説明

波長選択性を付与した全固体型反射調光エレクトロクロミック素子及びそれを用いた調光部材

【課題】 透明状態における全光線透過率及び、鏡状態における全光線反射率の波長選択性を有し、広い範囲にわたって短い時間でスイッチングすることを可能にする全固体型反射調光エレクトロクロミック素子及びそれを用いた調光部材を提供する。
【解決手段】 透明基材の上に多層膜を形成した反射型調光素子であって、該多層膜が、少なくとも透明基材の上に、下部透明導電膜層、イオン貯蔵層、固体電解質層、バッファ層、触媒層、反射調光層、上部透明導電膜層、保護層を順に形成した多層構造を有しており、上部透明導電膜層の材料が、酸化インジウム・スズ、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛、酸化インジウム・ガリウム・亜鉛又は酸化ニオブあるいはこれら2種類以上の組み合わせから選ばれる酸化物であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的にガラス表面を鏡状態から透過状態へ可逆的に変化させることで光の透過を電気的に制御することができる全固体型反射調光エレクトロクロミック素子及びそれを用いた調光部材に関するものであり、詳しくは、透明状態における全光線透過率及び、鏡状態における全光線反射率の波長選択性を付与した全固体型反射調光エレクトロクロミック素子及びそれを用いた調光部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に建物の窓ガラスは大きな熱の出入口になっている。例えば、冬の暖房時の熱が窓から流失する割合は48%程度に達し、夏の冷房時に窓から熱が入る割合は71%程度にも達する。同様の現象は窓ガラスが大きな熱の出入口となっている自動車等移動用車両にも当てはまる。自動車においては、空間に対する窓ガラスの割合が建築物における割合よりも大きく、かつ、車内にいる人間に日射を避ける余地が少ないため、炎天下の環境に置かれた自動車の室内は非常に高温になる。
【0003】
日本国内の夏期環境での測定例では、駐車した車内の空気温度は、約70℃近くに達する。室内の内装材の温度に関しては、インスツルメントパネル上面で100℃近くに上昇し、天井は70℃近くに上昇する。こうした状況で乗車した時の不快さは言うまでもない。また、換気や冷房装置を利用しても内装材の温度は容易には下がらず、長時間にわたって乗員に輻射熱を放射し続け、車内における快適性を大きく低下させる。
【0004】
これらの問題を解決する技術として、光及び熱の出入を制御できる調光ガラスが開発されている。調光ガラスで用いられる調光方式としては、いくつかの種類があり、調光素子を用いたものとしては、1)電流・電圧の印加により可逆的に透過率が変化する材料を用いたエレクトロクロミック素子、2)温度により透過率が変化する材料を用いたサーモクロミック素子、3)雰囲気ガスの制御により透過率が変化する材料を用いたガスクロミック素子、が挙げられる。
【0005】
その中でもエレクトロクロミック素子は、光及び熱の透過状態を電気的に制御することができる。そのため、エレクトロクロミック素子は光及び熱の透過状態を人間の意図に沿った状態に設定でき、建物や車両用ガラスに適用される調光材料として非常に適している。さらに、エレクトロクロミック素子は電流・電圧を印加していない状態でも、その光学特性を一定状態に維持することができるため、使用エネルギーを削減することができる。
【0006】
エレクトロクロミック素子は、その構成物の一部が液状である場合があるが、その場合、液状物の漏出を防ぐことが必要となる。建物や車両は、長期間の使用を前提としており、漏出を長期間に渡って防ぐことは可能ではあるがコストの上昇を招く。そのため、建物や車両用ガラスに好適なエレクトロクロミック素子としては、それを構成する材料全てが固形であることが望ましい。
【0007】
固形材料の中でも、酸化タングステンを初めとする従来公知のエレクトロクロミック素子は、調光材料で光を吸収することにより調光を行うことをその原理としている。即ち、光の吸収により室内側への光の形態をとった熱の進入を抑制する。そのため、このような調光原理を有する調光材料を採用する場合、光の吸収により調光材料が熱を持ち、その熱が室内に輻射熱として再放射され、調光ガラス内部に熱が侵入してしまうという問題がある。
【0008】
この問題の解決手段としては、光を吸収することにより調光を行うのではなく、光を反射することにより調光を行う手法が考えられる。つまり、鏡の状態と透明な状態とが可逆的に変化する反射調光材料を用いることによって、調光材料の吸熱による室内への熱進入を防止することができる。
【0009】
このような特性を有する反射調光型のエレクトロクロミック素子としては、例えば、希土類金属とマグネシウムとの合金とその水素化物からなる反射調光層、水素イオン伝導性の透明な酸化保護層、無水の固体電解質層、イオン貯蔵層を積層したエレクトロクロミック素子が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
反射調光層は、エレクトロクロミック素子の反射率を制御する機能を有し、水素イオンの受け渡しにより、反射率が変化する。酸化保護層は、例えば、酸化ニオブ、酸化バナジウム、酸化タンタル等の酸化物や、フッ化マグネシウム、フッ化鉛等のフッ化物等の水素イオン伝導性を有する化合物からなり、反射調光層の酸化を防止する。
【0011】
イオン貯蔵層は反射率の制御に用いられる水素イオンを蓄積する。調光ガラスに電圧を印加すると、水素イオンがイオン貯蔵層から固体電解質層及び、酸化保護層を介して反射調光層に移動し、反射調光層の反射率が変化する。電圧を逆に印加すると、水素イオンが反射調光層から放出され、反射調光層の反射率が元に戻る。しかし、この素子では、反射調光層に高価な希土類金属を用いているため、大面積への適用がコストの観点から困難である。
【0012】
安価で、より実用的な材料を反射調光層に用いた反射調光素子としては、例えば、反射調光層としてMgNi、触媒層としてパラジウムや白金を積層した素子が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、この種の材料は、透明時における透過率が低く、実用的に使用できるものではなかった。
【0013】
本発明者らの一部が開発したマグネシウム・ニッケル系合金薄膜(例えば、特許文献3参照)は、水素ガスを用いたガスクロミック方式であるが、可視光透過率が約50%であり、従来報告されているMgNiの20%に比べて大きく向上しており、実用に近い段階まできている。このマグネシウム・ニッケル系合金薄膜を用いた全固体型調光ミラー素子としては、例えば、透明基板の上にイオン貯蔵層、固体電解質層、マグネシウム・ニッケル系合金を反射調光素子として積層した全固体型調光ミラー光スイッチも提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0014】
また、マグネシウム・ニッケル系合金薄膜を用いた全固体型調光ミラー光スイッチでは、透過状態で薄く黄色味がかっており、完全な無色透明状態ではない。この素子の透過状態時の透過性の観点において、本発明者らはマグネシウム・チタン系合金薄膜あるいはマグネシウム・ニオブ系合金薄膜を用いた透過状態時にほぼ無色透明状態を示す全固体型調光ミラー光スイッチの開発も行っている(例えば、特許文献5、6参照)。
【0015】
さらに繰り返し利用回数に関し、この素子は1000回以上のスイッチングを示すものの、劣化が生じ、反射状態に戻らなくなる欠点があった。この原因の一つとして、スイッチングを繰り返すごとに徐々に反射調光層成分及び触媒層成分が固体電解質層中へ拡散することが示唆された(例えば、非特許文献1参照)。
