説明

波形デジタイジングに対する高速読み出し法およびスイッチトキャパシタアレイ

本発明に記載されているのは、スイッチトキャパシタアレイ(SCA)回路の読み出し時間を短縮する技術である。実現可能であるのは、10MSPS〜5GSPSのサンプリング速度で12個の差分入力チャネルをサンプリング可能なSCAチップである。アナログ波形は、チャネル当たりに1024個のサンプリングセルに記憶することができ、また33MHzでクロック制御されるシフトレジスタを介してサンプリングした後、読み出して外部でデジタイゼーションすることができる。上記のサンプリングセルに対する書き込み信号は、チップに形成される一連のインバータ(ドミノ原理)によって生成される。上記のドミノ波は、トリガによってストップされるまで連続して伝わる。読み出しシフトレジスタ4は、クロックに同期して多重化出力部MUXかまたは個別出力部のいずれかに上記のサンプリングセルの内容を出力し、これはここで外部ADCによってデジタイズすることができる。上記の波形の一部だけを読み出してデジタイゼーション時間を短縮することができる。高いチャネル密度、450MHzの広いアナログ帯域幅および(オフセット較正後の)0.35mVの低ノイズによってこのチップは、低出力、高速、高精度の波形デジタイジングに理想的に適合する。先進のCMOSプロセスにおいて放射に強い設計で作製すれば、本発明のチップは、64リードのLQFP(low profile quad flat pack)および64ピンのQFN(quad flat non-leaded package)で利用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速波形デジタイジング方法およびスイッチトキャパシタアレイ回路に関する。
【0002】
産業および研究の多くの分野においてサンプリングレートの高い波形デジタイジングが要求されている。これには、光電子倍増管、ガス検出器、シンクロトロン放射源および素粒子物理実験におけるシリコン検出器の読み出しが含まれる。伝統的にこれらの応用には、数GHzのサンプリングレートまでフラッシュADCが使用されるが、この技術は、高いチャネル密度、低出力および10ビット以上の精度が必要な場合にはその限界に達してしまう。択一的なアプローチは、スイッチトキャパシタアレイ(SCA)である。
【0003】
このようなSCAチップは、MEG実験用のドリフトチャンバ信号およびPMTの高速波形デジタイジングに対し、スイスのPaul Scherrer Instituteで開発されている。この実験では、10-13以上の感度でレプトンフレーバの破れμ+→e+γが調べられている。このチップは、0.25μmのCMOSプロセスで作製され、また1024個のキャパシティブサンプリングアレイをそれぞれ有する12個のチャネルを含む。波形デジタイジングは、10MHz〜5MHzの範囲のオンチップで形成された周波数で行われる。これらのセルは、外部12ビットフラッシュADCによって33MHzで読み出される。PLL(phase-locked-loop)回路により、高い安定性が確保され、これによって上記のチップは、100ps以下の時間分解能および14ビットに相当するADC分解能による実験において、ADCおよびTDCの両方を置き換えるのに適するようになる。
【0004】
しかしながら単一のイベントに対する極めて高速な読み出しに注目すると、この技術は、チャネル毎に1024個のすべてのセルを読み出すために必要なむだ時間帯の影響を被っている。33MHzでセルを読み出す場合、この読み出しがチャネル毎に専用のADCによって並列に行われる場合であっても、デバイスのむだ時間は30μs程度になるのである。
【0005】
したがって本発明の目的は、上記の読み出し回路のむだ時間を短くする細かい(in-deep)時間分解能機能と、極めて高速な読み出しの機能との両方を有する電子回路を提供することである。
【0006】
回路についてのこの目的は、本発明により、つぎのような高速波形デジタイジング用のSCA回路によって達成される。この回路は以下を含む。すなわち、
a) 各チャネルがn個のサンプリングセルを有する複数のチャネルと、
b) 上記のサンプリングセルに対する書き込み信号としてのドミノ信号を生成するドミノ波形回路とを含んでおり、個別セル毎の上記の書き込み信号は好適には一連のn個のダブルインバータによって生成される。
b) 個々のサンプリングセルは、それぞれの書き込み信号にしたがって、それぞれのサンプリングセルに順番が回って来た場合に上記の波形のスナップショットを受信して記憶する。
上記の回路は、さらに
c)あらかじめ定めた長さの時間にわたる外部または内部遅延の後、上記のドミノを無効にしかつストップ位置パルスを生成するための外部または内部トリガ信号を受信するストップ回路と、
