特異性において、幾分抗体に似た、一種の結合タンパク質である。それらは、体外エキソンシャッフリングおよびファージ提示法によりヒト細胞外受容体ドメインから開発された。(Silverman et al., 2005, Nat. Biotechnol., 23:1493−94、 Silverman et al, 2006, Nat. Biotechnol, 24:220)得られる多ドメインタンパク質は、複数の独立結合ドメインを含み得、それは、単一エピトープ結合タンパク質と比較して、改善した親和性(場合によっては、サブナノモル)および特異性を示し得る。(同文献)様々な実施形態において、アビマーは、例えば、特許請求される方法および組成物に使用するためにDDD配列に結合され得る。アビマーの構造および使用に関する方法のさらなる詳細は、例えば、米国特許出願公開第20040175756号、第20050048512号、第20050053973号、第20050089932号、および第20050221384号に開示され、それらのそれぞれの実施例の項は、それを参照することによって、本明細書に組み入れられる。
ファージ提示法
【0064】
特許請求される組成物および/または方法のある実施形態は、結合ペプチドおよび/または様々な標的分子、細胞、または組織のペプチド模倣薬に関係し得る。結合ペプチドは、ファージ提示法が挙げられるが、これに限定されない、任意の周知の方法により同定され得る。様々なファージ提示方法および種々の集団のペプチドを生成するための技術が、当技術分野で周知である。例えば、米国特許第5,223,409号、第5,622,699号、および第6,068,829号(それらのそれぞれは、それを参照することによって本明細書に組み入れられる)は、ファージライブラリーを調製するための方法を開示する。ファージ提示法は、少量のペプチドをそれらの表面上に発現することができるように、バクテリオファージを遺伝子操作することに関与する(Smith and Scott,1985,Science,228:1315−1317、Smith and Scott,1993,Meth.Enzymol,21:228−257)。
【0065】
所与の臓器、組織、細胞型、または標的分子に対して選択的な標的アミノ酸配列は、パニング(panning)により単離され得る(Pasqualini and Ruoslahti,1996,Nature,380:364−366、Pasqualini,1999,The Quart.J.Nucl.Med.,43:159−162)。手短に述べると、ファージ含有推定標的ペプチドのライブラリーは、無傷有機体、または単離された臓器、組織、細胞型もしくは標的分子に投与され、結合ファージを含む試料を回収する。標的に結合するファージを、標的臓器、組織、細胞型、もしくは標的分子から溶離し、その後、宿主細菌において、それらを成長させることにより増幅し得る。
【0066】
複数回のパニング(panning)を、選択的または特異的な結合剤の集団を得るまで行なうことができる。ペプチドのアミノ酸配列は、ファージゲノム内に挿入する標的ペプチドに対応するDNAを配列することにより決定され得る。同定された標的ペプチドは、その後、標準タンパク質化学技法により、合成ペプチドとして生成され得る(Arap et al,1998a,Smith et al,1985)。
アプタマー
【0067】
ある実施形態において、使用される標的部分は、アプタマーであり得る。アプタマーの結合特性を構築、および決定する方法は、当技術分野で周知である。例えば、このような技術は、米国特許第5,582,981号、第5,595,877号、および第5,637,459号に記載され、それぞれは、それを参照することによって本明細書に組み入れられる。対象となる特定の標的に結合するアプタマーの調製およびスクリーニングの方法は、既知であり、例えば、米国特許第5,475,096号および米国特許第5,270,163号であり、それぞれは、それを参照することによって組み入れられる。
【0068】
アプタマーは、合成、組み換え、および精製方法を含む、任意の既知の方法により調製され得、単独で、または同一の標的に対して特異的な他のリガンドと組み合わせて使用され得る。一般に、最低約3つのヌクレオチド、好ましくは、少なくとも5つのヌクレオチドが特異結合をもたらすために必要である。10塩基よりも短い配列のアプタマーも使用可能であるが、10、20、30、または40のヌクレオチドのアプタマーが好ましいとされ得る。
