説明

注射可能な貯留槽ゲル組成物およびこの組成物の製造方法

【課題】注射可能な貯留層ゲル組成物を提供する。
【解決手段】本発明の注射可能な貯留槽ゲル組成物は、A)生体適合性ポリマー;B)生体適合性ポリマーを溶解し、粘性ゲルを形成する溶剤;C)有益薬剤;およびD)粘性ゲル中に分散された小滴相の形態の乳化剤を含有する。かかるゲル組成物は、A)生体適合性ポリマーおよび溶剤を混合し、これによりポリマーを溶剤に溶解して、粘性ゲルを形成し;B)この粘性ゲル中に有益薬剤を分散または溶解し、有益薬剤含有粘性ゲルを形成し;次いでC)この有益薬剤含有粘性ゲルを乳化剤と混合し、ここで、上記乳化剤は、有益薬剤含有粘性ゲル中で分散された小滴相を形成しており;これにより、注射可能な貯留槽ゲル組成物が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、所望の場所に注射することができ、有益薬剤の持続放出を提供できる貯留槽ゲル組成物(a depot gel composition)に関する。本発明はまた、この組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
生体分解性ポリマーは、かなりの年月にわたり医薬用途で使用されている。生体分解性ポリマーから構成されているデバイスの例には、縫合糸、外科用クリップ、ステープル、インプラントおよび医薬放出系が包含される。これらの生体分解性ポリマーの大部分は、グリコシド、ラクチド、カプロラクトンおよびそのコポリマーを基材とするものである。
【0003】
生体分解性ポリマーは、加熱することができることを意味し、種々の形態、例えば繊維、クリップ、ステープル、ピン、フィルムなどに成形することができる熱可塑性材料であることができる。別様には、これらは、高温において、融解しないか、または流動性液体を形成しない、高分子量物質をもたらす架橋反応によって形成される熱硬化性材料であることができる。
【0004】
熱可塑性および熱硬化性生体分解性ポリマーは、多くの有用な生物医療用途を有するが、ヒト、動物、鳥、魚および爬行動物を包含する各種動物の身体における、それらの使用には数種の重要な制限がある。これらのポリマーは一般に、固形物であるから、それらの使用を包含する全ての場合、初めに、身体外でポリマー構造を形成し、次いでこの固形構造物を身体に挿入する必要があった。例えば、縫合糸、クリップおよびステープルはすべて、使用に先立ち、熱可塑性生体分解性ポリマーから形成される。身体中に挿入する場合、これらはそれらの元の形状を保有する。この特性は、或る種の用途では必須であるが、最も必要とされる空隙または空洞を満たすために流動することが望まれる場合には、この特性は好ましくない。
【0005】
熱可塑性または熱硬化性の生体分解性ポリマーを用いる医薬放出系はまた、しばしば身体の外部で形成されなければならない。このような場合、医薬をポリマー中に配合し、次いでこの混合物を、或る種の形態、例えば移植用に円柱形、円盤形または繊維形に成型する。このような固形インプラントの場合、この医薬放出系は、切開により身体中に挿入しなければならない。これらの切開は、時には、医療専門家が望むよりも大きくなり、また場合により、このようなインプラントまたは医薬放出系を受容する患者の抵抗を導く。それにもかかわらず、生体分解性および非生体分解性の両方の移植可能な医薬放出系は、広く成功して使用されている。
【0006】
口腔内移植用に特別にデザインされている速度制御膜および製剤のゼロオーダー放出を備えた貯留槽デバイスの一つは、米国特許第5,085,866号に記載されている。このデバイスは、ポリマーおよび迅速に蒸発する低沸点の第一溶剤およびゆっくり蒸発する高沸点の第二溶剤から構成されている溶剤を含有する溶液が噴霧されている芯から製造されている。
【0007】
もう一つの代表的浸透圧利用放出系は、米国特許第3,797,492号、同第3,987,790号、同第4,008,719号、同第4,865,845号、同第5,057,318号、同第5,059,423号、同第5,112,614号、同第5,137,727号、同第5,151,093号、同第5,234,692号、同第5,234,693号、同第5,279,608号および同第5,336,057号に記載されている。拍動式放出デバイスもまた公知であり、このデバイスは、米国特許第5,209,746号、同第5,308,348号および同第5,456,679号に記載されているように、有益薬剤を拍動様相で放出する。
【0008】
医薬放出系の移植に必要な切開を回避する方法の一つは、これらを小型粒子、微細球状体、またはマイクロカプセルとして注入する方法である。例えば、米国特許第5,019,400号には、非常に低い温度におけるキャスティング方法による制御放出性微細球状体の製造が記載されている。これらの材料は、身体中に放出させることができる医薬を含有していても良く、または含有していなくてもよい。これらの材料はシリンジにより身体中に注入することができるが、これらは、生体分解性インプラントに対する要件を常時、満たしているわけではない。これらは粒状物性を有することから、或る種のプロテーゼに要求される構造完全性を有する連続フィルムまたは固形インプラントを形成しない。相当な液体が流動している口腔、歯周ポケット、眼または膣などの或る種の身体腔中に挿入する場合、これらの小型粒子、微細球状体、またはマイクロカプセルは、それらの大きさが小さく、また不連続物性を有することから、殆ど保留されない。さらにまた、粒子は、凝集傾向を有し、従ってそれらの挙動は、ほとんど予測することができない。さらに、これらのポリマーから製造され、身体中に放出させる医薬を含有する微細球状体またはマイクロカプセルは、時には、大規模生産が困難であり、またそれらの貯蔵および注入特徴は問題を提供する。さらにまた、マイクロカプセルまたは小型粒子系のもう一つの主要な制限は、これらが長時間の外科的介在なしでは取替えることができない欠点にある。すなわち、これらを注入した後に合併症が生じた場合、固形インプラントの場合に比較して、身体から取り除くことが格別に困難である。微細粒子またはマイクロカプセルのさらにもう一つの制限には、処置中に用いられる極端な温度および溶剤により発生する分解を伴うことなく、タンパク質およびDNA−ベース医薬をカプセルに封入することが困難であることがある。
【0009】
