波形クラスタリングを用いた心臓信号テンプレートの生成
テンプレート生成のための心臓波形クラスタリングを用いた心臓デバイス及び方法が記載される。心臓応答を特徴付ける方法は、捕捉閾値よりも大きいエネルギーのペーシングパルスを心臓に送ることを含む。パルスの送出後に心臓信号を感知する。心臓信号の特性、波形及び/又は特徴をクラスタリングして複数のクラスタにする。複数のクラスタのうち1つ以上を用いて心臓応答テンプレートを形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して植込み型医療用具に関し、より詳細には、テンプレート生成のための心臓波形クラスタリングを用いた心臓デバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓は、正常に機能している際は律動収縮を生じ、全身に血液を送り出すことができる。しかし、病気や怪我によって心拍が不規則になり、ポンプ効率が低下する場合がある。不整脈は、多様な健康状態や疾病過程から生じる心拍の不規則性を説明するために用いられる一般用語である。植込み型ペースメーカーや心臓除細動器のような心調律管理システムが、重症の不整脈患者への効果的な治療法として使用されている。これらのシステムは一般に、心臓からの電気信号を感知する回路と、電気刺激パルスを心臓に送るパルス発生器とを含む。患者の心臓内に延びたリードが電極に接続されており、電極は心筋と接触して心臓の電気信号を検出し、種々の不整脈治療法に従って刺激パルスを心臓に送る。
【0003】
心調律管理システムは、電極に隣接する心臓組織を刺激して組織の収縮を生じるように作動する。ペースメーカーは、心臓のポンプ効率を維持する収縮律動を心臓が生じるのを助けるようにタイミングを合わせた一連の低エネルギーペーシング(刺激)パルス(pace pulses)を送出する心調律管理システムである。ペーシングパルスは、患者の要求に合わせて断続的にしたり、連続させたりすることもできる。1つ以上の心腔を感知してペーシングを行う種々のモードを備えたペースメーカーデバイスが多種類ある。
【0004】
ペーシングパルスが心臓組織に収縮を生じると、この収縮の前に生じた電気心臓信号は捕捉応答(CR(captured response))を表す。一般に、捕捉応答は、心臓の収縮に関連する誘発応答信号と呼ばれる電気信号と、電極と組織の接触面におけるペーシング後の残留分極に関連する重畳信号を含む。ペーシング後残留分極信号、即ちペーシングアーチファクトの大きさは、例えばリードの分極、ペーシングパルスからの後電位、リードのインピーダンス、患者のインピーダンス、ペーシングパルスの幅、そしてペーシングパルスの振幅を含む多様な要因の影響を受ける場合がある。
【0005】
ペーシングパルスは、収縮を生じるために最小のエネルギー値、即ち捕捉閾値を上回る必要がある。ペーシングパルスは、捕捉閾値を大幅に上回るエネルギーを消費することなく、心臓の捕捉を刺激するのに十分なエネルギーを有することが望ましい。よって、ペーシングエネルギーを有効に管理するには、捕捉閾値を正確に決定することが必要である。ペーシングパルスのエネルギーが低すぎると、ペーシングパルスは心臓の収縮応答を確実に生じることができず、ペーシングが無効になる場合がある。ペーシングパルスのエネルギーが高すぎると、患者が違和感を覚え、デバイスの電池の寿命が短くなる場合がある。
【0006】
ペーシングパルスが心臓を「捕捉」して収縮を生じたかを検出することで、心調律管理システムは、捕捉を確実に生じる最適のエネルギー消費に対応するようにペーシングパルスのエネルギーレベルを調節することができる。また、捕捉検出によって、心調律管理システムは、ペーシングパルスが収縮を生じないときはいつでも、より高いエネルギーレベルでバックアップパルスを開始することができる。
【0007】
融合収縮は、1つの特定の心腔であるが別々の開始位置からの2つの心臓脱分極が結合すると生じる心臓収縮である。時には、ペーシングパルスによって開始された脱分極が内因性心拍と結合して融合収縮を生じる場合がある。融合収縮は、心電図の記録にみられるように種々の形態を呈する。融合収縮の結合脱分極は、全脱分極に一様に寄与してはいない。
【0008】
心房ペーシング時の自発性P波又は心室ペーシング時の自発性QRS群にペーシング刺激が送られると偽融合収縮が生じる。偽融合収縮では、電極周辺の組織が既に自発的に脱分極していて不応期に入るため、ペーシング刺激が無効になる場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
例えば、捕捉検出は、融合/偽融合収縮、内因性心拍、ノイズ及び非捕捉から捕捉収縮を区別することを含む。種々の応答タイプを表すテンプレートと心臓信号を比較することで、種々の心臓応答を区別することができる。本発明は、種々の心臓応答の認識に関連して用いられるテンプレートの生成方法及びシステムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、テンプレート生成のための心臓波形クラスタリングを用いた種々の心臓デバイス及び方法に関する。本発明による心臓応答の特徴付け方法は、捕捉閾値よりも大きいエネルギーを有するペーシングパルスを心臓に送ることを含む。ペーシングパルスに次いで心臓信号を感知する。感知した心臓信号を用いて、1つ以上の初期テンプレートを選択的に更新してもよい。選択した1つ以上のテンプレートを用いて心臓応答テンプレートを形成してもよい。初期テンプレートの選択的な更新は、感知した心臓信号のうち選択した心臓信号を用いた特定のテンプレートの更新を含んでもよい。実施の形態は、感知した心臓信号をテンプレートの各々と比較し、この比較に基づいた心臓信号を用いてテンプレートを選択的に更新すること(例えば、心臓信号の特徴とテンプレートの特徴を比較し、及び/又は各テンプレートと各心臓信号との類似度を決定し、特定の心臓信号に対して特定の類似度を有する特定のテンプレートを選択的に更新すること)によるテンプレートの選択的な更新を更に含んでもよい。
【0011】
テンプレートの選択的な更新は、カウンタを各テンプレートに関連させ、特定のテンプレートを更新する場合に特定のテンプレートに関連するカウンタを増加させることを含んでもよい。選択したテンプレートを用いた心臓応答の特徴付けは、他のテンプレートよりも数の多い心臓信号に関連付けられた特定のテンプレートを用いて心臓応答を特徴付けることを含んでもよい。捕捉閾値テストの際、及び/又は自動捕捉検証のために、選択したテンプレートを用いてペーシングに対する心臓応答を心拍ごとに分類してもよい。
【0012】
本発明に従ってペーシングに対する心臓応答を特徴付ける他の方法は、捕捉を行うのに十分なエネルギーのペーシングパルスを心臓に送り、ペーシングパルスの送出後に個々の心臓信号を感知することを含む。心臓信号をクラスタリングし、複数のクラスタを定義する。これにより、複数のクラスタのうち選択した1つ以上のクラスタを用いて心臓応答テンプレートを形成することができる。心臓信号のピーク時間、負のピーク及び/又は正のピークに関連するピーク時間、心臓信号のピーク振幅、又は他の特徴や信号属性など、心臓信号の1つ以上の特徴を用いて複数のクラスタを定義してもよい。同様の特性を有する最多数の心臓信号に関連したクラスタを用いて心臓応答テンプレートを形成することにより、選択したクラスタを用いて心臓応答テンプレートを形成してもよい。
【0013】
本発明の更なる実施の形態は、ペーシングに対する心臓応答を特徴付けるデバイスに関する。このデバイスは、ペーシングパルスを心臓に送った後に心臓信号を感知するよう構成された感知システムを含んでもよく、この感知システムにはプロセッサが結合されている。心臓信号を用いて複数のテンプレートを選択的に更新し、テンプレートのうち選択したテンプレートを用いてペーシングに対する心臓応答を特徴付けるようにプロセッサを構成してもよい。また、プロセッサは、1つ以上の初期テンプレートを提供し、初期テンプレートを選択的に更新するように構成されてもよい。ペーシング応答からの心臓信号をテンプレートの各々と比較し、この比較に基づいた心臓信号を用いてテンプレートを選択的に更新するようにプロセッサを構成してもよい。
【0014】
他の実施の形態は、各テンプレートと各心臓信号の類似度を決定し、特定の心臓信号に対して特定の類似度を有する特定のテンプレートを更新するように構成されたプロセッサを提供する。所定数の心臓信号を照合してから他のテンプレートとこれらの心臓信号の照合を行うなど、ある基準によって選択したテンプレートを用いて心臓応答を特徴付けるようにプロセッサを構成してもよい。
【0015】
更に別の実施の形態は、ペーシングに対する心臓応答を特徴付けるシステムを含む。このシステムは、捕捉を行うのに十分なエネルギーでペーシングパルスを心臓に送出するように構成されたパルス発生器を含む。センサシステムが、ペーシングパルスの送出後に個々の心臓信号を感知するよう構成されている。プロセッサがセンサシステムに結合されており、このプロセッサは、心臓信号をクラスタリングして複数のクラスタを定義し、複数のクラスタのうち選択した1つ以上のクラスタを用いて心臓応答テンプレートを形成するように構成されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の前述の概要は、本発明の各実施の形態又は各実施態様の説明を意図するものではない。添付の図面に関連する以下の詳細な説明及び請求の範囲を参照することにより、本発明の利点及び達成点が明らかになって理解され、本発明がより完全に理解されるであろう。
【0017】
本発明は種々の変更物や代わりの形態を生じうるが、本発明の詳細を図面に例として示し、以下に詳細に説明する。しかし、記載する特定の実施の形態に本発明を限定する意図ではないことが理解されよう。反対に、本発明は、添付の請求の範囲によって定義された本発明の範囲内に入る変更物、同等物及び代替物を全て含むように意図される。
【0018】
例示する実施の形態の下記の説明では、本明細書の一部を形成する添付の図面を参照する。これらの図面には、本発明を実施することのできる種々の実施の形態が例として示されている。他の実施の形態を用いてもよく、構造上及び機能上の変更が本発明の趣旨を逸脱しない範囲で可能であることが理解されよう。
【0019】
種々の心臓状態の認識は、その状態に関連する心臓信号のタイプの一貫した形態に依存することができる。例えば、特定の心臓の状態に関連する心臓信号のサンプル及び/又は特性に基づいて形態テンプレートを形成することができる。心臓デバイスは、感知した心臓信号を後で形態テンプレートと比較し、感知した心臓信号が形態テンプレートと十分に類似している場合はこの形態テンプレートに関連する心臓の状態が存在すると判断することができる。同様に、感知した心臓信号が形態テンプレートと十分に異なる場合は、この形態テンプレートに関連する心臓の状態を除いた状態を決定することができる。
【0020】
心腔に適用されるペーシングパルスに対する心臓応答を、ペーシング後に心腔内で感知した心臓信号の形態の特徴に基づいて決定することができる。ペーシングパルスに対する心臓応答は、例えば、内因性活動を伴わない非捕捉、捕捉、融合、偽融合収縮、そして内因性活動を伴う非捕捉を含むことができる。形態テンプレートを使用して、これらのタイプの心臓ペーシング応答のうち1つ以上を表すことができる。ペーシング後に感知した心臓信号を1つ以上の形態テンプレートと比較することができる。ある実施態様では、心臓信号のサンプル及び/又は特性を心臓信号から抽出し、特定のタイプの心臓ペーシング応答を特徴付ける形態テンプレートのうち1つ以上の形態テンプレートに関連するサンプル及び/又は特徴と比較する。感知した心臓信号のサンプル及び/又は特性と、形態テンプレートのうちの1つとの類似度に基づいて、心臓ペーシング応答のタイプを決定することができる。
【0021】
ペースメーカー、除細動器又は他の心調律管理(CRM)デバイスによって心臓応答の分類を行い、加えられた電気ペーシング刺激に対する心臓の応答を決定することができる。本発明の実施の形態は、心臓信号又は信号特徴のクラスタリングを用いて、ペーシングに対する種々のタイプの心臓応答を特徴付けるテンプレートを生成する心臓デバイス及び方法に関する。
【0022】
CRMデバイスのいくつかの機能は、一定の状態を検出するために心拍の一貫性に依存することができる。例えば、心臓ペーシング応答の特徴付けアルゴリズムは、ペーシングパルスが捕捉応答や他の応答を生じるか否かを判断する基準として心臓応答のテンプレートに依存することができる。しかし、捕捉応答信号の形態は患者によって異なり、時間と共に変化する場合がある。従って、捕捉応答(又は他のタイプの心臓信号)を特徴付けるテンプレートを患者ごとに定期的に生成したり更新したりする必要が生じうる。
【0023】
本発明の実施の形態によるテンプレート形成方法を示すフローチャートを図1Aに示す。複数のペーシングパルスを心臓に送る(112)。これらのペーシングパルスに関連する心臓信号を感知する(114)。類似する心臓信号のクラスタを形成する(116)。クラスタを用いて、1つ以上のタイプの心臓ペーシング応答を特徴付けるテンプレートを生成することができる(120)。心臓信号のクラスタリングは、アナログ及び/又はデジタル処理技術を含む多様な技術を用いて実行可能である。クラスタリング処理に関する例示的な実施の形態をいくつか本明細書に述べているが、これらに加え、又はこれらの代わりに他の処理を使用してもよく、これらの処理は本発明の範囲内とみなされる。
【0024】
図1Bは、本発明の実施の形態による他のテンプレート形成方法を示している。複数のペーシングパルスを心臓に送り(130)、各ペーシングパルスの後に心臓信号を感知する(140)。心臓信号の特徴を抽出する(150)。心臓信号の特徴を用いて複数のクラスタを形成する(160)。複数のクラスタのうち1つ以上のクラスタを用いて心臓ペーシング応答を特徴付ける(170)。
【0025】
例として、捕捉応答用テンプレートの生成を考える。1つの目標は、捕捉応答用テンプレートを生成することであり、これと同時に、融合/偽融合収縮、ノイズ又は他のタイプの応答の影響を避けることである。応答テンプレートの生成に融合収縮が含まれると、誤差成分がテンプレートに加えられてしまう。テンプレートが所望の応答以外の応答からの情報を含むと、テンプレートと今後生じうる捕捉収縮との相関関係が最適にならず、識別能力を低下させる原因となりうる。
【0026】
本発明によるテンプレートの生成は、望まれない応答信号が含まれるのを緩和する。捕捉応答が一貫した形態を有すると認識することにより、望まれない信号が特定のテンプレートに含まれるのを緩和することができる。類似度による信号特徴のクラスタリングは、テンプレート生成のための信号除外基準をもたらす。クラスタリングは、K平均クラスタリングアルゴリズム、自己組織化マップアルゴリズム又は他のデータクラスタリングアルゴリズムのような技術を用いて行うことができる。
【0027】
捕捉応答テンプレートの生成例の説明を進めると、閾値を越える一連のN個(Nは正の整数)のペーシングを送ると仮定する。N個のペーシングを全て送った後に適用可能であるか又は応答信号を集める際に適用可能であるクラスタリングアルゴリズムを、本発明に従って抽出したペーシング応答信号の特徴に適用することができる。N個のペーシングを送った後、クラスタの特徴を有する応答信号のみを用いてテンプレートを生成し、他の信号を全てテンプレート生成から除外することができる。応答信号を集める際に適用する場合は、クラスタの特徴を有する応答信号のみを用いてテンプレートを生成し、これによってクラスタへの信頼を築き、各選択応答信号を用いてテンプレートを調節し、他の信号を全てテンプレート生成から除外することができる。クラスタごとに、又は選択したクラスタのためにテンプレートを生成することにより、複数のテンプレートを同時に生成してもよい。
【0028】
例えば、N個全てのペーシングに対する応答を記録し、信号を3つのクラスタ、即ち捕捉応答、融合応答及び他の応答に分けるクラスタリングアルゴリズムによって処理することができる。全てのペーシングパルスが捕捉閾値を上回ることが事前にわかっており、捕捉を促すようにペーシングパラメータを選択する場合、捕捉応答の数が優勢になり、その後に融合/偽融合収縮の数が続き、そして場合によってはノイズや未知の応答のような他の応答が含まれることが予期される。捕捉テンプレートは、優勢なクラスタ内の信号を用いて生成可能である。例えば、最大多数の類似ペーシング応答を有するクラスタを、捕捉応答テンプレートの生成に使用するクラスタとして選択することができる。
【0029】
Nよりも小さい正の整数である数Pのような所定数の信号がクラスタに関連するときのみにこのクラスタを用いるなど、上記の例を用いて他の基準を課すこともできる。本発明によるテンプレート生成のための心臓波形クラスタリングは心臓応答の正確なテンプレートをもたらし、望ましくない心拍がテンプレートの推定に及ぼす影響を低減する。
【0030】
テンプレート生成のためのクラスタリングの使用を図2Aの概念図によって示す。図2Aでは、13の連続ペーシングに応答する測定心臓信号を円201乃至213として示す。各円201乃至213は、13のペーシングに応答する心臓信号の特徴、一連の特徴点又は全体的な心臓波形に対応することができる。円201は第1のペーシング応答の特徴、特徴点又は波形に対応することができ、第2の円202は第2のペーシング応答の特徴、特徴点又は波形に対応することができる。いくつかの実施の形態では、円213を13番目のペーシング応答の特徴、特徴点又は波形に対応して測定するまでペーシング及び応答測定処理を続ける。他の実施の形態では、各測定を行った後に心拍ごとにクラスタリングを行うことができる。
【0031】
応答201、202、204、205、209、210、212及び213の類似度に基づき、応答201、202、204、205、209、210、212及び213をクラスタ220に分類する。応答203、206及び211をクラスタ230に分類する。応答207及び208をクラスタ240に分類する。クラスタ220の応答201、202、204、205、209、210、212及び213は捕捉応答を含むように決定でき、クラスタ230の応答203、206及び211は融合/偽融合収縮を表すように決定でき、クラスタ240の応答207及び208はノイズの多い信号又は未知の心臓応答とすることができる。
