洗濯機
【課題】クラッチの切替えをより確実に行う。
【解決手段】実施形態の洗濯機は、クラッチ切替手段によるクラッチの状態の切替え時に、モータを短時間回転させて停止させる切替補助動作を実行する切替補助動作実行手段とを具備し、前記モータは、ステータコイルを有するステータと、ロータコアに多数個の永久磁石を有するロータとを備えて構成されると共に、前記永久磁石には、高保磁力永久磁石と磁化状態を変更可能なレベルの低保磁力永久磁石とが含まれており、前記ステータコイルに励磁電流を発生させることで、前記低保磁力永久磁石の磁化状態を増磁、減磁する磁化状態調整手段を備え、前記磁化状態調整手段は、前記クラッチの切替え時において、前記低保磁力永久磁石を増磁させる。
【解決手段】実施形態の洗濯機は、クラッチ切替手段によるクラッチの状態の切替え時に、モータを短時間回転させて停止させる切替補助動作を実行する切替補助動作実行手段とを具備し、前記モータは、ステータコイルを有するステータと、ロータコアに多数個の永久磁石を有するロータとを備えて構成されると共に、前記永久磁石には、高保磁力永久磁石と磁化状態を変更可能なレベルの低保磁力永久磁石とが含まれており、前記ステータコイルに励磁電流を発生させることで、前記低保磁力永久磁石の磁化状態を増磁、減磁する磁化状態調整手段を備え、前記磁化状態調整手段は、前記クラッチの切替え時において、前記低保磁力永久磁石を増磁させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯機では、洗い槽兼脱水槽である回転槽に撹拌体を備え、洗い行程において運転時には、モータの回転を撹拌体にのみ伝達して撹拌体を回転駆動し、脱水行程においては、前記モータの回転を撹拌体及び回転槽の双方に伝達してそれらを一体的に高速回転させるようになっている。そして、クラッチを、二位置間(脱水位置と洗い位置との間)で移動させることにより、回転槽と撹拌体との連結及び切離しを行う構成が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−113088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなクラッチにより回転槽と撹拌体との連結及び切離しを行う構成では、クラッチの切替え状態が不十分になる虞がある。そこで、特許文献1では、クラッチの切替時に、連結及び切離しを促進するために、モータを短時間回転させて嵌合部とクラッチとの間の嵌め合いの位置を変更する切替補助動作を実行するようにしている。しかし、例えば脱水すすぎの行程後のクラッチの切替時には、洗濯物が撹拌体や回転槽に貼付いている等の事情があり、切替補助動作を行なう際に、モータの大きなトルクが必要となるため、クラッチの切替えが確実に行なわれなくなる虞がある。そこで、クラッチの切替えをより確実に行うことが可能な洗濯機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態の洗濯機は、洗濯物が収容される回転槽と、この回転槽内に設けられモータにより回転される撹拌体と、前記モータの回転を前記回転槽及び撹拌体に伝達する脱水位置と、前記モータの回転を前記撹拌体のみに伝達する洗い位置との間で切替え可能なクラッチと、洗濯運転の行程に応じて前記クラッチを脱水位置と洗い位置との間で切替えるクラッチ切替手段と、前記クラッチ切替手段による前記クラッチの状態の切替え時に、前記モータを短時間回転させて停止させる切替補助動作を実行する切替補助動作実行手段とを具備し、前記モータは、ステータコイルを有するステータと、ロータコアに多数個の永久磁石を有するロータとを備えて構成されると共に、前記永久磁石には、高保磁力永久磁石と磁化状態を変更可能なレベルの低保磁力永久磁石とが含まれており、前記ステータコイルに励磁電流を発生させることで、前記低保磁力永久磁石の磁化状態を増磁、減磁する磁化状態調整手段を備え、前記磁化状態調整手段は、前記クラッチの切替え時において、前記低保磁力永久磁石を増磁させるところに特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】第1の実施形態を示すもので、洗濯機の全体構成を概略的に示す縦断側面図
【図2】永久磁石モータの斜視図
【図3】ロータの要部の拡大斜視図
【図4】ステータおよびロータの一部を直線状に展開して示す図
【図5】電気的構成を概略的に示す図
【図6】クラッチの脱水位置におけるクラッチ部分の拡大縦断面図
【図7】クラッチの洗い位置におけるクラッチ部分の拡大縦断面図
【図8】モータ及び回転伝達機構部分の縦断面図
【図9】モータ及びクラッチ部分の分解斜視図
【図10】クラッチの縦断面図
【図11】被嵌合部及び嵌合部の歯部の形状を示す拡大図
【図12】共回り防止装置にクラッチレバーを組付けた状態の斜視図
【図13】共回り防止装置にクラッチレバーを組付けた状態の縦断面図
【図14】共回り防止装置の斜視図
【図15】図14のX−X線に沿う支持部の外壁部の縦断面図
【図16】クラッチレバーの上下反転した状態の斜視図
【図17】図16のY−Y線に沿うクラッチレバーの軸部部分の縦断面図
【図18】脱水運転時におけるクラッチレバーの斜面部と操作レバーの斜面部との関係を示す縦断背面図
【図19】ギアドモータと操作レバーとの関係を示すもので、排水弁の閉塞状態(a)及び開放状態(b)の底面図
【図20】脱水側クラッチ切替補助動作におけるモータの動作パターンを示す図
【図21】洗い側クラッチ切替補助動作におけるモータの動作パターンを示す図
【図22】洗濯運転の行程とモータのトルクの変動との関係を示すタイムチャート
【図23】第2の実施形態を示すもので、増磁処理を複数回繰返して実行した場合のモータのトルクの変動の様子を示す図
【図24】第3の実施形態を示すもので、ステータコイルの並列状態(a)と直列状態(b)とを切替える様子を示す図
【発明を実施するための形態】
【0007】
(1)第1の実施形態
以下、第1の実施形態による洗濯機について、図1ないし図2 を参照しながら説明する。まず、図1は、洗濯機1の概略構成を示している。ここで、ほぼ矩形箱状をなす外箱2内には、脱水時等に水を受ける水槽3が弾性吊持機構4を介して設けられている。そして、前記水槽3内には、内部に洗濯物が収容される洗い槽兼脱水槽としての回転槽5が回転可能に設けられており、またその回転槽5内の底部には、水流生成用の撹拌体(パルセータ)6が設けられている。
【0008】
詳しくは後述するように、前記水槽3の外底部には、インバータ駆動方式のアウタロータ形のモータ7及び、そのモータ7の回転駆動力を前記回転槽5及び撹拌体6へ伝達する回転伝達機構8が設けられている。これらモータ7及び回転伝達機構8により、洗剤洗いやすすぎ洗いの運転においては、前記撹拌体6が正逆回転されて回転槽5内に撹拌水流が生成され、脱水運転においては、前記回転槽5が撹拌体6と一体的に高速回転されるようになっている。
【0009】
また、前記水槽3の底部には、前記回転槽5からの排水を行うための排水路9が設けられ、この排水路9に、排水弁10を介して排水ホース11が接続されている。前記排水弁10は、ギアドモータ12(図5、図19参照)により開閉される。さらに、水槽3の底部には、該水槽3からの排水を行うための排水口13が設けられ、詳しく図示はしないが、この排水口13が前記排水ホース11に接続されている。尚、前記排水路9には、エアトラップ14が設けられ、このエアトラップ14内の圧力が図示しないエアチューブを介して水位センサ64(図5にのみ図示)に導かれるようになっている。
【0010】
一方、前記回転槽5の上端部にはバランスリング15が装着されていると共に、脱水時の該回転槽5からの排水を、そのバランスリング15との間を通して行うための脱水孔16が設けられている。また、前記水槽3の上端部には、一部のみ示すように、ほぼリング状をなす桶カバー17が設けられており、その開口部が前記回転槽5の上面開口部に連通している。
【0011】
そして、前記外箱2の上端部には、プラスチック製のトップカバー18が設けられている。詳しく図示はしないが、このトップカバー18は、中央にほぼ円形の洗濯物出入口を有する矩形枠状をなすと共に、薄形の中空箱状をなしている。このトップカバー18の上面部には、前記洗濯物出入口を開閉するための二つ折りタイプの蓋18aが設けられている。尚、この蓋18a部分には、該蓋18aの開閉を検知するための蓋スイッチ65(図5にのみ図示)が設けられている。
【0012】
詳しい説明及び図示は省略するが、前記トップカバー18の後辺部には、回転槽5内に給水を行うための給水弁66(図5参照)等からなる給水機構や、洗剤・助剤供給装置が設けられている。また、後述するように、前記トップカバー18の前辺部には、上面に位置して操作パネル67(図5参照)が設けられていると共に、その内側に位置してマイコンを主体としてなり全体の制御を行なう制御装置68が設けられている。さらには、ポンプモータ69(図5参照)により駆動され風呂水等を給水するための風呂水ポンプも設けられている。
【0013】
ここで、前記回転伝達機構8について、図6ないし図19を参照して述べる。図8は、モータ7を含んだ回転伝達機構8部分の構成を示しており、ここで、前記水槽3の外底部には、中空ハウジング19が取付けられている。この中空ハウジング19は、上フレーム20と下フレーム21とを外周側部分にて結合して構成されており、上フレーム20の中央部には、上向きに凸となる円筒部20aが形成されていると共に、下フレーム21の中央部には下向きに凸となる円筒部21aが形成されている。
【0014】
前記円筒部20a及び円筒部21a内には、夫々ボールベアリングからなる軸受22及び23が嵌合固着され、これら軸受22、23に支持されて中空状(円管状)の槽軸24が設けられている。この槽軸24の軸受22から突出する上端部外周には、支持筒25が嵌合固着され、この支持筒25の上端のフランジ部25aに前記回転槽5が固定されている。これにて、槽軸24の回転により回転槽5が一体回転する。尚、円筒部20aの内周面と前記支持筒25の外周面との間には、シール部材26が設けられている。
【0015】
そして、前記槽軸24の中空部内には、撹拌軸27が上下に貫通するように挿通されている。この撹拌軸27は、槽軸24の内周部上下部に設けられたメタル軸受28、28並びに前記支持筒25の上端部内周部に設けられた軸受29によって槽軸24に対して回転自在に支持されており、その上端部が前記撹拌体6に連結されている。これにて、撹拌軸27の回転により撹拌体6が一体回転する。また、この撹拌軸27の下端部が前記モータ7に連結されている。
【0016】
前記モータ7は、図8、図9並びに図3にも示すように、リング状をなすステータ30と、薄形円筒容器状をなすロータ31とから構成される。このモータ7の詳細な構造については後述する。図8に示すように、前記ステータ30は、前記下フレーム21の下面に対して下方からねじ止めされることにより取付けられている。
【0017】
一方、図8、図9に示すように、前記ロータ31の中心部には、円筒状のボス部36が固着され、前記撹拌軸27の下端部がこのボス部36に対してセレーション結合状態に挿入され、例えばナット締めにより取付けられている。従って、前記ロータ31の回転は常に撹拌軸27にダイレクトに伝達される。尚、図6及び図7にも示すように、このボス部36は、その上端が、前記槽軸24の下端よりも僅かに下方に位置され、また、その外径寸法が、該槽軸24の外径寸法よりも大きく構成されている。
