説明

洗濯乾燥機

【課題】洗濯兼脱水槽の周壁の内側に水路が突設してある洗濯乾燥機であっても、乾燥行程において洗濯物を確実に上下に入替えることができ、そのために大きなトルクも格別に必要としない洗濯乾燥機を得る。
【解決手段】底部に攪拌翼(パルセータ)8を設けた洗濯兼脱水槽10内に温風を供給する乾燥行程を洗濯行程の次に設けた洗濯乾燥機において、乾燥行程で洗濯物を上下に攪拌するよう上下に回転する回転体としてのローラ12を洗濯兼脱水槽10内に配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯行程の次に乾燥行程を設けた洗濯乾燥機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗濯乾燥機は、図2にも示すように外箱1内に防振装置を介して水槽4を揺動自在に吊支し、底部に攪拌翼8を有する洗濯兼脱水槽10を前記水槽4内に配設し、水槽4の下方にモータ2を配設し、このモータ2に回転軸3を介して前記洗濯兼脱水槽10および攪拌翼8が接続される。
【0003】
図中5は洗濯兼脱水槽10の上部開口である洗濯物の投入口の周縁に設けたバランサ、6は水槽4の上部開口縁に取付けた水槽カバー、7は水槽カバー6の内側の開口を閉塞する内フタを示す。また、洗濯兼脱水槽10の側壁の内側には水路11が形成されて洗濯兼脱水槽10内の洗濯液を汲み上げて循環させ、洗浄効果を高めている。
【0004】
水槽4の下方にヒータ9を配設し、このヒータ9に一端が接続されるダクト9aを水槽4の外側部にそって立ち上げ、ダクト9aの他端を内フタ7に設けた温風の吹出し口に開口する。
【0005】
以上のようにして洗濯するには、水槽4および洗濯兼脱水槽10内に給水し、洗剤と洗濯物を投入すれば、洗濯兼脱水槽10、攪拌翼8が回転して洗い、すすぎ、脱水の行程が自動的に進行し、最後に乾燥行程に移行する。
【0006】
この乾燥行程では、攪拌翼8が回転して洗濯物を攪拌すると同時に、ヒータ9に通電され温風が内フタ7に設けた吹出し口から洗濯兼脱水槽10内に吹出されて、内部の洗濯物を乾燥させるが、乾燥行程に移行した洗濯物は水分を含んでいるため、洗濯物が十分に攪拌されず、乾燥ムラが生じ、運転終了後に洗濯兼脱水槽10から洗濯物を取出すと完全には乾燥されていない部分がある。
【0007】
かかる不都合を解消するものとして、従来、例えば攪拌翼の上面に隆起部を形成し、このような攪拌翼の回転で洗濯物を上下に振動させることで乾燥効率を向上させるようにしたものがある(例えば特許文献1参照)。
【0008】
これは、攪拌翼(パルセータ)の上面を、回転中心から放射状に形成される複数の隆起部と、この隆起部の間に形成される谷部とから構成し、前記隆起部は回転中心から外周方向に徐々に隆起する形状を備え、前記中心から所定の位置はなれた円周の断面形状を展開したときに、前記パルセータの表面は、隆起部から徐々に谷部に至り、谷部から徐々に隆起部に至る波形状とするものである。
【特許文献1】特開2005−87579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
洗濯兼脱水槽の内周壁に形成してある水路は、洗濯兼脱水槽の内側に突出しているため、前記特開2005−87579号公報に記載の発明では、洗濯物を上下に振動させたとき、洗濯物がこの水路に当ってしまい、洗濯物をスムーズに上下に振動させることが困難なことがある。
【0010】
また、水路に当った洗濯物を強制的に上下に入替えようとすると、大きなトルクを必要とする。
【0011】
本発明は前記不都合を解消するものとして、洗濯兼脱水槽の周壁の内側に水路が突設してある洗濯乾燥機であっても、乾燥行程において洗濯物を確実に上下に入替えることができ、そのために大きなトルクも格別に必要としない洗濯乾燥機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の本発明は、底部に攪拌翼を設けた洗濯兼脱水槽内に温風を供給する乾燥行程を洗濯行程の次に設けた洗濯乾燥機において、乾燥行程で洗濯物を上下に攪拌するよう上下に回転する回転体を洗濯兼脱水槽内に配設したことを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0013】
以上述べたように本発明の洗濯乾燥機は、乾燥行程では洗濯兼脱水槽内で回転体が上下方向に回転するから、洗濯物はこの回転体の上下の回転によって上方に持ち上げられ、上下に攪拌される。よって、洗濯物の間に隙間が形成されこの隙間に温風が入り込むことで洗濯物の各部に満遍なく温風が当り、乾燥ムラを防止できるとともに乾燥効率が向上する。
【0014】