【0016】
また、マグネシウム系合金薄膜を用いた全固体型反射調光エレクトロクロミック素子間に構成成分の拡散を防止する目的でバッファ層としてアルミニウム薄膜を用いることで高いスイッチング回数を示す全固体型調光ミラー光スイッチも提案されている(例えば、特許文献7参照)。
【0017】
この素子の表面の反射調光層は、作製直後の大気接触により、その表面にマグネシウムの薄い酸化物層が形成され、この酸化物層が不動態層として機能すると考えられていた。しかしながら、環境試験の一例として実施した長期間大気中保持において、本素子に調光特性が消失する現象が見出されたため、より詳細に素子の劣化機構に関して調査を行った。
【0018】
その結果、表面マグネシウム酸化物層は不動態層としての機能に乏しく、高湿度雰囲気下において急速な劣化が観察された。この原因の一つとして、大気中酸素及び湿度により反射調光層が酸化及び水酸化することによるものと示唆された(例えば、非特許文献2参照)。
【0019】
これら環境劣化緩和を目的に表面に保護層を導入することで高い耐久性を有する全固体型反射調光エレクトロクロミック素子も提案されている。
【0020】
一方、該素子の実応用に関しては、例えば調光窓材としての用途において、反射調光層による太陽光の直接反射による眩しさや周辺植物への影響の懸念が考慮される。
【0021】
これらの影響としては、自動車等の運転者や歩行者の視界を妨げる危険性や植物の枯れ等の問題が考えられる。そのため、使用場所や目的等に応じて該素子の透明状態における全光線透過率及び、鏡状態における全光線反射率を任意に制御できる全固体型反射調光エレクトロクロミック素子の開発が切望されていた。
【0022】
さらに、光スイッチ等、電子・光学デバイス、また既存部材へのデコレーションによる意匠性付与等アプリケーションに応じた任意の波長における調光性能の広い選択性も求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2000―204862号公報
【特許文献2】米国特許第6647166号明細書
【特許文献3】特開2003―335553号公報
【特許文献4】特開2005―274630号公報
【特許文献5】特開2008―152070号公報
【特許文献6】特開2008―152071号公報
【特許文献7】特開2009―025785号公報
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】K.Tajima,Y.Yamada,S.Bao,M.Okada and K.Yoshimura,“Durability of All―Solid―State Switchable Mirror Based on Magnesium―Nickel Thin Film”,Electrochemical Solid State Letters,vol.10,no.3,pp.J52-54,2007
【非特許文献2】K.Tajima,Y.Yamada,S.Bao,M.Okada and K.Yoshimura,“Analysis of Degradation of Flexible All-Solid-State Switchable Mirror Based on Mg-Ni Thin Film”,Japanese Journal of Applied Physics,vol.48,no.10,pp.102402-1―102402-5,2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は、透明状態における全光線透過率及び、鏡状態における全光線反射率の波長選択性を有し、広い範囲にわたって短い時間でスイッチングすることを可能にする全固体型反射調光エレクトロクロミック素子及びそれを用いた調光部材を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明者らは上記従来技術を鑑みて、上記の諸問題を抜本的に解決することが可能な全固体型反射調光エレクトロクロミック素子を開発することを目標として鋭意研究を重ねた結果、マグネシウム系合金薄膜を用いた全固体型反射調光エレクトロクロミック素子において、反射調光層の上に上部透明導電膜層、保護層を構築することにより波長選択性の付与に成功し、本発明を完成するに至った。
【0027】
さらに本発明では、上部透明導電膜層と、該上部透明導電膜層より下の多層膜との干渉効果により、透明状態における全光線透過率を任意の波長領域において選択可能とし、鏡状態における全光線反射率制御により任意の色合いが付与可能である等、調光特性の向上に複合的な効果が得られる全固体型反射調光エレクトロクロミック素子とした。
【0028】
このように、任意の波長における全光線透過率・全光線反射率等、光学特性の可変能が選択的に付与できることから、意匠性やデザイン性が要求される特定アプリケーションにも対応可能となる。
【0029】
即ち本発明は、上記の課題を解決するために以下のことを特徴としている。
【0030】
第1に、透明基材の上に多層膜を形成した反射型調光素子であって、該多層膜が、少なくとも透明基材の上に、下部透明導電膜層、イオン貯蔵層、固体電解質層、バッファ層、触媒層、反射調光層、上部透明導電膜層、保護層を順に形成した多層構造を有しており、上部透明導電膜層の材料が、酸化インジウム・スズ、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛、酸化インジウム・ガリウム・亜鉛又は酸化ニオブあるいはこれら2種類以上の組み合わせから選ばれる酸化物であることを特徴とする全固体型反射調光エレクトロクロミック素子である。
【0031】
第2に、上記第1の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子において、上部透明導電膜層が、全光線透過率が70%より高い金属薄膜、酸化物、又は有機化合物の少なくとも一種を含む。
【0032】
第3に、上記第1又は第2の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子において、上部透明導電膜とその他の層との干渉効果により、任意の波長域における全光線反射率及び全光線透過率が調整されている。
【0033】
第4に、上記第1から第3の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子において、下部透明導電膜層と上部透明導電膜の間に、電圧の印加及び/又は電流を流すことによって、反射調光作用を発現させる。
【0034】
第5に、上記第1の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子において、透明基材が、ガラス又は樹脂シートである。
【0035】
第6に、上記第1の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子において、下部透明導電膜膜の上に形成されたイオン貯蔵層が、遷移金属酸化物薄膜である。
【0036】
第7に、上記第1の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子において、イオン貯蔵層の上に形成された固体電解質層が、透明金属酸化物薄膜である。
【0037】
第8に、上記第7の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子において、透明金属酸化物薄膜の密度が、2.8g/cm以上、4.3g/cm以下である。
【0038】