【0032】
クラスタ内の応答の類似度を、心臓信号の1つ以上の形態的特徴に基づいて決定することができる。1つの実施態様では、システムは、ピーク幅、ピーク振幅及びピークタイミングのうち1つ以上の類似度を決定することができる。他の実施態様では、ある心臓信号からの一連のサンプルを他の心臓信号からの対応する一連のサンプルと比較し、これらの信号が類似しているかを判断することができる。
【0033】
心臓波形特徴、一連の特徴点又は心臓波形のクラスタリングは、類似する特徴、一連の特徴点又は心臓波形の分類を含む。
【0034】
1つの実施態様によると、クラスタリングを用いてテンプレートを形成する方法は、特定のタイプの心臓ペーシング応答に関連する多数の心臓信号の対応する心臓信号特徴を決定し、これらの心臓信号特徴をクラスタリングしてテンプレートを形成することを含むことができる。心臓信号の特徴点同士の関係を決定し、これらの関係に基づいて特徴点のクラスタを形成することにより、クラスタリングを行うことができる。K平均アルゴリズム、自己組織化マップアルゴリズム又は他のデータクラスタリングアルゴリズムを含む多様なクラスタリングアルゴリズムを用いて、このようなクラスタリングを行うことができる。
【0035】
他の実施態様によると、例えば第1の検出心臓信号の1つ以上の特徴点を用いて初期テンプレートを形成し、規則のセットに基づいた初期特徴点を用いて更なる心臓信号の更なる特徴点をクラスタリングすることにより、クラスタリングを行うことができる。例えば、更なる特徴点が初期テンプレートの対応する特徴点と十分に類似している場合、初期テンプレートの特徴点を用いて更なる特徴点をクラスタリングすることができる。この実施態様における類似度は、必ずしも特徴点同士の関係に基づいているわけではない、外部で決定した規則のセットによって決定されてもよい。
【0036】
図2Bは、本発明の実施の形態によるテンプレート生成のための心臓波形クラスタリングを用いた方法170のフローチャートである。捕捉閾値を越えたレベルの2つ以上のペーシングパルスを患者の心臓に送る(172)。心臓応答信号を感知し(174)、心臓信号特徴の測定を行う。1つ以上の初期テンプレートを提供する。1つ以上の初期テンプレートを、1つ以上の心臓信号を用いて生成してもよく、推定してもよく、メモリから検索してもよく、規則ベースの方法に従って形成してもよく、他の方法によって形成してもよい。選択した心臓応答信号を用いて、1つ以上の初期テンプレート(176)を漸増的に調節する。感知した各心臓信号を用いて、1つ以上のテンプレートのうち特定のテンプレートを調節することができる(176)。クラスタリングアルゴリズムを用いて、心臓信号特徴の測定に基づいたテンプレートの調節を行うことができる。1つ以上のテンプレートを選択して心臓応答を特徴付けることができる(178)。1つの例では、テンプレートのうちの1つを選択して捕捉応答を特徴付けることができる。他の例では、クラスタリング処理によって形成された第1のテンプレートを用いて捕捉応答を特徴付けることができ、第2のテンプレートを用いて融合/偽融合収縮応答を特徴付けることができる。
【0037】
図2Cは、本発明の実施の形態によるテンプレート生成方法139のフローチャートである。NT(整数)個のペーシング周期を選択し、NT個ペーシング周期ループ140乃至162を用いてテンプレート生成処理を開始する(140)。ペーシングを心臓に送り、ペーシングパルスに関連する心臓信号を感知する(142)。ペーシングパルスに関連する心臓信号の特徴又はサンプルを取得する。テンプレートが生成されていないか又は提供されていない場合は、この心臓信号を用いてテンプレートを生成する。初期テンプレートを保存し(156)、ペーシング周期ループを終了して(162)NTのカウントを増やした後にペーシング周期を続ける。心臓信号に関連する情報を保存し、この情報を、ペーシングパルスのペーシングエネルギー(電圧及び/又はパルス幅)、ペーシング速度、AV(房室)遅延、VV(静脈弁)間隔及び/又は他のペーシングパラメータ設定もしくは測定値などのテンプレートに関連させることができる。テンプレートが既に形成されているか又は提供されている場合、処理はブロック146乃至152によって表されるループへ続く。ループ146乃至152では、照合148において心臓信号を既存のテンプレートと比較する。照合148によって心臓信号が既存のテンプレートと適合するとわかった場合、テンプレートの推定を改善するためにテンプレートを調節し(150)、ループ146乃至152を続ける。テンプレートの調節は、例えば、特徴値の平均をとるか又は特徴値の加重平均を行うことによって実行可能である。ペーシングパラメータ設定又は測定値など、心臓信号に関連し、テンプレートに関連する保存情報によって表される特性を調節してもよい。
【0038】
全ての既存のテンプレートを心臓信号と比較しても、照合148において適合するテンプレートがない場合は、判断(158)を行ってテンプレートの追加又は取替を行う(160)。新しいテンプレートを追加もしくは推定するか、又は古いテンプレートを取り替えることによって新しいテンプレートを生成することができる。種々の実施態様では、取替対象のテンプレートは、最も古いテンプレートや適合心拍数が最小のテンプレートを含んでもよい。全てのテンプレートが少なくとも最小適合心拍数、例えば約1の心拍を有する場合は、テンプレートを取り替えないで心周期を無視してもよい。方法139によって使用されるテンプレートの最大数を所定の数に限定することができる。
【0039】
1つの実施態様では、NT個ペーシング周期ループ140乃至162は、全てのNT個ペーシングが完了するか又は他の基準を満たすまで続く。例えば、NT個ペーシング周期ループは、テンプレートがNT−M個の心拍(Mは許容不適合心拍数を表す)よりも大きい数の心拍と適合した場合に成功して(テンプレートの推奨ありで)終了することができる。他の実施の形態では、一定数のペーシング周期の後にテンプレートの最大適合数が所定の数を下回る場合、ペーシング周期ループ140乃至162は失敗して(テンプレートの推奨なしで)終了することができる。より具体的には、ペーシング周期ループ140乃至162は、約3回のペーシング周期の後にテンプレートの最大適合数が約1を下回る場合、失敗して終了することができる。
【0040】
NT個ペーシング周期ループ140乃至162においてNT個のペーシングが全て完了したら、1つ以上のテンプレートが、特定のタイプの心臓ペーシング応答を表すテンプレートとして保存するための基準を満たしているかを決定するために判断を行う(164)。例えば、テンプレートに捕捉応答の特徴付けが望まれる場合、以下の基準を含むことができる。即ち、NT個ペーシング周期ループ140乃至152のNT回ペーシング心拍のうち、テンプレートを(NT−M)回(Mはテンプレート生成の試みを失敗させる所定の不適合心拍数を表す)更新した場合、このテンプレートを捕捉応答テンプレートと認め、よって捕捉応答テンプレートの生成が成功する(166)。この基準を用いて、テンプレートを(NT−M)回更新していない場合、このテンプレートを捕捉応答テンプレートとして認めず、よってテンプレートの生成が失敗する(154)。追加の基準を適用してテンプレート生成を早くに終了させてもよい。照合148において、NT個ペーシング周期が完了する前に所定のM個の不適合を実現したり、保存した初期テンプレート(156)の後にくる最初の周期が適合しない場合、テンプレート生成の試みは失敗する。
【0041】
各ペーシング周期ループ140乃至162は、テンプレートを生成する試みを表している。所定数のペーシング周期ループ140乃至162を行う場合、テンプレートを生成する試みをしばらくの間保留するか、又はやめることができる。
【0042】
図2Dは、本発明の実施の形態による閾値テスト時のテンプレート生成方法を示すフローチャートである。テンプレート生成処理が開始する(251)と、テンプレートを生成するための最大数の試みを行ったかを確認するために照合を行う(252)。最大数の試みを行った場合、この処理から出て(253)閾値テストを後に延期することができる。
【0043】
最大数の試みを行っていない場合(252)、NT個ペーシング周期のループ254乃至265を開始する(254)。ペーシングパルスを送り、ペーシングパルス後の心臓信号を感知する(255)。感知心臓信号から特徴を抽出する。NT個ペーシング周期のループ254乃至265において最初の周期(256)である場合、抽出した特徴を初期テンプレートとして保存する(257)。NT個ペーシング周期のループ254乃至265において最初の周期(256)ではない場合、この周期の感知した心臓信号の特徴が、保存したテンプレートの特徴と類似しているかを判断するために照合を行う(258)。感知した心臓信号の特徴が保存したテンプレートの特徴と十分に類似している(258)場合、感知した心臓信号の特徴を用いてテンプレートの特徴を更新する(259)。
【0044】
NT−M個の周期の心臓信号特徴がテンプレートの特徴と類似している場合(263)、テンプレート生成が成功する(264)。
【0045】
心周期の心臓信号特徴がテンプレートの特徴と類似していない場合(258)、初期テンプレート形成後の心周期の数に基づいて照合を行う(260)。初期テンプレート形成後に所定数の周期の心臓信号特徴がテンプレートと類似していない(260)か、又はテンプレートと類似していない心臓信号がM個ある場合(262)、テンプレート生成の試みを失敗して終了する(261)。
【0046】
図3乃至図5のグラフは、本発明の方法によるテンプレート形成処理を示している。図3は、文字Cで識別される捕捉応答、文字Fで識別される融合応答及び文字NCで識別される捕捉されない内因性の応答を表す多数の心臓信号を示したグラフである。これらの応答の特徴をクラスタリングして、それぞれ異なるタイプの応答を表すテンプレートや、いくつかの応答を表すが他の応答を除いたテンプレートを形成することができる。いずれの場合でも、種々の応答の区別が可能になる。この例では、クラスタリングする特定の特徴は心臓信号のピーク振幅とピークタイミングを含む。クラスタリングしたピークを用いて、振幅及び時間に関連して定義した1つ以上の分類ウィンドウを含むテンプレートを形成する。
【0047】
図4は、図3に示す捕捉応答、融合応答及び非捕捉内因性応答のピークを示すグラフである。捕捉信号のピークを文字cで示し、融合収縮のピークを文字fで示し、内因性の応答を文字iで示す。心臓信号のピークをクラスタリングし、1つ以上の検出ウィンドウ430、460及び470を含むテンプレートを形成する。検出ウィンドウへのピークの包含、検出ウィンドウからのピークの除外、又は検出ウィンドウ430、460及び470の組み合わせを用いて異なる心臓応答を区別することができる。
【0048】
図5は、第1の捕捉検出ウィンドウ550、第2の捕捉検出ウィンドウ540及び内因性検出ウィンドウ560を示している。この例では、検出ウィンドウ550、540及び560の中点515、525及び535がそれぞれ示されている。例えば、クラスタリングした心臓信号の特性の座標に基づいて、検出ウィンドウ550、540及び560の境界を計算することができる。
【0049】
1つの実施態様では、特性座標の平均を、検出ウィンドウ内の中央や他の位置などの点として定義することができる。この例では、例えば、円、正方形、長方形、菱形又は他の四辺形など、所定の形状に従って検出ウィンドウの境界を定めることができる。この他に、又はこの代わりに、所定の領域を囲むように検出ウィンドウを生成することができる。検出ウィンドウ550、540及び560の初期設定後、これらの検出ウィンドウを用いて捕捉応答、融合/偽融合収縮応答及び/又は内因性興奮を伴う非捕捉応答を検出することができる。
【0050】
図6及び図7は、クラスタリングによって形成された検出ウィンドウを用いてペーシングに対する種々のタイプの心臓応答を検出することができる態様を示している。心腔へのペーシングパルス送出後に1つ又は複数の間隔で感知された心腔の心臓信号を、本発明の実施の形態による心臓ペーシング応答の決定に使用することができる。図6に示すように、心臓、例えば右心室にペーシング刺激610を送る。ペーシングパルス610の送出に次いで、感知した心臓信号を、一般に約0ミリ秒乃至40ミリ秒である一定期間620の間ブランクにする。
【0051】
ブランク時間620の後、第1の間隔630において心臓信号を感知することができる。第1の間隔630の持続時間を、例えば約325ミリ秒未満など、プログラム可能な持続時間とすることができる。第1の間隔630において心臓信号が閾値を越えなかった場合、心臓応答を非捕捉として分類することができる。心臓信号が閾値を越えた場合、心臓信号の種々の特性又は特徴を抽出し、心臓応答テンプレートと比較して心臓ペーシング応答のタイプを決定することができる。場合によっては、特徴抽出及びテンプレート比較に関連する心臓信号の感知を、第2の間隔640のような更なる間隔まで延ばすことができる。第2の間隔640をプログラム可能とし、約325ミリ秒未満の持続時間にすることができる。更なる間隔の持続時間は第1の間隔の持続時間と異なっていてもよいし、同じでもよい。あるいは、第1及び第2の間隔の持続時間を同じにしてもよい。
【0052】
1つの間隔230の終わりともう1つの間隔640の始まりの間に遅延時間650を設けることができる。遅延の持続時間を、例えば約0ミリ秒(遅延なし)から約40ミリ秒の範囲にすることができる。ペーシング刺激610に対する心臓応答を、心臓応答テンプレートとの比較に関して、第1の間隔630及び/又は更なる間隔640において感知した心臓信号の特性又は特徴に基づいて分類することができる。
【0053】
図7は、図5に示すような心臓応答検出ウィンドウを用いて形成されたテンプレートを捕捉検出に使用することができる態様を示すグラフである。図7は、捕捉応答信号784、融合応答信号782及び非捕捉内因性信号780を示す重畳グラフを示し、これらを含む。ペーシング710の送出後、ブランク時間715の間感知チャネルをブランクにする。例えば、感知増幅器から感知電極の接続を断つか、又は感知増幅器を不作動状態にする。ブランク時間の後、1つ以上の間隔720及び750において心臓信号を感知する。図6に示すように、感知はペーシングパルス後に2つの間隔において生じることができる。場合によっては、第2の間隔750及び後続する間隔(図示せず)を、1つ以上の前の間隔において生じたイベントによって引き起こすことができる。
【0054】
種々の実施態様では、ペーシング刺激の送出に用いたのと同一の電極の組み合わせを用いて感知を行うことができる。他の実施態様では、第1の電極構成を用いてペーシング刺激を送ることができ、感知は第2の電極構成を用いることができる。複数の間隔、ならびに種々の感知ベクトル及びペーシングベクトルを用いた心臓応答に対するペーシングの分類システム及び方法は、同一出願人による米国特許出願、即ち2003年12月11日出願の「複数の分類ウィンドウを用いた心臓応答分類("Cardiac Response Classification Using Multiple Classification Windows")」というタイトルの10/733,869号、2003年12月12日出願の「再トリガ可能な分類ウィンドウを用いた心臓応答分類("Cardiac Response Classification Using Retriggerable Classification Windows")」というタイトルの10/734,599号、そして2003年12月12日出願の「多部位感知及びペーシングを用いた心臓応答分類("Cardiac Response Classification Using Multisite Sensing And Pacing")」というタイトルの10/735,519号に記載されている。
【0055】
第1の間隔720の間、システムは閾値レベル740を越える正又は負の心臓信号の大きさを感知する。この心臓信号の大きさが第1の間隔720の間に閾値740を越えない場合、心臓応答を非捕捉として分類し、バックアップペーシング770を送ることができる。バックアップペーシング770は、一般にバックアップ間隔(BPI)730の後に送る高エネルギーペーシングである。例えば、バックアップ間隔730は、最初のペーシング710の送出から計時した約100ミリ秒の間隔を含むことができる。
【0056】
このシステムは、1つ以上の心臓応答分類ウィンドウ755、756及び760を利用して種々の心臓ペーシング応答を検出することができる。本発明の実施の形態によるテンプレート生成方法を用いて分類ウィンドウ755、756及び760のうち1つ以上を形成することができる。心臓応答分類ウィンドウ755、756及び760は、振幅及び時間に関して定義された領域である。
【0057】
心臓信号の第1のピーク値を第1の検出ウィンドウ755において検出し、心臓信号の第2のピーク値を第2の検出ウィンドウ756において検出した場合、システムはこの心臓応答を捕捉として分類することができる。第1の捕捉検出ウィンドウ755や第2の捕捉検出ウィンドウ756ではなく、内因性検出ウィンドウ760において心臓信号のピークを検出した場合、この心臓応答を、内因性興奮を伴う非捕捉として分類することができる。その他の場合は、心臓応答を融合/偽融合収縮として分類することができる。
【0058】
特定のタイプの心臓ペーシング応答を特徴付けるテンプレートを、心臓ペーシング応答のゆるやかな形態的変化に合わせるように適応させることができる。心臓信号の波形、例えば捕捉応答を表す心臓信号の波形は、時間の経過に伴って形態の自然な変動を示す場合がある。心臓波形の形態は、テンプレートを調節しない限り、最初に設定したテンプレートから徐々に離れるように移動する場合がある。
【0059】