【0069】
アプタマーは、結合特異性を与える配列を含む必要があるが、隣接領域を伴い拡張、または、他の形態で誘導体化され得る。好ましい実施形態において、アプタマーの結合配列は、プライマー結合配列により隣接され得、PCRまたは他の増幅技術によるアプタマーの増幅を促進する。
【0070】
アプタマーを、従来のDNAまたはRNA分子として、単離する、配列を決定する、および/または増幅する、もしくは合成し得る。あるいは、対象となるアプタマーは、増幅したオリゴマーを含有し得る。通常、アプタマーに存在する任意のヒドロキシル基は、ホスホン酸基、リン酸基により置換され、標準保護基により保護される、または他のヌクレオチドに追加の結合を調製するために活性化される、または固体支持体に共役され得る。1つ以上のホスホジエステル結合は、P(O)S、P(O)NR、P(O)R、P(O)OR’、CO、またはCNRにより置換されるP(O)O等の代替的な連結基により置換され得、式中、Rは、Hまたはアルキル(1−20C)であり、R’は、アルキル(1−20C)であり、さらに、本基は、OまたはSを介して隣接ヌクレオチドに結合され得る。オリゴマー内のすべての結合が同一である必要はない。
共役プロトコル
【0071】
好ましい共役プロトコルは、中性または弱酸性のpHで容易である、アルキン−アジド(好ましくは、一置換のアセチレン−アジド)、チオール−マレイミド、チオール−ビニルスルホン、チオール−ブロモアセトアミド、またはチオール−ヨードアセトアミド反応に基づく。
【0072】
本発明の好ましい実施形態の共役体の適切な投与経路は、経口、非経口、直腸、経粘膜的、腸管投与、筋肉内、皮下、髄内、くも膜下、直接脳室内、静脈内、硝子体内、腹腔内、鼻腔内、または眼内注射が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい投与経路は、非経口である。あるいは、全身的ではなく、局所的に、例えば、固形腫瘍に直接化合物を注入して、化合物を投与することができる。
【実施例】
【0073】
本発明は、その範囲を限定することなく、下述の実施例を用いて説明される。
実施例1:デキストランにおけるCOOH基の導入
【0074】
デキストラン(70kD MW)を、80℃で3時間、5−ブロモヘキサン酸および4M水酸化ナトリウムで誘導体化した。その後、この物質を、pH約4まで酸性化し、任意で、有機溶媒で抽出して未反応のブロモヘキサン酸を除去し、10kD分画分子量(MWCO)透析カセットにおいて、水に対して透析し、3回水を取り替えた。水性生成物を凍結乾燥した。既知量の修飾デキストランを0.1N水酸化ナトリウムに対して滴定し、導入されたカルボン酸基の数を推定した。これにより、デキストラン当たり44〜100のCOOH基が導入され、11%〜25%の修飾されたモノマー単位に対応することが示された。
実施例2:COOH付加のデキストラン(70kD MW)の誘導体化
【0075】
44COOH/70kDデキストランを有する実施例1の生成物を、水溶性カルボジイミド、EDC、およびBOC−ヒドラジンで処理したが、それぞれは、COOH量の約50%に対応する同等物であった。簡潔に述べると、EDC処理は、約6の酸性pHで行われ、その後、一保護されたヒドラジンを添加し、pHを7.4まで上げた。室温で2〜3時間培養した後、生成物を30K MWCOの遠心フィルターを使用して、限外ろ過により精製した。回収した生成物を0.1N水酸化ナトリウムに対して滴定することにより測定したところ、24COOH/70kDデキストランを含んでいた。これは、20のCOOH部分がBOCヒドラジドとして誘導体化されたことを示した。この工程は、新しい中間体が、ここで、デキストラン当たり、8アミノ基、20BOCヒドラジド、および16のCOOHを有するように、EDCおよびエチレンジアミンを使用して、さらに誘導体化とともに繰り返した。最終的に、デキストランポリマー当たり、約1つの反応部分を導入するために、最適化を行った。これは、様々なモル当量のSPDP(N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)−プロプリオネート)と、アミン、BOC−ヒドラジド、およびCOOH含有デキストランとを反応させることにより、かつ343nmで、ジチオスレイトールとの反応により遊離された、2チオピリドンを分光光度法で分析することにより、そのように導入された活性ジスルフィド基の数を分析することにより行われた。本分析は、5.3倍のモル過剰のSPDP試薬を使用した際、活性化したジスルフィド対デキストラン置換の1:1のレベルを得たことを示した。
