説明

波形観測装置および波形観測方法

【課題】複数の入力端子に入力される観測対象信号のいずれに対しても信号入力端子に対するケーブル入れ換え作業をすることなく、トリガ同期を掛けることができ、さらに低コストで小型に構成できるようにする。
【解決手段】等価時間サンプリング方式を採用した波形観測装置において、複数の信号入力端子21A、21Bに入力された観測対象信号Sxa、Sxbのいずれかを信号選択部23で任意に選択し、その選択された観測対象信号をトリガ信号発生部な30に与えて、観測波形の取得開始タイミングを決定するトリガ信号TRGを発生させ、これをサンプリング信号発生部35に入力して、トリガ信号TRGに同期したサンプリング信号Csを各サンプリング部22A、22Bに共通に与えて各観測対象信号Sxa、Sxbに対するサンプリングを同時に開始するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ信号やクロック信号等のような繰り返し信号の波形を観測するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
高速のデータ信号の波形観測を行う装置として、従来から等価時間サンプリング方式を採用したものが知られている。
【0003】
等価サンプリング方式は、サンプリング部に入力される信号のクロック周期Tcの整数N倍に対して、そのクロック周期より十分小さい所定の分解能時間ΔTだけ差のある周期Ts(=N・K+ΔTまたはN・K−ΔT)のサンプリング信号を与え、入力信号の波形の情報をΔTの時間分解能で取得して、その波形を再生する方式であり、サンプリング部の速度より格段に高速の信号の波形を観測することができる。
【0004】
このような等価時間サンプリング方式を採用した波形観測装置は、例えば次の特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−71724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した等価時間サンプリング方式を用いた波形観測装置では、一連の波形情報を取得するタイミングを、その入力信号に同期したタイミングに設定しないと波形情報を正しく取得することができない。
【0007】
その方法として、図5に示す構成のものが考えられる。
即ち、信号入力端子10aからサンプリング部11に入力される観測対象信号Sxをトリガ信号発生部12に入力して、そのクロック成分Cxを再生し、その再生したクロック成分Cxの立ち上がりや立ち下がりに同期したトリガ信号TRGをサンプリング信号発生部13に与える。
【0008】
そして、サンプリング信号発生部13から、観測対象信号Sxの波形繰り返し周期の整数倍の周期に所定の分解能時間ΔTだけ差のある周期のサンプリング信号Csを、そのトリガ信号TRGの立ち上がりや立ち下がりのタイミングからサンプリング部11に出力させて、一連の波形の再生に必要なデータを取得する。
【0009】
そして、以後、トリガ信号TRGに同期したタイミングからサンプリングを開始させ、一連の波形データを取得するという処理を繰り返し、得られた複数組の波形データの平均化処理等を行って観測対象信号の波形を求めて表示させる。
【0010】
ところが、近年上記のような等価時間サンプリング方式の波形観測装置において、複数の信号の波形を同じ測定系で同時に観測したいという要求があり、これに対しては、上記信号入力端子10aとサンプリング部11を複数組内蔵させることで対応可能である。
【0011】
しかし、この場合、各信号入力端子から入力された信号のうち、同期を掛けたい信号をトリガ信号発生部12に接続されている信号入力端子へ入力する必要があり、別の信号で同期を掛けたい場合には、信号入力端子に対する信号ケーブルの入れ換え作業が必要となり、極めて不便であった。
【0012】
さらに、信号入力端子毎にトリガ信号発生部を設けると、回路規模が増大し、装置が大型化するとともにコスト高になる。
【0013】
本発明は、これらの問題を解決し、複数の入力端子に入力される観測対象信号のいずれに対しても信号入力端子に対するケーブル入れ換え作業をすることなく、トリガ同期を掛けることができ、さらに低コストで小型に構成できる波形観測装置および波形観測方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1の波形観測装置は、
複数の信号入力端子(21A、21B)と、
前記複数の信号入力端子から入力された観測対象信号のいずれかを選択する信号選択部(23)と、
