説明

泡生成放出ユニット,内容物泡放出ポンプ機構および内容物泡放出ポンプ機構を備えたポンプ式製品

【課題】内容物泡放出ポンプ機構の生産工程における泡生成関連部材の管理の容易化,確実化を図るとともに、当該ポンプ機構全体の生産の効率化を図る。
【解決手段】スパウト25,混合通路部材22および下流側ステム部材21からなる一体物の内容物放出通路域の一部に泡生成作用部23,24を設け、この一体物に、エア貯留用空間域Cを画定し作動モード設定操作に応じてこの空間域Cのエアを泡生成作用部23,24の上流側に供給するためのエア用弁部材26,27を組み付けた泡生成放出ユニット20とした。内容物の泡生成から外部空間への放出までに関する構成要素を泡生成放出ユニット20としてネジキャップ12,ハウジング15や上流側ステム部材13などの(泡生成およびその後の放出経路に関与しない)内容物専用通路機構とは別のユニット単位で管理することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放出操作時の容器内容物と空気との混合作用に基づく泡生成機能を備えていないポンプ機構のネジキャップ部分などに外付け可能な泡生成放出ユニットに関する。
【0002】
適用対象の液状内容物としては、例えば石けん,消毒剤,化粧品,乳液、シェービングフォーム,ヘアスタイリングフォーム,洗剤,染毛剤,シャンプー,リンス,殺虫剤など、後述のように各種のものがある。
【背景技術】
【0003】
ポンプ容器の液状内容物に対する泡生成作用部をポンプ機構のネジキャップの外側部分に形成した内容物泡放出ポンプ機構は、下記の特許文献1などで開示されている。
【0004】
この内容物泡放出ポンプ機構は、
(11)容器本体の開口部に螺子結合するネジキャップ
(12)ネジキャップに取り付けられたシリンダ(ハウジング)の内部空間域を昇降する単一ステム
(13)単一ステムの下流側に取り付けられた内容物放出操作部材のスパウト(放出ノズルヘッド)
(14)この単一ステムの上側露出部分を取り囲む態様でネジキャップとスパウトとの間に設けられて、泡生成用エアを当該スパウトの内容物通路域に送り込む蛇腹ポンプ
などの各構成要素からなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭60−75268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この従来の内容物泡放出ポンプ機構の組立時には、上述の単一ステム,スパウト,蛇腹ポンプなどの各構成要素を個々に所定の手順でネジキャップに対して組み込んでいくことが必要となる。
【0007】
すなわち、単一ステム,スパウト,蛇腹ポンプなどの各構成要素をユニット化して、ネジキャップへの最終組立まではこのユニット単位で管理するといったことができない。
【0008】
そのため、内容物泡放出ポンプ機構が完成するまでの生産工程において各構成要素を効率的に管理することが難しい、という問題点を有していた。
【0009】
そこで、本発明では、
(21)内容物通路域を備えた内容物放出操作部材(スパウト)と結合して一体化されてハウジング内部を昇降するステムを、少なくともスパウト側の下流側ステム部材と、ハウジング側の上流側ステム部材との別部材からなる形にした上で、
(22)内容物放出操作部材およびこれと一体化した下流側ステム部材の全体内容物通路域の一部に泡生成作用部を設け、
(23)この泡生成作用部を有する一体物(内容物放出操作部材,下流側ステム部材)と、
当該一体物との間にエア供給用空間域を画定し、作動モード設定操作に応じて当該空間域のエアを泡生成作用部の上流側の内容物通路域部分に供給するためのエア用弁部材と、をユニット化し、
すなわち内容物の泡生成から外部空間への放出までに関する構成要素を、ネジキャップ,ハウジングや上流側ステム部材などの(泡生成およびその後の放出経路に関与しない)内容物専用通路機構とは別のユニット単位で管理し、
(24)これにより、内容物泡放出ポンプ機構の生産工程における泡生成関連部材の管理の容易化,確実化を図るとともに、当該ポンプ機構全体の生産の効率化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
(1)容器内容物およびエアの混合作用に基づく泡生成機能を備え、かつ、全体が単一物品化されたままネジキャップ(例えば後述のネジキャップ12)に組み込み可能な泡生成放出ユニット(例えば後述の泡生成放出ユニット20)であって、
