説明

洗浄便座用ノズル機構

【課題】洗浄水を噴出しない際にノズル手段が確実に便座側に格納され、また、全体として構造が簡素なものとなる洗浄便座用ノズル機構を提供する。
【解決手段】ノズル手段1を収縮させる方向に付勢する渦巻きバネ50がノズル手段1の後方に配置されていると共に、該ノズル手段1と該渦巻きバネ50との間であって、該渦巻きバネ50と隣接する位置には、駆動ドラム40が介在しており、該駆動ドラム40が励磁状態(オン状態)となると、駆動ドラム40内のドラム40Aが回転開始してノズル手段1の先端に位置する第三シリンダ部16と連繋したロープ30を先端方向(前方)に送り出し、前記ノズル手段1を前記渦巻きバネ50の付勢力に抗して伸長させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄水を先端部より噴出する伸縮自在なノズル手段を備えた洗浄便座にあって、前記ノズル手段を伸縮動作させる洗浄便座用ノズル機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、人体の局部を洗浄する洗浄便座の洗浄用ノズルの伸縮装置は既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。かかる構成は、ノズルと、該ノズルを伸長方向に付勢する圧縮バネと、該ノズルに連結されたワイヤを送り出す又は巻き取るモーターとを備えた構成である。そして、該モーターが非励磁の状態では、該ノズルは常に優先的に突出している状態が保たれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−100504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来構成において、仮に前記モーターが故障した場合には、前記圧縮バネによる付勢力に起因して前記ノズルが突出したままとなって便座に格納されない状況となるおそれがあった。このような状況となると、人体からの排泄物が該ノズルに付着してしまい該ノズルが汚れてしまうことになる。
【0005】
上記のような状況を回避すべく、該ノズルに引張バネを具備させ、仮にモーターが非励磁の状態であっても該ノズルを収縮状態とするような構成も提案されうる。しかし、かかる構成は該ノズルに圧縮バネと引張バネとが共に配設されることとなり、装置全体が複雑化あるいは大型化するという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、仮にノズルを伸縮させるモーター等の駆動源が故障した場合にも該ノズルが収縮状態となって確実に便座側に格納され、また、構造が簡素なものとなる洗浄便座用ノズル機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、洗浄水を先端部より噴出する伸縮自在なノズル手段を備えた洗浄便座における前記ノズル手段を伸縮動作させるノズル機構であって、前記ノズル手段を伸長させる方向へ付勢する伸長用付勢手段と、前記ノズル手段を収縮させる方向へ前記伸長用付勢手段よりも大きい付勢力で付勢する収縮用付勢手段と、洗浄水を噴出させる際に、前記収縮用付勢手段の付勢力に抗して前記ノズル手段を伸長させるノズル伸長手段と、を備えることを特徴とする洗浄便座用ノズル機構である。
【0008】
上記構成にあって、排泄が終わって洗浄水が噴出される際には、前記ノズル伸長手段が、前記伸長用付勢手段の付勢力に従う一方、前記収縮用付勢手段の付勢力に抗しつつ、前記ノズル手段を伸長させる。これに対して、洗浄水がノズル手段から噴出されない待機状態にあっては、前記ノズル伸長手段は、前記ノズル手段を伸長させず、これにより該ノズル手段は収縮用付勢手段の付勢力に従い収縮状態となる。すなわち、前記待機状態にあっては、前記伸長用付勢手段の付勢力と前記収縮用付勢手段の付勢力との大小関係に基づき、該ノズル手段は確実に便座側に格納されていることとなる。
【0009】
