洗面台
【課題】形状や大きさが様々な物品を、用途に応じて出し入れしやすく、且つ、高さ方向及び巾方向に効率よく整理収納することができる洗面台を提供する。
【解決手段】下段引出し(3)の前板(3a)の高さが、上段引出し(2)の前板(2a)の高さの3倍以上である上下2段の引出し付き洗面台であって、前記下段引出し(3)には下段引出し(3)の前板(3a)の奥側で下段引出し(3)の底板(3b)の上部に幅方向に段差(4e)を設けた深さの異なる内引出し(4)が着脱可能で且つ前後スライド可能に具備されている。
【解決手段】下段引出し(3)の前板(3a)の高さが、上段引出し(2)の前板(2a)の高さの3倍以上である上下2段の引出し付き洗面台であって、前記下段引出し(3)には下段引出し(3)の前板(3a)の奥側で下段引出し(3)の底板(3b)の上部に幅方向に段差(4e)を設けた深さの異なる内引出し(4)が着脱可能で且つ前後スライド可能に具備されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボウルや水栓等が取付けられたカウンターの下部に、引出し収納部を有する洗面台に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に洗面台を設置する洗面室には、隣接して浴槽やトイレが配置され、且つ室内には洗濯機なども配置されることが多く、排水ホースやバケツ、粉石鹸箱や固形石鹸、各種のボトル洗剤や清掃道具、ドライヤーや化粧品等の多くの物品の収納場所が必要である。
そのため、従来の洗面化粧台に用いられる引出し付き洗面台は、開き戸収納部にバケツ等の大型物品を収納し、引出し収納部に化粧品や化粧道具などの小物物品を収納するようにしたものが多い。
【0003】
特許文献1には、洗面所で使用する小物や大物物品を整理し使い勝手を良くする壁掛け式洗面器下部収納が紹介されている。
また、特許文献2には、洗面台ではないが、家具本体が大型化せず、最下段であっても収納物が目視でき、収納物の出し入れが容易で、引出し内部の収納物を確実に整理整頓できるキャビネットが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−204641号公報
【特許文献2】特開2002−320527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の図2(d)に開示のものは、小物収納は引出し式で大物収納は回転式開き戸で行なうものである。これは、大小物品の収納は可能であるが、カウンター高さが800mm程度の一般的な洗面台では、開き戸側にバケツ等の大物物品を収納した場合にバケツ上部に未収納空間が発生し収納効率が低下していた。
【0006】
また、特許文献2の高さ寸法の大きい背高部と高さ寸法の小さい背低部が左右方向に位置する正面板(前板)をそれぞれ有する2つの引出しを一対となし、この一対となした引出しを上下方向に配置した状態で、2つの正面板で横長の長方形を形成する引出しを、上下に配置したキャビネットを本洗面台に適用した場合には、高さが異なる大小の物品を収納整理できるが、上下対を成した引出しで同一高さの収納部が複数できるため、一品一様の物品収納には適さず、引出し操作には各段毎の引出しの開閉操作が必要となり更なる操作性の改善が望まれていた。
【0007】
本発明は、かかる現状に鑑み創案されたものであって、その目的とするところは、形状や大きさが様々な物品を、用途に応じて出し入れしやすく、且つ、高さ方向及び巾方向に効率よく整理収納することができる洗面台を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の洗面台は、下段引出しの前板の高さが、上段引出しの前板の高さの3倍以上である上下2段の引出し付き洗面台であって、前記下段引出しには下段引出しの前板の奥側で下段引出しの底板の上部に幅方向に段差を設けた深さの異なる内引出しが着脱可能で且つ前後スライド可能に具備されているものである。
【0009】
この発明にあっては、化粧品やヘアワックス、ヘヤーピン等の薄型小物は、浅い上段引出しに収納でき、バケツなどの大物物品や保管用粉石鹸箱等は、内引出しの段差の高低に応じて下段引出し内に収納し、そして、ドライヤー、整髪料、洗剤ボトル、シャンプーボトル類等も内引出しの段差に応じて内引出しに収納整理できるため、形状の異なる大小様々な物品の収納が効率高く整理収納できる。また、内引出しは着脱可能であるため、取外して清掃ができ洗面台を清潔に保つことができる。
【0010】
また、本発明の請求項2に記載の洗面台は、請求項1の発明に加えて、内引出しの段差が、底板に設けた開口部に深底収納体を着脱可能に設置することにより構成できるものである。
この発明にあっては、請求項1の効果に加え、内引出しの深底部を着脱可能な深底収納体で構成しているため、底が深く内部の清掃が困難な深底部も取り外しで清掃することにより清潔に保つことができる。また、一般的な引出しの底板をくり抜き開口して開口部を成形できるため、従来の製造設備が流用でき、生産性の維持向上や製造コストを低く抑えることができる。
【0011】
更に、本発明の請求項3に記載の洗面台は、請求項1又は2の発明に加えて、内引出しが、下段引出しと連動して引き出され、内引出しが引き出される内引出限界位置よりもさらに引き出されて前記下段引出しと内引出しとの連動が解除された後に、バネ機構により内引出しが後方にスライド移動するものである。
この発明にあっては、請求項1または請求項2の発明の効果に加え、下段引出しの引き出し位置によって内引出しを引出し位置のままとしたり、収納位置である後方に自動的にスライド退避させることができるため、内引出し内の物品と内引出し下方の下段引出し内の収納物を探し易く且つ出し入れし易くすることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明は、洗面室で必要な多くの形状の異なる大小様々な物品を収納効率良く整理整頓でき、洗面台内を何時も清潔に清掃し易く、かつ、洗面台内に収納した物品の出し入れが容易にできると言う効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る洗面台の最良の形態を、実施例に基づいて以下説明する。
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。先ず第1図は本発明の洗面台の斜視図であり、図2は、本発明の上段引出しと該上段引出しに着脱できる整理トレーの斜視図であり、図3は、本発明の下段引出しと該下段引出しの上部に配置される内引出しの斜視図で、図4は、本発明の内引出しの他の実施例を説明する斜視図で、図5は、本発明の洗面台の収納空間を説明する断面模式図で、(a)は左側面断面図、(b)は正面断面、(c)は右側面断面図である。
【0014】
また、図6乃至図13は、本発明の下段引出しと内引出しの連動動作を説明するためのものであり、図6の(a)は引出しが全て収納位置にある状態を示し、(b)は下段引出しを引出し途中にある状態を示し、(c)は下段引出しを内引出限界位置を超えて引き出した後の状態を示す断面模式図であり、図7は、内引出しが内引出限界位置まで引き出された状態を示す拡大縦断側面図で、図8は、下段引出しのトリガーピンがバネ機構に係合する状態を示す拡大縦断側面図で、図9は、バネ機構が動作して内引出しが後退した状態を示す拡大縦断側面図で、図10は、内引出しを後方に向かって移動させる際のトリガーピンがバネ機構に係合する状態を示す拡大縦断側面図で、図11は、バネ機構にエネルギーが蓄積されてソフトクローザーが動く状態を示す拡大縦断側面図である。
【0015】
さらに、図12の(a)は、下段引出しの引出し時にトリガーピンがバネ機構のカムに係合する状態を示す横断平面図であり、(b)は、バネ機構が動作して後方に付勢される状態を示す横断平面図であり、(c)はバネ機構のエネルギーが解放されて内引き出しが後退する状態を示す横断平面図で、図13の(a)は、下段引出しの閉鎖時にトリガーピンがバネ機構のカムに係合する状態を示す横断平面図であり、(b)は、バネ機構にエネルギーが蓄積される状態を示す横断平面図であり、(c)は、バネ機構にエネルギーが蓄積完了した状態を示す横断平面図である。
【0016】
以下、図1乃至図4の紙面左下側、および図7乃至図11の紙面左側を前面側(手前側)とし、紙面右上側、および左側を後面側(奥側)として説明する。
【実施例1】
【0017】
図1の符号1は本発明の洗面台である。この洗面台1は、ボウル6を備えるカウンター7の下部が引出しとなっており、上下2段の引出しにより構成される。洗面台1の幅は900mm、奥行長さが450mmであり、カウンター7の高さは800mmで、上段引出し2の前板高さが136mmで、下段引出し3の前板高さが486mmで、ケコミ部1eの高さが46mmである。特に本発明の洗面台1は、大物収納物と小物収納物を収納効率よく収納するため、上下2段の引出しの収納空間高さに差を持たせるべく構成しており、下段引出し3の前板3aの高さを上段引出し2の前板2aの高さの3倍以上となるように構成している。このように高さ配分することにより、一般的なカウンター高さの800mm内に高さの高い大物収納物と高さの低い小物収納物が収納効率を高めて収納できるようにしており、上段引出し2に高さの低い小物収納物を収納する。
【0018】
