説明

注湯用押え枠装置

【課題】 簡単な構成により砂型上面押え用のウエイトを不要とし、かつ、注湯ライン設計の自由度を確保し得る注湯用押え枠装置を提供する。
【解決手段】 砂型の対向側面のそれぞれ外側に対向配置される複数の基体を一体に組みつけた本体支持枠と、本体支持枠の内側であって、中央位置に配置した砂型の対向側面にそれぞれ直接対向配置された複数の可動押え枠と、本体支持枠の下降動作に同期して可動押え枠を砂型の対向側面に近接押動させる近接同期押動機構と、を含む。可動押え枠は、砂型の対向側面に横方向から密着する側面密着壁と、密着壁にL字状に一体連結され密着壁の砂型側面への密着時に砂型の上面に密着当接して上面から押える上面密着壁と、を備える。下降時に砂型の側面と上面を同時に押えるので、砂型押え保持用のウエイトを不要とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造型機で造型した砂型を注湯ラインに供給して注湯する際の砂型の押え枠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋳造作業における鋳型の搬送の1例として、特許文献1の鋳型搬送設備が提案されている。この特許文献1の鋳型搬送設備では、造型ライン、中子セットライン、上枠ラインなどにおいて、それぞれ定盤台車を直列状に配置し、その上に造型された鋳型(mold)を配置してそれぞれの工程間を搬送するようにしている。鋳型が砂型であって、その注湯ラインでの搬送については砂型の特性に応じた搬送が必要となる。砂型は造型後に注湯すると例えば1400℃前後の溶融金属が砂型の鋳物空洞部に流入する。このため砂粒間のガスが膨張し砂型全体が膨張する。このため、注湯時に何らの手当てもなく行なうと、砂型に割れや亀裂が生じ内部の溶湯金属が外部に流出して正常な鋳造を妨げる。この問題を解消して行なわれる注湯ラインでの砂型の搬送については大きく分けると2つの搬送のタイプがある。1つは台車上の砂型に内面にテーパ壁を有するジャケット枠Fをテーパ側壁を有する砂型Mmに被嵌させて周囲半径方向への砂型の膨張を抑止し、その砂型の上に例えば100kg〜200kg程度のウエイトWを載置して上方への膨張を抑制するタイプである(図15参照)。この場合、台車が列状に配置されるがそれぞれ個別に移動可能であり、したがって、定点での自動注湯やラインの長さの長短調整、小規模多品種ラインへの組み換えなどを行ないやすい利点を有する。他の1つは、特許文献2あるいは図16のように、砂型Mは列方向に前後面で面合わせ状に密着(C)するように配置させ、左右の開放面部分についてのみ外面から挟むようにクランプ(P)する機構を設けて砂型の膨張に対応するものである。特許文献2の方法では砂型どうしが前後密着配列されているので注湯ラインに供給する砂型の個数を多く確保し、量産品製造については製造効率を向上させ、さらに密接して配列されるから注湯作業が均質化して品質を安定させる点で極めて優れている。ちなみに、図14は、上記の第1のタイプの例を示しており、台車300を直列配置し、還流コンベア302によりサイクル状に行なう鋳造の例である。図において、造型部304で造型された砂型はジャケット、ウエイトローダ・アンローダ部306でジャケットとウエイトを搭載され、注湯工程308に移動される。310、312は台車300の押送用のプッシャシリンダ、とクッションシリンダ、314,316は冷却ラインのプッシャシリンダ、とクッションシリンダであり、それぞれ油圧ユニット318,320により駆動される。注湯後の砂型は還流コンベア302で冷却工程324に移送され、ジャケット、ウエイトローダ・アンローダ部306でジャケット、ウエイトがアンロードされた後、砂型が次工程に向けて押し出される。
【0003】
【特許文献1】特開2007−301608号
【特許文献2】特公昭62−54575号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の第1のタイプの砂型にジャケット枠被嵌、ウエイト載置で個別台車搬送では、注湯工程で隣りあう砂型どうしの間隔が離れており、注湯工程に大きな作業スペースが必要となる等の問題があるが、上面の押えのためのウエイト及びその載置設備、載置作業が必要であるばかりでなく、通常は例えば100mm程度の厚さの厚鋼板から構成されるから、その厚みのぶんで図17に示すように、作業者がトリべTから砂型に溶融金属Lを注ぐときにウエイトに設けた注湯用の孔のさらに下部に砂型の湯口があるから目視確認がしにくく、作業遅滞、湯量目測誤差による必要以上の溶湯の充填等のおそれがあった。また、下降してテーパ壁の砂型に被嵌させる際に密着嵌合が完全でない状態で砂型上にジャケット枠が載置され、これを無理に押し下げて砂型の強度を弱体化させたりあるいはヒビや上下砂型のずれなどを生じさせるおそれがあった。また、第2のタイプの砂型の前後面密着搬送タイプの場合においても同様に砂型の上面側にウエイトが必要であり、搭載用装置、搭載作業、注湯の具体的作業性を低下させるおそれがあった。また砂型の側面のクランプ及び上面のウエイトを載置した状態でそれ以上の造型機側からの砂型供給が困難であり、また、少量生産ラインの付設、ラインの長短の変更などが容易でないなどの拘束があり、設計上の自由度について難点があった。
