活性作用物質を分散させるためのハイドロフォビン
薬剤又は栄養素の投与の分野において、新規粒子及びその配合物が提供される。上記粒子はそれぞれ、活性作用物質を含むコア、及びハイドロフォビンから選択されるタンパク質を含む少なくとも部分的なコーティングを有する。好適なハイドロフォビンは、クラスI又はクラスIIに属する。上記粒子は、増強された特徴、例えば分散性又は溶解度を示す。ここでは、ナノスケールの上記粒子を生産する2つの方法も開示されており、そのうちの1つは、沈殿及び別の湿式粉砕を利用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤、栄養素、又は他の活性作用物質の投与の分野に関する。本発明は、増強された特徴を有する活性作用物質粒子を含む新たな生成物及び配合物を提供する。本発明は、ナノスケールの上記粒子の生産方法を更に提供する。
【背景技術】
【0002】
難溶性の化合物の生物学的利用能、医薬品及び栄養食品(nutritionals)の標的化された送達及び制御放出が、近年研究されている。
【0003】
特許出願公開公報である特許文献1は、難溶性薬剤物質の薬学的に安定なナノ粒子配合物、かかる配合物の調製プロセス、及びそれらの使用方法に関する。特許文献1は、ナノスケールの平均粒度を有する難溶性薬剤物質、固体又は半固体の分散媒体、及び任意に非表面修飾賦形剤(non-surface modifying excipient)を含む薬学的配合物を開示している。使用される上記分散媒体は、油、脂肪及びグリセリドから選択される。欠点は、脂肪性媒体を用いると、水性マトリクスと媒体との間の相互作用を増大させるために、プロセス中に乳化剤又は加温が必要とされることである。タンパク質は適用されない。
【0004】
別の特許出願公開公報である特許文献2は、標的化された薬剤送達に関する方法及び組成物を開示している。上記組成物は、標的化された細胞の表面上の受容体に特異的に結合するホルモンのような標的化分子、標的化された細胞を死滅させる毒素のような送達対象の薬剤、及びナノ粒子を含み、該ナノ粒子は、該ナノ粒子上又は該ナノ粒子内に送達対象の薬剤を含有し、それと結合した標的化分子を有する。ナノ粒子は、薬剤、又は担体(例えば、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、リポソーム又は界面活性剤のような制御放出材料又は持続放出材料)に連結した薬剤で構成され得る。
【0005】
制御放出用の薬剤送達系の更に別の例は、特許出願公開公報である特許文献3であり、ここでは、多糖で官能基化されたナノ粒子、該ナノ粒子を含む制御放出用の薬剤送達系、及びそれらの調製方法が論じられている。特に、特許文献3のナノ粒子は、生分解性ポリマーのコア、生体適合性ポリマー乳化剤の外側ヒドロゲル層、並びにコア及びヒドロゲル層に物理的に結合した多糖を含み、したがって成長因子のようなタンパク質薬剤の安定性及び制御放出を増強することが可能である。
【0006】
更に別の公開公報である特許文献4は、呼吸器感染症の伝播を処置又は低減するために開発された配合物について記載している。配合物は、ミクロ粒子、ナノ粒子又はナノ粒子の凝集体の形態の薬剤又はワクチン、及び任意に吸入により送達され得る担体を含む。一実施形態では、粒子はナノ粒子であり、投与後にナノ粒子へと分散するミクロン径を有する多孔質ナノ粒子凝集体として投与され得る。上記出願の出願人らによると、ナノ粒子は、どの種類のタンパク質が適しているかは判明してない又は更には推測されていないが、界面活性剤又はタンパク質コーティングでコーティングすることができる。
【0007】
特許出願公開公報である特許文献5は、溶解速度を制御するために、大きな薬剤結晶の形態を少量のハイドロフォビンで修飾することに関する。著者らは、安定なナノ粒子ではなく、準安定な中間生成物を生産したにすぎず、この中間生成物は、実施例に記載される方法の終了時には大きな結晶へと結晶化する。特許文献5は、伝統的な製薬技術及び比較的粗い方法での粉末加工処理に関する。
【0008】
実施例における出発点は、薬剤/HFB溶液を加熱すること、続いてそれを徐々に冷却させることによって過飽和状態を創出して、或る特定の形態へ結晶化させることである。これは、純粋な有機結晶を作製し、かつ医薬品を加工処理するための非常に一般的な方法であり、そこでは時間のスケールは、大まかに言うと数時間から数日である。言及されるサイズ範囲は、タンパク質それ自体から小さな塊(rocks)までのあらゆるものを包含する。実際に開示されるサイズ分布は10μm〜100μmの範囲である。特許文献5のプロセスに関与するナノ技術は存在しない。
【0009】
最適な治療活性に到達するために、薬剤配合物は、十分な負荷(loading)、製造及び貯蔵中の適正な安定性、並びに活性薬学的作用物質に関する身体における許容可能な薬物動態プロファイルをもたらす適切な放出速度を達成する必要がある。今日、開発において薬剤配合物を最適化するために、2つの主要な課題が解決される必要がある。対象とする薬剤送達経路(例えば経口、経肺、経皮又は非経口)に関係なく、これらの問題は、1)新たに開発される活性薬学的作用物質(API)の溶解速度を遅らせる一般的な難溶性、並びに2)最適速度で作用部位において最適な治療上のAPI濃度を達成するための正当で正確な薬剤放出及び薬剤送達プロトコルである。
【0010】
経口制御送達系は、それらの薬剤放出のメカニズムに基づいて、以下の分類へと大きく分けることができる:1.溶解制御放出(a.封入溶解制御、及びb.マトリクス溶解制御)、2.拡散制御放出(a.リザーバデバイス、及びb.マトリクスデバイス)、3.イオン交換樹脂、4.浸透制御放出、及び5.胃保持(gastroretentive)系。賦形剤としてのハイドロフォビンタンパク質は、少なくとも溶解及び拡散のメカニズム、またおそらくは胃保持のメカニズムに対して新たな解決策を提供する。ハイドロフォビンタンパク質の溶解増強及び放出制御は、溶解のための大きな表面積をもたらす粒子の小さなサイズに基づいている。通常、例えばアルコール、グリセロール、PEG/PEO、プロピレングリコールのような薬学的溶媒賦形剤は、配合物中のAPIの溶解度の改善をもたらす。他方で、湿潤剤/崩壊剤のような錠剤化用(tabletting)賦形剤(例えば、デンプン、微結晶性セルロース、架橋カルボキシルメチルセルロースナトリウム等)が多くの場合で使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】加国特許出願公開第2606861号
【特許文献2】米国特許出願公開第2005255152号
【特許文献3】米国特許出願公開第2007053870号
【特許文献4】米国特許出願公開第2008213373号
【特許文献5】国際公開第2010/003811号
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、増強された投与特性、例えば分散性又は溶解度を有する粒子(各粒子が活性作用物質及びハイドロフォビンを含む)を含む生成物の生産方法を提供することである。通常、水性マトリクスに対する疎水性粒子の溶解度は増強されるが、本発明の一態様としては、状況は正反対(疎水性マトリクス中での固体親水性粒子のより良好な適合性)であり得る。
【0013】
新規薬学的賦形剤としてのハイドロフォビンタンパク質は、ミクロ粒子及び/又はナノ粒子のコア中に活性作用物質材料を封入することによって、難溶性並びに正確な薬剤放出及び薬剤送達プロトコルの問題に対して、適合した(tailored)解決法を提供する。
【0014】
本発明者らは驚くべきことに、少なくとも1つの活性作用物質を含むコア(そのコアは、ハイドロフォビンで少なくとも部分的にコーティングされている)で構成される本発明による粒子を用いると、上述の目的を達成することができることを見出した。本発明による粒子を含む生成物は、請求項1に記載される事項を特徴とする。
【0015】
本発明の別の目的は、活性作用物質を含む粒子であって、該粒子が標的化され得るか、又は上記活性作用物質が上記粒子から制御可能に放出され得るという機能又は特徴を有する、活性作用物質を含む粒子を提供することである。本発明者らは、活性作用物質のためのコーティングとして使用されるハイドロフォビンの官能基化が、移動度、取込み、動物(ヒトを含む)における薬剤又は活性成分の標的化又はモニタリング、代謝を制御する可能性をもたらすことを見出した。さらに、ハイドロフォビンに連結される官能性部分は、薬剤、食品又は化粧品の加工処理に有益であるマトリクスへ粒子を結合させるためのアンカーとして役立ち得る。かかる標的化のための他の使用は、他の活性配合物の設計における、例えば天然産物、制御物質又は化学試薬の投薬におけるものである。
【0016】
別の好ましい実施の形態では、上記粒子は、少なくとも1つの疎水性活性作用物質を含むコアで構成されており、上記コアは、ハイドロフォビン部分及び官能性部分の両方を有する融合タンパク質で少なくとも部分的に覆われている。上記利益をもたらす粒子は、請求項7に記載される事項を特徴とする。
【0017】
本発明の別の目的は、大きな面積対容積比を有する粒子の生産方法を提供することである。さらに、非常に小さな粒子として疎水性活性作用物質を沈殿させる方法は、別の目的である。好ましくは、粒子の生成物は、できる限り均質なバルク、すなわちサイズ及び形状の分布ができる限り狭い単分散粒子を表す。更に別の目的は、層(連続的な又は部分的な)で疎水性活性作用物質のコアをコーティングする方法であり、これは、物理的/化学的/生物学的な歪み(strain)に対する保護をもたらす。本発明の方法は、請求項18及び請求項19に記載されている。
【0018】
本発明の方法は、請求項22において特徴付けられているように、薬剤投与、制御放出用途及び薬剤標的化に使用可能な粒子の配合物をもたらす。
【0019】
更に別の目的は、食品、飼料、薬学的に活性な作用物質、天然産物、及び他の活性作用物質の投与に関する改善された粒子を提供することである。この目的は、請求項23に記載されるように、活性作用物質のコア用のコーティングとしてのハイドロフォビンの使用によって達成される。
【0020】
以下において、本発明は、詳細な説明により、また幾つかの実際の例を参照してより詳しく説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例8に記載される、純粋なイトラコナゾール(ITR)及びナノ原繊維(nanofibrillar)セルロースマトリクスへ負荷されたイトラコナゾールナノ粒子の溶解速度を示す図である。負荷されたサンプルを、乾燥プロセスでナノ構造を保存するために、トレハロース(TRE)又はエリスリトール(ERY)とともに凍結乾燥させた。KC及びNFCは、ナノ原繊維セルロースの種々の等級を指す。四角はITR粉末を、丸はITR+HFBI−DCBD+KC+TRE/凍結乾燥を、三角はITR+HFBI−DCBD+NFC+ERY/凍結乾燥を示す。
【図2】HFBIIの構造を明らかにする図である。結合に関与する疎水性アミノ酸残基は、疎水性残基L7、L19、I22、A61及びV57である。参照文献は、Hakanpaa他iによるものである。
【図3】ハイドロフォビンの非存在下で(a)、及びハイドロフォビンの存在下で(b)、沈殿させた薬剤粒子のサイズ及び形状間の比較を示す図である。ベクロメタゾンは脱イオン水から沈殿し、それぞれハイドロフォビンの非存在又は存在に応じて、数マイクロメートル長の針状体(needles)(a)又は本質的に球状の固体のナノスケールの凝集体(b)を生じる。
【図4】形成される粒子に対する沈殿温度の影響を示す図である。氷浴中で(a)及び室温で(b)、実施例1aに従って調製されたBDP−HFBII粒子。ベクロメタゾンは脱イオン水から再度沈殿し、反応温度に応じて、ナノスケールの球状固体の凝集体(a)又は数マイクロメートル長の棒状体(rods)(b)を生じる。
【図5】実施例1bで生産される高度に単分散性かつ球状の粒子を示すHFBIIにより安定化されたイトラコナゾール粒子のTEM画像である。粒子は、平均直径約70nm〜90nmを有する数百nmの粒子の集合体(conglomerates)を形成する傾向を幾らか有するようである。上記集合体は、投与後にナノ粒子へと分散すると予測することができる。
【図6】実施例2で形成される粒子の蛍光顕微鏡画像である。ミクロ粒子は明らかに蛍光性であり、光学顕微鏡でほとんど検出不可能であるナノ粒子は、蛍光モードで検出され得る。これは、ハイドロフォビン融合タンパク質を活用した、官能基化されたナノ粒子の生産に関して提示されるアプローチの実現可能性を実証する。蛍光顕微鏡画像は、GFP−HFBI:HFBII(1:3)でコーティングされたBDPナノ粒子(図6b、スケール20μm)及びミクロ粒子(図6a、スケール100μm)を示す。ナノ粒子は、従来の光学顕微鏡で正確に焦点を合わせるには小さすぎるが、蛍光画像では観察することができる。水中の遊離GFP−HFBIは、水相を淡緑色に染色する。水−BDP界面は、より高濃度のタンパク質を有し、したがってより鮮やかな緑色である。
【図7】本発明の一実施形態、すなわち、画像化及び局在化の目的のための金属ナノ粒子でコーティングされたナノ粒子の生産を実証する、3nmメルカプトコハク酸(MSA)でコーティングされたAuナノ粒子で修飾されたBDP−HFBII−ナノ粒子を示す図である。画像のコントラストは、薬剤ナノ粒子表面での金ナノ粒子によって増強される。
【図8】セルロースナノファイバーに結合したHFBIIでコーティングされたITRナノ粒子のTEM(スケールバー2μm)画像である。形態は、調製の直後(8a)、及び懸濁液中での1ヵ月の貯蔵後(8b)で同じであった。
【図9】a)0.3M NaCl中で調製されたITR−HFBI−DCBD−NFCサンプル、及びb)0.3M NaCl中で調製されたITR−HFBI−NFCサンプルのTEM画像である。サンプルはともに、懸濁液として12日間貯蔵された。貯蔵後、第1のサンプル中の粒子の形態は依然として同じままであった(c)が、第2のサンプル中では、粒子は凝集し始めていた(d)。