d) 上記のドミノ波が無効にされた場合にストップ位置を読み出すために順次または並列に読み出されかつ上記のストップパルスにおいてドミノ波の位置によってプリセットされるレジスタと、
e) あらかじめ定めた数のサンプリングセルにおいて、サンプルした信号を連続して読み出すための読み出し回路とを含んでおり、ここでe)における読み出しは、上記のストップ位置に相応するサンプリングセルにおいてスタートする。
【0007】
上記の方法について目的は、本発明により、つぎのような高速波形デジタイジング方法によって達成される。この方法は以下のステップを含む。すなわち、
a) 各チャネルがn個のサンプリングセルを有する、複数のチャネルを含む回路を準備するステップと、
b) 上記のサンプリングセルに対する書き込み信号としてのドミノ信号を生成するステップとを含んでおり、ここで個別セル毎の上記の書き込み信号は好適には一連のn個のダブルインバータによって生成される。
上記の方法はさらに、
b) それぞれのサンプリングセルに順番が回って来た場合に、それぞれの書き込み信号にしたがって、各サンプリングセルにおいて上記の波形のスナップショットを受信して記憶するステップと、
c) あらかじめ定めた長さの時間にわたる外部または内部遅延の後、上記のドミノを無効にしかつストップ位置パルスを生成するために外部または内部トリガ信号を受信するストップ回路を準備するステップと、
d) 上記のドミノ波が無効にされた場合にストップ位置を読み出すために順次または並列に読み出されかつ上記のストップパルスにおいてドミノ波の位置によってプリセットされるレジスタを準備するステップと、
e) あらかじめ定めた数のサンプリングセルにおいて、サンプルした信号を読み出すステップとを有しており、ここでステップe)における読み出しは、上記のストップ位置に相応するサンプリングセルにおいてスタートする。
【0008】
サンプリングセルのこの部分集合だけを読むことにより、上記のチップは、光増幅管、ドリフトチャンバおよびシリコン検出器の読み出しなどの、短いパルス分解能に対する関心が異なるすべて応用に対して最善に適合化される。
【0009】
上記の読み出そうとするサンプリングセルの数に依存して、読み出しおよびデジタイゼーションに対するむだ時間は、サンプリングセルの上記の部分集合を読み出すのに必要な時間を、すべてのサンプリングセルのエンティティを読むのに必要な時間で割った分数をかけた分だけ短くなる。
【0010】
上記のサンプリングセルの起動などのドミノ効果を見込んだ好適なアーキテクチャにより、スイッチトキャパシタアレイが得られる。ここで上記のダブルインバータのうちの第1のインバータは、1入力信号としてディスエンエーブル信号を有するANDゲートとして設計され、ここでこの第1のインバータはNMOSトランジスタを介して第2のインバータに接続されており、ここでこのNMOSトランジスタは電圧制御抵抗として動作するため、第2のインバータの寄生キャパシタンスと共にRC回路を形成する。このアーキテクチャにより、DENABLE信号を介して任意の時点に上記のドミノ波をイネーブルし、また無力にすることが可能である。上記のドミノ波の伝搬に対して可変の遅延を加えるというフレキシビリティは、ここでは上記のNMOSトランジスタのゲート端子に接続されているアナログ電圧DSPEEDを制御することによって得られる。
【0011】
本発明の別の有利な実施形態により、ドミノ波のストップ位置がバイナリ10ビット語でエンコードされまたシフトレジスタによって10クロックサイクル内に読み出されるスイッチトキャパシタアレイチップが得られる。
【0012】
以下では、つぎの図面を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】スイッチトキャパシタアレイチップの機能ブロック図である。
【図2】ドミノ波回路を形成する1024個のダブルインバータブロックのうちの2つの簡略回路図である。
【図3】サンプリングセルの簡略化された概略スケッチである。
【図4】読み出しシフトレジスタのタイミング線図である。
【図5】関心対象領域(ROI Region-of-Interest)読み出しモードの線図である。
【図6】ROI読み出しに対するタイミング線図である。
【0014】