第9に、上記第7又は8の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子において、透明金属酸化物薄膜が、酸化タンタル又は酸化ジルコニウムからなる。
【0039】
第10に、上記第1の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子において、固体電解質層の上に形成されたバッファ層が、金属薄膜である。
【0040】
第11に、上記第10の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子において、金属薄膜が、金属アルミニウム、金属タンタル又は金属チタンからなる。
【0041】
第12に、上記第1の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子において、バッファ層の上に形成された触媒層が、パラジウム、白金、銀もしくはそれらの合金を含む。
【0042】
第13に、上記第1の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子において、触媒層の上に形成された反射調光層が、少なくともマグネシウム・ニッケル系、マグネシウム・チタン系、マグネシウム・ニオブ系のいずれかのマグネシウム系合金薄膜である。
【0043】
第14に、上記第13の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子において、マグネシウム系合金薄膜が、少なくともMgNi(0.1≦x≦0.5)、MgTi(0.1≦x≦0.5)、MgNb(0.3≦x≦0.6)又はMgZr(0.1≦x≦0.5)のいずれか一つ以上からなる。
【0044】
第15に、上記第1の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子において、上部透明導電膜層及び多層膜を封止するように形成された保護層が、紫外線硬化樹脂、紫外線熱併用硬化樹脂、塩化ビニルポリマー、塩化ビニリデンポリマー、フッ素系樹脂、テトラフルオロエチレン、シクロオレフィンポリマーのいずれかから選ばれる。
【0045】
第16に、上記第1の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子において、保護層が、上部透明導電膜層及び多層膜と化学反応を生じず、硬化収縮率が10%以下、吸水率が3%以下、全光線透過率が90%以上有し、硬化後透明状態を保持する。
【0046】
第17に、上記第1の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子において、イオン貯蔵層又は反射調光層のいずれかを水素化及び/又は、固体電解質層中に水素を内包させる。
【0047】
第18に、透明基材の上に、多層薄膜を形成した全固体型反射調光エレクトロクロミック素子を製造する方法であって、透明基材の上に、下部透明導電膜層、イオン貯蔵層、固体電解質層、バッファ層、触媒層を形成し、さらに、その上にマグネシウム・ニッケル系合金、マグネシウム・チタン系合金又はマグネシウム・ニオブ系合金薄膜の反射調光層、上部透明導電膜層、保護層を形成した同一材料からなる素子において、永続的な波長選択性を可能としたことを特徴とする全固体型反射調光エレクトロクロミック素子の製造方法である。
【0048】
第19に、上記1から17のいずれかの全固体型反射調光エレクトロクロミック素子が組み込まれた調光部材である。
【発明の効果】
【0049】
上記第1の発明によれば、透明基材の上に多層膜を形成した反射型調光素子であって、該多層膜が、少なくとも透明基材の上に、下部透明導電膜層、イオン貯蔵層、固体電解質層、バッファ層、触媒層、反射調光層、上部透明導電膜層、保護層を形成した多層構造を有する構成としたので、反射調光特性に優れた全固体型反射調光エレクトロクロミック素子とすることができる。
【0050】
上記第1から第3の発明によれば、上部透明導電膜層を特定の物質に限定し、他の層との干渉効果を利用することにより、スイッチングによる反射状態の波長選択性を有する全固体型反射調光エレクトロクロミック素子とすることができる。
【0051】
上記第4の発明によれば、上記第1の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子の、下部透明導電膜層と上部透明導電膜層の間に、電圧の印加及び/又は電流を流すことによって、反射調光作用を発現させることができるので、電気的にガラス表面を鏡状態から透過状態へ可逆的に変化させることで、窓ガラスから入射する太陽光の透過を電気的に制御することができ、室内空間を快適に保つことが可能となる。
【0052】
上記第5の発明によれば、上記第1の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子の透明基材を、ガラス又は樹脂シートとしたので、樹脂シート上に素子構造を構築することで、生産性、利便性、経済性等に優れた大面積を有する大型反射調光エレクトロクロミック素子を提供することができる。
【0053】
上記第6から第14の発明によれば、上記第1の多層膜の各構成膜を選択的に特定することにより、調光特性の向上、透明状態における全光線透過率の向上等、複合的な効果を得ることが可能となる。特に、上記第1及び第15、第16の発明による保護層の形成により、環境に対する耐久性を飛躍的に向上させることが可能となる。
【0054】
上記第18の発明によれば、生産性、利便性、経済性等に優れた大面積を有する大型反射調光エレクトロクロミック素子を、大量に、低コスト、高速プロセスで製造することができる。
【0055】
上記第19の発明によれば、全固体型反射調光エレクトロクロミック素子を組み込んだ調光部材を、既設の窓ガラス等に貼り付けるだけで省エネルギー効果を持たせることができるため、調光部材の応用範囲を飛躍的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子の他の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子の他の一例を示す概略図である。
【図4】全固体型反射調光エレクトロクロミック素子の特性評価装置の概略図である。
【図5】酸化インジウム・ガリウム・亜鉛薄膜を構築した全固体型反射調光エレクトロクロミック素子の外観写真である。
【図6】酸化インジウム・ガリウム・亜鉛薄膜を構築した全固体型反射調光エレクトロクロミック素子のスイッチング特性(波長670nmにおける光学透過率及び光学反射率の時間変化)を示すグラフである。
【図7】酸化インジウム・ガリウム・亜鉛薄膜を構築した全固体型反射調光エレクトロクロミック素子の透過スペクトルを示すグラフである。
【図8】酸化インジウム・ガリウム・亜鉛薄膜を構築した全固体型反射調光エレクトロクロミック素子の反射スペクトルを示すグラフである。
【図9】酸化インジウム・ガリウム・亜鉛薄膜を構築した全固体型反射調光エレクトロクロミック素子の反射状態の反射スペクトルを示すグラフである。
【図10】アルミニウムドープ酸化亜鉛薄膜を構築した全固体型反射調光エレクトロクロミック素子の反射状態の反射スペクトルを示すグラフである。
【図11】酸化ニオブ薄膜を構築した全固体型反射調光エレクトロクロミック素子の反射状態の反射スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0057】
次に、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0058】