【0018】
そして、前記槽軸24の下端外周部には、該槽軸24と前記ボス部36との連結及び切離しを行なうためのクラッチ37が設けられている。これと共に、前記下フレーム21の下面部には、このクラッチ37を上下動させてその状態を切替えるためのクラッチ切替手段の一部を構成する昇降機構38が設けられると共に、嵌合部を有した共回り防止装置39が設けられる。
【0019】
前記クラッチ37は、合成樹脂この場合ガラスフィラー入りのポリアセタール樹脂からなり、図6、図7、図10にも示すように、全体としてほぼ円筒状をなしている。そして、クラッチ37は、その内周部が、上半部で径小、下半部にて径大とされた段付き形状とされると共に、上半部の内周面全周には、上下方向に延びる係合部たる上部内セレーション部40が形成され、下半部の内周面全周には、上下方向に延びる下部内セレーション部41が形成されている。
【0020】
これに対し、図6、図7、図9に示すように、前記槽軸24の下端部(前記軸受23から下方に突出した部位)の外周部には、前記上部内セレーション部40に対応して上下方向に延びる摺動案内部たるセレーション部42が形成されている。一方、前記ボス部36の上部外周部にも、前記下部内セレーション部41に対応して係合部たるセレーション部43が形成されている。前記クラッチ37は、上部内セレーション部40が前記セレーション部42に常に係合されることにより、槽軸24の下端部外周に上下動自在且つ周方向に一体的に回転するように嵌挿されている。
【0021】
これにて、クラッチ37が図6及び図8に示す下降した脱水位置にあるときには、クラッチ37の上部内セレーション部40が槽軸24のセレーション部42に係合すると共に、下部内セレーション部41がボス部36のセレーション部43に係合し、もってボス部36ひいては撹拌軸27と槽軸24とを一体的に回転するように連結する。このとき、槽軸24の下端部外周部には、前記クラッチ37と前記軸受23の下端部との間に位置して、クラッチ付勢手段たるコイルばね44が配設され、クラッチ37は常に下降位置(脱水位置)に向けて付勢される。このクラッチ37は撹拌軸27及び槽軸24と同心状態をなす。
【0022】
そして、図10にも示すように、前記クラッチ37の上端部外周部には、円形鍔状のフランジ部37aが一体に形成されており、そのフランジ部37aの上面外周部に、円周方向に並んだ複数の歯部45aを有するいわばウォームギアの如き形態の被嵌合部45が形成されている。このとき、図11に示すように、歯部45aの先端部(上端部)は山形とされ、その両側の傾斜面の傾斜角度αは、水平方向に対して45度未満とされている。
【0023】
これに対し、前記共回り防止装置39は、例えばガラスフィラー入りのポリアセタール樹脂からなり、図6、図7、図13等に示すように、前記下フレーム21の円筒部21aの外周に嵌込む大きさの薄形の円筒状をなすと共に、上端外周にフランジ部39aを一体に有し、そのフランジ部39aにて下フレーム21の底面にねじ止め固定されている。この場合、共回り防止装置39は、円筒部21a(軸受部)の外周に位置して設けられているので、回転伝達機構8部分全体を上下方向にさほど大形化することなく配設される。
【0024】
このとき、この共回り防止装置39の内周面の下半部には、図12〜図14にも示すように、前記クラッチ37の上昇した洗い位置にてその被嵌合部45(歯部45a同士間の谷部)に噛合う歯部46aを有する嵌合部46が設けられている。この場合、図11に示すように、歯部46aの先端部(下端部)も、前記嵌合部45の歯部45aと同様な山形とされ、その両側の傾斜面の傾斜角度αが、水平方向に対して45度未満とされている。さらに、この共回り防止装置39には、後述するクラッチレバー47を支持するための一対の支持部48、48が一体に設けられている。
【0025】
これにて、クラッチ37が図7に示す上昇した洗い位置にあるときには、ボス部36から切離されて上部内セレーション部40がセレーション部42に係合するのみとなると共に、被嵌合部45が嵌合部46に嵌合し、クラッチ37が下フレーム21ひいては水槽3に固定され回転不能とされ、もって撹拌軸27のみが回転可能とされるようになっている。尚、詳しく図示はしないが、本実施形態では、クラッチ37の脱水位置と洗い位置との途中の位置において、クラッチ37の下部内セレーション部41がボス部36のセレーション部43に一部結合され、且つ被嵌合部45の歯部45aが嵌合部46に一部嵌合する状態を有する寸法関係とされている。
【0026】
一方、前記昇降機構38は、図8、図12〜図18に示すように、前記コイルばね44、前記クラッチ37を上下動させるクラッチレバー47、このクラッチレバー47を揺動させる操作レバー49、クラッチレバー付勢手段たる引張ばね50(図8、図13参照)等から構成されている。このうちクラッチレバー47は、例えばポリプロピレン等の合成樹脂からなり、図16に示すように、平行に延びる一対の腕部47a、47aを基端側で繋いだ形態のほぼコ字状をなすと共に、その基端部中央部から後側に突出する突出部47bを有して構成されている。この突出部47bの上面には、図18にも示すような斜面部51が形成されている。
【0027】
前記各腕部47aの先端部には、前記クラッチ37のフランジ部37aの下面側に係止してそれを押し上げるための作動部たる当接ピン52が内側に突出して設けられている。このとき、一対の当接ピン52は、フランジ部37aのうち直径方向両端の2か所に当接する。また、各腕部47aの基端側部分には、図17に示すように、前記支持部48に軸支される内側軸部53及び及び外側軸部54が同軸となるように一体に設けられている。このうち外側軸部54については、先端部に、斜め上向き(図17では斜め下向き)の傾斜面54aが形成されている。
【0028】
このとき、図12〜図14並びに図18にも示すように、前記共回り防止装置39に一体に設けられる一対の支持部48、48は、共回り防止装置39のやや後部寄り部分に円筒状部分を左右に挟むように対向して設けられ、フランジ部39aの下面から下方に延びる角筒状をなしている。そして、その下端部には、左右に対向する舌片状の内壁部48a及び外壁部48bを有している。図14に示すように、内壁部48aの下端部には、下方に開放するU字状の溝部55が形成され、外壁部48bには、係止孔部56が形成されている。尚、図15に示すように、外壁部48bのうち内面側は、係止孔部56から下方に延びて、肉厚がほぼ半分とされた如き案内凹部57が形成されている。
【0029】
前記クラッチレバー47は、前記各腕部47aの基端側が、各支持部48の内壁部48a及び外壁部48b間に挟まれた形態で支持されるのであるが、このとき、前記内側軸部53がU字状の溝部55に下方から差込まれてその溝部55内に保持されると共に、前記外側軸部54が、その傾斜面54aが案内凹部57を摺動するように案内されて係止孔部56内に挿入される。これにて、図12及び図13に示すように、クラッチレバー47は、中間部分が前記支持部48に軸支されて、上下方向(矢印A及びB方向)に揺動可能に設けられるのである。
【0030】
前記操作レバー49は、図8及び図19に示すように、その中間部が前記下フレーム21に軸支されて水平方向(矢印C及びD方向)に回動可能に設けられ、その先端部の下面には、図18にも示すように、前記クラッチレバー47の基端部の斜面部51に摺接する斜面部58が形成されている。また、このとき、図8、図13に示すように、前記引張りばね50は、前記クラッチレバー47の基端部側と前記共回り防止装置39との間に掛け渡されて該クラッチレバー47を矢印A方向に付勢しており、もってクラッチレバー47の斜面部51が操作レバー49の斜面部58に常に摺接する。
【0031】
一方、図19に示すように、前記ギアドモータ12はワイヤ59及び連結金具60を介して前記排水弁10に連結され、図19(a)に示すように、通常時は前記ワイヤ59を繰出した状態とされて排水弁10が閉塞状態にあり、図19(b)に示すように、前記ワイヤ59を巻上げることにより、排水弁10を開放させる。このとき、前記操作レバー49の基端部は、前記連結金具60に連結され、もって操作レバー49は、ギアドモータ12により、排水弁10の開閉と連動して矢印C及びD方向に回動する。
【0032】
これにて、洗い行程やためすすぎ洗いの行程においては、操作レバー49は図19(a)の状態(図18の状態から矢印C方向に回動した状態)にあって、クラッチレバー47の基端部を押し下げており、もって図7に示すように、クラッチレバー47の先端の当接ピン52がクラッチ37をコイルばね44のばね力に抗して上方に押上げて洗い位置に位置させる。
【0033】
これに対し、脱水行程(及び脱水すすぎの行程)においては、操作レバー49は図19(a)の状態から矢印D方向に回動されて図19(b)に示す状態となり、斜面部58が斜面部51を相対的に摺動することにより、図18及び図6、図8に示すように、クラッチレバー47の基端部が矢印A方向に揺動し、当接ピン52が下降し、もってクラッチ37がコイルばね44のばね力によって脱水位置に下降する。尚、このクラッチ37の脱水位置では、当接ピン52がクラッチ37のフランジ部37aから若干量だけ下方に離間するようになっている。
【0034】
そして、図6〜図8に示すように、前記回転伝達機構8部分には、クラッチ37の上下位置を検出するためのクラッチ位置検出機構61が設けられている。このクラッチ位置検出機構61は、前記クラッチ37のフランジ部37aの下面に、リング状永久磁石62を同心状に設けると共に、前記共回り防止装置39部分に、位置検出器63を設けて構成されている。そのうちリング状永久磁石62は、例えばプラスチックマグネットからリング状に形成されており、上下に異なる磁極が形成されている、例えば、上半分がN極に着磁され、下半分がS極に着磁されている。
【0035】
前記位置検出器63は、上下に長いケース内に、上側ホールIC63aと、下側ホールIC63bとを上下に並んで備えている。図5に示すように、両ホールIC63a、63bの出力は、制御装置68に与えられる。このとき、図6に示すように、クラッチ37が脱水位置にあるときに、両ホールIC63a、63bが相対的にリング状永久磁石62のN極と接近し、両ホールIC63a、63bが永久磁石62のN極検出相当の電圧(例えば1.25V未満の電圧)を出力する。
【0036】
これに対し、図7に示すように、クラッチ37が洗い位置にあるときに、両ホールIC63a、63bが相対的にリング状永久磁石62のS極と接近することで当該S極を検出し、夫々S極検出相当の電圧(例えば3.75V以上の電圧)を出力する。更に、クラッチ37が洗い位置と脱水位置との中間にあるときには、リング状永久磁石62が両ホールIC63a、63bの中間に位置するようになり、上側ホールIC63aが相対的にN極と接近し、下側ホールIC63bがS極と接近する。これにより上側ホールIC63aがN極検出相当の電圧(1.25V未満の電圧)を出力し、下側ホールIC63bがS極検出相当の電圧(3.75V以上の電圧)を出力する。制御装置68は、両ホールIC63a、63bの出力電圧に基づいて、クラッチ37の位置を検出(判断)するのである。