上段引出し2は、図2に示す如く、上方が解放された前板2aと底板2bと両側側板2cと背板2dからなる箱体であり、背板2dは配管スペース等で必要に応じ奥側が凹み形状2fで構成される。この上段引出し2は、図示しない洗面台1の側板1c内側に設けられた固定レールと側板2cに設けられた移動レールにより前後にスライド可能である。また、本実施例では、上段引出し内は仕切り板で区切っていないが、図2に示す如く、上段引出し内に内部を小区画に仕切り板で区切った整理トレー2eが着脱自在に設けられるようにしている。このようにすることで、収納する小物物品を整理整頓でき、また、整理トレー2eに汚れが付着した場合は取外して洗剤で清掃することができるので、引出し内を清潔に維持することができる。
【0019】
次に、図3の下段引出し3について説明する。下段引出し3は大物物品が収納できるように背の高い前板3aと底板3bと背の低い両側板3cおよび背板3dからなり、両側板3cと洗面台1の側板1c内に設けられたスラードレール10により前後に摺動させて引出しを開閉できるようになっている。
【0020】
下段引出し3には下段引出し3の背の高い前板3aの奥側に内引出し4が設けられ、内引出し4は洗面台1の両側側板1c内に設けられたスライドレール17に着脱可能であり、且つ下段引出し3に対して独立して該スライドレール17により前後スライド可能になっている。
内引出し4の底板4bは、幅方向に段差4eが設けられ浅底部4fと深底部4gより構成され、浅底部4fの底板4bから下段引出し底板3bまでの距離は310mm以上で、幅は400mm以上として、少なくとも大物物品の1つであるポリバケツが収納できるようになっている。また、内引出し4は、浅底部4fと深底部4gとの境界に中仕切り板4hを設けると収納物品の深底部4gへの落下を防止することができる。
【0021】
図4は、前記内引出し4の他の実施例である。本実施例の内引出し4は、底板4bに開口部4iを設け該開口部4iに、上縁周囲にフランジ5aを有する深底収納体5を、開口部4i周縁に係止させて深底部を形成し、底板4bに段差を設けたものである。このような構成とすることで深底部4gである深底収納体5が内引出し4に着脱可能となるので、深底部内が清掃しやすく、また例えば深さの異なる深底収納体5を準備して置けは必要に応じて取り替えることができる。
【0022】
図5は、本発明の洗面台1の収納空間の利用形態を説明するためのものである。利用形態としては、上段引出し2である領域Aは、こまごました小物を広く見渡して利用できるとともに整理トレー2eで収納物品を整理陳列できるようにした小物収納エリアとして使用する。内引出し4の浅底部4fである領域Bは、ドライヤーや整髪料等の日常ヘヤケア収納エリアで、深底部4gの領域Cは、洗濯用洗剤やシャンプー、トリートメント等の日常ボトル収納エリアである。そして、下段引出し3である領域Dは、バケツや掃除洗剤およびストック品等の使用頻度の少ない収納エリアで、物品高さに応じて収納使用すると良い。
【0023】
次いで、内引出し4と下段引出し3の連動機構について説明する。本連動機構は、本出願人が先に出願した特願2007‐231835号に記載の技術を洗面台1の引出しに応用したものである。図6は、下段引出し3と内引出し4の動作状況を説明するもので、(a)は引出しが全て収納位置にある状態を示し、(b)は下段引出し3が引出し途中にある状態を示し、(c)は下段引出し3を内引出限界位置S2を超えて引き出した後に内引出し4が後方へスライドした時の状態を示している。すなわち、下段引出し3が閉じられた状態である(a)から、内引出し4が下段引出し3と連動して引き出され(b)、内引出し4が引き出される内引出限界位置S2よりもさらに引出されて下段引出し3と内引出し4との連動が解除された後に、バネ機構16により内引出し4が後方向にスライド移動して最奥端(c)で停止するようになっている。
【0024】
以下、図7乃至図13を用いて、その連動機構について詳細に説明する。
前述したように、下段引出し3の左右側部3c、3cと洗面台1の側板1c間には、下段引出し3を前後方向に摺動させるスライドレール10が設けられている。このスライドレール10によって、下段引出し3は、下段引出し3の収納位置と下段引出し3の下段引出限界位置S1との間で、開放方向(前方向)及び閉鎖方向(後方向)に自在に移動できるようになっている(図9参照)。
【0025】
また、図7に示すように、スライドレール10の後端部には、下段引出し3が洗面台1内に収納されるときに、下段引出し3の移動速度を減速させるための周知の減速手段としてのソフトクローザー11(緩衝装置)が設けられている。
【0026】
更に、下段引出し3の収納箱体の背板3d背面側には、後述する内引出し4の金属片12(磁性体)に吸引される永久磁石13(磁性体)が設けられている。更に、背板3dの上端部には、本実施例における切換手段としてのトリガーピン14が内引出し4に向けて立設されている(図12(a)参照)。
【0027】
図7に示すように、内引出し4の左右側部4cと洗面台1の側板1c間には、下段引出し3と同じくスライドレール15が設けられている。このスライドレール15によって、内引出し4は、内引出し4の収納位置と内引出しの内引出限界位置S2との間で、前後方向に移動できるようになっている。
【0028】
また、スライドレール15の後端部には、スライドレール10と同じくソフトクローザー11が設けられている。尚、図7及び図9に示すように、洗面台1の正面側から下段引出し3の下段引出限界位置S1までの距離は、洗面台1の正面側から内引出し4の内引出限界位置S2までの距離よりも長くなっている。
【0029】
内引出し4の後端部には、本実施例における磁性体としての金属片12が下方に向かって延設されており、この金属片12は、前述した下段引出し3の永久磁石13に吸着されるようになっている。これら永久磁石13と金属片12とが、互いに吸引して接合されることによって、下段引出し3と内引出し4とが連結されるようになっており、下段引出し3が洗面台1内から引き出されると、内引出し4が下段引出し3に連動して洗面台1内から引き出されるようになる。
【0030】
また、図6に示すように、内引出し4の下面における右方側には、本実施例におけるバネ機構16が設けられている。図12(a)に示すように、バネ機構16は、左方側に外部と連通する開口部17bが形成された薄型箱体形状をなすケース体17を有し、このケース体17内には、本実施例における回動部材としてのカム18が配置され、ケース体17には、カム18の軸18aを軸支する軸孔17aが形成されている。
【0031】
また、カム18は、平面視で略半円形状に形成され、この半円の中心に軸18aが設けられている。更に、カム18の一部は、ケース体17の開口部17bから外部に突出されるようになっている。更に、カム18を回動付勢する本実施例における弾性体及び付勢部材としてのバネ19(コイルバネ)が設けられている。また、ケース体17の内壁下面には、上方に向かって平面視で円形状をなすストッパー20が立設されている。
【0032】
また、カム18の円弧を形成している端縁部から径方向にかけて、下段引出し3のトリガーピン14が係合する係合溝18bが形成されている。尚、この係合溝18bは、後述するように、下段引出し3に固定されたトリガーピン14が係合状態を維持できるように、径方向にむかって所定の長さを有している。
【0033】
更に、カム18には、ストッパー20が挿通される平面視で略円弧状をなす規制溝18cが形成されている。この規制溝18c内にストッパー20が配置されることによって、カム18の回動範囲が規制されている。尚、カム18の回動範囲が規制されることによって、係合溝18bは、常にカム18の開口部17bからケース体17の外部に突出されるようになっている。
【0034】
図12(c)に示すように、カム18の上面側(紙面手前側)において、軸18aと規制溝18c間には、バネ19を係止する係止部18dが設けられているとともに、ケース体17の右後端部には、同じくバネ19を係止する係止部17cが設けられている。これら係止部17c,18d間にバネ19が掛け渡されている。尚、バネ19は、伸張して弾性変形することで、その弾性力を蓄積するようになっているとともに、圧縮して弾性復元することで、その弾性力を解放するようになっている。
【0035】
尚、図12(a)に示すように、バネ19が伸張された状態から図12(c)に示すように、バネ19が圧縮された状態になる回動方向、すなわちカム18が平面視で反時計回りに回動する回動方向を解放回動方向と称する。更に尚、図13(a)に示すように、バネ19が圧縮された状態から図13(c)に示すように、バネ19が伸張された状態になる回動方向、すなわちカム18が平面視で時計回りに回動する回動方向を蓄積回動方向と称する。
【0036】
図13(a)から図13(c)に示すように、バネ機構16のカム18の係合溝18bにトリガーピン14が係合することによって、カム18が蓄積回動方向に回動されると、カム18の上面に設けられている係止部18dも蓄積回動方向に回動するので、バネ19は係止部17cを固定端としてカム18を蓄積回動方向に回動付勢する。それに伴ってバネ19は伸張して弾性エネルギーが蓄積される。
【0037】