本発明の実施の形態に従って、1つ以上の検出ウィンドウを調節して心臓波形形態の変化に合わせることができる。特定の検出ウィンドウとこれに関連する波形特徴(例えば心臓信号のピーク)との関係(例えば空間関係)に従って、特定の検出ウィンドウを調節することができる。検出ウィンドウの調節は、例えば検出ウィンドウのサイズ、形状又は位置の変更を含むことができる。
【0060】
時間座標(通常はx軸座標として表す)及び振幅座標(y軸座標)により、ピークなどの心臓特徴の位置を識別することができる。検出した特徴の振幅座標と、関連する検出ウィンドウの振幅範囲との関係に基づいて検出ウィンドウを調節することができる。また、検出した関連特徴の時間座標と検出ウィンドウの時間範囲との関係に基づいて検出ウィンドウを調節することができる。他の例では、検出した関連特徴の時間座標及び/又は振幅座標の変動に基づいて検出ウィンドウを調節することができる。
【0061】
本発明の実施の形態によると、検出ウィンドウの調節は、関連する心臓特徴の位置の方向に検出ウィンドウを変更することを含む。種々の例では、検出した心臓特徴は特定の検出ウィンドウ内に入るが検出ウィンドウの中心からずれている場合がある。検出ウィンドウ内に入る、検出した関連する心臓特徴点に対して検出ウィンドウを再センタリングするか又は再配向する方向に、検出ウィンドウの位置、サイズ及び/又は形状を変更することができる。例えば、関数ベースの技術又は規則ベースの技術を用いて検出ウィンドウを調節することができる。
【0062】
1つの実施態様によると、ピークなど、検出した関連する心臓波形特徴の現在の位置及び過去の位置に基づいた関数を用いて検出ウィンドウの調節を行うことができる。一例に従って、波形特徴の現在位置及び検出ウィンドウの以前の位置に基づいた指数平均を用いて検出ウィンドウを調節することができる。検出ウィンドウの調節を、下記の数式1に基づいて実施することができる。
【0063】
【数1】
【0064】
αの値を選択することにより、α>0.5に対応する検出ウィンドウの過去の位置の方を重視するか、α<0.5に対応する波形特徴の現在位置の方を重視することができる。αの値は異なる特徴又は特性によって変化しうる。調節後の位置を用いて検出ウィンドウを再センタリングするか又は再配向することにより、検出ウィンドウの位置を決定することができる。
【0065】
他の実施態様では、規則ベースの技術を用いて検出ウィンドウを調節することができる。例えば、1つ以上の再センタリング規則に基づいて、検出ウィンドウを検出した関連特徴点の方向に調節することができる。
【0066】
心拍は、検出ウィンドウの調節に使用される前に一定の条件を満たす必要がある。検出ウィンドウの調節にふさわしい心拍は、一定のタイミング、心拍数、振幅、規則性又は他の基準を満たす必要がある。例えば捕捉応答を表すテンプレートと心拍を比較することができる。心拍がテンプレートと一致する場合、この心拍を用いて1つ以上の捕捉検出ウィンドウを調節することができる。
【0067】
検出ウィンドウの調節を図8A及び図8Bに示す。図8Aは、検出ウィンドウに関連して以前検出した心臓波形特徴の位置に基づいた中心810を有する検出ウィンドウ820を示している。図8Bは、次の心臓信号を感知した後の状況を示している。現在の心臓波形特徴点830を検出する。現在の特徴点830の位置は、図8Aに示す元の中心810の右上に移動している。新しい心臓波形特徴830を中心として配置された現在の検出ウィンドウ840は、元の検出ウィンドウ820から大きく変わったことを表している。1つの例示的な実施の形態では、変更が比較的滑らかになるように検出ウィンドウの調節を行う。過去の検出ウィンドウ820の位置と現在の検出ウィンドウ840の位置の双方に基づいて波形特徴のずれを滑らかに調整するように、例えば数式1や他の方法を用いて調節後の検出ウィンドウ850を決定することができる。検出ウィンドウの調節を、振幅座標及び時間座標に対して所定の上方境界及び下方境界に制限することができる。
【0068】
数式1は、指数平均を用いた検出ウィンドウの位置の調節を数学的に説明しているが、他の検出ウィンドウ位置調節方法も可能である。例えば、他の実施の形態では、移動ウィンドウの平均や、元の検出ウィンドウと波形特徴との間の距離の変化を表す他の関数に従って1つ以上の検出ウィンドウの各々を調節することができる。更なる実施の形態では、規則ベースの方法に従って検出ウィンドウを調節することができる。規則ベースの調節方法は、続いて検出した心臓波形特徴の位置に基づいた量だけ検出ウィンドウの位置を調節することを含むことができる。例えば、所定の数、例えば5つの連続する心臓信号が検出ウィンドウ内に位置する心臓波形特徴を示している場合、検出ウィンドウの位置を増加させて右に移動させるが、元の検出ウィンドウの中心よりも右に移動させることができる。類似した基準を用いて、他の方向、即ち左、上及び下への調節を行うことができる。
【0069】
更に別の実施の形態では、検出ウィンドウの調節は検出ウィンドウの形状及び/又はサイズの調節を含むことができる。図8C及び図8Dは、検出ウィンドウの形状を変更することによる検出ウィンドウの調節を示す図である。図8Cは、中心810を有する検出ウィンドウ820を示している。図8Dは、次の心臓信号を感知した後の状況を示している。検出ウィンドウ820に関連する心臓波形特徴860を検出する。現在の特徴点860の位置は、検出ウィンドウ820の元の中心810の上に移動している。元の検出ウィンドウ820とは異なる形状を有する調節後の検出ウィンドウ870を定義する。検出ウィンドウの調節を所定の限界値に制限することができる。検出ウィンドウの更新方法及びシステムは、弁護士事件整理番号GUID.169PAによって識別される、同一出願人による米国特許出願に記載されており、この方法及びシステムの態様を本発明に関連して用いることができる。
【0070】
本明細書に示すシステムの実施の形態は、概して、当該技術分野で公知のように多数のペーシングモードで作動することのできる植込み型心臓除細動器(ICD)で実施するものとして説明されている。種々のタイプの単心腔及び多心腔植込み型心臓除細動器が当該技術分野で公知であり、本発明によるテンプレート生成のための心臓波形クラスタリングを用いた心臓デバイス及び方法に関連して使用することができる。また、例えば単心腔及び多心腔ペースメーカー、除細動器、カルジオバータ、両心室ペースメーカー、心臓再同期装置及び心臓モニタシステムなど、多様な植込み型又は患者の体外用心調律管理デバイスにおいて本発明の方法を実施することができる。
【0071】
本システムはマイクロプロセッサベースの構造を有する植込み型心臓除細動器に関連して記載されているが、植込み型心臓除細動器(又は他のデバイス)を必要に応じていずれの論理ベースの集積回路構造にも実施できることが理解されるであろう。
【0072】
ここで図面のなかでも図9を参照すると、本発明のテンプレート生成方法の実施に用いることのできる心調律管理システムが示されている。図9の心調律管理システムは心調律管理(CRM)デバイス900を含み、このデバイス900はリードシステム902に電気的及び物理的に結合されている。CRMデバイス900のハウジング及び/又はヘッダは、電気刺激エネルギーを心臓に提供し、心臓の電気活動を感知するのに使用される1つ以上の電極909を組み込むことができる。CRMデバイス900は、CRMデバイスのハウジングの全て又は一部を缶形電極909として用いることができる。また、CRMデバイス900は、例えばCRMデバイス900のヘッダ又はハウジング上に配置された不関(indifferent)電極(図示せず)を含むことができる。CRMデバイス900が缶形電極909及び中立電極の双方を含む場合、一般に電極は互いに絶縁されている。
【0073】
リードシステム902は、心臓901によって生じた電気心臓信号を検出し、ある所定の状態の心臓901に電気エネルギーを提供して心不整脈を治療するように使用される。リードシステム902は、ペーシング、感知及び/又は除細動に使用される1つ以上の電極を含むことができる。図9に示す実施の形態では、リードシステム902は、心腔内右心室(RV)リードシステム904、心腔内右心房(RA)リードシステム905、心腔内左心室(LV)リードシステム906及び心外左心房(LA)リードシステム908を含む。図9のリードシステム902は、本明細書に述べたテンプレート生成方法及び心臓応答区別方法に関連して用いることのできる1つの実施の形態を示している。これらに加え、又はこれらの代わりに、他のリード及び/又は電極を用いてもよい。
【0074】
リードシステム902は、人体に植え込む心腔内リード904、905及び906を含むことができ、心腔内リード904、905及び906の一部は心臓901に挿入されている。心腔内リード904、905及び906は、心臓の電気活動を感知し、例えばペーシングパルスや除細動ショックなどの電気刺激エネルギーを心臓に送って心臓の種々の不整脈を治療する、心臓内に配置可能な種々の電極を含む。
【0075】
図9に示すように、リードシステム902は、心外膜電極などの電極を有し、心臓の外側の位置に配置されて1つ以上の心腔の感知及びペーシングを行う1つ以上の心外リード908を含むことができる。
【0076】
図9に示す右心室リードシステム904は、SVCコイル916、RVコイル914、RVリング電極911及びRV先端電極912を含む。右心室リードシステム904は、右心房920を通って右心室919内に延びる。特に、RV先端電極912、RVリング電極911及びRVコイル電極914は、感知を行って電気刺激パルスを心臓に送るように右心室919内の適切な位置に配置されている。SVCコイル916は、心臓901の右心房室920内、又は心臓901の右心房室920に通じる主静脈内の適切な位置に配置される。
【0077】
1つの構成では、缶形電極909に関連するRV先端電極912を用いて右心室919内の単極ペーシング及び/又は感知を実施することができる。RV先端電極912及びRVリング電極911を用いて右心室内の双極ペーシング及び/又は感知を実施してもよい。更に別の構成では、RVリング電極911を必要に応じて省略し、例えばRV先端電極912及びRVコイル914を用いて双極ペーシング及び/又は感知を行ってもよい。右心室リードシステム904を、一体化した双極ペーシング/ショックリードとして構成することができる。RVコイル914及びSVCコイル916は除細動電極である。
【0078】
左心室リード906は、左心室924のペーシング及び/又は感知を行うように左心室924の中又は周りの適切な位置に配置されたLV遠位電極913及びLV近位電極917を含む。左心室リード906を、上大静脈経由で心臓の右心房920に導くことができる。右心房920から、冠静脈洞入口部、即ち冠静脈洞950の開口内に左心室リード906を配置することができる。リード906を、冠静脈洞950を通って左心室924の冠静脈に導くことができる。この静脈は、心臓の右側から直接アクセスすることができない左心室924の表面にリードが達するためのアクセス経路として用いられる。左心室リード906のリード配置は、鎖骨下静脈にアクセスし、LV電極913及び917を左心室に隣接して挿入するために予め形成されたガイディングカテーテルを通って可能になる。
【0079】
例えば、缶形電極909に関連するLV遠位電極を用いて左心室内の単極ペーシング及び/又は感知を実施することができる。LV遠位電極913及びLV近位電極917を左心室用の双極感知電極及び/又はペーシング電極として併用することができる。心室をほぼ同時に又は段階的に連続してペーシングし、慢性心不全を患う患者の心臓ポンプ効率を高めるように、左心室リード906及び右心室リード904をCRMデバイス900と併用して心臓再同期療法を提供することができる。
【0080】
右心房リード905は、右心房920の感知及びペーシングを行うように右心房920内の適切な位置に配置されたRA先端電極956及びRAリング電極954を含む。1つの構成では、例えば、缶形電極909に関連するRA先端956を用いて右心房920内の単極ペーシング及び/又は感知を提供することができる。他の構成では、RA先端電極956及びRAリング電極954を用いて双極ペーシング及び/又は感知を提供することができる。
【0081】
図9は、左心房リードシステム908の1つの実施の形態を示している。この例では、左心房リード908は、左心房922の感知及びペーシングを行うように心臓901の外側の適切な位置に配置されたLA遠位電極918及びLA近位電極915を有する心外リードとして実施される。例えば、LA遠位電極918−缶形909のペーシングベクトルを用いて左心房の単極ペーシング及び/又は感知を行うことができる。LA近位電極915及びLA遠位電極918を併用して左心房922の双極ペーシング及び/又は感知を実施することができる。
【0082】
ここで図10を参照すると、本発明の実施の形態によるテンプレートの形成及び適用の実施に好適な心調律管理デバイス1000のブロック図が示されている。図10は、機能ブロックに分けられたCRMデバイスを示している。これらの機能ブロックを配置することのできる構成が多くあることが当業者によって理解される。図10に示す例は、実施可能な1つの機能構成である。他の構成も可能である。例えば、更に多い数の機能ブロック、更に少ない数の機能ブロック又は異なる機能ブロックを用いて、本発明の方法によるテンプレート形成方法の実施に好適な心臓除細動器を説明することができる。また、図10に示すCRMデバイス1000はプログラム可能なマイクロプロセッサベースの論理回路の使用を考慮しているが、他の回路の実施態様を用いてもよい。
【0083】
図10に示すCRMデバイス1000は、心臓から心臓信号を受け取り、ペーシングパルス又は除細動ショックの形で電気刺激エネルギーを心臓に送る回路を含む。1つの実施の形態では、CRMデバイス1000の回路は人体への植込みに好適なハウジング1001に入っており、これに密閉されている。CRMデバイス1000への電力は、電気化学電池1080によって供給される。リードシステムの導線をCRMデバイス1000の回路に物理的及び電気的に取り付けることができるように、コネクタブロック(図示せず)がCRMデバイス1000のハウジング1001に取り付けられている。
【0084】
CRMデバイス1000は、制御システム1020及びメモリ1070を含むプログラム可能なマイクロプロセッサベースのシステムとして構成することができる。メモリ1070は、他のパラメータと共に種々のペーシングモード、除細動モード及び感知モードのパラメータを記憶することができる。メモリ1070は、例えば、それまでのEGM及び治療データを記憶し、関連するクラスタを用いた分類の前後に心臓信号及び/又は心臓信号特徴を保持するために使用することができる。履歴データの記憶としては、例えば、傾向分析の目的や他の診断目的で用いられる、患者の長期モニタから得られたデータを含むことができる。他の情報と同様に、履歴データを、必要に応じて又は要望どおりに外部プログラマユニット1090に送信することができる。
【0085】
制御システム1020及びメモリ1070は、CRMデバイス1000の他の構成要素と協働してCRMデバイス1000の動作を制御することができる。図10に示す制御システムは、本発明の種々の実施の形態に従って心臓応答テンプレートを形成するテンプレートプロセッサ1024を組み込んでいる。制御システム1020は、ペースメーカー制御回路1022、心臓応答分類プロセッサ1025及び不整脈検出器1021、そしてCRMデバイス1000の動作を制御する他の構成要素など、更なる機能的な構成要素を含むことができる。
【0086】
遠隔測定回路1060を実施して、CRMデバイス1000と外部プログラマユニット1090との間の通信を提供することができる。1つの実施の形態では、遠隔測定回路1060及びプログラマユニット1090は、当該技術分野で公知のようにワイヤループアンテナ及び無線周波遠隔測定リンクを用いて通信し、プログラマユニット1090と遠隔測定回路1060との間で信号及びデータの送受信を行う。このようにして、プログラム指令及び他の情報を、植込み時と植込み後にプログラマユニット1090からCRMデバイス1000の制御システム1020に転送することができる。また、例えば捕捉閾値、捕捉検出及び/又は心臓応答分類に関する記憶された心臓データを、他のデータと共にCRMデバイス1000からプログラマユニット1090に転送することができる。
【0087】
遠隔測定回路1060は、CRMデバイス1000と高性能患者管理(APM)システムとの間の通信を提供することができる。高性能患者管理システムによって、医師は心臓の状態や患者の他の状態を遠隔で自動的にモニタすることができる。1つの例では、患者のリアルタイムでのデータ収集、診断及び治療を可能にする種々の通信技術及び情報技術をCRMデバイスに備えることができる。本明細書に記載した種々の実施の形態を高性能な患者管理に関連させて用いることができる。遠隔からの患者/デバイスのモニタ、診断、治療、又は他のAPM関連の方法を提供するように適用可能な本明細書に記載の方法、構造及び/又は技術は、米国特許第6,221,011号、第6,270,457号、第6,277,072号、第6,280,380号、第6,312,378号、第6,336,903号、第6,358,203号、第6,368,284号、第6,398,728号及び第6,440,066号のうち1つ以上の参考文献の特徴を組み込むことができる。
【0088】
図10に示すCRMデバイス1000の実施の形態では、RA先端電極956、RAリング電極954、RV先端電極912、RVリング電極911、RVコイル電極914、SVCコイル電極916、LV遠位電極913、LV近位電極917、LA遠位電極918、LA近位電極915及び缶形電極909をスイッチングマトリックス1010によって感知回路1031乃至1037に選択的に結合することができる。
【0089】
右心房感知回路1031は、心臓の右心房からの電気信号を検出し、これらの電気信号を増幅させるように機能する。例えば、RA先端956とRAリング954との間で発生した電圧を感知することにより、右心房内の双極感知を実施することができる。例えば、RA先端956と缶形電極909との間で発生した電圧を感知することにより、単極感知を実施することができる。右心房感知回路からの出力は制御システム1020に結合されている。
