説明

泡沫吐水装置

【課題】低流量段階では気泡混入率を高めた気泡混入水を吐出可能であり、高流量段階でも流速の高まりを抑制し、使用時の水跳ねや見た目の悪化等を防止する泡沫吐水装置を提供する。
【解決手段】本体部に流入した水を内部流路の下流側に向けて流速を大きくして噴射するオリフィス部と、空気を水に混入して気泡混入水とする気泡混入部300と、吐出口113から気泡混入水を整流させて吐出する整流部400とを備え、オリフィス部は内部流路を遮るように設け、複数の孔が形成された減圧板を有し、気泡混入部300は、複数の孔から噴射された水が、内部流路の中心方向に向かうよう下流側に向けて漏斗状に縮径した傾斜部320を有し、整流部400は、気泡混入水を整流するための整流格子を有し、環状の整流リブ411のうち、最も外径側に配設される環状の整流リブ411は、傾斜部320の斜面の延長線よりも内径側に環状の整流リブ411を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡混入水を吐出することが可能な泡沫吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シンクへの着水音を低減させたり、水跳ねを抑制したりするために、吐水中に気泡を混入させた気泡混入水を吐出する泡沫吐水装置が利用されてきた。また、近年では節水志向の高まりによって、吐水する水の流量が2L/min程度の低流量段階から気泡の混入率を高めることで、吐水の量感や流速を上げ、節水しつつも使用時の快適性を向上させるような泡沫吐水装置も提案されている(特許文献1および2)。
【0003】
特許文献1に記載の泡沫吐水装置は、洗浄水流入口と、気泡流吐出口の間で延在する流路の途上に空気混入機構と整流機構とを上流側よりこの順に備えた泡沫吐水口が、継手を介して水栓の先端に設けられる。空気混入機構は、気泡流吐出口と同心の円であり且つ気泡流吐出口よりも大径の円の周上に配設された複数の小孔を有し流路を塞いで配設された減圧板と、減圧板の下流の流路囲壁に形成された空気孔と、空気孔の下流に配設された逆流防止部を有し、整流機構は、逆流防止部の下流で漏斗状に縮径する流路の傾斜部と、傾斜部の下流端から気泡流吐出口へ向けて延在する気泡流吐出口と同心の流路の整流部と、傾斜部と整流部とを連結する流路のR部と、流路の整流部を塞いで配設された整流格子と、整流格子の下流で整流部に接続する整流路とを有し、減圧板より上流に、継手の流路断面積よりも小さな通水流路断面を有する絞り部を設けたことを特徴とする泡沫吐水装置である。
【0004】
特許文献2に記載の泡沫吐水口は、洗浄水流入口と、気泡流吐出口と、洗浄水流入口と気泡流吐出口の間で延在する洗浄水流路の途上に配設された空気混入機構と、空気混入機構の下流に配設された整流機構とを備え、空気混入機構は、複数の小孔が形成され洗浄水流路を塞いで配設された減圧板と、減圧板の下流の洗浄水流路囲壁に形成された空気孔と、減圧板の下流で下流へ向けて漏斗状に縮径する洗浄水流路のテーパ部とを有し、整流機構は、テーパ部に接続しテーパ部の下流端と気泡流吐出口との間で延在する洗浄水流路の整流部と、整流部に配設された整流格子とを有し、減圧板の小孔はテーパ部周壁へ差し向けられていることを特徴とする泡沫吐水口である。
【0005】
特許文献1に記載の泡沫吐水装置は、洗浄水が減圧板の小孔を通過する際、圧力エネルギーが運動エネルギーに変換され小孔からの噴流は流速を高め、この噴流が粘性により周囲の空気を巻き込むエジェクタ効果を空気混入に利用しており、前記複数の小孔から洗浄水を高速で吐出させることで、低流量段階から気泡の混入率を高めることを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−275969
【特許文献2】国際公開第01/068995号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
気泡混入水は、低流量段階においては、気泡の混入率を高めることで、シンクへの着水音を低減させたり、水跳ねを抑制したりするという基本的な目的を損なわずに、節水しながらも吐水の量感や流速を上げ、快適性を向上させることができる。したがって、特許文献1及び特許文献2に記載の泡沫吐水装置においては、低流量段階での気泡混入率を高めるような設計上の工夫がなされている。