図13(c)に示すように、ストッパー20が規制溝18cを係止することで、カム18の蓄積回動方向の回動が停止される。このとき、バネ19には、伸張されたことにより元の長さに圧縮しようとする復元力が働き、係止部18dが係止部17cと軸18aを結ぶ仮想線V1を越えた位置でカム18の回動が停止されているため、バネ19の復元力はカム18を蓄積回動方向に付勢するようになり、バネ19は伸張された状態、すなわち弾性エネルギーを蓄積した状態で保持される。
【0038】
図12(a)から図12(c)に示すように、バネ機構16のカム18の係合溝18bにトリガーピン14が係合することによって、カム18が解放回動方向に回動されると、カム18の上面に設けられている係止部18dも解放回動方向に回動するので、バネ19は係止部17cを固定端としてカム18を解放回動方向に回動付勢する。それに伴ってバネ19は圧縮して弾性エネルギーが解放される。
【0039】
このとき、係止部18dが係止部17cと軸18aを結ぶ仮想線V1を越えると、カム18の蓄積回動方向に働いていたバネ19の復元力の向きがカム18の解放回動方向に切り換えられるので、バネ19は復元力によりカム18を解放回動方向に回動させながら図12(c)に示すように、元の圧縮された長さに戻る。
【0040】
尚、後述するように、バネ機構16と金属片12との間には、所定の間隔が形成されている。内引出し4のスライドレール15が限界まで引き出されることによって、内引出しが引出限界位置S2まで引き出され、下段引出し3と内引出し4の連結が解除されると、下段引出し3に設けられたトリガーピン14は、バネ機構16と金属片12との間を所定距離移動した後に、バネ機構16のカム18の係合溝18bに係合するようになっている。
【0041】
図6に示すように、洗面台1内の収納位置に収納されている状態の下段引出し3を、使用者が把手8を把持して正面側に引き出すと、図7に示すように、下段引出し3と内引出し4とは、それぞれの後部に設けられた永久磁石13と金属片12によって連結された状態で引き出されるようになっている。
【0042】
また、このときのバネ機構16内のバネ19は、図12(a)に示すように、既にエネルギーが蓄積された状態となっているが、下段引出し3と内引出し4が連動している状態であるので、トリガーピン14が係合されることがなく、バネ19はエネルギーを蓄積さした状態で保持されている。
【0043】
図7に示すように、使用者が下段引出し3を正面側にさらに引き出し続けると、下段引出し3に連動されて引き出されている内引出し4が、内引出しの内引出限界位置S2に到達する。このとき、使用者が下段引出し3を正面側に引き出す力が、永久磁石13と金属片12の磁着状態を解除する方向に働くので、使用者は永久磁石13と金属片12の磁着する吸引力を抵抗として感知し、内引出し4が内引出しの内引出限界位置S2に到達したことを認識することができる。尚、使用者が内引出し4を使用する場合には、この内引出し4が内引出しの内引出限界位置S2に到達したときが最も収納部を大きく開放して使用することができるので、収納物の取り出しや収納を容易に行うことができる。
【0044】
また、使用者が下段引出し3を使用する場合には、図7に示す状態から下段引出し3を正面側にさらに引き出すことで、永久磁石13と金属片12の磁着を解除し、下段引出し3と内引出し4の連動を解除する。そして、図12に示すように、下段引出し3と内引出し4の連動を解除した状態から、使用者が下段引出し3を正面側に引き出すことで、下段引出し3に設けられたトリガーピン14が、内引出し4の下面に設けられたバネ機構16の係合溝18bに係合する。尚、使用者はトリガーピン14が係合溝18bに係合する前であれば永久磁石13と金属片12の磁着が解除されていても内引出し4を使用することができる。
【0045】
そして、図8及び図12(a)に示すように、使用者が下段引出し3を正面側にさらに引き出すことによって、下段引出し3に設けられたトリガーピン14が、係合溝18bに係合することで、トリガーピン14がカム18を解放回動方向に回動させる。
【0046】
図12(b)に示すように、係止部17cの位置が軸18aと係止部18dを結ぶ仮想線V1を越える位置まで、トリガーピン14がカム18を解放回動方向に回動させると、バネ19が圧縮されるようになり、バネ19に蓄積されていた弾性エネルギーが解放され、バネ19がカム18を強制的に回動させるようになる。
【0047】
更に、図12(b)から図12(c)に示すように、バネ19によりカム18が強制的に解放回動方向に回動することで、カム18の回動力が、トリガーピン14を正面側に押圧するように働くようになる。このとき内引出し4の重量は下段引出し3の重量よりも軽く、さらに下段引出し3は、使用者によって把手8を把持されているので、カム18がトリガーピン14を正面側に押圧することで、その反力により、内引出し4が閉鎖方向(後方向)に移動されるようになる。
【0048】
図9に示すように、バネ機構16が設けられている内引出し4は、バネ19の付勢力により移動エネルギーが付与され、洗面台1内の収納位置まで移動する。尚、内引出し4は、収納位置の近傍で、スライドレール15の後端部に設けられたソフトクローザー11によって減速されて、閉鎖完了時にスムーズに内引出し4の移動が停止される。
【0049】
そして、内引出し4が洗面台1内の収納位置まで移動した後に、下段引出し3が下段引出しの引出限界位置S1まで引き出され、収納部が上方に最も大きく開口した状態となり、使用者は下段引出し3内の収納物を容易に出し入れすることができる。
【0050】
下段引出しの下段引出限界位置S1から下段引出し3を洗面台1内の収納位置に移動させる際には、先ず、図9に示す状態から使用者が把手7を掴んで下段引出し3を閉鎖方向(後方向)に向かって移動させる。
【0051】
図10及び図13(a)に示すように、下段引出し3を閉鎖方向に向かって移動させていくと、トリガーピン14がバネ機構16のカム18の係合溝18bに係合する。そして、図13(b)に示すように、トリガーピン14が係合溝18bに係合した状態で下段引出し3をさらに閉鎖方向(後方向)に移動させることで、カム18がトリガーピン14により蓄積回動方向に回動される。このように、下段引出し3の閉鎖方向に移動するときの移動エネルギーが、カム18の回動によりバネ19が伸張して弾性変形される弾性エネルギーとして変換されて蓄積される。
【0052】
そして、図11及び図13(c)に示すように、さらに下段引出し3を閉鎖方向(後方向)に移動させることで、カム18の係止部18dが仮想線V1を越えるまで蓄積回動方向に回動させ、バネ19が移動エネルギーを蓄積する。
【0053】
更に、図11に示すように、バネ機構16に移動エネルギーを蓄積した後に、スライドレール10の後端部に設けられたソフトクローザー11によって下段引出し3が減速されて、閉鎖完了時にスムーズに下段引出し3の移動が停止される。尚、下段引出し3が洗面1内の収納位置に停止するとともに、下段引出し3の永久磁石13が内引出し4の金属片12に磁着され、下段引出し3と内引出し4が連結される。
【0054】
以上、本実施例における洗面台1では、エネルギー蓄積手段としてのバネ機構16が、下段引出し3が閉鎖方向に移動するときに移動エネルギーを蓄積することで、下段引出し3と内引出し4とを引き出すときには、バネ機構16が両引出し3,4に対していかなる反発力も生じさせないため、下段引出し3と内引出し4とを引き出し易くなる。
そのため下段引出し3と内引出し4とが連動している状態であっても、使用者が下段引出し3から手を放すことができ、内引出し4内の収納物を容易に取り出すことができる。
【0055】
また、エネルギー蓄積手段としてのバネ機構16が、下段引出し3と内引出し4とが連動するときに、移動エネルギーを保持することで、下段引出し3と内引出し4とが連動している状態では、両引出し3,4を開放方向に移動させても、閉鎖方向に移動させても、バネ機構16に蓄積された移動エネルギーが両引出し3,4に対していかなる反発力も生じさせず、蓄積されている移動エネルギーを解放する虞もないため、両引出し3,4の引き出し操作を行い易くなる。
【0056】
また、下段引出し3が、内引出し4が引き出される内引出限界位置S2よりもさらに引き出されて下段引出し3と内引出し4との連動が解除された後に、エネルギー蓄積手段としてのバネ機構16が、移動エネルギーを解放することで、下段引出し3と内引出し4とが連動している状態では、使用者は、内引出し4が閉鎖方向に移動することがないことを認識しながら、両引出し3,4の引き出し操作を行うことができ、かつ使用者が、内引出し4を閉鎖方向に移動させたい場合には、下段引出し3を内引出し4の内引出限界位置S2よりもさらに引き出すようにすればよく、下段引出し3及び内引出し4の使い勝手がよくなる。
【0057】
尚、下段引出し3と内引出し4との連動が解除されてから、下段引出し3が所定距離引き出された後に、エネルギー蓄積手段としてのバネ機構16の移動エネルギーが解放されるように設定すれば、両引出し3,4の連動が解除されたことを使用者が認識することで、使用者は、内引出し4が内引出限界位置S2にあることを容易に認識することができ、使用者は、両引出し3,4の連結が解除された直後に、下段引出し3を引き出す操作をやめれば、内引出し4を最も大きく開口した状態で使用することができる。
【0058】
また、エネルギー蓄積手段としてのバネ機構16は、弾性体としてのバネ19を変形させることで移動エネルギーを蓄積することで、エネルギー蓄積手段を容易に構成することができる。
【0059】