【0090】
右心室感知回路1032は、心臓の右心室からの電気信号を検出し、これらの電気信号を増幅させるように機能する。右心室感知回路1032は、例えば右心室心拍数チャネル1033及び右心室ショックチャネル1034を含むことができる。RV先端電極912の使用によって感知される右心室の心臓信号は右心室近距離場信号であり、RV心拍数チャネル信号と示す。双極のRV心拍数チャネル信号を、RV先端912とRVリング911との間で発生した電圧として感知することができる。あるいは、RV先端電極912及びRVコイル914を用いて、右心室内の双極感知を実施することができる。例えば、RV先端912と缶形電極909との間で発生した電圧を感知することにより、右心室内の単極の心拍数チャネル感知を実施することができる。
【0091】
RVコイル電極914の使用によって感知される右心室の心臓信号は遠距離場信号であり、RV形態チャネル信号又はRVショックチャネル信号とも呼ばれる。より具体的に言うと、右心室ショックチャネル信号を、RVコイル914とSVCコイル916との間で発生した電圧として検出することができる。また、右心室ショックチャネル信号を、RVコイル914と缶形電極909との間で発生した電圧として検出することができる。他の構成では、缶形電極909及びSVCコイル電極916を電気的に短絡させ、RVショックチャネル信号をRVコイル914と缶形電極909/SVCコイル916の組み合わせとの間で発生した電圧として検出することができる。
【0092】
心外膜電極として構成可能な1つ以上の左心房電極915及び918の使用により、左心房の心臓信号を感知することができる。左心房感知回路1035は、心臓の左心房からの電気信号を検出し、これらの電気信号を増幅させるように機能する。例えば、LA遠位電極918及びLA近位電極915を用いて左心房内の双極感知及び/又はペーシングを実施することができる。例えば、LA遠位電極918−缶909のベクトル又はLA近位電極915−缶909のベクトルを用いて、左心房の単極感知及び/又はペーシングを行うことができる。
【0093】
左心室感知回路1036は、心臓の左心室からの電気信号を検出し、これらの電気信号を増幅させるように機能する。例えば、LV遠位電極913とLV近位電極917との間で発生した電圧を感知することにより、左心室内の双極感知を実施することができる。例えば、LV遠位電極913又はLV近位電極917と缶形電極909との間で発生した電圧を感知することにより、単極感知を実施することができる。
【0094】
必要に応じて、冠静脈洞など、患者の左心に隣接する心血管系にLVコイル電極(図示せず)を挿入することができる。LV電極913及び917、LVコイル電極(図示せず)ならびに/又は缶形電極909の組み合わせを用いて検出された信号を左心室感知回路1036によって感知し、増幅させることができる。左心室感知回路1036の出力は制御システム1020に結合されている。
【0095】
電極911、912、913、914、915、916、917、918、956及び954のうち選択された組み合わせを誘発応答感知回路1037に結合するように、スイッチングマトリックス1010の出力を操作することができる。誘発応答感知回路1037は、捕捉検出に関連する処理のための種々の電極の組み合わせを用いて発生した電圧を感知し、増幅させるように機能する。例えば、CRMデバイスが心臓ペーシング応答テンプレートの形成処理を実施している場合は、誘発応答感知回路をテンプレートプロセッサ1024に結合することができる。誘発応答感知回路1037によって感知された心臓信号を使用して、種々の心臓ペーシング応答を示す信号又は信号特徴を本発明の実施の形態に従ってクラスタリングすることによってテンプレートを形成することができる。
【0096】
捕捉検証及び/又は捕捉閾値テストの際は、誘発応答感知回路1037を心臓応答分類プロセッサ1025に結合することができる。種々の電極の組み合わせを介して誘発応答感知回路1037によって感知された信号を心臓応答分類プロセッサ1025によって分析し、本明細書に記載のような心臓ペーシングに対する捕捉及び/又は他の応答を検出することができる。あるいは、テンプレートの形成及び/又は心臓ペーシング応答の検出に他の感知回路を使用してもよい。
【0097】
後述する実施の形態では、ペーシングパルスの後にペーシング電極及び感知電極の種々の組み合わせをペーシング及び心臓信号の感知に関連して利用し、ペーシングパルスに対する心臓の応答を分類することができる。例えば、いくつかの実施の形態では、第1の電極の組み合わせを心腔のペーシングに使用し、第2の電極の組み合わせをペーシング後の心臓信号の感知に使用する。他の実施の形態では、ペーシング及び感知に同一の電極の組み合わせを用いる。
【0098】
ペースメーカー制御回路1022を、左心房、右心房、左心室及び右心室のペーシング回路1041、1042、1043及び1044と組み合わせて実施し、種々の電極の組み合わせを用いてペーシングパルスを選択的に生成し、これを心臓に送出することができる。前述のように、ペーシング電極の組み合わせを用いて心腔の双極又は単極ペーシングを行うことができる。
【0099】
前述のペーシングベクトルを介して双極又は単極のペーシングパルスを心腔に送ることができる。ペーシングパルスの送出後の電気信号は、スイッチングマトリックス1010を介して誘発応答感知回路1037又は他の感知回路に結合された種々の感知ベクトルによって感知することができ、この電気信号を、ペーシングに対する心臓応答の分類に使用することができる。
【0100】
1つの例では、ペーシングパルスの送出後の心臓信号は、ペーシングパルスの送出に使用したのと同一のベクトルを用いて感知することができる。この場合、感知した心臓信号からペーシングアーチファクトを相殺するかもしくは除去し、又はこれを最小にすることができる。ペーシングアーチファクトの取消後、ペーシングパルスの送出に次いで1つ以上の間隔及び心臓応答分類ウィンドウを定義し、これらをペーシングに対する心臓応答の分類に使用することができる。心臓応答を、例えば捕捉応答、非捕捉応答、内因性興奮を伴う非捕捉応答、及び融合/偽融合収縮のうちの1つとして分類することができる。
【0101】
別の例では、ペーシングパルス送出後の心臓信号の感知に用いるベクトルは、ペーシングパルスの送出に用いたベクトルとは異なっていてもよい。ペーシングアーチファクトを最小にするように感知ベクトルを選択することができる。この技術を用いてペーシングアーチファクトを十分に最小にする場合、ペーシングアーチファクトの相殺は必須ではない。
【0102】
種々の実施の形態では、ペーシングベクトルを近距離場ベクトルとし、感知ベクトルを遠距離場ベクトルとすることができる。右心室ペーシング及び心臓応答感知の例では、ペーシングベクトルを心拍数チャネルベクトルとし、感知ベクトルをショックチャネルベクトルとすることができる。
【0103】
皮下電極は、テンプレートの形成と心臓応答の分類に使用可能な更なる感知ベクトルを提供することができる。1つの実施態様では、心調律管理システムは、心臓へのペーシングを行うように構成された心腔内デバイスと、ペーシング以外の機能を行うように構成された皮下除細動器などの心外デバイスを含むハイブリッドシステムを含むことができる。心外デバイスは、皮下電極のアレイを用いて感知された信号に基づいてペーシングに対する心臓応答を検出し、これを分類するように使用可能である。心外デバイス及び心腔内デバイスは、例えばワイヤレスリンクを介して生じるデバイス間の通信と協働して作動することができる。皮下電極システム及びデバイスの例は、同一出願人による2003年6月13日出願の米国特許出願10/462,001号及び2003年6月19日出願の10/465,520号に記載されている。
【0104】
本明細書の実施の形態に記載した方法及びシステムは、心臓応答テンプレートの生成、更新及び/又は使用のために心臓信号の特徴を用いる。本明細書に設けられた例は心臓ペーシング応答を決定するために形態テンプレートを生成し、更新し、使用するという観点から説明されたが、これらに加え、又はこれらの代わりに、本発明の原理を他のタイプの心臓形態テンプレートの生成及び/又は使用に適用することができる。
【0105】
例えば、不整脈の発現の際に生じる心拍は、正常な心拍の特徴と区別できる特性を有する可能性がある。ある場合には、不整脈が疑われる心拍を、正常な心拍形態を特徴付ける形態テンプレートと比較することができる。感知した心拍形態が正常な心拍形態と十分に異なっている場合は不整脈を確認する。別の場合では、感知した不規則な心拍を、異なるタイプの単形性不整脈に関連する1つ以上のテンプレートと比較することができる。患者に生じた単形性不整脈のタイプを、不整脈の心拍と形態テンプレートのうちの1つとの類似度に基づいて決定することができる。
【0106】
本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更及び追加を前述の好適な実施の形態に対して行うことができる。従って、本発明の範囲は前述の特定の実施の形態によって限定されるべきでなく、後述する請求の範囲とその同等物によってのみ定義されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1A】本発明の実施の形態によるテンプレート生成のための心臓波形クラスタリングを用いた方法を示すフローチャートである。
【図1B】本発明の実施の形態によるテンプレート生成のための心臓波形クラスタリングを用いた方法を示すフローチャートである。
【図2A】本発明の実施の形態によるテンプレート生成のためのクラスタリングの使用を示す概念図である。
【図2B】本発明の実施の形態によるテンプレート生成のための心臓波形クラスタリングを用いた方法のフローチャートである。
【図2C】本発明の実施の形態によるテンプレート生成方法を示すフローチャートである。
【図2D】本発明の実施の形態によるテンプレート生成方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態による心臓応答テンプレートの生成に利用できる捕捉応答、融合応答及び内因性応答を表す多数の心臓信号を示すグラフである。
【図4】図3に示す捕捉信号、融合収縮及び内因性応答のピークを示すグラフである。
【図5】本発明の実施の形態によるテンプレートの形成に使用可能な心臓応答検出ウィンドウを示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に従い、クラスタリングによって形成された検出ウィンドウを使用してペーシングに対する種々のタイプの心臓応答を検出することのできる態様を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に従い、クラスタリングによって形成された検出ウィンドウを使用してペーシングに対する種々のタイプの心臓応答を検出することのできる態様を示す図である。
【図8A】本発明の実施の形態による、心臓信号の形態の変化に適応するための検出ウィンドウの調節を示す図である。
【図8B】本発明の実施の形態による、心臓信号の形態の変化に適応するための検出ウィンドウの調節を示す図である。
【図8C】本発明の実施の形態による、心臓信号の形態の変化に適応するための検出ウィンドウの調節を示す図である。
【図8D】本発明の実施の形態による、心臓信号の形態の変化に適応するための検出ウィンドウの調節を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態によるテンプレート生成の実施に使用可能な心調律管理デバイスを示す図である。
【図10】本発明の実施の形態によるテンプレートの形成及び適応の実施に好適な心調律管理デバイス(CRM)のブロック図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は概して植込み型医療用具に関し、より詳細には、テンプレート生成のための心臓波形クラスタリングを用いた心臓デバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓は、正常に機能している際は律動収縮を生じ、全身に血液を送り出すことができる。しかし、病気や怪我によって心拍が不規則になり、ポンプ効率が低下する場合がある。不整脈は、多様な健康状態や疾病過程から生じる心拍の不規則性を説明するために用いられる一般用語である。植込み型ペースメーカーや心臓除細動器のような心調律管理システムが、重症の不整脈患者への効果的な治療法として使用されている。これらのシステムは一般に、心臓からの電気信号を感知する回路と、電気刺激パルスを心臓に送るパルス発生器とを含む。患者の心臓内に延びたリードが電極に接続されており、電極は心筋と接触して心臓の電気信号を検出し、種々の不整脈治療法に従って刺激パルスを心臓に送る。
【0003】
心調律管理システムは、電極に隣接する心臓組織を刺激して組織の収縮を生じるように作動する。ペースメーカーは、心臓のポンプ効率を維持する収縮律動を心臓が生じるのを助けるようにタイミングを合わせた一連の低エネルギーペーシング(刺激)パルス(pace pulses)を送出する心調律管理システムである。ペーシングパルスは、患者の要求に合わせて断続的にしたり、連続させたりすることもできる。1つ以上の心腔を感知してペーシングを行う種々のモードを備えたペースメーカーデバイスが多種類ある。
【0004】
ペーシングパルスが心臓組織に収縮を生じると、この収縮の前に生じた電気心臓信号は捕捉応答(CR(captured response))を表す。一般に、捕捉応答は、心臓の収縮に関連する誘発応答信号と呼ばれる電気信号と、電極と組織の接触面におけるペーシング後の残留分極に関連する重畳信号を含む。ペーシング後残留分極信号、即ちペーシングアーチファクトの大きさは、例えばリードの分極、ペーシングパルスからの後電位、リードのインピーダンス、患者のインピーダンス、ペーシングパルスの幅、そしてペーシングパルスの振幅を含む多様な要因の影響を受ける場合がある。
【0005】
ペーシングパルスは、収縮を生じるために最小のエネルギー値、即ち捕捉閾値を上回る必要がある。ペーシングパルスは、捕捉閾値を大幅に上回るエネルギーを消費することなく、心臓の捕捉を刺激するのに十分なエネルギーを有することが望ましい。よって、ペーシングエネルギーを有効に管理するには、捕捉閾値を正確に決定することが必要である。ペーシングパルスのエネルギーが低すぎると、ペーシングパルスは心臓の収縮応答を確実に生じることができず、ペーシングが無効になる場合がある。ペーシングパルスのエネルギーが高すぎると、患者が違和感を覚え、デバイスの電池の寿命が短くなる場合がある。
【0006】
ペーシングパルスが心臓を「捕捉」して収縮を生じたかを検出することで、心調律管理システムは、捕捉を確実に生じる最適のエネルギー消費に対応するようにペーシングパルスのエネルギーレベルを調節することができる。また、捕捉検出によって、心調律管理システムは、ペーシングパルスが収縮を生じないときはいつでも、より高いエネルギーレベルでバックアップパルスを開始することができる。
【0007】
融合収縮は、1つの特定の心腔であるが別々の開始位置からの2つの心臓脱分極が結合すると生じる心臓収縮である。時には、ペーシングパルスによって開始された脱分極が内因性心拍と結合して融合収縮を生じる場合がある。融合収縮は、心電図の記録にみられるように種々の形態を呈する。融合収縮の結合脱分極は、全脱分極に一様に寄与してはいない。
【0008】
心房ペーシング時の自発性P波又は心室ペーシング時の自発性QRS群にペーシング刺激が送られると偽融合収縮が生じる。偽融合収縮では、電極周辺の組織が既に自発的に脱分極していて不応期に入るため、ペーシング刺激が無効になる場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
例えば、捕捉検出は、融合/偽融合収縮、内因性心拍、ノイズ及び非捕捉から捕捉収縮を区別することを含む。種々の応答タイプを表すテンプレートと心臓信号を比較することで、種々の心臓応答を区別することができる。本発明は、種々の心臓応答の認識に関連して用いられるテンプレートの生成方法及びシステムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、テンプレート生成のための心臓波形クラスタリングを用いた種々の心臓デバイス及び方法に関する。本発明による心臓応答の特徴付け方法は、捕捉閾値よりも大きいエネルギーを有するペーシングパルスを心臓に送ることを含む。ペーシングパルスに次いで心臓信号を感知する。感知した心臓信号を用いて、1つ以上の初期テンプレートを選択的に更新してもよい。選択した1つ以上のテンプレートを用いて心臓応答テンプレートを形成してもよい。初期テンプレートの選択的な更新は、感知した心臓信号のうち選択した心臓信号を用いた特定のテンプレートの更新を含んでもよい。実施の形態は、感知した心臓信号をテンプレートの各々と比較し、この比較に基づいた心臓信号を用いてテンプレートを選択的に更新すること(例えば、心臓信号の特徴とテンプレートの特徴を比較し、及び/又は各テンプレートと各心臓信号との類似度を決定し、特定の心臓信号に対して特定の類似度を有する特定のテンプレートを選択的に更新すること)によるテンプレートの選択的な更新を更に含んでもよい。
【0011】
テンプレートの選択的な更新は、カウンタを各テンプレートに関連させ、特定のテンプレートを更新する場合に特定のテンプレートに関連するカウンタを増加させることを含んでもよい。選択したテンプレートを用いた心臓応答の特徴付けは、他のテンプレートよりも数の多い心臓信号に関連付けられた特定のテンプレートを用いて心臓応答を特徴付けることを含んでもよい。捕捉閾値テストの際、及び/又は自動捕捉検証のために、選択したテンプレートを用いてペーシングに対する心臓応答を心拍ごとに分類してもよい。
【0012】