内容物通路域を有する筒状の単一ステムを分けた態様の下流側ステム部材(例えば後述の下流側ステム部材21)と、
前記下流側ステム部材と一体化して内容物放出操作時に当該下流側ステム部材からの流入内容物がエアと混合されて放出口へと流出する下流側通路域(例えば後述の下流側通路域25c)、ならびに当該下流側ステム部材が取り付けられる内側環状壁部(例えば後述の混合通路部材22)およびその回りの外側環状壁部(例えば後述の外側環状壁部25a)に対応したエア貯留用空間域(例えば後述のエア貯留用空間域C)を有する放出操作部材(例えば後述のスパウト25,混合通路部材22)と、
前記下流側ステム部材および前記放出操作部材の一体物の通路域の一部に設けられた泡生成作用部(例えば後述の上流側メッシュ部材23,下流側メッシュ部材24)と、
前記下流側ステム部材,前記内側環状壁部および前記外側環状壁部のそれぞれに移動可能な形で保持されて前記エア貯留用空間域を画定し、かつ、前記下流側ステム部材との間の弁作用に基づいて、前記泡生成作用部の上流側の通路域部分にエアを供給する筒状のエア用弁部材(例えば後述のエア取込用弁部材26,エア供給用弁部材27)と、からなる、
ものを用いる。
(2)上記(1)において、
前記エア用弁部材は、
前記外側環状壁部の内周面および前記下流側ステム部材の下側外周面に、それぞれ移動可能な形で保持される筒状のエア入力用弁部材(例えば後述のエア取込用弁部材26)と、
当該エア入力用弁部材の内周面,前記内側環状壁部の内周面および前記下流側ステム部材の上側外周面に、それぞれ移動可能な形で保持される筒状のエア出力用弁部材(例えば後述のエア供給用弁部材27)と、からなっている。
(3)上記(2)において、
前記エア入力用弁部材は、
エア流入用の孔部(例えば後述のエア流入用孔部26d)と、
前記エア出力用弁部材を保持する内周面部分に形成されたエア通過用溝状部(例えば後述のエア通過用溝状部26h)と、を有し、
前記下流側ステム部材は、
前記エア出力用弁部材との弁作用機能を備えた環状テーパ面(例えば後述の環状テーパ面21c)を有し、
前記内側環状壁部は、
前記下流側ステム部材と係合する内周面部分にエア流出用溝状部(例えば後述のエア流出用溝状部22a)を有している。
(4)上記(2),(3)において、
前記エア入力用弁部材は、
放出操作解除時の復帰方向への移動範囲を規制するための、前記ネジキャップとの被係合部(例えば後述の突状部26g)を有している。
(5)上記(1)〜(4)において、
前記下流側ステム部材は、
前記単一ステムを分けた態様の上流側ステム部材(例えば後述の上流側ステム部材13)に対する係合部分を有している。
(6)上記(1)〜(5)にいずれかに記載の泡生成放出ユニットが前記ネジキャップに組み込まれ、その組込み状態で容器本体(例えば後述の容器本体11)に取り付けることができる内容物泡放出ポンプ機構であって、
前記ネジキャップと一体のハウジング(例えば後述のハウジング15)に、前記単一ステムを分けた態様の上流側ステム部材(例えば後述の上流側ステム部材13)が移動可能な形で設けられ、
前記上流側ステム部材は前記下流側ステム部材と係合している、
内容物泡放出ポンプ機構とする。
(7)上記(4)に記載の泡生成放出ユニットが前記ネジキャップに組み込まれ、その組込み状態で容器本体に取り付けることができる内容物泡放出ポンプ機構であって、
前記ネジキャップは、
前記被係合部に対する係合部(例えば後述の凹状部12b)を上面の環状起立部(例えば後述の環状起立部12a)に有している、
ものを用いる。
【0011】
本発明は、以上の構成からなる泡生成放出ユニット,内容物泡放出ポンプ機構および当該内容物泡放出ポンプ機構を備えたポンプ式製品を対象としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明はこのように、内容物泡放出ポンプ機構のステム部材を、ハウジング側の上流側ステム部材と放出操作部材側の下流側ステム部材との別部材に分けた上で、内容物の泡生成から外部空間への放出までに関する構成要素を、ネジキャップ,ハウジングや上流側ステム部材などの(泡生成およびその後の放出経路に関与しない)内容物専用通路機構とは別のユニット態様にしている。
【0013】