実施例3:ドキソルビシン置換ポリマーに対するCOOH付加のデキストラン(40kD MW)の連続誘導体化
【0076】
デキストラン(40kD)を、実施例1にあるように、ブロモヘキサン酸および水酸化ナトリウムで誘導体化し、デキストラン当たり約60のCOOHを有するようにさせた。これを、BOCヒドラジンおよびEDCで、約30Boc−ヒドラジド基である、COOH量の約50%のレベルに、誘導体化した。脱保護を3M塩酸で行い、生成物を限外ろ過により精製した。ドキソルビシンとの共役を、pH5およびpH6の条件下で検査したが、水性条件の誘導体化が、20のDox基が導入されたpH5においての方が、12のDoxが導入されたpH6においてより、さらに効率的であることを示した。ドキソルビシン量は、496nmの吸光度、およびドキソルビシン標準曲線との相関から決定された。
実施例4:「クリック化学」手法によるドキソルビシン置換ポリマーに対するCOOH付加のデキストラン(40kD MW)の逐次誘導体化
【0077】
実施例3(0.0047 mmolのデキストラン、COOHに対して0.282mmol)からのカルボキシル誘導体化デキストラン(40kD、約60COOH)を、2.6mmolのEDCおよび2.1mmolのプロパルギルアミンで処理した。生成物である、アセチレン添加されたデキストランを、繰り返し限外ろ過膜分離法を行うことにより精製した。アセチレン量は、非誘導体化カルボン酸基の逆滴定に基づき、40kd MWデキストラン当たり50〜60であると推定された。
【0078】
アジド抱合されたドキソルビシンヒドラゾンを、メタノール中のドキソルビシン(0.44mmol)および6−アジドヘキサン酸ヒドラジド(TFA塩として、1.5mmol)から室温で一晩調製した。溶媒を蒸発により取り除き、過剰ヒドラジド試薬をアセトニトリルで粉砕することにより除去した。勾配溶離(3mL/分の流速で10分間で100%Aを100%B、次の5分間で100%Bを維持、A=0.3%酢酸アンモニウム pH4.43、B=90%アセトニトリル、10%A、254nmのインライン吸光度検出)を使用して、逆相HPLCカラムにおいて分析した際、そのようにして得られた固体生成物は、9.92分の保持時間を有し、75%の純度であり、残留材料の大部分は未反応のドキソルビシンから構成されていた。生成物は、エレクトロスプレイ質量スペクトルにおいて、m/e 696(M−H)、およびm/e 732(M+Cl)でピークを示し、生成物の同一性を表した。[本明細書で使用されるヒドラジド試薬を、6−ブロモヘキサン酸(2g)から、まず、DMSO中のアジ化ナトリウム(1g)と、50℃で2時間反応させ、次いで、抽出物を水および酢酸エチルで抽出することによる、3つのステップで、調製をした。酢酸エチル抽出物を、1N HCl溶液、塩水で順次洗浄し、乾燥させた。溶媒除去後、生成物を、ジクロロメタン(50mL)中で再溶解し、2gのEDC(10mmol)および1.4g(10mmol)のBOC−ヒドラジドと、室温で1時間反応させた。抽出処理を1N HCl、NaHCO飽和水溶液、および塩水で行い、次いで、乾燥させ、溶媒除去を10mLの1:1のTFA−CHClを使用して、所要の生成物を得、これをTFA媒介BOC脱保護した。本物質を誘導体化ドキソルビシンのために使用した。]
【0079】
この部分的に精製された物質を、次のように、アセチレン含有デキストランに連結するために使用した。アセチレン添加されたデキストラン(3.35mMの0.1mL)を、酸開裂可能なヒドラゾン、0.05モル当量の硫酸銅(ドキソルビシンアジドに対して)、および0.5モル当量のアスコルビン酸ナトリウム(ドキソルビシンアジドに対して)を組み込み、2mg(1.44μmol、デキストランに関して57倍のモル過剰)のドキソルビシン−アジドと反応させ、室温で一晩撹拌した。反応pHを約6.7で維持した。生成物を、10K MWCOの遠心フィルターを使用して、3連続UF−DFにより精製した。生成物を凍結乾燥し、13.5mgのドキソルビシン誘導体化されたデキストランを得た。ドキソルビシン置換は、デキストラン当たり8.2であることが判明した。
