説明

洗車機

【目的】 洗車機が走行開始位置にあるときに、洗車機本体内に自動車を乗り入れる形で停止させた場合でも、自動車車体に対する手作業が必要なときは、洗車機を待避位置まで後退させることにより、洗車機本体と自動車の間を開けて、作業者が容易に作業できるようにする。
【構成】 洗車機本体の走行開始位置より洗浄する自動車から離れた待避位置を設けるか、洗浄する自動車を移動させる台車の走行開始位置より洗車機本体から離れた待避位置を設け、自動車車体に対する手作業が必要なときには、待避位置まで洗車機を後退させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、洗車機本体もしくは自動車を移動させる台車の走行に伴い、自動車車体に対して洗浄,乾燥等の処理を順次施す洗車装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、この種の洗車機は、洗車機前部に車体検知センサーを設け、洗浄しようとする自動車の有無を認識する。また、洗車時間を短縮するためには、洗車処理装置と自動車との距離を短くし、洗車機本体および台車の走行時間を短くする必要がある。このため、一般にこの種の洗車機では、洗浄しようとする自動車の前部を洗車機本体内に乗り入れるように停止させる。
【0003】この種の洗車機で水垢取り洗車を行うときや、手洗い洗車を行うときなどは、作業者が自動車車体に対して手作業による洗車をする必要が生じる。ところが、洗車機本体および台車が走行開始位置にあるとき、自動車は洗車機本体に対し、前部を洗車機本体内に乗り入れた形で停止しているので、自動車車体前部に対する手作業ができない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このような従来の洗車機では、手作業が必要なときには、作業者が洗浄しようとする自動車に乗り込み、自動車を運転して、洗車機から離れた位置まで移動させていたので、作業者の負担が大きかった。また、自動車に乗り込む際、自動車車内に水が入る等の不都合があった。
【0005】そこで、このような問題を解決するために、作業者が自動車車体の前部に対する手作業をする場合、自動車車体側面と洗車機本体前部の隙間から自動車車体前部に移動することが考えられるが、隙間が狭い場合は、移動することができない。また、洗車機本体の後部から洗車機本体内に入り、自動車車体前部に移動することも考えられるが、この場合、移動しても、洗車機本体内の洗浄装置が邪魔になったり、上部の洗浄装置や天井から洗浄水が落下してくるなどで、作業がしづらい。
【0006】
【課題を解決するための手段】このような問題点を解決するために本発明は、洗車機本体の走行開始位置と、前記走行開始位置より洗浄する自動車から離れた待避位置とを設け、自動車車体に対する手作業が必要なときは、前記待避位置まで洗車機本体を後退させる。
【0007】また、自動車を移動させる台車を備えた洗車機では、洗車機本体の走行開始位置と、前記走行開始位置より洗浄する自動車から離れた待避位置とを設け、自動車車体に対する手作業が必要なときは、前記待避位置まで洗車機本体を後退させるか、または、台車の走行開始位置と、前記走行開始位置より洗車機本体から離れた待避位置とを設け、自動車車体に対する手作業が必要なときは、前記待避位置まで、台車を後退させる。
【0008】
【作用】これにより、洗車機本体内に自動車を乗り入れる形で停止させた場合でも、洗車機本体と自動車の間を開けて、作業者が入りやすくできる上、洗浄装置が邪魔にならず、洗車機本体の天井部に付着した洗浄水が作業者に落下することもなく、作業者が容易に作業できるようになる。
【0009】
【実施例】以下、図面を基に、本発明の第1の実施例について説明する。図において、1は、自動車車体を跨ぐように門型状に形成した洗車機本体で、正転逆転可能な電動機4,4により、車輪2,2を回転駆動して、レール3,3に沿って往復走行する。
【0010】5は、洗車機走行位置を検出するロータリーエンコーダーで、電動機4の出力軸に連結し、電動機4の回転方向を検出しながら単位角度回転毎にパルス信号を出力して洗車機本体1の走行位置を与えている。
【0011】6は、洗車機位置を検出する位置センサ−で、洗車機本体1下部に設けられ、レール3敷設面に固定された突起物であるドッグ7を感知してスイッチングし、洗車機本体1の位置を与えている。ドッグ7は洗車機本体の走行開始位置を与える。
【0012】8は車両の有無および車高を測定する超音波センサー、9は車体上面に沿って上下するトップブラシ、10は車体側面に沿って開閉するサイドブラシ、11,12は散水ノズル、13は上面乾燥ノズル、14は側面乾燥ノズルで、洗車機本体1の往復走行に伴って、車体の洗浄,乾燥等の処理を行う洗車処理装置を構成する。
