説明

法面作業用ノズルホルダー

【課題】 傾斜面でのコンクリート吹付け作業時の作業者の体力的負担の軽減及び安全と、施工速度と施工品質の向上を図ることを目的とする。
【解決手段】 近似Y字状の背当て部1を形成し、該背当て部1の二又部上に肩掛けベルト2をV字状に配置し、肩掛けベルト2端にバックル3を設け、該バックル3には、一端を折り返してベルト挿通部4設けた胸前ベルト5の他端部をバックル3に係止する肩掛け部と、
近似Y字状の背当て部1の垂直部に、一端にバックル6を設けた取付ベルト7を複数本直角方向に配置し、背当て部1の下端部に環8を設けると共に、背当て部1の下端部ベルト押さえ9を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、法面作業者がコンクリートなどの吹付け作業時にノズル先端部を保持するノズルホルダーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
切り土や盛り土を施行した後に、雨水や地下浸透水による浸食や風等の自然風化作用による崩落等から法面の崩壊を防ぐために、法面保護工事を行っている。
法面保護工事には、草の種を吹付けて草の根によって法面の崩壊を防ぐ方法や、コンクリートやモルタルを吹付けて法面の崩壊を防ぐ方法などがある。
草の種や土・モルタル・コンクリートの吹付けは、ノズルマンと呼ばれる技能工が行っている。
ノズルマンの吹付け作業は、湿式吹付け機と空気圧縮機によって草の種や土・モルタル・コンクリートを、長さ数10メートルのホースを通してホース先端のノズルから法面に吹付けて、法面に草の種や土・モルタル・コンクリートの層を形成させる作業である。
特に、モルタルやコンクリートの吹付け作業は、打ち込みと締め固めを同時に行う作業でり、その施工の良否はノズルマンが重要な役割を果たしている。
つまり法面保護工事の品質は、一般のコンクリート構造物の施工と異なり、その最終工程を担うノズルマンの吹付け作業の技術に大きく依存している。
モルタル吹付け作業の品質を左右する締め固め不足・空洞の発生・リバウンドの巻き込みの3要素を発生させない様に、ノズルの向きやノズルと法面の距離やノズルの動かし方など、ノズルワークに的確な技術が要求されている。
【0003】
ノズルマンの吹付け作業は、図6に示すような方法で行っている。
上方に固縛された親ロープRが作業を行う法面に垂下され、該親ロープRには、安全器Sが嵌合されており、安全器Sに設けた連結ロープ先端のフックを傾斜面用安全帯Aの両端環に係止して作業者の転落を防止すると共に、姿勢の安定を図っている。
作業者は、ノズルNの先端から約2.5mの位置のホース部と安全帯の後部の環を小ロープで連結し、ホースを肩上または腋下を通して先端のホース部を片手または両手で保持しながら吹付けを行っている。
【0004】
この吹付け作業はかなりの重労働で、危険も伴い、高い技能も必要とされる。
ノズルマンは、急傾斜の法面で自身の姿勢を保ちながら、モルタルなどの吹出しの反力に抗して、重いホースの向きや位置を定めホース賛嘆を性格に動かさなければならないため、腕力・体力・径間が必要とされる。
また作業者は、ホースより手を離せば、ホースの固縛位置からホース先端までが長いため、圧縮空気の噴出しによりホース先端が暴れて危険である。
【0005】
よって、この法面での吹付け作業は、重労働であるため、作業者の体力的負担は大きく、また、吹付け圧力(コンクリート圧送圧力)が上げられず、施工速度と施工品質の向上が図れなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
法面の吹付け作業時の作業者の負担を軽減すると共に、余裕を持って正確なノズルワークが行えるようにすること。また、吹付け圧力を上げて、施工速度と施工品質の向上を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は、コンクリートを圧送するホース(ノズル)先端部をベルトで固定するノズルホルダーを開示し、ホース(ノズル)先端部をリュックサックのように背負える形として、簡単に装着でき背中に固定できるものである。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、リュックサックのように背負える形としたため簡単に装着できる。
また、ノズルホルダーで作業者の背中で半固定されるので、作業者の手などの体力的負担が軽減されると共に、先端部の向きを微調整する程度の操作で正確なノズルワークができ施工品質が向上する。
また、万が一ホースより手を離してしまってもホース先端部が短いので、ホース先端は上を向いた状態で保たれ暴れることがなく安全である。
【0009】
よって、ノズルマン未経験者にとっては辛い部分であったが、体力的負担が軽減されることにより、比較的作業がしやすくなり、初心者の方でも不安なく行えるようになった。
