説明

洋風便器装置

【課題】
装置を大きくすることなく、飛沫によって人の臀部が濡れたり、異音が生じることを低減でき、捨て水を封水に排出する洋風便器装置を提供すること。
【解決手段】
便器200と、便器200に取り付けられ、洗浄水を放出する洗浄ノズル111と、洗浄ノズル111に適量の水を供給し不要となった捨て水Sを除く給水バルブ112と、捨て水Sを便器200内に捨てる排水ホース113とが配置され、排水ホース113の末端に位置する排水部140が設けられるベースプレート114とを備え、排水部140は、ベースプレート114に形成され便器200内に通じ、捨て水Sを通す孔142と、孔142の縁部143に連なり、捨て水Sの下流に向かって孔142の中心線から徐々に離れ、便器200の内面201方向に傾斜して設けられた傾斜面144を有する洋風便器装置10としたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捨て水排出手段を備えた洋風便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、温水タンク97とノズル98と、水道管90との間の流路の途中に設けられ、温水タンク97に供給する水量を調整しつつ調整時の余剰水を捨て水として排出する流量調整弁に接続され、その先端を、洋風便器本体20の上縁に形成されたリム通水路23aに繋がるリム導水室10に配置するリム通水管88を有する洋風水洗式便器が開示されている。
【0003】
この洋風水洗式便器は、捨て水がリム通水管88、リム導水室10およびリム通水路23aを介して、便鉢24の封水82に排出されるため、捨て水が封水82に直接落下することがなく、飛沫によって人の臀部が濡れたり、異音が生じることを防止している。
【0004】
特許文献2には、洗浄液注入手段10により泡沫を発生させ、ボウル部3内の溜水Fの上方に泡沫層Bを形成する洋風便器装置が開示されている。
【0005】
この洋風便器装置は、溜水Fの上方に泡沫層Bを形成するため、捨て水が溜水Fに直接落下することがなく、飛沫によって人の臀部が濡れたり、異音が生じることを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−291581号公報
【特許文献2】特開2008−002138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されている洋風水洗式便器は、捨て水を排出するために、捨て水をリム通水路23aに導くリム導水室10を設けているため、装置が大きくなってしまうという課題を有していた。
【0008】
また、特許文献2に開示されている洋風便器装置は、洗浄液注入手段10を設けるため、装置が大きくなってしまうという課題を有していた。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するもので、装置を大きくすることなく、飛沫によって人の臀部が濡れたり、異音が生じることを防止でき、捨て水を封水に排出する洋風便器装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の技術的課題を解決するために本発明にて講じられた第1の技術的手段は、便器と、前記便器に取り付けられ、洗浄水を放出する洗浄部と、前記洗浄部に適量の水を供給し不要となった捨て水を除く水量調節部と、前記捨て水を前記便器内に捨てる排水通路とが配置され、前記排水通路の末端に位置する排水部が設けられるベースプレートとを備え、前記排水部は、前記ベースプレートに形成され前記便器内に通じ、前記捨て水を通す孔と、前記孔の縁部に連なり、前記捨て水の下流に向かって前記孔の中心線から徐々に離れ、前記便器の内面方向に傾斜して設けられた傾斜面を有することを特徴とする洋風便器装置である。
【0011】
第2の技術的手段は、第1の技術的手段において、前記傾斜面は、前記捨て水の流れ方向と前記流れ方向に直角な幅方向とに直角な方向に凹む凹状に形成されたことである。
【0012】
第3の技術的手段は、第1の技術的手段または第2の技術的手段のいずれかにおいて、前記傾斜面は、前記捨て水の流れ方向に向かって、第1の傾斜面と、前記第1傾斜面より傾斜角度の大きい第2傾斜面を有することである。
【0013】
第4の技術的手段は、便器と、前記便器に取り付けられ、洗浄水を放出する洗浄部と、前記洗浄部に適量の水を供給し不要となった捨て水を除く水量調節部と、前記捨て水を前記便器内に捨てる排水通路とが配置され、前記排水通路の末端に位置する排水部が設けられるベースプレートとを備え、前記排水部は、前記ベースプレートに形成され前記便器内に通じ、前記捨て水を通す孔からなり、前記孔が仕切りにより仕切られていることを特徴とする洋風便器装置である。