【0037】
さて、前記モータ7について、図2〜図4も参照して述べる。モータ7のステータ30は、外周部に多数個例えば36個の磁極歯33を有するステータコア32と、各磁極歯33に巻回された三相のステータコイル34と、合成樹脂製の取付部35を備えている。その取付部35を介して前記下フレーム21にねじ止めにより取付けられる
この場合、ステータコア32は、図4に示すように、6等分された如き分割コア32Aを6個、一方の端部に形成された係合凸部32aを他方の端部に形成された係合凹部32bに互いに挿入係合することにより連結して構成されている。従って、1つの分割コア32Aは、6個の磁極歯33を有し、隣接する3つの磁極歯33は3相のU、V及びW相に対応する。
【0038】
前記ロータ31は、外周部に環状壁78aを有する浅底容器状の磁性体製のフレーム78と、その環状壁78aの内周部に配置された全体として円環状をなすロータコア79と、このロータコア79に形成された多数個の磁石挿入孔80に挿入された保磁力の異なる低保磁力永久磁石81及び高保磁力永久磁石82とを備えている。フレーム78の中央部に前記ボス部36が設けられ、前記撹拌軸が連結される。この場合、低(小)保磁力永久磁石81は、保磁力が低く、磁化状態(着磁量)を変更可能な例えばアルニコ磁石(アルニコ磁石の保磁力は、350kA/m以下)から構成されている。高(大)保磁力永久磁石82は、保磁力が高く、磁力が固定された例えばネオジム磁石(ネオジム磁石の保磁力は、700kA/m以上)から構成されている。
【0039】
ロータコア79は、図4に示すように、隣接する1対の分割コア79A、79Bを3対組合せて構成されている。分割コア79A、79Bは、夫々交互にN極とS極の磁極が形成されるように、各8個の磁石挿入孔80に8個の永久磁石81或いは82が挿入配置されて構成される。そのうちの、一方の分割コア79Aでは、分割コア32Aの一方側(左側)からのU、V、W、U、V及びW相の磁極歯33の配列に対して、低保磁力永久磁石81(「小 N」)、高保磁力永久磁石82(「大 S」)、高保磁力永久磁石82(「大 N」)、高保磁力永久磁石82(「大 S」)、高保磁力永久磁石82(「大 N」、高保磁力永久磁石82(「大 S」)、高保磁力永久磁石82(「大 N」)および高保磁力永久磁石82(「大 S」)が応じるように配置されている。
【0040】
他方の分割コア79Bでは、分割コア32Aの一方側(左側)からのU、V、W、U、V及びW相の配列に対して、高保磁力永久磁石82(「大 N」、高保磁力永久磁石82(「大 S」)、低保磁力永久磁石81(「小 N」))、高保磁力永久磁石82(「大 S」)、高保磁力永久磁石82(「大 N」、高保磁力永久磁石82(「大 S」)、高保磁力永久磁石82(「大 N」)及び高保磁力永久磁石82(「大 S」)が応じるように配置されている。
【0041】
以上のように、1対の分割コア79A、79Bは、1個の低保磁力永久磁石81と7個の高保磁力永久磁石82とを備えていて、総磁束量は略等しいのである。但し、1対の分割コア79A、79Bおいては、一方の分割コア79Aでは、低保磁力永久磁石81は、左側の1番目に位置するのに対し、他方の分割コア79Bでは、低保磁力永久磁石81は、左側から3番目に位置するように、永久磁石81、82の配置順が異なるように設定されている。
【0042】
一方、図2及び図3に示すように、1対の分割コア79A、79Bにおいて、一方の分割コア79Aの両端部には、係合部としての矩形状の係合凸部79aが形成され、他方の分割コア79Bの両端部には、被係合部としての矩形状の係合凹部79bが形成されている。従って、分割コア79A、79Bにおいて、対をなす分割コア79A、79Bであれば、一方の分割コア79Aの係合部としての係合凸部79aは、他方の分割コア79Bの被係合部としての係合凹部79bに係合することが可能である。
【0043】
しかしながら、対をなさない分割コア79A、79Aを組合せようとすると、一方の分割コア79Aの係合部としての係合凸部79aは、他方の分割コア79Aの被係合部としての係合凸部79aに係合することが不可能である。同様に、対をなさない分割コア79B、79Bを組合せようとすると、一方の分割コア79Bの係合部としての係合凹部79bは、他方の分割コア79Bの被係合部としての係合凹部79bに係合することが不可能である。
【0044】
上記モータ7において、ステータコア32の12個の磁極歯33に巻回される12個のU相のステータコイル34は直列に接続され、12個の磁極歯33に巻回される12個のV相のステータコイル34は直列に接続され、12個の磁極歯33に巻回される12個のW相のステータコイル34は直列に接続された上で、これらの直列回路はスター結線される。そして、モータ7は、制御手段としてのマイクロコンピュータを含む制御装置68により制御される。
【0045】
図5は、前記制御装置68を中心とした電気的構成を概略的に示している。ここで、交流電源Vacを直流に変換する直流電源回路70には、モータ駆動回路としてのインバータ主回路71が接続されている。周知のように、このインバータ主回路71は、6個のスイッチング素子71a〜71fを3相ブリッジ接続して構成され、このインバータ主回路71に前記モータ7の各相のステータコイル34が接続されている。
【0046】
前記インバータ主回路71の各スイッチング素子71a〜71fは、制御装置68によりインバータ制御回路72を介してオン、オフ制御される。また、前記モータ7には、ロータ31の位置検出を行なう複数の位置検出素子73(1個のみ図示)が設けられている。この位置検出素子73の位置検出信号は、モータ7の回転速度検出にも用いられる。これにて、モータ7は、制御装置68により可変速且つ正逆転可能に駆動制御される。
【0047】
さらに、この制御装置68には、前記操作パネル67のキー操作信号が入力されると共に、前記水位センサ64、蓋スイッチ65からの検出信号及び両ホールIC63a、63bからの磁極検出用信号である前記出力電圧が入力される。そして、制御装置68は、前記モータ7を制御すると共に、駆動回路74を介して給水弁66を制御し、駆動回路75を介してギアドモータ12を制御し、駆動回路76を介してポンプモータ69を制御する。尚、制御装置68は、報知手段として機能するブザー77も制御する。
【0048】
これにて、制御装置68は、使用者による操作パネル67のキー操作及び前記各種の入力等に基づき、ROM等に記憶された制御プログラムに従って、前記モータ7や給水弁66、ギアドモータ12等の各機構を制御して、洗い行程、すすぎ行程、脱水行程に大別される洗濯運転を自動で実行させる。本実施形態では、すすぎ行程は、シャワー状の給水を間欠的に行いながら回転槽5(及び撹拌体6)を高速回転させる脱水すすぎ行程と、回転槽5内に水を溜めて撹拌体6を回転させるためすすぎ行程とからなる。前記洗い行程、ためすすぎ行程では、撹拌体6が低速で正逆方向に交互に回転され、脱水すすぎ行程、脱水行程では、回転槽5及び撹拌体6が高速で一方向(正方向)に一体回転される。
【0049】
そして、前記制御装置68は、後の作用説明でも述べるように、洗濯運転の行程に応じてクラッチ切替指令(ギアドモータ12に対する回転駆動指令)を発生して、クラッチ37を洗い位置と脱水位置との間で切替制御する。即ち、前記脱水位置への切替制御は、洗い行程、ためすすぎ行程の終了時の排水弁10の開放のタイミングで実行され、又、前記洗い位置への切替制御は、洗い行程及びためすすぎ洗い行程の開始直前で排水弁10を閉鎖するタイミング)で実行される。
【0050】
前記脱水位置への切替制御においては、前記ギアドモータ12を一方向に回転させて操作レバー49を図19(a)の状態から矢印D方向に回動(クラッチ37は下方へ移動)させる。又、前記洗い位置への切替制御においては、前記ギアドモータ12を逆方向へ回転させて操作レバー49を図19(b)の状態から矢印C方向に回動(クラッチ37は上方へ移動)させるように回転動作させる。上記制御装置68、ギアドモータ12及び昇降機構38等から、クラッチ切替手段が構成されている。
【0051】
このとき、前記制御装置68は、クラッチ37の切替え時(ギアドモータ12の駆動時)に、前記モータ7を短時間回転させて停止させる切替補助動作を実行する切替補助動作実行手段として機能する。この場合、クラッチ7を、上昇した洗い位置から下降した脱水位置に切替える際には、脱水側クラッチ切替補助動作(図20参照)が実行される。また、クラッチ37を、下降した脱水位置から、上昇した洗い位置に切替える際には、洗い側クラッチ切替補助動作(図21参照)が実行される。
【0052】
脱水側クラッチ切替補助動作は、図20に示すように、モータ7を正方向(脱水回転方向)及び反転方向へ、所定角度ずつ、小刻みに回転させることを行う。即ち、最初はモータ7を最初の角度位置(0度位置)から正方向へ2.5度の角度分回動するように駆動し、そして反転方向へ5度回動させ、次に正方向へ5度回動させ、さらに2.5度反転させる。そして、若干時間休止をして正方向へ5度、反転方向へ2.5度を所定回数繰り返し、最初の0度位置から正方向へ25度回動させたところで、若干時間休止をし、その後、正方向へ2.5度回動し、そして5度反転方向へ回動し、同じく5度正方向へ回動し、さらに2.5度反転方向へ回動させる。これにより、嵌合部46からのクラッチ37の被嵌合部45の離脱が促される。
【0053】
洗い側クラッチ切替補助動作は、図21に示すように、モータ7を停止状態(角度0度)から正転方向に角度2.5度の位置まで回転させた後、逆転方向に角度−2.5度の位置まで回転させ、角度0度の位置に戻し、次いで、角度12度の位置まで回転させた後、角度−12度の位置まで逆転させ、角度0度の位置に戻し、さらに、角度2.5度の位置まで回転させた後、角度−2.5度の位置まで逆転させ、角度0度の位置に戻すことにより行なわれ、所要時間は約10秒とされている。これにより嵌合部46に対するクラッチ37の被嵌合部45の係合が促される。
【0054】
尚、上記したクラッチ37の状態切替時には、クラッチ位置検出手段61(位置検出器63)により、クラッチ37が正しく切替えられたかどうかを検出し、切替えが不十分であると判断された場合には、上記したクラッチ切替補助動作を、上限回数に至るまで繰返して実行することができる。
【0055】
さて、本実施形態では、前記制御装置68は、前記モータ7のロータ31に設けられた永久磁石のうち、低保磁力永久磁石81の磁化状態(着磁量)を、減磁状態と増磁状態との間で調整(変更)する磁化状態調整手段として機能する。即ち、制御装置68は、低保磁力永久磁石81を減磁状態から増磁させる増磁処理を行うにあたっては、低保磁力永久磁石81の減磁状態において、ステータコイル34に例えば+500Vの電圧を印加する。これにより、低保磁力永久磁石81の磁束を最大まで上げ、電圧の印加を解除しても、その磁束が保持されようになる。この増磁状態では、モータ7としては、低速回転で高トルクを発揮できる。
【0056】