また、エネルギー蓄積手段としてのバネ機構16は、回動自在に設けられた回動部材としてのカム18と、このカム18を、移動エネルギーを解放する解放回動方向、または移動エネルギーを蓄積する蓄積回動方向のいずれか一方向に回動付勢する付勢部材としてのバネ19と、を有し、下段引出し3は、前記両回動方向を切り換える切換手段としてのトリガーピン14を備えることで、トリガーピン14がバネ19によるカム18の回動付勢方向を切り換えることで、移動エネルギーがバネ機構16に蓄積されたり、解放されたりするようになり、カム18とバネ19という簡素な構成でバネ機構16を製作できる。
【0060】
また、下段引出し3と内引出し4とは、互いに設けられた磁性体としての金属片12及び永久磁石13の吸引力によって連動されることで、金属片12及び永久磁石13の吸引力を利用して、下段引出し3と内引出し4との連動及び解除を容易に行うことができる。
【0061】
また、内引出し4の奥行き長さは、下段引出し3の奥行き長さよりも短く構成され、下段引出し3と内引出し4とは、互いの後部同士が磁性体としての金属片12及び永久磁石13により連結されることで、下段引出し3の前部側には、内引出し4に干渉されない収納空間としての空間部9が形成されるようになり、内引出し4を閉鎖方向に移動させなくても下段引出し3の前部側に収納された収納物を取り出すことができ、かつ下段引出し3の前部側に背の高い収納物を収納させることもできる。
【0062】
また、エネルギー蓄積手段としてのバネ機構16が移動エネルギーを蓄積した後に、下段引出し3が閉鎖方向に移動する移動速度を減速させる減速手段としてのソフトクローザー11を備えることで、下段引出し3が閉鎖方向に移動する移動エネルギーが、ソフトクローザー11により低減されていない状態で、移動エネルギーをバネ機構16に蓄積できるため、大きな移動エネルギーを蓄積し易くなっており、かつソフトクローザー11により下段引出し3の閉鎖完了時にスムーズに下段引出し3の移動を停止させることができる。
【0063】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0064】
例えば、前記実施例1では、下段引出し3と内引出し4とを磁性体としての永久磁石13と金属片12を磁着させることによって連結させるようにしているが、下段引出し3と内引出し4とを連結(連動)させるためには、必ずしも磁性体を用いる必要はなく、下段引出し3と内引出し4に雄具と雌具からなるジョイント部材を設け、雄具と雌具とを連結させつつ、所要の外力が加わった際に分離できるようにしてもよい。
【0065】
また、前記実施例1では、下段引出し3の後端上部に永久磁石13を設け、内引出し4の後端下部に金属片12を設けているが、例えば、下段引出し3の側部3cの途中上部に永久磁石13を設けるとともに、内引出し4の前端下部に金属片12を設けてもよいし、また、内引出し4の奥行き長さを下段引出し3の奥行き長さと略同一に形成して、下段引出し3の前端上部に永久磁石13を設けるとともに、内引出し4の前端下部に金属片12を設けるようにしてもよく、下段引出し3及び内引出し4において永久磁石13や金属片12を設ける位置は、特に限定されるものではない。
【0066】
また、前記実施例1では、下段引出し3に永久磁石13を設け、内引出し4に金属片12を設けているが、下段引出し3と内引出し4とに、それぞれ極性の異なる永久磁石を設けるようにしてもよいし、下段引出し3に金属片を設け、内引出し4に永久磁石を設けるようにしてもよい。
【0067】
また、前記実施例1では、移動エネルギーを蓄積する弾性体としてバネ19を用いているが、弾性体はバネ19に限らず、例えば、エアダンパー内の空気などの弾性を有する流体であってもよい。
【0068】
また、前記実施例1では、バネ機構16がバネ19を伸張させることにより弾性エネルギーを蓄積する構成となっているが、バネ機構16がバネ19を圧縮させて弾性エネルギーを蓄積する構成としてもよい。
【0069】
また、前記実施例1では、下段引出し3と内引出し4の連動が解除された後に、下段引出し3が所定距離引き出された後に、バネ機構16に蓄積された移動エネルギーを解放されているが、下段引出し3と内引出し4の連動が解除されると同時に移動エネルギーが解放されてもよい。
【0070】
また、前記実施例1では、下段引出し3に切換手段としてのトリガーピン14が設けられ、下段引出し3と内引出し4の連動が解除された後に、エネルギー蓄積手段としてのバネ機構16に蓄積された移動エネルギーを解放されているが、切換手段としてのトリガーピンを洗面台1の側板1cに設けたり、切換手段をトリガーピンではなく使用者が押圧するスイッチ等により構成することで、下段引出し3と内引出し4の連動が解除される前に、エネルギー蓄積手段の移動エネルギーが解放されるようにしてもよい。
【0071】
また、前記実施例1では、内引出し4の奥行き長さを下段引出し3の奥行き長さよりも短く形成し、下段引出し3の前板3a背面と内引出し4の前端部正面間に形成された空間部9に、背の高い収納物を収納可能としているが、下段引出し3及び内引出し4の奥行き長さを略同一寸法に形成し、下段引出し3と内引出し4とが連動している状態では、内引出し4によって下段引出し3の収納部が隠蔽されるようにしてもよい。
【0072】
また、前記実施例1では、トリガーピン14をカム18の係合溝18bに係合させてカム18を回動させているが、下段引出し3にラックギアを設け、カム18の端縁に歯形を形成し、ラックギアとカム18に形成した歯形を噛合させることで、カム18を回動させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の洗面台の斜視図である。
【図2】本発明の上段引出しと該上段引出しに着脱できる整理トレーの斜視図である。
【図3】本発明の下段引出しと該下段引出しの上部に配置される内引出しの斜視図である。
【図4】本発明の内引出しの他の実施例を説明する斜視図である。
【図5】本発明の洗面台の収納空間を説明する断面模式図で、(a)は左側面断面図、(b)は正面断面、(c)は右側面断面図である。
【図6】本発明の下段引出しと内引出しの動作状況及び機構を説明するためのもので、(a)は引出しが全て収納位置にある状態を示し、(b)は下段引出しを引出し途中にある状態を示し、(c)は下段引出しを引出限界位置を超えて引き出した後の状態を示す断面模式図である。
【図7】内引出しが引出限界位置まで引き出された状態を示す拡大縦断側面図である。
【図8】下段引出しのトリガーピンがバネ機構に係合する状態を示す拡大縦断側面図である。
【図9】バネ機構が動作して内引出しが後退した状態を示す拡大縦断側面図である。
【図10】内引出しを後方に向かって移動させる際のトリガーピンがバネ機構に係合する状態を示す拡大縦断側面図である。
【図11】バネ機構にエネルギーが蓄積されてソフトクローザーが動く状態を示す拡大縦断側面図である。
【図12】(a)は、下段引出しぼ引出し時にトリガーピンがバネ機構のカムに係合する状態を示す横断平面図であり、(b)は、バネ機構が動作して後方に付勢される状態を示す横断平面図であり、(c)はバネ機構が後退する状態を示す横断平面図である。
【図13】(a)は、下段引出しの閉鎖時にトリガーピンがバネ機構のカムに係合する状態を示す横断平面図であり、(b)は、バネ機構にエネルギーが蓄積される状態を示す横断平面図であり、(c)は、バネ機構にエネルギーが蓄積完了した状態を示す横断平面図である。
【符号の説明】
【0074】
1 洗面台
1c 側板
1e ケコミ部
2 上段引出し
2a 前板
2b 底板
2c 側板
2d 背板
2e 整理トレー
2f 凹み形状
3 下段引出し
3a 前板
3b 底板
3c 側板
3d 背板
4 内引出し
4a 前板
4b 底板
4c 側板
4d 背板
4e 段差部
4f 浅底部
4g 深底部
4h 中仕切り板
4i 開口部
5 深底収納体
5a フランジ
6 ボウル
7 カウンタ
8 取手
9 空間部(収納空間)
10 スライドレール(下段引出し用)
11 ソフトクローザー(減速手段)
12 金属片(磁性体)
13 永久磁石(磁性体)
14 トリガーピン(切換手段)
15 スライドレール(内引出し用)
16 バネ機構(エネルギー蓄積手段)
18 カム(回動部材)
19 バネ(弾性体,付勢部材)
21 錘機構(エネルギー蓄積手段)
22 カム(回動部材)
23 錘(付勢部材)
24 トリガーピン(切換手段)
S1 下段引出限界位置
S2 内引出限界位置
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボウルや水栓等が取付けられたカウンターの下部に、引出し収納部を有する洗面台に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に洗面台を設置する洗面室には、隣接して浴槽やトイレが配置され、且つ室内には洗濯機なども配置されることが多く、排水ホースやバケツ、粉石鹸箱や固形石鹸、各種のボトル洗剤や清掃道具、ドライヤーや化粧品等の多くの物品の収納場所が必要である。
そのため、従来の洗面化粧台に用いられる引出し付き洗面台は、開き戸収納部にバケツ等の大型物品を収納し、引出し収納部に化粧品や化粧道具などの小物物品を収納するようにしたものが多い。
【0003】
特許文献1には、洗面所で使用する小物や大物物品を整理し使い勝手を良くする壁掛け式洗面器下部収納が紹介されている。
