説明

洗濯機

【課題】乾燥行程時には洗濯兼脱水槽内の衣類が上下方向に入れ替りやすく、衣類に皺が生じたり、乾燥ムラが発生することを防止でき、また、洗い行程では水流を複雑にできてより一層の洗浄効果が期待でき、さらに洗濯兼脱水槽内からの衣類の取出し作業を行いやすくできる洗濯機を提供する。
【解決手段】外箱1内にその四隅から吊下げ手段14によって水槽3を吊下げ、底部に攪拌翼を配設した洗濯兼脱水槽を前記水槽3内に配設し、洗濯兼脱水槽の下方にギヤ、クラッチなどの機構を介してモータ33を配設した洗濯乾燥機において、前記吊下げ手段14は、下部に防振部分15を有する吊り棒5の上部に雄ネジ16を有する外周ネジ管を吊り棒本体に披嵌して形成し、この雄ネジ16の部分を駆動部で回転する雌ネジ回転体にネジ込んで吊り下げ長さを調整可能としたことを特徴とする洗濯機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機の特に水槽の支持手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、洗濯機は外箱内にその四隅から吊下げ手段によって水槽を吊下げ、底部に攪拌翼を配設した洗濯兼脱水槽を前記水槽内に配設し、洗濯兼脱水槽の下方にギヤ、クラッチなどの機構を介してモータを配設したもので、外箱の上部の四隅部から、吊り棒を主体とする吊下げ手段によって水槽が吊持されており、この槽体の内部に、洗濯槽と脱水槽とを兼ねる内槽が配設されている。
【0003】
下記特許文献1にも示されるが、吊下げ手段の従来構成としては、図8及び図9に示すように、洗濯機における外箱1の上部の四隅部(1か所のみ代表して図示)に、それぞれ、凹部2aを有する支持板2が設けられ、一方、外箱1内に配設される水槽3の下部の外周部には、挿通孔4aを有する下部支持部4が一体に設けられている。
【特許文献1】特開2000−237491号公報(図12及び図13)
【0004】
そして、その下部支持部4の挿通孔4aには、吊り棒5の下部が挿通されている。吊り棒5の下端部には、ワッシャワイヤ6を介してスプリング受け部材7が抜け止め状態に装着されており、その上方に、下から順に、圧縮コイルばねから成るスプリング8、ダンパケース9、ゴム製のダンパ部材10及び下部受け部材11が、それぞれ吊り棒5に挿通された状態で装着され、その最上部に位置する下部受け部材11が、前記下部支持部4の下面に下方から摺動可能に当接するようになっている。又、ダンパ部材10の内周面と、これに対応する吊り棒5の下部外周面との間には、潤滑剤であるグリス12が介在されている。
【0005】
他方、吊り棒5の上端部には半球状の上部受け部材13が装着されており、この上部受け部材13が前記支持板2の球面凹部2aに摺動可能に当接して支持され、球面軸受けとなるようになっている。そして、それら、吊り棒5と、上部受け部材13、下部受け部材11、ダンパ部材10、ダンパケース9、スプリング8、スプリング受け部材7、ワッシャワイヤ6並びにグリス12により吊下げ手段14が構成され、4組の吊下げ手段14により、水槽3が外箱1に上下動可能に吊持されている。
【0006】
そして、洗濯行程や脱水行程では洗濯物である衣類の洗濯兼脱水槽内での片寄りによるアンバランスによって、洗濯兼脱水槽や水槽に大きな振動が発生するが、吊り棒によってこの振動が外箱に伝わらないようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、乾燥手段を備えた洗濯乾燥機が出現している。この洗濯乾燥機においても、通常の洗濯機と同じく、洗濯兼脱水槽の形状は鉛直方向に長い円筒型で、かつ、洗濯兼脱水槽の回転中心軸が鉛直方向を向いているため、洗濯乾燥時において衣類の鉛直方向への回転移動が少なくなる傾向にあり、その結果、衣類が洗濯兼脱水槽内で上下方向に入れ替りにくくなって、衣類に皺が生じたり、乾燥ムラが生じたりしやすかった。
【0008】
また、洗い行程でも、ほとんどが水平方向の単純な水流であり、洗浄効果が十分ではなかった。
【0009】
さらに、洗濯兼脱水槽が長い円筒型であるため、このような形状の槽が垂直に配設されていると、槽内の衣類を取出す際、特に底部のものを取出しにくく、使い勝手がよくなかった。
【0010】