これに対し、制御装置68は、低保磁力永久磁石81を増磁状態から減磁させる減磁処理を行うにあたっては、低保磁力永久磁石81の増磁状態において、ステータコイル34に例えば−500Vよりやや高い電圧を印加する。低保磁力永久磁石81の磁束を0(零)近くまで下げ、電圧の印加を解除しても、その磁束が保持されるようにする。これにより、ステータ30に対して作用するロータ31全体としての磁束が減少するようになり、この減磁状態では、モータ7としては、低トルク、高速回転に適したものとなる。尚、洗濯の各行程におけるステータコイル34の運転電圧は、通常で約±200Vの範囲であるので、各行程の実行中に低保磁力永久磁石81の磁束が変化してしまうことはない。
【0057】
この場合、次の作用説明でも述べるように、制御装置68は、洗い行程及びためすすぎ行程の行程開始前に、モータ7に対する増磁処理を実行し、増磁状態で洗い行程及びためすすぎ行程を実行する。また、脱水すすぎ行程及び脱水行程の開始前に、モータ7に対する減磁処理を実行し、減磁状態で脱水すすぎ行程及び脱水行程を実行する。そして、それらに加えて、制御装置68は、上記したクラッチ37の切替時のクラッチ切替補助動作を実行する際(直前)に、モータ7の低保磁力永久磁石81が減磁状態であるときには、増磁処理を実行する。
【0058】
次に上記構成の作用について、図22も参照して述べる。図22は、本実施形態における一連の洗濯運転の行程の進行状態(時間経過)とモータ7のトルクの変動との関係を、概略的に示している。ここで、洗濯運転が開始されると、まず、クラッチ37を脱水位置から上昇させて洗い位置に切替えるクラッチ切替行程P1が実行され、引続き洗い行程P2が実行される。このとき、クラッチ切替行程P1においては、併せて洗い側クラッチ切替補助動作(図21参照)が実行される。また、洗い行程P2では、回転槽5(水槽3)内に給水が行なわれた後、モータ7の正逆回転により撹拌体6のみが低速で正逆回転駆動され、洗濯物に対する水流による洗いが実行される。
【0059】
洗い行程P2が終了すると、排水弁10が開放されると共に、クラッチ37を下降させて洗い位置から脱水位置に切替えるクラッチ切替行程P3が実行され、引続き脱水すすぎの行程P4が実行される。クラッチ切替行程P3においては、併せて脱水側クラッチ切替補助動作(図20参照)が実行される。脱水すすぎ行程P4では、モータ7の正回転により、回転槽5及び撹拌体6が高速で回転されると共に、洗濯物に対するシャワー状の給水が間欠的に行なわれる。
【0060】
この後、再びクラッチ37を脱水位置から上昇させて洗い位置に切替えるクラッチ切替行程P5が実行され、引続きためすすぎ行程P6が実行される。クラッチ切替行程P5においては、併せて洗い側クラッチ切替補助動作(図21参照)が実行される。ためすすぎ行程P6においては、回転槽5(水槽3)内に給水が行なわれた後、モータ7の正逆回転により撹拌体6のみが低速で正逆回転駆動される。
【0061】
ためすすぎ行程P6が終了すると、クラッチ37を下降させて洗い位置から脱水位置に切替えるクラッチ切替行程P7が実行され、引続き脱水行程P8が実行される。クラッチ切替行程P7においては、併せて脱水側クラッチ切替補助動作(図20参照)が実行される。脱水行程P8では、モータ7の正回転により、回転槽5及び撹拌体6が高速で回転される。この場合、上記したクラッチ切替行程P1,P3,P5、P7において、切替補助動作が実行されることにより、モータ7によりクラッチ37の回転位置(被嵌合部45の回転位置)が変更され、クラッチ37の切替え(嵌合部46に対する嵌合、切離し)が促進されるようになる。
【0062】
そして、制御装置68は、上記のように洗濯運転の各行程を制御することと併せて、モータ7のロータ31に設けられた永久磁石81、82のうちの低保磁力永久磁石81の磁化状態(着磁量)の調整(増磁、減磁)の処理を、次のように実行する。即ち、まず、洗濯運転(クラッチ切替行程P1)の開始時に、モータ7に対する増磁処理が行なわれる。洗い行程P2の終了時(クラッチ切替行程P3の開始時)に、モータ7に対する増磁処理が行なわれ、クラッチ切替行程P3の終了時(脱水すすぎ行程P4の開始時)に、モータ7に対する減磁処理が行なわれる。
【0063】
脱水すすぎ行程P4の終了時(クラッチ切替行程P5の開始時)に、モータ7に対する増磁処理が行なわれる。この後、ためすすぎ行程P6の終了時(クラッチ切替行程P7の開始時)に、モータ7に対する増磁処理が行なわれ、クラッチ切替行程P7の終了時(脱水行程8の開始時)に、モータ7に対する減磁処理が行なわれる。
【0064】
このように、低保磁力永久磁石81の磁化状態(着磁量)を変更することにより、洗い行程P2及びためすすぎ行程P6では、ステータ30に対して作用するロータ31の磁束を増加させ、モータ7として低速回転、高トルクを発揮することができる。また、脱水すすぎ行程P4及び脱水行程P8では、減磁の処理を行うことにより、ステータ30に対して作用するロータ31の磁束を減少させ、モータ7として、低トルク、高速回転に適した性能を発揮できるようになる。
【0065】
ここで、もし、上記したクラッチ37の切替え時に低保磁力永久磁石81が減磁状態のままであると、モータ7が低トルクであるため、例えば洗濯物が回転槽5の内面に貼付いている場合など、切替補助動作を実行してもモータ7が回転せず、クラッチ37の切替えが確実に行なわれなくなる虞がある。これに対し、本実施形態では、クラッチ37の切替時において常に低保磁力永久磁石81を増磁させるようにしたので、切替補助動作の実行時のモータ7の大きなトルクを得ることができ、クラッチ37の切替えを確実に行うことができるのである。
【0066】
このような第1の実施形態によれば、ロータ31に設けられる永久磁石に、高保磁力永久磁石82と、磁化状態を変更可能な低保磁力永久磁石81とを含ませ、洗濯の行程に応じて増磁、減磁の処理を行うことにより、モータ7のトルクを変更させることができる。従って、洗い行程及びためすすぎ行程では、モータ7として、洗い行程及びためすすぎ行程に必要な低速回転、高トルクを得ることができる。脱水すすぎ行程及び脱水行程では、モータ7として、それらの行程に必要な低トルク、高速回転に適した性能を発揮できるようになる。
【0067】
そして、モータ7の回転の回転槽5及び撹拌体6への伝達状態を切替えるクラッチ37を備えるものにあって、クラッチ37の切替時に、モータ7を短時間回転させる切替補助動作を行なうものにあって、クラッチ37の切替時に、モータ7の低保磁力永久磁石81に対する増磁処理を行うようにしたので、切替補助動作を行なう際の必要なモータ7の大きなトルクを得ることができ、クラッチ37の切替えをより確実に行うことができるという優れた効果を奏する。
【0068】
(2)第2、第3の実施形態、その他の実施形態
図23は、第2の実施形態を示すもので、次の点が上記第1の実施形態と異なっている。即ち、この第2の実施形態では、前記クラッチ37の切替え時において、制御装置68(磁化状態調整手段)による前記低保磁力永久磁石81の増磁の処理(ステータコイル34に対する電圧の印加)を複数回(例えば3回)繰返すように構成されている。この場合、増磁の処理を1回実行しただけでは、モータ7の高トルク化が不十分となる虞があるが、増磁の処理を2回、3回と繰返し実行することにより、モータ7の高トルク化をより一層確実に行うことができることが明らかとなっている。
【0069】
図24は、第3の実施形態を示すものである。即ち。モータ7の各相のステータコイル34は、多数個の単位コイルを直列に接続して構成されるのであるが、図で一相分のみ図示するように、多数個の単位コイルの半数ずつを直列接続した2つの群(単位コイル群34a,34b)に分けるようにしている。そして、例えばリレーを用いた直並列切替回路により、それら単位コイル群34a,34bの並列接続状態(図24(a))と、直列接続状態(図24(b))とを切替可能に構成している。
【0070】
このとき、上記低保磁力永久磁石81による磁化状態の変更に加えて、モータ7の大トルクが必要な場合(洗い行程、ためすすぎ行程、並びに、クラッチ37の切替補助動作実行時)には、図24(a)に示す並列接続状態とする。これに対し、モータ7の高速回転が必要な場合(脱水行程、脱水すすぎ行程)には、図24(b)に示す直列接続状態とする。これにより、モータ7のトルク変動をより大きくすることができる。
【0071】
さらに、図示はしないが、洗濯機においては、洗濯運転実行中に、前記蓋スイッチ65により、洗濯物出入口の蓋18aの開放が検知されたとき、制御装置68が前記モータ7を一時停止させる構成が一般的である(一時停止手段)。このような一時停止手段を備えたものにあっては、上記一時停止による運転停止後の運転再開時に、前記モータ7の低保磁力永久磁石81の増磁処理を実行するように構成することができる。これによれば、モータ7の高トルクが得られる状態で、洗濯運転を再開することができ、停止前と停止後で負荷変動(洗濯物の増加)がある場合でも、スムーズに運転を再開することができるといったメリットを得ることができる。
【0072】
その他、以上説明した洗濯機は、上記の実施形態に限定されるものではなく、例えば、クラッチ37やクラッチ切替手段(昇降機構38)の詳細な構成や、モータ7(ステータ30及びロータ31)の詳細構造、永久磁石(低保磁力永久磁石81、高保磁力永久磁石82)の配置構成などについて、種々の変更が可能であり、また、縦軸型の洗濯機に限らず横軸型(ドラム式洗濯機)にも適用できる等、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。
【符号の説明】
【0073】
図面中、1は洗濯機、3は水槽、5は回転槽、6は撹拌体、7はモータ、8は回転伝達機構、10は排水弁、12はギアドモータ、24は槽軸、27は撹拌軸、30はステータ、31はロータ、32はステータコア、34はステータコイル、36はボス部、37はクラッチ、38は昇降機構(クラッチ切替手段)、39は共回り防止装置、45は被嵌合部、45aは歯部、46は嵌合部、46aは歯部、47はクラッチレバー、61はクラッチ位置検出手段、65は蓋スイッチ、68は制御装置(切替補助動作実行手段、磁化状態調整手段、一時停止手段)、79はロータコア、81は低保磁力永久磁石、82は高保磁力永久磁石を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯機では、洗い槽兼脱水槽である回転槽に撹拌体を備え、洗い行程において運転時には、モータの回転を撹拌体にのみ伝達して撹拌体を回転駆動し、脱水行程においては、前記モータの回転を撹拌体及び回転槽の双方に伝達してそれらを一体的に高速回転させるようになっている。そして、クラッチを、二位置間(脱水位置と洗い位置との間)で移動させることにより、回転槽と撹拌体との連結及び切離しを行う構成が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−113088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなクラッチにより回転槽と撹拌体との連結及び切離しを行う構成では、クラッチの切替え状態が不十分になる虞がある。そこで、特許文献1では、クラッチの切替時に、連結及び切離しを促進するために、モータを短時間回転させて嵌合部とクラッチとの間の嵌め合いの位置を変更する切替補助動作を実行するようにしている。しかし、例えば脱水すすぎの行程後のクラッチの切替時には、洗濯物が撹拌体や回転槽に貼付いている等の事情があり、切替補助動作を行なう際に、モータの大きなトルクが必要となるため、クラッチの切替えが確実に行なわれなくなる虞がある。そこで、クラッチの切替えをより確実に行うことが可能な洗濯機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態の洗濯機は、洗濯物が収容される回転槽と、この回転槽内に設けられモータにより回転される撹拌体と、前記モータの回転を前記回転槽及び撹拌体に伝達する脱水位置と、前記モータの回転を前記撹拌体のみに伝達する洗い位置との間で切替え可能なクラッチと、洗濯運転の行程に応じて前記クラッチを脱水位置と洗い位置との間で切替えるクラッチ切替手段と、前記クラッチ切替手段による前記クラッチの状態の切替え時に、前記モータを短時間回転させて停止させる切替補助動作を実行する切替補助動作実行手段とを具備し、前記モータは、ステータコイルを有するステータと、ロータコアに多数個の永久磁石を有するロータとを備えて構成されると共に、前記永久磁石には、高保磁力永久磁石と磁化状態を変更可能なレベルの低保磁力永久磁石とが含まれており、前記ステータコイルに励磁電流を発生させることで、前記低保磁力永久磁石の磁化状態を増磁、減磁する磁化状態調整手段を備え、前記磁化状態調整手段は、前記クラッチの切替え時において、前記低保磁力永久磁石を増磁させるところに特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】第1の実施形態を示すもので、洗濯機の全体構成を概略的に示す縦断側面図
