洗浄システム
【課題】洗浄作業の効率化を図ることを目的とする。
【解決手段】洗浄システムUであって、前記電力設備に設けられ、前記電力設備内の各電気機器の碍子を洗浄する洗浄装置10と、前記電力設備に設けられた風向計40と、前記風向計を構成し風向に応じて転向する羽車41であって、前記羽車41の表裏両面をそれぞれ異なる色に着色するか、又は羽の表裏両面にそれぞれ異なる柄を付すことにより、表裏両面が識別可能とされた羽車41と、前記電力設備に設けられたカメラCと、前記洗浄装置10と通信可能に接続された遠隔制御装置70と、を備えてなる共に、前記遠隔制御装置70は、前記カメラCから出力される前記羽車41の画像を表示する表示装置73と、前記表示装置73の表示画面を視認したオペレータが前記表示画面中に映る前記羽車41の色、又は柄より決定した前記碍子の洗浄順についての入力を受け付ける入力部75と、前記入力部75に入力された洗浄順に従って前記碍子が洗浄されるように前記洗浄装置10を遠隔操作する制御部71と、を備える。
【解決手段】洗浄システムUであって、前記電力設備に設けられ、前記電力設備内の各電気機器の碍子を洗浄する洗浄装置10と、前記電力設備に設けられた風向計40と、前記風向計を構成し風向に応じて転向する羽車41であって、前記羽車41の表裏両面をそれぞれ異なる色に着色するか、又は羽の表裏両面にそれぞれ異なる柄を付すことにより、表裏両面が識別可能とされた羽車41と、前記電力設備に設けられたカメラCと、前記洗浄装置10と通信可能に接続された遠隔制御装置70と、を備えてなる共に、前記遠隔制御装置70は、前記カメラCから出力される前記羽車41の画像を表示する表示装置73と、前記表示装置73の表示画面を視認したオペレータが前記表示画面中に映る前記羽車41の色、又は柄より決定した前記碍子の洗浄順についての入力を受け付ける入力部75と、前記入力部75に入力された洗浄順に従って前記碍子が洗浄されるように前記洗浄装置10を遠隔操作する制御部71と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変電所などの電力設備に設けられる電気機器の碍子を洗浄する洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から変電所などの電気設備には、碍子に付着した塩塵を洗浄する洗浄装置が設置されている。これら碍子は風下に位置するものから順に洗浄する必要がある。これは、風上側から洗浄すると、塩分濃度の高い洗浄水が風下に位置する碍子に降りかかる恐れがあるからである。このように、碍子の洗浄順は風向によって変える必要があるので、変電所などの電力設備には、風向を調べるために風向計が取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−325689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、洗浄装置は電力センターなどに設置された制御装置にて遠隔操作される構成となっており、現地(変電所)の風向は、変電所に設置された監視カメラで確認されるようになっている。すなわち、電力センターに常駐するオペレータが、監視カメラにより風向計を見て、その画像から現地の風向を判断している。しかし、監視カメラの画像はそれほど鮮明ではないから、一見した程度では風向を判断し難い、と言う問題があり、洗浄作業の効率化を図る上で支障となっていた。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、洗浄作業の効率化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、電力設備に設けられた洗浄装置を遠隔制御装置により遠隔制御して、前記電力設備に設けられた各電気機器の碍子を前記洗浄装置により風下に位置する碍子から順に洗浄する洗浄システムであって、前記電力設備に設けられ、前記電力設備内の各電気機器の碍子を洗浄する洗浄装置と、前記電力設備に設けられた風向計と、前記風向計を構成し風向に応じて転向する羽車であって、前記羽車の表裏両面を異なる色にする、又は前記羽車の表裏両面の柄を異なる柄にすることにより、表裏両面が識別可能とされた羽車と、前記電力設備に設けられたカメラと、前記洗浄装置と通信可能に接続された遠隔制御装置と、を備えてなる共に、前記遠隔制御装置は、前記カメラから出力される前記羽車の画像を表示する表示装置と、前記表示装置の表示画面を視認したオペレータが前記表示画面中に映る前記羽車の色、又は柄に基づいて決定した前記碍子の洗浄順についての入力を受け付ける入力部と、入力された前記洗浄順に従って前記碍子が洗浄されるように前記洗浄装置を遠隔操作する制御部と、を備える。
【0006】
この発明では、羽車の表裏両面をそれぞれ異なる色に着色するか、又は羽の表裏両面にそれぞれ異なる柄を付してあり、現地の風向が変わると、カメラに映る羽車の画像が変わる。すなわち、着色を変えてある場合であれば、風向に応じて、カメラに映る羽車の色が変わるし、また柄を変えてある場合であれば、風向に応じて、カメラに映る羽車の柄が変わる。
【0007】
そのため、表示装置に映る羽車の色のパターン又は柄のパターンと、碍子の洗浄順を予め対応付けておけば、表示装置に映る羽車から碍子の洗浄順を簡単に決定できる。
【0008】
この発明の実施態様として、以下の構成とすることが好ましい。
・前記洗浄装置は前記電気機器の碍子を、予め設定された区画単位で、一括して洗浄する構成であると共に、前記碍子の洗浄順は、前記区画単位で決められている。このようにすれば、電気機器の碍子を効率よく洗浄できる。
【0009】
・前記電力設備には、前記カメラの向きを調整する調整装置が設けられる一方、前記遠隔制御装置の制御部は、前記入力部がプリセット指令を受け付けることを条件に、前記風向計を捉えるように前記カメラの向きを前記調整装置を通じて自動調整する。このようにしておけば、カメラの向きを風向計に簡単に合わすことが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、碍子の洗浄順を簡単に決定することが可能であり、洗浄作業の効率化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】変電所の設備構成を示す構成図(実施形態1)
【図2】変電所を構成する各設備の結線を示す回路図
【図3】遮断器の平面図
【図4】風向計を監視カメラで見た図
【図5】監視カメラに映る羽車の色と、洗浄順の対応関係をまとめた図表
【図6】洗浄システムの電気的構成を示すブロック図
【図7】碍子洗浄処理の流れを示すフローチャート図
【図8】案内画面の表示内容を示す図
【図9】案内画面の表示内容を示す図
【図10】案内画面の表示内容を示す図
【図11】案内画面の表示内容を示す図
【図12】風向計を監視カメラで見た図(実施形態2)
【図13】監視カメラに映る羽部の柄と、洗浄順の対応関係をまとめた図表
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図11によって説明する。
本洗浄システムUは、電力センターの遠隔制御装置70と、各変電所1〜3の洗浄装置10と、各変電所1〜3の監視カメラユニット30から構成されるものであり、電力センターの遠隔制御装置70に対して、各変電所1〜3の洗浄装置10、監視カメラユニット30が電気的に接続されている。そして、各変電所1〜3の洗浄装置10を遠隔制御装置70により遠隔操作して、各変電所1〜3に設けられた電気機器の碍子を洗浄するものである。
【0013】
以下、まず、変電所1〜3の概略的構成を、変電所1を代表して、簡単に説明する。変電所1は発電所から送電線によって送られてきた電気の変成や分配を行うものであって、設備構成は主変圧器(負荷時タップ切替変圧器)LRT、油遮断器OCB、断路器LS、避雷器LA、計器用変圧器PDなどからなる。
【0014】
変電所1は三相2回線の電気を変成するべく主変圧器を2組備えており、残る他の設備についても、基本的には2組づつ設けられている。そして、変電所1の敷地は、図1に示すように第一区画E1と第二区画に左右に2分されており、図1の右手側にあたる第一区画E1に、第一主変圧器LRT1、第一送電線側油遮断器OCB1a、第一変圧器側油遮断器OCB1b、第一断路器LS1、第一避雷器LA1、第一計器用変成器PD1が設置され、図1の左手側にあたる第二区画E2に第二主変圧器LRT2、第二送電線側油遮断器OCB2a、第二変圧器側油遮断器OCB2b、第二断路器LS2、第二避雷器LA2、第二計器用変成器PD2が設置されている。