【0008】
しかし、実際には、このような低流量段階だけではなく、高流量段階で使用する場合も考えられる。水流量が増え、減圧板の小孔からの噴流の流速が高まり過ぎると、気泡流吐出口からの吐水が縮流し、それにより気泡流吐出口から吐出される気泡混入水の流速も高まり、水跳ね等の問題を生じる他、見た目も悪化してしまう。特に、低流量段階における気泡混入率を高めるような設計上の工夫をすればするほど、高流量段階において、この現象も顕著に現れる。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、低流量段階では気泡混入率を高めた気泡混入水を吐出することが可能でありつつ、高流量段階でも流速の高まりを抑制し、使用時の水跳ねや見た目の悪化等の問題を防ぐことが可能な泡沫吐水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた本発明は、流入口から流入した水を気泡混入水として吐出口から吐出することができる泡沫吐水装置であって、流入口から吐出口に至るまでの内部流路が形成された本体部と、流入口から流入した水を内部流路の下流側に向けて流速を大きくして噴射するオリフィス部と、内部流路内に空気を導入する空気孔が形成され、空気孔から導入された空気をオリフィス部から噴射された水に混入して気泡混入水とする気泡混入部と、気泡混入部の下流に配設され、吐出口から気泡混入水を整流させて吐出する整流部と、を備え、オリフィス部は、内部流路を遮るように設けられ、複数の孔が形成された減圧板を有し、気泡混入部は、複数の孔から噴射された水が、内部流路の中心方向に向かうように、下流側に向けて漏斗状に縮径した傾斜部を有し、整流部は、気泡混入部で生成した気泡混入水を整流するための整流格子を有し、整流格子は、環状の整流リブと、放射状の整流リブと、を有し、環状の整流リブのうち、最も外径側に配設される環状の整流リブは、傾斜部の斜面の延長線よりも内径側に配設されたことを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、気泡混入部において、低流量段階でも効果的に細かい気泡を含む気泡混入水を生成することができるエジェクタ効果を利用して気泡混入水を生成する。そのため、シンクへの着水音を低減させたり、水跳ねを抑制したりするという基本的な目的を損なわずに、節水しながらも吐水の量感や流速を上げ、快適性を向上させることができる。
【0012】
この発明によれば、傾斜部は、気泡混入を効率的に行うために、複数の孔から噴射された水が、内部流路の中心方向に向かうように、下流側に向けて漏斗状に縮径している。したがって、低流量段階でも量感のある吐水が可能となり、気泡が混入していない吐水と比較して少ない水量で食器洗いや手洗いをすることができるため、節水に寄与できると共に水跳ねを抑制することもできる。
【0013】
また、環状の整流リブのうち、最も外径側に配設される環状の整流リブが、傾斜部の斜面の延長線より内径側に配設されたことによって、傾斜部を経て整流部の径内方向へ向かう流れに対向し、流れの抵抗となる。そのため、気泡混入水の流れを減速させつつ径外方向の吐出口へ誘導させることができる。したがって、高流量段階でも吐出口から吐出される気泡混入水の縮流を防ぐと共に、流速の高まりを抑制することができる。そのため、高流量段階での使用時において、水跳ねや見た目の悪化等の問題を防ぐことが可能となっている。
【0014】
さらに、吐出口の径を傾斜部の内径に比べて大きく設計するほど、径外方向の吐水口へ気泡混入水が供給されにくくなるため、吐水の縮流現象は発生しやすい。しかし、設計やデザイン上の都合によって、吐出口の径を傾斜部の内径に比べて大きくしなくてはならない場合も多い。したがって、この発明のように、傾斜部の斜面の延長線より内径側に、環状の整流リブのうち、最も外径側に配設された整流リブが配設されたことによって、流れを減速させつつ径外方向へ誘導すれば、高流量段階でも吐出口から吐出される気泡混入水の縮流を防ぐと共に、流速の高まりを抑制することができるため、水跳ねや見た目の悪化等の問題を防ぐ効果は大きい。