【図10】HFBII懸濁液中での9(a)粉砕(milling)の2分後、及び9(b)粉砕の5分後の粉砕されたインドメタシンナノ粒子のTEM画像を可視化する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
本発明の目的において、「活性作用物質」は本明細書では、動物、植物又は他の生物において化学的活性又は生物学的活性を有する任意の化学的化合物の意味で使用される。活性作用物質は、薬剤又は薬物のような医薬品、診断用作用物質、又は栄養食品、したがって食品又は飼料の成分、化粧品、及び制御物質(例えば、除草剤又は殺虫剤)を含む。本発明の粒子に特に適切な活性作用物質は、それらの環境に対して非常に低い溶解度を有する化合物、例えば水性系における、例えば哺乳動物(好ましくは、ヒト)の代謝における疎水性化合物である。この場合の低い溶解度は通常、1mg/ml未満又は100μg/ml未満である。
【0023】
「ハイドロフォビン」という用語は本明細書では、活性タンパク質内において、極性化合物及び無極性化合物に対する親和性の偏りという特徴を有するポリペプチドを意味する。「ハイドロフォビン」は、これまでのところ、それらが偏在性であると思われる糸状菌(filamentous fungi)中にのみ見出されているタンパク質の一群である。それらは、場合によっては、モノマーとして培地中に見出され、それらが自己集合化して薄い表面層を形成する界面へと移動する分泌タンパク質である。
【0024】
「ポリペプチド」という用語は本明細書では、ペプチド結合により結合した2つ以上のアミノ酸の配列を意味する。この定義によれば、タンパク質は全てポリペプチドである。ポリペプチドという用語は本明細書では、ペプチド及び/又はポリペプチド及び/又はタンパク質を意味するのに使用される。
【0025】
「担体」は本明細書では、ハイドロフォビンに連結された官能性部分が結合することができるマトリクスを意味する。好ましくは、上記ハイドロフォビンに連結された官能性部分を用いて担体に結合したハイドロフォビン誘導体でコーティングされた活性作用物質のコアによって形成される複合体は、上記粒子の加工処理及び貯蔵を容易とする特徴を、上記複合体のバルクに付与する。担体は、単糖(グルコース、マンノース)、二糖(例えば、ラクトース)、オリゴ糖、多糖(例えば、デンプン、セルロース)又はそれらの誘導体を含む群から選択され得る。
【0026】
「薬学的に許容し得る担体又は補助剤」という用語は、本発明の粒子と一緒に配合物として患者に投与されてもよく、かつそれらの薬理活性を破壊せず、治療上の量の活性作用物質を送達するのに十分な用量で投与される場合に無毒性である担体又は補助剤を指す。概して、配合物は、活性成分を液体担体又は微粉砕固体担体又はその両方と均一にかつ緊密に結合させること、及び続いて必要に応じて生成物を成形することによって調製される。
【0027】
「薬学的に許容し得る充填剤」という用語は、本発明の活性作用物質と一緒に粒子のコアに組み込まれ得る充填剤を指す。好適には、それは、加工処理、生物学的利用能、持続放出又は制御放出を改善することによって、活性作用物質の薬理学的特性に寄与する。薬学的に許容し得る充填剤は、薬務において充填剤として使用されるかかるバルク物質を意味する。したがってそれは、主としていかなる健康リスクをも有さず、この機能に適した物理特性を有する。許容し得る充填剤及びそれらの特性のリストは、種々のタイプの製薬出版物、例えばHandbook of Pharmaceutical Excipients(これは米国薬学会(American Pharmaceutical Association)によって出版されている)に見出すことができる。
【0028】
本明細書中で「粒子」は、少なくともコア及び少なくとも部分的に該コアを覆っているコーティングを含む固体沈殿物を指す。本明細書では、「上記活性作用物質を含むコア」は、任意の形状であり得る。本発明の沈殿方法に従って生産される場合、コアは、最低限に抑えられた表面積に向かう傾向を有し、したがって実質的に球状又は球状様、例えば卵形状の粒子が典型的である。かかる形態はまた、粒子の更なる加工処理及び配合の観点からも好ましい。しかしながら、粉砕方法は、より角のある(angular)形状を生産する。好ましくは、上記コアは、少なくとも部分的に結晶性の固体として活性作用物質を含むが、非晶質固体もまた存在し得る。
【0029】
本発明の一実施形態による粒子を含む生成物は、球状粒子のバルクとして記載され得る。上記粒子は、少なくとも1つの活性作用物質(好ましく疎水性である)を含むコアを有する。コアは、ハイドロフォビンタンパク質でコーティングされ、それらの疎水性残基はコアに向かい、親水性の本体はコアから離れて親水性環境又はマトリクスへ向かう。好適な実施形態では、粒子は球状であり、ハイドロフォビンで連続的にコーティングされる。ハイドロフォビンが互いに緊密に隣接している場合、それらは、コア周辺でコーティング層を形成して、好ましくはコアを封止して、粒子に関して均一な表面を形成する。任意に第2の層が、ハイドロフォビンに結合した官能性部分により形成され得る。また、上記第2の層は、不連続又は均一であり得る。
【0030】
本明細書では、「粒子の少なくとも1つの寸法」は、最小値を有する粒子のサイズ又は容積を規定するのに使用される尺度(measure)を意味する。換言すると、3次元モデルが本発明の粒子で構築される場合、上記最小寸法は、それに沿う粒子の尺度が最小である軸である。立方体粒子の場合、それは各辺の尺度である。直平行六面体に関して、それは、最も短い辺の尺度である。完全な球体の特殊な場合では、それは直径であり、それは同時に球体を通る最大直線距離であり、また全ての軸に沿った最小寸法である。棒状体又は円柱体に関して、それは長さ/高さ及び直径のより小さいものである。円錐体に関しては、それは長さ/高さ、又は直径の最大値である。概して、「粒子の最小寸法」は、デカルト座標中の3次元軸それぞれに対する最大幅に従って投影される3つのベクトルから選ばれ、上記ベクトルは、2つの他のベクトル両方の長さよりも小さい1次元長さを有する。
【0031】
薬学的配合物に関して、粒度の意味では、平均粒子寸法が観察されることが理解される。
【0032】
好ましくは、粒子は、非常に狭いサイズ及び/又は形状の分布を表す。幾つかの実施形態では、本発明の方法により得られる粒子は、高い単分散性を示す。
【0033】
本明細書では「ナノ粒子」は、ナノスケールの少なくとも1つの寸法を有する粒子を指す。ナノ粒子は任意の形状を有することができ、その少なくとも直径、長さ、辺、高さ、広さ、幅等、好ましくは2つの、又は最も好ましくは全ての寸法が、0.5マイクロメートル未満である。ナノスケールの粒子、したがって本発明の実施形態によるナノ粒子は、1マイクロメートル未満の少なくとも1つの平均粒子寸法を有する。好ましくは、上記粒子の全ての平均粒子寸法が、1マイクロメートル未満である。
【0034】
「官能基化」又は「官能基化された」は、タグ、官能性残基、又は官能性を有するアミノ酸(複数も可)の残基若しくは断片又は若しくは全配列、又は更にそれらの組合せの付加の実施を指す。官能性の例としては、化学結合を形成する能力、タグ、マーカー、ペプチド、リガンド又はペプチドを結合する能力が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
「融合ポリペプチド又は融合タンパク質」は、組換えDNA技法により組み合わせられた少なくとも2つのポリペプチド部分を含有するポリペプチドを表す。また、融合構築物は好ましくは、所定のポリペプチドと、接着ポリペプチドとの間にリンカーを含む。
【0036】
「所定のポリペプチド」又は「予め選択されたポリペプチド」は、所望の特性を有するか、又は所定の任意の1つ又は複数の分子を結合させることができる任意のポリペプチドを表す。ポリペプチドは、抗原、抗体、酵素、構造タンパク質、接着タンパク質又は調節タンパク質を含む群から選択されるが、これらに限定されない。
【0037】
本明細書では、「水性媒質」は、ハイドロフォビンが粉砕方法で混合されるマトリクスを規定するのに使用される。
【0038】
一実施形態では、粒子(各粒子が活性作用物質及びハイドロフォビンを含む)を含む生成物が提供され、ここで上記粒子は少なくとも1つの活性作用物質を含むコアを有し、該コアはハイドロフォビンで少なくとも部分的にコーティングされている。本発明者らは、かかる粒子が、粒子沈殿物のサイズ及び形態を変化させる可能性をもたらすことを見出した。1つの好適な影響は、溶解度が通常乏しい環境中での上記活性作用物質の溶解速度を増大させることである。ハイドロフォビンコーティングはまた、上記粒子の加工処理及び使用中に外部の歪みに対する保護をもたらす。ハイドロフォビンコーティングはまた、官能基化するという選択肢をもたらし、選択された官能基は、活性作用物質の標的化、結合又は制御放出に寄与する。
【0039】
本発明の一実施形態による粒子は、10マイクロメートル未満の平均直径を有する。粒子は、1マイクロメートル未満、好ましくは0.5マイクロメートル未満、より好ましくは0.2マイクロメートル未満の平均粒径を有するという、更に良好な特徴を有する。好ましくは、上記粒子は、本質的に球状、卵形又は棒状体様の形状である。
【0040】
本発明の一実施形態による粒子は、1マイクロメートル未満の最小寸法を有する。粒度が小さいほど、粒子の全体的な表面積、したがって面積/容積比は大きい。したがって、多くの用途において、粒度の低減は、粒子及び場合によっては粒子が使用される配合物の或る特定の特徴にとって有益である。その目的で、粒子の最小寸法が、0.5マイクロメートル未満、好ましくは0.2マイクロメートル未満、更に好ましくは0.1マイクロメートル未満であることが好ましい。一例は、活性作用物質が、疎水性の薬学的に活性な作用物質である場合であり、ここではナノ粒子が、経口経路、経肺経路、経皮経路又は非経口経路による薬剤送達において、より高い生物学的利用能を可能にする。小さな粒度はまた、溶解速度の増強をもたらす。
【0041】
ハイドロフォビンは、糸状菌に特有でありかつ糸状菌において偏在性である小さな細胞外タンパク質であり、これは真菌と環境との間での相互作用を媒介する。ハイドロフォビンは、場合によっては、モノマーとして培地中に見出され、それらが自己集合化して薄い表面層を形成する界面へと移動する分泌タンパク質であるが、それらは菌糸に結合した状態でも見出される。
【0042】
ハイドロフォビンはまた、それらの高い界面活性を特徴とする。シゾフィラム・コムーネ(Schizophyllum commune)(スエヒロダケ)由来のハイドロフォビンSC3により形成される層は広範囲にわたって特性化されており、表面疎水性を変化させるという特性を有し、その結果、それは親水性表面を疎水性にし、また疎水性表面を親水性にする。SC3層は、電子顕微鏡によって容易に可視化されて、その堅固にパッケージングされた棒状体(rodlet)パターンを特徴とし、したがって多くの場合、棒状体層と呼ばれる。SC3層は非常に安定であり、純粋なトリフルオロ酢酸又はギ酸のような非常に激しい化学物質のみが、それを溶解させることができる。例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の溶液中での加熱は、層に影響を及ぼさない。大きなコンホメーション変化は、集合化及び吸着と関連付けられ得ることも示されている。
【0043】
水治療法プロットの比較は、ハイドロフォビンを2つのクラス、すなわちI及びIIへ分割することの基礎を成す。2つのクラスは、幾つかの一般的な特性を共有するが、それらの集合体(assemblages)の溶解度のような幾つかの態様で有意に異なるようである。クラスI集合体は高度に不溶性であるのに対して、クラスIIハイドロフォビン集合体及び吸着表面層は、時にはより容易に、例えば60%エタノール、SDSによって、又は圧力を印加することによって解離するようである。棒状体タイプ表面構造は、これまでクラスIIハイドロフォビンでは報告されておらず、多くの点で、クラスIIハイドロフォビンは、挙動においてあまり極端ではないようである。クラス間の区別は、一次構造の比較によって行うことができ、特性の差の説明は、アミノ酸レベルでは行うことはできない。
【0044】
ハイドロフォビンにおいて、最も顕著な特質は、ハイドロフォビンファミリーにおいて保存される唯一の一次構造を形成する8つのCys残基のパターンであるが、このパターンが保存されていないハイドロフォビンについてもまた記載されている。ハイドロフォビンはまた、モジュール組成が異なっていてもよく、その結果、ハイドロフォビンは、種々の回数の反復ハイドロフォビンユニットを含有する。
【0045】
別の状況では、ハイドロフォビンは、一次構造においてかなりの変動を示す。HFBI及びHFBIIは、真菌トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)由来の2つのクラスIIハイドロフォビンであり、配列同一性66%と非常に類似している。クラスI及びIIハイドロロフォビンに関する公開データは、主にそれらの凝集体の構造及び溶解度を包含すると思われる、クラス間の機能的区分が存在することを示している。クラスIIハイドロフォビンの表面結合の系統的な研究は以前には報告されていないが、クラスIハイドロフォビンSC3の吸着は、はるかに詳細に特性化されている。SC3の場合、棒状体層の形成は、結合の必須構成成分であるようである。トリコデルマ・リーゼイ(T. reesei)HFBIに関する遺伝子の単離は、(Nakari Setala, Aro他。1996年ii)に記載されており、HFBIIに関しては、(Nakari-Setala, Aro他。1997年iii)に記載されている。トリコデルマ・ハルジアナム(T. harzianum)のsrhl遺伝子の単離は、以前に記載されている。
【0046】
フィンランド国特許第116198号では、発明者らは、大規模な表面への融合タンパク質の固定化を開示した。融合タンパク質は、予め選択されるポリペプチドへ融合した接着ポリペプチドを含んでいた。上記方法は、融合タンパク質の接着ポリペプチド部分の自発的な固定化特性を利用した。一実施形態では、接着ポリペプチドは、真菌ハイドロフォビンであった。
【0047】