本発明に従ってペーシングに対する心臓応答を特徴付ける他の方法は、捕捉を行うのに十分なエネルギーのペーシングパルスを心臓に送り、ペーシングパルスの送出後に個々の心臓信号を感知することを含む。心臓信号をクラスタリングし、複数のクラスタを定義する。これにより、複数のクラスタのうち選択した1つ以上のクラスタを用いて心臓応答テンプレートを形成することができる。心臓信号のピーク時間、負のピーク及び/又は正のピークに関連するピーク時間、心臓信号のピーク振幅、又は他の特徴や信号属性など、心臓信号の1つ以上の特徴を用いて複数のクラスタを定義してもよい。同様の特性を有する最多数の心臓信号に関連したクラスタを用いて心臓応答テンプレートを形成することにより、選択したクラスタを用いて心臓応答テンプレートを形成してもよい。
【0013】
本発明の更なる実施の形態は、ペーシングに対する心臓応答を特徴付けるデバイスに関する。このデバイスは、ペーシングパルスを心臓に送った後に心臓信号を感知するよう構成された感知システムを含んでもよく、この感知システムにはプロセッサが結合されている。心臓信号を用いて複数のテンプレートを選択的に更新し、テンプレートのうち選択したテンプレートを用いてペーシングに対する心臓応答を特徴付けるようにプロセッサを構成してもよい。また、プロセッサは、1つ以上の初期テンプレートを提供し、初期テンプレートを選択的に更新するように構成されてもよい。ペーシング応答からの心臓信号をテンプレートの各々と比較し、この比較に基づいた心臓信号を用いてテンプレートを選択的に更新するようにプロセッサを構成してもよい。
【0014】
他の実施の形態は、各テンプレートと各心臓信号の類似度を決定し、特定の心臓信号に対して特定の類似度を有する特定のテンプレートを更新するように構成されたプロセッサを提供する。所定数の心臓信号を照合してから他のテンプレートとこれらの心臓信号の照合を行うなど、ある基準によって選択したテンプレートを用いて心臓応答を特徴付けるようにプロセッサを構成してもよい。
【0015】
更に別の実施の形態は、ペーシングに対する心臓応答を特徴付けるシステムを含む。このシステムは、捕捉を行うのに十分なエネルギーでペーシングパルスを心臓に送出するように構成されたパルス発生器を含む。センサシステムが、ペーシングパルスの送出後に個々の心臓信号を感知するよう構成されている。プロセッサがセンサシステムに結合されており、このプロセッサは、心臓信号をクラスタリングして複数のクラスタを定義し、複数のクラスタのうち選択した1つ以上のクラスタを用いて心臓応答テンプレートを形成するように構成されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の前述の概要は、本発明の各実施の形態又は各実施態様の説明を意図するものではない。添付の図面に関連する以下の詳細な説明及び請求の範囲を参照することにより、本発明の利点及び達成点が明らかになって理解され、本発明がより完全に理解されるであろう。
【0017】
本発明は種々の変更物や代わりの形態を生じうるが、本発明の詳細を図面に例として示し、以下に詳細に説明する。しかし、記載する特定の実施の形態に本発明を限定する意図ではないことが理解されよう。反対に、本発明は、添付の請求の範囲によって定義された本発明の範囲内に入る変更物、同等物及び代替物を全て含むように意図される。
【0018】
例示する実施の形態の下記の説明では、本明細書の一部を形成する添付の図面を参照する。これらの図面には、本発明を実施することのできる種々の実施の形態が例として示されている。他の実施の形態を用いてもよく、構造上及び機能上の変更が本発明の趣旨を逸脱しない範囲で可能であることが理解されよう。
【0019】
種々の心臓状態の認識は、その状態に関連する心臓信号のタイプの一貫した形態に依存することができる。例えば、特定の心臓の状態に関連する心臓信号のサンプル及び/又は特性に基づいて形態テンプレートを形成することができる。心臓デバイスは、感知した心臓信号を後で形態テンプレートと比較し、感知した心臓信号が形態テンプレートと十分に類似している場合はこの形態テンプレートに関連する心臓の状態が存在すると判断することができる。同様に、感知した心臓信号が形態テンプレートと十分に異なる場合は、この形態テンプレートに関連する心臓の状態を除いた状態を決定することができる。
【0020】
心腔に適用されるペーシングパルスに対する心臓応答を、ペーシング後に心腔内で感知した心臓信号の形態の特徴に基づいて決定することができる。ペーシングパルスに対する心臓応答は、例えば、内因性活動を伴わない非捕捉、捕捉、融合、偽融合収縮、そして内因性活動を伴う非捕捉を含むことができる。形態テンプレートを使用して、これらのタイプの心臓ペーシング応答のうち1つ以上を表すことができる。ペーシング後に感知した心臓信号を1つ以上の形態テンプレートと比較することができる。ある実施態様では、心臓信号のサンプル及び/又は特性を心臓信号から抽出し、特定のタイプの心臓ペーシング応答を特徴付ける形態テンプレートのうち1つ以上の形態テンプレートに関連するサンプル及び/又は特徴と比較する。感知した心臓信号のサンプル及び/又は特性と、形態テンプレートのうちの1つとの類似度に基づいて、心臓ペーシング応答のタイプを決定することができる。
【0021】
ペースメーカー、除細動器又は他の心調律管理(CRM)デバイスによって心臓応答の分類を行い、加えられた電気ペーシング刺激に対する心臓の応答を決定することができる。本発明の実施の形態は、心臓信号又は信号特徴のクラスタリングを用いて、ペーシングに対する種々のタイプの心臓応答を特徴付けるテンプレートを生成する心臓デバイス及び方法に関する。
【0022】
CRMデバイスのいくつかの機能は、一定の状態を検出するために心拍の一貫性に依存することができる。例えば、心臓ペーシング応答の特徴付けアルゴリズムは、ペーシングパルスが捕捉応答や他の応答を生じるか否かを判断する基準として心臓応答のテンプレートに依存することができる。しかし、捕捉応答信号の形態は患者によって異なり、時間と共に変化する場合がある。従って、捕捉応答(又は他のタイプの心臓信号)を特徴付けるテンプレートを患者ごとに定期的に生成したり更新したりする必要が生じうる。
【0023】
本発明の実施の形態によるテンプレート形成方法を示すフローチャートを図1Aに示す。複数のペーシングパルスを心臓に送る(112)。これらのペーシングパルスに関連する心臓信号を感知する(114)。類似する心臓信号のクラスタを形成する(116)。クラスタを用いて、1つ以上のタイプの心臓ペーシング応答を特徴付けるテンプレートを生成することができる(120)。心臓信号のクラスタリングは、アナログ及び/又はデジタル処理技術を含む多様な技術を用いて実行可能である。クラスタリング処理に関する例示的な実施の形態をいくつか本明細書に述べているが、これらに加え、又はこれらの代わりに他の処理を使用してもよく、これらの処理は本発明の範囲内とみなされる。
【0024】
図1Bは、本発明の実施の形態による他のテンプレート形成方法を示している。複数のペーシングパルスを心臓に送り(130)、各ペーシングパルスの後に心臓信号を感知する(140)。心臓信号の特徴を抽出する(150)。心臓信号の特徴を用いて複数のクラスタを形成する(160)。複数のクラスタのうち1つ以上のクラスタを用いて心臓ペーシング応答を特徴付ける(170)。
【0025】
例として、捕捉応答用テンプレートの生成を考える。1つの目標は、捕捉応答用テンプレートを生成することであり、これと同時に、融合/偽融合収縮、ノイズ又は他のタイプの応答の影響を避けることである。応答テンプレートの生成に融合収縮が含まれると、誤差成分がテンプレートに加えられてしまう。テンプレートが所望の応答以外の応答からの情報を含むと、テンプレートと今後生じうる捕捉収縮との相関関係が最適にならず、識別能力を低下させる原因となりうる。
【0026】
本発明によるテンプレートの生成は、望まれない応答信号が含まれるのを緩和する。捕捉応答が一貫した形態を有すると認識することにより、望まれない信号が特定のテンプレートに含まれるのを緩和することができる。類似度による信号特徴のクラスタリングは、テンプレート生成のための信号除外基準をもたらす。クラスタリングは、K平均クラスタリングアルゴリズム、自己組織化マップアルゴリズム又は他のデータクラスタリングアルゴリズムのような技術を用いて行うことができる。
【0027】
捕捉応答テンプレートの生成例の説明を進めると、閾値を越える一連のN個(Nは正の整数)のペーシングを送ると仮定する。N個のペーシングを全て送った後に適用可能であるか又は応答信号を集める際に適用可能であるクラスタリングアルゴリズムを、本発明に従って抽出したペーシング応答信号の特徴に適用することができる。N個のペーシングを送った後、クラスタの特徴を有する応答信号のみを用いてテンプレートを生成し、他の信号を全てテンプレート生成から除外することができる。応答信号を集める際に適用する場合は、クラスタの特徴を有する応答信号のみを用いてテンプレートを生成し、これによってクラスタへの信頼を築き、各選択応答信号を用いてテンプレートを調節し、他の信号を全てテンプレート生成から除外することができる。クラスタごとに、又は選択したクラスタのためにテンプレートを生成することにより、複数のテンプレートを同時に生成してもよい。
【0028】
例えば、N個全てのペーシングに対する応答を記録し、信号を3つのクラスタ、即ち捕捉応答、融合応答及び他の応答に分けるクラスタリングアルゴリズムによって処理することができる。全てのペーシングパルスが捕捉閾値を上回ることが事前にわかっており、捕捉を促すようにペーシングパラメータを選択する場合、捕捉応答の数が優勢になり、その後に融合/偽融合収縮の数が続き、そして場合によってはノイズや未知の応答のような他の応答が含まれることが予期される。捕捉テンプレートは、優勢なクラスタ内の信号を用いて生成可能である。例えば、最大多数の類似ペーシング応答を有するクラスタを、捕捉応答テンプレートの生成に使用するクラスタとして選択することができる。
【0029】
Nよりも小さい正の整数である数Pのような所定数の信号がクラスタに関連するときのみにこのクラスタを用いるなど、上記の例を用いて他の基準を課すこともできる。本発明によるテンプレート生成のための心臓波形クラスタリングは心臓応答の正確なテンプレートをもたらし、望ましくない心拍がテンプレートの推定に及ぼす影響を低減する。
【0030】
テンプレート生成のためのクラスタリングの使用を図2Aの概念図によって示す。図2Aでは、13の連続ペーシングに応答する測定心臓信号を円201乃至213として示す。各円201乃至213は、13のペーシングに応答する心臓信号の特徴、一連の特徴点又は全体的な心臓波形に対応することができる。円201は第1のペーシング応答の特徴、特徴点又は波形に対応することができ、第2の円202は第2のペーシング応答の特徴、特徴点又は波形に対応することができる。いくつかの実施の形態では、円213を13番目のペーシング応答の特徴、特徴点又は波形に対応して測定するまでペーシング及び応答測定処理を続ける。他の実施の形態では、各測定を行った後に心拍ごとにクラスタリングを行うことができる。
【0031】
応答201、202、204、205、209、210、212及び213の類似度に基づき、応答201、202、204、205、209、210、212及び213をクラスタ220に分類する。応答203、206及び211をクラスタ230に分類する。応答207及び208をクラスタ240に分類する。クラスタ220の応答201、202、204、205、209、210、212及び213は捕捉応答を含むように決定でき、クラスタ230の応答203、206及び211は融合/偽融合収縮を表すように決定でき、クラスタ240の応答207及び208はノイズの多い信号又は未知の心臓応答とすることができる。
【0032】
クラスタ内の応答の類似度を、心臓信号の1つ以上の形態的特徴に基づいて決定することができる。1つの実施態様では、システムは、ピーク幅、ピーク振幅及びピークタイミングのうち1つ以上の類似度を決定することができる。他の実施態様では、ある心臓信号からの一連のサンプルを他の心臓信号からの対応する一連のサンプルと比較し、これらの信号が類似しているかを判断することができる。
【0033】
心臓波形特徴、一連の特徴点又は心臓波形のクラスタリングは、類似する特徴、一連の特徴点又は心臓波形の分類を含む。
【0034】
1つの実施態様によると、クラスタリングを用いてテンプレートを形成する方法は、特定のタイプの心臓ペーシング応答に関連する多数の心臓信号の対応する心臓信号特徴を決定し、これらの心臓信号特徴をクラスタリングしてテンプレートを形成することを含むことができる。心臓信号の特徴点同士の関係を決定し、これらの関係に基づいて特徴点のクラスタを形成することにより、クラスタリングを行うことができる。K平均アルゴリズム、自己組織化マップアルゴリズム又は他のデータクラスタリングアルゴリズムを含む多様なクラスタリングアルゴリズムを用いて、このようなクラスタリングを行うことができる。
【0035】
他の実施態様によると、例えば第1の検出心臓信号の1つ以上の特徴点を用いて初期テンプレートを形成し、規則のセットに基づいた初期特徴点を用いて更なる心臓信号の更なる特徴点をクラスタリングすることにより、クラスタリングを行うことができる。例えば、更なる特徴点が初期テンプレートの対応する特徴点と十分に類似している場合、初期テンプレートの特徴点を用いて更なる特徴点をクラスタリングすることができる。この実施態様における類似度は、必ずしも特徴点同士の関係に基づいているわけではない、外部で決定した規則のセットによって決定されてもよい。
【0036】
図2Bは、本発明の実施の形態によるテンプレート生成のための心臓波形クラスタリングを用いた方法170のフローチャートである。捕捉閾値を越えたレベルの2つ以上のペーシングパルスを患者の心臓に送る(172)。心臓応答信号を感知し(174)、心臓信号特徴の測定を行う。1つ以上の初期テンプレートを提供する。1つ以上の初期テンプレートを、1つ以上の心臓信号を用いて生成してもよく、推定してもよく、メモリから検索してもよく、規則ベースの方法に従って形成してもよく、他の方法によって形成してもよい。選択した心臓応答信号を用いて、1つ以上の初期テンプレート(176)を漸増的に調節する。感知した各心臓信号を用いて、1つ以上のテンプレートのうち特定のテンプレートを調節することができる(176)。クラスタリングアルゴリズムを用いて、心臓信号特徴の測定に基づいたテンプレートの調節を行うことができる。1つ以上のテンプレートを選択して心臓応答を特徴付けることができる(178)。1つの例では、テンプレートのうちの1つを選択して捕捉応答を特徴付けることができる。他の例では、クラスタリング処理によって形成された第1のテンプレートを用いて捕捉応答を特徴付けることができ、第2のテンプレートを用いて融合/偽融合収縮応答を特徴付けることができる。
【0037】
図2Cは、本発明の実施の形態によるテンプレート生成方法139のフローチャートである。NT(整数)個のペーシング周期を選択し、NT個ペーシング周期ループ140乃至162を用いてテンプレート生成処理を開始する(140)。ペーシングを心臓に送り、ペーシングパルスに関連する心臓信号を感知する(142)。ペーシングパルスに関連する心臓信号の特徴又はサンプルを取得する。テンプレートが生成されていないか又は提供されていない場合は、この心臓信号を用いてテンプレートを生成する。初期テンプレートを保存し(156)、ペーシング周期ループを終了して(162)NTのカウントを増やした後にペーシング周期を続ける。心臓信号に関連する情報を保存し、この情報を、ペーシングパルスのペーシングエネルギー(電圧及び/又はパルス幅)、ペーシング速度、AV(房室)遅延、VV(静脈弁)間隔及び/又は他のペーシングパラメータ設定もしくは測定値などのテンプレートに関連させることができる。テンプレートが既に形成されているか又は提供されている場合、処理はブロック146乃至152によって表されるループへ続く。ループ146乃至152では、照合148において心臓信号を既存のテンプレートと比較する。照合148によって心臓信号が既存のテンプレートと適合するとわかった場合、テンプレートの推定を改善するためにテンプレートを調節し(150)、ループ146乃至152を続ける。テンプレートの調節は、例えば、特徴値の平均をとるか又は特徴値の加重平均を行うことによって実行可能である。ペーシングパラメータ設定又は測定値など、心臓信号に関連し、テンプレートに関連する保存情報によって表される特性を調節してもよい。
【0038】
全ての既存のテンプレートを心臓信号と比較しても、照合148において適合するテンプレートがない場合は、判断(158)を行ってテンプレートの追加又は取替を行う(160)。新しいテンプレートを追加もしくは推定するか、又は古いテンプレートを取り替えることによって新しいテンプレートを生成することができる。種々の実施態様では、取替対象のテンプレートは、最も古いテンプレートや適合心拍数が最小のテンプレートを含んでもよい。全てのテンプレートが少なくとも最小適合心拍数、例えば約1の心拍を有する場合は、テンプレートを取り替えないで心周期を無視してもよい。方法139によって使用されるテンプレートの最大数を所定の数に限定することができる。
【0039】
1つの実施態様では、NT個ペーシング周期ループ140乃至162は、全てのNT個ペーシングが完了するか又は他の基準を満たすまで続く。例えば、NT個ペーシング周期ループは、テンプレートがNT−M個の心拍(Mは許容不適合心拍数を表す)よりも大きい数の心拍と適合した場合に成功して(テンプレートの推奨ありで)終了することができる。他の実施の形態では、一定数のペーシング周期の後にテンプレートの最大適合数が所定の数を下回る場合、ペーシング周期ループ140乃至162は失敗して(テンプレートの推奨なしで)終了することができる。より具体的には、ペーシング周期ループ140乃至162は、約3回のペーシング周期の後にテンプレートの最大適合数が約1を下回る場合、失敗して終了することができる。
【0040】