【0080】
スキーム2は、その反応を説明する。
スキーム2
【化8】

実施例5:SN38−20−O−グリシナト−PEG−アジドの調製
【0081】
0.5g(0.9mmol)の市販のO−(2−アジドエチル)−O’−(N−ジグリコリル−2−アミノエチル)ヘプタエチレングリコールを、1.2当量のDCC(0.186g)および1.2当量のN−ヒドロキシスクシンイミド(0.103g)およびジクロロメタン(10mL)中の触媒量のDMAP(0.003g)により、周囲温度で30分間、活性化した。これに、10mLのジクロロメタン中0.42g(0.76mmol)のSN38−20−O−グリシン酸塩およびDIEA(0.145mL、1.1当量)の溶液を加えた。30分間、撹拌した後、生成物を、CHCl−MeOH勾配溶離を使用して、シリカゲル上(230−400メッシュ)でフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。油状生成物(0.74g、収率98%)は、実施例4に記載のHPLC条件下で、9.86分のHPLC保持時間を有した。生成物をエレクトロスプレイ質量スペクトルにより特性化した。m/e 986でM+H、m/e 1008でM+Na、負イオン形態において、m/e 985でM−H。C456417(M+H)に対する計算値:986.4360、実測値:986.4361。
【0082】
スキーム3は、その合成を示す。
スキーム3
【化9】

実施例6:N−PEG−PhC−LyS(MMT)−PABOCO−20−O−SN38−10−O−BOCの調製
【0083】
0.527g(0.95mmol)のO−(2−アジドエチル)−O’−(N−ジグリコリル−2−アミノエチル)ヘプタエチレングリコールを、周囲温度で30分間、1.1当量のDCC(0.182g)および1.2当量のN−ヒドロキシスクシンイミド(0.119g)およびジクロロメタン(20mL)中の触媒量のDMAP(0.005g)で活性化した。本混合物に、既知のPhe−Lys(MMT)−PABOH(0.58g、0.865mmol)(MMTは、モノメトキシトリチルを表し、PABOHは、p−アミノベンジルアルコール部分である)、およびDIEA(0.158mL、1.5当量)を加えた。さらに1時間撹拌し、生成物をフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。収率:84%、質量スペクトル:M+H:m/e 1207。本材料を1当量のBOC−SN38−20−O−クロロギ酸エステルに結合した。[後者は、それ自体は精製することなく、BOC−SN38、ジクロロメタン中のトリホスゲン(0.4当量)、およびDMAP(3.2当量)から調製した。]。フラッシュクロマトグラフィーにより精製した後、表題生成物を収率60〜80%で得た。M+H:計算値1725.7981、実測値:1725.7953。
【0084】
スキーム4は、その調製を示す。
スキーム4
【化10】

実施例7:アジド−PEG−Phe−LysC(MMT)−PABOCO−20−O−グリシナトSN38の調製
【0085】
実施例10からの中間体アジド−PEG−Phe−Lys(MMT)−PABOH(0.27g、0.22mmol)を、周囲温度で3日間、ジクロロメタン(10mL)中のビス(ニトロフェニル)炭酸塩(0.204g、3当量)およびDIEA(1当量)で活性化した。フラッシュクロマトグラフィーにより、純粋な活性化した生成物(収率:69%)、C719019に対するM+H計算値:1372.6347、実測値:1372.6347を得た。活性化した炭酸塩生成物(0.08g、0.058mmol)を、DMF(1mL)およびDIEA(0.025mL、2.5当量)中のSN38−20−O−グリシナト(0.028g、0.058mmol)に結合した。4時間撹拌した後、溶媒を除去し、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。収率:0.052g(54%)。C891081122に対するM+H計算値:1682.7665、実測値:1682.7682。
【0086】
スキーム5は、その反応を説明する。
スキーム5
【化11】

実施例8:N−BOC−2,2’−(エチレンジオキシ)ジエチルアミン、次いで、BOC脱保護を伴うスクシンイミジル4−マレイミドメチル−シクロヘキサンカルボン酸塩(SMCC)の誘導体化