本発明の粒子において、ハイドロフォビンは、親水性マトリクスに対する、通常疎水性化合物の水溶液に対する溶解度が増強されるべきである場合に、特に有益である。溶解速度の増強及び放出の最適化は、活性作用物質及びハイドロフォビン(hydrobhopin)タンパク質の特性及び相互作用に、また小さな微粒子配合物の特性に基づく(Rabinow、2004年iv、Date and Patrivale、2004年v)。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、コアが疎水性である場合、ハイドロフォビンによるコーティングは、水性媒質に対する溶解度を増大する。実験項に示されるように、ハイドロフォビンの存在下では、疎水性薬物は、かなり大きなニードル針状体に代わって本質的に球状のナノスケール粒子の凝集体として沈殿し、この凝集体は、製薬プロセスにおいて取り扱うのが困難である。
【0049】
ハイドロフォビンの親水体に包埋された小さな疎水性パッチは、親水性材料と疎水性材料との間の界面で、ハイドロフォビンを自己集合化させる。例としてクラス2ハイドロフォビン、すなわちHFBIIの構造を図2に提示する。ハイドロフォビンは、疎水性パッチが疎水性材料に結合する強い傾向を示す。
【0050】
結晶サイズの低減の幾らか類似した効果が、界面活性剤、例えばTween 20を用いた場合に観察され得るが、疎水性粒子への界面活性剤の結合はより可逆的であり、適切な条件で剥離(debonding)が起こる。ハイドロフォビンを用いた場合、コア上に形成されるコーティングは、より層様であり、対応する界面活性剤よりも、包み込まれた活性作用物質に対して安定かつ保護的である。界面活性剤分子と異なり、ハイドロフォビンの層は基板上に転写し、強く結合することができる。ハイドロフォビンは、活性作用物質コアの周辺の立体的な保護層を形成する。ハイドロフォビンを特に興味深いものにさせる別の特性は、界面単層が形成する場合のタンパク質間の強力な側方相互作用である。これは、懸濁液安定性を増大させる。ハイドロフォビンは、自然に存在する野生型タンパク質、又は化学的若しくは遺伝的に修飾及び/若しくは官能基化されたタンパク質のいずれかであり得る。
【0051】
本発明の粒子に適したハイドロフォビンは、好ましくはクラスIハイドロフォビン及びクラスIIハイドロフォビンから選択される。既知のハイドロフォビンとしては、HFBI、HFBII、SRHI及びSC3又はそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。ハイドロフォビンを選択する場合、クラスクラスI集合体とクラスII集合体との間の差を、所望の特性を達成するために利用することができる。クラスIが高度に不溶性であり、クラスIIハイドロフォビン集合体及び吸着表面層は、時にはより容易に溶解するようである。棒状体タイプ表面構造は、これまでクラスIIハイドロフォビンでは報告されておらず、多くの点で、クラスIIハイドロフォビンは、挙動においてあまり極端ではないようである。理論により拘束されないが、クラスIIハイドロフォビンは、高い不溶性がより一層障害となり得る場合に本発明の用途により適切であるようである。
【0052】
ハイドロフォビンは、コーティング化合物として特殊な利点を提供する。融合タンパク質としてハイドロフォビンを生産する可能性は、ナノ粒子の表面を含む表面の官能基化に使用され得る。例えば、抗体及びハイドロフォビンを有する融合タンパク質を生産することができる。かかる融合タンパク質を使用して、ハイドロフォビンでコーティングされた粒子の表面上に抗体官能性を配置させることができる。したがって、融合タンパク質の官能性を使用して、粒子の表面へ他の構成成分を結合させることによって、ナノ粒子を、特定の位置へ標的化することができるか、又はより良好に若しくは具体的に制御される安定性のために粒子を表面官能基化することができる。
【0053】
かかる官能基化の一例は、活性な薬学的作用物質コアをコーティングするために、セルロース結合ドメインを有するハイドロフォビンの融合タンパク質を適用させることである。それらの得られる粒子をナノファイバー状のセルロース溶液と混合すると、それは、セルロース繊維への粒子の結合を導く(図8aにおけるTEM画像)。上記粒子は、予期せぬことに貯蔵中に耐久性及び安定性があると証明された。したがって、このアプローチの実現可能性は、薬剤ナノ粒子の配合物を長持ちさせて、かつ取扱いやすくさせることに関して実証された。とりわけ安定性/貯蔵時間の増大は、ナノ粒子の加工処理に関して明確な改善である。
【0054】
クラスIIのハイドロフォビンは、記載される本発明に特に良好に適合される可能性が高い。クラスIIハイドロフォビンは、クラスI成員よりも生産しやすい。さらに、クラスIIは、クラスIよりも不可逆的に凝集しにくく、このことがそれらをより使用及び取扱いやすくさせる。さらに、生産されたほとんどの融合タンパク質は、より適切な生産方法のため、クラスIIハイドロフォビンを用いて作製されてきた。
【0055】
本発明内において、本発明の粒子に所望の特徴を提供するために、2つ以上の異なるハイドロフォビンを組み合わせることも有用であり得る。1つの粒子において官能基化されたハイドロフォビンと官能基化されていないハイドロフォビンとを組み合わせることも更に可能である。
【0056】
好ましくは、ハイドロフォビンは、単離自然タンパク質である。かかるハイドロフォビンは、天然集合体であるという利点を有し、したがって人工的な内容物を包含しない。野生型ハイドロフォビンに加えて、許容可能である場合、突然変異体は、ハイドロフォビンの界面活性剤様特徴を保持する限りにおいて使用することができる。かかる突然変異体は、或る特定の用途において、自然ハイドロフォビンと比較して、歪み、温度の変化、pH等に対するより良好な耐性、好適なサイズ又は構造、有効な生産に対する適合性、より容易な回収等のようなより良好な性能を示す特徴を提供することができる。
【0057】
活性かつ作動性の酵素間での配列レベルにおいて変異が起こることは一般的に既知である。本発明はまた、HFBI、HFBII、SRHI、SC3の誘導体、したがってHFBI様、HFBII様、SRHI様、SC3様とみなされ得るポリペプチドも包含することを意味し、それらは、記載される特性を有し、それぞれ上述のポリペプチド、したがってHFBI、HFBII、SRHI、SC3に対して、アミノ酸配列レベルで、少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、更に好ましくは少なくとも70%相同であるアミノ酸配列を含む。更に好ましくは、上述のポリペプチドに対して、アミノ酸配列レベルで、少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%相同であるアミノ酸配列を含むポリペプチドが包含される。
【0058】
野生型ハイドロフォビンのほかに、キメラ融合タンパク質は、ハイドロフォビンの特徴、すなわち疎水性表面に結合する能力を保持する限りにおいて使用することができる。
【0059】
本発明の粒子の一実施形態によれば、ハイドロフォビンは官能基化されている。官能基化された粒子は、標的化又は制御放出目的に更に使用することができる。ハイドロフォビン、特にクラスIIの成員は、融合タンパク質を生産する可能性に起因して、バイオテクノロジー用途に有用である。融合タンパク質では、ハイドロフォビンをコードする遺伝子が、別のペプチド/所定の酵素に連結される。かかる融合タンパク質は、精製、固定化のような用途で使用されてきた。他の用途はまた、ナノ構造化集合体を構築するため、又は特定の酵素活性を界面へ誘導するためである(Kostiainen他、2006年vi、Kurppa他、2007年vii、Linder他、2002年viii、Linder他、2004年ix)。
【0060】
ハイドロフォビンの官能基化を使用して、粒子及びコーティングの性能を改善することができる。ハイドロフォビンは、野生型ハイドロフォビン上のアミン又はカルボキシルのような反応基を使用することによって、化学的に修飾することができる。マレイミド又はEDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)のような反応物は、かかる反応に一般的に使用される。ハイドロフォビンはまた、かかる反応を[1]で記載されるようにより容易に行わせるように遺伝的に修飾することもできる。ハイドロフォビンの官能基化は融合タンパク質を作製することによっても行うことができる。官能基化は、セルロース繊維、多孔質若しくは非多孔質ケイ素のような外部マトリクスへの粒子の標的化結合、又は制御可能な安定性を有する粒子を作製することを可能にし得る。
【0061】
更に拡張させて、官能基化された親水性側面を伴うHFBを使用して、これらの粒子に官能性表面を提供することができる。これは、標的化、循環時間の増大及び他の制御放出方法が必要とされる場合に有用である。このアプローチの実現可能性は、実施例2及び実施例3で実証されている。
【0062】
さらに、本発明の粒子は、例えば粒子の容量又は活性を増大させることが望ましい場合に、官能基又はポリペプチドの高い面積/容積比を付与する。本発明によれば、所望の比活性を伴って官能性を生じさせることも可能である。このことは、特定量の遊離ハイドロフォビンとともに、官能性部分を含む特定量の融合ポリペプチドを用いることによって達成することができる。
【0063】
本発明の好ましい実施形態では、上記活性作用物質は薬学的作用物質である。より好ましくは、上記薬学的作用物質は、疎水性化合物である。本発明による粒子は、非常に小さな粒度を提供するという利点を有し、これが薬物の生物学的利用能を増大させる。好ましくは、薬学的作用物質は、小分子化合物である。他の適切な医薬品の例は、遺伝子ベースの医薬又は治療上のペプチドである。
【0064】
粒子は、好ましくは1つの活性作用物質を含む。しかしながら、幾つかの実施形態では、ハイドロフォビンでコーティングされたコアを形成する2つ又は更に多くの活性作用物質を有することが有益である。それぞれ、コア中に、形成される粒子の他の特徴に寄与すると考えられる他の構成成分(例えば、薬学的に許容し得る充填剤)を有することが可能である。
【0065】
本発明の一実施形態によれば、本発明による粒子において、コアは、薬学的に許容し得る充填剤を更に含む。上記充填剤は、活性作用物質とともに粒子のコアへ組み込むことができる。上記充填剤を含むコアは、別個に調製することができ、又はそれらは、本発明の方法で形成することができる。コアは例えば、活性作用物質とともに水混和性溶媒へ溶解させることができ、続いてハイドロフォビンとともに組み合わせた溶液から沈殿させることができる。疎水性活性作用物質の場合、上記充填剤はまた、好ましくは疎水性である。
【0066】
本発明の実施形態によれば、請求項1の粒子及び薬理学的に許容し得る担体、希釈剤又は賦形剤を含む配合物が提供される。
【0067】
配合物としては、経口、直腸、経鼻、局所(経皮、頬及び舌下を含む)、膣又は非経口(皮下、筋内、静脈内、皮内及び硝子体内)投与に適したものが挙げられる。配合物はまた、単位剤形で利便性良く提示することができ、薬学の分野において既知の任意の方法によって調製することができる。活性作用物質を含有する所望の粒子を含む最終生成物は、選択した投与経路に応じて、コロイド懸濁液、錠剤、カプセル、エマルジョン、乾燥粉末、ゲル、エアロゾル又は幾つか他の薬学的配合物の形態であり得る。かかる方法は、本発明の更なる特質を表し、1つ又は複数の付属成分を構成する担体と粒子を結合させる工程を包含する。概して、配合物は、液体担体若しくは微粉砕された固体担体、又はその両方と粒子を、均一かつ緊密に結合させることによって、続いて必要であれば生成物を成形することによって調製される。
【0068】
別の好ましい実施形態では、上記活性作用部質は、食品又は飼料成分である。食品生産物における活性成分及び香料の封入は、食品産業におけるナノ技術の考え得る使用として捉えられる。封入は、活性成分又は香料の生物学的利用能及び安定性を制御することができる。かかる封入は、自己集合化によって生産され得ると想定される。食品のナノスケール構造化はまた、食品テクスチャリングを改善する可能性と捉えられる(Groves、2008年)x。
【0069】
本発明の別の態様は、ハイドロフォビンタンパク質を使用して低溶解度活性作用物質の粒子を調製する方法である。粒子は、ハイドロフォビンの存在下で、水中に疎水性活性作用物質を沈殿させることによって調製される。これは、固体活性作用物質コアの形成を導き、これによりハイドロフォビンでコーティングされる。換言すると、次に、タンパク質は、コア周辺で自己集合化して、コアの凝集を防止する立体保護層を形成する。
【0070】
より具体的には、活性作用物質及びハイドロフォビンを含む粒子を生産するために(上記粒子は、少なくとも1つの寸法が1マイクロメートル未満である)、本発明による方法は、以下の工程:
i.水中で上記ハイドロフォビンを溶解させる工程、
ii.水混和性の有機溶媒中で上記活性作用物質を溶解させる工程、
iii.撹拌しながら、工程i及び工程iiの溶液を合体(混合)する工程、並びに
iv.合体(混合)した溶液から、形成された粒子を収集する工程
を含む。
【0071】
任意の沈殿で見られるように、反応条件は、沈殿する物質に対して最適化されなくてはならない。しかしながら、実験研究により、反応混合物を冷却することが有益であることが示されている。反応が室温で実施される場合、得られる粒子は多くの場合、数マイクロメートルスケールを有する。最も均質でかつ小さなナノ粒子を可能にさせるには、大きな過飽和を達成しなくてはならない。薬剤が水に対するよりも、はるかに高い濃度で溶解する水混和性溶媒中に薬剤を溶解することは、このことには不可欠である。したがって、溶媒の選択は重要であり、2つの相間で大きな濃度差を達成することができるように選択しなくてはならない。本質的な特質は、ハイドロフォビンの存在である。好ましくは、ハイドロフォビンの質量は、活性作用物質の質量の10重量%〜100重量%である。この方法により得られる粒子の最小寸法は1マイクロメートル未満である。
【0072】
好ましくは、上記水混和性有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)又は1,4−ジオキサンから選択される。