【0015】
尚、変電所1は、図1に示す上側が引き込み口となっており、図1の中央やや上側の位置に、送電線より分岐する電線を支持するためのトラスTを設けている。そして、第一区画E1側、第二区画E2側とも、トラスTを跨ぐようにして、第一、第二断路器LS1、LS2と、第一、第二送電線側油遮断器OCB1a、OCB2aが配置されている。これら断路器LSと送電線側油遮断器OCBは図2に示すように直列的に接続されている。
【0016】
そして、図1における下側には主変圧器LRT1、LRT2が左右に並んで配置してあり、その手前側(図中上側)には、変圧器側油遮断器OCB1b、OCB2bが配置されている。また、第一避雷器LA1、第二避雷器LA2は、いずれも電線の引き込み経路を避けてあり、第一避雷器LA1は第一区画E1の中央右側に配置され、第二避雷器LA2は第二区画E2の中央左側に配置されている。
【0017】
また、第一区画E1と第二区画E2を区画する境界線L上には第三断路器LS3が設けられている。この第三断路器LS3は図2に示す連結線Fを開閉するものである。
【0018】
また、図1に示すように境界線Lの近傍であって、第一主変圧器LRT1の手前側には、監視カメラユニット30が配置されている。監視カメラユニット30は、回転台31を有する回転装置35と、回転台31に取り付けられた監視カメラC1とから構成されている。回転装置35は、モータ36を動力源として回転台31を角度制御し得る構成となっており、この回転装置35の作動により、監視カメラC1は、水平方向に首を振るように、カメラC1の向き(視野の向き)を変えられる構成となっている。
【0019】
次に、洗浄装置10について説明する。洗浄装置10は電気機器の各碍子表面に付着した塩塵を洗浄するものであり、本実施形態では、主変圧器LRT1、LRT2の各ブッシング(碍子製の筒体)、油遮断器OCB1a、OCB1b、OCB2a、OCB2bの各ブッシング、避雷器LA1、LA2の各ブッシング、計器用変圧器PD1、PD2の各ブッシングを洗浄対象としている。
【0020】
洗浄装置10は図1に示すように、洗浄水を貯水する貯水タンク11、貯水タンクの洗浄水を送出するポンプ13、洗浄水の流路となる配水管14、15、17、洗浄水を噴射する噴射ノズル19を主体に構成されている。
【0021】
貯水タンク11及びポンプ13は、変電所1の構内であって、引き込み口側にあたる図1の上部の紙面左手側に設けられている。そして、ポンプ13には配水管14が連なっている。係る配水管14は2分岐しており、分岐した一方の第一配水管15は、第一区画E1内を図1に示す上側から下側に延びている。
【0022】
第一区画E1内には、洗浄対象設備として第一主変圧器LRT1、第一送電線側油遮断器OCB1a、第一変圧器側油遮断器OCB1b、第一避雷器LA1、第一計器用変圧器PD1の5つの設備がある。そのため、第一配水管15には、5つの洗浄対象設備に対応して相応数(4つ)の分岐管16が分岐接続してある。そして、各分岐管16には噴射ノズル19が取り付けられており、ノズル先端から洗浄水を噴霧するようになっている。このようにすることで、第一区画E1内に含まれる各洗浄対象設備のブッシングを洗浄水によって洗浄できる構成となっている。
【0023】
尚、図1では分岐管16を簡略化して示してあるが、分岐管16は図3に示すように洗浄対象設備(ここでは、油遮断器OCB)の周囲を取り囲むように格子状に張り巡らされている。そして、各ブッシングに対応してその前後両側に一対の噴射ノズル19が設けられている。例えば、図3に示すブッシングB1であれば、その前後両側に噴射ノズル19a、19bが向かい合うようにして設けられている。また、ブッシングB2であれば、その前後両側に噴射ノズル19c、19dが向かい合うようにして設けられている。このようにすることで、2つの噴射ノズルから噴霧される洗浄水により、各ブッシングBをその前後両側から洗浄できる構成となっている。
【0024】
一方、分岐した他方の第二配水管17は、第二区画E2内を図1に示す上側から下側に延びている。そして、第一区画E1内と同様に第二区画E2内には、洗浄対象設備として第二主変圧器LRT2、第二送電線側油遮断器OCB2a、第二変圧器側油遮断器OCB2b、第二避雷器LA2、第二計器用変圧器PD2の5つの設備がある。そのため、第二配水管17にも、5つの洗浄対象設備に対応して相応数(5つ)の分岐管18が分岐接続してある。そして、各分岐管18には噴射ノズル19が取り付けられており、ノズル先端から洗浄水を噴霧するようになっている。このようにすることで、第二区画E2内に含まれる5つの洗浄対象設備の各ブッシングBを洗浄水によって洗浄できる構成となっている。
【0025】
このように、配水管には第一区画E1に対応する第一配水管15と、第二区画E2に対応する第二配水管17の2系統が設けられている。そして、第一配水管15と第二配水管17には、図1に示すように、第一区画弁25と第二区画弁27がそれぞれ設けられている。このような構成とすることで、区画弁25、27の切換操作により、第一区画E1側から先に洗浄したり、第二区画E2側から先に洗浄したり、洗浄順を切り換えられる。尚、両区画弁25、27は常閉式の電磁弁であり、後述する弁制御装置50から指令がない限り、通常は弁を閉止する設定となっている。
【0026】
さて、上記した洗浄装置10による洗浄対象設備の洗浄は区画単位で行われ、かつ洗浄順は、風下側に位置する区画側から先に行うことが好ましい。これは、仮に、風上側から洗浄すると、塩分濃度の高い洗浄水が風下に位置する区画側の碍子に降りかかる恐れがあるからである。
【0027】
上記したように、洗浄順は風向によって変える必要があるので、当変電所1には、風向を調べるために風向計40が取り付けられている。具体的には、図1に示すように、第一区画E1と第二区画E2との境界となる境界線L上にあって、図1における下側の位置に設置してある。
【0028】
風向計40は、図4に示すように矢部42と羽部43からなる羽車41を、棒状をなす軸部45の先端に軸止させたものであり、固定具47によって、変電所鉄構などの構造物Dに取り付けられている。係る風向計40は、図4に示すように、矢部42の先が風上を指すように風向に応じて向きを変える。
【0029】
そして、この風向計40の羽車41は、表裏両面のうち、一方側の面(以下、表面41A)を油性の塗料により「赤色」に着色してあるのに対して、他方側の面(以下、裏面41B)を油性の塗料により「青色」に着色してある。そのため、図4の(a)に示すように、図中の右手側が風上となる時(第一区画E1側が風下となる時)には、監視カメラC1に、羽車41の表面41A側(「赤色」に着色した面)が映る状態となる。一方、図4中の(b)に示すように図中の左手側が風上となる時(第二区画E2が風下となる時)には、監視カメラC1に、羽車41の裏面41B側(「青色」に着色した面)が映る状態となる。
【0030】
このように、羽車41の両面41A、41Bの色を変えておくことで、後に説明するように、洗浄対象設備の洗浄順を、監視カメラCに映る羽車41の色に基づいて簡単に決めることが可能となる。尚、監視カメラCとは、各変電所1〜3に設けられる各監視カメラC1〜C3の総称を意味する。
【0031】
次に、図6を参照して、洗浄システムUの電気的構成を説明する。洗浄システムUは、電力センターに設置された遠隔制御装置70と、各変電所1〜3の各洗浄装置10と、各変電所1〜3の各監視カメラユニット30とから構成されており、遠隔制御装置70により、各変電所1〜3に設置された洗浄装置10を集中制御する構成となっている。尚、図6では、遠隔制御装置70により制御される変電所1〜3のうち、2つだけを代表させて示してある。
【0032】
変電所1〜3の洗浄装置10は弁制御装置50を備えている。この弁制御装置50は、第一区画弁25、第二区画弁27に制御信号Sを与えることで、第一区画弁25、第二区画弁27の開閉を個々に制御する機能を担う。
【0033】