また、特許文献2には、洗面台ではないが、家具本体が大型化せず、最下段であっても収納物が目視でき、収納物の出し入れが容易で、引出し内部の収納物を確実に整理整頓できるキャビネットが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−204641号公報
【特許文献2】特開2002−320527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の図2(d)に開示のものは、小物収納は引出し式で大物収納は回転式開き戸で行なうものである。これは、大小物品の収納は可能であるが、カウンター高さが800mm程度の一般的な洗面台では、開き戸側にバケツ等の大物物品を収納した場合にバケツ上部に未収納空間が発生し収納効率が低下していた。
【0006】
また、特許文献2の高さ寸法の大きい背高部と高さ寸法の小さい背低部が左右方向に位置する正面板(前板)をそれぞれ有する2つの引出しを一対となし、この一対となした引出しを上下方向に配置した状態で、2つの正面板で横長の長方形を形成する引出しを、上下に配置したキャビネットを本洗面台に適用した場合には、高さが異なる大小の物品を収納整理できるが、上下対を成した引出しで同一高さの収納部が複数できるため、一品一様の物品収納には適さず、引出し操作には各段毎の引出しの開閉操作が必要となり更なる操作性の改善が望まれていた。
【0007】
本発明は、かかる現状に鑑み創案されたものであって、その目的とするところは、形状や大きさが様々な物品を、用途に応じて出し入れしやすく、且つ、高さ方向及び巾方向に効率よく整理収納することができる洗面台を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の洗面台は、下段引出しの前板の高さが、上段引出しの前板の高さの3倍以上である上下2段の引出し付き洗面台であって、前記下段引出しには下段引出しの前板の奥側で下段引出しの底板の上部に幅方向に段差を設けた深さの異なる内引出しが着脱可能で且つ前後スライド可能に具備されているものである。
【0009】
この発明にあっては、化粧品やヘアワックス、ヘヤーピン等の薄型小物は、浅い上段引出しに収納でき、バケツなどの大物物品や保管用粉石鹸箱等は、内引出しの段差の高低に応じて下段引出し内に収納し、そして、ドライヤー、整髪料、洗剤ボトル、シャンプーボトル類等も内引出しの段差に応じて内引出しに収納整理できるため、形状の異なる大小様々な物品の収納が効率高く整理収納できる。また、内引出しは着脱可能であるため、取外して清掃ができ洗面台を清潔に保つことができる。
【0010】
また、本発明の請求項2に記載の洗面台は、請求項1の発明に加えて、内引出しの段差が、底板に設けた開口部に深底収納体を着脱可能に設置することにより構成できるものである。
この発明にあっては、請求項1の効果に加え、内引出しの深底部を着脱可能な深底収納体で構成しているため、底が深く内部の清掃が困難な深底部も取り外しで清掃することにより清潔に保つことができる。また、一般的な引出しの底板をくり抜き開口して開口部を成形できるため、従来の製造設備が流用でき、生産性の維持向上や製造コストを低く抑えることができる。
【0011】
更に、本発明の請求項3に記載の洗面台は、請求項1又は2の発明に加えて、内引出しが、下段引出しと連動して引き出され、内引出しが引き出される内引出限界位置よりもさらに引き出されて前記下段引出しと内引出しとの連動が解除された後に、バネ機構により内引出しが後方にスライド移動するものである。
この発明にあっては、請求項1または請求項2の発明の効果に加え、下段引出しの引き出し位置によって内引出しを引出し位置のままとしたり、収納位置である後方に自動的にスライド退避させることができるため、内引出し内の物品と内引出し下方の下段引出し内の収納物を探し易く且つ出し入れし易くすることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明は、洗面室で必要な多くの形状の異なる大小様々な物品を収納効率良く整理整頓でき、洗面台内を何時も清潔に清掃し易く、かつ、洗面台内に収納した物品の出し入れが容易にできると言う効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る洗面台の最良の形態を、実施例に基づいて以下説明する。
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。先ず第1図は本発明の洗面台の斜視図であり、図2は、本発明の上段引出しと該上段引出しに着脱できる整理トレーの斜視図であり、図3は、本発明の下段引出しと該下段引出しの上部に配置される内引出しの斜視図で、図4は、本発明の内引出しの他の実施例を説明する斜視図で、図5は、本発明の洗面台の収納空間を説明する断面模式図で、(a)は左側面断面図、(b)は正面断面、(c)は右側面断面図である。
【0014】
また、図6乃至図13は、本発明の下段引出しと内引出しの連動動作を説明するためのものであり、図6の(a)は引出しが全て収納位置にある状態を示し、(b)は下段引出しを引出し途中にある状態を示し、(c)は下段引出しを内引出限界位置を超えて引き出した後の状態を示す断面模式図であり、図7は、内引出しが内引出限界位置まで引き出された状態を示す拡大縦断側面図で、図8は、下段引出しのトリガーピンがバネ機構に係合する状態を示す拡大縦断側面図で、図9は、バネ機構が動作して内引出しが後退した状態を示す拡大縦断側面図で、図10は、内引出しを後方に向かって移動させる際のトリガーピンがバネ機構に係合する状態を示す拡大縦断側面図で、図11は、バネ機構にエネルギーが蓄積されてソフトクローザーが動く状態を示す拡大縦断側面図である。
【0015】
さらに、図12の(a)は、下段引出しの引出し時にトリガーピンがバネ機構のカムに係合する状態を示す横断平面図であり、(b)は、バネ機構が動作して後方に付勢される状態を示す横断平面図であり、(c)はバネ機構のエネルギーが解放されて内引き出しが後退する状態を示す横断平面図で、図13の(a)は、下段引出しの閉鎖時にトリガーピンがバネ機構のカムに係合する状態を示す横断平面図であり、(b)は、バネ機構にエネルギーが蓄積される状態を示す横断平面図であり、(c)は、バネ機構にエネルギーが蓄積完了した状態を示す横断平面図である。
【0016】
以下、図1乃至図4の紙面左下側、および図7乃至図11の紙面左側を前面側(手前側)とし、紙面右上側、および左側を後面側(奥側)として説明する。
【実施例1】
【0017】
図1の符号1は本発明の洗面台である。この洗面台1は、ボウル6を備えるカウンター7の下部が引出しとなっており、上下2段の引出しにより構成される。洗面台1の幅は900mm、奥行長さが450mmであり、カウンター7の高さは800mmで、上段引出し2の前板高さが136mmで、下段引出し3の前板高さが486mmで、ケコミ部1eの高さが46mmである。特に本発明の洗面台1は、大物収納物と小物収納物を収納効率よく収納するため、上下2段の引出しの収納空間高さに差を持たせるべく構成しており、下段引出し3の前板3aの高さを上段引出し2の前板2aの高さの3倍以上となるように構成している。このように高さ配分することにより、一般的なカウンター高さの800mm内に高さの高い大物収納物と高さの低い小物収納物が収納効率を高めて収納できるようにしており、上段引出し2に高さの低い小物収納物を収納する。
【0018】
上段引出し2は、図2に示す如く、上方が解放された前板2aと底板2bと両側側板2cと背板2dからなる箱体であり、背板2dは配管スペース等で必要に応じ奥側が凹み形状2fで構成される。この上段引出し2は、図示しない洗面台1の側板1c内側に設けられた固定レールと側板2cに設けられた移動レールにより前後にスライド可能である。また、本実施例では、上段引出し内は仕切り板で区切っていないが、図2に示す如く、上段引出し内に内部を小区画に仕切り板で区切った整理トレー2eが着脱自在に設けられるようにしている。このようにすることで、収納する小物物品を整理整頓でき、また、整理トレー2eに汚れが付着した場合は取外して洗剤で清掃することができるので、引出し内を清潔に維持することができる。
【0019】
次に、図3の下段引出し3について説明する。下段引出し3は大物物品が収納できるように背の高い前板3aと底板3bと背の低い両側板3cおよび背板3dからなり、両側板3cと洗面台1の側板1c内に設けられたスラードレール10により前後に摺動させて引出しを開閉できるようになっている。
【0020】
下段引出し3には下段引出し3の背の高い前板3aの奥側に内引出し4が設けられ、内引出し4は洗面台1の両側側板1c内に設けられたスライドレール17に着脱可能であり、且つ下段引出し3に対して独立して該スライドレール17により前後スライド可能になっている。
内引出し4の底板4bは、幅方向に段差4eが設けられ浅底部4fと深底部4gより構成され、浅底部4fの底板4bから下段引出し底板3bまでの距離は310mm以上で、幅は400mm以上として、少なくとも大物物品の1つであるポリバケツが収納できるようになっている。また、内引出し4は、浅底部4fと深底部4gとの境界に中仕切り板4hを設けると収納物品の深底部4gへの落下を防止することができる。
【0021】