本発明は前記従来例の不都合を解消するものとして、乾燥行程時には洗濯兼脱水槽内の衣類が上下方向に入れ替りやすく、衣類に皺が生じたり、乾燥ムラが発生することを防止でき、また、洗い行程では水流を複雑にできてよりいっそうの洗浄効果が期待でき、さらに洗濯兼脱水槽内からの衣類の取出し作業を行いやすくできる洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は前記目的を達成するものとして、外箱内にその四隅から吊下げ手段によって水槽を吊下げ、底部に攪拌翼を配設した洗濯兼脱水槽を前記水槽内に配設し、洗濯兼脱水槽の下方にギヤ、クラッチなどの機構を介してモータを配設した洗濯乾燥機において、前記吊下げ手段は、下部に防振部分を有する吊り棒の上部に雄ネジを有する外周ネジ管を吊り棒本体に披嵌して形成し、この雄ネジ部分を駆動部で回転する雌ネジ回転体にネジ込んで吊り下げ長さを自動調整可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
水槽は、外箱内で四隅のうちの全部または一部を吊り下げ長さを自動調整可能とした吊り棒による吊下げ手段を介して外箱から吊下げられるから、この吊り下げ長さを変えることで外箱内で水槽が傾斜する。よって、洗濯兼脱水槽の回転中心軸が鉛直方向ではなく、斜め方向となるから、乾燥行程時には洗濯兼脱水槽内の衣類が鉛直方向に回転移動しやすくなり、皺の発生や乾燥ムラを抑えることができる。
【0013】
また、吊り棒に雄ネジを有する外周ネジ管を吊り棒本体に披嵌して形成しているので、この雄ネジ部分を駆動部で回転する雌ネジ回転体にネジ込んでも振動が吸収できる。
【0014】
また、洗い行程でも洗濯兼脱水槽の回転中心軸が斜め方向となることで、水流が複雑となって洗浄効果が増大する。
【0015】
さらに、水槽を手前に傾斜させることで、洗濯兼脱水槽内の衣類を取出す際に槽の上部開口面が使用者の方に斜めに向き、洗濯兼脱水槽の手前の高さが低くなる。これにより、槽内を見やすくなって、衣類の取出し作業が行いやすくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面について本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の洗濯機の実施形態を示す側面側の説明図、図2は同上平面側の説明図、図3は同上要部である吊下げ手段の正面図、図4はその要部の縦断正面図で、洗濯機の全体構成は既に説明したとおり、洗濯機は外箱1内にその四隅から吊下げ手段14によって水槽3を吊下げ、図示は省略するが底部に攪拌翼を配設した洗濯兼脱水槽を前記水槽内に配設し、洗濯兼脱水槽の下方にギヤ、クラッチなどの機構を介してモータ33を配設している。
【0017】
本発明は前記吊下げ手段14として、図3に示すように、下部に防振部分15を組み込んだ吊り棒5の上部に雄ネジを有する外周ネジ管を吊り棒本体に披嵌して形成し、この雄ネジ16の部分を駆動部17で回転する雌ネジ回転体18にネジ込んで吊り下げ長さを自動調整可能とした。
【0018】
駆動部17はDCモータによるもの、雌ネジ回転体18はこのモータに歯合する嵌合歯車によるものであるが、これら駆動部17と雌ネジ回転体18とで駆動ユニット(アクチュエーター)19が形成され、吊り棒5の上部にこれが一体物として組み込まれる。
【0019】
図中20、21は駆動ユニット(アクチュエーター)19の上下位置で吊り棒5の駆動部分を埃や水分から保護する密閉ケースとしての防塵ケース、22は駆動ユニット(アクチュエーター)19の下面に形成する球面座である。
【0020】
合成樹脂製の外周ネジ管による雄ネジ16は、吊り棒5の本体とインサート成形で製作を行うことになるが、その場合にはインサート成形時の熱収縮や、使用時の雰囲気温度による熱収縮(洗濯乾燥機では乾燥時の温度が70℃となる)を緩和させる工夫が必要となる。
【0021】
そこで本発明は、図5に示すように外周ネジ管による雄ネジ16を長さ方向に分割するか、またはネジ16aのピッチ以下の幅のスリット23を間隔を存して形成してこのような熱収縮に対応させる。
【0022】
前記雌ネジ回転体18はこれを合成樹脂とした場合は、すくなくとも嵌合部である歯部分は金属とし、インサートで形成する。この嵌合部は摺動材(例えばグリス等)を塗布するか、歯車のインサート部分をポーラス状の金属として、その中に摺動材を含油させて自動注入させることができるものとする。
【0023】
防振部分15は前記図8、図9に示した従来例と同じく、下部受け部材11、ダンパ部材10、ダンパケース9、スプリング8、スプリング受け部材7、ワッシャワイヤ6、並びにグリス12により形成するものでよい。図6に雄ネジ16の部分を、図7に防振部分15も含めた吊り棒5を示す。
【0024】
そして、前記球面座22を外箱1の内側に突出させたフランジ状の吊り板24の球形凹部(図示せず)に係合させ、防振部分15を水槽3の側部から側方に突出させたフランジ25に係止する。これにより、吊下げ手段14が外箱1と水槽3との間に懸架される。
【0025】
本発明の駆動ユニット(アクチュエーター)19を組み込んだ吊下げ手段14は外箱1内の四隅に配置されるが、図1の例は四隅の全てに本発明の構成による吊下げ手段14を配置する場合である。
