説明

洗浄水浄化装置及び洗浄水噴射システム

【課題】温水洗浄便座の噴射ノズルから噴射する洗浄水の殺菌性能を貯留タンク内で長時間維持できるようにする。
【解決手段】洗浄水浄化装置(62)に、洗浄水(W)中でストリーマ放電を生起する電極対(64,65)と、該電極対(64,65)に直流電圧を印可する電源部(70)とを設け、上記電極対(64,65)の間におけるストリーマ放電によって上記貯留タンク(61)内の洗浄水(W)中で過酸化水素を発生させて、過酸化水素水を含む洗浄水(W)を生成するように構成する。電源部(70)が電極対(64,65)に電圧を印加すると、洗浄水(W)中でストリーマ放電が行われ、過酸化水素が生成される。過酸化水素を含んだ洗浄水(W)が温水洗浄便座の噴射ノズル(10)の噴出口(11)から噴射されて過酸化水素によって噴射ノズル(10)の内部及び噴出口(11)周りが殺菌洗浄される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレの温水洗浄便座の噴射ノズルの噴出口から噴射するための洗浄水を貯留タンク内で浄化する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、貯留タンクに貯留されたオゾン水をヒーターにより35℃に温めてトイレの温水洗浄便座の噴射ノズルから噴射する洗浄水噴射システムが開示されている。このシステムでは、オゾン水の通過により、温水洗浄便座の噴射ノズルの内部及びその噴出口が殺菌される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−19417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、オゾンが不安定な性質を有する分子であることに加え、オゾン水を35℃前後に温めるため、貯留タンクに貯留されたオゾン水の殺菌性能が短時間で損なわれやすい。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、温水洗浄便座の噴射ノズルから噴射する洗浄水の殺菌性能を貯留タンク内で長時間維持できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、トイレの温水洗浄便座の噴射ノズル(10)の噴出口(11)から噴射するための洗浄水(W)を貯留タンク(61)内で浄化する洗浄水浄化装置であって、上記洗浄水(W)中でストリーマ放電を生起する電極対(64,65)と、該電極対(64,65)に直流電圧を印可する電源部(70)とを有し、上記電極対(64,65)の間におけるストリーマ放電によって上記貯留タンク(61)内の洗浄水(W)中で過酸化水素を発生させて、過酸化水素水を含む洗浄水(W)を生成するように構成されていることを特徴とする。
【0007】
第2の発明は、第1の発明の洗浄水浄化装置(62)と、上記貯留タンク(61)と、上記噴射ノズル(10)とを備えていることを特徴とする。
【0008】
第1及び第2の発明では、電源部(70)が電極対(64,65)に電圧を印加すると、洗浄水(W)中でストリーマ放電が行われる。洗浄水(W)中でストリーマ放電が行われると、水酸ラジカル等の活性種が生成される。生成した活性種が水分子と反応すると、多量の過酸化水素が生成される。その結果、過酸化水素を含む洗浄水(W)が簡便に得られる。そして、この洗浄水(W)が温水洗浄便座の噴射ノズル(10)から噴射されて過酸化水素によって温水洗浄便座の噴射ノズル(10)の内部及び噴出口(11)周りが殺菌洗浄される。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、電極対(64,65)に電圧を印加することによって洗浄水(W)中でストリーマ放電を発生させ、洗浄水(W)中でのストリーマ放電によって生成した過酸化水素を利用して、温水洗浄便座の噴射ノズル(10)の内部及び噴出口(11)周りを殺菌洗浄している。過酸化水素はオゾンに比べて残留性が高い。したがって、本発明によると、貯留タンク(61)の水温が高温になっても、洗浄水(W)の殺菌性能を貯留タンク(61)で長時間維持できる。
【0010】
また、本発明では、直流電圧を用いてストリーマ放電を行っているので、例えばパルス電源を用いる場合と比較して、電源部(70)の簡素化、低コスト化、小型化を図ることができる。また、パルス電源を用いると、放電に伴って水中で発生する衝撃波や騒音が大きくなってしまう。これに対し、直流電圧を用いると、このような衝撃波や騒音も低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施形態1に係る洗浄水噴射システムを備えたトイレを示す説明図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る水浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始する前の状態を示すものである。
【図3】図3は、実施形態1に係る絶縁ケーシングの斜視図である。