従来技術により、上記挑戦に応答して各種の医薬放出系が開発されている。例えば、米国特許第4,938,763号およびその分割米国特許第5,278,201号は、動物用の注射可能な、その場で形成される固形生体分解性インプラントに使用するための生体分解性ポリマーに関する。一態様において、熱可塑性系が使用されており、この場合、非反応性ポリマーを生体適合性溶剤中に溶解し、液体を生成させ、この液体を動物に配置し、ここで溶剤を消散させ、固形インプラントを形成させる。別法として、熱硬化性系が使用されており、この場合、有効量の液状アクリル酸エステル末端生体分解性プレポリマーおよび硬化剤を生成し、次いでこの液状混合物を動物内に配置し、ここで、このプレポリマーを硬化させ、固形インプラントを形成させる。この系は、動物に注射する以前に、この液体に有効レベルの生物学的活性剤を添加することによって、注射可能な固形生体分解性放出系を提供するものと説明されている。
【0010】
米国特許第5,242,910号には、歯周病処置用の持続放出性組成物が記載されている。この組成物は、ラクチドとグリコライドとのコポリマー、トリアセチン(溶剤/可塑剤として)および口腔疾病を治癒する薬剤を含有する。この組成物は、ゲル形態を取ることができ、そして針またはカテーテルを用いて、シリンジを経て歯周腔内に挿入することができる。追加の任意成分として、この組成物は、界面活性剤、芳香剤、粘度調整剤、錯化剤、酸化防止剤、その他のポリマー、ガム、ワックス/オイルおよび着色剤を含有することができる。この例の一つに挙げられている代表的粘度調整剤は、ポリエチレングリコール400である。
【0011】
溶剤中に溶解されたポリマーから構成されている溶剤ベースの貯留槽組成物の場合、溶剤が貯留槽から拡散するに従い、このような組成物が、注射後にゆっくりと固化するという重大問題が存在する。これらの組成物は、注射するためには、非粘性である必要があることから、溶剤の拡散によって系が形成されるに従い、大割合の医薬が急速に放出される。この作用は、「バースト」作用(burst effect)と称される。この点に関して、溶剤ベース組成物は典型的に、医薬のバーストを呈し、組成物中に含有されている医薬の30〜75%が初期注射の一日以内に放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4,938,763号
【特許文献2】米国特許第5,278,201号
【特許文献3】米国特許第5,242,910号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の要旨
本発明は、当該技術を格別に前進させるものであり、そして一態様において、注射可能な貯留槽ゲル組成物を提供し、この組成物は、
A)生体適合性ポリマー;
B)ポリマーを溶解し、そして粘性ゲルを形成する溶剤;
C)有益薬剤;および
D)粘性ゲル中の分散された小滴相の形態の乳化剤;
を含有する。
もう一つの態様において、本発明は、注射可能な貯留槽ゲル組成物の製剤方法を提供し、この方法は、
A)生体適合性ポリマーおよび溶剤を混合し、ここでポリマーを溶剤に溶解させ、そしてゲルを形成し;
B)この粘性ゲル中に有益薬剤を溶解または分散させ、有益薬剤含有ゲルを形成し;次いで
C)この有益薬剤含有ゲルを、乳化剤と混合し、ここで、上記乳化剤は、有益薬剤含有ゲルに分散された小滴相を形成するものであって、これにより注射可能な貯留槽ゲル組成物が生成される;
ことを包含する方法である。
もう一つの態様において、本発明は、注射可能な貯留槽ゲル組成物の製造方法を提供し、この方法は、
A)生体適合性ポリマーおよび溶剤を混合し、ここでポリマーを溶剤に溶解させ、そしてゲルを形成し;
B)乳化剤中に有益薬剤を溶解または分散させ、有益薬剤含有乳化剤を形成し;
次いで、
C)この有益薬剤含有乳化剤を、粘性ゲルと混合し、ここで、上記有益薬剤含有乳化剤は、粘性ゲルに分散された小滴相を形成するものであり、これにより注射可能な貯留槽ゲル組成物が生成される;
ことを包含する方法である。
さらにもう一つの態様において、本発明は、注射可能な貯留槽ゲル組成物を提供し、この組成物は、
A)生体適合性ポリマー;
B)ポリマーを溶解し、粘性ゲルを形成する溶剤;および
C)粘性ゲル中の分散された小滴相の形態の乳化剤;
を含有する。
さらにもう一つの態様において、本発明は、注射可能な貯留槽組成物を提供するのに適するキットを提供し、このキットは、キット成分として、(a)生体適合性ポリマーおよびポリマーを溶解し、そして粘性ゲルを形成する溶剤;(b)乳化剤;および(c)有益薬剤;を含有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の上記目的およびその他の目的、特徴および利点は、添付図面と組み合わせて、下記の詳細な説明を読むことによって、さらに容易に理解されるものと見做される。
【図1】psigで、20ゲージの針を通して、2cc/分で乳化した粘性ゲル組成物および非乳化粘性ゲル組成物を分配するのに要する分配力を示すグラフである;
【図2】経過日数の3種の相違する組成物からのリソチームの一日放出プロフィールを示すグラフである;
【図3】水のみ、エタノールの水性混合物および乳化剤を含有していない粘性ゲルの種々の剪断速度における粘度プロフィールを示すグラフである;
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
上記で説明したように、本発明は、一態様において、注射可能な貯留槽ゲル組成物に関し、この組成物は、
A)生体適合性ポリマー;
B)生体適合性ポリマーを溶解し、そして粘性ゲルを形成する溶剤;
C)有益薬剤;および
D)粘性ゲル中の分散された小滴相の形態の乳化剤;
を含有する。
【0016】
本発明のポリマー、溶剤および乳化剤は生体適合性でなければならない。すなわち、これらは使用環境で刺激または壊死を生じさせてはならない。この使用環境は、液体環境であり、ヒトまたは動物の皮下または筋肉内、あるいは体腔を包含することができる。
【0017】
本発明で有用であることができるポリマーは、生体分解性であることができ、これらの制限されないものとして、ポリアクチド類、ポリグリコライド類、ポリカプロラクトン類、ポリ酸無水物類、ポリアミン類、ポリウレタン類、ポリエステルアミド類、ポリオルトエステル類、ポリジオキサノン類、ポリアセタール類、ポリケタール類、ポリカーボネート類、ポリオルトカーボネート類、ポリホスファゼン類、サクシネート類、ポリ(マレイン酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、キチン、キトサンおよびそのコポリマー、ターポリマーおよび混合物を包含することができる。
【0018】