前記信号選択部によって選択された観測対象信号からそのクロック成分を抽出し、そのクロック成分に同期したトリガ信号を発生するトリガ信号発生部(30)と、
前記観測対象信号の波形繰り返し周期の整数倍に対して所定の分解能時間だけ差のある周期のサンプリング信号を、前記トリガ信号を受けたタイミングから発生するサンプリング信号発生部(35)と、
前記複数の信号入力端子から入力された観測対象信号を、前記サンプリング信号発生部から出力されたサンプリング信号を受ける毎にサンプリングしてデジタルの信号列にそれぞれ変換して出力する複数のサンプリング部(22A、22B)と、
波形表示用の表示器(45)と、
前記複数のサンプリング部から出力されたデジタルの信号列に基づいて、前記複数の信号入力端子に入力された観測対象信号の波形を前記表示器に表示させる表示処理部(40)とを備えている。
【0015】
また、本発明の請求項2の波形観測装置は、請求項1記載の波形観測装置において、
操作部(24)を有し、
前記信号選択部が、前記操作部に対する操作によって、複数の信号入力端子に入力された観測対象信号の任意のものを選択できることを特徴としている。
【0016】
また、本発明の請求項3の波形観測装置は、請求項1記載の波形観測装置において、
前記複数の信号入力端子から入力された観測対象信号の周波数を測定する周波数測定部(50)を有し、
前記信号選択部が、前記周波数測定部の測定結果を受け、前記複数の信号入力端子から入力された観測対象信号の周波数が低いものを優先的に選択することを特徴としている。
【0017】
また、本発明の請求項4の波形観測装置は、請求項1記載の波形観測装置において、
前記複数の信号入力端子から入力された観測対象信号の誤り率を測定する誤り率測定部(60)を有し、
前記信号選択部が、前記誤り率測定部の測定結果を受け、前記複数の信号入力端子から入力された観測対象信号の誤り率が低いものを優先的に選択することを特徴としている。
【0018】
また、本発明の請求項5の波形観測方法は、
複数の信号入力端子(21A、21B)から入力された観測対象信号のいずれかを選択する段階と、
該選択した観測対象信号からそのクロック成分を抽出し、そのクロック成分に同期したトリガ信号を発生する段階と、
前記観測対象信号の波形繰り返し周期の整数倍に対して所定の分解能時間だけ差のある周期のサンプリング信号を、前記トリガ信号を受けたタイミングから発生する段階と、
前記複数の信号入力端子から入力された観測対象信号を、前記サンプリング信号を受ける毎にサンプリングしてデジタルの信号列にそれぞれ変換して出力する段階と、
前記サンプリングされたデジタルの信号列に基づいて、前記複数の信号入力端子に入力された観測対象信号の波形を表示させる段階とを含んでいる。
【0019】
また、本発明の請求項6の波形観測方法は、請求項5記載の波形観測方法において、
操作部に対する操作によって、前記複数の信号入力端子に入力された観測対象信号の任意のものを前記トリガ信号発生のために用いる観測対象信号として選択できるようにしたことを特徴としている。
【0020】
また、本発明の請求項7の波形観測方法は、請求項5記載の波形観測方法において、
前記複数の信号入力端子から入力された観測対象信号の周波数を測定する段階を含み、
前記複数の信号入力端子から入力された観測対象信号のうち周波数が低いものを前記トリガ信号発生のために用いる観測対象信号として優先的に選択することを特徴としている。
【0021】
また、本発明の請求項8の波形観測方法は、請求項5記載の波形観測方法において、
前記複数の信号入力端子から入力された観測対象信号の誤り率を測定する段階を含み、
前記複数の信号入力端子から入力された観測対象信号のうち誤り率が低いものを前記トリガ信号発生のために用いる観測対象信号として優先的に選択することを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
このように、本発明の波形観測装置および方法は、等価時間サンプリング方式を採用したものにおいて、複数の信号入力端子に入力された観測対象信号のいずれかを任意に選択し、その観測対象信号に基づいてトリガ信号を発生させ、そのトリガ信号に同期したタイミングで各観測対象信号に対するサンプリングを開始するようにしたため、複数の入力端子に入力される観測対象信号のいずれに対しても信号入力端子に対する信号ケーブルの入れ換え作業をすることなくトリガ同期を掛けることができ、信号観測を容易に行える。また、信号入力端子毎にトリガ信号発生部を設ける必要もないので、低コストで小型に構成できる。
【0023】