【0014】
第5の技術的手段は、第4の技術的手段において、前記仕切りがメッシュ状に設けられていることである。
【0015】
第6の技術的手段は、第4の技術的手段において、前記仕切りの上流側に突出した突部が設けられていることである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によると、排水部は、ベースプレートに形成され便器内に通じ、捨て水を通す孔と、孔の縁部に連なり、捨て水の下流に向かって孔の中心線から徐々に離れ、便器の内面方向に傾斜して設けられた傾斜面を有することとした。
【0017】
これにより、孔から流れ出た捨て水と傾斜面との間に発生する負圧により、捨て水が傾斜面にガイドされて流れて便器の内面に案内され、便器内面を伝って封水に導かれる。そのため、装置を大きくすることなく、捨て水を封水に導くことができる。また、捨て水が便器の内面を伝って封水に導かれるため、捨て水の飛沫によって人の臀部が濡れたり、異音が生じることを抑制できる。
【0018】
請求項2の発明によると、傾斜面は、捨て水の流れ方向と捨て水の流れ方向に直角な幅方向とに直角な方向に凹む凹状に形成されたこととした。
【0019】
これにより、捨て水が傾斜面の周囲に伝わって導かれることを抑制でき、捨て水を便器の内面に導くことができる。
【0020】
請求項3の発明によると、傾斜面の下流側に第1傾斜面より傾斜角度の大きい第2傾斜面が設けられたこととした。
【0021】
これにより、捨て水をより便器の内面近くに導くことができる。
【0022】
請求項4の発明によると、排水部は、ベースプレートに形成され便器内に通じ、捨て水を通す孔からなり、孔が仕切りにより仕切られていることとした。
【0023】
これにより、装置を大きくすることなく、捨て水を封水に導くことができる。また、捨て水が仕切りにより分けら封水に導かれるため、捨て水の飛沫によって人の臀部が濡れたり、異音が生じることを低減することができる。
【0024】
請求項5の発明によると、仕切りがメッシュ状に設けられていることとした。
【0025】
これにより、捨て水を細かく分散することができ、捨て水の飛沫、異音を低減することができる。
【0026】
請求項6の発明によると、仕切りの上流側に突出した突部が設けられていることした。
【0027】
これにより、捨て水が突部により拡散され、仕切りにより分散された捨て水の結合を防止でき、捨て水の飛沫、異音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施例に係る洋風便器装置の側面図。
【図2】本発明の第1の実施例に係るトイレ装置の透視図。
【図3】本発明の第1の実施例に係るトイレ装置のブロック図。
【図4】本発明の第1の実施例に係る排水部の断面図。
【図5】第1の実施例の変形例に係るに係る排水部の断面図。
【図6】本発明の第1の実施例に係る排水部の斜視図。
【図7】本発明の第2の実施例に係る排水部の正面図。
【図8】図7のII-II断面図。
【図9】本発明の第3の実施例に係る排水部の正面図。
【図10】図9のIII-III断面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態である第1の実施例を、図面を参照しながら説明する。
【0030】
図1は、本発明に係る洋風便器装置10の側面図である。洋風便器装置10は、トイレ装置100およびトイレ装置100が取り付けられる便器200から構成される。尚、便器200は、断面により表され、この断面において捨て水Sの流れが示されている。
【0031】
図2は、トイレ装置100における局部洗浄装置110を示す透視図である。局部洗浄装置110は、図示しない人体の局部を洗浄する洗浄水を放出する洗浄部としての洗浄ノズル111と、洗浄ノズル111に適量の水を供給し不要となった捨て水Sを除く水量調節部としての給水バルブ112と、捨て水を便器200内に捨てる排水通路としての排水ホース113と、排水ホース113の末端に位置する排水部140と、排水部140が設けられるベースプレート114とから構成される。また、トイレ装置100は、局部洗浄装置110に加え、洋風便器装置10の使用時に使用者が着座する便座120と、便器を覆う便蓋130とを有し、便座120と便蓋130はベースプレート114に支持されている。
【0032】