ここで、前記伸長用付勢手段は、前記ノズル手段の伸縮方向に沿って前記ノズル手段に配設されることにより前記ノズル手段を伸長する圧縮バネであり、前記収縮用付勢手段は、前記ノズル手段の後方に配置され、前記ノズル手段の先端部に接続されたロープを引き込むことにより前記ノズル手段を収縮させる渦巻きバネである構成が提案される。
【0010】
そして、この場合、前記ノズル伸長手段は、前記ロープを前記ノズル手段における前方へ送り出して前記ノズル手段を伸長させる駆動ドラムであり、前記駆動ドラムと前記渦巻きバネとが隣接して配置されていることが望ましい。
【0011】
上記構成の場合、洗浄便座用ノズル機構は簡素でコンパクトな構造となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、仮にノズル手段を伸縮させる装置が故障しても、該ノズル手段を確実に収縮状態として便座側に格納することができ、また、簡素でコンパクトな構成とすることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ノズル手段が収縮状態となっているノズル機構を示す断面図
【図2】ノズル手段が伸長状態となっているノズル機構を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明にかかる、洗浄便座用ノズル機構A(以下、ノズル機構Aという。)を図1,2に従って説明する。
【0015】
人体の局部を洗浄する温水洗浄便座(図示省略)は、先端より洗浄水を噴出する伸縮自在なノズル手段1を備えている。そして、該ノズル手段1は、図1に示すように、洗浄水を噴出しないときには収縮状態αとなって便座本体(図示省略)側に格納されており、一方、図2に示すように、洗浄水を噴出するときには伸長状態βとなって便座本体に対して突出した状態となる。
【0016】
さらに詳述すると、前記ノズル手段1は、便座本体に固定される筒状のベース部10、該ベース部10に内挿された筒状の第一シリンダ部12、該第一シリンダ部12に内挿された筒状の第二シリンダ部14、及び該第二シリンダ部に内挿された第三シリンダ部16により構成されている。そして、該第三シリンダ部16における先端部の上面には噴出孔18が形成されている。また、該噴出孔18には、ノズル手段1に内挿されているチューブ状の洗浄水誘導管25が接続されており、該洗浄水誘導管25を介して洗浄水が便座本体側から該第三シリンダ部16の噴出孔18に送給される(図2参照)。なお、これまでに述べた伸縮自在なノズル手段1の構造は、公知技術が好適に採用可能である。
【0017】
次に、前記ノズル手段1を伸縮動作させるノズル機構Aを説明する。
前記ノズル機構Aは、前記ノズル手段1を伸長させる方向へ付勢する第一圧縮バネ20及び第二圧縮バネ22を備えている。図1,2に示すように、前記第一圧縮バネ20は、該第一圧縮バネ20の軸線方向とノズル手段1の伸縮方向とが一致するように前記ベース部10と第一シリンダ部12内に配設されている。このとき、該第一圧縮バネ20の先端は第二シリンダ部14の後端面140に当接し、該第一圧縮バネ20の後端はベース部10の後端の内壁面100に当接している。また、前記第二圧縮バネ22は、該第二圧縮バネ22の軸線方向とノズル手段1の伸縮方向とが一致するように前記第二シリンダ部14内に配設されている。このとき、該第二圧縮バネ22の先端は第三シリンダ部16の後端面160に当接し、該第二圧縮バネ22の後端は第二シリンダ部14の後端に配設された環状プレート15に当接している。なお、前記第一圧縮バネ20及び第二圧縮バネ22は、本発明にかかる伸長用付勢手段に相当する。
【0018】
また、前記ノズル機構Aは、渦巻きバネ50を備えている。該渦巻きバネ50は、前記ノズル手段1の後方に配置されており、該ノズル手段1を収縮させる方向へ付勢する機能を有している。さらに詳述すると、前記第三シリンダ部16の後端部に形成されたロープ固定部32と、前記渦巻きバネ50との間にはロープ30が掛け渡されており、該渦巻きバネ50が該ロープ30を巻き取ることにより前記ノズル手段1が便座本体側へ引き込まれて収縮状態αとなる。かかる構成にあって、前記渦巻きバネ50は、前記第一圧縮バネ20及び第二圧縮バネ22による付勢力よりも大きい付勢力を発生させるバネ定数に設定されている。なお、前記渦巻きバネ50は、本発明にかかる収縮用付勢手段に相当する。