そのため、内容物泡放出ポンプ機構の生産工程における泡生成関連部材の管理の容易化,確実化を図るとともに、当該ポンプ機構全体の生産の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】泡生成放出ユニットを示す説明図である。
【図2】泡生成放出ユニットをネジキャップに組み込むときの初期段階を示す説明図である。
【図3】泡生成放出ユニットをネジキャップに組み込むときの最終段階を示す説明図である。
【図4】内容物泡放出ポンプ機構(を備えたポンプ式製品)の静止モードを示す説明図である。
【図5】内容物泡放出ポンプ機構(を備えたポンプ式製品)の作動モードを示す説明図である。
【図6】図5の作動モードに続くステム下死点状態を示す説明図である。
【図7】図6のステム下死点状態から静止モードへ復帰する際の、エア貯留用空間域Cおよび容器本体11へのエア流入(補充)状態を示す説明図である。
【図8】各種タイプの泡生成用メッシュ部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜図8を用いて本発明を実施するための形態を説明する。
【0016】
以上の図で用いるアルファベット付き参照番号の構成要素(例えば環状起立部12a)は原則として、当該参照番号の数字部分の構成要素(例えばネジキャップ12)の一部であることを示している。
【0017】
図2〜図7の容器側(容器本体およびネジキャップなど)の構成に関して、
11は後述の放出対象の各種液状内容物が収容された容器本体,
12は容器本体11に螺合態様で取り付けられたネジキャップ,
12aは当該ネジキャップの上面に形成された環状起立部,
12bは当該環状起立部の外周面上端部分の周方向に形成されたアンダーカット係合用の凹状部,
13はネジキャップ12と一体化された後述のハウジング15の内部空間域に上下動可能な形で配設され、コイルスプリングの弾性作用により上方向に付勢される上流側ステム部材,
14は上流側ステム部材を上方向に付勢するコイルスプリング,
15は次回の放出対象内容物を収容するハウジング,
16はハウジング15の内部に配設されて静止モードのときに閉状態となる吐出弁,
Aはハウジング15の内部空間域の、吐出弁16と、その上流側の周知の吸込弁(図示省略)との間に設定される内容物貯留用空間域,
をそれぞれ示している。
【0018】
また、図1〜図7の、ネジキャップ12にいわば外付けされる内容物の泡生成放出用ユニットの構成に関して、
20は後述の下流側ステム部材21〜エア供給用弁部材27の各構成要素からなる泡生成放出ユニット,
21は上流側ステム部材13の上端側外周面と嵌合して内容物通路部を有する筒状の下流側ステム部材,
21aは当該下流側ステム部材の上側からなる小径筒状部分,
21bは当該下流側ステム部材の下側からなる大径筒状部分,
21cは小径筒状部分21aと大径筒状部分21bとのいわばインタフェース域に相当する範囲の外周面に形成されてエア供給の弁作用を呈する環状テーパ面,
22は下流側ステム部材21の上端側外周面と嵌合して内容物と空気との混合作用を呈する筒状の混合通路部材,
22aは下流側ステム部材21と嵌合する内周面部分の上下方向に複数形成されたエア流出用溝状部,
22bは内容物およびエアの混合通路として作用する上側内部空間域,
22cは当該混合通路部材の下端から上方に続く大径の下側内周面,
23は混合通路部材22の上側内周面(上側内部空間域22b)に取り付けられて内容物の泡生成作用を呈する上流側メッシュ部材(図8参照),
24は混合通路部材22の上側内周面(上側内部空間域22b)に取り付けられて内容物の泡生成作用を呈する下流側メッシュ部材(図8参照),
25は混合通路部材22の上端側外周面と嵌合した作動モードの設定操作部材であって、上側内部空間域22bのメッシュ部材23,24を通過した後の泡内容物を外部空間域に放出するためのスパウト,
25aは当該スパウトの上下方向の外側環状壁部(環状垂下部),
25bは当該スパウトの上下方向の内側環状垂下部(=混合通路部材22に対する嵌合部分)の外周面に複数形成されて、後述のエア取込用弁部材26の泡生成放出ユニット20へのセット位置(最上位置)を定めるための上下方向のストッパーリブ,
25cはメッシュ部材23,24などの作用でエアと混合された内容物が通過する下流側通路域,
26は下流側ステム部材21の下側外周面およびスパウト25(外側環状壁部25a)の内周面にそれぞれ強く当接し、また後述のエア供給用弁部材27のスカート部27bに弱く当接し、かつ、ネジキャップ12の筒状起立部12aの上端部分に載った状態で保持されている筒状のエア取込用弁部材,