【0073】
この方法内では、ハイドロフォビンの少なくとも幾つかが官能基化されているコーティングを導入することが可能である。
【0074】
活性作用物質及びハイドロフォビンを含む粒子を生産する別の方法(上記粒子の少なくとも1つの平均寸法は、1マイクロメートル未満である)は、以下の工程:
a.上記活性作用物質を、ハイドロフォビンを含む水性媒質中で粉砕する工程、
b.形成される粒子を、水性媒質から収集する工程
を含む。
【0075】
同様に、この方法もまた、ハイドロフォビンの少なくとも幾つかが官能基化されている粒子の形成を可能にする。
【0076】
本発明では、疎水性活性作用物質を含むコアのためのコーティング剤としてのハイドロフォビンの使用もまた提供される。好ましくは、上記活性作用物質は、栄養食品又は薬学的作用物質である。
【0077】
概して、本発明者らは今回、薬物の調製のためのハイドロフォビンの使用を開示している。
【0078】
本開示によれば、下記実施例は、本発明の利点として観察される効果を証拠として支持するために提示しているが、特許請求の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0079】
実施例1a:沈殿プロセス:
ベクロメタゾンの沈殿は、以前に公開された方法を変更することによって実施した。ここでは、薬剤は、純水中、或いは界面活性剤であるTween−80の存在下のいずれかで結晶化させた(Wang他、2007年xi、Matteucci他、2006年xii)。34.8mMのジプロピオン酸ベクロメタゾン(BDB、分子量521.1)溶液は、メタノール中にBDPを溶解させることによって調製した。BDP溶液0.5mlを、0重量%〜0.15重量%(0μM〜208.3μM)のHFBIIを伴う純粋な脱イオン水20mlへ注いだ。得られた水溶液は、0.05重量%BDPを有していた。両方の溶液を使用前に、0.2μmのシリンジフィルタで濾過して、できる限り不純物を除去した。得られた液体を、マグネチックスターラを用いて激しく撹拌して、溶液の温度は、沈殿中、氷浴中で又は室温でサンプルを保持することによって制御した。沈殿物は、BDP添加の直後に混濁(turbid)溶液として観察された。
【0080】
透過型電子顕微鏡(TEM):沈殿の20分後に、ナノ粒子分散液(dispersions)20μlを、メッシュサイズが300のホルムバール(formvar)フィルムでコーティングされたカッパー・グリッド上で乾燥させた。
【0081】
粒度に対するHFBII濃度の影響
BDPをHFBIIなしで沈殿させた場合、形成される結晶は、数マイクロメートル長の針状体であった10。粒度は200nm未満に減少して、棒状体様晶癖(habits)の結晶は、HFBIIを安定剤として使用した場合には球状へ変換した(図3)。BDPを用いた沈殿に関するHFBIIの最適濃度を決定した。0.008重量%未満のHFBII濃度では、針状体様結晶が形成され、その上で、丸形ナノ粒子が獲得された。最適濃度を上回って安定化剤濃度を増大させることでは、粒度ははっきりと減少しなかった。ナノ粒子を形成するのに必要とされるHFBの最小量は、BDPの質量の20%未満であった。
【0082】
粒度に対する温度の影響
粒度に対する温度の影響は、室温で及び氷浴中で行われた合成バッチに関して粒度を比較することによって研究した。より高温では、粒度は、低温調製物と比較した場合に200nmから数マイクロメートルへと増大した(図4)。粒子の形態もまた変更した。氷浴中で調製された粒子は球状であったのに対して、室温で調製された粒子は、棒状体様であり、よりバルク結晶化されたBDPに似ていた。合成で使用されるHFBIIの量を更に増大することは、ナノ粒子を生産するのに十分ではなかった。
【0083】
粒度に対するメタノール含有量の影響
メタノールの量もまた、BDPナノ粒子を得る際に重要なパラメータであった。合成溶液中のメタノールの量を倍増させると、より多量のHFBIIであっても、ナノ粒子を得ることができなくなり、結晶は同様に、バルク材料のものと似ていた。少量のメタノールとともに生産された粒子は、図3で示されるナノ粒子とほぼ同じサイズ及び形態を有していた。
【0084】
実施例1b:
高度単分散性のイトラコナゾールナノ粒子の生産
合成は、先の欄と同様に行ったが、但し、使用した薬剤は、イトラコナゾールであった。2:1、1:1及び1:2の質量比のHFBII:イトラコナゾールを試験した。TEMを使用して、粒子のサイズ及び形態を研究した。画像(例えば、図5)により、70nm〜90nmの高度単分散性の薬剤ナノ粒子の生産を達成することができることが示された。HFBII量を増大させるにつれて、単分散性が増大した。粒子は球状であり、良好に分散され、すなわち、粒子の大きな凝集体は、1:2の質量比を用いた場合では観察することができなかった。HFBI及びHFBI−DCBD融合タンパク質を用いた場合、粒子は、HFBIIを用いた場合と類似した形態を有していた。イトラコナゾール粒子は、ベクロメタゾン粒子よりもはるかに均質であった。上記方法は、タンパク質の両親媒性に依存するため、より疎水性の材料を用いると、該方法はより良好に機能すると思われる。
【0085】
実施例2:緑色蛍光タンパク質xiiiによるHFBでコーティングされた薬剤ナノ粒子の標識化
GFP−HFBIで標識化されたナノ粒子の合成は、他のナノ粒子を用いた場合と同じ様式で実行したが、但し、HFBIIの一部をGFP−HFBI融合タンパク質で部分的に置き換えた。2つのタンパク質は、合成に先立って、純粋な脱イオン水中で1:3の比(GFP−HFBI:HFBII)で溶解させた。他の工程はすべて、同じままであった。これにより、緑がかった乱流(turbulent)溶液が得られた。ミクロ粒子のGFP標識化は、GFP−HFBIを、BDPミクロ粒子を含有する溶液へ添加することによって合成後に行った。合成自体は、メタノールから水へのBDPの単純な沈殿であった。図6は、この実験で生産される粒子の蛍光顕微鏡画像を示す。ミクロ粒子は明らかに蛍光性であり、光学顕微鏡でほとんど検出不可能であるナノ粒子は、蛍光モードで検出することができた。これにより、ハイドロフォビン融合タンパク質を活用した官能基化されたナノ粒子の生産のために提示されたアプローチの実現可能性が実証される。
【0086】
実施例3:Auナノ粒子(ACS Nono、4(3) 2010 1750-1758)によるBDP粒子の標識化
メルカプトコハク酸(MSA)でコーティングされたAuナノ粒子は、Kimura法(Kimura, K.; Takashima, S.; Ohshima, H. チオレートで修飾された金ナノ粒子の表面電位推測に対する分子アプローチ(Molecular Approach to the Surface Potential Estimate of Thiolate-Modified Gold Nanoparticles). J. Phys. Chem. B 2002, 29, 7260-7266)によって生産された。MSA−Auナノ粒子による標識化は、BDF−HFBIIナノ粒子の生産後に、0.35mg/mlのMSA−Au粒子溶液10μlを、BDP−HFBII粒子懸濁液20μlへ単に添加することによって実行した。懸濁液を1時間静置した後、TEM用にサンプルを採取した(図7)。粒子は、金ナノ粒子で明らかにコーティングされていた。Au−MSA粒子は、サンプル中の他の場所でも観察することができた。これにより、画像化及び局在化の目的で、金属ナノ粒子でコーティングされたナノ粒子を生産するために提示された方法の実現可能性が実証される。
【0087】
実施例4:セルロースマトリクスへの薬剤ナノ粒子の結合
セルロース結合ドメインとのHFBI、HFBII又はHFBI融合タンパク質(HFBI−DCBD)を、水に溶解させた(0.6mg/ml)。溶液を超音波処理して、氷浴中に入れた。イトラコナゾール溶液は、THFにITRを溶解することによって調製した(12mg/ml、17mM)。溶液を濾過して、できる限り粉塵残渣を除去した。ITR溶液0.25mlを、ハイドロフォビン溶液5mlへ迅速に添加した。得られた液体を、マグネチックスターラを用いて激しく撹拌して、溶液の温度は、氷浴中でサンプルを保持することによって制御した。白色沈殿物は、ITR添加の直後に混濁溶液として観察され、ナノ粒子の形成を示した。溶液を20分間撹拌した。ナノファイバー状のセルロース溶液は、8.4mg/mlの濃度へNHFゲルを希釈することによって調製した。溶液は、使用の直前に超音波処理した。NFC溶液0.71mlをナノ粒子懸濁液へ添加した。このことが、セルロース繊維への粒子の結合を導く(図8aにおけるTEM画像)。
【0088】
セルロース/HFB/ナノ粒子複合材は非常に安定であり、1ヵ月以内では分解を示さなかった(図8b)。BDPナノ粒子でも同じことを行い、同様に安定性の増大を示した。BDPナノ粒子は、24時間以内ですでに溶液中で凝集し、より安定なITRナノ粒子は、5日以内で凝集した。それらはまた、分解を伴わずに、遠心分離、濾過及び乾燥のような物理的処理に付すことができた。これらの処理は全て、一般的にBDPナノ粒子の強力な凝集を引き起こす。これにより、薬剤ナノ粒子の配合物を長持ちさせて、かつ取扱いやすくするためのこのアプローチの実現可能性が実証される。安定性/貯蔵時間の非常に大きな増大は、ナノ粒子の加工処理に関する明確な改善である。
【0089】
HFBIでコーティングされた薬剤ナノ粒子でさえも、NFCに結合させることができた。しかし、ITRナノ粒子のナノファイバーへの結合は、HFBIの代わりにHFBI−DCBDを使用することによって改善させることができる。HFBIでコーティングされた粒子のセルロースへの結合は、セルロースマトリクス内での非特異的な静電相互作用及び立体障害に起因するのに対して、DCBDの場合、相互作用は特異的であり、静電気学に依存しないとされる。したがって、2つのコーティング間の差を観察するために、静電気的変化は、結合中に0.3M NaClを溶液へ添加することによってスクリーニングした。粒子の結合は、この場合、合成の直後でさえ、同等に良好であるようであったが、HFBIサンプル中では幾つか特有の波形(rippled)フィルムが存在しており、これはDVBDサンプル中では観察されなかった(図9、図中のa)及びc)は、それぞれt=0日目及びt=12日目の0.3M NaCl中で調製したITR−HFBI−DCBD−NFCサンプルを示し、またb)及びd)は、それぞれt=0日目及びt=12日目の0.3M NaCl中で調製したITR−HFBI−NFCサンプルを示す。第1のサンプル中の粒子の形態は、同じ状態のままであった(c)が、第2のサンプルでは、セルロース結合ドメインを有さない粒子が凝集し始めていた(d))。HFBI−DCDBでコーティングされた粒子は、依然として未変化(intact)のままであるが、HFBIでコーティングされた粒子は、12日後に目に見えて凝集した(図9)。これにより、粒子コーティングにおいて標準的な官能基化されていないハイドロフォビンに代わって融合タンパク質を使用することによって得ることができる更なる有益性が実証される。
【0090】
実施例5:粉砕プロセス
活性作用物質インドメタシンの媒体粉砕は、水性媒質中で遊星ボールミル(Fritsh Pulverisette 7 Premium line)において実行した。インドメタシン1gを、2重量%HFBIIを伴う純粋な脱イオン水10mlへ添加した。粉砕容器は、ZrO2で作製されており、ZrO2粉砕ビーズ(d=1mm)70gを使用して、薬剤材料を破砕した。粉砕中の過剰温度を最低限に抑えるために、容器は、使用前におよそ10℃へと冷蔵庫中で冷却された。粉砕は、1100rpmで、2分+3分間実施して、粉砕を実行する合間に冷蔵庫中で10分間、粉砕容器を冷却した。これにより、非常に粘性の高い白色泡状物質が得られた。TEMサンプルは、この泡状物質から直接収集した。
【0091】
TEM画像(図6)により、500nm未満の粒度は、上記方法を用いて到達することができることが示された。平均粒度は、HFBII懸濁液中で、破砕の2分後で1μm未満であり(図6(a))、破砕の5分後では500nm未満であった(図6(b))。
【0092】
実施例6.溶解速度に対する影響
粒子が小さければ、溶解速度は常に速くなる。したがって、ITR+HFBナノ粒子からの薬剤放出速度は、元の薬剤粉末由来の速度よりも速いと予測される。NFCへ結合した粒子を用いて行われた試験は、幾つかの薬学的に許容される糖賦形剤とともに凍結乾燥する場合に、この特性が薬剤ナノ粒子が負荷されたセルロースマトリクスの場合であっても保存され得ることを示している(図1)。セルロースは薬剤錠剤の主要成分の1つであるため、より容易にこれらのナノ粒子を薬学的に配合させることができる。例えば、ITR+HFBI−DCBDナノ粒子は、まずセルロースに結合させて、続いて、単純な糖添加物とともに凍結乾燥させることができる。次に、粉末は、ハイドロフォビンでコーティングされたナノ粒子に代わって、純粋なITR粉末で作製された類似の錠剤よりもはるかに速い溶解特徴を有する錠剤へと直接圧縮することができた。
【0093】
純粋なイトラコナゾール及びナノファイバー状のセルロースマトリクスへ負荷されたイトラコナゾールナノ粒子の溶解速度は、図1で可視化される。負荷されたサンプルは、トレハロース(TRE)又はエリスリトール(ERY)とともに凍結乾燥させて、乾燥プロセスにおいてナノ構造を保存した。純粋な薬剤粉末の溶解よりも、セルロースマトリクスの溶解は、相当速い。KC及びNFCは、種々のグレードのナノファイバー状のセルロースを指す。
【引用文献】
【0094】
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xiii Valo H, Laaksonen P, Peltonen L, Linder MB, Hirvonen J, Laaksonen T: Hydrophobin protein directed drug nanoparticle production and functionalization, ACS Nano, 4(3) (2010) 1750-1758.
