説明

洋式便器用の可変サイフォン管駆動装置

本発明は洋式便器用の可変サイフォン管駆動装置に関し、特に駆動信頼性が高く、悪臭遮断機構を有し、洋式便器の後部をスリム化できる可変サイフォン管駆動装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洋式便器用の可変サイフォン管駆動装置に関し、特に駆動信頼性が高く、悪臭遮断機構を有し、洋式便器の後部をスリム化できる可変サイフォン管駆動装置に関する。

【背景技術】
【0002】
従来の洋式便器用の可変サイフォン管駆動装置は、図1及び図2に示すように、一端がボウル1に他端が汚水管2にそれぞれ蛇腹管3を介して連結された可変サイフォン管10と、ボウル1の給水路1aと連通するとともに、補助管4を介して可変サイフォン管10にも連通する上部ベローズ管20と、下端が設置床面Bに固定され、上端が上部ベローズ管20の底板21に貫設されたガイドバー30と、ガイドバーの中間部に連結され、底板21に連結棒によって連結された横棒(図示せず)と、可変サイフォン管10の屈曲部11に取り付けられ、横棒の外端を回転可能に支持するローラー40と、横棒を元の位置に戻すように横棒の下端に取り付けられた復元スプリング50とを有する。
【0003】
しかしながら、このような可変サイフォン管付き洋式便器は、以下の問題点を有する。
【0004】
第一に、復元スプリング50が作動中に絡んでしまうおそれがある。すなわち、復元スプリングが圧縮過程で絡んで復元が円滑に行われず、上部ベローズ管20内の水が全て排出された後も可変サイフォン管10が元の位置に戻らないという誤動作が起こり得る。
【0005】
第二に、復元スプリング50とガイドバー30との摩擦により、洋式便器の駆動の信頼性が低下し、騒音が発生する。すなわち、復元スプリングとその中で延在するガイドバー30との摩擦により雑音が出るだけでなく、ガイドバーが磨耗する。さらに復元スプリングの伸縮が円滑でなくなるため、可変サイフォン管10の上昇が不安定になるという問題が生じる。
【0006】
第三に、ガイドバー30を設置床面Bに設置するのが困難である。すなわち、壊れやすいタイルで施工された設置床面にガイドバーを設置する場合、タイルが簡単に壊れてしまい、ガイドバーを設置するのが難しいという問題がある。
【0007】
第四に、補助管4が可変サイフォン管10の最高水位より上に位置するため、汚物貯留タンクTから上ってくる悪臭(図1に矢印で示す)は、可変サイフォン管、補助管、上部ベローズ管、給水路及びボウルを経て便器の外に漏れ、遮断するのが難しい。
【0008】
また補助管4の吸込側が上部ベローズ管20の側面にあるので、上部ベローズ管20が復元したときに、補助管を介して排出されなかった水が上部ベローズ管の底部に残っている。従って、その分だけボウル1内の貯水量が少なくなるという問題がある。
【0009】
第五に、図2に示すように、ボウル1の背面を設置壁面Wに密接させても可変サイフォン管10の屈曲部11の円運動が妨げられないように、ボウル1は十分に長くなければならない。そのため、ボウルがΔLだけ長くなり、洋式便器のスリム化が難しい。
【0010】
第六に、可変サイフォン管10の出入口に連結されたベローズ管3に汚物が付着するおそれが大きい。すなわち、ベローズ管3は複数の折り畳み部を有するため、排水時にベローズ管3の折り畳み部に汚物がこびり付き、ベローズ管の円滑な伸縮が妨げられるおそれがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、復元スプリングの位置を変更することにより復元スプリングの伸縮を円滑にし、可変サイフォン管の昇降動作の信頼性を高めた洋式便器用の可変サイフォン管駆動装置を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、汚物貯留タンクから悪臭が上ってこないように悪臭遮断機構を有する洋式便器用の可変サイフォン管駆動装置を提供することである。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、可変サイフォン管の屈曲部の回転軌道をできるだけ小さくすることにより、洋式便器を長くしなくても設置壁面に密接できる洋式便器用の可変サイフォン管駆動装置を提供することである。
【0014】
