説明

洗濯方法

【課題】被洗物の効果的な殺菌と、洗濯機のスケール付着防止と、を同時に行うことができる洗濯方法を提供する。
【解決手段】繊維製品からなる被洗物を洗濯するに際し、洗濯機の浴槽内の洗濯水がpH9以下であり、かつ電気伝導度が使用水との差で1000μS/cm未満であるときに、有機過酸を洗濯水に添加して被洗物を処理する。例えば、洗い用の浴槽21〜25とすすぎ用の浴槽26〜28をそれぞれ複数並設してなり、被洗物をこれら各浴槽間を移動させながら連続して洗濯を行う連続洗濯機を用いる場合、被洗物を洗い用の浴槽21〜25内において洗剤を用いて洗い、該洗剤で処理した被洗物を複数のすすぎ用の浴槽26〜28内においてすすぎを行う際に、浴槽内の洗濯水が上記条件を満たすすすぎ用の浴槽28に対し、有機過酸を投入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯方法に関するものである。より詳述すれば、リネンサプライ業やクリーニング業等の業務用の衛生洗濯に好適な洗濯方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リネンサプライ業やクリーニング業等の業務用洗濯における消毒/殺菌工程は、従来、80℃以上の高温で10分間以上洗浄する方法がとられている。かかる従来の洗濯方法は、洗浄時の殺菌であり、すすぎ時の衛生については考慮されていない。
【0003】
また、従来、業務用洗濯機として、予洗、本洗及び濯ぎ用の浴槽を複数並設してなり、被洗物をこれら各浴槽間を移動させながら連続して洗濯を行う連続洗濯機が知られている(下記特許文献1参照)。かかる連続洗濯機の内胴(内側ハウジング)や配管には、石鹸かすやスケールなどが付着し、菌が繁殖する温床となる。特にすすぎ用の浴槽では、温度だけでなく、洗剤濃度やアルカリ濃度も低くなり、菌の繁殖には好適な条件となる。そのため、これらの浴槽を通過し、洗濯された洗濯物は不衛生である。
【0004】
ところで、下記特許文献2には、業務用の衛生洗濯において過酢酸等の有機過酸を用いることが開示されている。しかしながら、この文献は、洗浄時のアルカリ性洗剤使用後に、有機過酸を接触させて、中和及び消毒させる方法である。このように消毒だけでなく、残存アルカリの中和にも有機過酸が使用されるため、衛生処理に必要な最適量以上の薬剤が必要であり、薬剤コストがかかるという問題がある。また、この方法では、有機過酸を投入する際の洗濯水は、洗剤の残りかすや汚れなどが多く含まれることから電気伝導度が高く、これらを分解するためにも有機過酸が消費されてしまうので、非効率であり、コストアップにつながる。また、この文献には、洗濯機のスケールによる汚れについては全く触れられていない。
【特許文献1】特開平05−208175号公報
【特許文献2】特開2000−219896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑み、被洗物の効果的な殺菌と、洗濯機のスケール付着防止と、を同時に行うことができる洗濯方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る洗濯方法は、繊維製品からなる被洗物を洗濯する方法であって、洗濯機の浴槽内の洗濯水がpH9以下であり、かつ電気伝導度が使用水との差で1000μS/cm未満であるときに、有機過酸を前記洗濯水に添加して前記被洗物を処理するものである。
【0007】