遠隔制御装置70は、制御部71と、表示装置73と、入力部75と、記憶装置77と、通信部80とを備えている。通信部80は各変電所1〜3に対応して専用に設けられており、各通信部80にはそれに対応する変電所の洗浄装置10を構成する弁制御装置50、監視カメラCの出力回路、回転装置35などが電気的に連なっている(言い換れば、通信可能に接続されている)。
【0034】
これにより、各変電所1〜3の各監視カメラCの画像が、各通信部80を通じて遠隔制御装置70側に取り込まれると共に、遠隔制御装置70側から各通信部80を通じて各変電所1〜3の各弁制御装置50に制御指令を与えることで、各変電所1〜3の洗浄装置10を遠隔制御できる。また、各通信部80を通じて各変電所1〜3の回転装置35を制御することで、監視カメラCの向きについても遠隔制御出来る。
【0035】
入力部75は、キーボード、マウスなどのユーザインターフェースより構成されている。この入力部75を通じて、電力センターのオペレータは、以下の入力操作を行うことが出来る。
【0036】
(1)洗浄対象となる変電所の番号の選択
(2)洗浄順の指定(正順、逆順)
(3)プリセット指令
(4)洗浄回数の指定
(5)運転実行、運転停止の指令
【0037】
表示装置73には、オペレータの入力操作を案内する案内画面、各変電所1〜3の監視カメラCから転送された画像が表示される構成となっている。記憶装置77には、各変電所1〜3の各洗浄装置10を制御するための洗浄プログラムや、後述する監視カメラCのプリセットに必要となるデータなどが記憶されている。
【0038】
制御部71は記憶装置77に記憶された洗浄プログラムを実行して表示装置73の表示制御を行う機能、回転装置35を制御して監視カメラCの向きを遠隔制御する機能、及び各変電所1〜3の各洗浄装置10を各弁制御装置50を通じて遠隔制御する機能を担う。
【0039】
次に、図7のフローチャート図を参照して動作説明を行う。まず、碍子の洗浄作業を行うには、電力センターに設置された遠隔制御装置70の電源を投入して、装置を起動させる必要がある。
【0040】
遠隔制御装置70が起動されると、制御部71による表示制御が開始され、表示装置73に、図8に示す変電所選択画面が表示される。この変電所選択画面には、遠隔制御装置70の制御対象となる各変電所1〜3の名称が表示される。
【0041】
名称が表示されたら、オペレータは入力部75(マウス)を操作して、図8の変電所選択画面から洗浄対象となる変電所の選択を行ってやればよい(S10)。尚、ここでは、オペレータにより、変電所1が選択されたものとして説明を続ける。
【0042】
図8に示す変電所選択画面で、変電所1が選択されると、表示装置73の画面は、図8に示す変電所選択画面から図9に示す設定/指令画面に切り変わる。この設定/指令画面には、監視カメラ選択ボックス91、洗浄順選択ボックス92、洗浄回数選択ボックス93が表示され、更に、その右手側に指令ボックス94が表示される構成となっている。
【0043】
図9に示す設定/指令画面が表示されたら、オペレータは、入力部75(マウス)を操作して、S10にて選択した変電所の監視カメラCを、監視カメラ選択ボックス91から選択してやればよい。ここでは、変電所1が選択されているから、オペレータにより、監視カメラ選択ボックス91から、変電所1に対応する監視カメラC1が選択されることとなる(S20)。
【0044】
監視カメラCの選択が行われると、表示装置73の画面は図9の設定/指令画面から図10の監視カメラ表示画面に、一旦切り変わる。この監視カメラ画面のうち、画面中の右手側は表示領域に割り当てられており、表示ウインドウ96中に、S20にて選択された監視カメラCの画像が表示されるようになっている。これにより、ここでは、図10中の表示ウインドウ96中に、変電所1の監視カメラC1の画像が表示されることとなる。
【0045】
そして、図10の監視カメラ表示画面のうち、左手側は操作領域に割り当てられており、3つのプリセット番号を表示した3つのボタンからなるプリセットボタン97が表示されるようになっている。
【0046】
選択状態にある監視カメラCに対応する「プリセット番号」のボタンを操作すると、入力部75がそのボタン操作(すなわち、プリセット指令)を受け付ける。すると、遠隔制御装置70の制御部71から監視カメラユニット30に対して、通信部80を通じて制御信号が与えられる。この制御信号には、監視カメラCが風向計40を捉えるように、回転台31の位置(角度)を調整する位置情報が含まれている。
【0047】
このようにすることで、プリセットボタン97を操作すると、監視カメラユニット30の回転装置35が作動して、回転台31が位置調整される結果、監視カメラCが風向計40を捉え、図11に示すように、表示ウインドウ96中に、変電所に設置された風向計40が表示されることとなる。
【0048】
尚、ここでは、変電所1番が選択されているから、オペレータは、プリセットボタン97中の1番のボタンを、入力部75によってボタン操作してやればよく、操作後には、表示ウインドウ96中に、変電所1に設置された風向計40の画像が表示されることとなる。
【0049】
また、図11に示すように、プリセットボタン97の上側には、4つの矢印キーからなるカメラ操作ボタン98が表示されるようになっている。このカメラ操作ボタン98は、選択状態にある監視カメラCの向きを微調整するものであり、必要に応じて矢印キーを操作することで、その方向にカメラの向きを微調整出来る。
【0050】
かくして、表示ウインドウ96内に、変電所(ここでは、変電所1)の風向計40が映し出されたら、その画像に基づいて、オペレータは碍子の洗浄順を決定しなければならない。さて、ここで、先に説明したように、風向計40の羽車41は、表面41A側を「赤色」に着色してあるのに対して、裏面41B側を「青色」に着色してある。そのため、表示ウインドウ96中には、現地の風向に応じて、風向計40の表面側(すなわち、赤色)、裏面(すなわち、青色)のいずれかが、表示されることとなる。
【0051】
一方、本実施形態では、図5に示すように、遠隔制御装置70の表示装置73の表示画面に表示された羽車41の色と、碍子の洗浄順が予め対応表としてまとめられており、表示された羽車41の色が「赤色」である場合(第一区画側が風下となる風向の場合)には、洗浄順として「正順」を選択し、羽車41の色が「青色」である場合(第二区画側が風下となる風向の場合)には、洗浄順として「逆順」を選択するように決めてある。
【0052】
尚、「正順」とは第一区画E1の洗浄対象設備を先に洗浄し、その後第二区画E2の洗浄対象設備を洗浄する順番を意味し、「逆順」とは第二区画E2の洗浄対象設備を先に洗浄し、その後第一区画E1の洗浄対象設備を洗浄する順番を意味する。
【0053】
そのため、例えば、図11に示すように表示ウインドウ96中に表示された羽車41の色が「赤色」である場合には、オペレータは、対応表から洗浄順は「正順」であると簡単に決定でき、次の手順に従って、遠隔制御装置70にて「正順」の選択操作を行ってやればよい。
【0054】
図11に示す監視カメラ画面中に、表示される戻るのボタン99を操作すると、表示装置73の画面は、図11に示す監視カメラ画面から図9に示す設定/指令画面に切り換わる。従って、後は、洗浄順選択ボックス92中の「正順」ボタンを入力部75(マウス)を使ってボタン操作してやればよく、これにより、入力部75がボタン操作を受け付け、洗浄順が「正順」に設定される。
【0055】
そして、洗浄順が設定されたら、次に、洗浄順選択ボックス92の右横に表示される回数選択ボックス93の中から「一巡」、「繰返」のボタンのいずれかを操作して、洗浄回数を設定してやればよい。尚、「一巡」とは、洗浄対象となる碍子を1回だけ洗浄するモードであり、「繰返」とは、洗浄対象となる碍子を、繰り返し(例えば、5回)洗浄するモードである。尚、ここでは、洗浄回数として、「一巡」が選択されたものとする。
【0056】
後は、図9に示す設定/指令画面中に表示される指令ボックス94の中の「運転実行」のボタンを操作すれば、選択された変電所にて、碍子の洗浄作業が、設定された条件(「洗浄順」、「洗浄回数」)に従って自動的に行われる(S70)。
【0057】