【0087】
SMCC(0.334g)、一保護されたジアミン試薬(0.248g)、およびDIEA(0.17mL)をジクロロメタン(20mL)中で溶解し、周囲温度で20分間撹拌した。生成物をフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、TFA(2mL)およびアニソール(0.5mL)と、さらに2時間反応させ、最終生成物を、TFAおよびアニソールを除去した後、単離した。対応する塩酸塩をHCl中に溶解し、HClを蒸発によって取り除くことにより調製した。質量スペクトル:M+H m/e 368。工程をスキーム6に図式で示す。
スキーム6
【化12】

実施例9:実施例8の生成物による実施例4のアセチレン含有デキストランの誘導体化
【0088】
10mLの水中のアセチレン−デキストラン(40KD MW、0.425g)の水溶液に、実施例8の生成物(0.085g、デキストランに対して20当量)およびEDC(0.0406g、20当量)を加え、1時間撹拌した。10kd MW COろ過機を使用して、限外ろ過膜分離法により精製した。デキストランに対するアンスロン分析は、デキストラン濃度が28.6mg/mLであることを示した。過剰の2メルカプトエタノールを使用して、Ellman分析による過剰な未使用の2−MEを測定する、逆Ellman分析により、5.4のマレイミドがデキストラン上で置換されたという値を得た。スキーム7は、その反応を表す。
スキーム7
【化13】

実施例10:実施例5または実施例6または実施例7のSN38−20−O−グリシナト−PEG−アジドの生成物と、デキストラン−アセチレン(50−60)−マレイミド(5.4)のクリック化学連結
【0089】
実施例9のデキストラン誘導体溶液の28.6mg/mLのうちの10mLを、10倍過剰の硫酸銅における、硫酸銅およびアスコルビン酸ナトリウムの触媒量の存在下で、実施例5(70当量)に特定されたSN38誘導体の0.42M DMSO溶液で反応した。DMSO濃度は、20%v/vであった。若干濁った溶液を4時間撹拌した。生成物を、0.2M水性のEDTAを使用して、限外ろ過膜分離法により精製し、次いで、ゲルろ過した。生成物をアンスロン分析(10.74mg/mL)により特性化し、SN38濃度を、366nmの吸光度および標準曲線との相関により決定した。SN38モル置換が、36.6であると計算された。未除去SN38遊離濃度は、HPLCにより5%であると推定された。実施例5のアジド−SN38を使用する、反応生成物は、下のスキーム8に説明される。
スキーム8
【化14】

【0090】
類似の方法において、実施例9のデキストラン誘導体は、実施例6または7のアジド−SN38誘導体と反応し、対応するデキストラン共役体を得た。これらの場合において、BOCおよびMMT保護基は、その後、2N塩酸での処置により、またはトリフルオロ酢酸を伴う短期間の処置(<5分)により除去された。また代替的に、保護基を、まず除去し、それから、実施例9のデキストラン誘導体に連結するクリック化学を行った。
実施例11:実施例10の任意のデキストラン誘導体の、認識部分を抱合するチオール含有材料との連結
【0091】
反応は、75mM酢酸ナトリウム−1mM EDTAにおいて、pH6.5で、1時間、実施例10のマレイミド付加のデキストランと、5.4当量の認識部分を抱合するチオール含有のペプチドとを連結することにより行われる。事前標的化のために、この点において、原型的ペプチドは、Ac−Cys−(AA)−LyS(HSG)−NHであり、AAは、アミノ酸であり、nは、1〜20、好ましくは、1〜3の整数である。「AA」で表されるアミノ酸のうちの1つは、リシン側鎖アミノ基に置換されるHSGを有するリシンであり得、それにより、ペプチドがビス−HSG含有ペプチドにされる。N末端システインの置換は、金属結合アッセイにより、ポリマーに付着するペプチドの数を決定するため、アシルの代わりに、ベンジル−DTPA等のキレート剤であり得る。DNL連結のために、ペプチドは、例えば、第0051段落に説明される、システイン含有のアンカードメイン(「AD」)ペプチドである。第0014段落に記載の他の認識部分はまた、チオール基を所有する同一の適切な事前の誘導体化後の反応において有用である。生成物を、非EDTA緩衝液を使用して、限外ろ過膜分離法、それから、遠心サイズ排除カラムクロマトグラフィーにより精製する。