本発明の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子(以下、エレクトロクロミック素子と略称する)は、全て固体材料で構成され、電圧を印加するか、又は電流を流すことによって、反射調光作用を示すエレクトロクロミック素子に係るものである。このエレクトロクロミック素子は、透明基材の上に、下部透明導電膜層、イオン貯蔵層、固体電解質層、バッファ層、触媒層、マグネシウム・ニッケル系合金薄膜を用いた反射調光層、上部透明導電膜、保護層の多層構造より構成されることを特徴とするものである。
【0059】
特に本発明は、反射調光層上部に構築した上部透明導電膜、保護層の特性による多層膜との干渉効果で透過性能が向上し、通常素子と比較して高い全光線透過率を示す。さらに同様の理由で反射状態と透過状態のスイッチング前後の全光線反射率の変化幅も作製条件により任意に制御できる。
【0060】
以下に、本発明のエレクトロクロミック素子を構成する各部材について説明する。
<透明基材>
本発明のエレクトロクロミック素子を構成する透明基材の材質や形状は、エレクトロクロミック素子の透明基材として機能するものであれば特に限定されない。透明基材は、下部透明導電膜層、イオン貯蔵層、固体電解質層、触媒層、反射調光層、上部透明導電膜層、及び保護層を形成するベースとしての機能だけではなく、水や酸素の浸入を抑制する障壁としても機能するものが好ましい。
【0061】
これらの透明基材としては、例えば、ガラス、樹脂シート等が挙げられる。
【0062】
ガラスとしては、一般に公知のガラス、例えば、クリアーガラス、グリーンガラス、ブロンズガラス、グレーガラス、ブルーガラス、UVカット断熱ガラス、熱線吸収ガラス、強化ガラス等を用いることができる。これらのガラスは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。さらに、本技術により色ガラスを使わずに薄膜の作製条件のみの安価な手法で基材を選ばずに色発現を達成することができる。
【0063】
本発明において、樹脂シートとは、合成高分子樹脂製透明基材を意味する。本発明で用いられる樹脂シートとしては、価格、透明性、耐熱性等の観点から、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ナイロン、アクリル等からなる樹脂シートを好ましく用いることができる。これら樹脂シートは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。また、その組み合わせに関しては特に限定されない。
【0064】
また、これらの樹脂シートを用いる場合には、各層の成膜を減圧条件下で行うため、アウトガスの発生量が少ない材料とすることが減圧を維持する観点から好ましい。また、樹脂シートは無色透明であることが好ましいが、必要に応じて着色しているものも使用することも可能である。
【0065】
透明基材は、上記のガラス、樹脂シート等の材料を、適宜組み合わせて使用することができる。ガラスとガラスを組み合わせること、ガラスと樹脂シートを組み合わせること、樹脂シートと樹脂シートを組み合わせることが例示される。
【0066】
図3に示すように、エレクトロクロミック素子をさらにガラスで挟持する場合には、透明基材10は樹脂シートであることが好ましい。透明基材10の上の下部透明導電膜層20については、予め下部透明導電膜層20が形成されたものを用いることによって、作業工程を簡素化することが可能である。
<下部透明導電性膜層>
本発明のエレクトロクロミック素子を構成する下部透明導電膜層は、導電性材料から構成され、エレクトロクロミック素子に電圧の印加及び/又は電流を流すことによって、光学特性を制御することができる。透明導電膜の材料は、特に限定されるものではなく、公知の材料を用いることができる。これらの透明導電膜は、表面抵抗が100Ω/□以下であることが好ましく、また、全光線透過率が70%以上の金属、酸化物、あるいは有機化合物の少なくとも一種を含むことが好ましい。
<イオン貯蔵槽>
本発明のエレクトロクロミック素子を構成するイオン貯蔵層は、反射調光層の鏡状態と透過状態の切り替えに必要な水素イオンの貯蔵や、取り出しを可逆的に行う機能を有する層であり、イオン貯蔵層は、これらの機能を有するものであれば特に制限なく用いることができる。また、水素イオンを取り出したときに必要に応じて着色するものを使用することができるが、無色透明になる特性を有する材料がより好ましい。これらの構成材料としては、遷移金属酸化物が好ましく、遷移金属酸化物としては、例えば、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化ニオブ、酸化バナジウム等を挙げることができる。
【0067】
これらの遷移金属酸化物の中でも、エレクトロクロミック素子の構成材料としての高い安定性(10サイクル以上)を有している酸化タングステンが特に好ましい。また、イオン貯蔵層30の厚みは特に限定されるものではないが、250〜2000nmの範囲であることが好ましい。
<固体電解層>
本発明のエレクトロクロミック素子を構成する固体電解質層は、電圧の印加によって水素イオンが容易に移動できる特性を有する材料が用いられ、固体であるため、長期間安定して使用できる。好適な構成材料としては透明金属酸化物が好ましい。本発明では、イオン貯蔵層の上に固体電解質層として透明金属酸化物薄膜を形成することが好ましい。本素子駆動のための水素イオンは、例えば固体電解質層をマグネトロンスパッタ法にて作製する際に、スパッタチャンバ内に残存する水分等を薄膜中へ内包させることにより導入することもできる。
【0068】
固体電解質層の具体的な構成成分としては、例えば、酸化タンタル、酸化ジルコニウム等を挙げることができる。しかし、これらに限定されるものではなく、これらと同様の効果を有するものであれば制限なく使用することができる。また、光学特性の変化速度を律速する固体電解質層の水素イオン導電性の観点から、金属酸化物薄膜の密度は2.8g/cm〜4.3g/cmであることが好ましい。
<バッファ層>
本発明のエレクトロクロミック素子を構成するバッファ層は、電圧の印加によって水素イオンが容易に移動できる特性を有する材料が用いられ、かつ、スイッチング速度の向上及び均一な素子全域でのスイッチングを行うために金属が好ましい。本発明では、バッファ層として固体電解質層の上に金属薄膜を形成することが好ましい。
【0069】
バッファ層の具体的な構成成分としては、例えば、金属アルミニウム、金属タンタル、金属チタン等が挙げられる。しかし、これらに限定されるものではなく、これらと同様の効果を有するものであれば制限なく使用することができる。また、バッファ層の膜厚は、特に限定されるものではないが、1〜5nmの範囲であることが好ましい。
<触媒層>
本発明のエレクトロクロミック素子を構成する触媒層は、水素イオンを反射調光層に供給/放出する出入口の機能を有する。触媒層により水素イオンの供給及び放出の速度が向上する。鏡状態と透明状態のスイッチング性が高まる触媒層の成分としては、水素イオンの透過能力の高いパラジウム、白金、銀もしくはそれらの合金系が好ましい。例えば、パラジウム合金としては、パラジウム・銀合金及びパラジウム・白金合金等が好適に用いられる。また、パラジウム合金に他成分を含有させることにより、特性の向上を図ることが可能である。
【0070】
また、合金であるため、ある程度の不純物の混入も許容されるが、不純物の混入量は少ないことが好ましい。触媒層の厚みは、特に限定されるものではないが、0.5〜10nmの範囲であることが好ましい。触媒層が薄すぎると触媒としての機能を十分に果たすことができない。逆に触媒層が厚すぎると、触媒層の全光線透過率が低下する。また、ある程度の厚さを超えると、触媒層の厚さを増しても、触媒としての機能が向上しなくなる。