図4は、前記内引出し4の他の実施例である。本実施例の内引出し4は、底板4bに開口部4iを設け該開口部4iに、上縁周囲にフランジ5aを有する深底収納体5を、開口部4i周縁に係止させて深底部を形成し、底板4bに段差を設けたものである。このような構成とすることで深底部4gである深底収納体5が内引出し4に着脱可能となるので、深底部内が清掃しやすく、また例えば深さの異なる深底収納体5を準備して置けは必要に応じて取り替えることができる。
【0022】
図5は、本発明の洗面台1の収納空間の利用形態を説明するためのものである。利用形態としては、上段引出し2である領域Aは、こまごました小物を広く見渡して利用できるとともに整理トレー2eで収納物品を整理陳列できるようにした小物収納エリアとして使用する。内引出し4の浅底部4fである領域Bは、ドライヤーや整髪料等の日常ヘヤケア収納エリアで、深底部4gの領域Cは、洗濯用洗剤やシャンプー、トリートメント等の日常ボトル収納エリアである。そして、下段引出し3である領域Dは、バケツや掃除洗剤およびストック品等の使用頻度の少ない収納エリアで、物品高さに応じて収納使用すると良い。
【0023】
次いで、内引出し4と下段引出し3の連動機構について説明する。本連動機構は、本出願人が先に出願した特願2007‐231835号に記載の技術を洗面台1の引出しに応用したものである。図6は、下段引出し3と内引出し4の動作状況を説明するもので、(a)は引出しが全て収納位置にある状態を示し、(b)は下段引出し3が引出し途中にある状態を示し、(c)は下段引出し3を内引出限界位置S2を超えて引き出した後に内引出し4が後方へスライドした時の状態を示している。すなわち、下段引出し3が閉じられた状態である(a)から、内引出し4が下段引出し3と連動して引き出され(b)、内引出し4が引き出される内引出限界位置S2よりもさらに引出されて下段引出し3と内引出し4との連動が解除された後に、バネ機構16により内引出し4が後方向にスライド移動して最奥端(c)で停止するようになっている。
【0024】
以下、図7乃至図13を用いて、その連動機構について詳細に説明する。
前述したように、下段引出し3の左右側部3c、3cと洗面台1の側板1c間には、下段引出し3を前後方向に摺動させるスライドレール10が設けられている。このスライドレール10によって、下段引出し3は、下段引出し3の収納位置と下段引出し3の下段引出限界位置S1との間で、開放方向(前方向)及び閉鎖方向(後方向)に自在に移動できるようになっている(図9参照)。
【0025】
また、図7に示すように、スライドレール10の後端部には、下段引出し3が洗面台1内に収納されるときに、下段引出し3の移動速度を減速させるための周知の減速手段としてのソフトクローザー11(緩衝装置)が設けられている。
【0026】
更に、下段引出し3の収納箱体の背板3d背面側には、後述する内引出し4の金属片12(磁性体)に吸引される永久磁石13(磁性体)が設けられている。更に、背板3dの上端部には、本実施例における切換手段としてのトリガーピン14が内引出し4に向けて立設されている(図12(a)参照)。
【0027】
図7に示すように、内引出し4の左右側部4cと洗面台1の側板1c間には、下段引出し3と同じくスライドレール15が設けられている。このスライドレール15によって、内引出し4は、内引出し4の収納位置と内引出しの内引出限界位置S2との間で、前後方向に移動できるようになっている。
【0028】
また、スライドレール15の後端部には、スライドレール10と同じくソフトクローザー11が設けられている。尚、図7及び図9に示すように、洗面台1の正面側から下段引出し3の下段引出限界位置S1までの距離は、洗面台1の正面側から内引出し4の内引出限界位置S2までの距離よりも長くなっている。
【0029】
内引出し4の後端部には、本実施例における磁性体としての金属片12が下方に向かって延設されており、この金属片12は、前述した下段引出し3の永久磁石13に吸着されるようになっている。これら永久磁石13と金属片12とが、互いに吸引して接合されることによって、下段引出し3と内引出し4とが連結されるようになっており、下段引出し3が洗面台1内から引き出されると、内引出し4が下段引出し3に連動して洗面台1内から引き出されるようになる。
【0030】
また、図6に示すように、内引出し4の下面における右方側には、本実施例におけるバネ機構16が設けられている。図12(a)に示すように、バネ機構16は、左方側に外部と連通する開口部17bが形成された薄型箱体形状をなすケース体17を有し、このケース体17内には、本実施例における回動部材としてのカム18が配置され、ケース体17には、カム18の軸18aを軸支する軸孔17aが形成されている。
【0031】
また、カム18は、平面視で略半円形状に形成され、この半円の中心に軸18aが設けられている。更に、カム18の一部は、ケース体17の開口部17bから外部に突出されるようになっている。更に、カム18を回動付勢する本実施例における弾性体及び付勢部材としてのバネ19(コイルバネ)が設けられている。また、ケース体17の内壁下面には、上方に向かって平面視で円形状をなすストッパー20が立設されている。
【0032】
また、カム18の円弧を形成している端縁部から径方向にかけて、下段引出し3のトリガーピン14が係合する係合溝18bが形成されている。尚、この係合溝18bは、後述するように、下段引出し3に固定されたトリガーピン14が係合状態を維持できるように、径方向にむかって所定の長さを有している。
【0033】
更に、カム18には、ストッパー20が挿通される平面視で略円弧状をなす規制溝18cが形成されている。この規制溝18c内にストッパー20が配置されることによって、カム18の回動範囲が規制されている。尚、カム18の回動範囲が規制されることによって、係合溝18bは、常にカム18の開口部17bからケース体17の外部に突出されるようになっている。
【0034】
図12(c)に示すように、カム18の上面側(紙面手前側)において、軸18aと規制溝18c間には、バネ19を係止する係止部18dが設けられているとともに、ケース体17の右後端部には、同じくバネ19を係止する係止部17cが設けられている。これら係止部17c,18d間にバネ19が掛け渡されている。尚、バネ19は、伸張して弾性変形することで、その弾性力を蓄積するようになっているとともに、圧縮して弾性復元することで、その弾性力を解放するようになっている。
【0035】
尚、図12(a)に示すように、バネ19が伸張された状態から図12(c)に示すように、バネ19が圧縮された状態になる回動方向、すなわちカム18が平面視で反時計回りに回動する回動方向を解放回動方向と称する。更に尚、図13(a)に示すように、バネ19が圧縮された状態から図13(c)に示すように、バネ19が伸張された状態になる回動方向、すなわちカム18が平面視で時計回りに回動する回動方向を蓄積回動方向と称する。
【0036】
図13(a)から図13(c)に示すように、バネ機構16のカム18の係合溝18bにトリガーピン14が係合することによって、カム18が蓄積回動方向に回動されると、カム18の上面に設けられている係止部18dも蓄積回動方向に回動するので、バネ19は係止部17cを固定端としてカム18を蓄積回動方向に回動付勢する。それに伴ってバネ19は伸張して弾性エネルギーが蓄積される。
【0037】
図13(c)に示すように、ストッパー20が規制溝18cを係止することで、カム18の蓄積回動方向の回動が停止される。このとき、バネ19には、伸張されたことにより元の長さに圧縮しようとする復元力が働き、係止部18dが係止部17cと軸18aを結ぶ仮想線V1を越えた位置でカム18の回動が停止されているため、バネ19の復元力はカム18を蓄積回動方向に付勢するようになり、バネ19は伸張された状態、すなわち弾性エネルギーを蓄積した状態で保持される。
【0038】
図12(a)から図12(c)に示すように、バネ機構16のカム18の係合溝18bにトリガーピン14が係合することによって、カム18が解放回動方向に回動されると、カム18の上面に設けられている係止部18dも解放回動方向に回動するので、バネ19は係止部17cを固定端としてカム18を解放回動方向に回動付勢する。それに伴ってバネ19は圧縮して弾性エネルギーが解放される。
【0039】
このとき、係止部18dが係止部17cと軸18aを結ぶ仮想線V1を越えると、カム18の蓄積回動方向に働いていたバネ19の復元力の向きがカム18の解放回動方向に切り換えられるので、バネ19は復元力によりカム18を解放回動方向に回動させながら図12(c)に示すように、元の圧縮された長さに戻る。
【0040】
尚、後述するように、バネ機構16と金属片12との間には、所定の間隔が形成されている。内引出し4のスライドレール15が限界まで引き出されることによって、内引出しが引出限界位置S2まで引き出され、下段引出し3と内引出し4の連結が解除されると、下段引出し3に設けられたトリガーピン14は、バネ機構16と金属片12との間を所定距離移動した後に、バネ機構16のカム18の係合溝18bに係合するようになっている。
【0041】
図6に示すように、洗面台1内の収納位置に収納されている状態の下段引出し3を、使用者が把手8を把持して正面側に引き出すと、図7に示すように、下段引出し3と内引出し4とは、それぞれの後部に設けられた永久磁石13と金属片12によって連結された状態で引き出されるようになっている。
【0042】