このポリマーは、ポリラクチド類であることができる。すなわち、本発明に従い達成することができる有利な成果に実質的に有害ではない少量の別種の成分を含有していてもよい、乳酸のみを基材とすることができる乳酸ベースポリマー、あるいは乳酸とグリコール酸とのコポリマーであることができる、乳酸ベースポリマーである。本明細書で使用されているものとして、「乳酸」の用語は、異性体L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸およびラクチドを包含し、一方、「グリコール酸」の用語は、グリコライドを包含する。このポリマーは、約100:0〜約15:85、好ましくは約60:40〜約75:25の乳酸/グリコール酸モノマー比を有することができ、特に有用なコポリマーは、約50:50の乳酸/グリコール酸モノマー比を有する。
【0019】
乳酸ベースポリマーは、気相クロマトグラフイにより測定して、約1,000〜約120,000、好ましくは約10,000〜約30,000の数平均分子量を有する。前記米国特許第5,242,910号に示されているように、ポリマーは、米国特許第4,443,340号の教示に従い製造することができる。別法として、乳酸ベースポリマーは、乳酸または乳酸とグリコール酸との混合物(別種の成分を含有しているか、または含有していない)から、米国特許第5,310,865号に記載の技術に従い製造することができる。これらの特許の全部の内容を引用して、ここに組み入れる。適当な乳酸ベースポリマーは、市販されている。例えば、10,000、30,000および100,000の分子量を有する50:50乳酸/グリコール酸コポリマーは、Boehringer Ingelheim(Petersburg,VA)から販売されている。
【0020】
生体適合性ポリマーは、粘性ゲルの約5〜約80重量%、好ましくは約20〜約50重量%、多くの場合に35〜45重量%の範囲の量で、組成物中に存在させる。この粘性ゲルは生体適合性ポリマーおよび溶剤の総量を含有する。使用環境に置かれると、溶剤は、貯留槽を離れて、ゆっくりと拡散し、そしてポリマーは加水分解により、ゆっくりと分解する。
【0021】
溶剤は、生体適合性でなければならず、ポリマーを溶解して、溶解または分散されている有益薬剤の粒子を保持し、放出前には、使用環境から単離することができる粘性ゲルを形成するように選択される。本発明で使用することができる代表的溶剤は、これらに制限されないものとして、トリアセチン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、グリセロールホルマル、酢酸メチル、安息香酸ベンジル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、カプロラクタム、デシルメチルスルホキシド、オレイン酸、および1−ドデシルアザシクロ−ヘプタン−2−オン、ならびにそれらの混合物を包含する。好適溶剤は、トリアセチンおよびN−メチル−2−ピロリドンである。トリアセチンは、高度のポリマー溶解を生じさせ、ゲル粘度をより高くして、他の溶剤に比較して、粘性ゲルの分配に要する力をさらに大きくする。これらの特性は、バースト作用を示すことなく、有益薬剤を保持させることを可能にする。しかしながら、これらの特性はまた、針を通すゲルの分配を困難にする。例えば、図1に示されているように、50:50乳酸:グリコール酸ポリマー40重量%およびトリアセチン60重量%から製造されたゲルは、標準20ゲージの針を通して、2cc/分でゲルを分配するために、約40psigを要した。他方、同量のポリマーおよびN−メチル−2−ピロリドン60重量%から製造されたゲルは、約8psigを要するのみである。図1はまた、本発明による粘性ゲルに、乳化剤を添加した場合(この場合、10%エタノール溶液33重量%を添加)、必要な分配力は、約2psigのみであることを示している。本発明による貯蔵ゲル組成物の剪断減粘特性は、不当な分配圧力を要することなく、これらの組成物を標準ケージの針を用いて、ヒトを包含する動物中に容易に注射することを可能にする。
【0022】
溶剤は代表的に、粘性ゲルの重量、すなわちポリマーと溶剤との総量の約95〜約20重量%の量で存在させ、好ましくは約80〜約50重量%、多くの場合、65〜55重量%の量で存在させる。ポリマーと溶剤とを混合することによって形成される粘性ゲルは代表的に、Haake粘度計(Viscometer)を用い、混合完了後の約1〜2日目に、1.0/秒の剪断速度および25℃で測定して、約1,000〜約200,000ポイズ、好ましくは約5〜約50,000ポイズの粘度を示す。ポリマーと溶剤との混合は、慣用の低剪断装置、例えばRoss二重遊星形ミキサーを、約1〜約2時間、用いて達成することができる。
【0023】
有益薬剤は、全部の生理学的および薬理学的活性物質(1種または2種以上)であることができ、これらは本発明により得ることができる有利な結果に実質的に有害に作用しない医薬上で許容される担体および追加の成分、例えば酸化防止剤、安定剤、浸透増強剤などと組み合わされていてもよい。有益薬剤は、ヒトまたは動物の身体に放出できることが知られており、そしてポリマー溶解性溶剤よりも、水に優先的に溶解する薬剤のいずれかであることができる。これらの薬剤は、医薬薬剤、処置剤、ビタミン類、栄養剤などを包含する。この定義に適合する種類の薬剤中には、栄養物質、ビタミン類、食品補助剤、避妊薬、受胎抑制薬および受胎促進剤が包含される。
【0024】
本発明によって放出させることができる医薬薬剤は、末梢神経、アドレナリン作用性レセプター、コリン作用性レセプター、骨格筋、心臓血管系、平滑筋、血液循環系、シナプス部位、ニューロエフェクター結合部位、エンドクリンおよびホルモン系、免疫系、再生系、骨格系、オータコイド系、食事および排泄系、ヒスタミン系および中枢神経系に作用する医薬を包含する。適当な薬剤は、例えば、タンパク質類、酵素類、ホルモン類、ポリヌクレオチド類、核タンパク質類、多糖類、糖タンパク質類、リポタンパク質類、ポリペプチド類、ステロイド類、鎮痛薬、局所麻酔薬、抗生物質、抗炎症性コルチコステロイド類、眼科用医薬およびこれらの種の合成類縁化合物から選択することができる。
【0025】