26aは外側環状壁部25aの内周面に対向する形の外側筒状部,
26bは環状起立部12aと大径筒状部分21bとの間の環状空間域に入り込む形の内側筒状部,
26cは外側筒状部26aと内側筒状部26bとの上端部分同士を連結する形の環状天井部,
26dは当該環状天井部の上下方向に複数形成されたエア流入用孔部,
26eは外側筒状部26aの上端側に形成されてスパウト25(外側筒状部25a)の内周面に強く当接する逆スカート部,
26fは外側筒状部26aの内周面の上下方向に複数形成されたエア流入用溝状部,
26gは外側筒状部26aの内周面下端部分の周方向に形成されたアンダーカット係合用の突状部,
26hは内側筒状部26bの下側の小径内周面の上下方向に複数形成されたエア通過用溝状部,
26jは当該小径内周面の下端部分に形成されて大径筒状部分21bの外周面に強く当接するスカート部,
27は混合通路部材22の下側内周面22cおよびエア取込用弁部材26の小径内周面部分(エア通過用溝状部26hが形成されている内周面部分)のそれぞれに当接した状態で、下流側ステム部材21の環状テーパ面21cとの弁作用を呈するエア供給用弁部材,
27aは下側内周面22cと当接してシール作用を呈する逆スカート部,
27bはエア取込用弁部材26の内側筒状部26bの小径内周面部分と当接するスカート部,
27cはスパウト25の押下げ操作にともなって環状テーパ面21cとの密接状態(閉状態)から離間状態に移行する環状の弁作用部,
Bは吐出弁16の下流側に設定されて、上流側ステム部材13,下流側ステム部材21,混合通路部材22およびスパウト25の各内部空間からなる内容物放出通路,
Cはスパウト25の外側環状壁部25a内部の、下流側ステム部材21(大径筒状部分21b,環状テーパ面21c),混合通路部材22,エア取込用弁部材26およびエア供給用弁部材27との間に、設定されるエア貯留用空間域,
をそれぞれ示している。
【0019】
また、図8の内容物泡生成用の各種メッシュに関して、
31は方形状メッシュ部,
32は大小円状メッシュ部,
33は蜂の巣状メッシュ部,
34は同一円状メッシュ部,
35はターゲット状メッシュ部,
をそれぞれ示している。
【0020】
ここで、容器本体11,ネジキャップ12,上流側ステム部材13,ハウジング15,下流側ステム部材21,混合通路部材22,上流側メッシュ部材23,下流側メッシュ部材24,スパウト25,エア取込用弁部材26,エア供給用弁部材27および各種メッシュ部31〜34はそれぞれ、ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどからなるプラスチック製のものである。
【0021】
コイルスプリング14は金属製またはプラスチック製のものであり、吐出弁16はゴム製,金属製またはプラスチック製のものである
【0022】
図示の内容物泡放出ポンプ機構の基本的特徴は、
(31)通常は単一部材からなるステムを、ハウジング側の上流側ステム部材13とスパウト側の下流側ステム部材21とに分割し、
(32)この下流側ステム部材21と、混合通路部材22,上流側メッシュ部材23,下流側メッシュ部材24,スパウト25,エア取込用弁部材26およびエア供給用弁部材27と、からなる泡生成放出ユニット20を生成した、
ことである。
【0023】
図1の泡生成放出ユニット20の組立手順は例えば、
(41)先ず上流側メッシュ部材23,下流側メッシュ部材24およびエア供給用弁部材27を混合通路部材22に取り付け、
(42)次にこの一体物の混合通路部材22をスパウト25の内側環状垂下部に嵌合させ、
(43)次にエア取込用弁部材26をスパウト25にその下側開口部から入れて、当該弁部材の上面内側部分がストッパーリブ25bに当たる状態に設定し、
(44)次に下流側ステム部材21をエア取込用弁部材26にその下側開口部から入れて、当該ステム部材が混合通路部材22の小径内周面部分と嵌合する状態に設定する。
【0024】
なお、泡生成放出ユニット20に組み込まれたエア取込用弁部材26は、
・その内側筒状部26bの小径内周面部分がエア供給用弁部材27のスカート部27bと当接し、
・その逆スカート部26eがスパウト25の外側環状壁部25aの内周面に強く当接し、
・そのスカート部26jが下流側ステム部材21の大径筒状部分21bの外周面に強く当接した、
状態になっている。
【0025】