ここでは、洗浄対象として変電所1が選択されているから、運転実行のボタンが操作されると、遠隔制御装置70の制御部71から変電所1の弁制御装置50に対して、洗浄の開始を指示する洗浄作業実行指令が与えられる。また、この指令と共に、遠隔制御装置70の制御部71から変電所1の弁制御装置50に対してS40、S50の作業により設定された洗浄条件の内容が合わせて通知される。
【0058】
そして、変電所1の弁制御装置50は、遠隔制御装置70の制御部71から洗浄作業実行指令を受けると、第一区画弁25、第二区画弁27を洗浄条件に従って制御し、洗浄作業を行う。
【0059】
ここでは、S40、S50の設定作業により、洗浄条件が次のように設定されている。
(a)洗浄順は「正順(第一区画を先に、第二区画を後に洗浄)」である。
(b)洗浄回数は「一巡」である。
【0060】
そのため、弁制御装置50はまず、第一区画弁25に「弁」を開ける制御信号S1を与える。これにより、ポンプ13により圧送された洗浄水が第一配水管15、各分岐管16を通って、各噴射ノズル19より一斉に噴霧される。そのため、第一区画E1内に含まれる各洗浄対象設備のブッシング(碍子)に洗浄水が一斉にかけられ、各ブッシングは一斉洗浄される。
【0061】
そして、洗浄を開始してから一定時間が経過すると、弁制御装置50は第一区画弁25に「弁」を閉じる制御信号を与える。これにより、第一区画弁25が開放状態から閉止状態に切り換わり、洗浄水の噴霧が停止する。これにて、第一区画E1内に含まれる各洗浄対象設備のブッシングの洗浄作業が完了する。
【0062】
次に、弁制御装置50は、第二区画弁27に「弁」を開ける制御信号S2を与える。これにより、ポンプ13により圧送された洗浄水が、今度は、第二配水管17、各分岐管18を通って各噴射ノズル19より一斉に噴霧される。そのため、第二区画E2内に含まれる各洗浄対象設備のブッシング(碍子)に洗浄水が一斉にかけられ、各ブッシングは一斉洗浄される。
【0063】
そして、洗浄を開始してから、一定時間が経過すると、弁制御装置50は、第二区画弁27に「弁」を閉じる制御信号を与える。これにより、第二区画弁27が開放状態から閉止状態に切り換わり、洗浄水の噴霧が停止する。これにて、第二区画E2内に含まれる各洗浄対象設備のブッシングの洗浄作業が完了する。これにて、洗浄作業が一巡することとなり、変電所1について洗浄作業は完了する。
【0064】
その後、残る変電所2、3について洗浄作業を行う場合には、S10〜S70の各ステップを改めて行ってやればよい。
【0065】
次に、本洗浄システムUの効果を説明する。碍子(ブッシング)の洗浄は風下側から順に行う必要がある。そのため、各変電所1〜3の洗浄装置10を遠隔操作する場合、監視カメラCから転送されてくる風向計40の画像に基づいて、現地の風向を判断する必要がある。しかし、監視カメラCの画像はそれほど鮮明でなく、しかも画像中には、風向計40の他に周囲の建物、景色なども当然写り込むので、画像から羽車41の向き、すなわち風向を特定し難いという事情がある。
【0066】
この点、本洗浄システムUによれば、風向計40の羽車41の色を表裏で変えてあり、変電所1〜3の風向を、表示装置73の表示画面に映る羽車41の色によって捉えることが出来る。しかも、図5に示すように、表示装置73の表示画面に表示された羽車41の色と碍子の洗浄順との関係が、予め対応表としてまとめられている。従って、オペレータは、監視カメラC1の画像から、羽車41の色が「赤」か「青」のいずれであるかさえ判別できれば、あとは図5の対応表を参照することで、変電所1〜3の碍子の洗浄順を簡単に決定できる。従って、洗浄条件の入力作業を短時間で行うことが可能となり、入力作業を含む洗浄作業全体の効率化を図ることが可能となる。
【0067】
また、本実施形態では、風向確認用として専用のカメラを設けておらず、変電所1〜3内を監視する監視カメラCを用いて、風向計40を確認するようにしている。そのため、風向を調べるとき、監視カメラCは必ずしも風向計40の方を向いているとは限らず、基本的には、監視カメラCの向きを風向計40に合わせる作業が必須となる。この点、本洗浄システムUでは、風向計40を捉えるように、監視カメラCの向きを自動調整するプリセット機能が設定されている。そのため、監視カメラCの向きを、手間なく簡単に調整できるので、この点も、効率化を図る上で効果的である。
【0068】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図12、図13によって説明する。
実施形態1では、風向計40の羽車41の表面41Aを「赤色」に着色し、裏面41Bを「青色」に着色し、羽車41の表裏を色で識別させる例を示した。これに対して、実施形態2では、羽車41の表裏を柄により識別するものである。
【0069】
具体的に説明すると、図12の(a)に示すように羽部43の表面43Aに「縦縞」の柄を油性の塗料(黒)により付し、図12の(b)に示すように羽部43の裏面43Bに「横縞」の柄を油性の塗料(黒)により付してある。
【0070】
そのため、表示ウインドウ96中には、現地の風向に応じて、風向計40の表面側(すなわち、縦縞)、裏面(すなわち、横縞)のいずれかが、表示されることとなる。
【0071】
一方、本実施形態では、図13に示すように、表示画面に表示された羽部43の柄と、碍子の洗浄順が予め対応表としてまとめられており、表示された柄が「縦縞」である場合には、洗浄順として「正順」を選択し、表示された柄が「横縞」である場合には、洗浄順として「逆順」を選択するように決めてある。
【0072】
そのため、オペレータは、表示装置73の表示画面から、羽部43の柄が「縦縞」か「横縞」かのいずれであるかさえ読み取れば、あとは、図13に示す対応表から碍子の洗浄順を簡単に決定でき、実施形態1と同様の効果を得ることが可能となる。
【0073】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0074】
(1)実施形態1では、羽車41の両面41A、421Bで色を異ならせたパターンを示し、実施形態2では、羽車の両面41A、421Bで柄を異ならせたパターンを示した。本発明は、監視カメラCに映る羽車が、表面側か裏面側か目視で認識できるようになっていればよく、実施形態1、実施形態2で例示したパターン以外にも、例えば、色と柄を組み合わせるなど種々のパターン変更が可能である。
【0075】
(2)実施形態1では、羽車41の両面41A、421Bの配色として「赤」、「青」のパターンを例示したが、識別し易い色であれば、「赤」、「青」以外の色であっても、無論よい。
(3)実施形態1では、洗浄順を、区画単位で定めたものを例示したが、碍子が風下から洗浄されるものであればよく、例えば、洗浄順を電気機器単位で決定することも可能である。
【符号の説明】
【0076】
1…変電所(本発明の「電力設備」に相当)
2…変電所(本発明の「電力設備」に相当)
10…洗浄装置
25…第一区画弁
26…第二区画弁
30…監視カメラユニット
35…回転装置(本発明の「調整装置」)
40…風向計
41…羽車
41A…表面
41B…裏面
42…矢部
43…羽部
50…弁制御装置
70…遠隔制御装置
73…表示装置
75…入力部
81、82…通信部
C…監視カメラ(本発明の「カメラ」に相当)
E1…第一区画
E2…第二区画
【技術分野】
【0001】