本発明の組成物により放出させることができる医薬の例には、これらに制限されないものとして、下記の医薬が包含される:プロクロルペルジンエジシレート(prochlorperzine edisylate)、硫酸第一鉄、アミノカプロン酸、メカミラミン(mecamylamine)塩酸塩、プロカインアミド(procainamide)塩酸塩、アンフェタミン(amphetamine)硫酸塩、メタムフェタミン(methamphetamine)塩酸塩、ベンザムフェタミン(benzamphetamine)塩酸塩、イソプロテレノール(isoproterenol)硫酸塩、フェンメトラジン(phenmetrazine)塩酸塩、ベタンコール(bethanechol)クロライド、メタコリン(methacholine)クロライド、ピロカルピン(pilocarpine)塩酸塩、アトロピン(atropine)硫酸塩、スコポラミン(scopolamine)ブロマイド、イソプロパミド(isopropamide)ヨウダイド、トリジヘキセチル(tridihexethyl)クロライド、フェンホルミン(phenformin)塩酸塩、メチルフェニデート(methylphenidate)塩酸塩、テオフィリン(theophylline)コリン酸塩、セファレキシン(cephalexin)塩酸塩、ジフェニドール(diphenidol)、メクリジン(meclizine)塩酸塩、プロクロルペラジン(prochlorperazine)マレイン酸塩、フェノキシベンズアミン、チエチルペルジン(thiethylperzine)マレイン酸塩、アニシンドン(anisindone)、ジフェナジオンエリスリチル(diphenadion erythrityl)四硝酸塩、ジゴキシン(digoxin)、イソフルロフェート(isoflurophate)、アセタゾールアミド(acetazolamide)、メタゾールアミド(methazolamide)、ベンドロフルメチアジド(bendroflumethiazide)、クロロプロマイド(chloropromaide)、トラザミド(tolazamide)、クロルマジノン(chlormadinone)酢酸塩、フェナグリコドール(phenaglycodol)、アロプリノール(allopurinol)、アルミニウムアスピリン(aspirin)、メトトレキセート(methotrexate)、アセチルスルフィソキサゾール(acetyl sulfisoxazole)、エリスロマイシン(erythromycin)、ハイドロコーチゾン(hydrocortisone)、ハイドロコルチコステロン(hydrocorticosterone)酢酸塩、コリゾン(cortisone)酢酸塩、デキサメタゾン(dexamethasone)およびその誘導体、例えばベタメタゾン(betamethasone)、トリアムシノロン(triamcinolone)、メチルテストステロン(methyltestosterone)、17−S−エストラジオール、エチニルエストラジオール、エチニルエストラジオール3−メチルエーテル、プレドニソロン(predonisolone)、17α−ヒドロキシプロゲステロン酢酸塩、19−ノル−プロゲステロン、ノルゲストレル(norgestrel)、ノレチンドロン(norethindrone)、ノレチステロン(norethisterone)、ノレチエデロン(norethiederone)、プロゲステロン(progesterone)、ノルゲステロン(norgesterone)、ノルエチノドレル(norethynodrel)、アスピリン(aspirin)、インドメタシン(indomethacin)、ナプロキセン(naproxen)、フェノプロフェン(fenoprofen)、サリンダック(sulindac)、インドプロフェン(indoprofen)、ニトログリセリン(nitroglycerin)、イソソルビド(isosorbide)二硝酸塩、プロプラノロール(propranolol)、チモロール(timolol)、アテノロール(atenolol)、アルプレノロール(alprenolol)、シメチジン(cimetidine)、クロニジン(clonidine)、イミプラミン(imipramine)、レボドーパ(levodopa)、クロルプロマジン(chlorpromazine)、メチルドーパ(methyldopa)、ジヒドロキシフェニルアラニン、テオフィリン(theophylline)、グルコン酸カルシウム、ケトプロフェン(ketoprofen)、イブプロフェン(ibuprofen)、セファレキシン(cephalexin)、エリスロマイシン(erythromycin)、ハロペリドール(haloperidol)、ゾメピラック(zomepirac)、乳酸第一鉄、ビンカミン(vincamine)、ジアゼパム(diazepam)、フェノキシベンズアミン、ジルチアゼム(diltiazem)、ミルリノン(milrinone)、マンドール(mandol)、クアンベンズ(quanbenz)、ヒドロクロロチアジド、ラニチジン(ranitidine)、フルルビプロフェン(flurbiprofen)、フェヌフェン(fenufen)、フルプロフェン(fluprofen)、トルメチン(tolmetin)、アルクロフェナック(alclofenac)、メフェナミック(mefenamic)、フルフェナミック(flufenamic)、ジフイナル(difuinal)、ニモジピン(nimodipine)、ニトレンジピン(nitrendipine)、ニソルジピン(nisoldipine)、ニカルジピン(nicardipine)、フェロジピン(felodipine)、リドフラジン(lidoflazine)、チアパミル(tiapamil)、ガロパミル(gallopamil)、アムロジピン(amlodipine)、ミオフラジン(mioflazine)、リシノールプリル(lisinolpril)、エナラプリル(enalapril)、エナラプリレート(enalaprilat)、カプトプリル(captopril)、ラミプリル(ramipril)、ファモチジン(famotidine)、ニザチジン(nizatidine)、スクラルフェート(sucralfate)、エチンチジン(etintidine)、テトラトロール(tetratolol)、ミノキシジル(minoxidil)、クロルジアゼポキシド(chlordiazepoxide)、ジアゼパム(diazepam)、アミトリプチリン(amitriptyline)、およびイミプラミン(imipramine)。追加の例として、タンパク質およびペプチド類があり、これらには、これらに制限されないものとして、骨形態形成タンパク質、インシュリン、コルチシン(colchicine)、グルカゴン(glucagon)、甲状腺刺激ホルモン、傍甲状腺および下垂体ホルモン、カルチトニン(calcitonin)、レニン(renin)、プロラクチン(prolactin)、コルチコトロフィン(corticotrophin)、向甲状腺ホルモン、卵胞刺激ホルモン、絨毛膜ゴナドトロピン、ゴナドトロピン放出ホルモン、ウシソマトトロピン、ブタソマトトロピン、オキシトシン(oxytocin)、バソプレシン(vasopressin)、GRF、ソマトスタチン(somatostatin)、ライプレッシン(lypressin)、パンクレオザイミン(pancreozymin)、黄体形成ホルモン、LHRH、LHRHアゴニストおよびアンタゴニスト、ロイプロライド(leuprolide)、インターフェロン類、インターロイキン類、成長ホルモン類、例えばヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモンおよびブタ成長ホルモン、受胎抑制剤、例えばプロスタグランジン(prostaglandins)、受胎促進剤、成長因子、凝固因子、ヒトパンクレアーゼホルモン放出因子、これら化合物の類縁体および誘導体、ならびにこれらの化合物の医薬として許容される塩、あるいはそれらの類縁体および誘導体が包含される。