【0005】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その1つの目的は、簡単な構成により砂型上面押え用のウエイトを不要とし、コスト低減を図れる上に、砂型の湯口への注湯作業を精度良く短時間で行えるようにし、同時に砂型の各面への装着をずれなく行なわせ、かつ、注湯ライン設計の自由度を確保し得る注湯用押え枠装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、砂型の鋳物空洞部へ注湯する際の砂型の押え枠装置であり、砂型500の対向側面500aのそれぞれ外側に対向配置される複数の基体24A、24B、24C、24D、を一体に組みつけた本体支持枠20と、本体支持枠の内側であって、さらにその内側の略中央位置に配置した砂型500の対向側面500aにそれぞれ直接対向配置された複数の可動押え枠60と、本体支持枠20と可動押え枠60を連係し本体支持枠の砂型に対する近接動作に同期して可動押え枠60を砂型500の対向側面500aに近接押動させる近接同期押動機構100と、を含み、可動押え枠60は、砂型500の対向側面500aに横方向から密着する側面密着壁62と、側面密着壁にL字状に一体連結され側面密着壁の砂型側面500aへの密着時に砂型の上面500bに密着当接して上面から押える上面密着壁64と、を備えた注湯用押え枠装置10から構成される。砂型500と本押え枠装置10との近接移動は相対的なものであり、砂型側が上昇移動して最終的に可動押え枠を含む注湯用押え枠装置を砂型側面、上面に被嵌させるようにしても良いし、可動押え枠を支持した本体支持枠が静止した砂型の上方から下降して砂型に被嵌させるようにすることもできる。可動押え枠はL字形状で砂型の側面と上面を同時に押えることができる構造とし、同時に近接同期押動機構により、複数の面が同時に例えば均一なストローク長さで側面密着壁を押すので自動調心機能により面当たりを正しく行わせる。
【0007】
その際、近接同期押動機構100は、可動押え枠60を支持する本体支持枠20の吊支状態では可動押え枠60を砂型側面から退避させるとともに、本体支持枠20を砂型500に近接移動させると可動押え枠60を内側に押動させるように変位させるリンク連結装置102からなるとよい。
【0008】
また、リンク連結装置102は、一端を本体支持枠20側に枢支(106)されるとともに他端を可動押え枠60側に枢支(110)された複数のリンクピン104と、リンクピンの可動範囲を規定する可動規定部105と、を備えた構成とするとよい。
【0009】
また、本体支持枠20は、砂型500の周囲を囲むように下降配置される四角形枠体からなり、それらの4個の基体24A,24B,24C,24Dに対応して4個の可動押え枠60が設けられるとなおよい。
【0010】
さらに、可動規定部105は、本体支持枠20の各基体24A,24B,24C,24Dに横方向に貫通したリンクピン104を通す貫通孔30からなるものとするとよい。
【0011】
また、上面密着壁64は、砂型500の湯口502に掛からない程度に側面密着壁62からL字状に突設したものであるとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の注湯用押え枠装置によれば、砂型の鋳物空洞部へ注湯する際の砂型の押え枠装置であり、砂型の対向側面のそれぞれ外側に対向配置される複数の基体を一体に組みつけた本体支持枠と、本体支持枠の内側であって、さらにその内側の略中央位置に配置した砂型の対向側面にそれぞれ直接対向配置された複数の可動押え枠と、本体支持枠と可動押え枠を連係し本体支持枠の砂型に対する近接動作に同期して可動押え枠を砂型の対向側面に近接押動させる近接同期押動機構と、を含み、可動押え枠は、砂型の対向側面に横方向から密着する側面密着壁と、側面密着壁にL字状に一体連結され側面密着壁の砂型側面への密着時に砂型の上面に密着当接して上面から押える上面密着壁と、を備えた構成であるから、簡単な構成により本体支持枠を砂型に被嵌させるだけで砂型の側面と上面を同時に押えることができ、砂型の上面側膨張抑制用のウエイトを不要とし、その搭載のための設備、装置の省略、工程の削減、全体作業時間短縮、作業コスト、製造コスト削減等の効果を奏することが出来る。