【図4】図4は、実施形態1に係る水浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始して気泡が形成された状態を示すものである。
【図5】図5は、実施形態1の変形例に係る水浄化ユニットの全体構成図である。
【図6】図6は、実施形態1の変形例に係る絶縁ケーシングの斜視図である。
【図7】図7は、実施形態2に係る水浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始する前の状態を示すものである。
【図8】図8は、実施形態2に係る水浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始して気泡が形成された状態を示すものである。
【図9】図9は、実施形態2の変形例に係る絶縁ケーシングの蓋部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0013】
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る洗浄水噴射システム(1)を備えたトイレを示す。洗浄水噴射システム(1)は、洗浄水貯留浄化ユニット(60)と、ポンプ(20)と、温水洗浄便座の噴射ノズル(10)とを備えている。洗浄水貯留浄化ユニット(60)は、図2に示すように、貯留タンク(61)と洗浄水浄化装置(62)とヒーター(30)とを備えている。上記貯留タンク(61)は洗浄水(W)を貯留し、貯留タンク(61)に貯留された洗浄水(W)はポンプ(20)を介して温水洗浄便座の噴射ノズル(10)に送られる。噴射ノズル(10)は、貯留タンク(61)から送られた洗浄水(W)を便器(2)内で噴出口(11)から、便器(2)に着座した人の臀部に向けて噴射する。
【0014】
図2に示すように、貯留タンク(61)は密閉型の容器状に形成されている。この貯留タンク(61)には、流入管(51)及び流出管(52)が接続されている。この流入管(51)を通じて水道水が貯留タンク(61)内に供給される。
【0015】
洗浄水浄化装置(62)は、放電電極(64)及び対向電極(65)とからなる電極対(64,65)と、この電極対(64,65)に電圧を印加する電源部(70)と、放電電極(64)を内部に収容する絶縁ケーシング(71)とを備えている。
【0016】
電極対(64,65)は、水中でストリーマ放電を生起するためのものである。放電電極(64)は、絶縁ケーシング(71)の内部に配置されている。放電電極(64)は、上下に扁平な板状に形成されている。放電電極(64)は、電源部(70)の正極側に接続されている。放電電極(64)は、例えばステンレス、銅等の導電性の金属材料で構成されている。
【0017】
対向電極(65)は、絶縁ケーシング(71)の外部に配置されている。対向電極(65)は、放電電極(64)の上方に設けられている。対向電極(65)は、上下に扁平な板状であって、且つ上下に複数の貫通孔(66)を有するメッシュ形状ないしパンチングメタル形状に構成されている。対向電極(65)は、放電電極(64)と略平行に配設されている。対向電極(65)は、電源部(70)の負極側に接続されている。対向電極(65)は、例えばステンレス、真鍮等の導電性の金属材料で構成されている。
【0018】
電源部(70)は、電極対(64,65)に所定の直流電圧を印加する直流電源で構成されている。即ち、電源部(70)は、電極対(64,65)に対して瞬時的に高電圧を繰り返し印加するようなパルス電源ではなく、電極対(64,65)に対して常に数キロボルトの直流電圧を印加する。電源部(70)のうち、対向電極(65)が接続される負極側は、アースと接続されている。また、電源部(70)には、電極対(64,65)の放電電力を一定に制御する定電力制御部が設けられている(図示省略)。
【0019】
絶縁ケーシング(71)は、貯留タンク(61)の底部に設置されている。絶縁ケーシング(71)は、例えばセラミックス等の絶縁材料で構成されている。絶縁ケーシング(71)は、一面(上面)が開放された容器状のケース本体(72)と、該ケース本体(72)の上方の開放部を閉塞する板状の蓋部(73)とを有している。
【0020】
ケース本体(72)は、角型筒状の側壁部(72a)と、該側壁部(72a)の底面を閉塞する底部(72b)とを有している。放電電極(64)は、底部(72b)の上側に敷設されている。絶縁ケーシング(71)では、蓋部(73)と底部(72b)との間の上下方向の距離が、放電電極(64)の厚さよりも長くなっている。つまり、放電電極(64)と蓋部(73)との間には、所定の間隔が確保されている。これにより、絶縁ケーシング(71)の内部では、放電電極(64)とケース本体(72)と蓋部(73)との間に空間(S)が形成される。
【0021】