<反射調光層>
本発明のエレクトロクロミック素子を構成する反射調光層は、水素及び水素イオンを吸蔵/放出することで鏡状態と透明状態を変化させる機能を有する材料からなり、反射調光機能を有する。反射調光層は、マグネシウム系合金からなり、好ましくは、マグネシウム1に対してニッケルが0.1〜0.5の範囲であるマグネシウム・ニッケル系、マグネシウム1に対してチタンが0.1から0.5の範囲であるマグネシウム・チタン系、マグネシウム1に対してニオブが0.3から0.6の範囲であるマグネシウム・ニオブ系、マグネシウム1に対してジルコニウムが0.1から0.5の範囲であるマグネシウム・ジルコニウム系の合金を用いることができる。
【0071】
特に、マグネシウム・ニッケル系合金に関して、0.1から0.5の範囲であるマグネシウム・ニッケル系合金は、水素を吸蔵して透明になったときの全光線透過率が高くなる傾向がある。原料コストの観点からは、MgNi0.25が好ましい。本発明では、マグネシウム・ニッケル系合金は、MgNi(0.1≦x≦0.5)、マグネシウム・チタン系合金は、MgTi(0.1≦x≦0.5)、マグネシウム・ニオブ合金は、MgNb(0.3≦x≦0.6)、マグネシウム・ジルコニウム合金は、MgZr(0.1≦x≦0.5)であることが好ましい。
【0072】
また、マグネシウム系合金に他成分を含有させることにより、特性の向上を図ることができる。例えば、本発明において、マグネシウム・ニッケル系合金にマグネシウム及びニッケル以外の成分が含有されても、マグネシウム・ニッケル系合金の特性が保持されていれば、マグネシウム・ニッケル系合金として用いることができる。
【0073】
マグネシウム・ニッケル系合金の特性が低下する場合であっても、マグネシウム・ニッケル系合金の結晶構造が部分的に保持されていれば、マグネシウム・ニッケル系合金として用いることができる。
【0074】
また、合金であるため、ある程度の不純物の混入も許容されるが、不純物の混入量は少ないことが好ましい。反射調光層の厚みは、約10〜200nmであることが好ましい。反射調光層が薄すぎると、鏡状態における全光線反射率が低下し、十分な反射特性を示さない。逆に、反射調光層が厚すぎると、透明状態における全光線透過率が低下する。用途によって異なった仕様が要求されるが、膜厚の制御により適宜対応することができる。
<上部透明導電膜層>
本発明のエレクトロクロミック素子を構成する上部透明導電膜層は、導電性材料から構成され、エレクトロクロミック素子に電圧の印加及び/又は電流を流すことによって、光学特性を制御することができる。
【0075】
上部透明導電膜の材料は、全光線透過率が70%以上の金属、酸化物、あるいは有機化合物の少なくとも一種を含むものである。
【0076】
特に、上部明導電膜層としての酸化物薄膜が、酸化インジウム・スズ、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛、酸化インジウム・ガリウム・亜鉛又は酸化ニオブあるいはこれら2種類以上の組み合わせから選ばれることが望ましいが、これらに限定されるものではなく、これらと同様の効果を有するものであれば制限なく使用することができる。
【0077】
上部透明導電膜は本質的には透明であるが、反射調光層等他層との組み合わせによる干渉効果により色発現を行う。
<保護層>
本発明のエレクトロクロミック素子を構成する保護層は、上記各薄膜材料と同様にマグネトロンスパッタ法又は簡便のために溶液による塗布法にて形成可能である。保護層を形成する際、多層膜と化学反応を生じないことが重要である。マグネトロンスパッタ法を用いる場合、テトラフルオロエチレンターゲット、シクロオレフィンポリマーターゲットを高周波マグネトロンスパッタ法にてスパッタして、素子表面に保護層80を形成することができる。
【0078】
ディップコート法やスピンコート法等の塗布法を用いる場合、保護層80を形成するための材料に流動性が必要であり、特に1000mPa・s以下の粘度を有していることが好ましい。さらに制御性の観点で塗布した保護層は完全に固化することが必要であり、例えば、紫外線(UV)照射により固化する紫外線硬化樹脂や可視光線照射により固化する可視光線硬化樹脂、電子線照射により固化する電子線硬化樹脂、加熱により固化する熱硬化性樹脂、又はこれらの混合樹脂を用いることができる。例えば、紫外線硬化樹脂の主材としては、ポリエーテル、ポリエステル、エポキシ、ウレタン、スピラン等のジ又はトリアクリレートのオリゴマー、光重合開始剤、光蔵寒剤、及びその類似体が挙げられる。また、紫外線硬化型アクリル系樹脂(例えば、ナガセケムテックス社製XNR5542)や紫外線熱併用硬化型エポキシ系樹脂(例えば、ナガセケムテックス社製XNR5541、ADEKA社製KRシリーズ)、フッ素系樹脂溶液(例えば、ハーベス社製DURASURF)等が挙げられるが、いずれも上記特性を満足するものであれば特に制限なく用いることができる。また、塩化ビニルポリマー(PVC)、塩化ビニリデンポリマーやシクロオレフィンポリマー(例えば、三井化学社製アペル、日本ゼオン社製ゼオノアならびにゼオネックス)等を溶媒に溶解し、塗布することで保護層80として形成することも可能である。その場合の溶媒として、テトラヒドロフラン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、エタノール、アセトン、1-プロパノール等が挙げられ、これら単一あるいは複数の溶媒を組み合わせた混合溶媒の使用が可能である。
【0079】
また、本発明の保護層は、形成性の観点で固化による顕著な収縮が生じないことが必要であり、硬化収縮率が10%以下であることが好ましい。硬化収縮率が高い保護層を用いると素子に反りや割れが生じる。
【0080】
また、特に本発明に用いる保護層として重要な性能は、大気中の湿度による薄膜材料への水分の浸潤を防ぐことであり、その吸水率が3%よりも低いこと、また、光学用途であるため、全光線透過率が90%以上有し、硬化後無色透明であることが好ましい。透明基材として樹脂シートを用いた場合、過度な加熱プロセスを適用できないため、より低温で固化するものが好ましい。さらには、保護層の形成により多層膜の厚みが増すが、最大透過率の減少等調光特性を損なうことなく、向上させる機能を有する材料がより好ましい。
【0081】
次に、本発明のエレクトロクロミック素子の具体的な構造について、図面を参照して説明する。
【0082】
図1は、本発明のエレクトロクロミック素子の一実施形態を示す断面模式図である。
【0083】
エレクトロクロミック素子は、透明基材10、下部透明導電膜層20、イオン貯蔵層30、固体電解質層40、バッファ層50、触媒層60、及びマグネシウム系合金薄膜を用いた反射調光層70、上部透明導電膜80の多層薄膜により構成される。さらに表面は保護層90により封止される。この構成においてスイッチング用の電極を上部透明導電膜層80と透明導電膜20に接続する。
【0084】
本発明において、「触媒層上に」等の説明で用いられている「上に」とは、積層される層の方向を明示する意味を有し、必ずしも隣接して配置されることを意味するものではない。例えば、「固体電解質層上に触媒層が形成される」という場合、固体電解質層と触媒層とは隣接して配置される場合と、固体電解質層と触媒層とがその間に他の層を介在させて配置される場合があり得る。
【0085】
本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。本発明では、図2に示すように、2枚の透明基材によって、下部透明導電膜層20、イオン貯蔵層30、固体電解質層40、バッファ層50、触媒層60、及び反射調光層70、上部透明導電膜80、保護層90等の各層を挟持した構成とすることもできる。