【0015】
上述したように、本発明によれば、低流量段階では気泡混入率を高めた気泡混入水を吐出することが可能でありつつ、高流量段階でも吐出される気泡混入水の縮流を防ぐと共に、流速の高まりを抑制し、使用時の水跳ねや見た目の悪化等の問題を防ぐことが可能な吐水装置を提供することができる。
【0016】
また、本発明に係る泡沫吐水装置において、整流格子は、環状の整流リブと、放射状の整流リブと、により区画化された複数の開口部を有し、最も外径側に配設される環状リブよりも径外方向に配設される複数の開口部は、径外方向に扁平状に形成されたことを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、最も外径側に配設される環状リブよりも径外方向に配設される複数の開口部が、径外方向に扁平状に形成されたことによって、径方向における流れの速度分布の均一化がより促進されるとともに、整流効果が高まり、より吐水の見た目が改善される。この作用により、気泡混入水が吐出口の内径側に偏って吐出する現象を抑制することができるため、高流量段階でも吐出口からの気泡混入水の縮流を防ぐと共に、流速の高まりをより抑制することができる。
【0018】
また、本発明に係る泡沫吐水装置において、最も外径側に配設される環状の整流リブより径外方向の開口比率は、径内方向の開口比率より大きくしたことを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、最も外径側に配設される環状の整流リブより径内方向の開口部の圧力損失を径外方向に比べて大きくし、気泡混入水が外径側の開口部に流れやすくすることによって、気泡混入水が吐出口の内径側に偏って吐出する現象を抑制することができるため、高流量段階でも吐出口からの気泡混入水の縮流を防ぐと共に、流速の高まりをより抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、低流量段階では気泡混入率を高めた気泡混入水を吐出することが可能でありつつ、高流量段階でも吐出される気泡混入水の縮流を防ぐと共に、流速の高まりを抑制することができる。そのため、水跳ねや見た目の悪化等の問題を防ぐことが可能な吐水装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態にかかる泡沫吐水装置を表す断面模式図である。
【図2】泡沫吐水の原理を説明するための断面模式図である。
【図3】本実施形態の気泡混入水の流れを表す断面模式図である。
【図4】本実施形態の気泡混入水の流れを表す断面模式図
【図5】本発明の泡沫吐水装置内における、水の流れの様子を説明するための断面模式図。
【図6】比較例の水の流れの様子を説明するための断面模式図である。
【図7】本発明の泡沫吐水装置の整流部の断面図である。
【図8】本発明の泡沫吐水装置の整流部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0023】
本発明の実施形態である吐水装置について図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる泡沫吐水装置を表す断面模式図である。
また、必要に応じて図2および図3も参照しながら説明する。
図2は、泡沫吐水の原理を説明するための断面模式図である。
図3および4は、本実施形態の気泡混入水の流れを表す断面模式図である。
なお、図3および4は、図2に表した領域Aを拡大して眺めた拡大模式図である。
【0024】
図1に表したように、本発明の泡沫吐水装置100は、流入口111および吐出口113を有する本体部110と、オリフィス部200と、気泡混入部300と、整流部400と、を備えている。オリフィス部200の上流側には、上絞径部150が設けられている。給水元から流入口111へ流入した水は、内部流路を通って気泡混入水となって吐出口113から吐出される。内部流路では、水は、上絞径部150と、オリフィス部200と、気泡混入部300と、整流部400と、をこの順に通水する。
【0025】