本発明は、変電所などの電力設備に設けられる電気機器の碍子を洗浄する洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から変電所などの電気設備には、碍子に付着した塩塵を洗浄する洗浄装置が設置されている。これら碍子は風下に位置するものから順に洗浄する必要がある。これは、風上側から洗浄すると、塩分濃度の高い洗浄水が風下に位置する碍子に降りかかる恐れがあるからである。このように、碍子の洗浄順は風向によって変える必要があるので、変電所などの電力設備には、風向を調べるために風向計が取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−325689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、洗浄装置は電力センターなどに設置された制御装置にて遠隔操作される構成となっており、現地(変電所)の風向は、変電所に設置された監視カメラで確認されるようになっている。すなわち、電力センターに常駐するオペレータが、監視カメラにより風向計を見て、その画像から現地の風向を判断している。しかし、監視カメラの画像はそれほど鮮明ではないから、一見した程度では風向を判断し難い、と言う問題があり、洗浄作業の効率化を図る上で支障となっていた。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、洗浄作業の効率化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、電力設備に設けられた洗浄装置を遠隔制御装置により遠隔制御して、前記電力設備に設けられた各電気機器の碍子を前記洗浄装置により風下に位置する碍子から順に洗浄する洗浄システムであって、前記電力設備に設けられ、前記電力設備内の各電気機器の碍子を洗浄する洗浄装置と、前記電力設備に設けられた風向計と、前記風向計を構成し風向に応じて転向する羽車であって、前記羽車の表裏両面を異なる色にする、又は前記羽車の表裏両面の柄を異なる柄にすることにより、表裏両面が識別可能とされた羽車と、前記電力設備に設けられたカメラと、前記洗浄装置と通信可能に接続された遠隔制御装置と、を備えてなる共に、前記遠隔制御装置は、前記カメラから出力される前記羽車の画像を表示する表示装置と、前記表示装置の表示画面を視認したオペレータが前記表示画面中に映る前記羽車の色、又は柄に基づいて決定した前記碍子の洗浄順についての入力を受け付ける入力部と、入力された前記洗浄順に従って前記碍子が洗浄されるように前記洗浄装置を遠隔操作する制御部と、を備える。
【0006】
この発明では、羽車の表裏両面をそれぞれ異なる色に着色するか、又は羽の表裏両面にそれぞれ異なる柄を付してあり、現地の風向が変わると、カメラに映る羽車の画像が変わる。すなわち、着色を変えてある場合であれば、風向に応じて、カメラに映る羽車の色が変わるし、また柄を変えてある場合であれば、風向に応じて、カメラに映る羽車の柄が変わる。
【0007】
そのため、表示装置に映る羽車の色のパターン又は柄のパターンと、碍子の洗浄順を予め対応付けておけば、表示装置に映る羽車から碍子の洗浄順を簡単に決定できる。
【0008】
この発明の実施態様として、以下の構成とすることが好ましい。
・前記洗浄装置は前記電気機器の碍子を、予め設定された区画単位で、一括して洗浄する構成であると共に、前記碍子の洗浄順は、前記区画単位で決められている。このようにすれば、電気機器の碍子を効率よく洗浄できる。
【0009】
・前記電力設備には、前記カメラの向きを調整する調整装置が設けられる一方、前記遠隔制御装置の制御部は、前記入力部がプリセット指令を受け付けることを条件に、前記風向計を捉えるように前記カメラの向きを前記調整装置を通じて自動調整する。このようにしておけば、カメラの向きを風向計に簡単に合わすことが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、碍子の洗浄順を簡単に決定することが可能であり、洗浄作業の効率化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】変電所の設備構成を示す構成図(実施形態1)
【図2】変電所を構成する各設備の結線を示す回路図
【図3】遮断器の平面図
【図4】風向計を監視カメラで見た図
【図5】監視カメラに映る羽車の色と、洗浄順の対応関係をまとめた図表
【図6】洗浄システムの電気的構成を示すブロック図
【図7】碍子洗浄処理の流れを示すフローチャート図
【図8】案内画面の表示内容を示す図
【図9】案内画面の表示内容を示す図
【図10】案内画面の表示内容を示す図
【図11】案内画面の表示内容を示す図
【図12】風向計を監視カメラで見た図(実施形態2)
【図13】監視カメラに映る羽部の柄と、洗浄順の対応関係をまとめた図表
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図11によって説明する。
本洗浄システムUは、電力センターの遠隔制御装置70と、各変電所1〜3の洗浄装置10と、各変電所1〜3の監視カメラユニット30から構成されるものであり、電力センターの遠隔制御装置70に対して、各変電所1〜3の洗浄装置10、監視カメラユニット30が電気的に接続されている。そして、各変電所1〜3の洗浄装置10を遠隔制御装置70により遠隔操作して、各変電所1〜3に設けられた電気機器の碍子を洗浄するものである。
【0013】
以下、まず、変電所1〜3の概略的構成を、変電所1を代表して、簡単に説明する。変電所1は発電所から送電線によって送られてきた電気の変成や分配を行うものであって、設備構成は主変圧器(負荷時タップ切替変圧器)LRT、油遮断器OCB、断路器LS、避雷器LA、計器用変圧器PDなどからなる。
【0014】
変電所1は三相2回線の電気を変成するべく主変圧器を2組備えており、残る他の設備についても、基本的には2組づつ設けられている。そして、変電所1の敷地は、図1に示すように第一区画E1と第二区画に左右に2分されており、図1の右手側にあたる第一区画E1に、第一主変圧器LRT1、第一送電線側油遮断器OCB1a、第一変圧器側油遮断器OCB1b、第一断路器LS1、第一避雷器LA1、第一計器用変成器PD1が設置され、図1の左手側にあたる第二区画E2に第二主変圧器LRT2、第二送電線側油遮断器OCB2a、第二変圧器側油遮断器OCB2b、第二断路器LS2、第二避雷器LA2、第二計器用変成器PD2が設置されている。
【0015】
尚、変電所1は、図1に示す上側が引き込み口となっており、図1の中央やや上側の位置に、送電線より分岐する電線を支持するためのトラスTを設けている。そして、第一区画E1側、第二区画E2側とも、トラスTを跨ぐようにして、第一、第二断路器LS1、LS2と、第一、第二送電線側油遮断器OCB1a、OCB2aが配置されている。これら断路器LSと送電線側油遮断器OCBは図2に示すように直列的に接続されている。
【0016】
そして、図1における下側には主変圧器LRT1、LRT2が左右に並んで配置してあり、その手前側(図中上側)には、変圧器側油遮断器OCB1b、OCB2bが配置されている。また、第一避雷器LA1、第二避雷器LA2は、いずれも電線の引き込み経路を避けてあり、第一避雷器LA1は第一区画E1の中央右側に配置され、第二避雷器LA2は第二区画E2の中央左側に配置されている。
【0017】
また、第一区画E1と第二区画E2を区画する境界線L上には第三断路器LS3が設けられている。この第三断路器LS3は図2に示す連結線Fを開閉するものである。
【0018】
また、図1に示すように境界線Lの近傍であって、第一主変圧器LRT1の手前側には、監視カメラユニット30が配置されている。監視カメラユニット30は、回転台31を有する回転装置35と、回転台31に取り付けられた監視カメラC1とから構成されている。回転装置35は、モータ36を動力源として回転台31を角度制御し得る構成となっており、この回転装置35の作動により、監視カメラC1は、水平方向に首を振るように、カメラC1の向き(視野の向き)を変えられる構成となっている。
【0019】
次に、洗浄装置10について説明する。洗浄装置10は電気機器の各碍子表面に付着した塩塵を洗浄するものであり、本実施形態では、主変圧器LRT1、LRT2の各ブッシング(碍子製の筒体)、油遮断器OCB1a、OCB1b、OCB2a、OCB2bの各ブッシング、避雷器LA1、LA2の各ブッシング、計器用変圧器PD1、PD2の各ブッシングを洗浄対象としている。
【0020】
洗浄装置10は図1に示すように、洗浄水を貯水する貯水タンク11、貯水タンクの洗浄水を送出するポンプ13、洗浄水の流路となる配水管14、15、17、洗浄水を噴射する噴射ノズル19を主体に構成されている。
【0021】
貯水タンク11及びポンプ13は、変電所1の構内であって、引き込み口側にあたる図1の上部の紙面左手側に設けられている。そして、ポンプ13には配水管14が連なっている。係る配水管14は2分岐しており、分岐した一方の第一配水管15は、第一区画E1内を図1に示す上側から下側に延びている。
【0022】