該洗濯方法の一態様として、洗い用の浴槽とすすぎ用の浴槽をそれぞれ複数並設してなり、被洗物をこれら各浴槽間を移動させながら連続して洗濯を行う連続洗濯機を用いることが好ましい。その場合、前記被洗物を前記洗い用の浴槽内において洗剤を用いて洗い、前記洗剤で処理した被洗物を前記複数のすすぎ用の浴槽内においてすすぎを行う際に、浴槽内の洗濯水がpH9以下であり、かつ電気伝導度が使用水との差で1000μS/cm未満であるすすぎ用の浴槽に対し、前記有機過酸を投入することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、pHが低く、かつ使用水との電気伝導度の差が1000μS/cm未満と小さいときに、有機過酸を投入して処理するので、有機過酸が中和や不純物の分解に消費されることを抑えて、効率的に殺菌を行うことができる。また、該有機過酸により、洗濯機に対するスケール付着を抑制することができ、石鹸かすやスケールによる2次汚染を防止することができる。また、浴槽内に被洗物があるため、浴槽の壁面と被洗物との間での物理的衝突による擦れ効果により、有機過酸による化学的なスケールの溶解除去効果と相俟って、洗濯機に対するスケールの付着防止効果を一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0010】
本発明で用いられる有機過酸としては、種々の過オキシカルボン酸が挙げられ、好ましくは、炭素数1〜10の脂肪族の過オキシカルボン酸を用いることである。具体的には、過ギ酸、過酢酸、過オキシプロピオン酸、過オキシヘキサン酸、シクロヘキサン過オキシカルボン酸などが挙げられ、特に好ましくは過酢酸を用いることである。
【0011】
有機過酸は、これを含む有機過酸製剤として用いられることが好ましい。有機過酸製剤としては、過オキシカルボン酸と、これに対応するカルボン酸と、過酸化水素とを含む水溶液が好ましく用いられる。該水溶液中で、過オキシカルボン酸と水とカルボン酸と過酸化水素は平衡状態にあり、過オキシカルボン酸を安定して使用することができる。ここで、過オキシカルボン酸に対応するカルボン酸とは、過オキシカルボン酸の過オキシカルボキシル基をカルボキシル基に置換した化合物を意味する。
【0012】
このような過オキシカルボン酸と水とカルボン酸と過酸化水素の平衡溶液を用いる場合、その有効過オキシカルボン酸濃度(製剤中に含まれる過オキシカルボン酸自体の濃度)は、1〜20重量%であることが好ましい。
【0013】
このような平衡溶液は、公知の方法で調製することができ、特に限定されない。例えば、カルボン酸と過酸化水素を水中で混合し、必要に応じて触媒や安定化剤を加えることにより、カルボン酸と過酸化水素が反応して過オキシカルボン酸が生成され、上記平衡溶液が得られる。カルボン酸又は過酸化水素の濃度を高くするほど高濃度の過オキシカルボン酸が生成されるので、上記有効濃度となるようにカルボン酸や過酸化水素の濃度を設定すればよい。
【0014】
上記のように有機過酸としては過酢酸が好ましく用いられるため、有機過酸製剤は、より好ましくは、過酢酸と酢酸と過酸化水素を含む水溶液からなることである。これらの各含有率は特に限定されないが、過酢酸が1〜20重量%、酢酸が10〜30重量%、過酸化水素が10〜30重量%であることが好ましく、より好ましくは過酢酸が3〜15重量%、酢酸が10〜25重量%、過酸化水素が10〜20重量%である。また、過酢酸/過酸化水素の重量比が0.03〜2.0であることが好ましく、0.15〜1.0であることがより好ましい。
【0015】
本発明において、洗濯対象となる被洗物としては、各種繊維製品が挙げられ、特に限定されない。商業洗濯を行う全ての洗濯物を対象被洗物とすることができる。素材としても特に限定されるものではないが、ポリエステルや綿を対象とすることが好ましく、更には、吸水性が高く、タオルやバスマットに利用される綿製品を被洗物とすることが、とりわけ効果的である。
【0016】
かかる被洗物を洗濯する際に、本発明では、洗濯機の浴槽内の洗濯水がpH9以下であり、かつ電気伝導度が使用水との差で1000μS/cm未満であるときに、上記有機過酸を洗濯水に添加して被洗物を処理する。ここで、使用水とは、洗濯に使用するために洗濯機の浴槽に外部から投入される水(より詳細には、投入前の水)のことであり、通常は水道水が用いられる。また、洗濯水とは、浴槽内に収容された液体であり、上記使用水を浴槽内に投入し被洗物を処理している状態での水である。
【0017】