エア取込用弁部材26は、これら当接相手のそれぞれとの摩擦作用により図1の状態に確実に保持される。
【0026】
そのため、泡生成放出ユニット20がネジキャップ12および上流側ステム部材13に取り付けられて最終的なポンプ機構となるまでの生産・管理工程において、エア取込用弁部材26が当該泡生成放出ユニットから外れてしまうようなことは生じにくい。
【0027】
図2および図3は、図1の泡生成放出ユニット20をネジキャップ側に取り付けるときの様子を示している。
【0028】
その手順は次のとおりである。
(51)先ず、当該ユニットをネジキャップ12の環状起立部12aの方に近づけて、下流側ステム部材21を上流側ステム部材13に嵌合させ(この段階のエア取込用弁部材26は図1の最上位置のまま)、
(52)次に、スパウト25を押下げて、これと一体のステム部材(上流側ステム部材13+下流側ステム部材21)をコイルスプリング14の弾性力に抗する形で下降させることにより、エア取込用弁部材26の突状部26gが環状起立部12aの凹状部12bの下方位置となるように設定し(この段階のエア取込用弁部材26も図1の最上位置のまま)、
(53)次に、スパウト25の押下げ操作を解除し、泡生成放出ユニット20および上流側ステム部材13がコイルスプリング14の弾性復帰作用で上昇することにより、エア取込用弁部材26の突状部26gが環状起立部12aの凹状部12bにアンダーカット係合し、かつ、泡生成放出ユニット20の、エア取込用弁部材26以外のスパウト25などのヘッド部が略上昇しきった状態の静止モードに設定される(図4参照)。
【0029】
このようにして、泡生成機能なしのポンプ容器のネジキャップ側に泡生成放出ユニット20が外付けされる。
【0030】
なお、上記(53)のスパウト25などの上昇動作のとき、ステム(上流側ステム部材13+下流側ステム部材21),混合通路部材22およびスパウト25の各部材は一体となって移動する。
【0031】
また、エア供給用弁部材27は、その弁作用部27cが下流側ステム部材21の環状テーパ面21cと当接した状態で、当該下流側ステム部材により押し上げられる。
【0032】
図4の内容物泡放出ポンプ機構の静止モードでは、上述したように、スパウト25などのヘッド部(スパウト25およびこれと一体の混合通路部材22,下流側ステム部材21,上流側ステム部材13)がコイルスプリング14の弾性作用により上方向に移動した状態になっている。
【0033】
この静止モードのとき、
(61)内容物放出通路Bは、吐出弁16の周知の閉弁作用によりハウジング15の内容物貯留用空間域Aから遮断され、
(62)エア貯留用空間域Cは、
下流側ステム部材21の環状テーパ面21cとエア供給用弁部材27の弁作用部27cとの密接作用により内容物放出通路Bから遮断され、かつ、
エア取込用弁部材26のエア流入用孔部と環状起立部12aの上端部分との離間作用により外部空間域と連通している。
【0034】
すなわち、閉空間状態の内容物貯留用空間域Aには次回の放出対象内容物が収容され、外部空間域と連通して内容物放出通路Bから遮断された状態の空気貯留用空間域Cには泡生成用の空気が収容されている。
【0035】
なお、これら放出対象内容物および空気の収容動作はそれぞれ、図7に示すように、直前の作動モード設定操作の解除にともなうヘッド部の静止モードへの復帰動作の際におこなわれる。
【0036】
図5に示すように、利用者のスパウト25に対する押圧操作により、静止モードの上記ヘッド部がコイルスプリング14に抗する形で押し下げられると、吐出弁16および空気供給弁(環状テーパ面21c+弁作用部27c)はそれぞれ放出状態(作動モード)に遷移する。
【0037】
図5の遷移過程では、当該ヘッド部が下動するのにともない内容物貯留用空間域Aの容積が小さくなってそこでの内容物圧力が大きくなるため、吐出弁16はそれまでの閉状態から開状態へと変化する。なお、周知の内容物吸込弁(図示省略)は閉状態を維持する。
【0038】
その結果、内容物貯留用空間域Aの内容物は、「上流側ステム部材13−下流側ステム部材21−混合通路部材22−スパウト25」の内容物放出通路Bを経て、外部空間域に放出される。
【0039】
また、エア取込用弁部材26が、その逆スカート部26eとスパウト25の外側環状壁部25aとの当接摩擦作用および、そのスカート部26jと下流側ステム部材21の大径筒状部分21bとの当接摩擦作用により、下方向に連動する。
【0040】