【0026】
前記の段落に記載されていない前記米国特許第5,242,910号に記載の有益薬剤をまた、使用することができる。本発明の特別の利点の一つは、酵素リソチーム、およびウイルスおよび非ウイルスの両方のベクター中に組み込まれたcDNAおよびDNAなどのマイクロカプセル化が困難であるか、あるいは微小球体に処理することが困難である物質を、他の処理技術で体験するレベルの分解を伴うことなく、本発明の組成物中に配合することができる点にある。
【0027】
有益薬剤は、代表的に約0.1〜約100ミクロン、好ましくは約1〜約25ミクロン、そして多くの場合、2〜10ミクロンの平均粒子サイズを有する粒子の形態で、ポリマーおよび溶剤から形成された粘性ゲル中に配合すると好ましい。例えば、約5ミクロンの平均粒子サイズを有する粒子は、スクロース50%およびニワトリリソチーム50%(乾燥重量に基づく)を含有する水性混合物を、噴霧乾燥または凍結乾燥させることによって製造される。このような粒子を、図面に示されている或る例として使用した。
【0028】
ポリマーおよび溶剤から形成される粘性ゲル中の有益薬剤の粒子の懸濁液または分散液を形成するために、いずれか慣用の低剪断装置、例えばRoss二重遊星形ミキサーを周辺条件で使用することができる。この方法で、有益薬剤の分解を実質的に伴うことなく、有益薬剤の効果的な分布を得ることができる。
【0029】
有益薬剤は代表的に、ポリマー、溶剤および有益薬剤の総量の約1〜約50重量%の量で、好ましくは約5〜約25重量%の量で、そして多くの場合、10〜20重量%の量で組成物中に溶解または分散させる。組成物中に存在する有益薬剤の量に応じて、相違する放出プロフィールを得ることができる。さらに詳細に言えば、一定のポリマーおよび溶剤について、これらの成分の量および有益薬剤の量を調整することによって、組成物からの有益薬剤の拡散に比較して、ポリマーの分解にさらに依存する放出プロフィールを得ることができ、あるいはその逆も実施できる。この点に関して、遅い有益薬剤装填速度において、ポリマーの分解を反映する放出プロフィールが一般に得られ、この場合、放出速度は時間経過に従い増加する。早い装填速度においては、有益薬剤の拡散により生じる放出プロフィールが一般に得られ、この場合、放出速度は時間経過に従い減少する。中間の装填速度においては、所望により、実質的に一定の放出速度を得ることができるように、組み合わされた放出プロフィールを得ることができる。特定の放出速度は、特定の状況、例えば投与される有益薬剤に依存するが、約1〜約10マイクログラム/日の程度の放出速度を、約7〜約90日間の期間にわたり得ることができる。さらにまた、有益薬剤の用量は、注射される注射可能な貯留槽ゲルの量を調節することによって調整することができる。下記の結果から明白なように、バースト作用を回避することができ、また最初の一日間中に組成物中の有益薬剤の1重量%程度を投与することができる。
【0030】
図2は、図1にかかわり記載された組成物から得られた放出速度を示している。50:50乳酸:グリコール酸コポリマー40重量%およびトリアセチン60重量%から製造されたゲルは、濃厚であり、従って注射は困難であるが、小さいバーストを示す(2%よりも少ない量の有益薬剤が、最初の8日間に放出される)。50:50乳酸:グリコール酸コポリマー40重量%およびN−メチル−2−ピロリドン60重量%から製造されたゲルは、稀薄であり、注射可能であるが、大きいバーストを示す(70%よりも多くの量の有益薬剤が、最初の8日間に放出される)。50:50乳酸:グリコール酸コポリマー27重量%、トリアセチン40重量%およびエタノール10%、等張塩類溶液90%の33重量%から製造されたゲルは、稀薄であり、注射可能であり、また小さいバーストを示す(10%よりも少ない量の有益薬剤が、最初の8日間に放出される)。それぞれの場合、有益薬剤はリソチームであり、そして有益薬剤、ポリマーおよび溶剤組成物の組み合わせ量の20重量%を含有する。
【0031】
乳化剤は、本発明の重要な態様を構成する。ポリマーおよび溶剤から、慣用の静的混合装置または機械的混合装置、例えばオリフィスミキサーを用いて形成された粘性ゲルを乳化剤と混合する場合、この乳化剤は、代表的に約100ミクロンよりも小さい平均径を有する顕微鏡サイズの分散小滴から構成されている分離相を形成する。連続相は、ポリマーおよび溶剤から形成される。有益薬剤の粒子は、この連続相または小滴相のどちらかに溶解または分散させることができる。生成するチキソトロピック組成物において、小滴状乳化剤は、剪断方向に広がり、そしてポリマーおよび溶剤から形成される粘性ゲルの粘度を実質的に減少させる。一例として、25℃において1.0/秒で測定して、約5,000〜約50,000ポイズの粘度を有する粘性ゲルの場合、Haake流動計(Rheometer)により測定して、25℃において、10%エタノール/水溶液により乳化すると、100ポイズ以下までの粘度の減少を達成することができる。乳化剤中における有益薬剤の粒子の分散および溶解は、粘性ポリマー中における有益薬剤の粒子の溶解または分散に比較して、さらに急速に進行することから、有益薬剤は、使用の直前に、乳化剤と混合することができる。これは、有益薬剤を、使用前は乾燥状態に維持することを可能にする。このことは、粘性ゲル中の有益薬剤の長期間安定性の観点から有利であることがある。さらにまた、有益薬剤は、粘性ゲル内に捕獲されている小滴相中に、その形態で残されることから、当該医薬が最適に安定であり、従ってゲル組成物中で有益薬剤が延長された期間にわたり安定であるという観点から、乳化剤を選択することができる。追加の利点は、ポリマー構造の分散および溶解によるのではなく、インプラントの有孔構造を経て拡散されることにより、有益薬剤の放出を計画することができる機会が得られる点にある。
【0032】
有益薬剤を乳化剤中に溶解または分散させる場合、本発明による注射可能な小滴は、キットとして提供することができ、このキットは、(a)ポリマーおよび溶剤の混合物、(b)乳化剤および(c)有益薬剤を包含する。使用前に、有益薬剤を乳化剤と混合し、次いでこの溶液または懸濁液をポリマー/溶剤混合物と混合し、使用用の注射可能な小滴状インプラントを得る。
【0033】
乳化剤は、注射可能な小滴状インプラントの量、すなわちポリマー、溶剤、乳化剤および有益薬剤の組み合わせ量に基づき、約5〜約80重量%、好ましくは約20〜約60重量%、多くの場合、30〜50重量%の範囲の量で存在させる。