【図2】永久磁石モータの斜視図
【図3】ロータの要部の拡大斜視図
【図4】ステータおよびロータの一部を直線状に展開して示す図
【図5】電気的構成を概略的に示す図
【図6】クラッチの脱水位置におけるクラッチ部分の拡大縦断面図
【図7】クラッチの洗い位置におけるクラッチ部分の拡大縦断面図
【図8】モータ及び回転伝達機構部分の縦断面図
【図9】モータ及びクラッチ部分の分解斜視図
【図10】クラッチの縦断面図
【図11】被嵌合部及び嵌合部の歯部の形状を示す拡大図
【図12】共回り防止装置にクラッチレバーを組付けた状態の斜視図
【図13】共回り防止装置にクラッチレバーを組付けた状態の縦断面図
【図14】共回り防止装置の斜視図
【図15】図14のX−X線に沿う支持部の外壁部の縦断面図
【図16】クラッチレバーの上下反転した状態の斜視図
【図17】図16のY−Y線に沿うクラッチレバーの軸部部分の縦断面図
【図18】脱水運転時におけるクラッチレバーの斜面部と操作レバーの斜面部との関係を示す縦断背面図
【図19】ギアドモータと操作レバーとの関係を示すもので、排水弁の閉塞状態(a)及び開放状態(b)の底面図
【図20】脱水側クラッチ切替補助動作におけるモータの動作パターンを示す図
【図21】洗い側クラッチ切替補助動作におけるモータの動作パターンを示す図
【図22】洗濯運転の行程とモータのトルクの変動との関係を示すタイムチャート
【図23】第2の実施形態を示すもので、増磁処理を複数回繰返して実行した場合のモータのトルクの変動の様子を示す図
【図24】第3の実施形態を示すもので、ステータコイルの並列状態(a)と直列状態(b)とを切替える様子を示す図
【発明を実施するための形態】
【0007】
(1)第1の実施形態
以下、第1の実施形態による洗濯機について、図1ないし図2 を参照しながら説明する。まず、図1は、洗濯機1の概略構成を示している。ここで、ほぼ矩形箱状をなす外箱2内には、脱水時等に水を受ける水槽3が弾性吊持機構4を介して設けられている。そして、前記水槽3内には、内部に洗濯物が収容される洗い槽兼脱水槽としての回転槽5が回転可能に設けられており、またその回転槽5内の底部には、水流生成用の撹拌体(パルセータ)6が設けられている。
【0008】
詳しくは後述するように、前記水槽3の外底部には、インバータ駆動方式のアウタロータ形のモータ7及び、そのモータ7の回転駆動力を前記回転槽5及び撹拌体6へ伝達する回転伝達機構8が設けられている。これらモータ7及び回転伝達機構8により、洗剤洗いやすすぎ洗いの運転においては、前記撹拌体6が正逆回転されて回転槽5内に撹拌水流が生成され、脱水運転においては、前記回転槽5が撹拌体6と一体的に高速回転されるようになっている。
【0009】
また、前記水槽3の底部には、前記回転槽5からの排水を行うための排水路9が設けられ、この排水路9に、排水弁10を介して排水ホース11が接続されている。前記排水弁10は、ギアドモータ12(図5、図19参照)により開閉される。さらに、水槽3の底部には、該水槽3からの排水を行うための排水口13が設けられ、詳しく図示はしないが、この排水口13が前記排水ホース11に接続されている。尚、前記排水路9には、エアトラップ14が設けられ、このエアトラップ14内の圧力が図示しないエアチューブを介して水位センサ64(図5にのみ図示)に導かれるようになっている。
【0010】
一方、前記回転槽5の上端部にはバランスリング15が装着されていると共に、脱水時の該回転槽5からの排水を、そのバランスリング15との間を通して行うための脱水孔16が設けられている。また、前記水槽3の上端部には、一部のみ示すように、ほぼリング状をなす桶カバー17が設けられており、その開口部が前記回転槽5の上面開口部に連通している。
【0011】
そして、前記外箱2の上端部には、プラスチック製のトップカバー18が設けられている。詳しく図示はしないが、このトップカバー18は、中央にほぼ円形の洗濯物出入口を有する矩形枠状をなすと共に、薄形の中空箱状をなしている。このトップカバー18の上面部には、前記洗濯物出入口を開閉するための二つ折りタイプの蓋18aが設けられている。尚、この蓋18a部分には、該蓋18aの開閉を検知するための蓋スイッチ65(図5にのみ図示)が設けられている。
【0012】
詳しい説明及び図示は省略するが、前記トップカバー18の後辺部には、回転槽5内に給水を行うための給水弁66(図5参照)等からなる給水機構や、洗剤・助剤供給装置が設けられている。また、後述するように、前記トップカバー18の前辺部には、上面に位置して操作パネル67(図5参照)が設けられていると共に、その内側に位置してマイコンを主体としてなり全体の制御を行なう制御装置68が設けられている。さらには、ポンプモータ69(図5参照)により駆動され風呂水等を給水するための風呂水ポンプも設けられている。
【0013】
ここで、前記回転伝達機構8について、図6ないし図19を参照して述べる。図8は、モータ7を含んだ回転伝達機構8部分の構成を示しており、ここで、前記水槽3の外底部には、中空ハウジング19が取付けられている。この中空ハウジング19は、上フレーム20と下フレーム21とを外周側部分にて結合して構成されており、上フレーム20の中央部には、上向きに凸となる円筒部20aが形成されていると共に、下フレーム21の中央部には下向きに凸となる円筒部21aが形成されている。
【0014】
前記円筒部20a及び円筒部21a内には、夫々ボールベアリングからなる軸受22及び23が嵌合固着され、これら軸受22、23に支持されて中空状(円管状)の槽軸24が設けられている。この槽軸24の軸受22から突出する上端部外周には、支持筒25が嵌合固着され、この支持筒25の上端のフランジ部25aに前記回転槽5が固定されている。これにて、槽軸24の回転により回転槽5が一体回転する。尚、円筒部20aの内周面と前記支持筒25の外周面との間には、シール部材26が設けられている。
【0015】
そして、前記槽軸24の中空部内には、撹拌軸27が上下に貫通するように挿通されている。この撹拌軸27は、槽軸24の内周部上下部に設けられたメタル軸受28、28並びに前記支持筒25の上端部内周部に設けられた軸受29によって槽軸24に対して回転自在に支持されており、その上端部が前記撹拌体6に連結されている。これにて、撹拌軸27の回転により撹拌体6が一体回転する。また、この撹拌軸27の下端部が前記モータ7に連結されている。
【0016】
前記モータ7は、図8、図9並びに図3にも示すように、リング状をなすステータ30と、薄形円筒容器状をなすロータ31とから構成される。このモータ7の詳細な構造については後述する。図8に示すように、前記ステータ30は、前記下フレーム21の下面に対して下方からねじ止めされることにより取付けられている。
【0017】
一方、図8、図9に示すように、前記ロータ31の中心部には、円筒状のボス部36が固着され、前記撹拌軸27の下端部がこのボス部36に対してセレーション結合状態に挿入され、例えばナット締めにより取付けられている。従って、前記ロータ31の回転は常に撹拌軸27にダイレクトに伝達される。尚、図6及び図7にも示すように、このボス部36は、その上端が、前記槽軸24の下端よりも僅かに下方に位置され、また、その外径寸法が、該槽軸24の外径寸法よりも大きく構成されている。
【0018】
そして、前記槽軸24の下端外周部には、該槽軸24と前記ボス部36との連結及び切離しを行なうためのクラッチ37が設けられている。これと共に、前記下フレーム21の下面部には、このクラッチ37を上下動させてその状態を切替えるためのクラッチ切替手段の一部を構成する昇降機構38が設けられると共に、嵌合部を有した共回り防止装置39が設けられる。
【0019】
前記クラッチ37は、合成樹脂この場合ガラスフィラー入りのポリアセタール樹脂からなり、図6、図7、図10にも示すように、全体としてほぼ円筒状をなしている。そして、クラッチ37は、その内周部が、上半部で径小、下半部にて径大とされた段付き形状とされると共に、上半部の内周面全周には、上下方向に延びる係合部たる上部内セレーション部40が形成され、下半部の内周面全周には、上下方向に延びる下部内セレーション部41が形成されている。
【0020】
これに対し、図6、図7、図9に示すように、前記槽軸24の下端部(前記軸受23から下方に突出した部位)の外周部には、前記上部内セレーション部40に対応して上下方向に延びる摺動案内部たるセレーション部42が形成されている。一方、前記ボス部36の上部外周部にも、前記下部内セレーション部41に対応して係合部たるセレーション部43が形成されている。前記クラッチ37は、上部内セレーション部40が前記セレーション部42に常に係合されることにより、槽軸24の下端部外周に上下動自在且つ周方向に一体的に回転するように嵌挿されている。
【0021】
これにて、クラッチ37が図6及び図8に示す下降した脱水位置にあるときには、クラッチ37の上部内セレーション部40が槽軸24のセレーション部42に係合すると共に、下部内セレーション部41がボス部36のセレーション部43に係合し、もってボス部36ひいては撹拌軸27と槽軸24とを一体的に回転するように連結する。このとき、槽軸24の下端部外周部には、前記クラッチ37と前記軸受23の下端部との間に位置して、クラッチ付勢手段たるコイルばね44が配設され、クラッチ37は常に下降位置(脱水位置)に向けて付勢される。このクラッチ37は撹拌軸27及び槽軸24と同心状態をなす。
【0022】
そして、図10にも示すように、前記クラッチ37の上端部外周部には、円形鍔状のフランジ部37aが一体に形成されており、そのフランジ部37aの上面外周部に、円周方向に並んだ複数の歯部45aを有するいわばウォームギアの如き形態の被嵌合部45が形成されている。このとき、図11に示すように、歯部45aの先端部(上端部)は山形とされ、その両側の傾斜面の傾斜角度αは、水平方向に対して45度未満とされている。