図2及び図3に示すように、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)には、該蓋部(73)を厚さ方向に貫通する1つの開口(74)が形成されている。この開口(74)により、放電電極(64)と対向電極(65)との間の電界の形成が許容されている。蓋部(73)の開口(74)の内径は、0.02mm以上0.5mm以下であることが好ましい。以上のような開口(74)は、電極対(64,65)の間の電流経路の電流密度を上昇させる電流密度集中部を構成する。
【0022】
以上のように、絶縁ケーシング(71)は、電極対(64,65)のうちの一方の電極(放電電極(64))のみを内部に収容し、且つ電流密度集中部としての開口(74)を有する絶縁部材を構成している。
【0023】
加えて、絶縁ケーシング(71)の開口(74)内では、電流経路の電流密度が上昇することで、水がジュール熱によって気化して気泡(B)が形成される。つまり、絶縁ケーシング(71)の開口(74)は、該開口(74)に気相部としての気泡(B)を形成する気相形成部として機能する。
【0024】
また、ヒーター(30)は、抵抗(31)と電源(32)とを備え、電源(32)により抵抗(31)に電圧が印加されることにより、貯留タンク(61)に貯留された洗浄水(W)が温められる。
【0025】
−運転動作−
本実施形態の洗浄水噴射システム(1)では、洗浄水浄化装置(62)が運転されることで、貯留タンク(61)に貯留された水の浄化がなされる。このような洗浄水浄化装置(62)による水の浄化動作について詳細に説明する。
【0026】
洗浄水浄化装置(62)の運転の開始時には、図2に示すように、絶縁ケーシング(71)の内の空間(S)が浸水した状態となっている。電源部(70)から電極対(64,65)に所定の直流電圧(例えば1kV)が印加されると、電極対(64,65)の間に電界が形成される。放電電極(64)の周囲は、絶縁ケーシング(71)で覆われている。このため、電極対(64,65)の間での漏れ電流が抑制されるとともに、開口(74)内の電流経路の電流密度が上昇した状態となる。
【0027】
開口(74)内の電流密度が上昇すると、開口(74)内のジュール熱が大きくなる。その結果、絶縁ケーシング(71)では、開口(74)の近傍において、水の気化が促進されて気泡(B)が形成される。この気泡(B)は、図4に示すように、開口(74)のほぼ全域を覆う状態となり、対向電極(65)に導通する負極側の水と、正極側の放電電極(64)との間に気泡(B)が介在する。従って、この状態では、気泡(B)が、放電電極(64)と対向電極(65)との間での水を介した導電を阻止する抵抗として機能する。これにより、放電電極(64)と対向電極(65)との間の漏れ電流が抑制され、電極対(64,65)間では、所望とする電位差が保たれることになる。すると、気泡(B)内では、絶縁破壊に伴いストリーマ放電が発生する。
【0028】
以上のようにして、気泡(B)でストリーマ放電が行われると、貯留タンク(61)内の水中では、水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素等が生成される。水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素は、ストリーマ放電に伴う熱によって貯留タンク(61)内を対流する。これにより、水中での活性種や過酸化水素の拡散が促される。また、気泡(B)でストリーマ放電が行われると、このストリーマ放電に伴ってこの気泡(B)でイオン風を生成し易くなる。よって、貯留タンク(61)内では、このイオン風を利用して、活性種や過酸化水素の拡散効果を更に向上できる。
【0029】
以上のようにして、水中に拡散した水酸ラジカル等の活性種は、水中に含まれる被処理成分(例えばアンモニア等)を酸化分解して水の浄化に利用される。また、水中に拡散した過酸化水素は、水の殺菌に利用される。
【0030】
上記のように浄化された洗浄水(W)は、ポンプ(20)を介して噴射ノズル(10)に送られ、噴射ノズル(10)の噴出口(11)から便器(2)内で噴射される。このとき、噴射ノズル(10)の内部及び噴出口(11)が洗浄水(W)の通過により殺菌洗浄される。
【0031】
−実施形態1の効果−
実施形態1では、電極対(64,65)に電圧を印加することによって洗浄水(W)中でストリーマ放電を発生させ、洗浄水(W)中でのストリーマ放電によって生成した過酸化水素を利用して、温水洗浄便座の噴射ノズル(10)の内部及び噴出口(11)周りを殺菌洗浄している。過酸化水素はオゾンに比べて残留性が高い。このため、上記実施形態1では、貯留タンク(61)の水温が高温となっても、洗浄水(W)の殺菌効果を長時間維持できる。
【0032】
〈実施形態1の変形例〉
上記実施形態1では、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)に1つの開口(74)が形成されている。しかしながら、例えば図5及び図6に示すように、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)に複数の開口(74)を形成してもよい。この変形例では、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)が、略正方形板状に形成され、この蓋部(73)に複数の開口(74)が等間隔を置きながら碁盤目状に配列されている。一方、放電電極(64)及び対向電極(65)は、全ての開口(74)に跨るような正方形板状に形成されている。