その結果、台車による個別搬送ラインでも本装置を用いて見やすい砂型上面からの注湯作業を高精度、短時間に行え、また砂型と押え枠との面当たりを常に正しくさせ、砂型強度を安定的に保持し得る。さらに、ライン設計の自由度が高く、各種鋳造製品や製造量、製品に求められるスペック等に応じた自由な注湯ライン設計が可能となる。また、自動造型ラインにおける例えば定点での連続自動注湯装置においても有効に適用することが可能である。
【0013】
また、近接同期押動機構は、可動押え枠を支持する本体支持枠の吊支状態では可動押え枠を砂型側面から退避させるとともに、本体支持枠を砂型に近接移動させると可動押え枠を内側に押動させるように変位させるリンク連結装置から構成することにより、複雑な機構や駆動構成を必要とせずにリンク機構を用いた極めて簡単な構造で砂型の側面や上面を押え保持させることができる。
【0014】
また、リンク連結装置は、一端を本体支持枠側に枢支されるとともに他端を可動押え枠側に枢支された複数のリンクピンと、リンクピンの可動範囲を規定する可動規定部と、を備えた構成とすることにより、本体支持枠と可動押え枠とのリンク連結を簡単な構成により具体的に実現することができる。
【0015】
また、本体支持枠は、砂型の周囲を囲むように配置される四角形枠体からなり、それらの4個の基体に対応して4個の可動押え枠が設けられた構成とすることにより、直方体形状の砂型の4側面を同時に押え保持するから、台車による注湯搬送ラインにおいて個々の台車上の砂型ごとに注湯に先立つ砂型の押さえを短時間で、簡単に行える。
【0016】
また、可動規定部は、本体支持枠の各基体に横方向に貫通したリンクピンを通す貫通孔からなる構成であるから、本体支持枠と可動押え枠との連結構成並びにリンクピンによる可動押え枠の砂型側への押動構成を簡単な構成により実現することができる。
【0017】
また、上面密着壁は、砂型の湯口に掛からない程度に側面密着壁からL字状に突設したものであるので、上面壁の押えを側面壁と同時に行いながら、さらに、トリベからの溶融金属の投入口を確保し、注湯作業を確保し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について説明する。本発明の注湯用押え枠装置は、砂型造型後の注湯ラインにおいて注湯前に装着し注湯時の砂型の膨張を外面側から支持する支持手段であり、特に近接同期押動機構により同時に可動押え枠を砂型側面に押動させ、砂型上面の押えと側面側の押えを同時に行うことが主な特徴である。なお、以下で押えの用語は砂型に対する用い方としては積極的に砂型側面や上面を押してその方向に移動させることではなく、砂型の内部のガス膨張による全体の砂型の膨張に抗して造型された砂型形状を保持するように突っ張って膨張を抑制する程度の意味である。
【0019】
図1ないし図13は、本発明の一実施形態を示しており、図1は注湯用押え枠装置10の全体斜視図である。図において、注湯用押え枠装置10は、本体支持枠20と、可動押え枠60と、近接同期押動機構100と、を含む。本実施形態の注湯用押え枠装置10は、図6に示すように、例えば上下に重ねて合わせられた直方体形状の砂型500の2対の対向側面、計4個の側面を同時に押動し、かつ上面を押える形態の装置である。砂型500は直方体形状であり、側面がテーパ形状のいわゆるテーパモールドではなくスクウエアモールドで構成されている。しかしながら、本発明はテーパモールドタイプにも適用可能である。また、1対の対向側面のみを押動させるようにして前後面を砂型どうしで密着させてラインに供給されるタイプについても適用し、膨張防止用のウエイトを不要とすることができる。砂型500には製品としての鋳物形状の鋳物空洞部が形成されており、図7に示す砂型に設けた湯口を介して溶融金属が充填される。
【0020】