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤、栄養素、又は他の活性作用物質の投与の分野に関する。本発明は、増強された特徴を有する活性作用物質粒子を含む新たな生成物及び配合物を提供する。本発明は、ナノスケールの上記粒子の生産方法を更に提供する。
【背景技術】
【0002】
難溶性の化合物の生物学的利用能、医薬品及び栄養食品(nutritionals)の標的化された送達及び制御放出が、近年研究されている。
【0003】
特許出願公開公報である特許文献1は、難溶性薬剤物質の薬学的に安定なナノ粒子配合物、かかる配合物の調製プロセス、及びそれらの使用方法に関する。特許文献1は、ナノスケールの平均粒度を有する難溶性薬剤物質、固体又は半固体の分散媒体、及び任意に非表面修飾賦形剤(non-surface modifying excipient)を含む薬学的配合物を開示している。使用される上記分散媒体は、油、脂肪及びグリセリドから選択される。欠点は、脂肪性媒体を用いると、水性マトリクスと媒体との間の相互作用を増大させるために、プロセス中に乳化剤又は加温が必要とされることである。タンパク質は適用されない。
【0004】
別の特許出願公開公報である特許文献2は、標的化された薬剤送達に関する方法及び組成物を開示している。上記組成物は、標的化された細胞の表面上の受容体に特異的に結合するホルモンのような標的化分子、標的化された細胞を死滅させる毒素のような送達対象の薬剤、及びナノ粒子を含み、該ナノ粒子は、該ナノ粒子上又は該ナノ粒子内に送達対象の薬剤を含有し、それと結合した標的化分子を有する。ナノ粒子は、薬剤、又は担体(例えば、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、リポソーム又は界面活性剤のような制御放出材料又は持続放出材料)に連結した薬剤で構成され得る。
【0005】
制御放出用の薬剤送達系の更に別の例は、特許出願公開公報である特許文献3であり、ここでは、多糖で官能基化されたナノ粒子、該ナノ粒子を含む制御放出用の薬剤送達系、及びそれらの調製方法が論じられている。特に、特許文献3のナノ粒子は、生分解性ポリマーのコア、生体適合性ポリマー乳化剤の外側ヒドロゲル層、並びにコア及びヒドロゲル層に物理的に結合した多糖を含み、したがって成長因子のようなタンパク質薬剤の安定性及び制御放出を増強することが可能である。
【0006】
更に別の公開公報である特許文献4は、呼吸器感染症の伝播を処置又は低減するために開発された配合物について記載している。配合物は、ミクロ粒子、ナノ粒子又はナノ粒子の凝集体の形態の薬剤又はワクチン、及び任意に吸入により送達され得る担体を含む。一実施形態では、粒子はナノ粒子であり、投与後にナノ粒子へと分散するミクロン径を有する多孔質ナノ粒子凝集体として投与され得る。上記出願の出願人らによると、ナノ粒子は、どの種類のタンパク質が適しているかは判明してない又は更には推測されていないが、界面活性剤又はタンパク質コーティングでコーティングすることができる。
【0007】
特許出願公開公報である特許文献5は、溶解速度を制御するために、大きな薬剤結晶の形態を少量のハイドロフォビンで修飾することに関する。著者らは、安定なナノ粒子ではなく、準安定な中間生成物を生産したにすぎず、この中間生成物は、実施例に記載される方法の終了時には大きな結晶へと結晶化する。特許文献5は、伝統的な製薬技術及び比較的粗い方法での粉末加工処理に関する。
【0008】
実施例における出発点は、薬剤/HFB溶液を加熱すること、続いてそれを徐々に冷却させることによって過飽和状態を創出して、或る特定の形態へ結晶化させることである。これは、純粋な有機結晶を作製し、かつ医薬品を加工処理するための非常に一般的な方法であり、そこでは時間のスケールは、大まかに言うと数時間から数日である。言及されるサイズ範囲は、タンパク質それ自体から小さな塊(rocks)までのあらゆるものを包含する。実際に開示されるサイズ分布は10μm〜100μmの範囲である。特許文献5のプロセスに関与するナノ技術は存在しない。
【0009】
最適な治療活性に到達するために、薬剤配合物は、十分な負荷(loading)、製造及び貯蔵中の適正な安定性、並びに活性薬学的作用物質に関する身体における許容可能な薬物動態プロファイルをもたらす適切な放出速度を達成する必要がある。今日、開発において薬剤配合物を最適化するために、2つの主要な課題が解決される必要がある。対象とする薬剤送達経路(例えば経口、経肺、経皮又は非経口)に関係なく、これらの問題は、1)新たに開発される活性薬学的作用物質(API)の溶解速度を遅らせる一般的な難溶性、並びに2)最適速度で作用部位において最適な治療上のAPI濃度を達成するための正当で正確な薬剤放出及び薬剤送達プロトコルである。
【0010】
経口制御送達系は、それらの薬剤放出のメカニズムに基づいて、以下の分類へと大きく分けることができる:1.溶解制御放出(a.封入溶解制御、及びb.マトリクス溶解制御)、2.拡散制御放出(a.リザーバデバイス、及びb.マトリクスデバイス)、3.イオン交換樹脂、4.浸透制御放出、及び5.胃保持(gastroretentive)系。賦形剤としてのハイドロフォビンタンパク質は、少なくとも溶解及び拡散のメカニズム、またおそらくは胃保持のメカニズムに対して新たな解決策を提供する。ハイドロフォビンタンパク質の溶解増強及び放出制御は、溶解のための大きな表面積をもたらす粒子の小さなサイズに基づいている。通常、例えばアルコール、グリセロール、PEG/PEO、プロピレングリコールのような薬学的溶媒賦形剤は、配合物中のAPIの溶解度の改善をもたらす。他方で、湿潤剤/崩壊剤のような錠剤化用(tabletting)賦形剤(例えば、デンプン、微結晶性セルロース、架橋カルボキシルメチルセルロースナトリウム等)が多くの場合で使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】加国特許出願公開第2606861号
【特許文献2】米国特許出願公開第2005255152号
【特許文献3】米国特許出願公開第2007053870号
【特許文献4】米国特許出願公開第2008213373号
【特許文献5】国際公開第2010/003811号
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、増強された投与特性、例えば分散性又は溶解度を有する粒子(各粒子が活性作用物質及びハイドロフォビンを含む)を含む生成物の生産方法を提供することである。通常、水性マトリクスに対する疎水性粒子の溶解度は増強されるが、本発明の一態様としては、状況は正反対(疎水性マトリクス中での固体親水性粒子のより良好な適合性)であり得る。
【0013】
新規薬学的賦形剤としてのハイドロフォビンタンパク質は、ミクロ粒子及び/又はナノ粒子のコア中に活性作用物質材料を封入することによって、難溶性並びに正確な薬剤放出及び薬剤送達プロトコルの問題に対して、適合した(tailored)解決法を提供する。
【0014】
本発明者らは驚くべきことに、少なくとも1つの活性作用物質を含むコア(そのコアは、ハイドロフォビンで少なくとも部分的にコーティングされている)で構成される本発明による粒子を用いると、上述の目的を達成することができることを見出した。本発明による粒子を含む生成物は、請求項1に記載される事項を特徴とする。
【0015】
本発明の別の目的は、活性作用物質を含む粒子であって、該粒子が標的化され得るか、又は上記活性作用物質が上記粒子から制御可能に放出され得るという機能又は特徴を有する、活性作用物質を含む粒子を提供することである。本発明者らは、活性作用物質のためのコーティングとして使用されるハイドロフォビンの官能基化が、移動度、取込み、動物(ヒトを含む)における薬剤又は活性成分の標的化又はモニタリング、代謝を制御する可能性をもたらすことを見出した。さらに、ハイドロフォビンに連結される官能性部分は、薬剤、食品又は化粧品の加工処理に有益であるマトリクスへ粒子を結合させるためのアンカーとして役立ち得る。かかる標的化のための他の使用は、他の活性配合物の設計における、例えば天然産物、制御物質又は化学試薬の投薬におけるものである。
【0016】
別の好ましい実施の形態では、上記粒子は、少なくとも1つの疎水性活性作用物質を含むコアで構成されており、上記コアは、ハイドロフォビン部分及び官能性部分の両方を有する融合タンパク質で少なくとも部分的に覆われている。上記利益をもたらす粒子は、請求項7に記載される事項を特徴とする。
【0017】
本発明の別の目的は、大きな面積対容積比を有する粒子の生産方法を提供することである。さらに、非常に小さな粒子として疎水性活性作用物質を沈殿させる方法は、別の目的である。好ましくは、粒子の生成物は、できる限り均質なバルク、すなわちサイズ及び形状の分布ができる限り狭い単分散粒子を表す。更に別の目的は、層(連続的な又は部分的な)で疎水性活性作用物質のコアをコーティングする方法であり、これは、物理的/化学的/生物学的な歪み(strain)に対する保護をもたらす。本発明の方法は、請求項18及び請求項19に記載されている。
【0018】
本発明の方法は、請求項22において特徴付けられているように、薬剤投与、制御放出用途及び薬剤標的化に使用可能な粒子の配合物をもたらす。
【0019】
更に別の目的は、食品、飼料、薬学的に活性な作用物質、天然産物、及び他の活性作用物質の投与に関する改善された粒子を提供することである。この目的は、請求項23に記載されるように、活性作用物質のコア用のコーティングとしてのハイドロフォビンの使用によって達成される。
【0020】
以下において、本発明は、詳細な説明により、また幾つかの実際の例を参照してより詳しく説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例8に記載される、純粋なイトラコナゾール(ITR)及びナノ原繊維(nanofibrillar)セルロースマトリクスへ負荷されたイトラコナゾールナノ粒子の溶解速度を示す図である。負荷されたサンプルを、乾燥プロセスでナノ構造を保存するために、トレハロース(TRE)又はエリスリトール(ERY)とともに凍結乾燥させた。KC及びNFCは、ナノ原繊維セルロースの種々の等級を指す。四角はITR粉末を、丸はITR+HFBI−DCBD+KC+TRE/凍結乾燥を、三角はITR+HFBI−DCBD+NFC+ERY/凍結乾燥を示す。
【図2】HFBIIの構造を明らかにする図である。結合に関与する疎水性アミノ酸残基は、疎水性残基L7、L19、I22、A61及びV57である。参照文献は、Hakanpaa他iによるものである。
【図3】ハイドロフォビンの非存在下で(a)、及びハイドロフォビンの存在下で(b)、沈殿させた薬剤粒子のサイズ及び形状間の比較を示す図である。ベクロメタゾンは脱イオン水から沈殿し、それぞれハイドロフォビンの非存在又は存在に応じて、数マイクロメートル長の針状体(needles)(a)又は本質的に球状の固体のナノスケールの凝集体(b)を生じる。
【図4】形成される粒子に対する沈殿温度の影響を示す図である。氷浴中で(a)及び室温で(b)、実施例1aに従って調製されたBDP−HFBII粒子。ベクロメタゾンは脱イオン水から再度沈殿し、反応温度に応じて、ナノスケールの球状固体の凝集体(a)又は数マイクロメートル長の棒状体(rods)(b)を生じる。
【図5】実施例1bで生産される高度に単分散性かつ球状の粒子を示すHFBIIにより安定化されたイトラコナゾール粒子のTEM画像である。粒子は、平均直径約70nm〜90nmを有する数百nmの粒子の集合体(conglomerates)を形成する傾向を幾らか有するようである。上記集合体は、投与後にナノ粒子へと分散すると予測することができる。
【図6】実施例2で形成される粒子の蛍光顕微鏡画像である。ミクロ粒子は明らかに蛍光性であり、光学顕微鏡でほとんど検出不可能であるナノ粒子は、蛍光モードで検出され得る。これは、ハイドロフォビン融合タンパク質を活用した、官能基化されたナノ粒子の生産に関して提示されるアプローチの実現可能性を実証する。蛍光顕微鏡画像は、GFP−HFBI:HFBII(1:3)でコーティングされたBDPナノ粒子(図6b、スケール20μm)及びミクロ粒子(図6a、スケール100μm)を示す。ナノ粒子は、従来の光学顕微鏡で正確に焦点を合わせるには小さすぎるが、蛍光画像では観察することができる。水中の遊離GFP−HFBIは、水相を淡緑色に染色する。水−BDP界面は、より高濃度のタンパク質を有し、したがってより鮮やかな緑色である。
【図7】本発明の一実施形態、すなわち、画像化及び局在化の目的のための金属ナノ粒子でコーティングされたナノ粒子の生産を実証する、3nmメルカプトコハク酸(MSA)でコーティングされたAuナノ粒子で修飾されたBDP−HFBII−ナノ粒子を示す図である。画像のコントラストは、薬剤ナノ粒子表面での金ナノ粒子によって増強される。
【図8】セルロースナノファイバーに結合したHFBIIでコーティングされたITRナノ粒子のTEM(スケールバー2μm)画像である。形態は、調製の直後(8a)、及び懸濁液中での1ヵ月の貯蔵後(8b)で同じであった。
【図9】a)0.3M NaCl中で調製されたITR−HFBI−DCBD−NFCサンプル、及びb)0.3M NaCl中で調製されたITR−HFBI−NFCサンプルのTEM画像である。サンプルはともに、懸濁液として12日間貯蔵された。貯蔵後、第1のサンプル中の粒子の形態は依然として同じままであった(c)が、第2のサンプル中では、粒子は凝集し始めていた(d)。
【図10】HFBII懸濁液中での9(a)粉砕(milling)の2分後、及び9(b)粉砕の5分後の粉砕されたインドメタシンナノ粒子のTEM画像を可視化する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
本発明の目的において、「活性作用物質」は本明細書では、動物、植物又は他の生物において化学的活性又は生物学的活性を有する任意の化学的化合物の意味で使用される。活性作用物質は、薬剤又は薬物のような医薬品、診断用作用物質、又は栄養食品、したがって食品又は飼料の成分、化粧品、及び制御物質(例えば、除草剤又は殺虫剤)を含む。本発明の粒子に特に適切な活性作用物質は、それらの環境に対して非常に低い溶解度を有する化合物、例えば水性系における、例えば哺乳動物(好ましくは、ヒト)の代謝における疎水性化合物である。この場合の低い溶解度は通常、1mg/ml未満又は100μg/ml未満である。
【0023】
「ハイドロフォビン」という用語は本明細書では、活性タンパク質内において、極性化合物及び無極性化合物に対する親和性の偏りという特徴を有するポリペプチドを意味する。「ハイドロフォビン」は、これまでのところ、それらが偏在性であると思われる糸状菌(filamentous fungi)中にのみ見出されているタンパク質の一群である。それらは、場合によっては、モノマーとして培地中に見出され、それらが自己集合化して薄い表面層を形成する界面へと移動する分泌タンパク質である。
【0024】
「ポリペプチド」という用語は本明細書では、ペプチド結合により結合した2つ以上のアミノ酸の配列を意味する。この定義によれば、タンパク質は全てポリペプチドである。ポリペプチドという用語は本明細書では、ペプチド及び/又はポリペプチド及び/又はタンパク質を意味するのに使用される。
【0025】
「担体」は本明細書では、ハイドロフォビンに連結された官能性部分が結合することができるマトリクスを意味する。好ましくは、上記ハイドロフォビンに連結された官能性部分を用いて担体に結合したハイドロフォビン誘導体でコーティングされた活性作用物質のコアによって形成される複合体は、上記粒子の加工処理及び貯蔵を容易とする特徴を、上記複合体のバルクに付与する。担体は、単糖(グルコース、マンノース)、二糖(例えば、ラクトース)、オリゴ糖、多糖(例えば、デンプン、セルロース)又はそれらの誘導体を含む群から選択され得る。
【0026】
「薬学的に許容し得る担体又は補助剤」という用語は、本発明の粒子と一緒に配合物として患者に投与されてもよく、かつそれらの薬理活性を破壊せず、治療上の量の活性作用物質を送達するのに十分な用量で投与される場合に無毒性である担体又は補助剤を指す。概して、配合物は、活性成分を液体担体又は微粉砕固体担体又はその両方と均一にかつ緊密に結合させること、及び続いて必要に応じて生成物を成形することによって調製される。