【0033】
この変形例においても、各開口(74)が、電流密度集中部、及び気相形成部として機能する。これにより、電源部(70)から電極対(64,65)に直流電圧が印加されると、各開口(74)の電流密度が上昇し、各開口(74)で気泡(B)が形成される。その結果、各気泡(B)でそれぞれストリーマ放電が生起され、水酸ラジカル等の活性種や、過酸化水素が生成される。
【0034】
《発明の実施形態2》
実施形態2に係る洗浄水噴射システム(1)は、上述した実施形態1と洗浄水浄化装置(62)の構成が異なるものである。以下には、上記実施形態1と異なる点を主として説明する。
【0035】
図7に示すように、実施形態2の洗浄水浄化装置(62)は、貯留タンク(61)の外側から内部に向かって挿入されて固定される、いわゆるフランジユニット式に構成されている。また、実施形態2の洗浄水浄化装置(62)は、放電電極(64)と対向電極(65)と絶縁ケーシング(71)とが一体的に組立てられている。
【0036】
実施形態2の絶縁ケーシング(71)は、大略の外形が円筒状に形成されている。絶縁ケーシング(71)は、ケース本体(72)と蓋部(73)とを有している。
【0037】
実施形態2のケース本体(72)は、ガラス質又は樹脂製の絶縁材料で構成されている。ケース本体(72)は、円筒状の基部(76)と、該基部(76)から貯留タンク(61)側に向かって突出する筒状壁部(77)と、該筒状壁部(77)の外縁部から更に貯留タンク(61)側に向かって突出する環状凸部(78)とを有している。また、ケース本体(72)には、環状凸部(78)の先端側に先端筒部(79)が一体に形成されている。基部(76)の軸心部には、円柱状の挿入口(76a)が軸方向に延びて貫通形成されている。筒状壁部(77)の内側には、挿入口(76a)と同軸となり、且つ挿入口(76a)よりも大径となる円柱状の空間(S)が形成されている。
【0038】
実施形態2の蓋部(73)は、略円板状に形成されて環状凸部(78)の内側に嵌合している。蓋部(73)は、セラミックス材料で構成されている。蓋部(73)の軸心には、実施形態1と同様、蓋部(73)を上下に貫通する円形状の1つの開口(74)が形成されている。
【0039】
放電電極(64)は、軸直角断面が円形状となる縦長の棒状の電極で構成されている。放電電極(64)は、基部(76)の挿入口(76a)に嵌合している。これにより、放電電極(64)は、絶縁ケーシング(71)の内部に収容されている。実施形態2では、放電電極(64)のうち貯留タンク(61)とは反対側の端部が、貯留タンク(61)の外部に露出される状態となる。このため、貯留タンク(61)の外部に配置される電源部(70)と、放電電極(64)とを電気配線によって容易に接続することができる。
【0040】
放電電極(64)のうち貯留タンク(61)側の端部(64a)は、絶縁ケーシング(71)の内部の空間(S)に臨んでいる。なお、図7に示す例では、放電電極(64)の端部(64a)が、挿入口(76a)の開口面よりも上側(貯留タンク(61)側)に突出しているが、この端部(64a)の先端面を挿入口(76a)の開口面と略面一としてもよいし、端部(64a)を挿入口(76a)の開口面よりも下側に陥没させてもよい。また、放電電極(64)は、実施形態1と同様、開口(74)を有する蓋部(73)との間に所定の間隔が確保されている。
【0041】
対向電極(65)は、円筒状の電極本体(65a)と、該電極本体(65a)から径方向外方へ突出する鍔部(65b)とを有している。電極本体(65a)は、絶縁ケーシング(71)のケース本体(72)に外嵌している。鍔部(65b)は、貯留タンク(61)の壁部に固定されて洗浄水浄化装置(62)を保持する固定部を構成している。洗浄水浄化装置(62)が貯留タンク(61)に固定された状態では、対向電極(65)の電極本体(65a)の一部が浸水された状態となる。
【0042】
対向電極(65)は、電極本体(65a)よりも小径の内側筒部(65c)と、該内側筒部(65c)と電極本体(65a)との間に亘って形成される連接部(65d)とを有している。内側筒部(65c)及び連接部(65d)は、貯留タンク(61)内の水中に浸漬している。内側筒部(65c)は、その内部に円柱空間(67)を形成している。内側筒部(65c)の軸方向の一端は、蓋部(73)と当接して該蓋部(73)を保持する保持部を構成している。また、電極本体(65a)と内側筒部(65c)と連接部(65d)の間には、ケース本体(72)の先端筒部(79)が内嵌している。内側筒部(65c)の軸方向の他端側には、円柱空間(67)を覆うようにメッシュ状の漏電防止材(68)が設けられている。この漏電防止材(68)は、対向電極(65)と接触することで、実質的にアースされている。これにより、漏電防止材(68)は、貯留タンク(61)の内部の空間(水中)のうち、円柱空間(67)の内側から外側への漏電を防止している。