金属キレート剤をさらに含有するHSG抱合ペプチドを使用して、金属結合分析により、デキストラン当たり2.5のキレート剤が含まれるという結果を得た。これは、デキストランの1モル当たり少なくとも2.5モルがチオール含有材料と反応するために接触可能であることを示唆する。In−111酢酸塩を有する試験標識化を行い、材料をサイズ排除クロマトグラフィーにより精製する。放射性標識物質のHPLC分析、ならびに、抗HSG抗体(マウス679)と複合化された物質のHPLC分析は、In−111−デキストランによるSE HPLCピークから、より高いMWのデキストランによるピークへのシフトにより明らかであるように、完全複合化、すなわち、679抗体複合体を示す。非標識化材料もまた、デキストラン誘導体によって、広範なサイズ排除HPLCピークが、比較的より急激かつ高速な溶離ピークに変化し、マウス679抗体と複合化することが示されるため、マウス679抗体との複合化を表す。HSG含有ペプチドに対する共役をスキーム9に示す。
スキーム9
【化15】

実施例12:ポリグルタミン酸の誘導体化
【0092】
ポリ−L−グルタミン酸(PG)をEDCおよびプロパルギルアミンと反応させる。生成物である、アセチレン添加されたPGをその後、限外ろ過膜分離法を反復することにより精製する。アセチレン量は、非誘導体化カルボン酸基の逆滴定により推定される。アセチレン付加のPGは、実施例8のマレイミド含有アミノ化合物を用いて、PGのCOOH基に対するEDC媒介連結、次いで、実施例3もしくは4のアジド誘導体化されたドキソルビシン、または実施例5、6、もしくは7のアジド誘導体化されたSN−38を使用して、アセチレンアジド連結で誘導体化することにより、順次誘導体化される。それぞれの生成物を限外ろ過膜分離法により精製する。アジド剤が実施例6または7から成る場合、BOCおよびMMT基のさらなる脱保護はまた、第0084段落に記載されるように、塩酸またはトリフルオロ酢酸を用いて行われる。最終的に、当該物質は、実施例11に記載されるように、チオール含有認識部分で誘導体化される。750〜5000、3000〜15,000、15,000〜50,000、および50,000〜100,000の範囲にある分子量を有するPGをこの状況で使用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合体であって、
(a)1つ以上の治療薬部分の複製、または二官能性治療薬部分に化学選択的に連結可能であるか、または治療薬部分と非共有的に複合化できる官能基を含む官能化ポリマーと、
(b)ポリマー分子当たり1から10部分の範囲の認識構造部分と、
を含む、複合体。
【請求項2】
前記ポリマーは、それぞれ異なるMWサイズのデキストラン、ポリグルタミン酸、およびデンドリマーより選択される、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記ポリマーはデキストランである、請求項2に記載の複合体。
【請求項4】
前記認識部分は、例えば、HSGまたはDTPA等の1つまたは2つのハプテン分子を含有するペプチド、葉酸、ソマトスタチン、VIP、ビオチン、アンチセンスオリゴヌクリド、および「ドックアンドロック」(DNL)方法の「AD」ペプチドから成る群より選択される、請求項1に記載の複合体。
【請求項5】
前記治療薬部分は、化学療法薬、ビンカアルカロイド、アントラサイクリン、エピドフィロトキシン、タキサン、代謝拮抗剤、アルキル化剤、抗生物質、Cox−2阻害剤、抗有糸分裂剤、抗血管形成活性剤、アポトーシス促進剤、ドキソルビシン、メトトレキサート、タキソール、カンプトテシン、ナイトロジェンマスタード、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、トリアゼン、葉酸類似体、ピリミジン類似体、プリン類似体、白金配位複合体、ホルモン、毒素、リシン、アブリン、リボヌクレアーゼ(RNase)、DNase I、ブドウ球菌エンテロトキシン−A、ヤマゴボウ抗菌タンパク質、ゲロニン、ジフテリン毒素、緑膿菌外毒素、および緑膿菌内毒素から成る群より選択される、請求項1に記載の複合体。
【請求項6】
前記官能基は、1つ以上のアセチレン(またはアジド)、ヒドラジド、シクロデキストリン、ビニルスルホン、マレイミド、チオール、ブロモアセトアミド、ヨードアセトアミド、イソチオシアネート、および活性カルボキシル基より選択される、請求項1に記載の複合体。
