説明

波形測定装置

【課題】低サンプル周期時や外部サンプリングなどの不定期なサンプリングを行う場合において波形を即時に確認できる波形測定装置を提供する。
【解決手段】サンプリングされた波形データをバースト転送によりFIFOメモリ5から波形メモリ6に転送格納するように構成された波形測定装置において、前記FIFOメモリ5に波形データを取り込むサンプリングクロックの周期を監視する時間監視手段7を設け、この時間監視手段7は、前記サンプリングクロックが出力されてからあらかじめ設定された時間内に次のサンプリングクロックが出力されないとき、前記FIFOメモリ5から前記波形メモリ6に前記波形データを強制的に書き込むための強制書き込みパルスを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波形測定装置に関し、詳しくは、サンプリングされた波形データをバースト転送により波形メモリに格納するように構成された波形測定装置における、低サンプル周期時のデータ表示レートの向上に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の波形測定装置では、波形メモリの大容量化の要求から、波形メモリとしてクロック信号の立上がり時と立下がり時の両方を使用して同期を取るように構成されたDDR(Double Data Rate)メモリや、DDRメモリをさらに高速化したDDR2(Double Data Rate 2)メモリが使用されることが多い。これらのメモリは、大容量で高速にアクセスする必要があるため、一般的にはバーストアクセスを行ってリード・ライトされている。
【0003】
図3は、このようなDDRメモリやDDR2メモリを用いた従来の波形測定装置の一例を示すブロック図である。図3において、アナログ入力信号Ainはアンプ1を介してA/D変換器2に入力され、デジタル化される。A/D変換器2でデジタル信号に変換された波形データは、サンプリング発生器3から出力されるサンプリングクロックのタイミングにより、メモリコントローラ4を介してFIFOメモリ5へバッファリングされる。FIFOメモリ5は、あらかじめ設定されているバースト長分の波形データがバッファリングされてから、波形メモリ6への転送を行う。
【0004】
図4は図3の動作を説明するタイミングチャートである。(A)はサンプリングクロック発生器3からメモリコントローラ4に入力されるサンプリングクロック、(B)はたとえばメモリコントローラ4からFIFOメモリ5に入力される書き込みパルス、(C)はA/D変換器2から変換出力される波形データ、(D)は波形メモリ6に書き込まれる波形データを示している。
【0005】
A/D変換器2でアナログ入力信号Ainがデジタル信号に変換されて出力される(C)に示す波形データD0〜D7は、(A)に示すサンプリングクロックにしたがって、逐次FIFOメモリ5に格納される。FIFOメモリ5は、FIFOメモリ5に設定バースト長分の波形データD0〜D7が格納された時点で(B)に示す書き込みパルスが入力されることにより、(D)に示すこれら波形データD0〜D7の波形メモリ6へのバースト転送書込みを行う。
【0006】
特許文献1には、波形データをバースト転送する構成が記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−140129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の構成によれば、前述のようにFIFOメモリ5に設定バースト長分の波形データが格納されまで波形メモリ6への書き込みを行わないので、外部サンプル時に行われる可能性がある極端に低い周期のサンプリングの場合には、リアルタイムに波形を読み出して表示できないという問題があった。たとえばバーストライト長が8ワードでサンプリング周期が1S/sの場合、8秒以上データ表示が更新されないため、測定作業者はA/D変換器2で変換されたアナログ入力信号Ainの波形を即時に知ることができず、波形が表示されるまで待機することになる。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、低サンプル周期時や外部サンプリングなどの不定期なサンプリングを行う場合において波形を即時に確認できる波形測定装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような問題を解決するため、請求項1記載の発明は、
サンプリングされた波形データをバースト転送によりFIFOメモリから波形メモリに転送格納するように構成された波形測定装置において、
前記FIFOメモリに波形データを取り込むサンプリングクロックの周期を監視する時間監視手段を設け、
この時間監視手段は、前記サンプリングクロックが出力されてからあらかじめ設定された時間内に次のサンプリングクロックが出力されないとき、前記FIFOメモリから前記波形メモリに前記波形データを強制的に書き込むための強制書き込みパルスを出力することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の波形測定装置において、
前記時間監視手段は、カウンタであることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載の波形測定装置において、
前記時間監視手段は、タイマーであることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の波形測定装置において、
前記波形測定装置は、不定期なサンプリングを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
これらの波形測定装置によれば、低サンプル周期時や外部サンプリングなどの不定期なサンプリングを行う場合において波形を即時に確認できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施例を示すブロック図であり、図3と共通する部分には同一の符号を付けている。図1において、カウンタ7は、サンプリングクロックの周期を監視する時間監視手段としてもちいられるものであり、サンプリングクロック発生器3から出力されるサンプリングクロックを起点として一定期間次のサンプリングクロックが検出されなかった場合、1ワード(1データ)単位で強制的に書き込みを行うための強制書き込みパルスをFIFOメモリ5に出力する。FIFOメモリ5は、この強制書き込みパルスにしたがって、その時点でFIFOメモリ5に格納バッファリングされている波形データを波形メモリ6へ転送格納する。