【0027】
「薬学的に許容し得る充填剤」という用語は、本発明の活性作用物質と一緒に粒子のコアに組み込まれ得る充填剤を指す。好適には、それは、加工処理、生物学的利用能、持続放出又は制御放出を改善することによって、活性作用物質の薬理学的特性に寄与する。薬学的に許容し得る充填剤は、薬務において充填剤として使用されるかかるバルク物質を意味する。したがってそれは、主としていかなる健康リスクをも有さず、この機能に適した物理特性を有する。許容し得る充填剤及びそれらの特性のリストは、種々のタイプの製薬出版物、例えばHandbook of Pharmaceutical Excipients(これは米国薬学会(American Pharmaceutical Association)によって出版されている)に見出すことができる。
【0028】
本明細書中で「粒子」は、少なくともコア及び少なくとも部分的に該コアを覆っているコーティングを含む固体沈殿物を指す。本明細書では、「上記活性作用物質を含むコア」は、任意の形状であり得る。本発明の沈殿方法に従って生産される場合、コアは、最低限に抑えられた表面積に向かう傾向を有し、したがって実質的に球状又は球状様、例えば卵形状の粒子が典型的である。かかる形態はまた、粒子の更なる加工処理及び配合の観点からも好ましい。しかしながら、粉砕方法は、より角のある(angular)形状を生産する。好ましくは、上記コアは、少なくとも部分的に結晶性の固体として活性作用物質を含むが、非晶質固体もまた存在し得る。
【0029】
本発明の一実施形態による粒子を含む生成物は、球状粒子のバルクとして記載され得る。上記粒子は、少なくとも1つの活性作用物質(好ましく疎水性である)を含むコアを有する。コアは、ハイドロフォビンタンパク質でコーティングされ、それらの疎水性残基はコアに向かい、親水性の本体はコアから離れて親水性環境又はマトリクスへ向かう。好適な実施形態では、粒子は球状であり、ハイドロフォビンで連続的にコーティングされる。ハイドロフォビンが互いに緊密に隣接している場合、それらは、コア周辺でコーティング層を形成して、好ましくはコアを封止して、粒子に関して均一な表面を形成する。任意に第2の層が、ハイドロフォビンに結合した官能性部分により形成され得る。また、上記第2の層は、不連続又は均一であり得る。
【0030】
本明細書では、「粒子の少なくとも1つの寸法」は、最小値を有する粒子のサイズ又は容積を規定するのに使用される尺度(measure)を意味する。換言すると、3次元モデルが本発明の粒子で構築される場合、上記最小寸法は、それに沿う粒子の尺度が最小である軸である。立方体粒子の場合、それは各辺の尺度である。直平行六面体に関して、それは、最も短い辺の尺度である。完全な球体の特殊な場合では、それは直径であり、それは同時に球体を通る最大直線距離であり、また全ての軸に沿った最小寸法である。棒状体又は円柱体に関して、それは長さ/高さ及び直径のより小さいものである。円錐体に関しては、それは長さ/高さ、又は直径の最大値である。概して、「粒子の最小寸法」は、デカルト座標中の3次元軸それぞれに対する最大幅に従って投影される3つのベクトルから選ばれ、上記ベクトルは、2つの他のベクトル両方の長さよりも小さい1次元長さを有する。
【0031】
薬学的配合物に関して、粒度の意味では、平均粒子寸法が観察されることが理解される。
【0032】
好ましくは、粒子は、非常に狭いサイズ及び/又は形状の分布を表す。幾つかの実施形態では、本発明の方法により得られる粒子は、高い単分散性を示す。
【0033】
本明細書では「ナノ粒子」は、ナノスケールの少なくとも1つの寸法を有する粒子を指す。ナノ粒子は任意の形状を有することができ、その少なくとも直径、長さ、辺、高さ、広さ、幅等、好ましくは2つの、又は最も好ましくは全ての寸法が、0.5マイクロメートル未満である。ナノスケールの粒子、したがって本発明の実施形態によるナノ粒子は、1マイクロメートル未満の少なくとも1つの平均粒子寸法を有する。好ましくは、上記粒子の全ての平均粒子寸法が、1マイクロメートル未満である。
【0034】
「官能基化」又は「官能基化された」は、タグ、官能性残基、又は官能性を有するアミノ酸(複数も可)の残基若しくは断片又は若しくは全配列、又は更にそれらの組合せの付加の実施を指す。官能性の例としては、化学結合を形成する能力、タグ、マーカー、ペプチド、リガンド又はペプチドを結合する能力が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
「融合ポリペプチド又は融合タンパク質」は、組換えDNA技法により組み合わせられた少なくとも2つのポリペプチド部分を含有するポリペプチドを表す。また、融合構築物は好ましくは、所定のポリペプチドと、接着ポリペプチドとの間にリンカーを含む。
【0036】
「所定のポリペプチド」又は「予め選択されたポリペプチド」は、所望の特性を有するか、又は所定の任意の1つ又は複数の分子を結合させることができる任意のポリペプチドを表す。ポリペプチドは、抗原、抗体、酵素、構造タンパク質、接着タンパク質又は調節タンパク質を含む群から選択されるが、これらに限定されない。
【0037】
本明細書では、「水性媒質」は、ハイドロフォビンが粉砕方法で混合されるマトリクスを規定するのに使用される。
【0038】
一実施形態では、粒子(各粒子が活性作用物質及びハイドロフォビンを含む)を含む生成物が提供され、ここで上記粒子は少なくとも1つの活性作用物質を含むコアを有し、該コアはハイドロフォビンで少なくとも部分的にコーティングされている。本発明者らは、かかる粒子が、粒子沈殿物のサイズ及び形態を変化させる可能性をもたらすことを見出した。1つの好適な影響は、溶解度が通常乏しい環境中での上記活性作用物質の溶解速度を増大させることである。ハイドロフォビンコーティングはまた、上記粒子の加工処理及び使用中に外部の歪みに対する保護をもたらす。ハイドロフォビンコーティングはまた、官能基化するという選択肢をもたらし、選択された官能基は、活性作用物質の標的化、結合又は制御放出に寄与する。
【0039】
本発明の一実施形態による粒子は、10マイクロメートル未満の平均直径を有する。粒子は、1マイクロメートル未満、好ましくは0.5マイクロメートル未満、より好ましくは0.2マイクロメートル未満の平均粒径を有するという、更に良好な特徴を有する。好ましくは、上記粒子は、本質的に球状、卵形又は棒状体様の形状である。
【0040】
本発明の一実施形態による粒子は、1マイクロメートル未満の最小寸法を有する。粒度が小さいほど、粒子の全体的な表面積、したがって面積/容積比は大きい。したがって、多くの用途において、粒度の低減は、粒子及び場合によっては粒子が使用される配合物の或る特定の特徴にとって有益である。その目的で、粒子の最小寸法が、0.5マイクロメートル未満、好ましくは0.2マイクロメートル未満、更に好ましくは0.1マイクロメートル未満であることが好ましい。一例は、活性作用物質が、疎水性の薬学的に活性な作用物質である場合であり、ここではナノ粒子が、経口経路、経肺経路、経皮経路又は非経口経路による薬剤送達において、より高い生物学的利用能を可能にする。小さな粒度はまた、溶解速度の増強をもたらす。
【0041】
ハイドロフォビンは、糸状菌に特有でありかつ糸状菌において偏在性である小さな細胞外タンパク質であり、これは真菌と環境との間での相互作用を媒介する。ハイドロフォビンは、場合によっては、モノマーとして培地中に見出され、それらが自己集合化して薄い表面層を形成する界面へと移動する分泌タンパク質であるが、それらは菌糸に結合した状態でも見出される。
【0042】
ハイドロフォビンはまた、それらの高い界面活性を特徴とする。シゾフィラム・コムーネ(Schizophyllum commune)(スエヒロダケ)由来のハイドロフォビンSC3により形成される層は広範囲にわたって特性化されており、表面疎水性を変化させるという特性を有し、その結果、それは親水性表面を疎水性にし、また疎水性表面を親水性にする。SC3層は、電子顕微鏡によって容易に可視化されて、その堅固にパッケージングされた棒状体(rodlet)パターンを特徴とし、したがって多くの場合、棒状体層と呼ばれる。SC3層は非常に安定であり、純粋なトリフルオロ酢酸又はギ酸のような非常に激しい化学物質のみが、それを溶解させることができる。例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の溶液中での加熱は、層に影響を及ぼさない。大きなコンホメーション変化は、集合化及び吸着と関連付けられ得ることも示されている。
【0043】
水治療法プロットの比較は、ハイドロフォビンを2つのクラス、すなわちI及びIIへ分割することの基礎を成す。2つのクラスは、幾つかの一般的な特性を共有するが、それらの集合体(assemblages)の溶解度のような幾つかの態様で有意に異なるようである。クラスI集合体は高度に不溶性であるのに対して、クラスIIハイドロフォビン集合体及び吸着表面層は、時にはより容易に、例えば60%エタノール、SDSによって、又は圧力を印加することによって解離するようである。棒状体タイプ表面構造は、これまでクラスIIハイドロフォビンでは報告されておらず、多くの点で、クラスIIハイドロフォビンは、挙動においてあまり極端ではないようである。クラス間の区別は、一次構造の比較によって行うことができ、特性の差の説明は、アミノ酸レベルでは行うことはできない。
【0044】
ハイドロフォビンにおいて、最も顕著な特質は、ハイドロフォビンファミリーにおいて保存される唯一の一次構造を形成する8つのCys残基のパターンであるが、このパターンが保存されていないハイドロフォビンについてもまた記載されている。ハイドロフォビンはまた、モジュール組成が異なっていてもよく、その結果、ハイドロフォビンは、種々の回数の反復ハイドロフォビンユニットを含有する。
【0045】
別の状況では、ハイドロフォビンは、一次構造においてかなりの変動を示す。HFBI及びHFBIIは、真菌トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)由来の2つのクラスIIハイドロフォビンであり、配列同一性66%と非常に類似している。クラスI及びIIハイドロロフォビンに関する公開データは、主にそれらの凝集体の構造及び溶解度を包含すると思われる、クラス間の機能的区分が存在することを示している。クラスIIハイドロフォビンの表面結合の系統的な研究は以前には報告されていないが、クラスIハイドロフォビンSC3の吸着は、はるかに詳細に特性化されている。SC3の場合、棒状体層の形成は、結合の必須構成成分であるようである。トリコデルマ・リーゼイ(T. reesei)HFBIに関する遺伝子の単離は、(Nakari Setala, Aro他。1996年ii)に記載されており、HFBIIに関しては、(Nakari-Setala, Aro他。1997年iii)に記載されている。トリコデルマ・ハルジアナム(T. harzianum)のsrhl遺伝子の単離は、以前に記載されている。
【0046】
フィンランド国特許第116198号では、発明者らは、大規模な表面への融合タンパク質の固定化を開示した。融合タンパク質は、予め選択されるポリペプチドへ融合した接着ポリペプチドを含んでいた。上記方法は、融合タンパク質の接着ポリペプチド部分の自発的な固定化特性を利用した。一実施形態では、接着ポリペプチドは、真菌ハイドロフォビンであった。
【0047】
本発明の粒子において、ハイドロフォビンは、親水性マトリクスに対する、通常疎水性化合物の水溶液に対する溶解度が増強されるべきである場合に、特に有益である。溶解速度の増強及び放出の最適化は、活性作用物質及びハイドロフォビン(hydrobhopin)タンパク質の特性及び相互作用に、また小さな微粒子配合物の特性に基づく(Rabinow、2004年iv、Date and Patrivale、2004年v)。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、コアが疎水性である場合、ハイドロフォビンによるコーティングは、水性媒質に対する溶解度を増大する。実験項に示されるように、ハイドロフォビンの存在下では、疎水性薬物は、かなり大きなニードル針状体に代わって本質的に球状のナノスケール粒子の凝集体として沈殿し、この凝集体は、製薬プロセスにおいて取り扱うのが困難である。
【0049】
ハイドロフォビンの親水体に包埋された小さな疎水性パッチは、親水性材料と疎水性材料との間の界面で、ハイドロフォビンを自己集合化させる。例としてクラス2ハイドロフォビン、すなわちHFBIIの構造を図2に提示する。ハイドロフォビンは、疎水性パッチが疎水性材料に結合する強い傾向を示す。
【0050】
結晶サイズの低減の幾らか類似した効果が、界面活性剤、例えばTween 20を用いた場合に観察され得るが、疎水性粒子への界面活性剤の結合はより可逆的であり、適切な条件で剥離(debonding)が起こる。ハイドロフォビンを用いた場合、コア上に形成されるコーティングは、より層様であり、対応する界面活性剤よりも、包み込まれた活性作用物質に対して安定かつ保護的である。界面活性剤分子と異なり、ハイドロフォビンの層は基板上に転写し、強く結合することができる。ハイドロフォビンは、活性作用物質コアの周辺の立体的な保護層を形成する。ハイドロフォビンを特に興味深いものにさせる別の特性は、界面単層が形成する場合のタンパク質間の強力な側方相互作用である。これは、懸濁液安定性を増大させる。ハイドロフォビンは、自然に存在する野生型タンパク質、又は化学的若しくは遺伝的に修飾及び/若しくは官能基化されたタンパク質のいずれかであり得る。
【0051】
本発明の粒子に適したハイドロフォビンは、好ましくはクラスIハイドロフォビン及びクラスIIハイドロフォビンから選択される。既知のハイドロフォビンとしては、HFBI、HFBII、SRHI及びSC3又はそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。ハイドロフォビンを選択する場合、クラスクラスI集合体とクラスII集合体との間の差を、所望の特性を達成するために利用することができる。クラスIが高度に不溶性であり、クラスIIハイドロフォビン集合体及び吸着表面層は、時にはより容易に溶解するようである。棒状体タイプ表面構造は、これまでクラスIIハイドロフォビンでは報告されておらず、多くの点で、クラスIIハイドロフォビンは、挙動においてあまり極端ではないようである。理論により拘束されないが、クラスIIハイドロフォビンは、高い不溶性がより一層障害となり得る場合に本発明の用途により適切であるようである。
【0052】
ハイドロフォビンは、コーティング化合物として特殊な利点を提供する。融合タンパク質としてハイドロフォビンを生産する可能性は、ナノ粒子の表面を含む表面の官能基化に使用され得る。例えば、抗体及びハイドロフォビンを有する融合タンパク質を生産することができる。かかる融合タンパク質を使用して、ハイドロフォビンでコーティングされた粒子の表面上に抗体官能性を配置させることができる。したがって、融合タンパク質の官能性を使用して、粒子の表面へ他の構成成分を結合させることによって、ナノ粒子を、特定の位置へ標的化することができるか、又はより良好に若しくは具体的に制御される安定性のために粒子を表面官能基化することができる。
【0053】
かかる官能基化の一例は、活性な薬学的作用物質コアをコーティングするために、セルロース結合ドメインを有するハイドロフォビンの融合タンパク質を適用させることである。それらの得られる粒子をナノファイバー状のセルロース溶液と混合すると、それは、セルロース繊維への粒子の結合を導く(図8aにおけるTEM画像)。上記粒子は、予期せぬことに貯蔵中に耐久性及び安定性があると証明された。したがって、このアプローチの実現可能性は、薬剤ナノ粒子の配合物を長持ちさせて、かつ取扱いやすくさせることに関して実証された。とりわけ安定性/貯蔵時間の増大は、ナノ粒子の加工処理に関して明確な改善である。
【0054】
クラスIIのハイドロフォビンは、記載される本発明に特に良好に適合される可能性が高い。クラスIIハイドロフォビンは、クラスI成員よりも生産しやすい。さらに、クラスIIは、クラスIよりも不可逆的に凝集しにくく、このことがそれらをより使用及び取扱いやすくさせる。さらに、生産されたほとんどの融合タンパク質は、より適切な生産方法のため、クラスIIハイドロフォビンを用いて作製されてきた。