実施形態において、本体支持枠20は、砂型500の平面四角形大きさよりも大きな四角形サイズで砂型500の周囲を囲むある程度の厚みの金属壁一体枠で形成されており、4個の本体壁22A、22B、22C、22Dを備えている。本体支持枠20は、砂型の上方から下降して砂型の対向側面のそれぞれ外側に対向配置される複数の基体24A、24B、24C、24Dを一体に組みつけて有しており、本実施形態において、4個の本体壁22A、22B、22C、22Dがそれぞれ基体24A、24B、24C、24Dとされる。本体支持枠20は、後述の可動押え枠の砂枠側面側への押動の基礎構造体であり、可動押え枠の支持も行なう。本実施形態のように壁枠構造以外にも、例えば金属フレームを組み付けて骨組みを行なったものでも良い。図1,2において、本体支持枠の本体壁22A、22B、22C、22Dのそれぞれには、上下に2個の組合せで、それら左右に2対、計4個の貫通孔30が横方向に穿孔されている。さらに、これらの上下一対の貫通孔30にそれぞれ一部を臨ませるように該貫通孔の外面側において縦ロッド32が本体壁22A、22B、22C、22Dに一体的に固定されている。これらの縦ロッド32は、1つの本体壁について左右1つづつ計2個取り付けられて、4つの本体壁で計8個設けられている。さらに、該本体支持枠20の四隅上端部分であって、長辺側に伸びるように突設部34が突設されており、図6,7に示すように、移動用受け枠36によりその下面側から支持された状態で可動押え枠60を支持した本体支持枠20が左右、上下昇降移動させられる。
【0021】
可動押え枠60は、図1,2,4に示すように本体支持枠20の内側であって、さらにその内側の略中央位置に配置した砂型500の対向側面にそれぞれ直接対向するように配置される。すなわち、可動押え枠60は、平面で四角形の対向辺となる対向面について設置され、例えば対向2面、4面などがある。その他の3面、5面、6面以上などでも原理的には可能である。また、複数割れの円筒形、それらのテーパ枠なども可能である。可動押え枠60は、本体支持枠20により支持され砂型上への載置時に本体支持枠20の重力による重量に押されて砂型側面を直接に押動する押動手段であり、実施形態において、例えば本体支持枠と同様の金属板材で構成されている。可動押え枠60は、本体支持枠20とはそれぞれ別個の部材で本体支持枠の基体24A、24B、24C、24Dに対応して4個設けられており、後述するリンクピンにより本体支持枠20とリンク連結されている
【0022】
本実施形態では、さらに、該可動押え枠60は、側面密着壁62と、上面密着壁64とを有している。可動押え枠60は図12に示すように、本体支持枠20の本体壁22A、22B、22C、22Dよりも高い高さで、かつ、本体支持枠の内部に納まる程度の四角形サイズで形成されている。側面密着壁62は、砂型の対向側面に横方向から密着し、本体支持枠の下降によるリンクピンの変位に応動して砂型の側面をそれぞれ砂型の内部側に向けて押動する。上面密着壁64は、側面密着壁62の上端部において側面密着壁62にL字状に一体連結され側面密着壁の砂型側面500aへの密着時に砂型500の上面500bに密着当接して砂型の上面を押える。側面密着壁62は、横長四角形状をしている。上面密着壁64は、砂型500の湯口502に掛からない程度に側面密着壁からL字状に突設して形成されている。側面からL字状に一体曲折して砂型の対向側面の直角状対面となる上面を押えるから上面密着壁を大きな面積としないで砂型上面を押えることができ、湯口502を確実に目視することができる。上面密着壁64は、L字接続の先端側は台形状の凸部と凹部を交互に連続した端縁形状となっている。このL字先端側の形状は任意であり、単に直線形状となっていたり円弧形状の連続、その他自由に設定できる。
【0023】
近接同期押動機構100は、本体支持枠20と可動押え枠60を連係し本体支持枠20の下降動作に同期して可動押え枠60を砂型500の対向側面に近接押動させる同期押動手段であり、実施形態において、リンク連結装置102を含む。リンク連結装置102は、本体支持枠20の吊支状態では可動押え枠60を砂型側面500aから退避状態とさせる(図9参照)とともに、本体支持枠20を下降させると可動押え枠60を内側に押動させるように変位させる本体支持枠と可動押え枠とのリンク連結手段であり、実施形態では、このリンク連結装置102は、リンクピン104と、可動規定部105と、を備えている。
【0024】
本体壁22A,22B,22C,22Dの貫通孔30にはそれぞれ1個のリンクピン104が横貫通状に配置され、その一端は本体壁の外部側に突出形成された縦ロッド32に枢支部106において枢支されている。したがって、貫通孔30の数に対応して16個の同形状、同一長さのリンクピン104が設けられている。一方、可動押え枠60の外面側には図2、図4に示すように突片108が外方に向けて突設されており、この突片108にリンクピン104の他端側が枢支されて枢支部110を形成している。それぞれ1つの可動押え枠60には左右2対、計4箇所の枢支部110が設けられており、これによって、本体支持枠の各基体24A,24B,24C,24Dに対応して4個の可動押え枠60がリンクにより連結支持されている。4個の可動押え枠60は図1、図2に示すように砂型500を平面で四角形状に囲み、さらに上面からも上面密着壁64により押えて砂型を保持させる。