洗濯水に対する有機過酸の添加量は、特に限定されないが、槽内の液量に対する有機過酸製剤の濃度として0.01〜0.5重量%であることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.3重量%である。
【0018】
有機過酸を添加する際の洗濯水のpHについて、その下限は特に限定されないが、pH4以上であることが好ましい。また、使用水との電気伝導度の差の下限も特に限定されず、該電気伝導度の差は小さいほど、すなわち清浄度が使用水に近づくほど、被洗物の殺菌効果と洗濯機のスケール付着防止効果を高めることができる。
【0019】
一般に、洗濯には、洗剤を用いた洗い工程と、その後のすすぎ工程とがあるが、洗い工程では、洗濯水はpHや電気伝導度が高く、上記条件を満たさない。すすぎ工程において、汚れや洗剤の残りかすを水とともに浴槽外に排出していくことで、上記条件を満たすようになる。そのため、有機過酸は、すすぎ工程、特にはその後半の段階で浴槽内に投入することが好ましい。
【0020】
上記洗い工程で用いられる洗剤としては、通常は、アルカリ性洗剤又は中性洗剤が用いられ、特にはアルカリ性洗剤が好適である。アルカリ性又は中性洗剤としては、従来一般に洗濯用洗剤に用いられるものを使用することができ、特に限定するものではないが、通常は、界面活性剤、ビルダー、及び必要に応じてその他の添加剤を含む。
【0021】
上記界面活性剤としては、アニオン界面活性剤及び/又はノニオン界面活性剤を用いることができる。アニオン界面活性剤としては、例えば、(1)炭素数10〜20の脂肪酸のアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩やカリウム塩)、モノエタノールアミン塩やトリエタノールアミン塩等のセッケン;(2)炭素数10〜20のα−スルホ脂肪酸エステルナトリウム等のα−スルホ脂肪酸エステル;(3)炭素数10〜14のアルキルを有するアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;(4)ドデシル硫酸ナトリウム等の炭素数10〜20の高級アルコール硫酸エステル塩などが挙げられる。また、ノニオン界面活性剤としては、例えば、(1)アルキル基の炭素数が6〜14であるポリオキシエチレンアルキルエーテル;(2)アルキル基の炭素数が6〜18であるポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルなどが挙げられる。
【0022】
上記ビルダーとしては、洗剤のpHを調整するためのアルカリビルダーが好ましく用いられる。アルカリビルダーとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩、ケイ酸ナトリウム等のアルカリ金属ケイ酸塩などが挙げられる。また、その他のビルダーとして、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩等の無機系リン酸塩、炭酸水素塩などを用いることもできる。
【0023】
上記その他の添加剤としては、例えば、再汚染防止剤、酵素、消泡剤、蛍光増白剤、抗菌剤などが挙げられる。
【0024】
洗濯に使用する洗濯機としては、リネンサプライ業やクリーニング業等の業務用洗濯機が好ましく用いられる。業務用洗濯機には、予洗、本洗及びすすぎがそれぞれ単独槽で行われるバッチ式洗濯機と、洗い用(即ち、予洗用、本洗用)及びすすぎ用の複数の浴槽を並設してなり、被洗物をこれら各浴槽間を移動させながら連続して洗濯を行う連続洗濯機がある。これらいずれの洗濯機も使用可能であるが、連続洗濯機を用いることが特に好ましい。
【0025】