この下方向への移動により、エア取込用弁部材26のエア流入用孔部26dは環状起立部12aの上端部分と当接して閉状態となる。
【0041】
この閉状態となったエア貯留用空間域Cは、スパウト25の下動にともなって容積が小さくなり、そこでのエア圧力が大きくなる。
【0042】
そのため、エア供給用弁部材27が下流側ステム部材21および混合通路部材22に対して相対的に上昇して、当該弁部材の上向き環状段部が混合通路部材22の下端面に当接するまで移動し、空気供給弁(環状テーパ面21c+弁作用部27c)が開く。
【0043】
この空気供給弁が開くことにより、エア貯留用空間域Cの空気は「エア取込用弁部材26のエア通過用溝状部26h−環状テーパ面21cと弁作用部27cとの空間部分−混合通路部材22のエア流出用溝状部22a」を経て、内容物放出通路Bへと流入する。
【0044】
このように内容物放出通路Bには、スパウト25の押圧操作にともなって内容物貯留用空間域Aの内容物とエア貯留用空間域Cの空気とが流入する。
【0045】
内容物放出通路Bに流入した内容物および空気は、先ず混合された段階で泡立ち状態となり、上流側メッシュ部材23および下流側メッシュ部材24を通過することにより内容物の泡が細分化し、また均質化する。
【0046】
そして、この細分化,均質化された泡状態内容物がスパウト25の下流側通路域25cを経て外部空間へと放出される。
【0047】
図6は、図5の作動モードの終了段階を示している。
すなわち上記ヘッド部(スパウト25およびこれと一体の混合通路部材22,下流側ステム部材21,上流側ステム部材13,エア供給用弁部材27)が下死点まで移動した状態である。
【0048】
このとき、スパウト25のストッパーリブ25bの下端部分がエア取込用弁部材26の上面内側部分に当接した状態になっている。
【0049】
図6の作動モード終了段階の、
・エア供給用弁部材27と混合通路部材22,下流側ステム部材21との位置関係
・エア流入用孔部26dと環状起立部12aとの接離関係
はともに、図5のそれぞれと同じである。
【0050】
図7は、利用者がスパウト25の押圧操作を解除することによって生じる静止モードへの復帰状態を示している。
【0051】
スパウト25の押圧操作が解除されると、上記ヘッド部(スパウト25およびこれと一体の混合通路部材22,下流側ステム部材21,上流側ステム部材13)が、コイルスプリング14の弾性作用により上方向に移動する。
【0052】
また、エア供給用弁部材27は、空気供給弁(環状テーパ面21c+弁作用部27c)が当接したままの状態で、下流側ステム部材21によっていわば持上げられる。
【0053】
この押圧操作解除にともない、エア取込用弁部材26は、スパウト25の外側環状壁部25aの内周面との摩擦係合により上動し、その突状部26gが環状起立部12aの凹状部12bとアンダーカット係合する状態、すなわちそのエア流入用孔部26dがネジキャップ12の環状起立部12aから離間した状態に移行する。
【0054】
このようなヘッド部およびエア取込用弁部材26の上昇にともない、
(71)周知のごとく吐出弁16がそれまでの開状態から閉状態へと変化し、
(72)ハウジング15の内容物貯留用空間域Aの容積が増加して、当該空間域は容器本体11内部に対し負圧になるので、周知のごとく吸込弁(図示省略)がそれまでの閉状態から開状態へと変化し、その結果、容器本体11の内容物が、図示矢印で示すように当該吸込弁から内容物貯留用空間域Aに流入し、
(73)この内容物の流入に起因する容器本体25内部の負圧化を防止すべく、外気が、図示矢印で示すように環状起立部12aとエア供給用弁部材27との対向面部分の空間域を経て容器本体内部に流入し、
(74)また、空気貯留用空間域Cもその容積が増加して外部空間域に対し負圧になるので、外気が、図示矢印で示すようにエア取込用弁部材26のエア流入用孔部26dから当該空気貯留用空間域に流入する。
【0055】
そして周知のように、これらの内容物貯留用空間域Aへの内容物流入ならびに、容器本体11内部および空気貯留用空間域Cへの外気流入が終了して、図1の静止モードに復帰する。
【0056】
本発明が以上の実施形態に限定されないことは勿論であり、図1の泡生成放出ユニット20のエア取込用弁部材26の逆スカート部26eに対する保持部(突状部など)をスパウト25の外側環状壁部25aの内周面に設けるようにしてもよい。
【0057】