【0023】
これに対し、前記共回り防止装置39は、例えばガラスフィラー入りのポリアセタール樹脂からなり、図6、図7、図13等に示すように、前記下フレーム21の円筒部21aの外周に嵌込む大きさの薄形の円筒状をなすと共に、上端外周にフランジ部39aを一体に有し、そのフランジ部39aにて下フレーム21の底面にねじ止め固定されている。この場合、共回り防止装置39は、円筒部21a(軸受部)の外周に位置して設けられているので、回転伝達機構8部分全体を上下方向にさほど大形化することなく配設される。
【0024】
このとき、この共回り防止装置39の内周面の下半部には、図12〜図14にも示すように、前記クラッチ37の上昇した洗い位置にてその被嵌合部45(歯部45a同士間の谷部)に噛合う歯部46aを有する嵌合部46が設けられている。この場合、図11に示すように、歯部46aの先端部(下端部)も、前記嵌合部45の歯部45aと同様な山形とされ、その両側の傾斜面の傾斜角度αが、水平方向に対して45度未満とされている。さらに、この共回り防止装置39には、後述するクラッチレバー47を支持するための一対の支持部48、48が一体に設けられている。
【0025】
これにて、クラッチ37が図7に示す上昇した洗い位置にあるときには、ボス部36から切離されて上部内セレーション部40がセレーション部42に係合するのみとなると共に、被嵌合部45が嵌合部46に嵌合し、クラッチ37が下フレーム21ひいては水槽3に固定され回転不能とされ、もって撹拌軸27のみが回転可能とされるようになっている。尚、詳しく図示はしないが、本実施形態では、クラッチ37の脱水位置と洗い位置との途中の位置において、クラッチ37の下部内セレーション部41がボス部36のセレーション部43に一部結合され、且つ被嵌合部45の歯部45aが嵌合部46に一部嵌合する状態を有する寸法関係とされている。
【0026】
一方、前記昇降機構38は、図8、図12〜図18に示すように、前記コイルばね44、前記クラッチ37を上下動させるクラッチレバー47、このクラッチレバー47を揺動させる操作レバー49、クラッチレバー付勢手段たる引張ばね50(図8、図13参照)等から構成されている。このうちクラッチレバー47は、例えばポリプロピレン等の合成樹脂からなり、図16に示すように、平行に延びる一対の腕部47a、47aを基端側で繋いだ形態のほぼコ字状をなすと共に、その基端部中央部から後側に突出する突出部47bを有して構成されている。この突出部47bの上面には、図18にも示すような斜面部51が形成されている。
【0027】
前記各腕部47aの先端部には、前記クラッチ37のフランジ部37aの下面側に係止してそれを押し上げるための作動部たる当接ピン52が内側に突出して設けられている。このとき、一対の当接ピン52は、フランジ部37aのうち直径方向両端の2か所に当接する。また、各腕部47aの基端側部分には、図17に示すように、前記支持部48に軸支される内側軸部53及び及び外側軸部54が同軸となるように一体に設けられている。このうち外側軸部54については、先端部に、斜め上向き(図17では斜め下向き)の傾斜面54aが形成されている。
【0028】
このとき、図12〜図14並びに図18にも示すように、前記共回り防止装置39に一体に設けられる一対の支持部48、48は、共回り防止装置39のやや後部寄り部分に円筒状部分を左右に挟むように対向して設けられ、フランジ部39aの下面から下方に延びる角筒状をなしている。そして、その下端部には、左右に対向する舌片状の内壁部48a及び外壁部48bを有している。図14に示すように、内壁部48aの下端部には、下方に開放するU字状の溝部55が形成され、外壁部48bには、係止孔部56が形成されている。尚、図15に示すように、外壁部48bのうち内面側は、係止孔部56から下方に延びて、肉厚がほぼ半分とされた如き案内凹部57が形成されている。
【0029】
前記クラッチレバー47は、前記各腕部47aの基端側が、各支持部48の内壁部48a及び外壁部48b間に挟まれた形態で支持されるのであるが、このとき、前記内側軸部53がU字状の溝部55に下方から差込まれてその溝部55内に保持されると共に、前記外側軸部54が、その傾斜面54aが案内凹部57を摺動するように案内されて係止孔部56内に挿入される。これにて、図12及び図13に示すように、クラッチレバー47は、中間部分が前記支持部48に軸支されて、上下方向(矢印A及びB方向)に揺動可能に設けられるのである。
【0030】
前記操作レバー49は、図8及び図19に示すように、その中間部が前記下フレーム21に軸支されて水平方向(矢印C及びD方向)に回動可能に設けられ、その先端部の下面には、図18にも示すように、前記クラッチレバー47の基端部の斜面部51に摺接する斜面部58が形成されている。また、このとき、図8、図13に示すように、前記引張りばね50は、前記クラッチレバー47の基端部側と前記共回り防止装置39との間に掛け渡されて該クラッチレバー47を矢印A方向に付勢しており、もってクラッチレバー47の斜面部51が操作レバー49の斜面部58に常に摺接する。
【0031】
一方、図19に示すように、前記ギアドモータ12はワイヤ59及び連結金具60を介して前記排水弁10に連結され、図19(a)に示すように、通常時は前記ワイヤ59を繰出した状態とされて排水弁10が閉塞状態にあり、図19(b)に示すように、前記ワイヤ59を巻上げることにより、排水弁10を開放させる。このとき、前記操作レバー49の基端部は、前記連結金具60に連結され、もって操作レバー49は、ギアドモータ12により、排水弁10の開閉と連動して矢印C及びD方向に回動する。
【0032】
これにて、洗い行程やためすすぎ洗いの行程においては、操作レバー49は図19(a)の状態(図18の状態から矢印C方向に回動した状態)にあって、クラッチレバー47の基端部を押し下げており、もって図7に示すように、クラッチレバー47の先端の当接ピン52がクラッチ37をコイルばね44のばね力に抗して上方に押上げて洗い位置に位置させる。
【0033】
これに対し、脱水行程(及び脱水すすぎの行程)においては、操作レバー49は図19(a)の状態から矢印D方向に回動されて図19(b)に示す状態となり、斜面部58が斜面部51を相対的に摺動することにより、図18及び図6、図8に示すように、クラッチレバー47の基端部が矢印A方向に揺動し、当接ピン52が下降し、もってクラッチ37がコイルばね44のばね力によって脱水位置に下降する。尚、このクラッチ37の脱水位置では、当接ピン52がクラッチ37のフランジ部37aから若干量だけ下方に離間するようになっている。
【0034】
そして、図6〜図8に示すように、前記回転伝達機構8部分には、クラッチ37の上下位置を検出するためのクラッチ位置検出機構61が設けられている。このクラッチ位置検出機構61は、前記クラッチ37のフランジ部37aの下面に、リング状永久磁石62を同心状に設けると共に、前記共回り防止装置39部分に、位置検出器63を設けて構成されている。そのうちリング状永久磁石62は、例えばプラスチックマグネットからリング状に形成されており、上下に異なる磁極が形成されている、例えば、上半分がN極に着磁され、下半分がS極に着磁されている。
【0035】
前記位置検出器63は、上下に長いケース内に、上側ホールIC63aと、下側ホールIC63bとを上下に並んで備えている。図5に示すように、両ホールIC63a、63bの出力は、制御装置68に与えられる。このとき、図6に示すように、クラッチ37が脱水位置にあるときに、両ホールIC63a、63bが相対的にリング状永久磁石62のN極と接近し、両ホールIC63a、63bが永久磁石62のN極検出相当の電圧(例えば1.25V未満の電圧)を出力する。
【0036】
これに対し、図7に示すように、クラッチ37が洗い位置にあるときに、両ホールIC63a、63bが相対的にリング状永久磁石62のS極と接近することで当該S極を検出し、夫々S極検出相当の電圧(例えば3.75V以上の電圧)を出力する。更に、クラッチ37が洗い位置と脱水位置との中間にあるときには、リング状永久磁石62が両ホールIC63a、63bの中間に位置するようになり、上側ホールIC63aが相対的にN極と接近し、下側ホールIC63bがS極と接近する。これにより上側ホールIC63aがN極検出相当の電圧(1.25V未満の電圧)を出力し、下側ホールIC63bがS極検出相当の電圧(3.75V以上の電圧)を出力する。制御装置68は、両ホールIC63a、63bの出力電圧に基づいて、クラッチ37の位置を検出(判断)するのである。
【0037】
さて、前記モータ7について、図2〜図4も参照して述べる。モータ7のステータ30は、外周部に多数個例えば36個の磁極歯33を有するステータコア32と、各磁極歯33に巻回された三相のステータコイル34と、合成樹脂製の取付部35を備えている。その取付部35を介して前記下フレーム21にねじ止めにより取付けられる
この場合、ステータコア32は、図4に示すように、6等分された如き分割コア32Aを6個、一方の端部に形成された係合凸部32aを他方の端部に形成された係合凹部32bに互いに挿入係合することにより連結して構成されている。従って、1つの分割コア32Aは、6個の磁極歯33を有し、隣接する3つの磁極歯33は3相のU、V及びW相に対応する。
【0038】
前記ロータ31は、外周部に環状壁78aを有する浅底容器状の磁性体製のフレーム78と、その環状壁78aの内周部に配置された全体として円環状をなすロータコア79と、このロータコア79に形成された多数個の磁石挿入孔80に挿入された保磁力の異なる低保磁力永久磁石81及び高保磁力永久磁石82とを備えている。フレーム78の中央部に前記ボス部36が設けられ、前記撹拌軸が連結される。この場合、低(小)保磁力永久磁石81は、保磁力が低く、磁化状態(着磁量)を変更可能な例えばアルニコ磁石(アルニコ磁石の保磁力は、350kA/m以下)から構成されている。高(大)保磁力永久磁石82は、保磁力が高く、磁力が固定された例えばネオジム磁石(ネオジム磁石の保磁力は、700kA/m以上)から構成されている。
【0039】
ロータコア79は、図4に示すように、隣接する1対の分割コア79A、79Bを3対組合せて構成されている。分割コア79A、79Bは、夫々交互にN極とS極の磁極が形成されるように、各8個の磁石挿入孔80に8個の永久磁石81或いは82が挿入配置されて構成される。そのうちの、一方の分割コア79Aでは、分割コア32Aの一方側(左側)からのU、V、W、U、V及びW相の磁極歯33の配列に対して、低保磁力永久磁石81(「小 N」)、高保磁力永久磁石82(「大 S」)、高保磁力永久磁石82(「大 N」)、高保磁力永久磁石82(「大 S」)、高保磁力永久磁石82(「大 N」、高保磁力永久磁石82(「大 S」)、高保磁力永久磁石82(「大 N」)および高保磁力永久磁石82(「大 S」)が応じるように配置されている。
【0040】
他方の分割コア79Bでは、分割コア32Aの一方側(左側)からのU、V、W、U、V及びW相の配列に対して、高保磁力永久磁石82(「大 N」、高保磁力永久磁石82(「大 S」)、低保磁力永久磁石81(「小 N」))、高保磁力永久磁石82(「大 S」)、高保磁力永久磁石82(「大 N」、高保磁力永久磁石82(「大 S」)、高保磁力永久磁石82(「大 N」)及び高保磁力永久磁石82(「大 S」)が応じるように配置されている。