上絞径部150は、環状凸部151と鍔部153とを有し、環状凸部151は、鍔部153から上流側に突出するように形成されている。環状凸部151の中央を含む領域には、流入穴155が形成されている。流入口111から入った水は、上絞径部150に当たることで水圧が減衰され、流入穴155から下流側に流出される。流入穴155から下流側に流出した水は、オリフィス部200へと流入する。
【0026】
オリフィス部200は、上絞径部150の下流側に配置されており、減圧板210を有する。
【0027】
減圧板210は円形板状の部材である。減圧板210には、複数の孔211が円環を描くように、かつ上絞径部150の鍔部153によって塞がれないように形成されている。
【0028】
図2に表したように、オリフィス部200へと流入した水は、外周方向に広がる角度で、複数の孔211から下流の気泡混入部300へと噴射される。
【0029】
気泡混入部300は、オリフィス部200の下流側に配置されており、空気導入路310と、傾斜部320と、を有する。空気導入路310の端部には、空気導入路310に導かれた空気を内部流路内に導入する空気孔311が形成されている。
【0030】
傾斜部320は、下流側に向けて漏斗状に縮径した円筒状の部材である。図2に表したように、複数の孔211から噴射された水は、傾斜部320の上流側の面に衝突し、拡径した傾斜部320の壁面に沿って外径側に導かれる水と、内部流路の中心方向に向かうように導かれる水に分かれながら、内部流路全体へ均一に分散される。
【0031】
このとき、流入口111から水が流入したとき複数の孔211から噴射された水の作用によって、気泡混入部300内は負圧になるので、空気導入路310から内部流路内に空気が導かれる。
【0032】
図2に表したように、傾斜部320によって、内部流路全体へ均一に分散されるように導かれた水は、整流部400へ流れ込む。
【0033】
整流部400は、傾斜部320の下流側に配置されており、整流格子を有している。
【0034】
整流格子は、環状の整流リブと、放射状の整流リブと、により区画化された複数の開口部410を有する部材である。この整流格子が流れの抵抗になり、上流側から流れ込んできた水は減速されるため、整流部400の上流面側には、見かけ上、水が溜まり、気液界面が形成される。
【0035】
傾斜部320によって、内部流路全体へ均一に分散されるように導かれ、整流部400へ流れ込んできた水は、気液界面に突入する。このとき、空気導入路310から内部流路内に導かれた空気が、粘性によって水中に気泡として引き込まれ、気泡混入水が生成される。
【0036】
気泡混入部300および整流部400の上流面側によって生成された気泡混入水は、整流部400の整流格子によって整流され、吐出口113から吐出される。
【0037】
次に、効率の良い気泡混入と効率の悪い気泡混入について、図面を参照しつつ説明する。
図3および図4は、オリフィス部200から内部流路に流入した水が、整流部400へ流れ込むときの様子を模式的に表している。図3は、効率の良い気泡混入が行える本実施形態の気泡混入水の流れを表す断面模式図である。また、図4は、効率の悪い気泡混入となってしまう比較例の気泡混入水の流れを表す断面模式図である。
【0038】
本実施形態では、整流部400の上流面側全体に気液界面を形成することで、より効率的な空気混入を行うことができる。
【0039】
図3に表したように、複数の孔211から下流の気泡混入部300へと噴射された水は、傾斜部320の上流側の面に衝突し、内部流路全体へ均一に分散されるように導かれることが望ましい。
【0040】
図3は、複数の孔211から下流の気泡混入部300へと噴射された水が、傾斜部320の上流側の面に衝突し、内部流路全体へ均一に分散されて整流部400へ流れ込んでいるため、整流部400の上流面側全体に気液界面が形成される。
【0041】
整流部400の上流面側全体に気液界面が形成されると、空気導入路310から内部流路内に導かれた空気は、水と共に吐出口113から吐出される以外に流路がないため、
空気が水に混入せずに、分離したまま流出するのを防ぐことができる。
そのため、空気導入路310から内部流路内に導かれた空気は確実に水中に気泡として引き込まれ、効率の良い気泡混入を行うことができる。
【0042】