NT個ペーシング周期ループ140乃至162においてNT個のペーシングが全て完了したら、1つ以上のテンプレートが、特定のタイプの心臓ペーシング応答を表すテンプレートとして保存するための基準を満たしているかを決定するために判断を行う(164)。例えば、テンプレートに捕捉応答の特徴付けが望まれる場合、以下の基準を含むことができる。即ち、NT個ペーシング周期ループ140乃至152のNT回ペーシング心拍のうち、テンプレートを(NT−M)回(Mはテンプレート生成の試みを失敗させる所定の不適合心拍数を表す)更新した場合、このテンプレートを捕捉応答テンプレートと認め、よって捕捉応答テンプレートの生成が成功する(166)。この基準を用いて、テンプレートを(NT−M)回更新していない場合、このテンプレートを捕捉応答テンプレートとして認めず、よってテンプレートの生成が失敗する(154)。追加の基準を適用してテンプレート生成を早くに終了させてもよい。照合148において、NT個ペーシング周期が完了する前に所定のM個の不適合を実現したり、保存した初期テンプレート(156)の後にくる最初の周期が適合しない場合、テンプレート生成の試みは失敗する。
【0041】
各ペーシング周期ループ140乃至162は、テンプレートを生成する試みを表している。所定数のペーシング周期ループ140乃至162を行う場合、テンプレートを生成する試みをしばらくの間保留するか、又はやめることができる。
【0042】
図2Dは、本発明の実施の形態による閾値テスト時のテンプレート生成方法を示すフローチャートである。テンプレート生成処理が開始する(251)と、テンプレートを生成するための最大数の試みを行ったかを確認するために照合を行う(252)。最大数の試みを行った場合、この処理から出て(253)閾値テストを後に延期することができる。
【0043】
最大数の試みを行っていない場合(252)、NT個ペーシング周期のループ254乃至265を開始する(254)。ペーシングパルスを送り、ペーシングパルス後の心臓信号を感知する(255)。感知心臓信号から特徴を抽出する。NT個ペーシング周期のループ254乃至265において最初の周期(256)である場合、抽出した特徴を初期テンプレートとして保存する(257)。NT個ペーシング周期のループ254乃至265において最初の周期(256)ではない場合、この周期の感知した心臓信号の特徴が、保存したテンプレートの特徴と類似しているかを判断するために照合を行う(258)。感知した心臓信号の特徴が保存したテンプレートの特徴と十分に類似している(258)場合、感知した心臓信号の特徴を用いてテンプレートの特徴を更新する(259)。
【0044】
NT−M個の周期の心臓信号特徴がテンプレートの特徴と類似している場合(263)、テンプレート生成が成功する(264)。
【0045】
心周期の心臓信号特徴がテンプレートの特徴と類似していない場合(258)、初期テンプレート形成後の心周期の数に基づいて照合を行う(260)。初期テンプレート形成後に所定数の周期の心臓信号特徴がテンプレートと類似していない(260)か、又はテンプレートと類似していない心臓信号がM個ある場合(262)、テンプレート生成の試みを失敗して終了する(261)。
【0046】
図3乃至図5のグラフは、本発明の方法によるテンプレート形成処理を示している。図3は、文字Cで識別される捕捉応答、文字Fで識別される融合応答及び文字NCで識別される捕捉されない内因性の応答を表す多数の心臓信号を示したグラフである。これらの応答の特徴をクラスタリングして、それぞれ異なるタイプの応答を表すテンプレートや、いくつかの応答を表すが他の応答を除いたテンプレートを形成することができる。いずれの場合でも、種々の応答の区別が可能になる。この例では、クラスタリングする特定の特徴は心臓信号のピーク振幅とピークタイミングを含む。クラスタリングしたピークを用いて、振幅及び時間に関連して定義した1つ以上の分類ウィンドウを含むテンプレートを形成する。
【0047】
図4は、図3に示す捕捉応答、融合応答及び非捕捉内因性応答のピークを示すグラフである。捕捉信号のピークを文字cで示し、融合収縮のピークを文字fで示し、内因性の応答を文字iで示す。心臓信号のピークをクラスタリングし、1つ以上の検出ウィンドウ430、460及び470を含むテンプレートを形成する。検出ウィンドウへのピークの包含、検出ウィンドウからのピークの除外、又は検出ウィンドウ430、460及び470の組み合わせを用いて異なる心臓応答を区別することができる。
【0048】
図5は、第1の捕捉検出ウィンドウ550、第2の捕捉検出ウィンドウ540及び内因性検出ウィンドウ560を示している。この例では、検出ウィンドウ550、540及び560の中点515、525及び535がそれぞれ示されている。例えば、クラスタリングした心臓信号の特性の座標に基づいて、検出ウィンドウ550、540及び560の境界を計算することができる。
【0049】
1つの実施態様では、特性座標の平均を、検出ウィンドウ内の中央や他の位置などの点として定義することができる。この例では、例えば、円、正方形、長方形、菱形又は他の四辺形など、所定の形状に従って検出ウィンドウの境界を定めることができる。この他に、又はこの代わりに、所定の領域を囲むように検出ウィンドウを生成することができる。検出ウィンドウ550、540及び560の初期設定後、これらの検出ウィンドウを用いて捕捉応答、融合/偽融合収縮応答及び/又は内因性興奮を伴う非捕捉応答を検出することができる。
【0050】
図6及び図7は、クラスタリングによって形成された検出ウィンドウを用いてペーシングに対する種々のタイプの心臓応答を検出することができる態様を示している。心腔へのペーシングパルス送出後に1つ又は複数の間隔で感知された心腔の心臓信号を、本発明の実施の形態による心臓ペーシング応答の決定に使用することができる。図6に示すように、心臓、例えば右心室にペーシング刺激610を送る。ペーシングパルス610の送出に次いで、感知した心臓信号を、一般に約0ミリ秒乃至40ミリ秒である一定期間620の間ブランクにする。
【0051】
ブランク時間620の後、第1の間隔630において心臓信号を感知することができる。第1の間隔630の持続時間を、例えば約325ミリ秒未満など、プログラム可能な持続時間とすることができる。第1の間隔630において心臓信号が閾値を越えなかった場合、心臓応答を非捕捉として分類することができる。心臓信号が閾値を越えた場合、心臓信号の種々の特性又は特徴を抽出し、心臓応答テンプレートと比較して心臓ペーシング応答のタイプを決定することができる。場合によっては、特徴抽出及びテンプレート比較に関連する心臓信号の感知を、第2の間隔640のような更なる間隔まで延ばすことができる。第2の間隔640をプログラム可能とし、約325ミリ秒未満の持続時間にすることができる。更なる間隔の持続時間は第1の間隔の持続時間と異なっていてもよいし、同じでもよい。あるいは、第1及び第2の間隔の持続時間を同じにしてもよい。
【0052】
1つの間隔230の終わりともう1つの間隔640の始まりの間に遅延時間650を設けることができる。遅延の持続時間を、例えば約0ミリ秒(遅延なし)から約40ミリ秒の範囲にすることができる。ペーシング刺激610に対する心臓応答を、心臓応答テンプレートとの比較に関して、第1の間隔630及び/又は更なる間隔640において感知した心臓信号の特性又は特徴に基づいて分類することができる。
【0053】
図7は、図5に示すような心臓応答検出ウィンドウを用いて形成されたテンプレートを捕捉検出に使用することができる態様を示すグラフである。図7は、捕捉応答信号784、融合応答信号782及び非捕捉内因性信号780を示す重畳グラフを示し、これらを含む。ペーシング710の送出後、ブランク時間715の間感知チャネルをブランクにする。例えば、感知増幅器から感知電極の接続を断つか、又は感知増幅器を不作動状態にする。ブランク時間の後、1つ以上の間隔720及び750において心臓信号を感知する。図6に示すように、感知はペーシングパルス後に2つの間隔において生じることができる。場合によっては、第2の間隔750及び後続する間隔(図示せず)を、1つ以上の前の間隔において生じたイベントによって引き起こすことができる。
【0054】
種々の実施態様では、ペーシング刺激の送出に用いたのと同一の電極の組み合わせを用いて感知を行うことができる。他の実施態様では、第1の電極構成を用いてペーシング刺激を送ることができ、感知は第2の電極構成を用いることができる。複数の間隔、ならびに種々の感知ベクトル及びペーシングベクトルを用いた心臓応答に対するペーシングの分類システム及び方法は、同一出願人による米国特許出願、即ち2003年12月11日出願の「複数の分類ウィンドウを用いた心臓応答分類("Cardiac Response Classification Using Multiple Classification Windows")」というタイトルの10/733,869号、2003年12月12日出願の「再トリガ可能な分類ウィンドウを用いた心臓応答分類("Cardiac Response Classification Using Retriggerable Classification Windows")」というタイトルの10/734,599号、そして2003年12月12日出願の「多部位感知及びペーシングを用いた心臓応答分類("Cardiac Response Classification Using Multisite Sensing And Pacing")」というタイトルの10/735,519号に記載されている。
【0055】
第1の間隔720の間、システムは閾値レベル740を越える正又は負の心臓信号の大きさを感知する。この心臓信号の大きさが第1の間隔720の間に閾値740を越えない場合、心臓応答を非捕捉として分類し、バックアップペーシング770を送ることができる。バックアップペーシング770は、一般にバックアップ間隔(BPI)730の後に送る高エネルギーペーシングである。例えば、バックアップ間隔730は、最初のペーシング710の送出から計時した約100ミリ秒の間隔を含むことができる。
【0056】
このシステムは、1つ以上の心臓応答分類ウィンドウ755、756及び760を利用して種々の心臓ペーシング応答を検出することができる。本発明の実施の形態によるテンプレート生成方法を用いて分類ウィンドウ755、756及び760のうち1つ以上を形成することができる。心臓応答分類ウィンドウ755、756及び760は、振幅及び時間に関して定義された領域である。
【0057】
心臓信号の第1のピーク値を第1の検出ウィンドウ755において検出し、心臓信号の第2のピーク値を第2の検出ウィンドウ756において検出した場合、システムはこの心臓応答を捕捉として分類することができる。第1の捕捉検出ウィンドウ755や第2の捕捉検出ウィンドウ756ではなく、内因性検出ウィンドウ760において心臓信号のピークを検出した場合、この心臓応答を、内因性興奮を伴う非捕捉として分類することができる。その他の場合は、心臓応答を融合/偽融合収縮として分類することができる。
【0058】
特定のタイプの心臓ペーシング応答を特徴付けるテンプレートを、心臓ペーシング応答のゆるやかな形態的変化に合わせるように適応させることができる。心臓信号の波形、例えば捕捉応答を表す心臓信号の波形は、時間の経過に伴って形態の自然な変動を示す場合がある。心臓波形の形態は、テンプレートを調節しない限り、最初に設定したテンプレートから徐々に離れるように移動する場合がある。
【0059】
本発明の実施の形態に従って、1つ以上の検出ウィンドウを調節して心臓波形形態の変化に合わせることができる。特定の検出ウィンドウとこれに関連する波形特徴(例えば心臓信号のピーク)との関係(例えば空間関係)に従って、特定の検出ウィンドウを調節することができる。検出ウィンドウの調節は、例えば検出ウィンドウのサイズ、形状又は位置の変更を含むことができる。
【0060】
時間座標(通常はx軸座標として表す)及び振幅座標(y軸座標)により、ピークなどの心臓特徴の位置を識別することができる。検出した特徴の振幅座標と、関連する検出ウィンドウの振幅範囲との関係に基づいて検出ウィンドウを調節することができる。また、検出した関連特徴の時間座標と検出ウィンドウの時間範囲との関係に基づいて検出ウィンドウを調節することができる。他の例では、検出した関連特徴の時間座標及び/又は振幅座標の変動に基づいて検出ウィンドウを調節することができる。
【0061】
本発明の実施の形態によると、検出ウィンドウの調節は、関連する心臓特徴の位置の方向に検出ウィンドウを変更することを含む。種々の例では、検出した心臓特徴は特定の検出ウィンドウ内に入るが検出ウィンドウの中心からずれている場合がある。検出ウィンドウ内に入る、検出した関連する心臓特徴点に対して検出ウィンドウを再センタリングするか又は再配向する方向に、検出ウィンドウの位置、サイズ及び/又は形状を変更することができる。例えば、関数ベースの技術又は規則ベースの技術を用いて検出ウィンドウを調節することができる。
【0062】
1つの実施態様によると、ピークなど、検出した関連する心臓波形特徴の現在の位置及び過去の位置に基づいた関数を用いて検出ウィンドウの調節を行うことができる。一例に従って、波形特徴の現在位置及び検出ウィンドウの以前の位置に基づいた指数平均を用いて検出ウィンドウを調節することができる。検出ウィンドウの調節を、下記の数式1に基づいて実施することができる。
【0063】
【数1】
【0064】
αの値を選択することにより、α>0.5に対応する検出ウィンドウの過去の位置の方を重視するか、α<0.5に対応する波形特徴の現在位置の方を重視することができる。αの値は異なる特徴又は特性によって変化しうる。調節後の位置を用いて検出ウィンドウを再センタリングするか又は再配向することにより、検出ウィンドウの位置を決定することができる。
【0065】
他の実施態様では、規則ベースの技術を用いて検出ウィンドウを調節することができる。例えば、1つ以上の再センタリング規則に基づいて、検出ウィンドウを検出した関連特徴点の方向に調節することができる。
【0066】
心拍は、検出ウィンドウの調節に使用される前に一定の条件を満たす必要がある。検出ウィンドウの調節にふさわしい心拍は、一定のタイミング、心拍数、振幅、規則性又は他の基準を満たす必要がある。例えば捕捉応答を表すテンプレートと心拍を比較することができる。心拍がテンプレートと一致する場合、この心拍を用いて1つ以上の捕捉検出ウィンドウを調節することができる。
【0067】
検出ウィンドウの調節を図8A及び図8Bに示す。図8Aは、検出ウィンドウに関連して以前検出した心臓波形特徴の位置に基づいた中心810を有する検出ウィンドウ820を示している。図8Bは、次の心臓信号を感知した後の状況を示している。現在の心臓波形特徴点830を検出する。現在の特徴点830の位置は、図8Aに示す元の中心810の右上に移動している。新しい心臓波形特徴830を中心として配置された現在の検出ウィンドウ840は、元の検出ウィンドウ820から大きく変わったことを表している。1つの例示的な実施の形態では、変更が比較的滑らかになるように検出ウィンドウの調節を行う。過去の検出ウィンドウ820の位置と現在の検出ウィンドウ840の位置の双方に基づいて波形特徴のずれを滑らかに調整するように、例えば数式1や他の方法を用いて調節後の検出ウィンドウ850を決定することができる。検出ウィンドウの調節を、振幅座標及び時間座標に対して所定の上方境界及び下方境界に制限することができる。
【0068】
数式1は、指数平均を用いた検出ウィンドウの位置の調節を数学的に説明しているが、他の検出ウィンドウ位置調節方法も可能である。例えば、他の実施の形態では、移動ウィンドウの平均や、元の検出ウィンドウと波形特徴との間の距離の変化を表す他の関数に従って1つ以上の検出ウィンドウの各々を調節することができる。更なる実施の形態では、規則ベースの方法に従って検出ウィンドウを調節することができる。規則ベースの調節方法は、続いて検出した心臓波形特徴の位置に基づいた量だけ検出ウィンドウの位置を調節することを含むことができる。例えば、所定の数、例えば5つの連続する心臓信号が検出ウィンドウ内に位置する心臓波形特徴を示している場合、検出ウィンドウの位置を増加させて右に移動させるが、元の検出ウィンドウの中心よりも右に移動させることができる。類似した基準を用いて、他の方向、即ち左、上及び下への調節を行うことができる。
【0069】
更に別の実施の形態では、検出ウィンドウの調節は検出ウィンドウの形状及び/又はサイズの調節を含むことができる。図8C及び図8Dは、検出ウィンドウの形状を変更することによる検出ウィンドウの調節を示す図である。図8Cは、中心810を有する検出ウィンドウ820を示している。図8Dは、次の心臓信号を感知した後の状況を示している。検出ウィンドウ820に関連する心臓波形特徴860を検出する。現在の特徴点860の位置は、検出ウィンドウ820の元の中心810の上に移動している。元の検出ウィンドウ820とは異なる形状を有する調節後の検出ウィンドウ870を定義する。検出ウィンドウの調節を所定の限界値に制限することができる。検出ウィンドウの更新方法及びシステムは、弁護士事件整理番号GUID.169PAによって識別される、同一出願人による米国特許出願に記載されており、この方法及びシステムの態様を本発明に関連して用いることができる。
【0070】
本明細書に示すシステムの実施の形態は、概して、当該技術分野で公知のように多数のペーシングモードで作動することのできる植込み型心臓除細動器(ICD)で実施するものとして説明されている。種々のタイプの単心腔及び多心腔植込み型心臓除細動器が当該技術分野で公知であり、本発明によるテンプレート生成のための心臓波形クラスタリングを用いた心臓デバイス及び方法に関連して使用することができる。また、例えば単心腔及び多心腔ペースメーカー、除細動器、カルジオバータ、両心室ペースメーカー、心臓再同期装置及び心臓モニタシステムなど、多様な植込み型又は患者の体外用心調律管理デバイスにおいて本発明の方法を実施することができる。
【0071】
本システムはマイクロプロセッサベースの構造を有する植込み型心臓除細動器に関連して記載されているが、植込み型心臓除細動器(又は他のデバイス)を必要に応じていずれの論理ベースの集積回路構造にも実施できることが理解されるであろう。
【0072】