【請求項7】
前記官能基はアセチレンまたはアジドであり、連結は、アジドまたはアセチレンで誘導体化された薬剤を用いて行われる、請求項6に記載の複合体。
【請求項8】
前記官能基はシクロデキストリンであり、前記治療薬部分は、非共有ホストゲスト複合化によって連結される、請求項6に記載の複合体。
【請求項9】
前記化学療法部分は、単一または複数の薬剤型から生じ得る、請求項1に記載の複合体。
【請求項10】
前記認識部分は、DNL方法の「AD」ペプチドであり、前記DNLアセンブリは、前記ポリマーへの薬剤または治療薬部分の付着前または後のいずれかに行われる、請求項4に記載の複合体。
【請求項11】
前記薬剤を前記ポリマーに連結するスペーサは、細胞内で開裂可能な結合を含有する、請求項1に記載の複合体。
【請求項12】
前記開裂可能結合はヒドラゾン、カテプシン−B−開裂可能ペプチド、ジスルフィド、またはエステラーゼによって開裂可能なエステル結合である、請求項11に記載の複合体。
【請求項13】
前記認識部分は、二重または多特異性抗体のアームのうちの1つに特異的であり、前記抗体の1つ以上の他のアームは、ムリン化、キメラ化、霊長類化、ヒト化、またはヒト単クローン抗体に由来する疾病標的MAbであり、前記抗体は、無傷フラグメント(Fab、Fab′、F(ab)、F(ab′))、またはサブフラグメント(一本鎖組成物)形態である、請求項1に記載の複合体。
【請求項14】
前記多特異性MAbは、LL1、LL2、hA20、1F5、L243、RS7、PAM−4、MN−14、MN−15、Mu−9、L19、G250、J591、CC49、およびImmu31から成る群より選択される、1つ以上の抗体を含む、二重特異性および/または二価抗体組成物である、請求項13に記載の複合体。
【請求項15】
前記Mabは、癌または悪性細胞、感染性生物、自己免疫疾病、心血管疾病、または神経疾病に関連する抗原または抗原のエピトープと反応する、請求項13に記載の複合体。
【請求項16】
前記癌細胞は、造血性腫瘍、癌腫、肉腫、黒色腫、またはグリア腫瘍に由来する細胞である、請求項15に記載の複合体。
【請求項17】
前記MAbは、B−細胞系統抗原、T−細胞抗原、骨髄系統抗原またはHLA−DR抗原に結合する、請求項13に記載の複合体。
【請求項18】
前記感染性生物は、バクテリア、ウィルス、真菌、微生物、または寄生生物である、請求項15に記載の複合体。
【請求項19】
前記感染性生物は、エイズを引き起こすヒト免疫不全ウィルス(HIV)、結核菌、アガラクシア連鎖球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、レジオネラニューモフィラ、化膿連鎖球菌、大腸菌、淋菌、髄膜炎菌、肺炎球菌sp.、血友病性B型インフルエンザ、梅毒トレポネーマ、ライム病スピロヘータ、ウエストナイルウィルス、緑膿菌、ハンセン菌、ウシ流産菌、狂犬病ウィルス、インフルエンザウィルス、サイトメガロウィルス、単純ヘルペスウィルスI型、単純ヘルペスウィルスII型、ヒト血清パルボ様ウィルス、呼吸器合胞体ウィルス、水痘帯状疱疹ウィルス、B型肝炎ウィルス、麻疹ウィルス、アデノウィルス、ヒトT−細胞白血病ウィルス、エプスタイン−バーウィルス、マウス白血病ウィルス、流行性耳下腺炎ウィルス、水疱性口内炎ウィルス、シンドビスウィルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウィルス、いぼウィルス、ブルータングウィルス、センダイウィルス、ネコ白血病ウィルス、レオウィルス、ポリオウィルス、シミアンウィルス40、マウス乳癌腫瘍ウィルス、デング熱ウィルス、風疹ウィルス、熱帯マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、トキソプラズマ原虫、ランゲルトリパノソーマ、クルーズトリパノソーマ、ローデシアトリパノソーマ、ブルセイトリパノソーマ、マンソン住吸血虫、日本住吸血虫、ウシバベシア、エルメリア・テネラ、回旋糸状虫、熱帯リーシュマニア、旋毛虫、タイレリア・パルバ、胞状条虫、羊条虫、無鉤条虫、単包条虫、メソ条虫亜鋼コルチ、マイコプラズマ関節炎、マイコプラズマ・ヒオリニス、マイコプラズマ・オラール、マイコプラズマ・アルギニーニ、アコレプラズマ・レイドロウィ、マイコプラズマ・サリバリウム、およびマイコプラズマ・ニューモニエから成る群より選択される、請求項18に記載の複合体。