【0034】
代表的乳化剤は、水、アルコール類、ポリオール類、エステル類、カルボン酸類、ケトン類、アルデヒド類およびその混合物である。好適乳化剤は、アルコール類、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセロール、水、およびその溶液および混合物である。水、エタノール、およびイソプロピルアルコールならびにその溶液および混合物は、特に好適である。乳化剤の種類は、分散される小滴の大きさに影響を与える。例えば、エタノールは、21℃において、塩化ナトリウム0.9重量%を含有する等張塩類溶液を用いて得られる小滴に比較して、10倍大きい程度であることができる平均径を有する小滴を生じさせる。
【0035】
通常、その他の成分は、組成物中に存在しないが、所望により、慣用の任意の成分、例えばポリエチレングリコール、疎水剤、安定剤、およびその他の成分の程度までの成分は、本発明による得ることができる有利な結果に実質的に影響しない量で使用することができる。
【0036】
本発明の種々の態様をさらに説明するために、図3は、50:50乳酸:グリコール酸コポリマー50重量%およびトリアセチン50重量%から形成された粘性ゲルを用いて、2:1の重量比(ゲル:乳化剤)でエタノール10容量%を含有する水性混合物および水単独を用いて、相違する剪断速度における粘度を、乳化剤が用いられていない粘性ゲルの粘度と比較して示している。
【0037】
本発明の乳化剤は、組成物の成分の濃度を単に減少させることによって、粘度を減少させる単なる稀釈剤を構成するものではないものと理解される。慣用の稀釈剤の使用は、粘度を減少することができるが、また稀釈された組成物を注射した場合、前記のバースト作用を生じさせることがある。これに対して、本発明による注射可能な貯留槽組成物は、乳化剤を選択することによって、バースト作用が回避されるように組成することができ、これにより適所に注射されると、乳化剤は、元の系の放出性質に対してほとんど衝撃を与えない。さらにまた、有益薬剤を含有していない本発明の組成物は、傷の治癒、骨の修復およびその他の構造支持目的に有用である。
【0038】
本発明の種々の態様をさらに理解するために、前記図面に示されている結果を下記の例に従い得た。
【0039】
例1
リソチーム粒子は、スクロース50%およびニワトリリソチーム50%(乾燥重量に基づく)を噴霧乾燥させることによって製造した。
粘性ゲル材料は、トリアセチン60重量%を、50:50乳酸:グリコール酸コポリマー40重量%とともに、37℃に一夜にわたり加熱することによって製造した。この粘性ゲルを連続撹拌しながら室温まで冷却させた。この粘性ゲルにリソチーム粒子を、20:80リソチーム:ゲル(重量による)の割合で添加した。この配合物を、5分間混合した。使用の直前に、エタノール10%、等張塩類溶液90%を乳化剤として添加した。この乳化剤は、注射可能な貯留槽ゲル組成物全体の1/3を構成していた。この注射可能な貯留槽組成物0.5gを次いで、ラットに注射した。
【0040】
例2
トリアセチン60重量%を、50:50乳酸:グリコール酸コポリマー40重量%とともに、37℃に一夜にわたり加熱することによって、粘性ゲル材料を製造した。この粘性ゲルを、連続撹拌しながら室温まで冷却させた。使用の直前に、例1で製造された、同量のリゾチーム粒子を、乳化剤としてエタノール10%、等張塩類溶液90%と例1で使用されている量で混合した。この乳化剤−リゾチーム溶液を、例1で使用された量のゲル材料と混合し、注射可能な貯留槽ゲル組成物を形成した。この注射可能な貯留槽ゲル組成物は、動物に注射するのに適している。
【0041】
本発明の各種態様に従い、一つまたは二つ以上の利点を得ることができる。さらに詳細に言えば、簡単な処理工程を用いて、手術を要することなく、標準針を通過する低い分配圧力を用いて、動物の適所に注射することができる貯留槽組成物を得ることができる。適所に配置されると、この組成物は、その元の粘度に迅速に戻り、また急速な硬化を示す。従って、バースト作用は実質的に回避され、望ましい有益薬剤放出プロフィールを提供する。さらにまた、有益薬剤が充分に投与されると、充分に生体分解性であることから、当該組成物を取り除く必要はない。さらにもう一つの利点として、本発明は、ペプチドおよび核酸ベース医薬などの或る種の有益薬剤を分解することがある微細粒子化技術またはマイクロカプセル化技術の使用を回避させ、また使用環境から取り除くことが困難であることがある微細粒子またはマイクロカプセルの使用を回避させる。この粘性ゲルは、水、極端な温度、または別種の溶剤を必要とすることなく形成されることから、懸濁された有益薬剤の粒子は、乾燥状態のままであり、またそれらの元の形状のままである。これは、その安定性に寄与する。さらにまた、塊として形成されることから、注射可能な貯蔵槽ゲル組成物は、所望により、使用環境から回収することができる。
【0042】
上記の具体的態様は、全部の観点で、本発明を説明しようとするものであり、制限しようとするものではない。従って、本発明は、詳細な実施に関して、本明細書に含まれている説明から、当業者が誘導することができる多くの変更をなすことができる。全部のこのような変更および修正は、請求の範囲により規定されている本発明の範囲および精神内にあるものと見做される。
【0043】
本発明の好ましい態様は下記のとおりである。
1. 注射可能な貯留槽ゲル組成物であって、
A)生体適合性ポリマー;
B)生体適合性ポリマーを溶解し、粘性ゲルを形成する溶剤;
C)有益薬剤;および
D)粘性ゲル中に分散された小滴相の形態の乳化剤;
を含有する、注射可能な貯留槽ゲル組成物。
2. 生体適合性ポリマーが、ポリアクチド類、ポリグリコライド類、ポリカプロラクトン類、ポリ酸無水物類、ポリアミン類、ポリウレタン類、ポリエステルアミド類、ポリオルトエステル類、ポリジオキサノン類、ポリアセタール類、ポリケタール類、ポリカーボネート類、ポリオルトカーボネート類、ポリホスファゼン類、サクシネート類、ポリ(マレイン酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、キチン、キトサンおよびそのコポリマー、ターポリマーおよび混合物からなる群から選択される、1に記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
3. 生体適合性ポリマーが、乳酸ベースポリマーである、1に記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