【0055】
本発明内において、本発明の粒子に所望の特徴を提供するために、2つ以上の異なるハイドロフォビンを組み合わせることも有用であり得る。1つの粒子において官能基化されたハイドロフォビンと官能基化されていないハイドロフォビンとを組み合わせることも更に可能である。
【0056】
好ましくは、ハイドロフォビンは、単離自然タンパク質である。かかるハイドロフォビンは、天然集合体であるという利点を有し、したがって人工的な内容物を包含しない。野生型ハイドロフォビンに加えて、許容可能である場合、突然変異体は、ハイドロフォビンの界面活性剤様特徴を保持する限りにおいて使用することができる。かかる突然変異体は、或る特定の用途において、自然ハイドロフォビンと比較して、歪み、温度の変化、pH等に対するより良好な耐性、好適なサイズ又は構造、有効な生産に対する適合性、より容易な回収等のようなより良好な性能を示す特徴を提供することができる。
【0057】
活性かつ作動性の酵素間での配列レベルにおいて変異が起こることは一般的に既知である。本発明はまた、HFBI、HFBII、SRHI、SC3の誘導体、したがってHFBI様、HFBII様、SRHI様、SC3様とみなされ得るポリペプチドも包含することを意味し、それらは、記載される特性を有し、それぞれ上述のポリペプチド、したがってHFBI、HFBII、SRHI、SC3に対して、アミノ酸配列レベルで、少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、更に好ましくは少なくとも70%相同であるアミノ酸配列を含む。更に好ましくは、上述のポリペプチドに対して、アミノ酸配列レベルで、少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%相同であるアミノ酸配列を含むポリペプチドが包含される。
【0058】
野生型ハイドロフォビンのほかに、キメラ融合タンパク質は、ハイドロフォビンの特徴、すなわち疎水性表面に結合する能力を保持する限りにおいて使用することができる。
【0059】
本発明の粒子の一実施形態によれば、ハイドロフォビンは官能基化されている。官能基化された粒子は、標的化又は制御放出目的に更に使用することができる。ハイドロフォビン、特にクラスIIの成員は、融合タンパク質を生産する可能性に起因して、バイオテクノロジー用途に有用である。融合タンパク質では、ハイドロフォビンをコードする遺伝子が、別のペプチド/所定の酵素に連結される。かかる融合タンパク質は、精製、固定化のような用途で使用されてきた。他の用途はまた、ナノ構造化集合体を構築するため、又は特定の酵素活性を界面へ誘導するためである(Kostiainen他、2006年vi、Kurppa他、2007年vii、Linder他、2002年viii、Linder他、2004年ix)。
【0060】
ハイドロフォビンの官能基化を使用して、粒子及びコーティングの性能を改善することができる。ハイドロフォビンは、野生型ハイドロフォビン上のアミン又はカルボキシルのような反応基を使用することによって、化学的に修飾することができる。マレイミド又はEDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)のような反応物は、かかる反応に一般的に使用される。ハイドロフォビンはまた、かかる反応を[1]で記載されるようにより容易に行わせるように遺伝的に修飾することもできる。ハイドロフォビンの官能基化は融合タンパク質を作製することによっても行うことができる。官能基化は、セルロース繊維、多孔質若しくは非多孔質ケイ素のような外部マトリクスへの粒子の標的化結合、又は制御可能な安定性を有する粒子を作製することを可能にし得る。
【0061】
更に拡張させて、官能基化された親水性側面を伴うHFBを使用して、これらの粒子に官能性表面を提供することができる。これは、標的化、循環時間の増大及び他の制御放出方法が必要とされる場合に有用である。このアプローチの実現可能性は、実施例2及び実施例3で実証されている。
【0062】
さらに、本発明の粒子は、例えば粒子の容量又は活性を増大させることが望ましい場合に、官能基又はポリペプチドの高い面積/容積比を付与する。本発明によれば、所望の比活性を伴って官能性を生じさせることも可能である。このことは、特定量の遊離ハイドロフォビンとともに、官能性部分を含む特定量の融合ポリペプチドを用いることによって達成することができる。
【0063】
本発明の好ましい実施形態では、上記活性作用物質は薬学的作用物質である。より好ましくは、上記薬学的作用物質は、疎水性化合物である。本発明による粒子は、非常に小さな粒度を提供するという利点を有し、これが薬物の生物学的利用能を増大させる。好ましくは、薬学的作用物質は、小分子化合物である。他の適切な医薬品の例は、遺伝子ベースの医薬又は治療上のペプチドである。
【0064】
粒子は、好ましくは1つの活性作用物質を含む。しかしながら、幾つかの実施形態では、ハイドロフォビンでコーティングされたコアを形成する2つ又は更に多くの活性作用物質を有することが有益である。それぞれ、コア中に、形成される粒子の他の特徴に寄与すると考えられる他の構成成分(例えば、薬学的に許容し得る充填剤)を有することが可能である。
【0065】
本発明の一実施形態によれば、本発明による粒子において、コアは、薬学的に許容し得る充填剤を更に含む。上記充填剤は、活性作用物質とともに粒子のコアへ組み込むことができる。上記充填剤を含むコアは、別個に調製することができ、又はそれらは、本発明の方法で形成することができる。コアは例えば、活性作用物質とともに水混和性溶媒へ溶解させることができ、続いてハイドロフォビンとともに組み合わせた溶液から沈殿させることができる。疎水性活性作用物質の場合、上記充填剤はまた、好ましくは疎水性である。
【0066】
本発明の実施形態によれば、請求項1の粒子及び薬理学的に許容し得る担体、希釈剤又は賦形剤を含む配合物が提供される。
【0067】
配合物としては、経口、直腸、経鼻、局所(経皮、頬及び舌下を含む)、膣又は非経口(皮下、筋内、静脈内、皮内及び硝子体内)投与に適したものが挙げられる。配合物はまた、単位剤形で利便性良く提示することができ、薬学の分野において既知の任意の方法によって調製することができる。活性作用物質を含有する所望の粒子を含む最終生成物は、選択した投与経路に応じて、コロイド懸濁液、錠剤、カプセル、エマルジョン、乾燥粉末、ゲル、エアロゾル又は幾つか他の薬学的配合物の形態であり得る。かかる方法は、本発明の更なる特質を表し、1つ又は複数の付属成分を構成する担体と粒子を結合させる工程を包含する。概して、配合物は、液体担体若しくは微粉砕された固体担体、又はその両方と粒子を、均一かつ緊密に結合させることによって、続いて必要であれば生成物を成形することによって調製される。
【0068】
別の好ましい実施形態では、上記活性作用部質は、食品又は飼料成分である。食品生産物における活性成分及び香料の封入は、食品産業におけるナノ技術の考え得る使用として捉えられる。封入は、活性成分又は香料の生物学的利用能及び安定性を制御することができる。かかる封入は、自己集合化によって生産され得ると想定される。食品のナノスケール構造化はまた、食品テクスチャリングを改善する可能性と捉えられる(Groves、2008年)x。
【0069】
本発明の別の態様は、ハイドロフォビンタンパク質を使用して低溶解度活性作用物質の粒子を調製する方法である。粒子は、ハイドロフォビンの存在下で、水中に疎水性活性作用物質を沈殿させることによって調製される。これは、固体活性作用物質コアの形成を導き、これによりハイドロフォビンでコーティングされる。換言すると、次に、タンパク質は、コア周辺で自己集合化して、コアの凝集を防止する立体保護層を形成する。
【0070】
より具体的には、活性作用物質及びハイドロフォビンを含む粒子を生産するために(上記粒子は、少なくとも1つの寸法が1マイクロメートル未満である)、本発明による方法は、以下の工程:
i.水中で上記ハイドロフォビンを溶解させる工程、
ii.水混和性の有機溶媒中で上記活性作用物質を溶解させる工程、
iii.撹拌しながら、工程i及び工程iiの溶液を合体(混合)する工程、並びに
iv.合体(混合)した溶液から、形成された粒子を収集する工程
を含む。
【0071】
任意の沈殿で見られるように、反応条件は、沈殿する物質に対して最適化されなくてはならない。しかしながら、実験研究により、反応混合物を冷却することが有益であることが示されている。反応が室温で実施される場合、得られる粒子は多くの場合、数マイクロメートルスケールを有する。最も均質でかつ小さなナノ粒子を可能にさせるには、大きな過飽和を達成しなくてはならない。薬剤が水に対するよりも、はるかに高い濃度で溶解する水混和性溶媒中に薬剤を溶解することは、このことには不可欠である。したがって、溶媒の選択は重要であり、2つの相間で大きな濃度差を達成することができるように選択しなくてはならない。本質的な特質は、ハイドロフォビンの存在である。好ましくは、ハイドロフォビンの質量は、活性作用物質の質量の10重量%〜100重量%である。この方法により得られる粒子の最小寸法は1マイクロメートル未満である。
【0072】
好ましくは、上記水混和性有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)又は1,4−ジオキサンから選択される。
【0073】
この方法内では、ハイドロフォビンの少なくとも幾つかが官能基化されているコーティングを導入することが可能である。
【0074】
活性作用物質及びハイドロフォビンを含む粒子を生産する別の方法(上記粒子の少なくとも1つの平均寸法は、1マイクロメートル未満である)は、以下の工程:
a.上記活性作用物質を、ハイドロフォビンを含む水性媒質中で粉砕する工程、
b.形成される粒子を、水性媒質から収集する工程
を含む。
【0075】
同様に、この方法もまた、ハイドロフォビンの少なくとも幾つかが官能基化されている粒子の形成を可能にする。
【0076】
本発明では、疎水性活性作用物質を含むコアのためのコーティング剤としてのハイドロフォビンの使用もまた提供される。好ましくは、上記活性作用物質は、栄養食品又は薬学的作用物質である。
【0077】
概して、本発明者らは今回、薬物の調製のためのハイドロフォビンの使用を開示している。
【0078】
本開示によれば、下記実施例は、本発明の利点として観察される効果を証拠として支持するために提示しているが、特許請求の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0079】
実施例1a:沈殿プロセス:
ベクロメタゾンの沈殿は、以前に公開された方法を変更することによって実施した。ここでは、薬剤は、純水中、或いは界面活性剤であるTween−80の存在下のいずれかで結晶化させた(Wang他、2007年xi、Matteucci他、2006年xii)。34.8mMのジプロピオン酸ベクロメタゾン(BDB、分子量521.1)溶液は、メタノール中にBDPを溶解させることによって調製した。BDP溶液0.5mlを、0重量%〜0.15重量%(0μM〜208.3μM)のHFBIIを伴う純粋な脱イオン水20mlへ注いだ。得られた水溶液は、0.05重量%BDPを有していた。両方の溶液を使用前に、0.2μmのシリンジフィルタで濾過して、できる限り不純物を除去した。得られた液体を、マグネチックスターラを用いて激しく撹拌して、溶液の温度は、沈殿中、氷浴中で又は室温でサンプルを保持することによって制御した。沈殿物は、BDP添加の直後に混濁(turbid)溶液として観察された。
【0080】
透過型電子顕微鏡(TEM):沈殿の20分後に、ナノ粒子分散液(dispersions)20μlを、メッシュサイズが300のホルムバール(formvar)フィルムでコーティングされたカッパー・グリッド上で乾燥させた。
【0081】
粒度に対するHFBII濃度の影響
BDPをHFBIIなしで沈殿させた場合、形成される結晶は、数マイクロメートル長の針状体であった10。粒度は200nm未満に減少して、棒状体様晶癖(habits)の結晶は、HFBIIを安定剤として使用した場合には球状へ変換した(図3)。BDPを用いた沈殿に関するHFBIIの最適濃度を決定した。0.008重量%未満のHFBII濃度では、針状体様結晶が形成され、その上で、丸形ナノ粒子が獲得された。最適濃度を上回って安定化剤濃度を増大させることでは、粒度ははっきりと減少しなかった。ナノ粒子を形成するのに必要とされるHFBの最小量は、BDPの質量の20%未満であった。
【0082】
粒度に対する温度の影響
粒度に対する温度の影響は、室温で及び氷浴中で行われた合成バッチに関して粒度を比較することによって研究した。より高温では、粒度は、低温調製物と比較した場合に200nmから数マイクロメートルへと増大した(図4)。粒子の形態もまた変更した。氷浴中で調製された粒子は球状であったのに対して、室温で調製された粒子は、棒状体様であり、よりバルク結晶化されたBDPに似ていた。合成で使用されるHFBIIの量を更に増大することは、ナノ粒子を生産するのに十分ではなかった。
【0083】
粒度に対するメタノール含有量の影響
メタノールの量もまた、BDPナノ粒子を得る際に重要なパラメータであった。合成溶液中のメタノールの量を倍増させると、より多量のHFBIIであっても、ナノ粒子を得ることができなくなり、結晶は同様に、バルク材料のものと似ていた。少量のメタノールとともに生産された粒子は、図3で示されるナノ粒子とほぼ同じサイズ及び形態を有していた。
【0084】
実施例1b:
高度単分散性のイトラコナゾールナノ粒子の生産
合成は、先の欄と同様に行ったが、但し、使用した薬剤は、イトラコナゾールであった。2:1、1:1及び1:2の質量比のHFBII:イトラコナゾールを試験した。TEMを使用して、粒子のサイズ及び形態を研究した。画像(例えば、図5)により、70nm〜90nmの高度単分散性の薬剤ナノ粒子の生産を達成することができることが示された。HFBII量を増大させるにつれて、単分散性が増大した。粒子は球状であり、良好に分散され、すなわち、粒子の大きな凝集体は、1:2の質量比を用いた場合では観察することができなかった。HFBI及びHFBI−DCBD融合タンパク質を用いた場合、粒子は、HFBIIを用いた場合と類似した形態を有していた。イトラコナゾール粒子は、ベクロメタゾン粒子よりもはるかに均質であった。上記方法は、タンパク質の両親媒性に依存するため、より疎水性の材料を用いると、該方法はより良好に機能すると思われる。
【0085】
実施例2:緑色蛍光タンパク質xiiiによるHFBでコーティングされた薬剤ナノ粒子の標識化
GFP−HFBIで標識化されたナノ粒子の合成は、他のナノ粒子を用いた場合と同じ様式で実行したが、但し、HFBIIの一部をGFP−HFBI融合タンパク質で部分的に置き換えた。2つのタンパク質は、合成に先立って、純粋な脱イオン水中で1:3の比(GFP−HFBI:HFBII)で溶解させた。他の工程はすべて、同じままであった。これにより、緑がかった乱流(turbulent)溶液が得られた。ミクロ粒子のGFP標識化は、GFP−HFBIを、BDPミクロ粒子を含有する溶液へ添加することによって合成後に行った。合成自体は、メタノールから水へのBDPの単純な沈殿であった。図6は、この実験で生産される粒子の蛍光顕微鏡画像を示す。ミクロ粒子は明らかに蛍光性であり、光学顕微鏡でほとんど検出不可能であるナノ粒子は、蛍光モードで検出することができた。これにより、ハイドロフォビン融合タンパク質を活用した官能基化されたナノ粒子の生産のために提示されたアプローチの実現可能性が実証される。
【0086】
実施例3:Auナノ粒子(ACS Nono、4(3) 2010 1750-1758)によるBDP粒子の標識化