【0041】
以上のように、1対の分割コア79A、79Bは、1個の低保磁力永久磁石81と7個の高保磁力永久磁石82とを備えていて、総磁束量は略等しいのである。但し、1対の分割コア79A、79Bおいては、一方の分割コア79Aでは、低保磁力永久磁石81は、左側の1番目に位置するのに対し、他方の分割コア79Bでは、低保磁力永久磁石81は、左側から3番目に位置するように、永久磁石81、82の配置順が異なるように設定されている。
【0042】
一方、図2及び図3に示すように、1対の分割コア79A、79Bにおいて、一方の分割コア79Aの両端部には、係合部としての矩形状の係合凸部79aが形成され、他方の分割コア79Bの両端部には、被係合部としての矩形状の係合凹部79bが形成されている。従って、分割コア79A、79Bにおいて、対をなす分割コア79A、79Bであれば、一方の分割コア79Aの係合部としての係合凸部79aは、他方の分割コア79Bの被係合部としての係合凹部79bに係合することが可能である。
【0043】
しかしながら、対をなさない分割コア79A、79Aを組合せようとすると、一方の分割コア79Aの係合部としての係合凸部79aは、他方の分割コア79Aの被係合部としての係合凸部79aに係合することが不可能である。同様に、対をなさない分割コア79B、79Bを組合せようとすると、一方の分割コア79Bの係合部としての係合凹部79bは、他方の分割コア79Bの被係合部としての係合凹部79bに係合することが不可能である。
【0044】
上記モータ7において、ステータコア32の12個の磁極歯33に巻回される12個のU相のステータコイル34は直列に接続され、12個の磁極歯33に巻回される12個のV相のステータコイル34は直列に接続され、12個の磁極歯33に巻回される12個のW相のステータコイル34は直列に接続された上で、これらの直列回路はスター結線される。そして、モータ7は、制御手段としてのマイクロコンピュータを含む制御装置68により制御される。
【0045】
図5は、前記制御装置68を中心とした電気的構成を概略的に示している。ここで、交流電源Vacを直流に変換する直流電源回路70には、モータ駆動回路としてのインバータ主回路71が接続されている。周知のように、このインバータ主回路71は、6個のスイッチング素子71a〜71fを3相ブリッジ接続して構成され、このインバータ主回路71に前記モータ7の各相のステータコイル34が接続されている。
【0046】
前記インバータ主回路71の各スイッチング素子71a〜71fは、制御装置68によりインバータ制御回路72を介してオン、オフ制御される。また、前記モータ7には、ロータ31の位置検出を行なう複数の位置検出素子73(1個のみ図示)が設けられている。この位置検出素子73の位置検出信号は、モータ7の回転速度検出にも用いられる。これにて、モータ7は、制御装置68により可変速且つ正逆転可能に駆動制御される。
【0047】
さらに、この制御装置68には、前記操作パネル67のキー操作信号が入力されると共に、前記水位センサ64、蓋スイッチ65からの検出信号及び両ホールIC63a、63bからの磁極検出用信号である前記出力電圧が入力される。そして、制御装置68は、前記モータ7を制御すると共に、駆動回路74を介して給水弁66を制御し、駆動回路75を介してギアドモータ12を制御し、駆動回路76を介してポンプモータ69を制御する。尚、制御装置68は、報知手段として機能するブザー77も制御する。
【0048】
これにて、制御装置68は、使用者による操作パネル67のキー操作及び前記各種の入力等に基づき、ROM等に記憶された制御プログラムに従って、前記モータ7や給水弁66、ギアドモータ12等の各機構を制御して、洗い行程、すすぎ行程、脱水行程に大別される洗濯運転を自動で実行させる。本実施形態では、すすぎ行程は、シャワー状の給水を間欠的に行いながら回転槽5(及び撹拌体6)を高速回転させる脱水すすぎ行程と、回転槽5内に水を溜めて撹拌体6を回転させるためすすぎ行程とからなる。前記洗い行程、ためすすぎ行程では、撹拌体6が低速で正逆方向に交互に回転され、脱水すすぎ行程、脱水行程では、回転槽5及び撹拌体6が高速で一方向(正方向)に一体回転される。
【0049】
そして、前記制御装置68は、後の作用説明でも述べるように、洗濯運転の行程に応じてクラッチ切替指令(ギアドモータ12に対する回転駆動指令)を発生して、クラッチ37を洗い位置と脱水位置との間で切替制御する。即ち、前記脱水位置への切替制御は、洗い行程、ためすすぎ行程の終了時の排水弁10の開放のタイミングで実行され、又、前記洗い位置への切替制御は、洗い行程及びためすすぎ洗い行程の開始直前で排水弁10を閉鎖するタイミング)で実行される。
【0050】
前記脱水位置への切替制御においては、前記ギアドモータ12を一方向に回転させて操作レバー49を図19(a)の状態から矢印D方向に回動(クラッチ37は下方へ移動)させる。又、前記洗い位置への切替制御においては、前記ギアドモータ12を逆方向へ回転させて操作レバー49を図19(b)の状態から矢印C方向に回動(クラッチ37は上方へ移動)させるように回転動作させる。上記制御装置68、ギアドモータ12及び昇降機構38等から、クラッチ切替手段が構成されている。
【0051】
このとき、前記制御装置68は、クラッチ37の切替え時(ギアドモータ12の駆動時)に、前記モータ7を短時間回転させて停止させる切替補助動作を実行する切替補助動作実行手段として機能する。この場合、クラッチ7を、上昇した洗い位置から下降した脱水位置に切替える際には、脱水側クラッチ切替補助動作(図20参照)が実行される。また、クラッチ37を、下降した脱水位置から、上昇した洗い位置に切替える際には、洗い側クラッチ切替補助動作(図21参照)が実行される。
【0052】
脱水側クラッチ切替補助動作は、図20に示すように、モータ7を正方向(脱水回転方向)及び反転方向へ、所定角度ずつ、小刻みに回転させることを行う。即ち、最初はモータ7を最初の角度位置(0度位置)から正方向へ2.5度の角度分回動するように駆動し、そして反転方向へ5度回動させ、次に正方向へ5度回動させ、さらに2.5度反転させる。そして、若干時間休止をして正方向へ5度、反転方向へ2.5度を所定回数繰り返し、最初の0度位置から正方向へ25度回動させたところで、若干時間休止をし、その後、正方向へ2.5度回動し、そして5度反転方向へ回動し、同じく5度正方向へ回動し、さらに2.5度反転方向へ回動させる。これにより、嵌合部46からのクラッチ37の被嵌合部45の離脱が促される。
【0053】
洗い側クラッチ切替補助動作は、図21に示すように、モータ7を停止状態(角度0度)から正転方向に角度2.5度の位置まで回転させた後、逆転方向に角度−2.5度の位置まで回転させ、角度0度の位置に戻し、次いで、角度12度の位置まで回転させた後、角度−12度の位置まで逆転させ、角度0度の位置に戻し、さらに、角度2.5度の位置まで回転させた後、角度−2.5度の位置まで逆転させ、角度0度の位置に戻すことにより行なわれ、所要時間は約10秒とされている。これにより嵌合部46に対するクラッチ37の被嵌合部45の係合が促される。
【0054】
尚、上記したクラッチ37の状態切替時には、クラッチ位置検出手段61(位置検出器63)により、クラッチ37が正しく切替えられたかどうかを検出し、切替えが不十分であると判断された場合には、上記したクラッチ切替補助動作を、上限回数に至るまで繰返して実行することができる。
【0055】
さて、本実施形態では、前記制御装置68は、前記モータ7のロータ31に設けられた永久磁石のうち、低保磁力永久磁石81の磁化状態(着磁量)を、減磁状態と増磁状態との間で調整(変更)する磁化状態調整手段として機能する。即ち、制御装置68は、低保磁力永久磁石81を減磁状態から増磁させる増磁処理を行うにあたっては、低保磁力永久磁石81の減磁状態において、ステータコイル34に例えば+500Vの電圧を印加する。これにより、低保磁力永久磁石81の磁束を最大まで上げ、電圧の印加を解除しても、その磁束が保持されようになる。この増磁状態では、モータ7としては、低速回転で高トルクを発揮できる。
【0056】
これに対し、制御装置68は、低保磁力永久磁石81を増磁状態から減磁させる減磁処理を行うにあたっては、低保磁力永久磁石81の増磁状態において、ステータコイル34に例えば−500Vよりやや高い電圧を印加する。低保磁力永久磁石81の磁束を0(零)近くまで下げ、電圧の印加を解除しても、その磁束が保持されるようにする。これにより、ステータ30に対して作用するロータ31全体としての磁束が減少するようになり、この減磁状態では、モータ7としては、低トルク、高速回転に適したものとなる。尚、洗濯の各行程におけるステータコイル34の運転電圧は、通常で約±200Vの範囲であるので、各行程の実行中に低保磁力永久磁石81の磁束が変化してしまうことはない。
【0057】
この場合、次の作用説明でも述べるように、制御装置68は、洗い行程及びためすすぎ行程の行程開始前に、モータ7に対する増磁処理を実行し、増磁状態で洗い行程及びためすすぎ行程を実行する。また、脱水すすぎ行程及び脱水行程の開始前に、モータ7に対する減磁処理を実行し、減磁状態で脱水すすぎ行程及び脱水行程を実行する。そして、それらに加えて、制御装置68は、上記したクラッチ37の切替時のクラッチ切替補助動作を実行する際(直前)に、モータ7の低保磁力永久磁石81が減磁状態であるときには、増磁処理を実行する。
【0058】
次に上記構成の作用について、図22も参照して述べる。図22は、本実施形態における一連の洗濯運転の行程の進行状態(時間経過)とモータ7のトルクの変動との関係を、概略的に示している。ここで、洗濯運転が開始されると、まず、クラッチ37を脱水位置から上昇させて洗い位置に切替えるクラッチ切替行程P1が実行され、引続き洗い行程P2が実行される。このとき、クラッチ切替行程P1においては、併せて洗い側クラッチ切替補助動作(図21参照)が実行される。また、洗い行程P2では、回転槽5(水槽3)内に給水が行なわれた後、モータ7の正逆回転により撹拌体6のみが低速で正逆回転駆動され、洗濯物に対する水流による洗いが実行される。
【0059】
洗い行程P2が終了すると、排水弁10が開放されると共に、クラッチ37を下降させて洗い位置から脱水位置に切替えるクラッチ切替行程P3が実行され、引続き脱水すすぎの行程P4が実行される。クラッチ切替行程P3においては、併せて脱水側クラッチ切替補助動作(図20参照)が実行される。脱水すすぎ行程P4では、モータ7の正回転により、回転槽5及び撹拌体6が高速で回転されると共に、洗濯物に対するシャワー状の給水が間欠的に行なわれる。
【0060】
この後、再びクラッチ37を脱水位置から上昇させて洗い位置に切替えるクラッチ切替行程P5が実行され、引続きためすすぎ行程P6が実行される。クラッチ切替行程P5においては、併せて洗い側クラッチ切替補助動作(図21参照)が実行される。ためすすぎ行程P6においては、回転槽5(水槽3)内に給水が行なわれた後、モータ7の正逆回転により撹拌体6のみが低速で正逆回転駆動される。
【0061】