【0086】
このように、両側に透明基材を配置する構成とすることにより、さらに反射調光層への水や酸素の侵入を少なくすることができる。透明基材10として樹脂シートを使用したエレクトロクロミック素子において、水や酸素の素子内部への侵入をより効果的に防止するには図3に示すように1対のガラスでさらに挟持する実施形態とすることもできる。
【0087】
図3に、エレクトロクロミック素子が1対のガラス110によって挟持された反射調光板の断面模式図を示す。ガラス110とエレクトロクロミック素子との間には、必要に応じてポリビニルブチラール等の合わせガラス用中間膜100を介在させることができる。
【0088】
また、他の形成方法としては、例えば、第1の透明基材に、保護層、透明導電膜、反射調光層、触媒層を形成し、第2の透明基材に、透明導電膜、イオン貯蔵層、固体電解質層及びバッファ層を形成し、これらを貼りあわせることにより、エレクトロクロミック素子を作製することも可能である。
【0089】
本発明のエレクトロクロミック素子は、その機能から、例えば、建築部材や自動車等移動用車両部品等の調光部材へ好適に適用される。建築部材の場合は、窓ガラスがその代表的な適用部材である。移動用車両では、窓ガラスや外板や内装を挙げることができる。本発明のエレクトロクロミック素子を用いることにより、日射のエネルギー透過量を制御でき、室内空間を快適に保つことが可能となる。
【0090】
以下に、本発明のエレクトロクロミック素子の製造方法について説明する。
【0091】
本発明のエレクトロクロミック素子の各層を構成する薄膜や保護層は、一般に公知の形成方法を特に制限なく用いて形成することができる。これらの形成方法としては、例えば、マグネトロンスパッタリング法、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、化学気相蒸着法(CVD)、めっき法、ディップコート法、スピンコート法等の方法を挙げることができる。
【0092】
エレクトロクロミック素子を構成する各層の大きさ及び厚さは、特に限定されるものではない。これらは、公知の構造を参考にして決定することが可能であり、用途や求める性能に応じて適宜調整される。
【0093】
例えば、エレクトロクロミック素子が自動車のフロントガラスに用いられるのであれば、車両のデザインに応じて透明基材の大きさが決定される。また、厚さも、調光材料の透光率や強度等を考慮して決定される。
【0094】
本発明の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子を製造する方法は、透明基材の上に、下部透明導電膜層20、イオン貯蔵層30、固体電解質層40、バッファ層50、触媒層60を形成し、さらに、その上にマグネシウム・ニッケル系合金、マグネシウム・チタン系合金、マグネシウム・ニオブ系合金又はマグネシウム・ジルコニウム系合金薄膜の反射調光層70を形成して、固体電解質層40の水素イオン拡散を抑え、反射調光層70の固体電解質層40側から透明化するようにし、さらにスイッチング用電極としての上部透明導電膜層80を形成し、この上部透明導電膜層80の作製条件により任意の波長選択性を付与したことを特長とするものである。さらに透明な保護層90を形成することで環境劣化を防止することもできる。
【0095】
全固体型反射調光エレクトロクロミック素子の調光動作は、下部透明導電膜層20と上部透明導電膜層80の間に電圧/電流を印加することによって行う。即ち、エレクトロクロミック素子が鏡状態である時、下部透明導電膜層20にプラス、上部透明導電膜層80にマイナスの電圧を印加すると、イオン貯蔵層30に貯蔵されていた水素イオンが固体電解質40及びバッファ層50、触媒層60を通って反射調光層70内に拡散し、反射調光層70が水素化合物に変態するためその反射特性が鏡の状態から透過状態に変わる。
【0096】
このとき、触媒層60は、固体電解質層40と反射調光層70との間の水素イオンの授受を促進する機能を有し、触媒層60によって反射調光層70における十分なスイッチング速度が確保される。逆に、エレクトロクロミック素子が透明状態にある時、イオン貯蔵層20にマイナスの反射調光層70にプラスの電圧を印加すると、反射調光層70内の水素化物が脱水素化し、その反射特性が透明状態から鏡状態にもどる。放出された水素は水素イオンの形で触媒層60、バッファ層50、固体電解質層40を通ってイオン貯蔵層30に戻り、そこで貯蔵される。
【0097】
マグネシウム系合金を反射調光素子として使用する従来の素子は、反射状態において色合いは銀色系の単一色のみあり、また非常にクリアな鏡状態を呈しているため直接反射による周辺環境への影響の懸念もあった。これに対し、本発明では、反射調光層上部に構築する透明導電膜の作製条件のみにより、任意の波長選択性を有する素子の作製が可能となり、これにより、任意の波長における全光線透過率・全光線反射率の可変能を発現する反射調光エレクトロクミック素子、及び該素子を組み込んだ調光部材を提供することができる。本発明は、実用的な全固体型反射調光エレクトロクロミック材料、及び調光部材として有用である。
【実施例】
【0098】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0099】
以下、本発明の実施例1について説明する。本実施例では、図1に示す構成で、全固体型反射調光エレクトロクロミック素子を作製した。
【0100】
透明基材として厚さ1.1mmのガラス板を用い、該ガラス板上に、表面抵抗が10Ω/□であるスズドープした酸化インジウムを下部透明導電膜としてコーティングした。これを真空装置の中にセットして真空排気を行った。下部透明導電膜上にイオン貯蔵層としての酸化タングステン薄膜の蒸着をマグネトロンスパッタ装置で行った。成膜はアルゴンと酸素との混合雰囲気中で金属タングステンターゲットをスパッタリングする反応性直流マグネトロンスパッタ法を用いて行った。
【0101】
混合雰囲気は、アルゴンガスと酸素ガスの流量を制御することより制御された。アルゴンガスと酸素ガスの流量比は7:1.5であり、真空槽内の圧力は1.0Paとして、直流マグネトロンスパッタ法によりタングステンに80Wのパワーを加えて成膜を行った。作製された酸化タングステン薄膜の膜厚は約500nmであった。
【0102】
上記酸化タングステン薄膜上に、固体電解質層としての酸化タンタル薄膜を、酸化タングステン薄膜と同様に、反応性直流マグネトロンスパッタ法により作製した。成膜は、アルゴンと酸素の混合雰囲気中で金属タンタルターゲットをスパッタリングすることにより行い、薄膜を作製した。混合雰囲気はアルゴンガスと酸素ガスの流量を制御することより制御された。
【0103】
アルゴンガスと酸素ガスの流量比は7:1であり、真空槽内の圧力は0.7Paとして、反応性直流マグネトロンスパッタ法により、タンタルに70Wのパワーを加えてスパッタを行った。作製された酸化タンタル薄膜の膜厚は約400nm、密度は約3.8g/cmであった。
【0104】
上記固体電解質層としての酸化タンタル薄膜の表面に、バッファ層としてアルミニウム薄膜を直流マグネトロンスパッタ法により蒸着した。雰囲気ガスはアルゴンを用い、真空槽内の圧力は0.7Paとして、金属アルミニウムターゲットに50Wのパワーを加えてスパッタを行った。得られたバッファ層の膜厚は約2nmであった。
【0105】
上記バッファ層の表面に触媒層としてのパラジウム及び反射調光層としてのマグネシウム・ニッケル合金薄膜の蒸着を、3連のマグネトロンスパッタ装置で行った。3つのスパッタ銃に、ターゲットとして、それぞれ金属マグネシウム、金属ニッケル及び金属パラジウムをセットした。まず、金属パラジウムをスパッタリングして触媒層であるパラジウム薄膜を約4nm蒸着した。