【0043】
対向電極(65)は、電極本体(65a)の一部が貯留タンク(61)の外部に露出される状態となる。このため、電源部(70)と対向電極(65)とを電気配線によって容易に接続することができる。
【0044】
−水浄化ユニットの運転動作−
実施形態2の洗浄水噴射システム(1)においても、洗浄水浄化装置(62)が運転されることで、貯留タンク(61)に貯留された水の浄化がなされる。
【0045】
洗浄水浄化装置(62)の運転の開始時には、図7に示すように、絶縁ケーシング(71)の内の空間(S)が浸水した状態となっている。電源部(70)から電極対(64,65)に所定の直流電圧(例えば1kV)が印加されると、開口(74)の内部の電流密度が上昇してく。
【0046】
図7に示す状態から、電極対(64,65)へ更に直流電圧が継続して印加されると、開口(74)内の水が気化されて気泡(B)が形成される(図8を参照)。この状態では、気泡(B)が開口(74)のほぼ全域を覆う状態となり、円柱空間(67)内の負極側の水と、放電電極(64)との間に気泡(B)による抵抗が付与される。これにより、放電電極(64)と対向電極(65)との間の電位差が保たれ、気泡(B)でストリーマ放電が発生する。その結果、水中では、水酸ラジカルや過酸化水素が生成され、これらの成分が水の浄化に利用される。
【0047】
〈実施形態2の変形例〉
上記実施形態2では、円板状の蓋部(73)の軸心に1つの開口(74)を形成しているが、この蓋部(73)に複数の開口(74)を形成してもよい。図9に示す例では、蓋部(73)の軸心を中心とする仮想ピッチ円上に、5つの開口(74)が等間隔置きに配列されている。このように蓋部(73)に複数の開口(74)を形成することで、各開口(74)の近傍でそれぞれストリーマ放電を生起させることができる。
【0048】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0049】
上述した各実施形態の電源部(70)には、ストリーマ放電の放電電力を一定に制御する定電力制御部を用いている。しかしながら、定電力制御部に代えて、ストリーマ放電時の放電電流を一定に制御する定電流制御部を設けることもできる。この定電流制御を行うと、水の導電率によらず放電が安定するため、スパークの発生も未然に回避できる。
【0050】
また、上述した各実施形態では、電源部(70)の正極に放電電極(64)を接続し、電源部(70)の負極に対向電極(65)を接続している。しかしながら、電源部(70)の負極に放電電極(64)を接続し、電源部(70)の正極に対向電極(65)を接続することで、電極対(64,65)の間で、いわゆるマイナス放電を行うようにしてもよい。
【0051】
また、温水洗浄便座の噴射ノズル(10)に洗浄水(W)を噴射する洗浄ノズルを便器(2)内部にさらに設け、この洗浄ノズルから噴射する洗浄水の浄化に噴射ノズル(10)と同じ方法を適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上説明したように、本発明は、貯留タンクに貯留された洗浄水をトイレの温水洗浄便座の噴射ノズルの噴出口から噴射する洗浄水噴射システムにおいて、上記洗浄水を浄化する技術について有用である。
【符号の説明】
【0053】
1 洗浄水噴射システム
10 噴射ノズル
11 噴出口
61 貯留タンク
62 洗浄水浄化装置
64 放電電極(電極対)
65 対向電極(電極対)
70 電源部(直流電源)
W 洗浄水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレの温水洗浄便座の噴射ノズル(10)の噴出口(11)から噴射するための洗浄水(W)を貯留タンク(61)内で浄化する洗浄水浄化装置であって、
上記洗浄水(W)中でストリーマ放電を生起する電極対(64,65)と、該電極対(64,65)に直流電圧を印可する電源部(70)とを有し、上記電極対(64,65)の間におけるストリーマ放電によって上記貯留タンク(61)内の洗浄水(W)中で過酸化水素を発生させて、過酸化水素水を含む洗浄水(W)を生成するように構成されていることを特徴とする洗浄水浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の洗浄水浄化装置(62)と、
上記貯留タンク(61)と、
上記噴射ノズル(10)とを備えた洗浄水噴射システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−77440(P2012−77440A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220423(P2010−220423)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】