図3は、給水バルブ112から洗浄ノズル111までの構成を示すブロック図である。洗浄水を温水にする熱交換ユニット115と洗浄水による洗浄能力を上げるための脈動バルブ116が、給水バルブ112と洗浄ノズル111との間に設けられている。
【0033】
図4は、本実施例の排水部140の断面図である。排水部140は、ベースプレート114に形成され、排水ホース113が挿入される突部141に設けられ便器200内に通じ、捨て水Sを通す孔142を有する。また、排水部140は、孔142の縁部143に連なり、捨て水Sの下流に向かって孔142の中心線Cから徐々に離れ、図1に示す便器200において排水部140に最も近傍の内面201(便器200の後部側内面)方向に傾斜して設けられた傾斜面144を有する。
【0034】
傾斜面144は、第1傾斜面145と、第1傾斜面145の下流側に、第1傾斜面145より傾斜角度の大きい第2傾斜面146を有している。更に、第1傾斜面145および第2傾斜面146の幅は、捨て水Sの下流に向かって広がるように形成されている。図5は、図4に示す第1傾斜面145が、捨て水Sの流れ方向に長い変形例の断面を示す。
【0035】
図6は、便器200側から見た排水部140の斜視図である。第1傾斜面145および第2傾斜面146は、捨て水Sの流れ方向(換言すれば、孔142から便器200に向かう傾斜面145の延在方向)と、捨て水Sの流れ方向に直角な幅方向と、に直角な方向に凹む凹状に形成されている。孔142および傾斜面144の周囲には、孔142および傾斜面144を囲い外観を向上すると共に、捨て水Sの量が変動した場合に捨て水が飛び散るのを防止するためのリブ147が形成されている。
【0036】
本実施例では、傾斜面144(第1傾斜面145、第2傾斜面146)とリブ147は樹脂成形により一体的に成形されている。更に、傾斜面144の幅方向において、傾斜面144(第1傾斜面145、び第2傾斜面146)の幅方向縁部とリブ147の内壁面とを繋ぐ接続部148は、傾斜面144と同様に凹状に形成されている。
【0037】
次に、上記した本実施例の作用について説明する。
【0038】
トイレ装置100を使用する際、給水バルブ112により適量に調節され、熱交換ユニット115および脈動バルブ116により、圧力変動された温水の洗浄水が洗浄ノズル111から放出される。一方、洗浄水として不要となった捨て水Sは、給水バルブ112で除かれ、図1および図4に示すように、排水ホース113を介して排水部140より、便器200内へ排出される。
【0039】
この時、捨て水Sは、孔142から流れ出た捨て水Sと傾斜面144である第1傾斜面145との間に発生する負圧により、第1傾斜面145に沿って便器200の内面201に案内されて、内面201を伝って便器200内の封水Hに導かれる。このように、捨て水Sを便器200内に導く孔142を排水部140として利用するため、装置を大きくすることなく、捨て水Sを封水Hに導くことができる。また、捨て水Sが便器200の内面201を伝って封水Hに導かれるため、捨て水Sの飛沫によって人の臀部が濡れたり、異音が生じることを低減できる。
【0040】
本実施例では、傾斜面144は、図6に示すように、捨て水Sの流れ方向と、捨て水Sの流れ方向に直角な幅方向と、に直角な方向に凹む凹状に形成されているため、捨て水Sは傾斜面144の周囲に伝わって導かれることを抑制でき、捨て水Sを便器200の内面201に導くことができる。
【0041】
また、本実施例では、第1傾斜面145の下流側に、第1傾斜面145より傾斜角度の大きい第2傾斜面146を設けることにより、捨て水Sを便器200の内面201のより近くへ案内することでき、確実に捨て水Sは、内面201を伝って便器200内の封水Hに導かれる。
【0042】
更に、捨て水Sは孔142から傾斜面144にガイドされて便器200の内面201に導かれることから、排水部140において捨て水Sの流れを妨げることなくスムーズに排水することができる。
【0043】
更に、傾斜面144とリブ147の内壁面とを繋ぐ接続部148が凹状に形成されていることから、たとえ、捨て水Sが傾斜面144の幅方向における縁部を越えた場合でも、縁部を乗り越えた捨て水Sは接続部148により更にガイドされて、傾斜面144に戻される、或いは、便器200の内面201へ導かれて排水される。
【0044】
次に、以下、本発明の実施の形態である第2の実施例について説明する。第2の実施例は、図7,図8に示す排水部340以外は、第1の実施例と同じであるため、排水部340以外は説明を省略し、排水部340についてのみ説明する。図7は、排水部340の正面図であり、図8は、排水部340の断面図である。