また、操作部に対する操作によって、複数の信号入力端子に入力された観測対象信号の任意のものを選択できるものでは、観測者が所望の信号にトリガ同期をかけることができる。
【0024】
また、複数の信号入力端子から入力された観測対象信号の周波数が低いものを優先的に選択するようにしたものでは、例えばクロック信号とそのクロック信号に同期したデータ信号が入力された場合に、周波数の低いデータ信号を優先して選択するので、その低い周波数の信号を含む全ての波形を確実に表示させることができる。
【0025】
また、複数の信号入力端子から入力された観測対象信号の誤り率が低いものを優先的に選択するようにしたものでは、品質のよい信号から安定したトリガ信号を生成することができ、正確な波形観測が行える。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態の構成図
【図2】実施形態の動作を説明するためのタイミング図
【図3】表示波形の一例を示す図
【図4】本発明の別の実施形態の構成図
【図5】トリガ機能を有する波形観測装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1の実施形態)
以下、図面に基づいて本発明の第1の実施形態を説明する。
図1は、本発明を適用した波形観測装置20の構成を示している。
【0028】
この波形観測装置20は、観測対象信号Sxa、Sxbを入力するための複数(この例では2つとするが3つ以上であってもよい)の信号入力端子21A、21Bを有している。
【0029】
ここで、観測対象信号Sxa、Sxbは電気信号とし、例えば差動形式で互いに反転したデータ信号、マルチプレクサの出力信号、テスト回路への入力信号とその出力信号、データ出力機器からのデータ信号とクロック信号等であり、いずれも互いに同期しているものとする。
【0030】
信号入力端子21A、21Bに入力された観測対象信号Sxa、Sxbは、それぞれサンプリング部22A、22Bに入力されるとともに、信号選択部23に入力され、そのいずれか一方が選択される。
【0031】
サンプリング部22A、22Bは、観測対象信号Sxa、Sxbが電気信号の場合にはA/D変換器で構成することができる。また、観測対象信号Sxa、Sxbが光信号の場合、その光信号を光電変換器(受光器)で受けて電気信号に変換し、これをA/D変換器でサンプリングする構成することもできる。
【0032】
また、観測対象信号Sxa、Sxbが光信号の場合には、前記特許文献1に記載されているように、光信号を光変調器光に入射して光サンプリングを行い、そのサンプリングで得られた光を光電変換器で受けて電気信号に変換し、これをA/D変換器によってデジタル信号列に変換する構成であってもよい。
【0033】
ここで、信号選択部23は、多数のキーやスイッチからなる操作部24に対する操作によってユーザが任意に信号選択する。信号選択部23によって選択された観測対象信号はトリガ信号発生部30に入力される。
【0034】
トリガ信号発生部30は、入力された観測対象信号からそのクロック成分を再生し、そのクロック成分の立ち上がりまたは立ち下がりに同期したトリガ信号TRGを発生する。
【0035】
ここで、トリガ信号TRGは、等価時間サンプリングによって一連の波形データを取得するときのサンプリング開始タイミングを決定するものであり、その周期Ttrgは、サンプリング周期Tsで所望数の波形データを取得するのに必要な時間より長く設定され、且つ、波形の繰り返し周期の整数倍に等しいものとする。
【0036】
例えば、観測対象信号の波形の繰り返し周期Taが1nS(周波数でいうと1GHz)、サンプリング周期Tsが1μS(=1000・Ta)+1pS(=ΔT)とすれば、1000回のサンプリングで、1nS長の一連の波形データを1pSの分解能で得ることができ、それに要した時間1mS+1nSより長く1nSの整数倍に等しくなるようにトリガ周期Ttrgを設定すればよい。ただし、実際には再生されるクロック成分の位相揺らぎがあるので、所定回数のサンプリングに必要な時間経過後で繰り返し波形の整数倍に最も近いタイミングでクロック成分がレベル遷移するタイミングを次のトリガタイミングとする。
【0037】
このトリガ信号TRGは、サンプリング信号発生部35に入力される。サンプリング信号発生部35は、観測対象信号の波形繰り返し周期Taの整数N倍に対して所定の分解能時間ΔTだけ差のある周期Tsのサンプリング信号Csを、トリガ信号TRGを受けたタイミングから発生する。なお、サンプリング周期とトリガ周期は、操作部24の操作によって設定可能となっている。