本発明のさらに別の目的は、ベローズ管の内部にビニール管を設置することにより、ベローズ管の内壁に汚物がこびりつくのを防止できる洋式便器用の可変サイフォン管駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一実施例によれば、ボウル及び水タンクを備えた貯水型洋式便器用の可変サイフォン管駆動装置は、給水路と連通するようにボウルの後方に設けられたベローズ管状の押圧管と、押圧管の上端を給水路の連結首部に締結するとともに両側に第1掛止部を有する締め付けリングと、押圧管の底面に連結するとともに両側に第2掛止部を有し、各第2掛止部の下端に嵌込孔が設けられたブラケットと、第1掛止部及び第2掛止部と連結した復元スプリングと、一方の側にボウルの排出口にベローズ管を介して連結した入口部と、汚水管にベローズ管を介して連結した出口部とを有し、他方の側に屈曲部を有し、屈曲部の両側に嵌込孔に嵌合する枢軸を備えた可変サイフォン管と、押圧管と可変サイフォン管とを連結する連結管とを具備する。
【0016】
本発明の別の実施例によれば、給水管の水をボウルの給水路に直接供給する直水型洋式便器用の可変サイフォン管駆動装置は、給水路と連通するようにボウルの後方に設けられたベローズ管状の押圧管と、押圧管の上端を給水路の連結首部に締結するとともに両側に第1掛止部を有する締め付けリングと、押圧管の底面に連結するとともに両側に第2掛止部を有し、各第2掛止部の下端に嵌込孔が設けられたブラケットと、第1掛止部及び第2掛止部に連結された復元スプリングと、一方の側にボウルの排出口にベローズ管を介して連結した入口部と、汚水管にベローズ管を介して連結した出口部とを有し、他方の側に屈曲部を有し、屈曲部の両側に嵌込孔に嵌合する枢軸を備えた可変サイフォン管と、押圧管と可変サイフォン管とを連結する連結管とを具備する。
【0017】
連結管の流入端は押圧管の底部と連通し、排出端は駆動前の可変サイフォン管内の最高水位より下に位置するのが好ましい。各ベローズ管内にビニール管が設置されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の可変サイフォン管駆動装置では、復元スプリングは引っ張られるだけなので絡まず、またガイドバーが不要なため、復元スプリングとガイドバーとの摩擦による両者の摩耗や雑音が発生しない。さらにガイドバーを設置するための床工事が不要なため、便器の設置が容易である。その上、摩耗がないため装置の信頼性が高い。
【0019】
連結管の上端が押圧管の底部に連結しているため、押圧管内に水が残らず、可変サイフォン管を円滑に駆動できる。また連結管の下端が可変サイフォン管内の最高水位より下に位置しているため、可変サイフォン管に溜まっている水により悪臭を遮断することができる。
【0020】
可変サイフォン管の出入口に連結したベローズ管内にビニール管を設けることにより、ベローズ管の内壁に汚物がこびりつくのを防止できるので、ベローズ管の伸縮性の劣化を防止できる。
【0021】
可変サイフォン管の枢軸の位置を変え、かつ汚水管に連結されたベローズ管をできるだけ長くすると、可変サイフォン管の屈曲部は実質的に直線運動をする。そのため、ボウルを長くしなくても設置壁面に密接させることができ、便器の設置空間を著しく減らせる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の好ましい実施例を図3〜図7を参照して以下詳細に説明する。
【0023】
本発明の可変サイフォン管駆動装置は、水タンク5に貯水して必要に応じて放水する貯水型の洋式便器(図3に示す)、及び給水管(水道管)の水をボウルの給水路に直接供給する直水型の洋式便器(図4に示す)のいずれにも使用可能である。
【0024】
貯水型洋式便器又は直水型洋式便器に使用する可変サイフォン管駆動装置100は、ボウル1の後方に設けられ、給水路1aと連通するベローズ管状の押圧管110を有する。押圧管110は給水路1aと連通しているため、給水路に水が供給されると、水の一部は押圧管に流入する。
【0025】
押圧管110の上端は、締め付けリング120により給水路1aの連結首部1bに締結されている。締め付けリング120は、一対の半円形状ハーフリング(射出成形品)を螺合したもので、各ハーフリングには、後述する復元スプリング140の上端を掛止するための第1掛止部121が一体的に形成されている。
【0026】
押圧管110の底面にはブラケット130が連結している。ブラケット130の両側には第2掛止部131が設けられており、各第2掛止部131の下端には嵌込孔132が設けられている。