4. 乳酸ベースポリマーが、100:0〜約15:85の範囲の乳酸対グリコール酸のモノマー比を有する、3に記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
5. 乳酸ベースポリマーが、1,000〜120,000の数平均分子量を有する、3に記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
6. 溶剤が、生体適合性ポリマーを溶解し、粘性ゲルを形成するものであり、トリアセチン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、グリセロールホルマル、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、カプロラクタム、デシルメチルスルホキシド、オレイン酸、および1−ドデシルアザシクロ−ヘプタン−2−オン、ならびにその混合物からなる群から選択される、1に記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
7. 溶剤が、トリアセチンおよびN−メチル−2−ピロリドン、およびその混合物からなる群から選択される、1に記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
8. 溶剤が、トリアセチンである、1に記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
9. ポリマーが、ポリマーおよび溶剤の総量の5〜80重量%の量で存在する、1に記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
10. 溶剤が、ポリマーおよび溶剤の総量の95〜20重量%の量で存在する、1に記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
11. ポリマーおよび溶剤から形成される粘性ゲルが、1,000〜200,000ポイズの粘度を有する、1に記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
12. 有益薬剤が医薬である、1に記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
13. 有益薬剤がペプチドである、1に記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
14. 有益薬剤がタンパク質である、1に記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
15. 有益薬剤が成長ホルモンである、1に記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
16. 有益薬剤が、ポリマー、溶剤および有益薬剤の総量の1〜50重量%の量で存在する、1に記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
17. 有益薬剤が、粘性ゲル中に分散または溶解されている粒子の形態である、1に記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
18. 有益薬剤が、0.1〜100ミクロンの平均粒子サイズを有する粒子の形態である、17に記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
19. 乳化剤が、水、アルコール類、ポリオール類、エステル類、カルボン酸類、ケトン類、アルデヒド類およびその混合物から選択される、1に記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
20. 乳化剤が、アルコール類、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセロール、水およびその溶液および混合物からなる群から選択される、1に記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
21. 乳化剤が、エタノール、イソプロピルアルコール、水、その溶液およびその混合物からなる群から選択される、1に記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
22. 乳化剤が、水である、1に記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
23. 乳化剤が、注射可能なゲル組成物の5〜80重量%の量で存在する、1に記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
24. 注射可能な貯留槽ゲル組成物の製造方法であって、
A)生体適合性ポリマーおよび溶剤を混合し、これによりポリマーを溶剤に溶解して、粘性ゲルを形成し;
B)この粘性ゲル中に有益薬剤を分散または溶解し、有益薬剤含有粘性ゲルを形成し;次いで
C)この有益薬剤含有粘性ゲルを乳化剤と混合し、ここで、上記乳化剤は、有益薬剤含有粘性ゲル中で分散された小滴相を形成しており;
これにより、注射可能な貯留槽ゲル組成物が形成される、上記製造方法。
25. 注射可能な貯留槽ゲル組成物の製剤方法であって、
A)生体適合性ポリマーおよび溶剤を混合し、これによりポリマーを溶剤に溶解して、粘性ゲルを形成し;
B)有益薬剤を乳化剤中に分散または溶解し、有益薬剤含有乳化剤を形成し;次いで
C)この有益薬剤含有乳化剤を、上記粘性ゲルと混合し、ここで、上記有益薬剤含有乳化剤は、粘性ゲル中で分散された小滴相を形成しており;
これにより、注射可能な貯留槽ゲル組成物が形成される、上記製造方法。
26. 注射可能な貯留槽ゲル組成物であって、
A)生体適合性ポリマー;
B)このポリマーを溶解し、粘性ゲルを形成する溶剤;および
C)粘性ゲル中に分散された小滴相の形態の乳化剤;
を含有する、注射可能な貯留槽ゲル組成物。
27. 注射可能な貯留槽組成物を、キット成分として提供するのに適するキットであって、(a)生体適合性ポリマーおよびこのポリマーを溶解し、粘性ゲルを形成する溶剤;(b)乳化剤;および(c)有益薬剤を包含するキット。
【0044】
本発明の好ましい別の態様は下記のとおりである。
1. 注射可能な貯留槽ゲル組成物であって、
A)生体適合性の乳酸ベースポリマー;
B)生体適合性ポリマーを溶解し、粘性ゲルを形成する溶剤であって、トリアセチン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、グリセロールホルマル、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、カプロラクタム、デシルメチルスルホキシド、オレイン酸、および1−ドデシルアザシクロ−ヘプタン−2−オン、ならびにその混合物からなる群から選択される溶剤;および