【0038】
また、ここでは信号の周期を基準にして説明しているが、実際の回路では、PLL回路やDDS回路を用い、周波数を基準にして、観測対象信号の波形繰り返し周波数Faの整数N分の1に対して、所定の分解能時間ΔTに対応した周波数差をもつサンプリング信号Csを発生する。
【0039】
サンプリング信号Csは、複数のサンプリング部22A、22Bに入力される。サンプリング部22A、22Bは、信号入力端子21A、21Bから入力された観測対象信号を、サンプリング信号Csを受ける毎にサンプリングしてデジタルの信号列Da、Dbにそれぞれ変換して表示処理部40に出力する。
【0040】
表示処理部40は、サンプリング部22A、22Bから出力されたデジタルの信号列Da、Dbをそのサンプリング順に図示しないメモリに記憶し、その記憶したデータに基づいて観測対象信号の波形を表示器45に表示させる。
【0041】
次に、上記構成の波形観測装置20の動作について説明する。
2つの信号入力端子21A、21Bに、例えば図2の(a)、(b)のような互いに反転したデータ信号が観測対象信号Sxa、Sxbとして入力されるとする。
【0042】
なお、ここでは説明を容易にするために、観測対象信号Sxa、Sxbの一方が「10110」、他方が「01001」の5ビット信号の繰り返しで入力されるものとする。
【0043】
また、観測対象信号Sxa、Sxbのビットレートは観測者にとって既知であり、そのビットレートと時間分解能に対応した周期Tsのサンプリング信号Csがサンプリング信号発生部35から出力されるように設定がなされる。また、前記したトリガ周期Ttrgも前記した条件内で設定される。
【0044】
ここで、観測者が操作部24の操作により例えば信号入力端子21A側に入力された信号Sxaを選択した場合、その信号Sxaがトリガ信号発生部30に入力されて、図2の(c)のように、信号Sxaに同期したクロック成分Cxが再生され、そのクロック成分Cxの例えば立ち上がりに同期したトリガ信号TRGが図2の(d)のように出力される。
【0045】
このトリガ信号TRGを受けたサンプリング信号発生部35からは、図2の(e)のようにトリガ信号TRGの立ち上がりタイミングから、周期Tsのサンプリング信号Csがサンプリング部22A、22Bに出力され、このサンプリング信号Csによって入力信号Sxa、Sxbに対するサンプリングが行われ、そのサンプリングによって得られたデータ信号列Da、Dbが図2の(f)、(g)のように表示処理部40へ出力される。
【0046】
このサンプリングがデータ信号の繰り返し周期Taを時間分解能ΔTで除算した数分得られたとき、入力信号の5ビット長の繰り返し波形のデータが得られたことになり、これを図3のように、信号入力端子21A、21B毎に時間軸上にプロットすることで、入力信号Sxa、Sxbの波形を表示することができる。
【0047】
なお、表示処理部40における実際の波形表示方法としては、上記したトリガ信号TRGに同期したタイミングからデータ取得を開始して5ビット分の波形データを得るという処理を、予め指定された平均化数分行い、その波形の平均化処理をすることで、ランダム雑音を抑圧した波形を得て、表示波形を順次更新する。
【0048】
このようにして表示された波形を観測する際に、例えば被測定機器の異常により、トリガ信号を得ている方の入力信号に大きな雑音が含まれていたり、振幅が大幅に低下していると、その影響がトリガ信号のタイミングズレを生じさせ、予期した波形が観測されないことがある。
【0049】
この場合、観測者は操作部24の操作によってトリガ信号発生部30へ入力する信号を切り換える。ここで、新たに入力した信号に異常がなければ、タイミングが安定したトリガ信号を生成することができ、それによって両方の入力信号の波形を正しく表示させることができ、上記した大きな雑音が含まれた波形や、振幅が大幅に低下した波形を観測でき、被測定機器の異常を認識できる。
【0050】
このように、実施形態の波形観測装置20では、操作部24の操作により入力信号の任意のものをトリガ信号発生部30へ入力させることができ、複数の信号入力端子がある場合であっても、その信号入力端子に対するケーブルなどの入れ換え操作を行うことなく、簡単にトリガ用の入力信号を変更できる。
【0051】
なお、上記実施形態は本発明の波形観測装置に関するものであるが、上記実施形態と同等の信号処理を行う以下の波形観測方法も開示している。
【0052】