また、このときのバネ機構16内のバネ19は、図12(a)に示すように、既にエネルギーが蓄積された状態となっているが、下段引出し3と内引出し4が連動している状態であるので、トリガーピン14が係合されることがなく、バネ19はエネルギーを蓄積さした状態で保持されている。
【0043】
図7に示すように、使用者が下段引出し3を正面側にさらに引き出し続けると、下段引出し3に連動されて引き出されている内引出し4が、内引出しの内引出限界位置S2に到達する。このとき、使用者が下段引出し3を正面側に引き出す力が、永久磁石13と金属片12の磁着状態を解除する方向に働くので、使用者は永久磁石13と金属片12の磁着する吸引力を抵抗として感知し、内引出し4が内引出しの内引出限界位置S2に到達したことを認識することができる。尚、使用者が内引出し4を使用する場合には、この内引出し4が内引出しの内引出限界位置S2に到達したときが最も収納部を大きく開放して使用することができるので、収納物の取り出しや収納を容易に行うことができる。
【0044】
また、使用者が下段引出し3を使用する場合には、図7に示す状態から下段引出し3を正面側にさらに引き出すことで、永久磁石13と金属片12の磁着を解除し、下段引出し3と内引出し4の連動を解除する。そして、図12に示すように、下段引出し3と内引出し4の連動を解除した状態から、使用者が下段引出し3を正面側に引き出すことで、下段引出し3に設けられたトリガーピン14が、内引出し4の下面に設けられたバネ機構16の係合溝18bに係合する。尚、使用者はトリガーピン14が係合溝18bに係合する前であれば永久磁石13と金属片12の磁着が解除されていても内引出し4を使用することができる。
【0045】
そして、図8及び図12(a)に示すように、使用者が下段引出し3を正面側にさらに引き出すことによって、下段引出し3に設けられたトリガーピン14が、係合溝18bに係合することで、トリガーピン14がカム18を解放回動方向に回動させる。
【0046】
図12(b)に示すように、係止部17cの位置が軸18aと係止部18dを結ぶ仮想線V1を越える位置まで、トリガーピン14がカム18を解放回動方向に回動させると、バネ19が圧縮されるようになり、バネ19に蓄積されていた弾性エネルギーが解放され、バネ19がカム18を強制的に回動させるようになる。
【0047】
更に、図12(b)から図12(c)に示すように、バネ19によりカム18が強制的に解放回動方向に回動することで、カム18の回動力が、トリガーピン14を正面側に押圧するように働くようになる。このとき内引出し4の重量は下段引出し3の重量よりも軽く、さらに下段引出し3は、使用者によって把手8を把持されているので、カム18がトリガーピン14を正面側に押圧することで、その反力により、内引出し4が閉鎖方向(後方向)に移動されるようになる。
【0048】
図9に示すように、バネ機構16が設けられている内引出し4は、バネ19の付勢力により移動エネルギーが付与され、洗面台1内の収納位置まで移動する。尚、内引出し4は、収納位置の近傍で、スライドレール15の後端部に設けられたソフトクローザー11によって減速されて、閉鎖完了時にスムーズに内引出し4の移動が停止される。
【0049】
そして、内引出し4が洗面台1内の収納位置まで移動した後に、下段引出し3が下段引出しの引出限界位置S1まで引き出され、収納部が上方に最も大きく開口した状態となり、使用者は下段引出し3内の収納物を容易に出し入れすることができる。
【0050】
下段引出しの下段引出限界位置S1から下段引出し3を洗面台1内の収納位置に移動させる際には、先ず、図9に示す状態から使用者が把手7を掴んで下段引出し3を閉鎖方向(後方向)に向かって移動させる。
【0051】
図10及び図13(a)に示すように、下段引出し3を閉鎖方向に向かって移動させていくと、トリガーピン14がバネ機構16のカム18の係合溝18bに係合する。そして、図13(b)に示すように、トリガーピン14が係合溝18bに係合した状態で下段引出し3をさらに閉鎖方向(後方向)に移動させることで、カム18がトリガーピン14により蓄積回動方向に回動される。このように、下段引出し3の閉鎖方向に移動するときの移動エネルギーが、カム18の回動によりバネ19が伸張して弾性変形される弾性エネルギーとして変換されて蓄積される。
【0052】
そして、図11及び図13(c)に示すように、さらに下段引出し3を閉鎖方向(後方向)に移動させることで、カム18の係止部18dが仮想線V1を越えるまで蓄積回動方向に回動させ、バネ19が移動エネルギーを蓄積する。
【0053】
更に、図11に示すように、バネ機構16に移動エネルギーを蓄積した後に、スライドレール10の後端部に設けられたソフトクローザー11によって下段引出し3が減速されて、閉鎖完了時にスムーズに下段引出し3の移動が停止される。尚、下段引出し3が洗面1内の収納位置に停止するとともに、下段引出し3の永久磁石13が内引出し4の金属片12に磁着され、下段引出し3と内引出し4が連結される。
【0054】
以上、本実施例における洗面台1では、エネルギー蓄積手段としてのバネ機構16が、下段引出し3が閉鎖方向に移動するときに移動エネルギーを蓄積することで、下段引出し3と内引出し4とを引き出すときには、バネ機構16が両引出し3,4に対していかなる反発力も生じさせないため、下段引出し3と内引出し4とを引き出し易くなる。
そのため下段引出し3と内引出し4とが連動している状態であっても、使用者が下段引出し3から手を放すことができ、内引出し4内の収納物を容易に取り出すことができる。
【0055】
また、エネルギー蓄積手段としてのバネ機構16が、下段引出し3と内引出し4とが連動するときに、移動エネルギーを保持することで、下段引出し3と内引出し4とが連動している状態では、両引出し3,4を開放方向に移動させても、閉鎖方向に移動させても、バネ機構16に蓄積された移動エネルギーが両引出し3,4に対していかなる反発力も生じさせず、蓄積されている移動エネルギーを解放する虞もないため、両引出し3,4の引き出し操作を行い易くなる。
【0056】
また、下段引出し3が、内引出し4が引き出される内引出限界位置S2よりもさらに引き出されて下段引出し3と内引出し4との連動が解除された後に、エネルギー蓄積手段としてのバネ機構16が、移動エネルギーを解放することで、下段引出し3と内引出し4とが連動している状態では、使用者は、内引出し4が閉鎖方向に移動することがないことを認識しながら、両引出し3,4の引き出し操作を行うことができ、かつ使用者が、内引出し4を閉鎖方向に移動させたい場合には、下段引出し3を内引出し4の内引出限界位置S2よりもさらに引き出すようにすればよく、下段引出し3及び内引出し4の使い勝手がよくなる。
【0057】
尚、下段引出し3と内引出し4との連動が解除されてから、下段引出し3が所定距離引き出された後に、エネルギー蓄積手段としてのバネ機構16の移動エネルギーが解放されるように設定すれば、両引出し3,4の連動が解除されたことを使用者が認識することで、使用者は、内引出し4が内引出限界位置S2にあることを容易に認識することができ、使用者は、両引出し3,4の連結が解除された直後に、下段引出し3を引き出す操作をやめれば、内引出し4を最も大きく開口した状態で使用することができる。
【0058】
また、エネルギー蓄積手段としてのバネ機構16は、弾性体としてのバネ19を変形させることで移動エネルギーを蓄積することで、エネルギー蓄積手段を容易に構成することができる。
【0059】
また、エネルギー蓄積手段としてのバネ機構16は、回動自在に設けられた回動部材としてのカム18と、このカム18を、移動エネルギーを解放する解放回動方向、または移動エネルギーを蓄積する蓄積回動方向のいずれか一方向に回動付勢する付勢部材としてのバネ19と、を有し、下段引出し3は、前記両回動方向を切り換える切換手段としてのトリガーピン14を備えることで、トリガーピン14がバネ19によるカム18の回動付勢方向を切り換えることで、移動エネルギーがバネ機構16に蓄積されたり、解放されたりするようになり、カム18とバネ19という簡素な構成でバネ機構16を製作できる。
【0060】
また、下段引出し3と内引出し4とは、互いに設けられた磁性体としての金属片12及び永久磁石13の吸引力によって連動されることで、金属片12及び永久磁石13の吸引力を利用して、下段引出し3と内引出し4との連動及び解除を容易に行うことができる。
【0061】
また、内引出し4の奥行き長さは、下段引出し3の奥行き長さよりも短く構成され、下段引出し3と内引出し4とは、互いの後部同士が磁性体としての金属片12及び永久磁石13により連結されることで、下段引出し3の前部側には、内引出し4に干渉されない収納空間としての空間部9が形成されるようになり、内引出し4を閉鎖方向に移動させなくても下段引出し3の前部側に収納された収納物を取り出すことができ、かつ下段引出し3の前部側に背の高い収納物を収納させることもできる。
【0062】
また、エネルギー蓄積手段としてのバネ機構16が移動エネルギーを蓄積した後に、下段引出し3が閉鎖方向に移動する移動速度を減速させる減速手段としてのソフトクローザー11を備えることで、下段引出し3が閉鎖方向に移動する移動エネルギーが、ソフトクローザー11により低減されていない状態で、移動エネルギーをバネ機構16に蓄積できるため、大きな移動エネルギーを蓄積し易くなっており、かつソフトクローザー11により下段引出し3の閉鎖完了時にスムーズに下段引出し3の移動を停止させることができる。