また、前記のように回転体の回転作用によって洗濯物が上下に入れ替るから、そのために大きなトルクは必要ではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面について本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の洗濯乾燥機の第1実施形態を示す要部の正面図で、洗濯乾燥機の全体構成は図2について既に説明したとおりであるから、ここでの詳細な説明は省略する。
【0016】
本発明は、洗濯兼脱水槽10の内周壁の下方部分に水路11が突設されている洗濯乾燥機において、前記水路11を形成するカバーに上下に回転する回転体としてローラ12を配設した。
【0017】
このローラ12は、一例として図1に示すように軸12aに複数(図示の例では3個)のローラ単体12bを串団子状に横列に並べたものを複数個(図示の例では7個)縦列に水平に、あるいは軸12aとローラ単体12bが片側にやや傾いた状態になるように並べ、各ローラ単体12bの間には隙間14を設けた。なお、ローラ12は図1に示すような複数個の集合で構成してもよいが、横細長の筒状の一本物を縦列に水平または斜めにに並べてもよい。これによりローラ12は上下方向に回転する向きで洗濯兼脱水槽10の内周壁に取付けられる。
【0018】
ローラ12の断面形状は、図3に示したものに限定されず、丸形や他の多角形としてもよく、それら表面に突起が取り付けられるような形状として、洗濯物との摩擦を持たせる構造とすることで、より効果的なものとなる。
表面に、水路11は、遠心力により洗濯物からの受ける力を斜め上方へ変換させるために、斜めに傾けるように取付けた。
【0019】
ローラ12の水路11への固定手段は、例えば軸12aを水路カバーに形成した孔に差込む方法、軸12aの端にL字形の取付金具16を取付け、この取付金具16をビス15で水路カバーに固定する方法など、適宜選択する。ビス止めの場合は、ローラ12を水路11に確実に固定でき、洗濯物がぶつかっても外れるおそれがない。
【0020】
次に作用について説明する。乾燥行程では、ヒータ9に通電されて温風がダクト9aを通って内フタ7に設けてある吹出し口から洗濯兼脱水槽10内に吹出され、槽内の洗濯物に当てられる。
【0021】
同時に、モータ2に通電されて攪拌翼8が回転し、洗濯兼脱水槽10内の洗濯物が攪拌されると、遠心力の作用により洗濯物が洗濯兼脱水槽10内で周壁の方向に向って移動し、周壁に突出して設けてある水路11に当る。
【0022】
このとき、水路11の表側には上下方向に回転するローラ12が配設してあるので、遠心力で水路11に当った洗濯物は、ローラ12にぶつかることで遠心力による外方へ力が斜め上方への力に変換されて、洗濯兼脱水槽10内で上方に移動する。これにより、洗濯物は上下に入れ替る。
【0023】
この場合、洗濯物を上方に移動させるための力は、遠心力を変換させて得られるから、格別に大きなトルクを必要としない。
【0024】
そして、洗濯物が上下に入れ替ることにより、洗濯物の間に隙間が形成され、内フタ7に設けた吹出し口から吹出される温風がこの隙間に入りやすくなるので、洗濯物の各部に温風が当って乾燥ムラを防止でき、乾燥時間が短縮される。
【0025】
前記第1実施形態は、温風の吹出し口を内フタ7の箇所のみとしたが、第2実施形態ではローラ12のローラ単体12b間の隙間14を温風の吹出し口に形成することもできる。
【0026】
温風は前記のように内フタ7に設けた吹出し口から洗濯兼脱水槽10内に吹出されるものであるが、内フタ7は洗濯兼脱水槽10の上部周縁に密着しているものではないため、温風の一部は洗濯兼脱水槽10と水槽4との隙間に流れ込む。
【0027】
この洗濯兼脱水槽10と水槽4との間に流れ込んだ温風を洗濯兼脱水槽10の背後から前記隙間14を吹出し口として洗濯兼脱水槽10内に吹出させる。これにより、洗濯物には洗濯兼脱水槽10の上方に設けた内フタ7の吹出し口と、下方の隙間14とで上下両方から温風が吹出され、乾燥性能をさらにアップできる。
【0028】
この場合、図3に示すように水路11の下方の洗濯兼脱水槽10の周壁をラビリンス構造13とすることで、洗濯兼脱水槽10と水槽4との間に漏れた温風を水路11より下方に流れにくくすることができ、ローラ12の隙間14から温風を確実に洗濯兼脱水槽10内に送ることができる。
【0029】
第3実施形態として、図5に示すように攪拌翼8であるパルセータの平な平坦部分にもローラ12を取付けることができる。これにより、攪拌翼8と洗濯物との摩擦をローラ12の回転により低減することができ、これまで以上のトルクを必要とせずに揉み洗いが可能となり、洗濯物の上下入れ替えが促進されて、洗濯物の間に隙間を形成でき洗濯物に温風を満遍なく当てることができる。