【0019】
さらに、該ノズル手段1と該渦巻きバネ50との間であって、該渦巻きバネ50と隣接する位置には、駆動ドラム40が介在している。該駆動ドラム40には、ドラム40Aが内蔵されており、該ドラムに前記ロープ30が連繋されている。そして、該駆動ドラム40が非励磁状態(オフ状態)から励磁状態(オン状態)となると、前記ドラム40Aが回転開始して該ロープ30を先端方向(前方)に送り出し、前記ノズル手段を前記渦巻きバネ50の付勢力に抗して伸長させる。ここで、前記駆動ドラム40のロープ送り量を適宜調整することにより、ノズル手段1の伸長長さを調整することが可能となる。なお、前記駆動ドラム40は、本発明にかかるノズル伸長手段に相当する。
【0020】
上記構成にあって、ノズル手段1の待機状態にあっては、前記駆動ドラム40は非励磁状態にあり、前記圧縮バネ20,22の付勢力と前記渦巻きバネ50の付勢力との大小関係に基づき、前記ノズル手段1は渦巻きバネ50の付勢力に従い収縮状態αとなっている。これに対して、排泄が終わって洗浄水が噴出される際には、外部からの入力信号を契機として前記駆動ドラム40が励磁状態となり、前記第一圧縮バネ20及び第二圧縮バネ22の付勢力に従いつつ、かつ前記渦巻きバネ50の付勢力に抗しつつ、ロープ30を先端方向(前方)に送り出し、前記ノズル手段1を伸長状態βとする(図2参照)。
【0021】
上記構成とすると、駆動ドラム40が非励磁状態の場合、渦巻きバネ50の付勢力により、該ノズル手段1は収縮状態βとなる。したがって、仮に駆動ドラム40が故障して励磁状態が得られなくなったとしても、該ノズル手段1を確実に収縮状態として便座側に格納しておくことが可能となる。このため、人体からの排泄物が該ノズル手段1に付着してしまい該ノズル手段1が汚れてしまうことを防止できる。また、前記駆動ドラム40と前記渦巻きバネ50とは、隣接して配置されるため、該ノズル機構Aは簡素でコンパクトな構造となる。
【0022】
本発明は、上記実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0023】
A 洗浄便座用ノズル機構
1 ノズル手段
20,22 圧縮バネ(伸長用付勢手段)
30 ロープ
40 駆動ドラム(ノズル伸長手段)
50 渦巻きバネ(収縮用付勢手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水を先端部より噴出する伸縮自在なノズル手段を備えた洗浄便座における前記ノズル手段を伸縮動作させるノズル機構であって、
前記ノズル手段を伸長させる方向へ付勢する伸長用付勢手段と、
前記ノズル手段を収縮させる方向へ前記伸長用付勢手段よりも大きい付勢力で付勢する収縮用付勢手段と、
洗浄水を噴出させる際に、前記収縮用付勢手段の付勢力に抗して前記ノズル手段を伸長させるノズル伸長手段と、
を備えることを特徴とする洗浄便座用ノズル機構。
【請求項2】
前記伸長用付勢手段は、
前記ノズル手段の伸縮方向に沿って前記ノズル手段に配設されることにより前記ノズル手段を伸長する圧縮バネであり、
前記収縮用付勢手段は、
前記ノズル手段の後方に配置され、前記ノズル手段の先端部に接続されたロープを引き込むことにより前記ノズル手段を収縮させる渦巻きバネである
請求項1に記載の洗浄便座用ノズル機構。
【請求項3】
前記ノズル伸長手段は、
前記ロープを前記ノズル手段における前方へ送り出して前記ノズル手段を伸長させる駆動ドラムであり、
前記駆動ドラムと前記渦巻きバネとが隣接して配置されている
請求項2に記載の洗浄便座用ノズル機構。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−211458(P2012−211458A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77198(P2011−77198)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(390030731)朝日インテック株式会社 (140)
【Fターム(参考)】