ここで図面のなかでも図9を参照すると、本発明のテンプレート生成方法の実施に用いることのできる心調律管理システムが示されている。図9の心調律管理システムは心調律管理(CRM)デバイス900を含み、このデバイス900はリードシステム902に電気的及び物理的に結合されている。CRMデバイス900のハウジング及び/又はヘッダは、電気刺激エネルギーを心臓に提供し、心臓の電気活動を感知するのに使用される1つ以上の電極909を組み込むことができる。CRMデバイス900は、CRMデバイスのハウジングの全て又は一部を缶形電極909として用いることができる。また、CRMデバイス900は、例えばCRMデバイス900のヘッダ又はハウジング上に配置された不関(indifferent)電極(図示せず)を含むことができる。CRMデバイス900が缶形電極909及び中立電極の双方を含む場合、一般に電極は互いに絶縁されている。
【0073】
リードシステム902は、心臓901によって生じた電気心臓信号を検出し、ある所定の状態の心臓901に電気エネルギーを提供して心不整脈を治療するように使用される。リードシステム902は、ペーシング、感知及び/又は除細動に使用される1つ以上の電極を含むことができる。図9に示す実施の形態では、リードシステム902は、心腔内右心室(RV)リードシステム904、心腔内右心房(RA)リードシステム905、心腔内左心室(LV)リードシステム906及び心外左心房(LA)リードシステム908を含む。図9のリードシステム902は、本明細書に述べたテンプレート生成方法及び心臓応答区別方法に関連して用いることのできる1つの実施の形態を示している。これらに加え、又はこれらの代わりに、他のリード及び/又は電極を用いてもよい。
【0074】
リードシステム902は、人体に植え込む心腔内リード904、905及び906を含むことができ、心腔内リード904、905及び906の一部は心臓901に挿入されている。心腔内リード904、905及び906は、心臓の電気活動を感知し、例えばペーシングパルスや除細動ショックなどの電気刺激エネルギーを心臓に送って心臓の種々の不整脈を治療する、心臓内に配置可能な種々の電極を含む。
【0075】
図9に示すように、リードシステム902は、心外膜電極などの電極を有し、心臓の外側の位置に配置されて1つ以上の心腔の感知及びペーシングを行う1つ以上の心外リード908を含むことができる。
【0076】
図9に示す右心室リードシステム904は、SVCコイル916、RVコイル914、RVリング電極911及びRV先端電極912を含む。右心室リードシステム904は、右心房920を通って右心室919内に延びる。特に、RV先端電極912、RVリング電極911及びRVコイル電極914は、感知を行って電気刺激パルスを心臓に送るように右心室919内の適切な位置に配置されている。SVCコイル916は、心臓901の右心房室920内、又は心臓901の右心房室920に通じる主静脈内の適切な位置に配置される。
【0077】
1つの構成では、缶形電極909に関連するRV先端電極912を用いて右心室919内の単極ペーシング及び/又は感知を実施することができる。RV先端電極912及びRVリング電極911を用いて右心室内の双極ペーシング及び/又は感知を実施してもよい。更に別の構成では、RVリング電極911を必要に応じて省略し、例えばRV先端電極912及びRVコイル914を用いて双極ペーシング及び/又は感知を行ってもよい。右心室リードシステム904を、一体化した双極ペーシング/ショックリードとして構成することができる。RVコイル914及びSVCコイル916は除細動電極である。
【0078】
左心室リード906は、左心室924のペーシング及び/又は感知を行うように左心室924の中又は周りの適切な位置に配置されたLV遠位電極913及びLV近位電極917を含む。左心室リード906を、上大静脈経由で心臓の右心房920に導くことができる。右心房920から、冠静脈洞入口部、即ち冠静脈洞950の開口内に左心室リード906を配置することができる。リード906を、冠静脈洞950を通って左心室924の冠静脈に導くことができる。この静脈は、心臓の右側から直接アクセスすることができない左心室924の表面にリードが達するためのアクセス経路として用いられる。左心室リード906のリード配置は、鎖骨下静脈にアクセスし、LV電極913及び917を左心室に隣接して挿入するために予め形成されたガイディングカテーテルを通って可能になる。
【0079】
例えば、缶形電極909に関連するLV遠位電極を用いて左心室内の単極ペーシング及び/又は感知を実施することができる。LV遠位電極913及びLV近位電極917を左心室用の双極感知電極及び/又はペーシング電極として併用することができる。心室をほぼ同時に又は段階的に連続してペーシングし、慢性心不全を患う患者の心臓ポンプ効率を高めるように、左心室リード906及び右心室リード904をCRMデバイス900と併用して心臓再同期療法を提供することができる。
【0080】
右心房リード905は、右心房920の感知及びペーシングを行うように右心房920内の適切な位置に配置されたRA先端電極956及びRAリング電極954を含む。1つの構成では、例えば、缶形電極909に関連するRA先端956を用いて右心房920内の単極ペーシング及び/又は感知を提供することができる。他の構成では、RA先端電極956及びRAリング電極954を用いて双極ペーシング及び/又は感知を提供することができる。
【0081】
図9は、左心房リードシステム908の1つの実施の形態を示している。この例では、左心房リード908は、左心房922の感知及びペーシングを行うように心臓901の外側の適切な位置に配置されたLA遠位電極918及びLA近位電極915を有する心外リードとして実施される。例えば、LA遠位電極918−缶形909のペーシングベクトルを用いて左心房の単極ペーシング及び/又は感知を行うことができる。LA近位電極915及びLA遠位電極918を併用して左心房922の双極ペーシング及び/又は感知を実施することができる。
【0082】
ここで図10を参照すると、本発明の実施の形態によるテンプレートの形成及び適用の実施に好適な心調律管理デバイス1000のブロック図が示されている。図10は、機能ブロックに分けられたCRMデバイスを示している。これらの機能ブロックを配置することのできる構成が多くあることが当業者によって理解される。図10に示す例は、実施可能な1つの機能構成である。他の構成も可能である。例えば、更に多い数の機能ブロック、更に少ない数の機能ブロック又は異なる機能ブロックを用いて、本発明の方法によるテンプレート形成方法の実施に好適な心臓除細動器を説明することができる。また、図10に示すCRMデバイス1000はプログラム可能なマイクロプロセッサベースの論理回路の使用を考慮しているが、他の回路の実施態様を用いてもよい。
【0083】
図10に示すCRMデバイス1000は、心臓から心臓信号を受け取り、ペーシングパルス又は除細動ショックの形で電気刺激エネルギーを心臓に送る回路を含む。1つの実施の形態では、CRMデバイス1000の回路は人体への植込みに好適なハウジング1001に入っており、これに密閉されている。CRMデバイス1000への電力は、電気化学電池1080によって供給される。リードシステムの導線をCRMデバイス1000の回路に物理的及び電気的に取り付けることができるように、コネクタブロック(図示せず)がCRMデバイス1000のハウジング1001に取り付けられている。
【0084】
CRMデバイス1000は、制御システム1020及びメモリ1070を含むプログラム可能なマイクロプロセッサベースのシステムとして構成することができる。メモリ1070は、他のパラメータと共に種々のペーシングモード、除細動モード及び感知モードのパラメータを記憶することができる。メモリ1070は、例えば、それまでのEGM及び治療データを記憶し、関連するクラスタを用いた分類の前後に心臓信号及び/又は心臓信号特徴を保持するために使用することができる。履歴データの記憶としては、例えば、傾向分析の目的や他の診断目的で用いられる、患者の長期モニタから得られたデータを含むことができる。他の情報と同様に、履歴データを、必要に応じて又は要望どおりに外部プログラマユニット1090に送信することができる。
【0085】
制御システム1020及びメモリ1070は、CRMデバイス1000の他の構成要素と協働してCRMデバイス1000の動作を制御することができる。図10に示す制御システムは、本発明の種々の実施の形態に従って心臓応答テンプレートを形成するテンプレートプロセッサ1024を組み込んでいる。制御システム1020は、ペースメーカー制御回路1022、心臓応答分類プロセッサ1025及び不整脈検出器1021、そしてCRMデバイス1000の動作を制御する他の構成要素など、更なる機能的な構成要素を含むことができる。
【0086】
遠隔測定回路1060を実施して、CRMデバイス1000と外部プログラマユニット1090との間の通信を提供することができる。1つの実施の形態では、遠隔測定回路1060及びプログラマユニット1090は、当該技術分野で公知のようにワイヤループアンテナ及び無線周波遠隔測定リンクを用いて通信し、プログラマユニット1090と遠隔測定回路1060との間で信号及びデータの送受信を行う。このようにして、プログラム指令及び他の情報を、植込み時と植込み後にプログラマユニット1090からCRMデバイス1000の制御システム1020に転送することができる。また、例えば捕捉閾値、捕捉検出及び/又は心臓応答分類に関する記憶された心臓データを、他のデータと共にCRMデバイス1000からプログラマユニット1090に転送することができる。
【0087】
遠隔測定回路1060は、CRMデバイス1000と高性能患者管理(APM)システムとの間の通信を提供することができる。高性能患者管理システムによって、医師は心臓の状態や患者の他の状態を遠隔で自動的にモニタすることができる。1つの例では、患者のリアルタイムでのデータ収集、診断及び治療を可能にする種々の通信技術及び情報技術をCRMデバイスに備えることができる。本明細書に記載した種々の実施の形態を高性能な患者管理に関連させて用いることができる。遠隔からの患者/デバイスのモニタ、診断、治療、又は他のAPM関連の方法を提供するように適用可能な本明細書に記載の方法、構造及び/又は技術は、米国特許第6,221,011号、第6,270,457号、第6,277,072号、第6,280,380号、第6,312,378号、第6,336,903号、第6,358,203号、第6,368,284号、第6,398,728号及び第6,440,066号のうち1つ以上の参考文献の特徴を組み込むことができる。
【0088】
図10に示すCRMデバイス1000の実施の形態では、RA先端電極956、RAリング電極954、RV先端電極912、RVリング電極911、RVコイル電極914、SVCコイル電極916、LV遠位電極913、LV近位電極917、LA遠位電極918、LA近位電極915及び缶形電極909をスイッチングマトリックス1010によって感知回路1031乃至1037に選択的に結合することができる。
【0089】
右心房感知回路1031は、心臓の右心房からの電気信号を検出し、これらの電気信号を増幅させるように機能する。例えば、RA先端956とRAリング954との間で発生した電圧を感知することにより、右心房内の双極感知を実施することができる。例えば、RA先端956と缶形電極909との間で発生した電圧を感知することにより、単極感知を実施することができる。右心房感知回路からの出力は制御システム1020に結合されている。
【0090】
右心室感知回路1032は、心臓の右心室からの電気信号を検出し、これらの電気信号を増幅させるように機能する。右心室感知回路1032は、例えば右心室心拍数チャネル1033及び右心室ショックチャネル1034を含むことができる。RV先端電極912の使用によって感知される右心室の心臓信号は右心室近距離場信号であり、RV心拍数チャネル信号と示す。双極のRV心拍数チャネル信号を、RV先端912とRVリング911との間で発生した電圧として感知することができる。あるいは、RV先端電極912及びRVコイル914を用いて、右心室内の双極感知を実施することができる。例えば、RV先端912と缶形電極909との間で発生した電圧を感知することにより、右心室内の単極の心拍数チャネル感知を実施することができる。
【0091】
RVコイル電極914の使用によって感知される右心室の心臓信号は遠距離場信号であり、RV形態チャネル信号又はRVショックチャネル信号とも呼ばれる。より具体的に言うと、右心室ショックチャネル信号を、RVコイル914とSVCコイル916との間で発生した電圧として検出することができる。また、右心室ショックチャネル信号を、RVコイル914と缶形電極909との間で発生した電圧として検出することができる。他の構成では、缶形電極909及びSVCコイル電極916を電気的に短絡させ、RVショックチャネル信号をRVコイル914と缶形電極909/SVCコイル916の組み合わせとの間で発生した電圧として検出することができる。
【0092】
心外膜電極として構成可能な1つ以上の左心房電極915及び918の使用により、左心房の心臓信号を感知することができる。左心房感知回路1035は、心臓の左心房からの電気信号を検出し、これらの電気信号を増幅させるように機能する。例えば、LA遠位電極918及びLA近位電極915を用いて左心房内の双極感知及び/又はペーシングを実施することができる。例えば、LA遠位電極918−缶909のベクトル又はLA近位電極915−缶909のベクトルを用いて、左心房の単極感知及び/又はペーシングを行うことができる。
【0093】
左心室感知回路1036は、心臓の左心室からの電気信号を検出し、これらの電気信号を増幅させるように機能する。例えば、LV遠位電極913とLV近位電極917との間で発生した電圧を感知することにより、左心室内の双極感知を実施することができる。例えば、LV遠位電極913又はLV近位電極917と缶形電極909との間で発生した電圧を感知することにより、単極感知を実施することができる。
【0094】
必要に応じて、冠静脈洞など、患者の左心に隣接する心血管系にLVコイル電極(図示せず)を挿入することができる。LV電極913及び917、LVコイル電極(図示せず)ならびに/又は缶形電極909の組み合わせを用いて検出された信号を左心室感知回路1036によって感知し、増幅させることができる。左心室感知回路1036の出力は制御システム1020に結合されている。
【0095】
電極911、912、913、914、915、916、917、918、956及び954のうち選択された組み合わせを誘発応答感知回路1037に結合するように、スイッチングマトリックス1010の出力を操作することができる。誘発応答感知回路1037は、捕捉検出に関連する処理のための種々の電極の組み合わせを用いて発生した電圧を感知し、増幅させるように機能する。例えば、CRMデバイスが心臓ペーシング応答テンプレートの形成処理を実施している場合は、誘発応答感知回路をテンプレートプロセッサ1024に結合することができる。誘発応答感知回路1037によって感知された心臓信号を使用して、種々の心臓ペーシング応答を示す信号又は信号特徴を本発明の実施の形態に従ってクラスタリングすることによってテンプレートを形成することができる。
【0096】
捕捉検証及び/又は捕捉閾値テストの際は、誘発応答感知回路1037を心臓応答分類プロセッサ1025に結合することができる。種々の電極の組み合わせを介して誘発応答感知回路1037によって感知された信号を心臓応答分類プロセッサ1025によって分析し、本明細書に記載のような心臓ペーシングに対する捕捉及び/又は他の応答を検出することができる。あるいは、テンプレートの形成及び/又は心臓ペーシング応答の検出に他の感知回路を使用してもよい。
【0097】
後述する実施の形態では、ペーシングパルスの後にペーシング電極及び感知電極の種々の組み合わせをペーシング及び心臓信号の感知に関連して利用し、ペーシングパルスに対する心臓の応答を分類することができる。例えば、いくつかの実施の形態では、第1の電極の組み合わせを心腔のペーシングに使用し、第2の電極の組み合わせをペーシング後の心臓信号の感知に使用する。他の実施の形態では、ペーシング及び感知に同一の電極の組み合わせを用いる。
【0098】
ペースメーカー制御回路1022を、左心房、右心房、左心室及び右心室のペーシング回路1041、1042、1043及び1044と組み合わせて実施し、種々の電極の組み合わせを用いてペーシングパルスを選択的に生成し、これを心臓に送出することができる。前述のように、ペーシング電極の組み合わせを用いて心腔の双極又は単極ペーシングを行うことができる。
【0099】
前述のペーシングベクトルを介して双極又は単極のペーシングパルスを心腔に送ることができる。ペーシングパルスの送出後の電気信号は、スイッチングマトリックス1010を介して誘発応答感知回路1037又は他の感知回路に結合された種々の感知ベクトルによって感知することができ、この電気信号を、ペーシングに対する心臓応答の分類に使用することができる。
【0100】
1つの例では、ペーシングパルスの送出後の心臓信号は、ペーシングパルスの送出に使用したのと同一のベクトルを用いて感知することができる。この場合、感知した心臓信号からペーシングアーチファクトを相殺するかもしくは除去し、又はこれを最小にすることができる。ペーシングアーチファクトの取消後、ペーシングパルスの送出に次いで1つ以上の間隔及び心臓応答分類ウィンドウを定義し、これらをペーシングに対する心臓応答の分類に使用することができる。心臓応答を、例えば捕捉応答、非捕捉応答、内因性興奮を伴う非捕捉応答、及び融合/偽融合収縮のうちの1つとして分類することができる。
【0101】
別の例では、ペーシングパルス送出後の心臓信号の感知に用いるベクトルは、ペーシングパルスの送出に用いたベクトルとは異なっていてもよい。ペーシングアーチファクトを最小にするように感知ベクトルを選択することができる。この技術を用いてペーシングアーチファクトを十分に最小にする場合、ペーシングアーチファクトの相殺は必須ではない。
【0102】
種々の実施の形態では、ペーシングベクトルを近距離場ベクトルとし、感知ベクトルを遠距離場ベクトルとすることができる。右心室ペーシング及び心臓応答感知の例では、ペーシングベクトルを心拍数チャネルベクトルとし、感知ベクトルをショックチャネルベクトルとすることができる。