【0013】図3は第1の実施例の制御系の説明図である。15はマイクロコンピューターで、演算処理を行うCPU16、プログラム及び各種データを記憶するメモリ17、及び入出力インターフェース18,19より成り、入力インターフェース18にはロータリーエンコーダー5、位置センサー6、超音波車高センサー8が接続され、出力インターフェース19には電動機4,4、トップブラシ9、サイドブラシ10、散水ノズル11,12、上面乾燥ノズル13、側面乾燥ノズル14が接続される。
【0014】次に、図4を基に、手洗い洗車の場合の、本発明の第1の実施例について説明する。手洗い洗車は、2往復洗車で、1往復目の往工程では、自動車に対し清水を散布し、復工程では洗剤を散布する。1往復目の終了後、作業者による手洗い作業を行う。2往復目の往工程では、ワックスを散布し、復工程では、乾燥処理を行う。
【0015】洗車機本体1は、図4(a)に示す走行開始位置より走行を開始し、自動車Aに対して清水を散布しながら、図4(b)に示す自動車後部位置まで前進する。次に、洗車機本体は、洗剤を散布しながら図4(a)に示す走行開始位置まで後進する。ここで、洗車機本体は、ロータリーエンコーダー5により走行距離を検出しながら、予め設定された待避位置である図4(c)に示す位置まで自動的に後退し、手作業による洗浄待ちとなる。
【0016】ここで、図5に示すように、作業者Wは、自動車に散布された洗剤を布等を使って車体に擦りつけ、自動車車体に付着した汚れを落とす。作業者は、作業終了後、図示しないキー操作により洗車機に洗車の再開を指示する。
【0017】洗車機本体は、図4(c)に示す待避位置より走行を開始し、自動車に対してワックスを散布しながら、図4(b)に示す自動車後部位置まで前進する。次に、洗車機本体は、自動車に対し上面乾燥ノズルおよび側面乾燥ノズルから空気を吹き付け、自動車車体に付着した水を吹き飛ばして乾燥しながら図4(a)に示す走行開始位置まで後進し、洗車を終了する。
【0018】次に、本発明の第2の実施例について説明する。図6において、20は洗浄する自動車の前輪を乗せる台車、23は両端を台車20に固着して無端状に形成されたチェーンで、正転逆転可能な電動機22により回転駆動され、レール21,21上を往復走行する。
【0019】24は、洗車機走行位置を検出するロータリーエンコーダーで、電動機22の出力軸に連結し、電動機22の回転方向を検出しながら単位角度回転毎にパルス信号を出力して台車20の走行位置を与えている。
【0020】26は、台車位置を検出する位置センサ−で、レール21敷設面に設けられ、台車に固定された突起物25を感知してスイッチングし、台車20の走行開始位置を与えている。
【0021】図7は第2の実施例の制御系の説明図である。15はマイクロコンピューターで、演算処理を行うCPU16、プログラム及び各種データを記憶するメモリ17、及び入出力インターフェース18,19より成り、入力インターフェース18にはロータリーエンコーダー5,24、位置センサー6,26、超音波車高センサー8が接続され、出力インターフェース19には電動機4,4,22、トップブラシ9、サイドブラシ10、散水ノズル11,12、上面乾燥ノズル13、側面乾燥ノズル14が接続される。
【0022】次に、図8を基に、手洗い洗車の場合の、本発明の第2の実施例について説明する。洗車機本体1および台車20は、図8(a)に示す走行開始位置より走行を開始し、自動車Aに対して清水を散布しながら、図8(b)に示す自動車後部位置まで前進する。次に、洗車機本体および台車は、自動車に洗剤を散布しながら図8(a)に示す走行開始位置まで後進し、手作業による洗浄待ちとなる。
【0023】作業者は、図示しない操作パネルのキー操作により、洗車機本体に待避位置への移動を指示する。洗車機本体は、位置センサー6が、待避位置を与えるドッグ27を検出するまで後退する。
【0024】ここで、作業者Wは、自動車に散布された洗剤を布等を使って車体に擦りつけ、自動車車体に付着した汚れを落とす。作業者は、作業終了後、図示しないキー操作により洗車機に洗車の再開を指示する。
【0025】洗車機本体および台車は、図8(c)に示す待避位置より走行を開始し、自動車に対してワックスを散布しながら、図8(b)に示す自動車後部位置まで前進する。次に、洗車機本体および台車は、自動車に対し上面乾燥ノズルおよび側面乾燥ノズルから空気を吹き付け、自動車車体に付着した水を吹き飛ばして乾燥しながら図8(a)に示す走行開始位置まで後進し、洗車を終了する。
【0026】次に、図9を基に、手洗い洗車の場合の、本発明の第3の実施例について説明する。洗車機本体1および台車20は、図9(a)に示す走行開始位置より走行を開始し、自動車Aに対して清水を散布しながら、図9(b)に示す自動車後部位置まで前進する。次に、洗車機本体および台車は、洗剤を散布しながら図9(a)に示す走行開始位置まで後進する。ここで、台車は、ロータリーエンコーダー24により走行距離を検出しながら、予め設定された待避位置である図9(c)に示す位置まで自動的に後退し、手作業による洗浄待ちとなる。