【0063】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0064】
例えば、前記実施例1では、下段引出し3と内引出し4とを磁性体としての永久磁石13と金属片12を磁着させることによって連結させるようにしているが、下段引出し3と内引出し4とを連結(連動)させるためには、必ずしも磁性体を用いる必要はなく、下段引出し3と内引出し4に雄具と雌具からなるジョイント部材を設け、雄具と雌具とを連結させつつ、所要の外力が加わった際に分離できるようにしてもよい。
【0065】
また、前記実施例1では、下段引出し3の後端上部に永久磁石13を設け、内引出し4の後端下部に金属片12を設けているが、例えば、下段引出し3の側部3cの途中上部に永久磁石13を設けるとともに、内引出し4の前端下部に金属片12を設けてもよいし、また、内引出し4の奥行き長さを下段引出し3の奥行き長さと略同一に形成して、下段引出し3の前端上部に永久磁石13を設けるとともに、内引出し4の前端下部に金属片12を設けるようにしてもよく、下段引出し3及び内引出し4において永久磁石13や金属片12を設ける位置は、特に限定されるものではない。
【0066】
また、前記実施例1では、下段引出し3に永久磁石13を設け、内引出し4に金属片12を設けているが、下段引出し3と内引出し4とに、それぞれ極性の異なる永久磁石を設けるようにしてもよいし、下段引出し3に金属片を設け、内引出し4に永久磁石を設けるようにしてもよい。
【0067】
また、前記実施例1では、移動エネルギーを蓄積する弾性体としてバネ19を用いているが、弾性体はバネ19に限らず、例えば、エアダンパー内の空気などの弾性を有する流体であってもよい。
【0068】
また、前記実施例1では、バネ機構16がバネ19を伸張させることにより弾性エネルギーを蓄積する構成となっているが、バネ機構16がバネ19を圧縮させて弾性エネルギーを蓄積する構成としてもよい。
【0069】
また、前記実施例1では、下段引出し3と内引出し4の連動が解除された後に、下段引出し3が所定距離引き出された後に、バネ機構16に蓄積された移動エネルギーを解放されているが、下段引出し3と内引出し4の連動が解除されると同時に移動エネルギーが解放されてもよい。
【0070】
また、前記実施例1では、下段引出し3に切換手段としてのトリガーピン14が設けられ、下段引出し3と内引出し4の連動が解除された後に、エネルギー蓄積手段としてのバネ機構16に蓄積された移動エネルギーを解放されているが、切換手段としてのトリガーピンを洗面台1の側板1cに設けたり、切換手段をトリガーピンではなく使用者が押圧するスイッチ等により構成することで、下段引出し3と内引出し4の連動が解除される前に、エネルギー蓄積手段の移動エネルギーが解放されるようにしてもよい。
【0071】
また、前記実施例1では、内引出し4の奥行き長さを下段引出し3の奥行き長さよりも短く形成し、下段引出し3の前板3a背面と内引出し4の前端部正面間に形成された空間部9に、背の高い収納物を収納可能としているが、下段引出し3及び内引出し4の奥行き長さを略同一寸法に形成し、下段引出し3と内引出し4とが連動している状態では、内引出し4によって下段引出し3の収納部が隠蔽されるようにしてもよい。
【0072】
また、前記実施例1では、トリガーピン14をカム18の係合溝18bに係合させてカム18を回動させているが、下段引出し3にラックギアを設け、カム18の端縁に歯形を形成し、ラックギアとカム18に形成した歯形を噛合させることで、カム18を回動させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の洗面台の斜視図である。
【図2】本発明の上段引出しと該上段引出しに着脱できる整理トレーの斜視図である。
【図3】本発明の下段引出しと該下段引出しの上部に配置される内引出しの斜視図である。
【図4】本発明の内引出しの他の実施例を説明する斜視図である。
【図5】本発明の洗面台の収納空間を説明する断面模式図で、(a)は左側面断面図、(b)は正面断面、(c)は右側面断面図である。
【図6】本発明の下段引出しと内引出しの動作状況及び機構を説明するためのもので、(a)は引出しが全て収納位置にある状態を示し、(b)は下段引出しを引出し途中にある状態を示し、(c)は下段引出しを引出限界位置を超えて引き出した後の状態を示す断面模式図である。
【図7】内引出しが引出限界位置まで引き出された状態を示す拡大縦断側面図である。
【図8】下段引出しのトリガーピンがバネ機構に係合する状態を示す拡大縦断側面図である。
【図9】バネ機構が動作して内引出しが後退した状態を示す拡大縦断側面図である。
【図10】内引出しを後方に向かって移動させる際のトリガーピンがバネ機構に係合する状態を示す拡大縦断側面図である。
【図11】バネ機構にエネルギーが蓄積されてソフトクローザーが動く状態を示す拡大縦断側面図である。
【図12】(a)は、下段引出しぼ引出し時にトリガーピンがバネ機構のカムに係合する状態を示す横断平面図であり、(b)は、バネ機構が動作して後方に付勢される状態を示す横断平面図であり、(c)はバネ機構が後退する状態を示す横断平面図である。
【図13】(a)は、下段引出しの閉鎖時にトリガーピンがバネ機構のカムに係合する状態を示す横断平面図であり、(b)は、バネ機構にエネルギーが蓄積される状態を示す横断平面図であり、(c)は、バネ機構にエネルギーが蓄積完了した状態を示す横断平面図である。
【符号の説明】
【0074】
1 洗面台
1c 側板
1e ケコミ部
2 上段引出し
2a 前板
2b 底板
2c 側板
2d 背板
2e 整理トレー
2f 凹み形状
3 下段引出し
3a 前板
3b 底板
3c 側板
3d 背板
4 内引出し
4a 前板
4b 底板
4c 側板
4d 背板
4e 段差部
4f 浅底部
4g 深底部
4h 中仕切り板
4i 開口部
5 深底収納体
5a フランジ
6 ボウル
7 カウンタ
8 取手
9 空間部(収納空間)
10 スライドレール(下段引出し用)
11 ソフトクローザー(減速手段)
12 金属片(磁性体)
13 永久磁石(磁性体)
14 トリガーピン(切換手段)
15 スライドレール(内引出し用)
16 バネ機構(エネルギー蓄積手段)
18 カム(回動部材)
19 バネ(弾性体,付勢部材)
21 錘機構(エネルギー蓄積手段)
22 カム(回動部材)
23 錘(付勢部材)
24 トリガーピン(切換手段)
S1 下段引出限界位置
S2 内引出限界位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下段引出し(3)の前板(3a)の高さが、上段引出し(2)の前板(2a)の高さの3倍以上である上下2段の引出し付き洗面台であって、前記下段引出し(3)には下段引出し(3)の前板(3a)の奥側で下段引出し(3)の底板(3b)の上部に幅方向に段差(4e)を設けた深さの異なる内引出し(4)が着脱可能で且つ前後スライド可能に具備されていることを特徴とする洗面台。
【請求項2】
前記内引出し(4)の段差(4e)は、底板(4b)に設けた開口部(4i)に深底収納体(5)を着脱可能に設置することにより構成することを特徴とする請求項1に記載の洗面台。
【請求項3】
前記内引出し(4)は、下段引出し(3)と連動して引き出され、内引出し(4)が引き出される内引出限界位置(S2)よりもさらに引出されて前記下段引出し(3)と内引出し(4)との連動が解除された後に、バネ機構(16)により内引出し(4)が後方にスライド移動することを特徴とする請求項1または2に記載の洗面台。
【請求項1】
下段引出し(3)の前板(3a)の高さが、上段引出し(2)の前板(2a)の高さの3倍以上である上下2段の引出し付き洗面台であって、前記下段引出し(3)には下段引出し(3)の前板(3a)の奥側で下段引出し(3)の底板(3b)の上部に幅方向に段差(4e)を設けた深さの異なる内引出し(4)が着脱可能で且つ前後スライド可能に具備されていることを特徴とする洗面台。
【請求項2】
前記内引出し(4)の段差(4e)は、底板(4b)に設けた開口部(4i)に深底収納体(5)を着脱可能に設置することにより構成することを特徴とする請求項1に記載の洗面台。
【請求項3】
前記内引出し(4)は、下段引出し(3)と連動して引き出され、内引出し(4)が引き出される内引出限界位置(S2)よりもさらに引出されて前記下段引出し(3)と内引出し(4)との連動が解除された後に、バネ機構(16)により内引出し(4)が後方にスライド移動することを特徴とする請求項1または2に記載の洗面台。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−75326(P2010−75326A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245482(P2008−245482)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000002222)サンウエーブ工業株式会社 (196)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000002222)サンウエーブ工業株式会社 (196)
【Fターム(参考)】
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