【請求項20】
前記自己免疫疾病は、免疫媒介性血小板減少、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、多発性硬化症、シデナム舞踏病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、リウマチ熱、関節リウマチ、多腺性症候群、水疱性類天疱瘡、糖尿病、ヘノッホ−シェーンライン紫斑病、レンサ球菌感染後の腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、関節リウマチ、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎、多型性紅斑、IgA腎症、結節性多発性動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチュア症候群、閉塞性血栓血管炎、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺亢進、強皮症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、胆汁過多、尋常性天疱瘡、ヴェグナー肉芽腫症、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄癆、巨大細胞動脈炎/多筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎、線維化性肺胞炎、および若年性糖尿病から成る群より選択される、請求項15に記載の複合体。
【請求項21】
前記心血管疾病は、心筋梗塞、虚血性心疾患、動脈硬化性プラーク、フィブリン塊、塞栓、またはそれらの組み合わせを含む、請求項15に記載の複合体。
【請求項22】
前記抗体は、神経疾患と関連する抗原を特異的に結合し、前記抗原は、アミロイドまたはβ−アミロイドを含む、請求項15に記載の複合体。
【請求項23】
前記疾病標的抗体は、CD74、CD22、上皮糖タンパク質−1、癌胎児性抗原(CEAまたはCD66e)、大腸特異的抗原−p、α−フェトプロテイン、CC49、前立腺特異的膜抗原、炭酸脱水酵素IX、HER−2/neu、EGFR(ErbB1)、ErbB2、ErbB3、ILGF、BrE3、CD19、CD20、CD21、CD23、CD33、CD45、CD74、CD80、VEGF、ED−Bフィブロネクチン、PlGF、他の腫瘍血管形成抗原、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、ガングリオシド、HCG、EGP−2、CD37、HLA−DR、CD30、Ia、A3、A33、Ep−CAM、KS−I、Le(y)、S100、PSA、テネイシン、葉酸受容体、トーマス−フリードリッヒ抗原、腫瘍壊死抗原、Ga733、IL−2、IL−6、T101、MAGE、遊走阻止因子(MIF)、L243によって結合される抗原、PAM4によって結合される抗原、CD66a(BGP)、CD66b(CGM6)、66CDc(NCA)、66CDd(CGM1)、TACおよびそれらの組み合わせから成る群より選択される抗原に結合する、請求項15に記載の複合体。
【請求項24】
前記抗体は、LL1、LL2、RFB4、hA20、1F5、L243、RS7、PAM−4、MN−14、MN−15、Mu−9、AFP−31、L19、G250、J591、CC49、L243、PAM4およびImmu31から成る群より選択される、請求項13に記載の複合体。
【請求項25】
認識部分の数は1である、請求項1に記載の複合体。

【公表番号】特表2010−516675(P2010−516675A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546389(P2009−546389)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/088308
【国際公開番号】WO2008/088658
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(504149971)イミューノメディクス、インコーポレイテッド (48)
【氏名又は名称原語表記】IMMUNOMEDICS, INC.
【Fターム(参考)】