【0106】
スパッタリング中のアルゴンガス圧は、1.2Paであり、直流マグネトロンスパッタ法によりパラジウムに18Wのパワーを加えてスパッタを行った。その後、マグネシウムに30W、ニッケルに16Wのパワーを加えてマグネシウム・ニッケル合金薄膜を約40nm蒸着した。このときのマグネシウムとニッケルの組成は、ほぼMgNiであった。
【0107】
上記反射調光層としてのマグネシウム・ニッケル合金薄膜上部に、上部透明導電膜として酸化インジウム・ガリウム・亜鉛(IGZO:InGaZnO)薄膜を直流マグネトロンスパッタ法により蒸着した。雰囲気ガスはアルゴンを用い、IGZOターゲットに50Wのパワーを加えてスパッタを行った。得られた膜厚は約150nmであった。
【0108】
得られた素子を図4に示す評価装置にとりつけ、上部透明導電膜と下部導電膜で電極をとることにより、その光学的なスイッチング特性を調べた。このスイッチ素子は、初期状態は鏡状態であった。
【0109】
前記電極間に±5Vの電圧を印加し、そのときの光学透過率の変化を、波長670nmの半導体レーザーとシリコンフォトダイオードを組み合わせた測定システムで測定した。本素子は測定のため保護層を構築していないが、製品化の際には必要となる。保護層は請求項にある通りであり、同手法により上部透明導電膜上に設置する。
【0110】
素子の外観写真を図5(a)に示すが、作製した素子の表面は金属的な色合いで反射状態を有しており、表面酸化インジウム・ガリウム・亜鉛の作製時圧力に応じて色合いが異なっていた。アルゴンガス圧1.0Paで作製した素子は銀色をしており、同様に0.4Paでは青色、1.2Paでは黄色を呈していた。この素子は電極間に電圧印加により図5(b)のように透明状態に変化した。
【0111】
作製直後の素子は、表面酸化インジウム・ガリウム・亜鉛薄膜がない場合、反射調光層であるマグネシウム・ニッケル系合金薄膜が金属光沢を持つため、光をよく反射し(光学反射率:〜56%)、イオン貯蔵層である酸化タングステン薄膜が濃紺に着色しているため、透過率は極めて低い(光学透過率:〜0.2%)。
【0112】
この多層膜のインジウム電極側に−5Vの電圧を印加すると酸化タングステン薄膜中の水素イオンが固体電解質中を拡散し、マグネシウム・ニッケル系合金薄膜中に導入された。
【0113】
この結果、酸化タングステン薄膜は透明になり、マグネシウム・ニッケル系合金薄膜も水素化が起こり、透明化した(光学反射率:〜18%、光学透過率:〜44%)。このときの光学透過率の時間変化を、各アルゴンガス圧で作製した酸化インジウム・ガリウム・亜鉛薄膜を有する素子のデータと比較して図6(a)に示す。図に示すように酸化インジウム・ガリウム・亜鉛薄膜を有する素子において、同様に電圧印加後透過状態を呈し、透明状態完了後+5Vを印加すると、透過率は減少し、反射状態に戻った。
【0114】
このように本素子は、印加電圧の極性を変化させることによって、反射状態と透過状態とを可逆的に変化させることが可能である。また、同様に反射率の変化を図6(b)に示す。このように、酸化インジウム・ガリウム・亜鉛薄膜を上部構築することで、多層膜の干渉により、特に0.4Paで作製した酸化インジウム・ガリウム・亜鉛薄膜を有する阻止において透過率の変化幅が3割以上増し、最大透過率が向上し、優れた調光特性を示すことが確認された。
【0115】
さらに、本測定は上記記載のように波長670nmの半導体レーザーを用いているが、特に反射率変化に大きな差異が認められる。これは赤系統の光の反射率を酸化インジウム・ガリウム・亜鉛薄膜の作製条件により任意に制御できることを示している。
【0116】
スイッチング前後の酸化インジウム・ガリウム・亜鉛薄膜を付与した素子の透過スペクトル及び反射スペクトルを図7と図8に示す。図に示すように、測定波長における透過スペクトル及び反射スペクトルは、スイッチングにより大きな変化を生じることが分かる。
【実施例2】
【0117】
実施例1と同様の手順で、スズドープした酸化インジウムを下部透明導電膜としてコーティングしたガラス基板上にイオン貯蔵槽:酸化タングステン/固体電解質層:酸化タンタル/バッファ層:アルミニウム/触媒層:パラジウム/反射調光層:マグネシウム・ニッケル系合金の各薄膜の蒸着を、マグネトロンスパッタ法を用いて行った。各種成膜条件は実施例1と同様である。
【0118】
上記反射調光層としてのマグネシウム・ニッケル合金薄膜上部に上部透明導電膜として酸化インジウム・ガリウム・亜鉛(IGZO:InGaZnO)薄膜を直流マグネトロンスパッタ法により蒸着した。雰囲気ガスはアルゴンを用い、IGZOターゲットに50Wのパワーを加えてスパッタを行った。得られた膜厚は約50nm及び約100nmであり、種々のアルゴンガス圧で作製を行った。
【0119】
上部透明導電膜として酸化インジウム・ガリウム・亜鉛薄膜を付与した素子の反射スペクトルを図9に示す。図に示すように、反射状態時の素子の反射スペクトルは、酸化インジウム・ガリウム・亜鉛薄膜の厚さ及び作製時のアルゴンガス圧によって任意に制御できる。
【実施例3】
【0120】
実施例1と同様の手順で、スズドープした酸化インジウムを下部透明導電膜としてコーティングしたガラス基板上にイオン貯蔵槽:酸化タングステン/固体電解質層:酸化タンタル/バッファ層:アルミニウム/触媒層:パラジウム/反射調光層:マグネシウム・ニッケル系合金の各薄膜の蒸着を、マグネトロンスパッタ法を用いて行った。各種成膜条件は実施例1と同様である。
【0121】
上記反射調光層としてのマグネシウム・ニッケル合金薄膜上部に上部透明導電膜としてアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)薄膜を直流マグネトロンスパッタ法により蒸着した。雰囲気ガスはアルゴンを用い、AZOターゲットに50Wのパワーを加えてスパッタを行った。得られた膜厚は約50nm、約100nm及び約150nmであり、種々のアルゴンガス圧で作製を行った。
【0122】
上部透明導電膜としてアルミニウムドープ酸化亜鉛薄膜を付与した素子の反射スペクトルを図10に示す。図に示すように、反射状態時の素子の反射スペクトルは、アルミニウムドープ酸化亜鉛薄膜の厚さ及び作製時のアルゴンガス圧によって任意に制御できる。
【実施例4】
【0123】
実施例1と同様の手順で、スズドープした酸化インジウムを下部透明導電膜としてコーティングしたガラス基板上にイオン貯蔵槽:酸化タングステン/固体電解質層:酸化タンタル/バッファ層:アルミニウム/触媒層:パラジウム/反射調光層:マグネシウム・ニッケル系合金の各薄膜の蒸着を、マグネトロンスパッタ法を用いて行った。各種成膜条件は実施例1と同様である。
【0124】
上記反射調光層マグネシウム・ニッケル合金薄膜上部に上部透明導電膜として酸化ニオブ(NbO)薄膜を直流マグネトロンスパッタ法により蒸着した。雰囲気ガスはアルゴンを用い、NbOターゲットに70Wのパワーを加えてスパッタを行った。得られた膜厚は約50nmであり、種々のアルゴンガス圧で作製を行った。
【0125】
上部透明導電膜として酸化ニオブ薄膜を付与した素子の反射スペクトルを図11に示す。比較のため、上部酸化ニオブ薄膜を構築しない通常素子の反射スペクトルも同様に示す。図に示すように、反射状態時の素子の反射スペクトルは、酸化ニオブ薄膜の作製時のアルゴンガス圧によって任意に制御できる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子はスイッチングにより可視光領域のみならず赤外光領域の透過率と反射率を変化させることができるため、調光窓材として使用した際には、素子のスイッチングにより効果的に太陽光による熱の室内への流入、ならびに室内の熱の屋外への流出を制御することができる。