一方、図4に表したように、複数の孔211から下流の気泡混入部300へと噴射された水が、傾斜部320の上流側の面に衝突し、内部流路の内径側や外径側に偏ってしまうと効率の良い気泡混入は行えない。
【0043】
図4(a)は、複数の孔211から下流の気泡混入部300へと噴射された水が、傾斜部320の上流側の面に衝突し、内部流路の内径側に偏って整流部400へ流れ込んでいるため、整流部400の上流面側の内径側にしか気液界面が形成されない。
【0044】
整流部400の上流面側の内径側にしか気液界面が形成されないと、空気導入路310から内部流路内に導かれた空気は、気液界面が形成されていない外径側が流路になるため、水に混入せずに、分離したまま流出してしまう。
そのため、空気導入路310から内部流路内に導かれた空気の一部しか水中に引き込むことができないため、気泡混入の効率は悪くなってしまう。
【0045】
また、図4(b)は、複数の孔211から下流の気泡混入部300へと噴射された水が、傾斜部320の上流側の面に衝突し、内部流路の外径側に偏って整流部400へ流れ込んでいるため、整流部400の上流面側の外径側にしか気液界面が形成されない。
【0046】
整流部400の上流面側の外径側にしか気液界面が形成されないと、空気導入路310から内部流路内に導かれた空気は、気液界面が形成されていない上流面側の内径側が流路になるため、水に混入せずに、分離したまま流出してしまう。
そのため、空気導入路310から内部流路内に導かれた空気の一部しか水中に引き込むことができないため、気泡混入の効率は悪くなってしまう。
【0047】
次に、気泡混入水の縮流の発生と流速の高まりについて、図面を参照しつつ説明する。
図3および図4は、オリフィス部200から内部流路に流入した水が、整流部400へ流れ込むときの様子を模式的に表している。
図3は、気泡混入水の縮流の発生と流速の高まりを抑制できる本実施形態の気泡混入水の流れを表す断面模式図である。
また、図4は、気泡混入水の縮流の発生と流速の高まりが起こってしまう比較例の気泡混入水の流れを表す断面模式図である。
【0048】
図3に表したように、複数の孔211から下流の気泡混入部300へと噴射された水は、傾斜部320の上流側の面に衝突し、内部流路全体へ均一に分散されるように導かれることが望ましい。
【0049】
図3は、複数の孔211から下流の気泡混入部300へと噴射された水が、傾斜部320の上流側の面に衝突し、内部流路全体へ均一に分散されて整流部400へ流れ込んでいるため、整流部400の上流面側全体に気液界面が形成される。
【0050】
整流部400の上流面側全体に気液界面が形成されると、生成された気泡混入水は吐出口113全面から吐出されるため、吐水の縮流や流速の高まりが発生することがない。そのため、水跳ねや見た目の悪化等の問題を防ぐことが可能な吐水装置を提供することができる。
【0051】
一方、図4(a)に表したように、複数の孔211から下流の気泡混入部300へと噴射された水が、内部流路の内径側に偏ってしまうと吐水の縮流や流速の高まりを抑制することができない。
【0052】
図4(a)は、複数の孔211から下流の気泡混入部300へと噴射された水が、傾斜部320の上流側の面に衝突し、内部流路の内径側に偏って整流部400へ流れ込んでいるため、整流部400の上流面側の内径側にしか気液界面が形成されない。
【0053】
整流部400の上流面側の内径側にしか気液界面が形成されないと、生成された気泡混入水は吐出口113全面から吐出されないため、吐出口全面から吐出される場合に比べ、効率の良い気泡混入水の生成が行えない。さらに、高流量段階では、吐水の縮流や流速の高まりが発生しやすくなってしまう。そのため、水跳ねや見た目の悪化等の問題が出てきてしまう。
【0054】
また、図4(b)に表したように、複数の孔211から下流の気泡混入部300へと噴射された水が、内部流路の外径側に偏ってしまうと吐水の流速の高まりを抑制することができない。
【0055】
図4(b)は、複数の孔211から下流の気泡混入部300へと噴射された水が、傾斜部320の上流側の面に衝突し、内部流路の外径側に偏って整流部400へ流れ込んでいるため、整流部400の上流面側の外径側にしか気液界面が形成されない。
【0056】