図1に機能ブロック図として示した本発明は、10MSPS〜5GSPSのサンプリング速度で12個の異なる入力チャネルCH0〜CH11をサンプリング可能なSCAチップ2を表している。アナログ波形18(図5を参照されたい)は、チャネルCH0〜CH11によって1024個のCELL0〜CELL1023に記憶され、サンプリングの後、33MHzでクロック制御される読み出しシフトレジスタ4を介して読み出して外部デジタイゼーションを行うことができる。サンプリングセルCELL0〜CELL1023に対する書き込み信号は、チップ2上のドミノ波形回路6に形成される一連のインバータ(ドミノ原理)によって生成される。このドミノ波は、DENABLEをローにするトリガ信号によってストップされるまで連続して伝わる。(上記のドミノ波は伝わり続けるが、サンプリングセルからはデカップリングされ、したがってDENABLE信号がローに設定されている限りは波形サンプリングには影響しないことに注意すべきである。読み出しシフトレジスタ4は、クロックに同期して多重化出力部MUXかまたは個別の出力部OUT0〜OUT11のいずれかに上記のサンプリングセルの内容を出力し、これは外部ADC(図示せず)によってデジタイズすることができる。本発明によれば、上記の波形の一部だけを読み出してデジタイゼーション時間を短くすることができる。高いチャネル密度、450MHzの広いアナログ帯域幅および(オフセット較正後)0.35mVの低ノイズによってこのチップは、低出力、高速、高精度の波形デジタイジングに理想的に適合する。このチップは、先進のCMOSプロセスにおいて放射に強い設計で作製され、放射の強い環境での使用が促進される。
【0015】
このチップには、5.5GHzまでのサンプリング周波数を形成する一連のオンチップインバータが含まれる(ドミノ波回路6)。この信号により、12個すべてのサンプリングチャネルCH0〜CH11における書き込みスイッチが開き、差入力信号が(200fFの)小さなキャパシタにおいてサンプリングされる。スタートした後、上記のドミノ波は、サンプリングキャパシタに現在記憶されている信号を固定するトリガ信号によって「ストップ」されるまで、循環式に連続して伝わる。この信号はつぎに読み出しシフトレジスタ4を介して読み出されて外部のデジタイゼーションが行われる。
【0016】
ドミノ波回路6は、基本的に1024個のダブルインバータ10a,10bの直列回路である。上記のDENABLE信号をハイにした後、波はこれらのインバータ10a,10bを横断して上記のサンプリングセルに対する書き込み信号を形成する。図2には、2つのダブルインバータブロック10a,10bの簡略化回路図が示されている。第1のインバータ10aは実質的にANDゲートである。これによって、DENABLE信号を介して任意の時点に上記のドミノ波をイネーブルしまたストップすることが可能である。上記のANDゲートは、電圧制御抵抗として動作するNMOSトランジスタ12を介して後続のインバータに接続される。この抵抗は、インバータ10bの寄生入力キャパシタンスと共にRC回路を形成し、上記のドミノ波の伝搬に対して可変の遅延を行う。この可変の遅延はアナログ電圧DSPEEDによって制御可能である。実際のドミノ波速度は、電源電圧および温度に依存するため、安定した動作を保証するためにはなんらかの安定化が必要である。このためにDTAP信号が利用可能であり、この信号は、ドミノ波が512番目のセルに到達する毎にその状態が切り換わる。上記のチップがfDOMINOで動作する場合、DTAPは、つぎの式によって得られる周波数で50%のデューティサイクルの矩形信号を出力する。すなわち、
DTAP=1/2048×fDOMINO
である。
【0017】
この信号を外部PLL回路によって使用して、水晶によって生成される周波数にドミノ周波数および位相をロックすることができる。択一的なアプローチは、この信号をFPGAで実現される周波数カウンタに供給して、偏差している場合に16ビットDACを介して上記のDSPEEDを補正することである。
【0018】
ドミノ波は、DENABLE信号をハイにすることによってスタートする。内部回路によって、上記の書き込み信号がつねに16セル幅になることが保証される。DWRITE信号により、上記の書き込み信号がサンプリングセルCELL0〜CELL1023に伝えられる時が決定される。外部PLL回路を使用する場合、上記の読み出しフェーズ中にドミノ波を伝わらせ続けるのが有利である。これは、DENABLEをハイに保ち、またDWRITEをローにしてサンプリングプロセスをストップするだけで達成可能である。この場合、読み出し中にドミノ波が循環することによって上記のDTAP信号も形成される。
【0019】