【0127】
また、当該性能を利用する様々な電子・光学デバイス等への応用も可能である。特に本技術は透明導電膜の作製条件のみで任意の波長領域における全光線反射率及び全光線透過率の制御能を付与することができるため、調光窓材応用における防眩効果、任意の波長領域での光学特性可変能や意匠性等の観点において任意の色合いが必要な特定アプリケーションへの対応も期待できる。
【符号の説明】
【0128】
10 透明基材
20 下部透明導電膜層
30 イオン貯蔵層
40 固体電解質層
50 バッファ層
60 触媒層
70 反射調光層
80 上部透明導電膜層
90 保護層
100 ガラス用中間膜
110 ガラス
501 全固体型反射調光エレクトロクロミック素子
502 半導体レーザー(λ=670nm)
503 Siフォトダイオード
504 デジタルマルチメータ
505 デジタルマルチメータ
506 ソースメータ
507 コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の上に多層膜を形成した反射型調光素子であって、該多層膜が、少なくとも透明基材の上に、下部透明導電膜層、イオン貯蔵層、固体電解質層、バッファ層、触媒層、反射調光層、上部透明導電膜層、保護層を順に形成した多層構造を有しており、上部透明導電膜層の材料が、酸化インジウム・スズ、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛、酸化インジウム・ガリウム・亜鉛又は酸化ニオブあるいはこれら2種類以上の組み合わせから選ばれる酸化物であることを特徴とする全固体型反射調光エレクトロクロミック素子。
【請求項2】
上部透明導電膜層が、全光線透過率が70%より高い金属薄膜、酸化物、又は有機化合物の少なくとも一種を含むことを特徴とする、請求項1に記載の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子。
【請求項3】
上部透明導電膜とその他の層との干渉効果により、任意の波長域における全光線反射率及び全光線透過率が調整されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子。
【請求項4】
下部透明導電膜層と上部透明導電膜層の間に、電圧の印加及び/又は電流を流すことによって、反射調光作用を発現させることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子。
【請求項5】
透明基材が、ガラス又は樹脂シートであることを特徴とする、請求項1に記載の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子。
【請求項6】
下部透明導電膜層の上に形成されたイオン貯蔵層が、遷移金属酸化物薄膜であることを特徴とする、請求項1に記載の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子。
【請求項7】
イオン貯蔵層の上に形成された固体電解質層が、透明金属酸化物薄膜であることを特徴とする、請求項1に記載の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子。
【請求項8】
透明金属酸化物薄膜の密度が、2.8g/cm以上、4.3g/cm以下であることを特徴とする、請求項7に記載の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子。
【請求項9】
透明金属酸化物薄膜が、酸化タンタル又は酸化ジルコニウムからなることを特徴とする、請求項7又は8に記載の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子。
【請求項10】
固体電解質層の上に形成されたバッファ層が、金属薄膜であることを特徴とする、請求項1に記載の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子。
【請求項11】
金属薄膜が、金属アルミニウム、金属タンタル又は金属チタンからなることを特徴とする、請求項10に記載の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子。
【請求項12】
バッファ層の上に形成された触媒層が、パラジウム、白金、銀もしくはそれらの合金を含むことを特徴とする、請求項1に記載の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子。
【請求項13】
触媒層の上に形成された反射調光層が、少なくともマグネシウム・ニッケル系、マグネシウム・チタン系、マグネシウム・ニオブ系のいずれかのマグネシウム系合金薄膜であることを特徴とする、請求項1に記載の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子。
【請求項14】
マグネシウム系合金薄膜が、少なくともMgNi(0.1≦x≦0.5)、MgTi(0.1≦x≦0.5)、MgNb(0.3≦x≦0.6)、MgZr(0.1≦x≦0.5)のいずれか一つ以上からなることを特徴とする、請求項13に記載の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子。
【請求項15】
上部透明導電膜層及び多層膜表面を封止するように形成された保護層が、紫外線硬化樹脂、紫外線熱併用硬化樹脂、塩化ビニルポリマー、塩化ビニリデンポリマー、フッ素系樹脂、テトラフルオロエチレン、シクロオレフィンポリマーのいずれかからなることを特徴とする、請求項1に記載の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子。
【請求項16】
保護層が、上部透明導電膜層及び多層膜と化学反応を生じず、硬化収縮率が10%以下、吸水率が3%以下、全光線透過率が90%以上有し、硬化後透明状態を保持することを特徴とする、請求項1に記載の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子。
【請求項17】
イオン貯蔵層又は反射調光層のいずれかを水素化及び/又は、固体電解質層中に水素を内包させることを特徴とする、請求項1に記載の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子。
【請求項18】
透明基材の上に、多層薄膜を形成した全固体型反射調光エレクトロクロミック素子を製造する方法であって、透明基材の上に、下部透明導電膜層、イオン貯蔵層、固体電解質層、バッファ層、触媒層を形成し、さらに、その上にマグネシウム・ニッケル系合金、マグネシウム・チタン系合金又はマグネシウム・ニオブ系合金薄膜の反射調光層、上部透明導電膜層、保護層を形成した同一材料からなる素子において、永続的な波長選択性を可能としたことを特徴とする全固体型反射調光エレクトロクロミック素子の製造方法。
【請求項19】
請求項1から17のいずれか一項に記載の全固体型反射調光エレクトロクロミック素子が組み込まれたことを特徴とする調光部材。

【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−220740(P2012−220740A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86732(P2011−86732)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】