【0027】ここで、作業者は、自動車に散布された洗剤を布等を使って車体に擦りつけ、自動車車体に付着した汚れを落とす。作業者は、作業終了後、図示しないキー操作により洗車機に洗車の再開を指示する。
【0028】洗車機本体および台車は、図9(c)に示す待避位置より走行を開始し、自動車に対してワックスを散布しながら、図9(b)に示す自動車後部位置まで前進する。次に、洗車機本体および台車は、自動車に対し上面乾燥ノズルおよび側面乾燥ノズルから空気を吹き付け、自動車車体に付着した水を吹き飛ばして乾燥しながら図9(a)に示す走行開始位置まで後進し、洗車を終了する。
【0029】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、洗車機本体の走行開始位置と、前記走行開始位置より洗浄する自動車から離れた待避位置とを設け、車体に対する手作業が必要なときは、前記待避位置まで洗車機本体を後退させる。また、自動車を移動させる台車を備えた洗車機では、洗車機本体の走行開始位置と、前記走行開始位置より洗浄する車体から離れた待避位置とを設け、車体に対する手作業が必要なときは、前記待避位置まで洗車機本体を後退させるか、または、台車の走行開始位置と、前記走行開始位置より洗車機本体から離れた待避位置とを設け、車体に対する手作業が必要なときは、前記待避位置まで、台車を後退させる。
【0030】これにより、洗車機本体内に自動車を乗り入れる形で停止させた場合でも、洗車機本体と自動車の間を開けて、作業者が入りやすくできる上、洗浄装置が邪魔にならず、洗車機本体の天井部に付着した洗浄水が作業者に落下することもなく、作業者が容易に作業できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の側面説明図である。
【図2】本発明の一実施例の正面説明図である。
【図3】本発明の一実施例の制御系を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施例の動作説明図である。
【図5】本発明の一実施例の動作説明図である。
【図6】本発明の他の実施例の上面図である。
【図7】本発明の他の実施例の制御系を示す説明図である。
【図8】本発明の他の実施例の動作説明図である。
【図9】本発明の他の実施例の動作説明図である。
【符号の説明】
1 洗車機本体
3 本体走行用レール
4 本体走行用電動機
5 本体走行位置検出用ロ−タリ−エンコ−ダ−
6 本体走行位置検出位置センサ−
7,27 ドック
8 車体検出用超音波センサー
11,12 散水ノズル
15 制御手段たるマイクロコンピュ−タ−
20 自動車を移動させる台車
21 台車走行用レール
22 台車走行用電動機
24 台車位置検出用ロータリーエンコーダー
26 台車走行位置検出位置センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】 門型に形成された洗車機本体内に、散水ノズル・ブロア等の洗車処理装置を備え、自動車を跨いで往復走行し、自動車車体の洗浄,乾燥等の処理を行う洗車機において、前記洗車機本体の走行開始位置と、前記走行開始位置より洗浄する自動車から離れた待避位置とを設定し、自動車車体に対する手作業が必要なときは、前記待避位置に洗車機本体を後退させることを特徴とする洗車機。
【請求項2】 門型に形成されたフレーム内に、散水ノズル・ブロア等の洗車処理装置を備え、自動車を跨いで往復走行する洗車機本体と、前記洗車機本体と相対する方向へ前記自動車を移動させる台車とを備え、前記洗車機本体および台車の走行に伴い自動車車体の洗浄,乾燥等の処理を行う洗車機において、洗車機本体の走行開始位置と、前記走行開始位置より洗浄する自動車から離れた待避位置とを設定し、自動車車体に対する手作業が必要なときは、前記待避位置に洗車機本体を後退させることを特徴とする洗車機。
【請求項3】 門型に形成されたフレーム内に、散水ノズル・ブロア等の洗車処理装置を備え、自動車を跨いで往復走行する洗車機本体と、前記洗車機本体と相対する方向へ前記自動車を移動させる台車とを備え、前記洗車機本体および台車の走行に伴い自動車車体の洗浄,乾燥等の処理を行う洗車機において、台車の走行開始位置と、前記走行開始位置より洗車機本体から離れた待避位置とを設定し、自動車車体に対する手作業が必要なときは、前記待避位置に台車を後退させることを特徴とする洗車機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開平7−309215
【公開日】平成7年(1995)11月28日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−124431
【出願日】平成6年(1994)5月13日
【出願人】(000103138)エムケー精工株式会社 (174)