即ち、上記実施形態の波形観測装置は、複数の信号入力端子21A、21Bから入力された観測対象信号Sxa、Sxbのいずれかを選択する段階と、その選択した観測対象信号からそのクロック成分を抽出し、そのクロック成分に同期したトリガ信号TRGを発生する段階と、観測対象信号の波形繰り返し周期の整数倍に対して所定の分解能時間だけ差のある周期のサンプリング信号Csを、トリガ信号TRGを受けたタイミングから発生する段階と、複数の信号入力端子21A、21Bから入力された観測対象信号Sxa、Sxbを、サンプリング信号Csを受ける毎にサンプリングしてデジタルの信号列にそれぞれ変換して出力する段階と、サンプリングされたデジタルの信号列に基づいて、複数の信号入力端子に入力された観測対象信号の波形を表示させる段階とを含む波形観測方法を実施している。
【0053】
さらに言えば、上記実施形態は、観測対象信号Sxa、Sxbのいずれかを選択する処理の一例として、操作部24の操作にしたがって選択処理を行うものである。
【0054】
(第2の実施形態)
上記実施形態では、観測者が操作部24の操作でトリガ信号発生部30へ入力する信号を選択する場合の例を示したが、手動操作の他に、入力信号の周波数に応じた選択処理、あるいは誤り率に応じた選択処理を自動的に行うことも可能である。
【0055】
図4は、手動選択モード、周波数選択モードおよび誤り率選択モードを有する実施形態の構成図である。
【0056】
この実施形態では、前記した実施形態の構成に加えて、周波数測定部50、誤り率測定部60が設けられており、信号選択部23は、操作部24によって指定されたモードにより、前記した手動選択、周波数による選択、誤り率による選択のいずれかを行う。
【0057】
周波数測定部50は、各信号入力端子21A、21Bに入力された観測対象信号Sxa、Sxbの周波数fa、fbを測定し、その結果を信号選択部23に出力する。
【0058】
また、誤り率測定部60は、各信号入力端子21A、21Bに入力された観測対象信号Sxa、Sxbの誤り率Ea、Ebを測定し、その結果を信号選択部23に出力する。
【0059】
そして、信号選択部23は、手動選択モードが指定されている場合には、前記同様に、操作部24の操作に応じて信号の選択処理を行う。
【0060】
また、周波数選択モードが指定されている場合には、周波数測定部50からの周波数fa、fbを比較し、周波数が低い方の観測対象信号を優先的に選択する。なお、ここで周波数が低い方を選択しているのは、最も周波数が低いデータ信号の繰り返し波形を表示させるためであり、また、データ信号とそのクロック信号の波形を観測する場合等も、高速なクロックにトリガがかかってデータ信号の繰り返し波形を表示できない不便さを解消するためである。
【0061】
また、誤り率選択モードが指定されている場合には、誤り率測定部60からの誤り率Ea、Ebを比較して、誤り率が低い方の観測対象信号を優先的に選択する。これは品質がより高い信号によって生成したトリガ信号を用いることで、安定な波形観測を行えるようにするための機能である。図示していないが測定された誤り率Ea、Ebは、表示処理部40によって表示器45に表示される。
【0062】
なお、上記のように装置側でトリガ信号発生部30に与える入力信号を自動的に選択する場合には、その選択している信号入力端子が識別できるように例えば表示器45の画面上に表示を行う。
【0063】
このように、入力信号の周波数や誤り率を比較して観測に有利な方を装置が選択してトリガ信号発生部30に入力させるようにしたものでは、常にトリガ発生に適切と判断した信号が選択されるので、測定中に入力信号の品質が変化した場合でも、それに追従して安定な波形表示が行えるので、観測者は混乱することなく、波形観測できる。
【0064】
なお、ここでは周波数選択モードと誤り率選択モードを排他的に用いる場合を説明したが、これらを併用することも可能である。即ち、入力信号のうち、周波数(ビットレート)を比較して同程度の低いものが複数あった場合に、誤り率を比較して誤り率が低い方を選択する処理も可能である。
【0065】
上記第2の実施形態は、前記した本発明の波形観測方法において、複数の信号入力端子21A、21Bから入力された観測対象信号Sxa、Sxbの周波数を測定する段階を含み、観測対象信号Sxa、Sxbのうち周波数が低いものを優先的に選択することを特徴とし、また、複数の信号入力端子から入力された観測対象信号Sxa、Sxbの誤り率を測定する段階を含み、その観測対象信号Sxa、Sxbのうち誤り率が低いものを優先的に選択することを特徴とする波形観測方法を実施している。
【0066】