【0103】
皮下電極は、テンプレートの形成と心臓応答の分類に使用可能な更なる感知ベクトルを提供することができる。1つの実施態様では、心調律管理システムは、心臓へのペーシングを行うように構成された心腔内デバイスと、ペーシング以外の機能を行うように構成された皮下除細動器などの心外デバイスを含むハイブリッドシステムを含むことができる。心外デバイスは、皮下電極のアレイを用いて感知された信号に基づいてペーシングに対する心臓応答を検出し、これを分類するように使用可能である。心外デバイス及び心腔内デバイスは、例えばワイヤレスリンクを介して生じるデバイス間の通信と協働して作動することができる。皮下電極システム及びデバイスの例は、同一出願人による2003年6月13日出願の米国特許出願10/462,001号及び2003年6月19日出願の10/465,520号に記載されている。
【0104】
本明細書の実施の形態に記載した方法及びシステムは、心臓応答テンプレートの生成、更新及び/又は使用のために心臓信号の特徴を用いる。本明細書に設けられた例は心臓ペーシング応答を決定するために形態テンプレートを生成し、更新し、使用するという観点から説明されたが、これらに加え、又はこれらの代わりに、本発明の原理を他のタイプの心臓形態テンプレートの生成及び/又は使用に適用することができる。
【0105】
例えば、不整脈の発現の際に生じる心拍は、正常な心拍の特徴と区別できる特性を有する可能性がある。ある場合には、不整脈が疑われる心拍を、正常な心拍形態を特徴付ける形態テンプレートと比較することができる。感知した心拍形態が正常な心拍形態と十分に異なっている場合は不整脈を確認する。別の場合では、感知した不規則な心拍を、異なるタイプの単形性不整脈に関連する1つ以上のテンプレートと比較することができる。患者に生じた単形性不整脈のタイプを、不整脈の心拍と形態テンプレートのうちの1つとの類似度に基づいて決定することができる。
【0106】
本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更及び追加を前述の好適な実施の形態に対して行うことができる。従って、本発明の範囲は前述の特定の実施の形態によって限定されるべきでなく、後述する請求の範囲とその同等物によってのみ定義されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1A】本発明の実施の形態によるテンプレート生成のための心臓波形クラスタリングを用いた方法を示すフローチャートである。
【図1B】本発明の実施の形態によるテンプレート生成のための心臓波形クラスタリングを用いた方法を示すフローチャートである。
【図2A】本発明の実施の形態によるテンプレート生成のためのクラスタリングの使用を示す概念図である。
【図2B】本発明の実施の形態によるテンプレート生成のための心臓波形クラスタリングを用いた方法のフローチャートである。
【図2C】本発明の実施の形態によるテンプレート生成方法を示すフローチャートである。
【図2D】本発明の実施の形態によるテンプレート生成方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態による心臓応答テンプレートの生成に利用できる捕捉応答、融合応答及び内因性応答を表す多数の心臓信号を示すグラフである。
【図4】図3に示す捕捉信号、融合収縮及び内因性応答のピークを示すグラフである。
【図5】本発明の実施の形態によるテンプレートの形成に使用可能な心臓応答検出ウィンドウを示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に従い、クラスタリングによって形成された検出ウィンドウを使用してペーシングに対する種々のタイプの心臓応答を検出することのできる態様を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に従い、クラスタリングによって形成された検出ウィンドウを使用してペーシングに対する種々のタイプの心臓応答を検出することのできる態様を示す図である。
【図8A】本発明の実施の形態による、心臓信号の形態の変化に適応するための検出ウィンドウの調節を示す図である。
【図8B】本発明の実施の形態による、心臓信号の形態の変化に適応するための検出ウィンドウの調節を示す図である。
【図8C】本発明の実施の形態による、心臓信号の形態の変化に適応するための検出ウィンドウの調節を示す図である。
【図8D】本発明の実施の形態による、心臓信号の形態の変化に適応するための検出ウィンドウの調節を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態によるテンプレート生成の実施に使用可能な心調律管理デバイスを示す図である。
【図10】本発明の実施の形態によるテンプレートの形成及び適応の実施に好適な心調律管理デバイス(CRM)のブロック図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペーシングに対する心臓応答の特徴付け方法であって、
十分なエネルギーのペーシングパルスを心臓に送って捕捉を行うことと、
前記ペーシングパルスの送出後に心臓信号を個々に感知することと、
1つ以上の前記心臓信号をクラスタリングして複数のクラスタを定義することと、
前記複数のクラスタのうち選択した1つ以上のクラスタを用いて心臓応答テンプレートを形成することと、
を含む前記方法。
【請求項2】
前記心臓信号をクラスタリングして前記複数のクラスタを定義することが、
前記心臓信号の1つ以上の特徴を検出することと、
前記心臓信号の前記1つ以上の特徴をクラスタリングすることと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記心臓信号の前記1つ以上の特徴のクラスタリングが、バッチモードでの前記1つ以上の特徴のクラスタリングを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記心臓信号の前記1つ以上の特徴のクラスタリングが、前記1つ以上の特徴の心拍ごとのクラスタリングを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の特徴の検出が、前記心臓信号のピーク時間及びピーク振幅の検出を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記心臓信号の前記ピーク時間及び前記ピーク振幅の検出が、負のピークに関連するピーク時間の検出を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記心臓信号の前記ピーク時間及び前記ピーク振幅の検出が、正のピークに関連するピーク時間の検出を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記複数のクラスタのうち選択した1つ以上のクラスタを用いた前記心臓応答テンプレートの形成が、同様の特性を有する最多数の心臓信号に関連したクラスタを用いて前記心臓応答テンプレートを形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複数のクラスタのうち選択した1つ以上のクラスタを用いた前記心臓応答テンプレートの形成が、前記複数のクラスタのうち選択した1つ以上のクラスタを用いて1つ以上の検出ウィンドウを形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記検出ウィンドウを用いてペーシングパルスに対する心臓応答を決定することを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記検出ウィンドウを用いたペーシングパルスに対する心臓応答の決定が捕捉の検出を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記検出ウィンドウを用いたペーシングパルスに対する心臓応答の決定が融合の検出を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
一種類以上の心臓ペーシング応答を特徴付けるシステムであって、
十分なエネルギーのペーシングパルスを心臓に送って捕捉を行うように構成されたパルス発生器と、
前記ペーシングパルスの送出後に心臓信号を個々に感知するよう構成されたセンサシステムと、
前記センサシステムに結合されたプロセッサであって、前記心臓信号をクラスタリングして複数のクラスタを定義し、該複数のクラスタのうち選択した1つ以上のクラスタを用いて心臓応答テンプレートを形成するように構成された、プロセッサと、
を含む前記システム。
【請求項14】
前記プロセッサが、前記心臓信号の特徴を検出し、前記心臓信号の特徴の類似度に基づいて前記特徴をクラスタリングするように構成されている、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
1つ以上の前記特徴がピーク時間及びピーク振幅を含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記プロセッサが、複数の初期テンプレートを生成し、前記心臓信号のうち選択した心臓信号を用いて前記複数の初期テンプレートのうちの少なくとも1つを選択的に調節するように構成されている、請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
前記プロセッサが、前記心臓信号の類似度に基づいて前記複数のクラスタを形成するように構成されている、請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
前記心臓応答テンプレートが1つ以上の検出ウィンドウを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項19】
前記プロセッサが、前記心臓応答テンプレートを用いて心臓ペーシング応答を決定するように構成されている、請求項13に記載のシステム。
【請求項20】
心臓システムであって、
十分なエネルギーのペーシングパルスを心臓に送って捕捉を行うように構成されたパルス発生器と、
前記ペーシングパルスの送出後に心臓信号を個々に感知するよう構成されたセンサシステムと、
前記心臓信号をクラスタリングして複数のクラスタを定義する手段と、
前記複数のクラスタのうち選択した1つ以上のクラスタを用いて心臓応答テンプレートを形成する手段と、
を含む前記システム。
【請求項21】
前記心臓信号の特徴を抽出する手段と、
抽出した前記特徴をクラスタリングして複数のクラスタを定義する手段と、
前記複数のクラスタのうち選択した1つ以上のクラスタを用いて前記心臓応答テンプレートを形成する手段と、
を更に含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項1】
ペーシングに対する心臓応答の特徴付け方法であって、
十分なエネルギーのペーシングパルスを心臓に送って捕捉を行うことと、
前記ペーシングパルスの送出後に心臓信号を個々に感知することと、
1つ以上の前記心臓信号をクラスタリングして複数のクラスタを定義することと、
前記複数のクラスタのうち選択した1つ以上のクラスタを用いて心臓応答テンプレートを形成することと、
を含む前記方法。
【請求項2】
前記心臓信号をクラスタリングして前記複数のクラスタを定義することが、
前記心臓信号の1つ以上の特徴を検出することと、
前記心臓信号の前記1つ以上の特徴をクラスタリングすることと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記心臓信号の前記1つ以上の特徴のクラスタリングが、バッチモードでの前記1つ以上の特徴のクラスタリングを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記心臓信号の前記1つ以上の特徴のクラスタリングが、前記1つ以上の特徴の心拍ごとのクラスタリングを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の特徴の検出が、前記心臓信号のピーク時間及びピーク振幅の検出を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記心臓信号の前記ピーク時間及び前記ピーク振幅の検出が、負のピークに関連するピーク時間の検出を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記心臓信号の前記ピーク時間及び前記ピーク振幅の検出が、正のピークに関連するピーク時間の検出を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記複数のクラスタのうち選択した1つ以上のクラスタを用いた前記心臓応答テンプレートの形成が、同様の特性を有する最多数の心臓信号に関連したクラスタを用いて前記心臓応答テンプレートを形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複数のクラスタのうち選択した1つ以上のクラスタを用いた前記心臓応答テンプレートの形成が、前記複数のクラスタのうち選択した1つ以上のクラスタを用いて1つ以上の検出ウィンドウを形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記検出ウィンドウを用いてペーシングパルスに対する心臓応答を決定することを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記検出ウィンドウを用いたペーシングパルスに対する心臓応答の決定が捕捉の検出を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記検出ウィンドウを用いたペーシングパルスに対する心臓応答の決定が融合の検出を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
一種類以上の心臓ペーシング応答を特徴付けるシステムであって、
十分なエネルギーのペーシングパルスを心臓に送って捕捉を行うように構成されたパルス発生器と、
前記ペーシングパルスの送出後に心臓信号を個々に感知するよう構成されたセンサシステムと、
前記センサシステムに結合されたプロセッサであって、前記心臓信号をクラスタリングして複数のクラスタを定義し、該複数のクラスタのうち選択した1つ以上のクラスタを用いて心臓応答テンプレートを形成するように構成された、プロセッサと、
を含む前記システム。
【請求項14】
前記プロセッサが、前記心臓信号の特徴を検出し、前記心臓信号の特徴の類似度に基づいて前記特徴をクラスタリングするように構成されている、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
1つ以上の前記特徴がピーク時間及びピーク振幅を含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記プロセッサが、複数の初期テンプレートを生成し、前記心臓信号のうち選択した心臓信号を用いて前記複数の初期テンプレートのうちの少なくとも1つを選択的に調節するように構成されている、請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
前記プロセッサが、前記心臓信号の類似度に基づいて前記複数のクラスタを形成するように構成されている、請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
前記心臓応答テンプレートが1つ以上の検出ウィンドウを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項19】
前記プロセッサが、前記心臓応答テンプレートを用いて心臓ペーシング応答を決定するように構成されている、請求項13に記載のシステム。
【請求項20】
心臓システムであって、
十分なエネルギーのペーシングパルスを心臓に送って捕捉を行うように構成されたパルス発生器と、
前記ペーシングパルスの送出後に心臓信号を個々に感知するよう構成されたセンサシステムと、
前記心臓信号をクラスタリングして複数のクラスタを定義する手段と、
前記複数のクラスタのうち選択した1つ以上のクラスタを用いて心臓応答テンプレートを形成する手段と、
を含む前記システム。
【請求項21】
前記心臓信号の特徴を抽出する手段と、
抽出した前記特徴をクラスタリングして複数のクラスタを定義する手段と、
前記複数のクラスタのうち選択した1つ以上のクラスタを用いて前記心臓応答テンプレートを形成する手段と、
を更に含む、請求項20に記載のシステム。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図10】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2008−539038(P2008−539038A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−509144(P2008−509144)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/016100
【国際公開番号】WO2006/116633
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(592245720)カーディアック ペースメーカーズ,インコーポレイテッド (26)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/016100
【国際公開番号】WO2006/116633
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(592245720)カーディアック ペースメーカーズ,インコーポレイテッド (26)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]