【0026】
ただ、四隅の全てに本発明の構成による吊下げ手段14を配置する必要はなく、少なくとも対角上または前後に配置すればよく、他の吊下げ手段については従来の吊り棒を使用すれば低コストとなる。
【0027】
次に動作について説明する。駆動ユニット(アクチュエーター)19を組み込んだ吊下げ手段14は、駆動部17により雌ネジ回転体18を回転駆動することにより吊り棒5を雄ネジ16を介して上下動でき、これにより吊り棒5の長さを調整できる。
【0028】
また、吊り棒5は球面座22を介して洗濯機本体に保持されているため、洗濯・脱水等の運転時に発生する水槽3の円周方向の移動に対してはフレキシブルに稼動できる。よって、雌ネジ回転体18を駆動させる駆動部17には水槽を傾斜させるための駆動以外の余分な負荷、例えば脱水時の振動が掛からない構造である。
【0029】
例えば乾燥行程時には、駆動ユニット(アクチュエーター)19を駆動して後部に配置した吊り棒5を短くすれば、水槽3の後部が持ちあがる。
【0030】
その結果、水槽3は前方に向かって斜めに傾斜するから、水槽3内の洗濯兼脱水槽はその回転中心軸が鉛直方向から斜め方向に変換され、洗濯兼脱水槽内の衣類は効率よく上下方向に入れ替り、乾燥効率が向上する。
【0031】
また、洗い行程時にも水槽3を傾斜させることで、水流の方向が複雑になり、洗浄効果が増大する。
【0032】
さらに、洗濯終了時に洗濯兼脱水槽内から衣類を取出す際にも、水槽3を手前に傾斜させれば、洗濯兼脱水槽の上部開口の手前側が低位置となると同時に洗濯兼脱水槽内が見やすくなり、衣類の取出し作業が行いやすくなる。
【0033】
一方、脱水行程時には、水槽3を水平に位置させ洗濯兼脱水槽の回転中心軸を鉛直方向に保持することで、洗濯兼脱水槽を水平に回転させて遠心力を有効に活用させ脱水効率が低下しないようにする。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の洗濯機の実施形態を示す側面側の説明図である。
【図2】本発明の洗濯機の実施形態を示す平面側の説明図である。
【図3】本発明の洗濯機の要部である吊下げ手段の正面図である。
【図4】吊下げ手段の要部の縦断正面図である。
【図5】吊り棒とその上部に取り付けた雄ネジを有する外周ネジ管を示す縦断正面図である。
【図6】吊り棒その上部に取り付けた雄ネジを有する外周ネジ管を示す斜視図である。
【図7】吊り棒の斜視図である。
【図8】吊下げ手段の従来例を示す主要部分の、一部を省略した分解斜視図である。
【図9】吊下げ手段の従来例を示す主要部分の、一部を省略した縦断正面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 外箱 2 支持板
2a 凹部 3 水槽
4 下部支持部 4a 挿通孔
5 吊り棒 6 ワッシャワイヤ
6a フック部 7 スプリング受け部材
8 スプリング 9 ダンパケース
10 ダンパ部材 11 下部受け部材
12 グリス 13 上部受け部材
14 吊下げ手段 15 防振部分
16 雄ネジ 16a ネジ
17 駆動部 18 雌ネジ回転体
19 駆動ユニット(アクチュエーター)
20、21 防塵ケース
22 球面座 23 スリット
24 吊り板 25 フランジ
33 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外箱内にその四隅から吊下げ手段によって水槽を吊下げ、底部に攪拌翼を配設した洗濯兼脱水槽を前記水槽内に配設し、洗濯兼脱水槽の下方にギヤ、クラッチなどの機構を介してモータを配設した洗濯機において、前記吊下げ手段は、下部に防振部分を有する吊り棒の上部に雄ネジを有する外周ネジ管を吊り棒本体に披嵌して形成し、この雄ネジ部分を駆動部で回転する雌ネジ回転体にネジ込んで吊り下げ長さを調整可能としたことを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
雄ネジ部分は吊り棒とインサート成形を行い、長さ方向に分割またはネジピッチ以下の幅のスリット間隔を存して形成する請求項1記載の洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−54936(P2008−54936A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235629(P2006−235629)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000004422)日本建鐵株式会社 (152)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】