整流部400の上流面側の外径側にしか気液界面が形成されないと、生成された気泡混入水は吐出口113全面から吐出されないため、吐出口全面から吐出される場合に比べ、効率の良い気泡混入水の生成が行えない。さらに、高流量段階では、吐出口全面から吐出される場合に比べ、吐水の流速の高まりが発生しやすくなってしまう。そのため、水跳ねや見た目の悪化等の問題が出てきてしまう。
【0057】
本実施形態では、整流部のリブの設け方により、整流部400の上流面側全体に気液界面が形成されやすくし、図3に表したような、より効率的な空気混入が行えると共に、気泡混入水の縮流や流速の高まりの発生を抑制できるようにした。
【0058】
図5は、本発明の泡沫吐水装置内における、水の流れの様子を説明するための断面模式図である。また、図6は、比較例の水の流れの様子を説明するための断面模式図である。また、図7および8は、本発明の泡沫吐水装置の整流部の断面図である。
【0059】
本実施形態では、図5(a)に表したように、気泡混入部300が有する傾斜部320の斜面の延長線よりも内径側に、環状の整流リブ411が配設されている。これにより、環状の整流リブ411が、傾斜部320によって流路の中心方向に向かうように導かれた水の流れの抵抗となり、気泡混入水の流れを減速させることができる。そのため、整流部400の上流面側全体に気液界面が形成されやすくなる。したがって、高流量段階でも、吐出される気泡混入水の縮流を防ぐと共に、流速の高まりを抑制することができる。
【0060】
また、流路の中心方向に向かうように導かれた水の流れを減速させることで、整流部400の上流面側全体に気液界面を形成しやすくすることができるため、より効率的な空気混入を行うことができる。
【0061】
さらに、傾斜部320の斜面の延長線よりも外径側には、環状の整流リブ411は配設されていない。そのため、環状の整流リブ411は、傾斜部320によって内部流路の中心方向に向かうように導かれた水の流れを、内部流路の外径側へ方向付けることができる。その結果、整流部400の上流面側全体に気液界面が形成されやすくなる。
したがって、高流量段階でも吐出される気泡混入水の縮流を防ぐと共に、流速の高まりを抑制することができる。
【0062】
環状の整流リブ411は、完全な環状でなく、断片的に配設されていてもよい。
【0063】
また、図5(b)には、本発明に係る別の実施形態の一つであり、整流部400に向かって拡径している傾斜部320を有さない例を示している。
【0064】
一方、図6(a)、(b)に表したように、気泡混入部300が有する傾斜部320の斜面の延長線よりも外径側に、環状の整流リブ411が配設されていると、傾斜部320によって流路の中心方向に向かうように導かれた水の流れは、環状の整流リブ411が流れの抵抗とならないので、そのまま減速することなく吐水される。
【0065】
また、内部流路の外径側へ方向付けられることもないため、整流部400の上流面側全体に気液界面が形成されにくくなる。したがって、吐出される気泡混入水の縮流や流速の高まりが発生しやすくなってしまう。
【0066】
本実施形態では、整流部400において、開口部410が径方向に扁平状になるように、放射状の整流リブ413が配設されている。これにより、径方向における流れの速度分布の均一化をより促進させることができる。この作用により、吐出口113における水量の偏りが抑制されるため、気泡混入水が吐出口113の内径側に偏って吐出する現象を防ぐことができる。そのため、高流量段階でも吐出口113からの気泡混入水の縮流を防ぐと共に、流速の高まりを抑制することができる。
【0067】
また、径方向における流れの速度分布の均一化をより促進させることで、整流部400の上流面側全体に気液界面を形成することができるため、より効率的な空気混入を行うことができる。
【0068】
さらに、放射状の整流リブ413は、径方向における流れの速度分布の均一化をより促進させることができるため、吐水の揺れを抑制することができる。
【0069】