【0025】
可動規定部105は、リンクピン104の可動範囲を規定し、枢支部106,110を介したリンクピンの動きを安定して行なわせるようにする手段であり、実施形態では、可動規定部105は、本体支持枠20の各基体に横方向に貫通したリンクピン104を通す貫通孔30から構成されている。
【0026】
これによって、可動押え枠60は、本体支持枠の吊支状態では、本体支持枠20によりリンクピン104を介して支持された状態となる一方、下降させて砂型上に可動押え枠60と、本体支持枠20を載置させると砂型の側面と上面の一部を同時に押さえ保持することとなる。
【0027】
なお、図示は省略しているが、可動押え枠60の内面側には砂型内のエアー抜き用溝が複数刻設されている。
【0028】
次に、実施形態の注湯用押え枠装置の作用について図6ないし図13を参照しつつ説明する。例えば、図14の台車300による注湯ラインにおいて、本実施形態の注湯用押え枠装置10を適用する場合、造型部304から供給された砂型は型合わせ状態で本願装置10のローダ工程に至る。移動用受け枠36により本体支持枠20を下面から支持して上昇、横移動等を行い、図6のように上面から位置合わせ状態で砂型500の上方位置から下降させる。
【0029】
図9は位置合わせながら図7の移動用受け枠36により受着した状態で本体支持枠20を砂型の上方位置から下降させ、本体支持枠20の内側の可動押え枠60により囲まれる空隙の略中央に砂型500が位置するように配置させた状態であり、この状態では、未だ可動押え枠60は本体支持枠20に吊支された状態でリンクピン104は、それぞれ可動押え枠側の枢支部110が低位となるように斜めに傾斜した状態にある。そして、この状態では可動押え壁60の側面密着壁62の内面と砂型500の側面500aとの間には間隙S1が存在し、両者は離れて密着していない。同様に、可動押え枠60の上面密着壁64の下面と砂型500の上面500bとの間には間隙S2が存在し、両者はまだ密着していない。本体支持枠20の吊支状態では図10に示すように、内側の可動押え枠60がリンクピンに支持されてぶら下がった状態となっており、本体支持枠の上面は可動押え枠60の上面密着壁よりやや下がった位置関係となっている。
【0030】
図9位置からさらに本体支持枠20を下降させると図11のように可動押え枠60の上面密着壁64の下面が砂型500の上面に当たり、砂型の縁部寄り上面に可動押え枠の上面密着壁64が載置された状態となって可動押え枠全体が砂型上に乗架し、可動押え枠60の下降はそこで停止する。その状態からさらに本体支持枠20が下降すると、リンクピン104の高位側固定枢支部106の枢支軸回りk方向に低位自由端側枢支部110側を回動させる力が働き、そのまま枢支部106が下降することによりリンクピン104の低位自由端側枢支部110が砂型側面に向かう方向に押される。このとき、近接同期押動機構100により、4面が同時にこのような下降と同時に同じストローク長さで可動押え枠60の側面密着壁62を内側に押す機能を行うことにより自動調心作用が働き、面当たりのずれを生じさせることがない。図11は、枢支部110が砂型側面に少し押されて側面密着壁62の内面と砂型側面500aとの間隙S1が接近した状態を示している。
【0031】
そして、図11の状態からさらに下降すると、図12のように側面密着壁62の内面と砂型側面500aとが密着し、このとき、リンクピン104は略真横に近い状態となっている。図12の状態で可動押え枠60の側面密着壁62及び上面密着壁64が同時に砂型500の側面及び上面に密着し、本体支持枠も砂型に全体が被嵌され、支持された状態となる。
【0032】
この状態で、例えば図7、図8からも明らかなように砂型500の湯口502がより明確に上方から目視確認できることとなり、作業者によるトリベからの注湯作業精度を向上させることができる。したがって、無駄な溶湯を使用することがなくなり、また注湯作業時間を短縮できる。さらに、可動押え枠60により砂型の側面と上面とを同時に押え保持させるから、上面に載置させる数百キログラムもの重量のウエイトが不要となり、また、その搭載させるための装置設備、搭載時間が不要となる。さらに、自動調心作用により面当たりが正しく行われる結果、無理な加圧による砂型の弱体化及び砂型のずれを生じさせることもない。
【0033】