また、前記したように、上記実施形態では信号入力端子が2系統のものについて説明したが、より多くの信号入力端子、サンプリング部を有する波形観測装置においても本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0067】
20……波形観測装置、21A、21B……信号入力端子、22A、22B……サンプリング部、23……信号選択部、24……操作部、30……トリガ信号発生部、35……サンプリング信号発生部、40……表示処理部、45……表示器、50……周波数測定部、60……誤り率測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の信号入力端子(21A、21B)と、
前記複数の信号入力端子から入力された観測対象信号のいずれかを選択する信号選択部(23)と、
前記信号選択部によって選択された観測対象信号からそのクロック成分を抽出し、そのクロック成分に同期したトリガ信号を発生するトリガ信号発生部(30)と、
前記観測対象信号の波形繰り返し周期の整数倍に対して所定の分解能時間だけ差のある周期のサンプリング信号を、前記トリガ信号を受けたタイミングから発生するサンプリング信号発生部(35)と、
前記複数の信号入力端子から入力された観測対象信号を、前記サンプリング信号発生部から出力されたサンプリング信号を受ける毎にサンプリングしてデジタルの信号列にそれぞれ変換して出力する複数のサンプリング部(22A、22B)と、
波形表示用の表示器(45)と、
前記複数のサンプリング部から出力されたデジタルの信号列に基づいて、前記複数の信号入力端子に入力された観測対象信号の波形を前記表示器に表示させる表示処理部(40)とを備えた波形観測装置。
【請求項2】
操作部(24)を有し、
前記信号選択部が、前記操作部に対する操作によって、複数の信号入力端子に入力された観測対象信号の任意のものを選択できることを特徴とする請求項1記載の波形観測装置。
【請求項3】
前記複数の信号入力端子から入力された観測対象信号の周波数を測定する周波数測定部(50)を有し、
前記信号選択部が、前記周波数測定部の測定結果を受け、前記複数の信号入力端子から入力された観測対象信号の周波数が低いものを優先的に選択することを特徴とする請求項1記載の波形観測装置。
【請求項4】
前記複数の信号入力端子から入力された観測対象信号の誤り率を測定する誤り率測定部(60)を有し、
前記信号選択部が、前記誤り率測定部の測定結果を受け、前記複数の信号入力端子から入力された観測対象信号の誤り率が低いものを優先的に選択することを特徴とする請求項1記載の波形観測装置。
【請求項5】
複数の信号入力端子(21A、21B)から入力された観測対象信号のいずれかを選択する段階と、
該選択した観測対象信号からそのクロック成分を抽出し、そのクロック成分に同期したトリガ信号を発生する段階と、
前記観測対象信号の波形繰り返し周期の整数倍に対して所定の分解能時間だけ差のある周期のサンプリング信号を、前記トリガ信号を受けたタイミングから発生する段階と、
前記複数の信号入力端子から入力された観測対象信号を、前記サンプリング信号を受ける毎にサンプリングしてデジタルの信号列にそれぞれ変換して出力する段階と、
前記サンプリングされたデジタルの信号列に基づいて、前記複数の信号入力端子に入力された観測対象信号の波形を表示させる段階とを含む波形観測方法。
【請求項6】
操作部に対する操作によって、前記複数の信号入力端子に入力された観測対象信号の任意のものを前記トリガ信号発生のために用いる観測対象信号として選択できるようにしたことを特徴とする請求項5記載の波形観測方法。
【請求項7】
前記複数の信号入力端子から入力された観測対象信号の周波数を測定する段階を含み、
前記複数の信号入力端子から入力された観測対象信号のうち周波数が低いものを前記トリガ信号発生のために用いる観測対象信号として優先的に選択することを特徴とする請求項5記載の波形観測方法。
【請求項8】
前記複数の信号入力端子から入力された観測対象信号の誤り率を測定する段階を含み、
前記複数の信号入力端子から入力された観測対象信号のうち誤り率が低いものを前記トリガ信号発生のために用いる観測対象信号として優先的に選択することを特徴とする請求項5記載の波形観測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−112526(P2011−112526A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269639(P2009−269639)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)