本実施形態では、図7に表したように、整流部400において、整流格子で区画化された開口部410は、整流部400の環状の整流リブ411のうち、最も外径側の整流リブの径内方向よりも径外方向の開口比率が大きくなるように、環状の整流リブ411および放射状の整流リブ413が配設されている。これにより、整流部400内径側への集中しがちな水の流入を抑制し、外径側への水の流入を促進されるため、高流量段階でも吐出口113からの気泡混入水の縮流を防ぐことができる。
【0070】
また、整流部400内径側への集中しがちな水の流入を抑制し、外径側への水の流入を促進することで、整流部400の上流面側全体に気液界面を形成することができるため、より効率的な空気混入を行うことができる。
【0071】
さらに、整流部400内径側への集中しがちな水の流入を抑制し、外径側への水の流入を促進することで、径方向における流れの速度分布の均一化作用をもたらすので、吐水の揺れを抑制することができる。
【0072】
図8に表したように、環状の整流リブ411のうち、最も外径側の整流リブの径内方向の開口比率が、径外方向の開口比率よりも大きくなるように、整流格子は、複数の環状の整流リブ411を備えたものであってもよい。
【0073】
これまで、本発明の実施の形態について説明してきた。本発明はこれらの形態に限定されるものではなく、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されず、適宜変更することが可能である。また、前述した実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができるため、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0074】
100…泡沫吐水装置
110…本体部
111…流入口
113…吐出口
150…上絞径部
151…環状凸部
153…鍔部
155…流入穴
200…オリフィス部
210…減圧板
211…複数の孔
300…気泡混入部
310…空気導入路
311…空気孔
320…傾斜部
400…整流部
410…開口部
411…環状の整流リブ
413…放射状の整流リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口から流入した水を気泡混入水として吐出口から吐出することができる泡沫吐水装置であって、
前記流入口から前記吐出口に至るまでの内部流路が形成された本体部と、
前記流入口から流入した水を前記内部流路の下流側に向けて流速を大きくして噴射するオリフィス部と、
前記内部流路内に空気を導入する空気孔が形成され、前記空気孔から導入された空気を前記オリフィス部から噴射された水に混入して前記気泡混入水とする気泡混入部と、
前記気泡混入部の下流に配設され、前記吐出口から前記気泡混入水を整流させて吐出する整流部と、
を備え、
前記オリフィス部は、前記内部流路を遮るように設けられ、複数の孔が形成された減圧板を有し、
前記気泡混入部は、前記複数の孔から噴射された水が、前記内部流路の中心方向に向かうように、下流側に向けて漏斗状に縮径した傾斜部を有し、
前記整流部は、前記気泡混入部で生成した気泡混入水を整流するための整流格子を有し、前記整流格子は、環状の整流リブと、放射状の整流リブと、を有し、前記環状の整流リブのうち、最も外径側に配設される環状の整流リブは、前記傾斜部の斜面の延長線よりも内径側に配設されたことを特徴とする泡沫吐水装置。
【請求項2】
前記整流格子は、前記環状の整流リブと、前記放射状の整流リブと、により区画化された複数の開口部を有し、前記最も外径側に配設される環状の整流リブよりも径外方向に配設される前記複数の開口部は、径方向に扁平状に形成されたことを特徴とする請求項1記載の泡沫吐水装置。
【請求項3】
前記最も外径側に配設される環状の整流リブより径外方向の開口比率は、径内方向の開口比率より大きくしたことを特徴とする請求項1記載の泡沫吐水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−72594(P2012−72594A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217993(P2010−217993)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】