以上説明した本発明の注湯用押え枠装置は、上記した実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。実施形態では本装置が砂型上方から下降して砂型に装着される例を示したが、砂型が上昇して本装置に被嵌されるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の注湯用押え枠装置は、造型された砂型への注湯工程に有効に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態に係る注湯用押え枠装置の斜視図である。
【図2】図1の装置のJ方向視を正面とした場合の平面図である。
【図3】図1の装置のJ方向視正面図である。
【図4】図2のA−A線矢示図である。
【図5】図3の装置の右側面図である。
【図6】本装置を砂型に下降させる状態を示す説明図である。
【図7】実施形態の本装置を砂型に被嵌させる途中の平面図である。
【図8】実施形態の本装置を砂型に被嵌させる途中の斜視図である。
【図9】実施形態の本装置を砂型に被嵌させる途中の断面作用説明図である。
【図10】実施形態の本装置を砂型に被嵌させる途中の正面図である。
【図11】実施形態の本装置を砂型に被嵌させる途中の断面作用説明図である。
【図12】実施形態の本装置の砂型への被嵌完了断面説明図である。
【図13】図12の状態の正面図である。
【図14】台車による注湯搬送ラインの従来、及び一部本実施形態適用例を兼用した平面説明図である。
【図15】従来のテーパ砂型にテーパ内壁を有するジャケット装着例を示す説明図である。
【図16】従来の注湯搬送ラインの例を示す平面説明図である。
【図17】従来方法による注湯作業状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0036】
10 注湯用押え枠装置
20 本体支持枠
24A,24B,24C,24D 基体
30 貫通孔
60 可動押え枠
62 側面密着壁
64 上面密着壁
100 近接同期押動機構
102 リンク連結装置
104 リンクピン
105 可動規定部
106 枢支部
110 枢支部
300 台車
500 砂型


【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂型の鋳物空洞部へ注湯する際の砂型の押え枠装置であり、
砂型の対向側面のそれぞれ外側に対向配置される複数の基体を一体に組みつけた本体支持枠と、
本体支持枠の内側であって、さらにその内側の略中央位置に配置した砂型の対向側面にそれぞれ直接対向配置された複数の可動押え枠と、
本体支持枠と可動押え枠を連係し本体支持枠の砂型に対する近接動作に同期して可動押え枠を砂型の対向側面に近接押動させる近接同期押動機構と、を含み、
可動押え枠は、砂型の対向側面に横方向から密着する側面密着壁と、側面密着壁にL字状に一体連結され側面密着壁の砂型側面への密着時に砂型の上面に密着当接して上面から押える上面密着壁と、を備えたことを特徴とする注湯用押え枠装置。
【請求項2】
近接同期押動機構は、可動押え枠を支持する本体支持枠の吊支状態では可動押え枠を砂型側面から退避させるとともに、本体支持枠を砂型に近接移動させると可動押え枠を内側に押動させるように変位させるリンク連結装置からなることを特徴とする請求項1記載の注湯用押え枠装置。
【請求項3】
リンク連結装置は、一端を本体支持枠側に枢支されるとともに他端を可動押え枠側に枢支された複数のリンクピンと、リンクピンの可動範囲を規定する可動規定部と、を備えたことを特徴とする請求項2記載の注湯用押え枠装置。
【請求項4】
本体支持枠は、砂型の周囲を囲むように配置される四角形枠体からなり、それらの4個の基体に対応して4個の可動押え枠が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の注湯用押え枠装置。
【請求項5】
可動規定部は、本体支持枠の各基体に横方向に貫通したリンクピンを通す貫通孔からなる請求項4記載の注湯用押え枠装置。
【請求項6】
上面密着壁は、砂型の湯口に掛からない程度に側面密着壁からL字状に突設したものであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の注湯用押え枠装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−269044(P2009−269044A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120146(P2008−120146)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(000130020)株式会社コーヨー (1)
【Fターム(参考)】