C)粘性ゲル中に分散された小滴相の形態の乳化剤;
を含有する、注射可能な貯留槽ゲル組成物。
2. 有益薬剤をさらに含有する、1に記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
3. 乳酸ベースポリマーが、100:0〜約15:85の範囲の乳酸対グリコール酸のモノマー比を有する、1または2に記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
4. 乳酸ベースポリマーが、1,000〜120,000の数平均分子量を有する、1−3のいずれかに記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
5. ポリマーが、ポリマーおよび溶剤の総量の5〜80重量%の量で存在する、1−4のいずれかに記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
6. 溶剤が、ポリマーおよび溶剤の総量の95〜20重量%の量で存在する、1−5のいずれかに記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
7. ポリマーおよび溶剤から形成される粘性ゲルが、1,000〜200,000ポイズの粘度を有する、1−6のいずれかに記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
8. 有益薬剤が医薬、ペプチド、タンパク質または成長ホルモンから選択される、2−7のいずれかに記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
9. 有益薬剤が、ポリマー、溶剤および有益薬剤の総量の1〜50重量%の量で存在する、2−8のいずれかに記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
10. 有益薬剤が、粘性ゲル中に分散または溶解されている粒子の形態である、2−9のいずれかに記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
11. 有益薬剤が、0.1〜100ミクロンの平均粒子サイズを有する粒子の形態である、10に記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
12. 乳化剤が、水、アルコール類、ポリオール類、エステル類、カルボン酸類、ケトン類、アルデヒド類およびその混合物から選択される、1−11のいずれかに記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
13. 乳化剤が、アルコール類、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセロール、水およびその溶液および混合物からなる群から選択される、1−12のいずれかに記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
14. 乳化剤が、エタノール、イソプロピルアルコール、水、その溶液およびその混合物からなる群から選択される、1−13のいずれかに記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
15. 乳化剤が、注射可能なゲル組成物の5〜80重量%の量で存在する、1−14のいずれかに記載の注射可能な貯留槽ゲル組成物。
16. 注射可能な貯留槽ゲル組成物の製造方法であって、
A)生体適合性の乳酸ベースポリマーおよびトリアセチン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、グリセロールホルマル、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、カプロラクタム、デシルメチルスルホキシド、オレイン酸、および1−ドデシルアザシクロ−ヘプタン−2−オン、ならびにその混合物からなる群から選択される溶剤を混合し、これによりポリマーを溶剤に溶解して、粘性ゲルを形成し;
B)この粘性ゲル中に有益薬剤を分散または溶解し、有益薬剤含有粘性ゲルを形成し;次いで
C)この有益薬剤含有粘性ゲルを乳化剤と混合し、ここで、上記乳化剤は、有益薬剤含有粘性ゲル中で分散された小滴相を形成しており;
これにより、注射可能な貯留槽ゲル組成物が形成される、上記製造方法。
17. 注射可能な貯留槽ゲル組成物の製剤方法であって、
A)生体適合性の乳酸ベースポリマーおよびトリアセチン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、グリセロールホルマル、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、カプロラクタム、デシルメチルスルホキシド、オレイン酸、および1−ドデシルアザシクロ−ヘプタン−2−オン、ならびにその混合物からなる群から選択される溶剤を混合し、これによりポリマーを溶剤に溶解して、粘性ゲルを形成し;
B)有益薬剤を乳化剤中に分散または溶解し、有益薬剤含有乳化剤を形成し;次いで
C)この有益薬剤含有乳化剤を、上記粘性ゲルと混合し、ここで、上記有益薬剤含有乳化剤は、粘性ゲル中で分散された小滴相を形成しており;
これにより、注射可能な貯留槽ゲル組成物が形成される、上記製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、注射可能な貯留槽ゲル組成物が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射可能な貯留槽ゲル組成物であって、
A)生体適合性ポリマー;
B)生体適合性ポリマーを溶解し、粘性ゲルを形成する溶剤;
C)有益薬剤;および
D)粘性ゲル中に分散された小滴相の形態の乳化剤;
を含有する、注射可能な貯留槽ゲル組成物。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−120952(P2010−120952A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18276(P2010−18276)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【分割の表示】特願平10−528916の分割
【原出願日】平成9年12月18日(1997.12.18)
【出願人】(500215838)アルザ コーポレイション (15)
【Fターム(参考)】