ためすすぎ行程P6が終了すると、クラッチ37を下降させて洗い位置から脱水位置に切替えるクラッチ切替行程P7が実行され、引続き脱水行程P8が実行される。クラッチ切替行程P7においては、併せて脱水側クラッチ切替補助動作(図20参照)が実行される。脱水行程P8では、モータ7の正回転により、回転槽5及び撹拌体6が高速で回転される。この場合、上記したクラッチ切替行程P1,P3,P5、P7において、切替補助動作が実行されることにより、モータ7によりクラッチ37の回転位置(被嵌合部45の回転位置)が変更され、クラッチ37の切替え(嵌合部46に対する嵌合、切離し)が促進されるようになる。
【0062】
そして、制御装置68は、上記のように洗濯運転の各行程を制御することと併せて、モータ7のロータ31に設けられた永久磁石81、82のうちの低保磁力永久磁石81の磁化状態(着磁量)の調整(増磁、減磁)の処理を、次のように実行する。即ち、まず、洗濯運転(クラッチ切替行程P1)の開始時に、モータ7に対する増磁処理が行なわれる。洗い行程P2の終了時(クラッチ切替行程P3の開始時)に、モータ7に対する増磁処理が行なわれ、クラッチ切替行程P3の終了時(脱水すすぎ行程P4の開始時)に、モータ7に対する減磁処理が行なわれる。
【0063】
脱水すすぎ行程P4の終了時(クラッチ切替行程P5の開始時)に、モータ7に対する増磁処理が行なわれる。この後、ためすすぎ行程P6の終了時(クラッチ切替行程P7の開始時)に、モータ7に対する増磁処理が行なわれ、クラッチ切替行程P7の終了時(脱水行程8の開始時)に、モータ7に対する減磁処理が行なわれる。
【0064】
このように、低保磁力永久磁石81の磁化状態(着磁量)を変更することにより、洗い行程P2及びためすすぎ行程P6では、ステータ30に対して作用するロータ31の磁束を増加させ、モータ7として低速回転、高トルクを発揮することができる。また、脱水すすぎ行程P4及び脱水行程P8では、減磁の処理を行うことにより、ステータ30に対して作用するロータ31の磁束を減少させ、モータ7として、低トルク、高速回転に適した性能を発揮できるようになる。
【0065】
ここで、もし、上記したクラッチ37の切替え時に低保磁力永久磁石81が減磁状態のままであると、モータ7が低トルクであるため、例えば洗濯物が回転槽5の内面に貼付いている場合など、切替補助動作を実行してもモータ7が回転せず、クラッチ37の切替えが確実に行なわれなくなる虞がある。これに対し、本実施形態では、クラッチ37の切替時において常に低保磁力永久磁石81を増磁させるようにしたので、切替補助動作の実行時のモータ7の大きなトルクを得ることができ、クラッチ37の切替えを確実に行うことができるのである。
【0066】
このような第1の実施形態によれば、ロータ31に設けられる永久磁石に、高保磁力永久磁石82と、磁化状態を変更可能な低保磁力永久磁石81とを含ませ、洗濯の行程に応じて増磁、減磁の処理を行うことにより、モータ7のトルクを変更させることができる。従って、洗い行程及びためすすぎ行程では、モータ7として、洗い行程及びためすすぎ行程に必要な低速回転、高トルクを得ることができる。脱水すすぎ行程及び脱水行程では、モータ7として、それらの行程に必要な低トルク、高速回転に適した性能を発揮できるようになる。
【0067】
そして、モータ7の回転の回転槽5及び撹拌体6への伝達状態を切替えるクラッチ37を備えるものにあって、クラッチ37の切替時に、モータ7を短時間回転させる切替補助動作を行なうものにあって、クラッチ37の切替時に、モータ7の低保磁力永久磁石81に対する増磁処理を行うようにしたので、切替補助動作を行なう際の必要なモータ7の大きなトルクを得ることができ、クラッチ37の切替えをより確実に行うことができるという優れた効果を奏する。
【0068】
(2)第2、第3の実施形態、その他の実施形態
図23は、第2の実施形態を示すもので、次の点が上記第1の実施形態と異なっている。即ち、この第2の実施形態では、前記クラッチ37の切替え時において、制御装置68(磁化状態調整手段)による前記低保磁力永久磁石81の増磁の処理(ステータコイル34に対する電圧の印加)を複数回(例えば3回)繰返すように構成されている。この場合、増磁の処理を1回実行しただけでは、モータ7の高トルク化が不十分となる虞があるが、増磁の処理を2回、3回と繰返し実行することにより、モータ7の高トルク化をより一層確実に行うことができることが明らかとなっている。
【0069】
図24は、第3の実施形態を示すものである。即ち。モータ7の各相のステータコイル34は、多数個の単位コイルを直列に接続して構成されるのであるが、図で一相分のみ図示するように、多数個の単位コイルの半数ずつを直列接続した2つの群(単位コイル群34a,34b)に分けるようにしている。そして、例えばリレーを用いた直並列切替回路により、それら単位コイル群34a,34bの並列接続状態(図24(a))と、直列接続状態(図24(b))とを切替可能に構成している。
【0070】
このとき、上記低保磁力永久磁石81による磁化状態の変更に加えて、モータ7の大トルクが必要な場合(洗い行程、ためすすぎ行程、並びに、クラッチ37の切替補助動作実行時)には、図24(a)に示す並列接続状態とする。これに対し、モータ7の高速回転が必要な場合(脱水行程、脱水すすぎ行程)には、図24(b)に示す直列接続状態とする。これにより、モータ7のトルク変動をより大きくすることができる。
【0071】
さらに、図示はしないが、洗濯機においては、洗濯運転実行中に、前記蓋スイッチ65により、洗濯物出入口の蓋18aの開放が検知されたとき、制御装置68が前記モータ7を一時停止させる構成が一般的である(一時停止手段)。このような一時停止手段を備えたものにあっては、上記一時停止による運転停止後の運転再開時に、前記モータ7の低保磁力永久磁石81の増磁処理を実行するように構成することができる。これによれば、モータ7の高トルクが得られる状態で、洗濯運転を再開することができ、停止前と停止後で負荷変動(洗濯物の増加)がある場合でも、スムーズに運転を再開することができるといったメリットを得ることができる。
【0072】
その他、以上説明した洗濯機は、上記の実施形態に限定されるものではなく、例えば、クラッチ37やクラッチ切替手段(昇降機構38)の詳細な構成や、モータ7(ステータ30及びロータ31)の詳細構造、永久磁石(低保磁力永久磁石81、高保磁力永久磁石82)の配置構成などについて、種々の変更が可能であり、また、縦軸型の洗濯機に限らず横軸型(ドラム式洗濯機)にも適用できる等、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。
【符号の説明】
【0073】
図面中、1は洗濯機、3は水槽、5は回転槽、6は撹拌体、7はモータ、8は回転伝達機構、10は排水弁、12はギアドモータ、24は槽軸、27は撹拌軸、30はステータ、31はロータ、32はステータコア、34はステータコイル、36はボス部、37はクラッチ、38は昇降機構(クラッチ切替手段)、39は共回り防止装置、45は被嵌合部、45aは歯部、46は嵌合部、46aは歯部、47はクラッチレバー、61はクラッチ位置検出手段、65は蓋スイッチ、68は制御装置(切替補助動作実行手段、磁化状態調整手段、一時停止手段)、79はロータコア、81は低保磁力永久磁石、82は高保磁力永久磁石を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯物が収容される回転槽と、
この回転槽内に設けられモータにより回転される撹拌体と、
前記モータの回転を前記回転槽及び撹拌体に伝達する脱水位置と、前記モータの回転を前記撹拌体のみに伝達する洗い位置との間で切替え可能なクラッチと、
洗濯運転の行程に応じて前記クラッチを脱水位置と洗い位置との間で切替えるクラッチ切替手段と、
前記クラッチ切替手段による前記クラッチの状態の切替え時に、前記モータを短時間回転させて停止させる切替補助動作を実行する切替補助動作実行手段とを具備し、
前記モータは、ステータコイルを有するステータと、ロータコアに多数個の永久磁石を有するロータとを備えて構成されると共に、前記永久磁石には、高保磁力永久磁石と磁化状態を変更可能なレベルの低保磁力永久磁石とが含まれており、
前記ステータコイルに励磁電流を発生させることで、前記低保磁力永久磁石の磁化状態を増磁、減磁する磁化状態調整手段を備え、
前記磁化状態調整手段は、前記クラッチの切替え時において、前記低保磁力永久磁石を増磁させることを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記クラッチの切替え時において、前記磁化状態調整手段による前記低保磁力永久磁石の増磁の処理を複数回繰返すことを特徴とする請求項1記載の洗濯機。
【請求項3】
洗濯運転実行中に、前記回転槽の洗濯物出入口の開放が検知されたとき、前記モータを一時停止させる一時停止手段を備え、
前記一時停止手段による運転停止後の運転再開時に、前記磁化状態調整手段による前記低保磁力永久磁石の増磁を実行することを特徴とする請求項1又は2記載の洗濯機。
【請求項1】
洗濯物が収容される回転槽と、
この回転槽内に設けられモータにより回転される撹拌体と、
前記モータの回転を前記回転槽及び撹拌体に伝達する脱水位置と、前記モータの回転を前記撹拌体のみに伝達する洗い位置との間で切替え可能なクラッチと、
洗濯運転の行程に応じて前記クラッチを脱水位置と洗い位置との間で切替えるクラッチ切替手段と、
前記クラッチ切替手段による前記クラッチの状態の切替え時に、前記モータを短時間回転させて停止させる切替補助動作を実行する切替補助動作実行手段とを具備し、
前記モータは、ステータコイルを有するステータと、ロータコアに多数個の永久磁石を有するロータとを備えて構成されると共に、前記永久磁石には、高保磁力永久磁石と磁化状態を変更可能なレベルの低保磁力永久磁石とが含まれており、
前記ステータコイルに励磁電流を発生させることで、前記低保磁力永久磁石の磁化状態を増磁、減磁する磁化状態調整手段を備え、
前記磁化状態調整手段は、前記クラッチの切替え時において、前記低保磁力永久磁石を増磁させることを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記クラッチの切替え時において、前記磁化状態調整手段による前記低保磁力永久磁石の増磁の処理を複数回繰返すことを特徴とする請求項1記載の洗濯機。
【請求項3】
洗濯運転実行中に、前記回転槽の洗濯物出入口の開放が検知されたとき、前記モータを一時停止させる一時停止手段を備え、
前記一時停止手段による運転停止後の運転再開時に、前記磁化状態調整手段による前記低保磁力永久磁石の増磁を実行することを特徴とする請求項1又は2記載の洗濯機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2013−78473(P2013−78473A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220025(P2011−220025)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】
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