【0016】
これにより、図示しない表示処理部は、波形メモリ6に格納されている波形データに基づき、アナログ入力信号Ainの波形を図示しない表示部に表示させる。
【0017】
図1の動作を、図2のタイミングチャートを用いて説明する。図2において、(A)はサンプリングクロック発生器3からメモリコントローラ4に入力されるサンプリングクロック、(B)はカウンタ7からFIFOメモリ5に入力される書き込みパルス、(C)はA/D変換器2から変換出力される波形データ、(D)は波形メモリ6に書き込まれる波形データを示している。
【0018】
A/D変換器2でアナログ入力信号Ainがデジタル信号に変換されて出力される(C)に示す波形データD0〜D7は、(A)に示すサンプリングクロックにしたがって、逐次FIFOメモリ5に格納される。
【0019】
低速サンプル時、カウンタ7は、サンプリングクロック発生器3から出力されるサンプリングクロックを起点としてカウント動作を開始し、一定期間(たとえば81.92μs)次のサンプリングクロックが検出されなかった場合には、(B)に示す1ワード強制書き込みパルスをFIFOメモリ5に出力する。
【0020】
FIFOメモリ5は、カウンタ7から入力される強制書き込みパルスにしたがって、その時点でFIFOメモリ5に格納バッファリングされている波形データを波形メモリ6へ転送格納する。このとき、FIFOメモリ5には不定なデータも含まれるが、強制的に書き込む。また、1バースト長分の波形データがFIFOメモリ5にサンプリング格納されるまでは波形メモリ6への書き込みアドレスを進めることはなく、強制書き込みパルスが入力されるごとに波形データを上書きする。
【0021】
そして、図示しない表示処理部は、波形メモリ6に上書き格納されている波形データに基づき、アナログ入力信号Ainの波形を図示しない表示部に表示させる。これにより、表示部はA/D変換器2から変換出力される最新の波形データを表示することになり、波形表示レートは改善される。
【0022】
これに対し、たとえば81.92μs以内に次のサンプリングクロックを検出する高サンプル時には、カウンタ7はこの強制書き込みパルスを出力しない。高サンプル時には、FIFOメモリ5は従来と同様のバースト転送を行うことになり、転送効率を下げることなく波形メモリ6に波形データを転送格納できる。
【0023】
このように、本発明によれば、バースト転送を用いて波形メモリに波形データの格納を行うのにあたり、低サンプリング時には自動的にサンプリングごとに波形データがメモリ転送されるので、従来のバースト長分の波形データがサンプリングされてから波形メモリへ格納する場合に比べてデータ表示レートが向上し、測定作業者はA/D変換器2で変換されたアナログ入力信号Ainの波形を即時に知ることができ、波形が表示されるまでの待機時間がほぼゼロになることから効率よく波形測定が行える。
【0024】
なお、上記実施例では、カウンタ7が、サンプリングクロック発生器3から出力されるサンプリングクロックを起点として、一定期間次のサンプリングクロックが検出されなかった場合に、1ワード(1データ)単位で強制的に書き込みを行うための強制書き込みパルスをFIFOメモリ5に出力する例を説明したが、カウンタに限るものではなく、サンプリングクロックで再スタートがかかるように構成されていて一定時間のカウントダウンを行いゼロになったら強制書き込みパルスを出力するタイマーなどの時間監視手段であってもよい。
【0025】
また、上記実施例では一定周期の低速サンプリングについて説明したが、外部サンプリングを行うような不定期なサンプリングを行うときにも有効である。
【0026】
以上説明したように、本発明によれば、低サンプル周期時や外部サンプリングなどの不定期なサンプリングを行う場合において波形を即時に確認でき、効率よく波形測定を行える波形測定装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施例を示すブロック図である。
【図2】図1の動作を説明するタイミングチャートである。
【図3】従来の波形測定装置の一例を示すブロック図である。
【図4】図3の動作を説明するタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0028】
1 アンプ
2 A/D変換器
3 サンプリングクロック発生器
4 メモリコントローラ
5 FIFOメモリ
6 波形メモリ
7 カウンタ(時間監視手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプリングされた波形データをバースト転送によりFIFOメモリから波形メモリに転送格納するように構成された波形測定装置において、
前記FIFOメモリに波形データを取り込むサンプリングクロックの周期を監視する時間監視手段を設け、
この時間監視手段は、前記サンプリングクロックが出力されてからあらかじめ設定された時間内に次のサンプリングクロックが出力されないとき、前記FIFOメモリから前記波形メモリに前記波形データを強制的に書き込むための強制書き込みパルスを出力することを特徴とする波形測定装置。
【請求項2】
前記時間監視手段は、カウンタであることを特徴とする請求項1記載の波形測定装置。
【請求項3】
前記時間監視手段は、タイマーであることを特徴とする請求項1記載の波形測定装置。
【請求項4】
前記波形測定装置は、不定期なサンプリングを行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の波形測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−133753(P2010−133753A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308105(P2008−308105)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)