【0027】
第1掛止部及び第2掛止部121,131には復元スプリング140の上端及び下端が連結している。復元スプリング140は下記の条件を満たすようにブラケット130を上方に引っ張る。すなわち、押圧管110内に水がないと、復元スプリングは、押圧管110、ブラケット130及び後述の可変サイフォン管150をバネ力で持ち上げた状態に維持するが、押圧管110に水が充満すると、押圧管と水の合計重量により復元スプリング140は伸びる。
【0028】
ブラケット130には可変サイフォン管150が枢動自在に連結されている。可変サイフォン管150はU字状のプラスチック成形品であり、一方の側に入口部151及び出口部152(それぞれ上部及び下部)が設けられており、他方の側に屈曲部153が設けられている。屈曲部153の側面には嵌込孔132に回転自在に連結する枢軸154が設けられている。
【0029】
入口部151はベローズ管161を介してボウル1の排出口1cに連結しており、出口部152はベローズ管162を介して汚水管2に連結している。可変サイフォン管が昇降する際、可変サイフォン管150の位置はベローズ管161,162により僅かに変更可能である。可変サイフォン管150が円軌道を通らなくても昇降できるように、特に下部ベローズ管162は弾性材からなるのが好ましい。
【0030】
各ベローズ管161,162内に、一端が固定され、他端が開放されたビニール管163が設けられているので、排水の際汚物がベローズ管161,162にこびりつくのを防止できる。
【0031】
押圧管110及び可変サイフォン管150は連結管170を介して連結している。連結管は、押圧管110及び可変サイフォン管150の動きに応じて長さが変化する必要があるため、ベローズ管状である。連結管の上端が押圧管110の底部と連通し、下端が可変サイフォン管150と連通しているので、押圧管110内の水はボウル1に流入することができる。
【0032】
汚物貯留タンクTから悪臭が室内に流入するのを可変サイフォン管150に残った水により防止するため、連結管170の下端171は、可変サイフォン管150内の最高水位HLより下に位置しなければならない。
【0033】
このような構成を有する本発明の可変サイフォン管駆動装置の駆動を図6及び図7を参照して説明する。
【0034】
使用前では、図6に示すように、復元スプリング140の弾性力によりブラケット130が持ち上げられて押圧管110は圧縮されており、可変サイフォン管150の後方屈曲部153も持ち上がった状態にある。可変サイフォン管150の上部にはボウル1と同じ水位まで水がある。
【0035】
水タンク5又は給水管6から供給された水の一部は給水路1aを経てボウル1に供給されるが、残部は押圧管110に供給される。
【0036】
押圧管110は、水で充満するにつれ、水の重みにより下方に伸びる。それにより、押圧管110に連結されたブラケット130、及びブラケット130に枢動自在に連結された可変サイフォン管150の屈曲部153は下降する。
【0037】
可変サイフォン管150の屈曲部153が下降するにつれて、可変サイフォン管150の入口部151及び出口部152が僅かに下向きになるので、汚物を自然排出が可能となる。それとともに、流水量を最小化し、排水時の騒音を著しく減らすこともできる。
【0038】
給水路1aへの給水が止まると、押圧管110に充填された水は、連結管170及び可変サイフォン管150を経てボウル1に少しずつ供給され、ボウル1内の残水となる。このように押圧管110の水が徐々に抜けていくと軽くなるので、復元スプリングの圧縮力により初期状態に戻る。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の可変サイフォン管駆動装置では、復元スプリングは引っ張られるだけなので絡まず、またガイドバーが不要なため、復元スプリングとガイドバーとの摩擦による両者の摩耗や雑音が発生しない。さらにガイドバーを設置するための床工事が不要なため、便器の設置が容易である。その上、摩耗がないため装置の信頼性が高い。
【0040】
連結管の上端が押圧管の底部に連結しているため、押圧管内に水が残らず、可変サイフォン管を円滑に駆動できる。また連結管の下端が可変サイフォン管内の最高水位より下に位置しているため、可変サイフォン管に溜まっている水により悪臭を遮断することができる。
【0041】