第一区画E1内には、洗浄対象設備として第一主変圧器LRT1、第一送電線側油遮断器OCB1a、第一変圧器側油遮断器OCB1b、第一避雷器LA1、第一計器用変圧器PD1の5つの設備がある。そのため、第一配水管15には、5つの洗浄対象設備に対応して相応数(4つ)の分岐管16が分岐接続してある。そして、各分岐管16には噴射ノズル19が取り付けられており、ノズル先端から洗浄水を噴霧するようになっている。このようにすることで、第一区画E1内に含まれる各洗浄対象設備のブッシングを洗浄水によって洗浄できる構成となっている。
【0023】
尚、図1では分岐管16を簡略化して示してあるが、分岐管16は図3に示すように洗浄対象設備(ここでは、油遮断器OCB)の周囲を取り囲むように格子状に張り巡らされている。そして、各ブッシングに対応してその前後両側に一対の噴射ノズル19が設けられている。例えば、図3に示すブッシングB1であれば、その前後両側に噴射ノズル19a、19bが向かい合うようにして設けられている。また、ブッシングB2であれば、その前後両側に噴射ノズル19c、19dが向かい合うようにして設けられている。このようにすることで、2つの噴射ノズルから噴霧される洗浄水により、各ブッシングBをその前後両側から洗浄できる構成となっている。
【0024】
一方、分岐した他方の第二配水管17は、第二区画E2内を図1に示す上側から下側に延びている。そして、第一区画E1内と同様に第二区画E2内には、洗浄対象設備として第二主変圧器LRT2、第二送電線側油遮断器OCB2a、第二変圧器側油遮断器OCB2b、第二避雷器LA2、第二計器用変圧器PD2の5つの設備がある。そのため、第二配水管17にも、5つの洗浄対象設備に対応して相応数(5つ)の分岐管18が分岐接続してある。そして、各分岐管18には噴射ノズル19が取り付けられており、ノズル先端から洗浄水を噴霧するようになっている。このようにすることで、第二区画E2内に含まれる5つの洗浄対象設備の各ブッシングBを洗浄水によって洗浄できる構成となっている。
【0025】
このように、配水管には第一区画E1に対応する第一配水管15と、第二区画E2に対応する第二配水管17の2系統が設けられている。そして、第一配水管15と第二配水管17には、図1に示すように、第一区画弁25と第二区画弁27がそれぞれ設けられている。このような構成とすることで、区画弁25、27の切換操作により、第一区画E1側から先に洗浄したり、第二区画E2側から先に洗浄したり、洗浄順を切り換えられる。尚、両区画弁25、27は常閉式の電磁弁であり、後述する弁制御装置50から指令がない限り、通常は弁を閉止する設定となっている。
【0026】
さて、上記した洗浄装置10による洗浄対象設備の洗浄は区画単位で行われ、かつ洗浄順は、風下側に位置する区画側から先に行うことが好ましい。これは、仮に、風上側から洗浄すると、塩分濃度の高い洗浄水が風下に位置する区画側の碍子に降りかかる恐れがあるからである。
【0027】
上記したように、洗浄順は風向によって変える必要があるので、当変電所1には、風向を調べるために風向計40が取り付けられている。具体的には、図1に示すように、第一区画E1と第二区画E2との境界となる境界線L上にあって、図1における下側の位置に設置してある。
【0028】
風向計40は、図4に示すように矢部42と羽部43からなる羽車41を、棒状をなす軸部45の先端に軸止させたものであり、固定具47によって、変電所鉄構などの構造物Dに取り付けられている。係る風向計40は、図4に示すように、矢部42の先が風上を指すように風向に応じて向きを変える。
【0029】
そして、この風向計40の羽車41は、表裏両面のうち、一方側の面(以下、表面41A)を油性の塗料により「赤色」に着色してあるのに対して、他方側の面(以下、裏面41B)を油性の塗料により「青色」に着色してある。そのため、図4の(a)に示すように、図中の右手側が風上となる時(第一区画E1側が風下となる時)には、監視カメラC1に、羽車41の表面41A側(「赤色」に着色した面)が映る状態となる。一方、図4中の(b)に示すように図中の左手側が風上となる時(第二区画E2が風下となる時)には、監視カメラC1に、羽車41の裏面41B側(「青色」に着色した面)が映る状態となる。
【0030】
このように、羽車41の両面41A、41Bの色を変えておくことで、後に説明するように、洗浄対象設備の洗浄順を、監視カメラCに映る羽車41の色に基づいて簡単に決めることが可能となる。尚、監視カメラCとは、各変電所1〜3に設けられる各監視カメラC1〜C3の総称を意味する。
【0031】
次に、図6を参照して、洗浄システムUの電気的構成を説明する。洗浄システムUは、電力センターに設置された遠隔制御装置70と、各変電所1〜3の各洗浄装置10と、各変電所1〜3の各監視カメラユニット30とから構成されており、遠隔制御装置70により、各変電所1〜3に設置された洗浄装置10を集中制御する構成となっている。尚、図6では、遠隔制御装置70により制御される変電所1〜3のうち、2つだけを代表させて示してある。
【0032】
変電所1〜3の洗浄装置10は弁制御装置50を備えている。この弁制御装置50は、第一区画弁25、第二区画弁27に制御信号Sを与えることで、第一区画弁25、第二区画弁27の開閉を個々に制御する機能を担う。
【0033】
遠隔制御装置70は、制御部71と、表示装置73と、入力部75と、記憶装置77と、通信部80とを備えている。通信部80は各変電所1〜3に対応して専用に設けられており、各通信部80にはそれに対応する変電所の洗浄装置10を構成する弁制御装置50、監視カメラCの出力回路、回転装置35などが電気的に連なっている(言い換れば、通信可能に接続されている)。
【0034】
これにより、各変電所1〜3の各監視カメラCの画像が、各通信部80を通じて遠隔制御装置70側に取り込まれると共に、遠隔制御装置70側から各通信部80を通じて各変電所1〜3の各弁制御装置50に制御指令を与えることで、各変電所1〜3の洗浄装置10を遠隔制御できる。また、各通信部80を通じて各変電所1〜3の回転装置35を制御することで、監視カメラCの向きについても遠隔制御出来る。
【0035】
入力部75は、キーボード、マウスなどのユーザインターフェースより構成されている。この入力部75を通じて、電力センターのオペレータは、以下の入力操作を行うことが出来る。
【0036】
(1)洗浄対象となる変電所の番号の選択
(2)洗浄順の指定(正順、逆順)
(3)プリセット指令
(4)洗浄回数の指定
(5)運転実行、運転停止の指令
【0037】
表示装置73には、オペレータの入力操作を案内する案内画面、各変電所1〜3の監視カメラCから転送された画像が表示される構成となっている。記憶装置77には、各変電所1〜3の各洗浄装置10を制御するための洗浄プログラムや、後述する監視カメラCのプリセットに必要となるデータなどが記憶されている。
【0038】
制御部71は記憶装置77に記憶された洗浄プログラムを実行して表示装置73の表示制御を行う機能、回転装置35を制御して監視カメラCの向きを遠隔制御する機能、及び各変電所1〜3の各洗浄装置10を各弁制御装置50を通じて遠隔制御する機能を担う。
【0039】
次に、図7のフローチャート図を参照して動作説明を行う。まず、碍子の洗浄作業を行うには、電力センターに設置された遠隔制御装置70の電源を投入して、装置を起動させる必要がある。
【0040】
遠隔制御装置70が起動されると、制御部71による表示制御が開始され、表示装置73に、図8に示す変電所選択画面が表示される。この変電所選択画面には、遠隔制御装置70の制御対象となる各変電所1〜3の名称が表示される。
【0041】
名称が表示されたら、オペレータは入力部75(マウス)を操作して、図8の変電所選択画面から洗浄対象となる変電所の選択を行ってやればよい(S10)。尚、ここでは、オペレータにより、変電所1が選択されたものとして説明を続ける。
【0042】
図8に示す変電所選択画面で、変電所1が選択されると、表示装置73の画面は、図8に示す変電所選択画面から図9に示す設定/指令画面に切り変わる。この設定/指令画面には、監視カメラ選択ボックス91、洗浄順選択ボックス92、洗浄回数選択ボックス93が表示され、更に、その右手側に指令ボックス94が表示される構成となっている。
【0043】