これは当該弁部材が、上流側ステム部材14へ取り付けられる前の当該ユニットから不用意に脱落するのを、外側環状壁部25aの内周面と逆スカート部26eの上端部との摩擦作用とともに防止するためである。この保持部の作用は勿論、泡生成放出ユニット20が図3の取付け最終段階から図4の静止モードへと移行する際には保持状態が解除される程度のものである。
【0058】
また、次のような構成態様からなる泡生成放出ユニットにしてもよい。
(81)作動モード設定操作部としてティルトタイプの回動部材を用いる。
(82)下流側ステム部材21の上側周面部分に、エア流出用溝状部22aに相当するエア供給用孔部をあける。
(83)下流側ステム部材21の外周面部分に、内容物放出通路Bへのエア流出用溝状部(≒エア流出用溝状部22a)を形成する。
(84)上流側メッシュ部材23および下流側メッシュ部材24を下流側ステム部材21の内容物放出通路Bに設ける。
【0059】
本発明が適用されるポンプ式製品としては、洗浄剤,清掃剤,制汗剤,冷却剤,筋肉消炎剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,染毛剤,育毛剤,化粧品,シェービングフォーム,食品,液滴状のもの(ビタミンなど),医薬品,医薬部外品,塗料,園芸用剤,忌避剤(殺虫剤),クリーナー,消臭剤,洗濯のり,ウレタンフォーム,消火器,接着剤,潤滑剤などの各種用途のものがある。
【0060】
容器本体に収容する内容物は、液状,クリーム状,ゲル状など種々の形態のものを用いることができ、内容物に配合される成分としては例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分,水などが挙げられる。
【0061】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,硫酸バリウム,セルロース,これらの混合物などを用いる。
【0062】
油成分としては、シリコーン油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油,パラフィン油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などを用いる。
【0063】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコール,グリセリン,1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【0064】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0065】
高分子化合物としては、メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼイン,ヒドロキシエチルセルロース,キサンタンガム,カルボキシビニルポリマーなどを用いる。
【0066】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤、ヒレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、酸化亜鉛などの制汗剤、カンフル,メントールなどの清涼剤、エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース,アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0067】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤,紫外線吸収剤,乳化剤,保湿剤,酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【符号の説明】
【0068】
(11〜16,Aは図2〜図7で使用)
11:容器本体
12:ネジキャップ
12a:環状起立部
12b:アンダーカット係合用の凹状部
13:上流側ステム部材
14:コイルスプリング
15:ハウジング
16:内容物の吐出弁
A:内容物貯留用空間域
【0069】
(20〜27c,B,Cは図1〜図7で使用)
20:泡生成放出ユニット
21:下流側ステム部材
21a:小径筒状部分
21b:大径筒状部分
21c:環状テーパ面
22:混合通路部材
22a:エア流出用溝状部
22b:上側内部空間域
22c:下側内周面
23:上流側メッシュ部材
24:下流側メッシュ部材