【0045】
排水部340は、ベースプレート314に形成され便器200内に通じ、捨て水Sを通す孔342からなり、孔342が仕切り343により仕切られている。仕切り343は、メッシュ状に設けられている。
【0046】
上記構成によれば、装置を大きくすることなく、捨て水Sを封水Hに導くことができる。また、捨て水Sがメッシュ状に設けられた仕切り343により分けられ、捨て水Sが細かく分散され封水Hに導かれるため、捨て水Sの飛沫によって人の臀部が濡れたり、異音が生じることを低減することができる。
【0047】
次に、以下、本発明の実施の形態である第3の実施例について説明する。第3の実施例は、図9,図10示す排水部440以外は、第1の実施例と同じであるため、排水部440以外は説明を省略し、排水部440についてのみ説明する。
【0048】
排水部440は、ベースプレート414に形成され便器200内に通じ、捨て水Sを通す孔442からなり、孔442が仕切り443により仕切られている。仕切り443は孔442の中央から放射状に形成され、孔442の中央には上流側に向かって突出した半球状の突部444が形成されている。
【0049】
上記構成によれば、装置を大きくすることなく、捨て水Sを封水Hに導くことができる。また、捨て水Sが半球状の突部444に案内され円周上に散布され、放射状に形成された仕切り443により分けられ、捨て水Sが細かく分散され封水Hに導かれるため、捨て水Sの飛沫によって人の臀部が濡れたり、異音が生じることを低減することができる。
【符号の説明】
【0050】
10・・・洋風便器装置
111・・・洗浄ノズル(洗浄部)
112・・・給水バルブ(水量調節部)
113・・・排水ホース(排水通路)
114・・・ベースプレート
140、340、440・・・排水部
142、342、442・・・孔
143・・・縁部
144・・・傾斜面
145・・・第1傾斜面
146・・・第2傾斜面
200・・・便器
201・・・内面
343、443・・・仕切り
444・・・突部
S・・・捨て水
H・・・封水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器と、前記便器に取り付けられ、洗浄水を放出する洗浄部と、前記洗浄部に適量の水を供給し不要となった捨て水を除く水量調節部と、前記捨て水を前記便器内に捨てる排水通路とが配置され、前記排水通路の末端に位置する排水部が設けられるベースプレートとを備え、
前記排水部は、前記ベースプレートに形成され前記便器内に通じ、前記捨て水を通す孔と、前記孔の縁部に連なり、前記捨て水の下流に向かって前記孔の中心線から徐々に離れ、前記便器の内面方向に傾斜して設けられた傾斜面を有することを特徴とする洋風便器装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記傾斜面は、前記捨て水の流れ方向と前記流れ方向に直角な幅方向とに直角な方向に凹む凹状に形成されたことを特徴とする洋風便器装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれかにおいて、
前記傾斜面は、前記捨て水の流れ方向に向かって、第1の傾斜面と、前記第1傾斜面より傾斜角度の大きい第2傾斜面を有することを特徴とする洋風便器装置。
【請求項4】
便器と、前記便器に取り付けられ、洗浄水を放出する洗浄部と、前記洗浄部に適量の水を供給し不要となった捨て水を除く水量調節部と、前記捨て水を前記便器内に捨てる排水通路とが配置され、前記排水通路の末端に位置する排水部が設けられるベースプレートとを備え、
前記排水部は、前記ベースプレートに形成され前記便器内に通じ、前記捨て水を通す孔からなり、前記孔が仕切りにより仕切られていることを特徴とする洋風便器装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記仕切りがメッシュ状に設けられていることを特徴とする洋風便器装置。
【請求項6】
請求項4において、
前記仕切りの上流側に突出した突部が設けられていることを特徴とする洋風便器装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−63990(P2011−63990A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215441(P2009−215441)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】