図9に示す設定/指令画面が表示されたら、オペレータは、入力部75(マウス)を操作して、S10にて選択した変電所の監視カメラCを、監視カメラ選択ボックス91から選択してやればよい。ここでは、変電所1が選択されているから、オペレータにより、監視カメラ選択ボックス91から、変電所1に対応する監視カメラC1が選択されることとなる(S20)。
【0044】
監視カメラCの選択が行われると、表示装置73の画面は図9の設定/指令画面から図10の監視カメラ表示画面に、一旦切り変わる。この監視カメラ画面のうち、画面中の右手側は表示領域に割り当てられており、表示ウインドウ96中に、S20にて選択された監視カメラCの画像が表示されるようになっている。これにより、ここでは、図10中の表示ウインドウ96中に、変電所1の監視カメラC1の画像が表示されることとなる。
【0045】
そして、図10の監視カメラ表示画面のうち、左手側は操作領域に割り当てられており、3つのプリセット番号を表示した3つのボタンからなるプリセットボタン97が表示されるようになっている。
【0046】
選択状態にある監視カメラCに対応する「プリセット番号」のボタンを操作すると、入力部75がそのボタン操作(すなわち、プリセット指令)を受け付ける。すると、遠隔制御装置70の制御部71から監視カメラユニット30に対して、通信部80を通じて制御信号が与えられる。この制御信号には、監視カメラCが風向計40を捉えるように、回転台31の位置(角度)を調整する位置情報が含まれている。
【0047】
このようにすることで、プリセットボタン97を操作すると、監視カメラユニット30の回転装置35が作動して、回転台31が位置調整される結果、監視カメラCが風向計40を捉え、図11に示すように、表示ウインドウ96中に、変電所に設置された風向計40が表示されることとなる。
【0048】
尚、ここでは、変電所1番が選択されているから、オペレータは、プリセットボタン97中の1番のボタンを、入力部75によってボタン操作してやればよく、操作後には、表示ウインドウ96中に、変電所1に設置された風向計40の画像が表示されることとなる。
【0049】
また、図11に示すように、プリセットボタン97の上側には、4つの矢印キーからなるカメラ操作ボタン98が表示されるようになっている。このカメラ操作ボタン98は、選択状態にある監視カメラCの向きを微調整するものであり、必要に応じて矢印キーを操作することで、その方向にカメラの向きを微調整出来る。
【0050】
かくして、表示ウインドウ96内に、変電所(ここでは、変電所1)の風向計40が映し出されたら、その画像に基づいて、オペレータは碍子の洗浄順を決定しなければならない。さて、ここで、先に説明したように、風向計40の羽車41は、表面41A側を「赤色」に着色してあるのに対して、裏面41B側を「青色」に着色してある。そのため、表示ウインドウ96中には、現地の風向に応じて、風向計40の表面側(すなわち、赤色)、裏面(すなわち、青色)のいずれかが、表示されることとなる。
【0051】
一方、本実施形態では、図5に示すように、遠隔制御装置70の表示装置73の表示画面に表示された羽車41の色と、碍子の洗浄順が予め対応表としてまとめられており、表示された羽車41の色が「赤色」である場合(第一区画側が風下となる風向の場合)には、洗浄順として「正順」を選択し、羽車41の色が「青色」である場合(第二区画側が風下となる風向の場合)には、洗浄順として「逆順」を選択するように決めてある。
【0052】
尚、「正順」とは第一区画E1の洗浄対象設備を先に洗浄し、その後第二区画E2の洗浄対象設備を洗浄する順番を意味し、「逆順」とは第二区画E2の洗浄対象設備を先に洗浄し、その後第一区画E1の洗浄対象設備を洗浄する順番を意味する。
【0053】
そのため、例えば、図11に示すように表示ウインドウ96中に表示された羽車41の色が「赤色」である場合には、オペレータは、対応表から洗浄順は「正順」であると簡単に決定でき、次の手順に従って、遠隔制御装置70にて「正順」の選択操作を行ってやればよい。
【0054】
図11に示す監視カメラ画面中に、表示される戻るのボタン99を操作すると、表示装置73の画面は、図11に示す監視カメラ画面から図9に示す設定/指令画面に切り換わる。従って、後は、洗浄順選択ボックス92中の「正順」ボタンを入力部75(マウス)を使ってボタン操作してやればよく、これにより、入力部75がボタン操作を受け付け、洗浄順が「正順」に設定される。
【0055】
そして、洗浄順が設定されたら、次に、洗浄順選択ボックス92の右横に表示される回数選択ボックス93の中から「一巡」、「繰返」のボタンのいずれかを操作して、洗浄回数を設定してやればよい。尚、「一巡」とは、洗浄対象となる碍子を1回だけ洗浄するモードであり、「繰返」とは、洗浄対象となる碍子を、繰り返し(例えば、5回)洗浄するモードである。尚、ここでは、洗浄回数として、「一巡」が選択されたものとする。
【0056】
後は、図9に示す設定/指令画面中に表示される指令ボックス94の中の「運転実行」のボタンを操作すれば、選択された変電所にて、碍子の洗浄作業が、設定された条件(「洗浄順」、「洗浄回数」)に従って自動的に行われる(S70)。
【0057】
ここでは、洗浄対象として変電所1が選択されているから、運転実行のボタンが操作されると、遠隔制御装置70の制御部71から変電所1の弁制御装置50に対して、洗浄の開始を指示する洗浄作業実行指令が与えられる。また、この指令と共に、遠隔制御装置70の制御部71から変電所1の弁制御装置50に対してS40、S50の作業により設定された洗浄条件の内容が合わせて通知される。
【0058】
そして、変電所1の弁制御装置50は、遠隔制御装置70の制御部71から洗浄作業実行指令を受けると、第一区画弁25、第二区画弁27を洗浄条件に従って制御し、洗浄作業を行う。
【0059】
ここでは、S40、S50の設定作業により、洗浄条件が次のように設定されている。
(a)洗浄順は「正順(第一区画を先に、第二区画を後に洗浄)」である。
(b)洗浄回数は「一巡」である。
【0060】
そのため、弁制御装置50はまず、第一区画弁25に「弁」を開ける制御信号S1を与える。これにより、ポンプ13により圧送された洗浄水が第一配水管15、各分岐管16を通って、各噴射ノズル19より一斉に噴霧される。そのため、第一区画E1内に含まれる各洗浄対象設備のブッシング(碍子)に洗浄水が一斉にかけられ、各ブッシングは一斉洗浄される。
【0061】
そして、洗浄を開始してから一定時間が経過すると、弁制御装置50は第一区画弁25に「弁」を閉じる制御信号を与える。これにより、第一区画弁25が開放状態から閉止状態に切り換わり、洗浄水の噴霧が停止する。これにて、第一区画E1内に含まれる各洗浄対象設備のブッシングの洗浄作業が完了する。
【0062】
次に、弁制御装置50は、第二区画弁27に「弁」を開ける制御信号S2を与える。これにより、ポンプ13により圧送された洗浄水が、今度は、第二配水管17、各分岐管18を通って各噴射ノズル19より一斉に噴霧される。そのため、第二区画E2内に含まれる各洗浄対象設備のブッシング(碍子)に洗浄水が一斉にかけられ、各ブッシングは一斉洗浄される。
【0063】
そして、洗浄を開始してから、一定時間が経過すると、弁制御装置50は、第二区画弁27に「弁」を閉じる制御信号を与える。これにより、第二区画弁27が開放状態から閉止状態に切り換わり、洗浄水の噴霧が停止する。これにて、第二区画E2内に含まれる各洗浄対象設備のブッシングの洗浄作業が完了する。これにて、洗浄作業が一巡することとなり、変電所1について洗浄作業は完了する。
【0064】
その後、残る変電所2、3について洗浄作業を行う場合には、S10〜S70の各ステップを改めて行ってやればよい。
【0065】
次に、本洗浄システムUの効果を説明する。碍子(ブッシング)の洗浄は風下側から順に行う必要がある。そのため、各変電所1〜3の洗浄装置10を遠隔操作する場合、監視カメラCから転送されてくる風向計40の画像に基づいて、現地の風向を判断する必要がある。しかし、監視カメラCの画像はそれほど鮮明でなく、しかも画像中には、風向計40の他に周囲の建物、景色なども当然写り込むので、画像から羽車41の向き、すなわち風向を特定し難いという事情がある。
【0066】