連続洗濯機としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、特開平5−208175号公報に開示された連続洗濯機は、図1にその一例を示すように、両端に入口(11)と出口(12)を有するとともに少なくとも下部側を各浴槽(21〜28)に分割する複数の隔壁(13)を有する細長い外側ハウジング(10)と、該外側ハウジング(10)の各浴槽(21〜28)内に配設された短円筒状ドラム(31)を軸方向に連結してなる内側ハウジング(30)とを備え、内側ハウジング(30)を回転させることによって、浴槽(21〜28)内の被洗物の予洗/本洗/すすぎを各浴槽内で順次行いながら、ドラム(31)間を各ドラム内に設置されたすくいシャベル(32)の揺動により上流側から下流側に移送するように構成されている。図1に示す連続洗濯機は、8つの浴槽を持つタイプであり、そのうち、第1〜5槽が洗い用の浴槽(21〜25)であり、第6〜8槽がすすぎ用の浴槽(26〜28)である。
【0026】
上記連続洗濯機を用いて洗濯を行う場合、例えば、第1槽(21)を予洗槽とし、第2〜5槽(22〜25)を本洗槽とすることができる。その場合、入口(11)から投入された被洗物は、第1槽(21)にて水で予洗される。そして、第2槽(22)において洗剤が投入されることで、第2〜5槽(22〜25)にて被洗物の本洗が行われる。なお、洗い工程での洗濯液の温度は、特に限定されず、通常は40〜80℃である。
【0027】
このようにして洗剤で処理された被洗物は、次に、すすぎ用の浴槽(26〜28)にてすすぎが行われる。詳細には、すすぎ用の1番目の浴槽である第6槽(26)にて、上記洗いに供された汚れた水が排水された後、すすぎ用の洗濯水によってすすぎがなされる。すすぎ用の水は、この例では、最終の第8槽(28)に投入され、そこから第6槽(26)に向かって流れ、この水によりすすぎがなされる。このようにして第6槽(26)まで流れてきたすすぎ用の洗濯水は、上記のように被洗物とともに第5槽(25)から持ち込まれた汚れた水とともに、第6槽(26)にて排水される。
【0028】
上記すすぎ工程において、有機過酸は、洗濯水がpH9以下かつ使用水との電気伝導度の差1000μS/cm未満であることを満足するすすぎ用の浴槽に対して投入される。好ましくは、有機過酸は、最後のすすぎ用の浴槽である第8槽(28)に投入される。第8槽(28)は、すすぎ用の水(使用水)が外部から投入される槽であり、しかも、その前の浴槽である第7層(27)から被洗物とともに持ち込まれる洗濯水も、それより前の浴槽である第6槽(26)での洗濯水よりも一般にpHが低く、電気伝導度も小さいので、上記洗濯水の条件を満足することができる。
【0029】
このようにして第6〜8槽(26〜28)にてすすぎ処理とともに有機過酸で処理された被洗物は、出口(12)から排出されて、洗濯が終了する。洗濯された繊維製品は、その後、乾燥機等で乾燥されるが、乾燥方法については特に限定されず、公知の方法を採用することができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0031】
(殺菌対象菌)
殺菌対象とする耐熱性菌として、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)(以下、セレウス菌という。)を用いた。セレウス菌は、好気性の芽胞形成桿菌であり、耐熱性の芽胞を形成する。
【0032】
(pH及び電気伝導度の測定方法)
室温(25℃)にて、ビーカーにサンプル水100mlを採取し、株式会社堀場製作所製のカスタニーACT pHメーター D−24を用いて、そのpH電極と導電率電極を液に浸け、数値を読み取り、測定した。使用水との電気伝導度の差(電気伝導度Δ)は、次式により算出した。
電気伝導度Δ=(サンプル水の電気伝導度)−(使用水の電気伝導度)
(使用薬剤)
・リネンファインNP:ゲンブ株式会社製、アニオン界面活性剤(α−スルホ脂肪酸エステル)とノニオン界面活性剤(炭素数12のポリオキシエチレンアルキルエーテル)とを重量比(アニオン界面活性剤/ノニオン界面活性剤)で1/3で混合したものとビルダーからなる粉末洗剤、
・ハードビルダーPW:ゲンブ株式会社製のアルカリビルダー、
・過酸化水素:日本パーオキサイド社製、
・ハイジーンプラス:ゲンブ株式会社製の過酢酸製剤(過酢酸4.5重量%、酢酸15重量%、過酸化水素16重量%及び水64.5重量%からなる平衡溶液(水溶液))。