【0030】
図5のように攪拌翼8であるパルセータの平坦部分ではなく図6に示すように角度が付いている箇所にローラを取り付けても良い。その場合、回転体は図示では横方向に回転するようになっているが、上下方向に回転するようにしてもよい。
【0031】
第4実施形態として図示は省略するが洗濯兼脱水槽10の底部にローラ12を取付けてもよい。この場合も第3実施形態と同様の作用を有する。
【0032】
第5実施形態としてローラ12に加えて、図6に示すように攪拌翼8であるパルセータに温風吹出し用の複数の孔17を形成してもよい。ヒータ9からの温風を攪拌翼8に設けた孔17に導く構造としては、ヒータ9から攪拌翼8の下方にのびるダクトを配設し、このダクトの先端を前記孔17に接続し、ダクトには洗濯行程時には閉塞し、乾燥行程時には開く弁を配設する。
【0033】
これにより、乾燥行程時にヒータ9に通電するとともにモータ2に通電して攪拌翼8を回転すると、攪拌翼8に設けた孔17から温風が吹出し、洗濯物に当たる。このとき、攪拌翼8が回転しているから孔17の位置も移動して孔17から吹出す温風は一点に集中することがなく、そして攪拌されている洗濯物に対して下方からも温風が当てられることになるから、洗濯物の各部に温風が満遍なく当り、乾燥ムラを防げる。
【0034】
また、前記ダクトに設けた弁は、洗濯行程時には閉じているから洗濯行程で水がダクト、ヒータ側に浸入することはない。
【0035】
なお、ダクトの配設部位は、前記のような攪拌翼8の下方に限定されるものではなく、乾燥行程時に洗濯兼脱水槽10を回転させる洗濯乾燥機の場合は、洗濯兼脱水槽10の側部周壁にダクトを開口することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の洗濯乾燥機の第1、第2実施形態を示す要部であるローラ部分の正面図である。
【図2】本発明の洗濯乾燥機の第1、第2実施形態を示す縦断側面図である。
【図3】本発明の洗濯乾燥機の第1、第2実施形態を示す要部であるローラ部分の縦断側面図である。
【図4】本発明の洗濯乾燥機の第1、第2実施形態を示す要部であるローラ部分取付部の正面図である。
【図5】本発明の洗濯乾燥機の第3実施形態を示す要部である攪拌翼の平面図である。
【図6】本発明の洗濯乾燥機の第5実施形態を示す要部である攪拌翼の平面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 外箱 2 モータ
3 回転軸 4 水槽
5 バランサ 6 水槽カバー
7 内フタ 8 攪拌翼
9 ヒータ 9a ダクト
10 洗濯兼脱水槽 11 水路
12 ローラ 12a 軸
12b ローラ単体 13 ラビリンス構造
14 隙間 15 ビス
16 取付金具 17 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に攪拌翼を設けた洗濯兼脱水槽内に温風を供給する乾燥行程を洗濯行程の次に設けた洗濯乾燥機において、乾燥行程で洗濯物を上下に攪拌するよう上下に回転する回転体を洗濯兼脱水槽内に配設したことを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項2】
前記回転体は、洗濯兼脱水槽の槽壁に設けてある水路カバーに取付けるローラであることを特徴とする請求項1記載の洗濯乾燥機。
【請求項3】
前記回転体は、洗濯兼脱水槽の底部に配設してある攪拌翼に取付けるローラであることを特徴とする請求項1記載の洗濯乾燥機。
【請求項4】
前記回転体は、洗濯兼脱水槽底部に取付けるローラであることを特徴とする請求項1記載の洗濯乾燥機。
【請求項5】
前記ローラは、複数個を縦横に隙間を設けて並設し、前記隙間を洗濯兼脱水槽内に温風を吹出す吹出口に形成したことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載の洗濯乾燥機。
【請求項6】
前記攪拌翼に温風吹出し用の吹出し孔を形成したことを特徴とする請求項1または請求項3記載の洗濯乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−273575(P2009−273575A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126171(P2008−126171)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000004422)日本建鐵株式会社 (152)
【Fターム(参考)】