25:スパウト
25a:外側環状壁部
25b:ストッパーリブ
25c:下流側通路域
26:エア取込用弁部材
26a:外側筒状部
26b:内側筒状部
26c:環状天井部
26d:エア流入用孔部
26e:逆スカート部
26f:エア流入用溝状部
26g:アンダーカット係合用の突状部
26h:エア通過用溝状部
26j:スカート部
27:エア供給用弁部材
27a:逆スカート部
27b:スカート部
27c:環状の弁作用部
B:内容物放出通路
C:エア貯留用空間域
【0070】
(31〜35は図8のみで使用)
31:方形状メッシュ部
32:大小円状メッシュ部
33:蜂の巣状メッシュ部
34:同一円状メッシュ部
35:ターゲット状メッシュ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内容物およびエアの混合作用に基づく泡生成機能を備え、かつ、全体が単一物品化されたままネジキャップに組み込み可能な泡生成放出ユニットであって、
内容物通路域を有する筒状の単一ステムを分けた態様の下流側ステム部材と、
前記下流側ステム部材と一体化して内容物放出操作時に当該下流側ステム部材からの流入内容物がエアと混合されて放出口へと流出する下流側通路域、ならびに当該下流側ステム部材が取り付けられる内側環状壁部およびその回りの外側環状壁部に対応したエア貯留用空間域を有する放出操作部材と、
前記下流側ステム部材および前記放出操作部材の一体物の通路域の一部に設けられた泡生成作用部と、
前記下流側ステム部材,前記内側環状壁部および前記外側環状壁部のそれぞれに移動可能な形で保持されて前記エア貯留用空間域を画定し、かつ、前記下流側ステム部材との間の弁作用に基づいて、前記泡生成作用部の上流側の通路域部分にエアを供給する筒状のエア用弁部材と、からなる、
ことを特徴とする泡生成放出ユニット。
【請求項2】
前記エア用弁部材は、
前記外側環状壁部の内周面および前記下流側ステム部材の下側外周面に、それぞれ移動可能な形で保持される筒状のエア入力用弁部材と、
当該エア入力用弁部材の内周面,前記内側環状壁部の内周面および前記下流側ステム部材の上側外周面に、それぞれ移動可能な形で保持される筒状のエア出力用弁部材と、からなる、
ことを特徴とする請求項1記載の泡生成放出ユニット。
【請求項3】
前記エア入力用弁部材は、
エア流入用の孔部と、
前記エア出力用弁部材を保持する内周面部分に形成されたエア通過用溝状部と、を有し、
前記下流側ステム部材は、
前記エア出力用弁部材との弁作用機能を備えた環状テーパ面を有し、
前記内側環状壁部は、
前記下流側ステム部材と係合する内周面部分にエア流出用溝状部を有している、
ことを特徴とする請求項2記載の泡生成放出ユニット。
【請求項4】
前記エア入力用弁部材は、
放出操作解除時の復帰方向への移動範囲を規制するための、前記ネジキャップとの被係合部を有している、
ことを特徴とする請求項2または3記載の泡生成放出ユニット。
【請求項5】
前記下流側ステム部材は、
前記単一ステムを分けた態様の上流側ステム部材に対する係合部分を有している、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の泡生成放出ユニット。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の泡生成放出ユニットが前記ネジキャップに組み込まれ、その組込み状態で容器本体に取り付けることができる内容物泡放出ポンプ機構であって、
前記ネジキャップと一体のハウジングに、前記単一ステムを分けた態様の上流側ステム部材が移動可能な形で設けられ、
前記上流側ステム部材は前記下流側ステム部材と係合している、
ことを特徴とする内容物泡放出ポンプ機構。
【請求項7】
請求項4に記載の泡生成放出ユニットが前記ネジキャップに組み込まれ、その組込み状態で容器本体に取り付けることができる内容物泡放出ポンプ機構であって、
前記ネジキャップは、
前記被係合部に対する係合部を上面の環状起立部に有している、
ことを特徴とする内容物泡放出ポンプ機構。
【請求項8】
請求項6または7に記載の内容物泡放出ポンプ機構を備え、かつ、放出対象の液状内容物を収容した、
ことを特徴とするポンプ式製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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