【0033】
(試験例1)
・条件1:ターゴトメーターによる洗濯試験
5cm×5cmに裁断した綿からなるタオル(タオルは予めセレウス菌が検出されないことを確認した。)に、1ml当たり2.0×10cfu(コロニー形成単位)のセレウス菌を含む溶液を滴下し付着させて、試験布を作製した。
【0034】
前記試験布を洗浄試験機としてターゴトメーターを用いて、80rpm、40℃、10分間、浴比(試験布/洗濯水)=1/33(重量比)の条件にて、洗濯試験を実施した。各洗濯水には、下記表1,2に記載した通りの濃度で、過酢酸製剤であるハイジーンプラスを添加して、上記洗濯試験を実施した。
【0035】
洗濯水のpHと電気伝導度Δは、表1,2に記載したとおりである。各洗濯水は、使用水(水道水)に、洗剤の残りかすに相当する塩化ナトリウムや、残留アルカリ剤に相当するソーダ灰を溶解させることにより調製し、表1,2記載のpHと電気伝導度Δとなるようにこれらの添加量を設定した。pHと電気伝導度Δの値は、ハイジーンプラスの添加直前での測定値である。
【0036】
このようにして洗濯を実施した各試験布を乾燥させた後、得られた試験布を、試験管に移し、100mlの滅菌水を加えた。振倒機にて1時間振倒することで抽出処理を行い、抽出液を500μl採取し、セレウス菌培地(セレウス菌の一次分離に用いるNGKG(NaClグルシル・キム・ゴッファート)培地)に添加した。プレートを反転させ、35℃±2℃で48時間培養した。培養後、培地上のコロニー数をカウントした。評価は、試験布3枚の試験後の平均コロニー数(cfu/100cm)を算出し、この平均値により行った。結果を表1,2に示す。
【0037】
・条件2:スケール付着防止効果の評価試験
上記条件1で用いた洗濯後の溶液を100ml採取し、ステアリン酸カルシウム0.1gを添加し、撹拌した。そして、その分散状態を以下の基準で評価した。なお、ステアリン酸カルシウムは、石鹸かすに相当するものであり、これを完全に分散させることができれば、排水とともに浴槽外に排出することができるため、スケールの付着を防止することができる。
○:完全に分散している。×:分散せず。
【表1】

【表2】

【0038】
表2に示すように、比較例1では、過酢酸製剤を使用しなかったため、十分な分散状態や殺菌効果が得られなかった。また、比較例2〜4では、過酢酸製剤を添加する洗濯水のpHや電気伝導度Δが規定の範囲外であったため、効果が得られなかった。これに対し、本発明に係る実施例では、セレウス菌のコロニー数が10cfu/100cm未満であり優れた殺菌効果が示されるとともに、十分な分散状態が得られた。
【0039】
(試験例2:連続洗濯機による洗濯試験)
綿からなるタオル(タオルは予めセレウス菌が検出されないことを確認した。)に、1ml当たり2.0×10cfu(コロニー形成単位)のセレウス菌を含む溶液を滴下し付着させて、被洗物を作製した。
【0040】
連続洗濯機として、三菱重工業産業機器株式会社製の三菱ゼンキングCR60−8槽を用いて、上記被洗物に対する洗濯試験を実施した。この装置は、洗いが第1〜5槽、すすぎが第6〜8槽で行うことができる連続洗濯機である。
【0041】
洗濯に際しては、図1に示すように、第1槽(21)を予洗槽として水で予洗し、第2〜5槽(22〜25)にて洗剤で本洗を行い、第6槽(26)にて排水した後、第6〜8槽(26〜28)ですすぎを行った。本洗では、下記表3の「本洗」の欄に記載の各薬剤を、表中に記載の濃度となるように全て第2槽に投入した。
【0042】