メルカプトコハク酸(MSA)でコーティングされたAuナノ粒子は、Kimura法(Kimura, K.; Takashima, S.; Ohshima, H. チオレートで修飾された金ナノ粒子の表面電位推測に対する分子アプローチ(Molecular Approach to the Surface Potential Estimate of Thiolate-Modified Gold Nanoparticles). J. Phys. Chem. B 2002, 29, 7260-7266)によって生産された。MSA−Auナノ粒子による標識化は、BDF−HFBIIナノ粒子の生産後に、0.35mg/mlのMSA−Au粒子溶液10μlを、BDP−HFBII粒子懸濁液20μlへ単に添加することによって実行した。懸濁液を1時間静置した後、TEM用にサンプルを採取した(図7)。粒子は、金ナノ粒子で明らかにコーティングされていた。Au−MSA粒子は、サンプル中の他の場所でも観察することができた。これにより、画像化及び局在化の目的で、金属ナノ粒子でコーティングされたナノ粒子を生産するために提示された方法の実現可能性が実証される。
【0087】
実施例4:セルロースマトリクスへの薬剤ナノ粒子の結合
セルロース結合ドメインとのHFBI、HFBII又はHFBI融合タンパク質(HFBI−DCBD)を、水に溶解させた(0.6mg/ml)。溶液を超音波処理して、氷浴中に入れた。イトラコナゾール溶液は、THFにITRを溶解することによって調製した(12mg/ml、17mM)。溶液を濾過して、できる限り粉塵残渣を除去した。ITR溶液0.25mlを、ハイドロフォビン溶液5mlへ迅速に添加した。得られた液体を、マグネチックスターラを用いて激しく撹拌して、溶液の温度は、氷浴中でサンプルを保持することによって制御した。白色沈殿物は、ITR添加の直後に混濁溶液として観察され、ナノ粒子の形成を示した。溶液を20分間撹拌した。ナノファイバー状のセルロース溶液は、8.4mg/mlの濃度へNHFゲルを希釈することによって調製した。溶液は、使用の直前に超音波処理した。NFC溶液0.71mlをナノ粒子懸濁液へ添加した。このことが、セルロース繊維への粒子の結合を導く(図8aにおけるTEM画像)。
【0088】
セルロース/HFB/ナノ粒子複合材は非常に安定であり、1ヵ月以内では分解を示さなかった(図8b)。BDPナノ粒子でも同じことを行い、同様に安定性の増大を示した。BDPナノ粒子は、24時間以内ですでに溶液中で凝集し、より安定なITRナノ粒子は、5日以内で凝集した。それらはまた、分解を伴わずに、遠心分離、濾過及び乾燥のような物理的処理に付すことができた。これらの処理は全て、一般的にBDPナノ粒子の強力な凝集を引き起こす。これにより、薬剤ナノ粒子の配合物を長持ちさせて、かつ取扱いやすくするためのこのアプローチの実現可能性が実証される。安定性/貯蔵時間の非常に大きな増大は、ナノ粒子の加工処理に関する明確な改善である。
【0089】
HFBIでコーティングされた薬剤ナノ粒子でさえも、NFCに結合させることができた。しかし、ITRナノ粒子のナノファイバーへの結合は、HFBIの代わりにHFBI−DCBDを使用することによって改善させることができる。HFBIでコーティングされた粒子のセルロースへの結合は、セルロースマトリクス内での非特異的な静電相互作用及び立体障害に起因するのに対して、DCBDの場合、相互作用は特異的であり、静電気学に依存しないとされる。したがって、2つのコーティング間の差を観察するために、静電気的変化は、結合中に0.3M NaClを溶液へ添加することによってスクリーニングした。粒子の結合は、この場合、合成の直後でさえ、同等に良好であるようであったが、HFBIサンプル中では幾つか特有の波形(rippled)フィルムが存在しており、これはDVBDサンプル中では観察されなかった(図9、図中のa)及びc)は、それぞれt=0日目及びt=12日目の0.3M NaCl中で調製したITR−HFBI−DCBD−NFCサンプルを示し、またb)及びd)は、それぞれt=0日目及びt=12日目の0.3M NaCl中で調製したITR−HFBI−NFCサンプルを示す。第1のサンプル中の粒子の形態は、同じ状態のままであった(c)が、第2のサンプルでは、セルロース結合ドメインを有さない粒子が凝集し始めていた(d))。HFBI−DCDBでコーティングされた粒子は、依然として未変化(intact)のままであるが、HFBIでコーティングされた粒子は、12日後に目に見えて凝集した(図9)。これにより、粒子コーティングにおいて標準的な官能基化されていないハイドロフォビンに代わって融合タンパク質を使用することによって得ることができる更なる有益性が実証される。
【0090】
実施例5:粉砕プロセス
活性作用物質インドメタシンの媒体粉砕は、水性媒質中で遊星ボールミル(Fritsh Pulverisette 7 Premium line)において実行した。インドメタシン1gを、2重量%HFBIIを伴う純粋な脱イオン水10mlへ添加した。粉砕容器は、ZrO2で作製されており、ZrO2粉砕ビーズ(d=1mm)70gを使用して、薬剤材料を破砕した。粉砕中の過剰温度を最低限に抑えるために、容器は、使用前におよそ10℃へと冷蔵庫中で冷却された。粉砕は、1100rpmで、2分+3分間実施して、粉砕を実行する合間に冷蔵庫中で10分間、粉砕容器を冷却した。これにより、非常に粘性の高い白色泡状物質が得られた。TEMサンプルは、この泡状物質から直接収集した。
【0091】
TEM画像(図6)により、500nm未満の粒度は、上記方法を用いて到達することができることが示された。平均粒度は、HFBII懸濁液中で、破砕の2分後で1μm未満であり(図6(a))、破砕の5分後では500nm未満であった(図6(b))。
【0092】
実施例6.溶解速度に対する影響
粒子が小さければ、溶解速度は常に速くなる。したがって、ITR+HFBナノ粒子からの薬剤放出速度は、元の薬剤粉末由来の速度よりも速いと予測される。NFCへ結合した粒子を用いて行われた試験は、幾つかの薬学的に許容される糖賦形剤とともに凍結乾燥する場合に、この特性が薬剤ナノ粒子が負荷されたセルロースマトリクスの場合であっても保存され得ることを示している(図1)。セルロースは薬剤錠剤の主要成分の1つであるため、より容易にこれらのナノ粒子を薬学的に配合させることができる。例えば、ITR+HFBI−DCBDナノ粒子は、まずセルロースに結合させて、続いて、単純な糖添加物とともに凍結乾燥させることができる。次に、粉末は、ハイドロフォビンでコーティングされたナノ粒子に代わって、純粋なITR粉末で作製された類似の錠剤よりもはるかに速い溶解特徴を有する錠剤へと直接圧縮することができた。
【0093】
純粋なイトラコナゾール及びナノファイバー状のセルロースマトリクスへ負荷されたイトラコナゾールナノ粒子の溶解速度は、図1で可視化される。負荷されたサンプルは、トレハロース(TRE)又はエリスリトール(ERY)とともに凍結乾燥させて、乾燥プロセスにおいてナノ構造を保存した。純粋な薬剤粉末の溶解よりも、セルロースマトリクスの溶解は、相当速い。KC及びNFCは、種々のグレードのナノファイバー状のセルロースを指す。
【引用文献】
【0094】
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xiii Valo H, Laaksonen P, Peltonen L, Linder MB, Hirvonen J, Laaksonen T: Hydrophobin protein directed drug nanoparticle production and functionalization, ACS Nano, 4(3) (2010) 1750-1758.
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体粒子の生成物であって、各粒子が疎水性コア中に活性作用物質を含み、該コアがハイドロフォビンで少なくとも部分的にコーティングされている固体粒子の生成物。
【請求項2】
前記粒子がナノ粒子である請求項1に記載の生成物。
【請求項3】
前記粒子が実質的に球状である請求項1に記載の生成物。
【請求項4】
前記ハイドロフォビンが、クラスIハイドロフォビン及びクラスIIハイドロフォビンから選択される請求項1又は2に記載の生成物。
【請求項5】
前記ハイドロフォビンが、HFBI、HFBII及びSRHI、又はそれらの誘導体から選択される請求項1〜4のいずれか一項に記載の生成物。
【請求項6】
前記ハイドロフォビンがHFBIIである請求項5に記載の生成物。
【請求項7】
前記ハイドロフォビンが官能基化されている請求項1〜6のいずれか一項に記載の生成物。
【請求項8】
1マイクロメートル未満、好ましくは0.5マイクロメートル未満、より好ましくは0.2マイクロメートル未満の平均粒径を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の生成物。
【請求項9】
前記コアが、第2の活性作用物質及び任意に更なる活性作用物質を含む請求項1に記載の生成物。
【請求項10】
前記コーティングが、第2のハイドロフォビン及び任意に更なるハイドロフォビンを含む請求項1に記載の生成物。
【請求項11】
前記活性作用物質が薬学的活性作用物質である請求項1〜10のいずれか一項に記載の生成物。
【請求項12】
前記コアが、薬学的に許容し得る充填剤を更に含む請求項13に記載の生成物。
【請求項13】
前記活性作用物質が、食品又は飼料の活性成分である請求項1〜12のいずれか一項に記載の生成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の固体粒子の生成物、及び担体又は補助剤を含む配合物。
【請求項15】
前記担体又は前記補助剤が、薬学的に許容し得る担体又は補助剤である請求項14に記載の配合物。
【請求項16】
活性作用物質及びハイドロフォビンを含む粒子の生産方法であって、該粒子が1マイクロメートル未満の少なくとも1つの平均寸法を有し、
i.前記ハイドロフォビンを水中に溶解し、
ii.前記活性作用物質を水混和性有機溶媒中に溶解し、
iii.工程i及び工程iiの溶液を撹拌しながら混合し、さらに
iv.沈殿した粒子を、前記混合溶液から収集する
ことを特徴とする活性作用物質及びハイドロフォビンを含む粒子の生産方法。
【請求項17】
前記水混和性有機溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)又は1,4−ジオキサンから選択される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも工程iii、並びに任意に工程i、工程ii及び/又は工程ivが、氷浴中で実施される請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
活性作用物質及びハイドロフォビンを含む粒子の生産方法であって、該粒子が1マイクロメートル未満の少なくとも1つの平均寸法を有し、
a.前記活性作用物質をハイドロフォビンを含む水性媒質中で粉砕し、
b.形成した粒子を前記水性媒質から収集する
ことを特徴とする活性作用物質及びハイドロフォビンを含む粒子の生産方法。
【請求項20】
前記ハイドロフォビンが官能基化されている請求項16又は19に記載の方法。
【請求項21】
疎水性活性作用物質を含むコアのためのコーティング剤としてのハイドロフォビンの使用方法。
【請求項22】
前記活性作用物質が薬学的活性作用物質である請求項21に記載の使用方法。
【請求項1】
固体粒子の生成物であって、各粒子が疎水性コア中に活性作用物質を含み、該コアがハイドロフォビンで少なくとも部分的にコーティングされている固体粒子の生成物。
【請求項2】
前記粒子がナノ粒子である請求項1に記載の生成物。
【請求項3】
前記粒子が実質的に球状である請求項1に記載の生成物。
【請求項4】
前記ハイドロフォビンが、クラスIハイドロフォビン及びクラスIIハイドロフォビンから選択される請求項1又は2に記載の生成物。
【請求項5】
前記ハイドロフォビンが、HFBI、HFBII及びSRHI、又はそれらの誘導体から選択される請求項1〜4のいずれか一項に記載の生成物。
【請求項6】
前記ハイドロフォビンがHFBIIである請求項5に記載の生成物。
【請求項7】
前記ハイドロフォビンが官能基化されている請求項1〜6のいずれか一項に記載の生成物。
【請求項8】
1マイクロメートル未満、好ましくは0.5マイクロメートル未満、より好ましくは0.2マイクロメートル未満の平均粒径を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の生成物。
【請求項9】
前記コアが、第2の活性作用物質及び任意に更なる活性作用物質を含む請求項1に記載の生成物。
【請求項10】
前記コーティングが、第2のハイドロフォビン及び任意に更なるハイドロフォビンを含む請求項1に記載の生成物。
【請求項11】
前記活性作用物質が薬学的活性作用物質である請求項1〜10のいずれか一項に記載の生成物。
【請求項12】
前記コアが、薬学的に許容し得る充填剤を更に含む請求項13に記載の生成物。
【請求項13】
前記活性作用物質が、食品又は飼料の活性成分である請求項1〜12のいずれか一項に記載の生成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の固体粒子の生成物、及び担体又は補助剤を含む配合物。
【請求項15】
前記担体又は前記補助剤が、薬学的に許容し得る担体又は補助剤である請求項14に記載の配合物。
【請求項16】
活性作用物質及びハイドロフォビンを含む粒子の生産方法であって、該粒子が1マイクロメートル未満の少なくとも1つの平均寸法を有し、
i.前記ハイドロフォビンを水中に溶解し、
ii.前記活性作用物質を水混和性有機溶媒中に溶解し、
iii.工程i及び工程iiの溶液を撹拌しながら混合し、さらに
iv.沈殿した粒子を、前記混合溶液から収集する
ことを特徴とする活性作用物質及びハイドロフォビンを含む粒子の生産方法。
【請求項17】
前記水混和性有機溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)又は1,4−ジオキサンから選択される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも工程iii、並びに任意に工程i、工程ii及び/又は工程ivが、氷浴中で実施される請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
活性作用物質及びハイドロフォビンを含む粒子の生産方法であって、該粒子が1マイクロメートル未満の少なくとも1つの平均寸法を有し、
a.前記活性作用物質をハイドロフォビンを含む水性媒質中で粉砕し、
b.形成した粒子を前記水性媒質から収集する
ことを特徴とする活性作用物質及びハイドロフォビンを含む粒子の生産方法。
【請求項20】
前記ハイドロフォビンが官能基化されている請求項16又は19に記載の方法。
【請求項21】
疎水性活性作用物質を含むコアのためのコーティング剤としてのハイドロフォビンの使用方法。
【請求項22】
前記活性作用物質が薬学的活性作用物質である請求項21に記載の使用方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2012−529479(P2012−529479A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514502(P2012−514502)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【国際出願番号】PCT/FI2010/050475
【国際公開番号】WO2010/142850
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(511300259)テクノロジアン トゥトキ ムスケスクス ヴェーテーテー (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【国際出願番号】PCT/FI2010/050475
【国際公開番号】WO2010/142850
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(511300259)テクノロジアン トゥトキ ムスケスクス ヴェーテーテー (1)
【Fターム(参考)】
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