上記のダブルインバータブロック10a,10b間にはわずかなタイミングジッタがある。このジッタは、各セルにおけるトランジスタ12の不整合から生じるセル毎の一定の偏差(いわゆる「固定パターンのジッタ」)と、ドミノ循環毎の可変の項とからなる。全体的なジッタは外部のPLLを使用することによって最小化することができるが、セル−セル間の偏差はなお存続し続ける。応用によって高いタイミング精度が要求される場合、上記の固定パターンのジッタは、較正して補正することができる。1つのドミノ波回路は、チップ2内のチャネルCH0〜CH11の12個のすべてのチャネルを制御するため、チップ2毎にただ1つのチャネルCH0〜CH11だけを較正すればよい。これを行うための1つの方法は、上記のチップによって高精度の正弦波をサンプリングして、サンプリングされた波形と、すべてのサンプルの正弦波当てはめ(sine fit)から得られる理想的の波形との間の偏差を見つけることである。例えば、位相の異なる正弦波の多くの波形について平均化することにより、上記の固定パターンのジッタを測定することができ、また較正のためにデータベースに記憶することができる。
【0020】
別の付加的な問題は、上記のドミノ波がセルの間でしかストップできないという事実から生じ得る。これによってタイミング精度は1/fDOMINOになる。より高い精度が必要な場合、各チップの12個のチャネルCH0〜CH11のうちの1つにおいて、安定性の高いクロック信号をサンプルすることが推奨される。このクロック信号のエッジを適合することによって、波形毎の実際のサンプリング周波数および位相を精確に測定することができ、100ps以下のタイミング精度を達成することができる。
【0021】
各サンプリングセルCELL0〜CELL1023には、2つのNMOSトランジスタを介してIN+およびIN−入力側に接続されたCS=200fFのサンプリングキャパシタが含まれる(図3を参照されたい)。2つの入力信号が電源のレールを上回らないと仮定すれば、これによって擬似的な差分入力側が得られる。上記の信号源が、十分な駆動力を有し、電流を供給してキャパシタCSを充電することを保証しなければならない。例えば、5GHzのサンプリング速度では、1Vの信号でキャパシタCSを充電するのに1mAの入力電流が必要である。上記のサンプリングサイクルの後、上記のキャパシタは電圧
S=UIN+−UIN-
を蓄える。
【0022】
NMOSトランジスタ12は、上記のレールに近づくと、非線形な特性を示すため、これらのトランジスタを0.1V〜1.5Vで動作させることが推奨される。フルレンジは各セルにおけるバッファの線形性によって制限され、これは1.05V〜2.05Vの入力電圧に対して0.5mVよりも良好な非線形性を示す。1.05Vよりも小さい信号をサンプリングしたい場合には、読み出しフェーズ中に外部電圧ROFSを加えることによってUSをシフトして上げることができる。これはチャージポンプと同様に動作し、キャパシタの底部プレートをIN−からROFSを上げる。したがって読み出し中にバッファによって見える電圧は、
U'S=UIN+−UIN-+UROFS
である。
【0023】
したがって0.1V〜1.1Vの入力レンジは、例えば、ROFS入力側に0.95Vを加えることによって得ることができる。これは上記のセルバッファの1.05V〜2.05Vの線形のレンジに上記の入力信号をシフトする。上記のチップは各アナログ出力側に付加的なバッファを有しており、このバッファはこの出力を約0.8V〜1.8Vの範囲にシフトする。上記のアナログのチェーンの全体的な利得は0.985である。2つのIN+入力側およびIN−入力側における入力信号は1.5Vを越えてはならない。上記のサンプリングキャパシタCSに蓄積される電荷は、電荷の漏れによって時間と共に失われ、サンプリングセルCELL0〜CELL1023の読み出しは、サンプリングの後、迅速(<1ms)に行うべきである。
【0024】
DENABLEまたはDWRITEをローにセットすることによってサンプリングがストップされた後、上記の波形は、読み出しシフトレジスタ4を介して読み出すことができる。これを行うために、単一の「1」がクロックに同期して上記のシフトレジスタに入れられて、これに33MHzで1024クロックサイクルが続く。
【0025】
RSRCLKおよびSRINがローの間に少なくとも10ns間、

をローにすることによって、読み出しシフトレジスタ4の内容が消去される。RSRCLKの立ち下がりエッジにおいてクロックに同期して上記のレジスタの第1のセルに「1」が入力される。つぎにこの「読み出しビット」は、連続する各クロックサイクルにおいて後続にシフトされ、これは1024番目のサイクルにおいてWSROUTにこのビットが現れて、このシフトレジスタの動作が成功したことを示すまで行われる。マルチプレクサが使用される場合、各クロックサイクルにおけるRSRCLKの立ち上がりエッジにおいて、t0=10nsの遅延の後、アナログ出力側MUXOUTにつぎのサンプリングセルの内容が現れる。33MHzのクロック速度で動作する場合(tCLK=30ns)、上記のアナログ信号は、出力側において整定するために30nsを有する。この30nsの期間の終わりにかつつぎのサイクルが開始する直前までに、外部フラッシュADCによってこれをサンプルするためには注意を払わなければならない。例えば、tSAMP=t0+tCLK=40nsでは、サンプリングは、RSRCLKの立ち上がりエッジの後、約38nsに行われなければならない。この信号を35ns後にサンプリングするだけですでに線形性が損なわれる。