この点、本洗浄システムUによれば、風向計40の羽車41の色を表裏で変えてあり、変電所1〜3の風向を、表示装置73の表示画面に映る羽車41の色によって捉えることが出来る。しかも、図5に示すように、表示装置73の表示画面に表示された羽車41の色と碍子の洗浄順との関係が、予め対応表としてまとめられている。従って、オペレータは、監視カメラC1の画像から、羽車41の色が「赤」か「青」のいずれであるかさえ判別できれば、あとは図5の対応表を参照することで、変電所1〜3の碍子の洗浄順を簡単に決定できる。従って、洗浄条件の入力作業を短時間で行うことが可能となり、入力作業を含む洗浄作業全体の効率化を図ることが可能となる。
【0067】
また、本実施形態では、風向確認用として専用のカメラを設けておらず、変電所1〜3内を監視する監視カメラCを用いて、風向計40を確認するようにしている。そのため、風向を調べるとき、監視カメラCは必ずしも風向計40の方を向いているとは限らず、基本的には、監視カメラCの向きを風向計40に合わせる作業が必須となる。この点、本洗浄システムUでは、風向計40を捉えるように、監視カメラCの向きを自動調整するプリセット機能が設定されている。そのため、監視カメラCの向きを、手間なく簡単に調整できるので、この点も、効率化を図る上で効果的である。
【0068】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図12、図13によって説明する。
実施形態1では、風向計40の羽車41の表面41Aを「赤色」に着色し、裏面41Bを「青色」に着色し、羽車41の表裏を色で識別させる例を示した。これに対して、実施形態2では、羽車41の表裏を柄により識別するものである。
【0069】
具体的に説明すると、図12の(a)に示すように羽部43の表面43Aに「縦縞」の柄を油性の塗料(黒)により付し、図12の(b)に示すように羽部43の裏面43Bに「横縞」の柄を油性の塗料(黒)により付してある。
【0070】
そのため、表示ウインドウ96中には、現地の風向に応じて、風向計40の表面側(すなわち、縦縞)、裏面(すなわち、横縞)のいずれかが、表示されることとなる。
【0071】
一方、本実施形態では、図13に示すように、表示画面に表示された羽部43の柄と、碍子の洗浄順が予め対応表としてまとめられており、表示された柄が「縦縞」である場合には、洗浄順として「正順」を選択し、表示された柄が「横縞」である場合には、洗浄順として「逆順」を選択するように決めてある。
【0072】
そのため、オペレータは、表示装置73の表示画面から、羽部43の柄が「縦縞」か「横縞」かのいずれであるかさえ読み取れば、あとは、図13に示す対応表から碍子の洗浄順を簡単に決定でき、実施形態1と同様の効果を得ることが可能となる。
【0073】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0074】
(1)実施形態1では、羽車41の両面41A、421Bで色を異ならせたパターンを示し、実施形態2では、羽車の両面41A、421Bで柄を異ならせたパターンを示した。本発明は、監視カメラCに映る羽車が、表面側か裏面側か目視で認識できるようになっていればよく、実施形態1、実施形態2で例示したパターン以外にも、例えば、色と柄を組み合わせるなど種々のパターン変更が可能である。
【0075】
(2)実施形態1では、羽車41の両面41A、421Bの配色として「赤」、「青」のパターンを例示したが、識別し易い色であれば、「赤」、「青」以外の色であっても、無論よい。
(3)実施形態1では、洗浄順を、区画単位で定めたものを例示したが、碍子が風下から洗浄されるものであればよく、例えば、洗浄順を電気機器単位で決定することも可能である。
【符号の説明】
【0076】
1…変電所(本発明の「電力設備」に相当)
2…変電所(本発明の「電力設備」に相当)
10…洗浄装置
25…第一区画弁
26…第二区画弁
30…監視カメラユニット
35…回転装置(本発明の「調整装置」)
40…風向計
41…羽車
41A…表面
41B…裏面
42…矢部
43…羽部
50…弁制御装置
70…遠隔制御装置
73…表示装置
75…入力部
81、82…通信部
C…監視カメラ(本発明の「カメラ」に相当)
E1…第一区画
E2…第二区画
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力設備に設けられた洗浄装置を遠隔制御装置により遠隔制御して、前記電力設備に設けられた各電気機器の碍子を前記洗浄装置により風下に位置する碍子から順に洗浄する洗浄システムであって、
前記電力設備に設けられ、前記電力設備内の各電気機器の碍子を洗浄する洗浄装置と、
前記電力設備に設けられた風向計と、
前記風向計を構成し風向に応じて転向する羽車であって、前記羽車の表裏両面を異なる色にする、又は前記羽車の表裏両面の柄を異なる柄にすることにより、表裏両面が識別可能とされた羽車と、
前記電力設備に設けられたカメラと、
前記洗浄装置と通信可能に接続された遠隔制御装置と、を備えてなる共に、
前記遠隔制御装置は、
前記カメラから出力される前記羽車の画像を表示する表示装置と、
前記表示装置の表示画面を視認したオペレータが前記表示画面中に映る前記羽車の色、又は柄に基づいて決定した洗浄順の入力を受け付ける入力部と、
入力された前記洗浄順に従って前記碍子が洗浄されるように前記洗浄装置を遠隔操作する制御部と、を備えることを特徴とする洗浄システム。
【請求項2】
前記洗浄装置は前記電気機器の碍子を、予め設定された区画単位で、一括して洗浄する構成であると共に、
前記洗浄順は、前記区画単位で決められていることを特徴とする請求項1に記載の洗浄システム。
【請求項3】
前記電力設備には、前記カメラの向きを調整する調整装置が設けられる一方、
前記遠隔制御装置の制御部は、前記入力部がプリセット指令を受け付けることを条件に、前記風向計を捉えるように前記カメラの向きを前記調整装置を通じて自動調整することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の洗浄システム。
【請求項1】
電力設備に設けられた洗浄装置を遠隔制御装置により遠隔制御して、前記電力設備に設けられた各電気機器の碍子を前記洗浄装置により風下に位置する碍子から順に洗浄する洗浄システムであって、
前記電力設備に設けられ、前記電力設備内の各電気機器の碍子を洗浄する洗浄装置と、
前記電力設備に設けられた風向計と、
前記風向計を構成し風向に応じて転向する羽車であって、前記羽車の表裏両面を異なる色にする、又は前記羽車の表裏両面の柄を異なる柄にすることにより、表裏両面が識別可能とされた羽車と、
前記電力設備に設けられたカメラと、
前記洗浄装置と通信可能に接続された遠隔制御装置と、を備えてなる共に、
前記遠隔制御装置は、
前記カメラから出力される前記羽車の画像を表示する表示装置と、
前記表示装置の表示画面を視認したオペレータが前記表示画面中に映る前記羽車の色、又は柄に基づいて決定した洗浄順の入力を受け付ける入力部と、
入力された前記洗浄順に従って前記碍子が洗浄されるように前記洗浄装置を遠隔操作する制御部と、を備えることを特徴とする洗浄システム。
【請求項2】
前記洗浄装置は前記電気機器の碍子を、予め設定された区画単位で、一括して洗浄する構成であると共に、
前記洗浄順は、前記区画単位で決められていることを特徴とする請求項1に記載の洗浄システム。
【請求項3】
前記電力設備には、前記カメラの向きを調整する調整装置が設けられる一方、
前記遠隔制御装置の制御部は、前記入力部がプリセット指令を受け付けることを条件に、前記風向計を捉えるように前記カメラの向きを前記調整装置を通じて自動調整することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の洗浄システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−34886(P2011−34886A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181734(P2009−181734)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】
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