【0010】
また、ノズルホルダーにより、作業者の体力的負担軽減の効果が大きいため、以前よりコンクリート圧送圧力を上げることができ、施工速度と施工品質の向上を図ることができる。
従来の施工速度は、平均2.73立方メートル/時間でコンクリートを送っていたが、本願を使用することにより平均3.91立方メートル/時間となり、約1.43倍の施工速度となり、施工品質の向上と共に、工期の短縮となりコストダウンをも図ることができる。
【実施例】
【0011】
本願の実施例を詳記すると、
図1に示すように、近似Y字状の背当て部1を形成し、該背当て部1の二又部上に肩掛けベルト2をV字状に配置し、肩掛けベルト2端にバックル3を設け、該バックル3には、一端を折り返してベルト挿通部4を設けた胸前ベルト5の他端部をバックル3に係止する肩掛け部と、
近似Y字状の背当て部1の垂直部に、一端にバックル6を設けた取付ベルト7を複数本直角方向に配置し、背当て部1の下端部に環8を設けると共に、背当て部1の下端部にベルト押さえ9を設けたノズル取付部とから成る構造である。
【0012】
本願の背当て部1は、表裏メッシュ素材を用い、間にクッション材を入れたものであり、背中へのフィット感は良く、肩部の環には、安全器を連結し、垂直面やオーバーハングの面での作業において体力的負担を軽減させ、作業効率を向上させる。
【0013】
本願のノズルホルダーのバックル3,6は、鋼板を口形状に打ち抜き加工した二枚重ねしたものを用いる。これは、安価に提供できる利点がある。
図示したバックルの他にワンタッチ式のバックルを用いても同等の効果を有する。
【0014】
また、取付ベルト7に面ファスナーを設け、ホースを固定することも同等の効果を有する。
また、取付ベルト7の内周面に面ファスナーを設け、ホースの所定箇所に同じく面ファスナーを巻きつけ、ずれ防止を図ることもできる。
【0015】
本願ノズルホルダーを使用するには、図2のように、安全帯A(腰ベルトでもよい)を予めベルト挿通部4とベルト押さえ9とに挿通しておき、コンクリート圧送用ホース先端部寄りにノズルホルダーの垂直部に添わし、取付ベルト7を回してバックル6で三箇所固定する。
そして、ノズルホルダーの肩掛けベルト2を肩に掛けて安全帯Aを腰部に回してバックルで締付けを行い、胸前ベルト5の先端部を引いて作業者の身体に合わせるものである。(図3)
その後、傾斜面用安全帯を腰部に取り付けて図5の様に、法面作業を行うものである。
【0016】
図4は、ノズルホルダーに傾斜面用安全帯を直接取り付けた正面図であり、作業者の好みによって組み合わせは自由である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本願ノズルホルダーの正面図。
【図2】本願ノズルホルダーと安全帯を組み合わせたところの正面図。
【図3】本願ノズルホルダーにノズルを取付けた装着状態の正面図。
【図4】本願ノズルホルダーに傾斜面用ベルトを組み合わせた正面図。
【図5】本願ノズルホルダーを使用した作業状態図。
【図6】従来の作業状態図。
【符号の説明】
【0018】
1 背当て部
2 肩掛けベルト
3 バックル
4 ベルト挿通部
5 胸前ベルト
6 バックル
7 取付ベルト
8 環
9 ベルト押さえ
A 安全帯
N ノズル
R 親ロープ
S 安全器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近似Y字状の背当て部1を形成し、該背当て部1の二又部上に肩掛けベルト2をV字状に配置し、肩掛けベルト2端にバックル3を設け、該バックル3には、一端を折り返してベルト挿通部4を設けた胸前ベルト5の他端部をバックル3に係止する肩掛け部と、
近似Y字状の背当て部1の垂直部に、一端にバックル6を設けた取付ベルト7を複数本直角方向に配置し、背当て部1の下端部に環8を設けると共に、背当て部1の下端部にベルト押さえ9を設けたノズル取付部から成ることを特徴とする法面作業用ノズルホルダー。
【請求項2】
肩掛けベルト2のバックル3と取付ベルト7のバックル6をワンタッチ方式のバックルとしたことを特徴とする請求項1に記載の法面作業用ノズルホルダー。
【請求項3】
取付ベルト7に面ファスナーを縫着したことを特徴とする請求項1、2記載の法面作業用ノズルホルダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−24355(P2009−24355A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−186786(P2007−186786)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(000223687)藤井電工株式会社 (60)
【出願人】(507241942)
【Fターム(参考)】