すすぎでは、1時間当たり8トンに相当する量のすすぎ用の使用水(水道水)を第8槽(28)に投入し、これを第8槽(28)から第6槽(26)に向けて流し、第6槽(26)にて排水しながら、第6〜8槽(26〜28)にて被洗物のすすぎを行った。かかるすすぎ工程において、実施例のものでは、下記表3に示す過酢酸製剤であるハイジーンプラスを、表中に記載の濃度となるように、第8槽(28)で投入した。なお、ハイジーンプラスは、第8槽(28)内の被洗物が入れ替わる毎(2分毎)に上記濃度となるように投入した。一方、比較例5ではハイジーンプラスは添加しなかった。また、比較例6ではハイジーンプラスは第7槽(27)にて投入した。表3中のpHと電気伝導度Δは、ハイジーンプラス投入直前における投入対象浴槽から採取した洗濯水についての測定値であり、従って、実施例5,6及び比較例5では第8層(28)から採取した洗濯水、比較例6では第7槽(27)から採取した洗濯水について測定した値である。
【0043】
このようにしてすすぎをした後、連続洗濯機から取り出し、乾燥により仕上がった被洗物について、セレウス菌の殺菌効果を確認した。
【0044】
殺菌効果の確認は次の通りである。仕上がった被洗物を10cm×10cmの大きさに裁断し、試験管に移し、100mlの滅菌水を加えた。振倒機にて1時間振倒することで抽出処理を行い、抽出液を500μl採取し、セレウス菌培地に添加した。プレートを反転させ、35℃±2℃で48時間培養した。培養後、培地上のコロニー数をカウントした。評価は、試験布3枚の試験後の平均コロニー数(cfu/100cm)を算出し、この平均値により行った。結果を表3に示す。
【0045】
また、ハイジーンプラスを添加した後の浴槽(実施例5,6及び比較例5では第8槽(28)、比較例6では第7槽(27))内の洗濯水を100ml採取し、ステアリン酸カルシウム0.1gを添加して撹拌し、その分散状態を以下の基準で評価した。
○:完全に分散している。×:分散せず。
【表3】

【0046】
表3に示すように、過酢酸製剤を用いなかった比較例5や、pH及び電気伝導度Δが高い段階で過酢酸製剤を投入した比較例6では、十分な殺菌効果が得られず、また分散状態も不十分であった。これに対し、本発明に係る実施例5,6では、セレウス菌のコロニー数が10cfu/100cm未満であり、優れた殺菌効果が示されるとともに、十分な分状態が得られ、スケールの付着防止効果に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、リネンサプライ業やクリーニング業等の業務用洗濯を始めとした様々な衛生洗濯分野に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施例で用いる連続洗濯機の概略断面図である。
【符号の説明】
【0049】
10…外側ハウジング、21〜25…洗い用の浴槽、26〜28…すすぎ用の浴槽、30…内側ハウジング、31…ドラム、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維製品からなる被洗物を洗濯する方法であって、洗濯機の浴槽内の洗濯水がpH9以下であり、かつ電気伝導度が使用水との差で1000μS/cm未満であるときに、有機過酸を前記洗濯水に添加して前記被洗物を処理する洗濯方法。
【請求項2】
洗い用の浴槽とすすぎ用の浴槽をそれぞれ複数並設してなり、被洗物をこれら各浴槽間を移動させながら連続して洗濯を行う連続洗濯機を用いて、前記被洗物を前記洗い用の浴槽内において洗剤を用いて洗い、前記洗剤で処理した被洗物を前記複数のすすぎ用の浴槽内においてすすぎを行う際に、浴槽内の洗濯水がpH9以下であり、かつ電気伝導度が使用水との差で1000μS/cm未満であるすすぎ用の浴槽に対し、前記有機過酸を投入することを特徴とする請求項1記載の洗濯方法。
【請求項3】
前記有機過酸が過酢酸であり、過酢酸と酢酸と過酸化水素を含む水溶液からなる過酢酸製剤を前記洗濯水に添加する、請求項1又は2記載の洗濯方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−13560(P2010−13560A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174848(P2008−174848)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】