可変サイフォン管の出入口に連結したベローズ管内にビニール管を設けることにより、ベローズ管の内壁に汚物がこびりつくのを防止できるので、ベローズ管の伸縮性の劣化を防止できる。
【0042】
可変サイフォン管の枢軸の位置を変え、かつ汚水管に連結されたベローズ管をできるだけ長くすると、可変サイフォン管の屈曲部は実質的に直線運動をする。そのため、ボウルを長くしなくても設置壁面に密接させることができ、便器の設置空間を著しく減らせる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】従来の可変サイフォン管駆動装置の駆動前の状態を示す断面図である。
【図2】従来の可変サイフォン管駆動装置の駆動後の状態を示す断面図である。
【図3】貯水型洋式便器に設置した本発明の可変サイフォン管駆動装置を示す図である。
【図4】直水型洋式便器に設置した本発明の可変サイフォン管駆動装置を示す図である。
【図5】本発明の可変サイフォン管駆動装置をA方向から見た図である。
【図6】本発明の可変サイフォン管駆動装置の駆動前の状態を示す断面図である。
【図7】本発明の可変サイフォン管駆動装置の駆動後の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0044】
110・・・押圧管
120・・・締め付けリング
130・・・ブラケット
140・・・復元スプリング
150・・・可変サイフォン管
170・・・連結管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボウルと水タンクとを備えた貯水型洋式便器用の可変サイフォン管駆動装置であって、給水路と連通するように前記ボウルの後方に設けられたベローズ管状の押圧管と、前記押圧管の上端を前記給水路の連結首部に締結するとともに両側に第1掛止部を有する締め付けリングと、前記押圧管の底面に連結するとともに両側に第2掛止部を有し、各第2掛止部の下端に嵌込孔が設けられたブラケットと、前記第1掛止部及び前記第2掛止部に連結された復元スプリングと、一方の側にボウルの排出口にベローズ管を介して連結した入口部と、汚水管にベローズ管を介して連結した出口部とを有し、他方の側に屈曲部を有し、前記屈曲部の両側に前記嵌込孔に嵌合する枢軸を備えた可変サイフォン管と、前記押圧管と前記可変サイフォン管とを連結する連結管とを具備することを特徴とする可変サイフォン管駆動装置。
【請求項2】
給水管の水をボールの給水路に直接供給する直水型洋式便器用の可変サイフォン管駆動装置であって、給水路と連通するように前記ボウルの後方に設けられたベローズ管状の押圧管と、前記押圧管の上端を前記給水路の連結首部に締結するとともに両側に第1掛止部を有する締め付けリングと、前記押圧管の底面に連結するとともに両側に第2掛止部を有し、各第2掛止部の下端に嵌込孔が設けられたブラケットと、前記第1掛止部及び前記第2掛止部に連結された復元スプリングと、一方の側にボウルの排出口にベローズ管を介して連結した入口部と、汚水管にベローズ管を介して連結した出口部とを有し、他方の側に屈曲部を有し、前記屈曲部の両側に前記嵌込孔に嵌合する枢軸を備えた可変サイフォン管と、前記押圧管と前記可変サイフォン管とを連結する連結管とを具備することを特徴とする可変サイフォン管駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の可変サイフォン管駆動装置において、前記連結管の流入端は前記押圧管の底部と連通しており、排出端は駆動前の可変サイフォン管内の最高水位より下に位置することを特徴とする可変サイフォン管駆動装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の可変サイフォン管駆動装置において、前記各ベローズ管内にビニール管が設置されていることを特徴とする可変サイフォン管駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−532810(P2007−532810A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509386(P2007−509386)
【出願日】平成16年4月23日(2004.4.23)
【国際出願番号】PCT/KR2004/000937
【国際公開番号】WO2005/103399
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(506352289)
【Fターム(参考)】