【0026】
各サンプリングセルCELL0〜CELL1023は出力側にバッファを含むため、このバッファ内のトランジスタの不整合に起因してこのバッファからオフセット誤差が生じ、これはふつう5mV rmsである。このオフセット誤差は、時間にわたって一定である(「固定パターンのノイズ」)ため、上記の読み出し中に測定して補正することができる。これを行うための1つの例は、チップ2に接続されたADCの読み出しを行うFPGAにオフセット補正テーブルを組み込むことである。これによって上記のノイズを、1オーダ以上低減することができる。
【0027】
4つのアドレスビットA0〜A3は、上記のアナログ出力側を設定調整するために使用される。多重化モードでは、各チャネルのアナログ出力側は、単一の出力MUXOUTに出力できるため、ただ1つの外部ADCだけを使用して12個のすべてのチャネルをデジタイズすることができる。しかしながらデジタイゼーション時間が重要な場合には、12個の外部ADCを使用して12個のすべてのチャネルを並列にデジタイズすることも可能であり、これによってデジタイゼーション時間が12倍に短縮される。
【0028】
表2: アドレスビット設定
【表1】

【0029】
すべてのアドレスビットを1にセットすることによってすべてのアナログ出力ドライバがディスエーブルされ、チップ全体に対して電力消費が2mAに低減される。
【0030】
本発明による固有の特徴は、関心対象(ROI)読み出しとして、所定のタイムフレームで読み出しができることである。12個のチャネルを並列にデジタイズする場合であっても、33MHzで1024個すべてのサンプルをデジタイゼーションするのには30μsかかる。この時間の間、チップのサンプリングはストップされ、新しい波形を取得することはできない。図5に示したようにもののように、短いパルスだけに関心がある応用に対しては、このむだ時間を短くするため、すべてのサンプリングセルの部分集合だけを読み出すことが可能である。
【0031】
上記のドミノ波が、ウィンドウサイズtw=1024×1/fSAMPで伝わり、また光増幅管から得られる1撃のような短い信号が発生すると仮定する。この信号は、オシロスコープの場合と同じように外部のトリガ回路(図示せず)をトリガする。ここでこの波形の関心対象部分は、トリガ点16の前のt1および後のt2の範囲にある。このROIだけを読み出す場合、上記のむだ時間は分数(t1+t2)/tw短くなる。これを上記のチップで達成するためには、トリガ点16の後、外部の遅延によってドミノ波をtw−t1ストップしなければならない。この場合、ドミノ波のストップ位置は、RSRLOADピンにおけるパルスを介して読み出しシフトレジスタ4に転送される。上記の読み出しは、この位置においてスタートし、n個のサンプルの後、ROI全体がカバーされた場合にストップすることができる。図6には、この読み出しモードに対するタイミングが示されている。
【0032】
RSLOADピンの立ち上がりエッジは、ROIの第1のサンプルR0をアナログ出力側に転送し、ここでこのサンプルは、(tSAMP−2ns)後、デジタイズ可能である。RSRCLKの連続するパルスは、n個のすべてのサンプルがデジタイズされるまで、後続のサンプルRiを転送する。多重化が使用される場合、このシーケンスが12回繰り返されて、すべてのチャネルCH0〜CH11がデジタイズされる。RSLOADにおける各パルスは、ドミノ波ストップ位置を読み出しシフトレジスタ4に再転送するため、すべてのチャネルCH0〜CH11において同じROIをデジタイズすることができる。上記の読み出しビットが1023番目のセルに到着すると、これはRSROUT出力側に現れ、つぎに自動的に折り返して0番目のセルに戻る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速波形デジタイジングのためのスイッチトキャパシタアレイ回路において、
該スイッチトキャパシタアレイ回路は、
a) 各チャネルがn個のサンプリングセルを有する複数のチャネルと、
b) 前記のサンプリングセルに対する書き込み信号としてのドミノ信号を生成するドミノ波形回路(6)とを有しており、
b) 個々のサンプリングセルは、それぞれの書き込み信号にしたがって、それぞれのサンプリングセルに順番が回って来た場合に前記の波形(18)のスナップショットを受信して記憶し、
前記の回路はさらに、
c) あらかじめ定めた長さの時間にわたる外部または内部遅延の後、前記のドミノを無効にしかつストップ位置パルスを生成するために外部または内部トリガ信号を受信するストップ回路と、
d) ドミノ波が無効にされた場合に、前記のストップパルスにてドミノ波の位置によってプリセットされ、かつストップ位置を読み出すために順次または並列に読み出されるレジスタ(4)と、
e) あらかじめ定めた数のサンプリングセルにて、前記のサンプルした信号を連続して読み出すための読み出し回路とを含み、
前記のb)の個別セル毎の書き込み信号は、好適には一連のn個のダブルインバータ(10a,10b)によって生成され、
前記のe)のサンプルした信号の連続した読み出しは、前記のストップ位置に相応するサンプリングセルにて開始することを特徴とする、
高速波形デジタイジングのためのスイッチトキャパシタアレイ回路。
【請求項2】
前記のダブルインバータ(10a,10b)のうちの第1のインバータ(10a)は、1入力信号としてディスエンエーブル信号(DENABLE)を有するANDゲートとして設計されており、
前記の第1のインバータ(10a)は、NMOSトランジスタ(12)を介して第2のインバータ(10b)に接続されており、
該NMOSトランジスタ(12)電圧制御抵抗として動作することにより、第2のインバータ(10b)の寄生キャパシタンスと共にRC回路を形成する、
請求項1に記載のスイッチトキャパシタアレイ回路。
【請求項3】
読み出しのために前記のストップ位置パルスを転送可能な共通の読み出しシフトレジスタを有する、
請求項1または2に記載のスイッチトキャパシタアレイ回路。
【請求項4】
高速波形デジタイジング方法において、
該方法は、
a) 各チャネルがn個のサンプリングセルを有する、複数のチャネルを含む回路を準備するステップと、
b) 前記のサンプリングセルに対する書き込み信号としてのドミノ信号を生成するステップと、
b) それぞれのサンプリングセルに順番が回って来た場合に、それぞれの書き込み信号にしたがって、各サンプリングセルにて前記の波形(18)のスナップショットを受信して記憶するステップと、
c) あらかじめ定めた長さの時間にわたる外部または内部遅延の後、前記のドミノを無効にしかつストップ位置パルスを生成するため、外部または内部トリガ信号を受信するストップ波回路(DENABLE)を準備するステップと、
d) 前記のストップパルスにてドミノ波の位置によってプリセットされ、かつ前記のサンプリングセルにてストップ位置を読み出すために順次または並列に読み出されるレジスタ(4)を準備するステップと、
e) あらかじめ定めた数のサンプリングセルにて、サンプルした信号を読み出すステップとを有しており、
前記のb)のドミノ信号を生成するステップでは、個別セル毎の書き込み信号は好適には一連のn個のダブルインバータ(10a,10b)によって生成され、
前記のd)におけるストップ位置は、前記のドミノ波が無効にされる前の波形(18)のスナップショットを受信して記憶する最後のストップ位置であり、
前記のe)における読み出しを上記のストップ位置に相応するサンプリングセルにおいて開始することを特徴とする、
高速波形デジタイジング方法。
【請求項5】
前記のダブルインバータ(10a,10b)のうちの第1のインバータ(10a)は、1入力信号としてディスエンエーブル信号(DENABLE)を有するANDゲートとして設計され、
前記の第1のインバータ(10a)は、NMOSトランジスタ(12)を介して第2のインバータ(10b)に接続されており、
該NMOSトランジスタが電圧制御抵抗として動作することにより、第2のインバータ(10b)の寄生キャパシタンスと共にRC回路を形成する、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
読み出しのために前記のストップ位置パルスを転送可能な共通の読み出しシフトレジスタを有する、
請求項4または5に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−541121(P2010−541121A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527339(P2010−527339)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【国際出願番号】PCT/EP2008/007155
【国際公開番号】WO2009/043416
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(501494414)パウル・シェラー・インスティトゥート (19)